星新一「あるエリートたち」のネタバレ解説

大きな企業であるK社の新入社員のうち、
あらゆる面で優秀な人材と認められた4人が呼ばれました。

給料やボーナスは特別に多く払う、金は好きなだけ使っていい、
と重役は4人に言いました。

しかし、生産的なことは一切してはいかん、
と重役は言い、4人に仕事や勉強をすることを禁じました。

4人は重役用の寮へ送られ、雑用は管理人がなんでもやってくれます。

4人は軽い体操や釣り、トランプや碁や将棋、
マージャンなどをして過ごしましたが、それにはあきてしまいました。

依然として、仕事の命令はなく、
4人は玉突き台、パチンコ台、プール、射的、体操の道具など、
世界中の遊び道具を集めさせました。

女性も派遣されてきて、むかしの王侯貴族か大金持ちのような生活をします。

数年がたち、4人は既成の遊びにはあきてしまい、
新しい遊びをくふうしました。

地面に複雑な図形を描き、ボールを使い、
人間がチェスの駒のようになって遊ぶものでした。

4人がそれに興じていると、重役がやってきて、
新しいゲームを開発したことを褒めました。

現在あるスポーツやゲームは、どれも19世紀以前にうまれたもので、
精神的余裕を失っている現在の人びとは、
新しい遊びを開発する精神的余裕を失っているということを重役は話します。

そこで、優秀な新入社員4人を、むかしのひま人の環境に置き、
アイデアがにじみ出て形をとるのを待っていたのだそうです。

わが社は莫大な利益をあげるだろ、望み通り、どんな報酬でも出そう、
と言った重役に、
普通の職場でまともな仕事をやらせて下さい、遊びにはすっかりあきました、
と4人は言ったのでした。


というあらすじなのですが、
これは「まだコンピューターゲームがなかった時代の話、という感じでしたね。

現在だと、面白いゲームは、
ごく一部のカリスマが率いる大勢のプログラマー集団が作るもの、
という感じになっていますからね。

任天堂が、世界一売れたゲームと言われるスーパーマリオブラザーズを発売したのは、
1985年のことです。

一方、この話が書かれたのは1960年代です。

もしもスーパーマリオの発売後に、星新一さんがこの話を書いていたら、
全く違った内容になっていたのではないかと思います。

星新一「打ち出の小槌」のネタバレ解説

学者と2人の助手が山奥で、柄の短いハンマーを発掘しました。

これがなんなのか、知りたい……、
と学者がつぶやきながらハンマーを振ると、
これは打ち出の小槌です、と頭のなかに声が浮かびました。

打ち出の小槌は昔話の「一寸法師」に登場する、
望む物の名を唱えながら打つと、それが出てくるものです。

試しにワインのイメージを描きながら小槌を振ると、
いいワインが出てきました。

学者は、こんな貴重なものを紛失したら大変だ、
と考え、打ち出の小槌をもうひとつ作りました。

それを持って助手が念じながら振ると、
さらにもうひとつ打ち出の小槌が出現しました。

世の中のために役立たせる、という信念のもと、
学者たちは打ち出の小槌を増やしまくり、それらは都会へはこばれました。

各人がそれぞれの願いをこめて、かなりの数にふえた打ち出の小槌を振ると、
〈これで小槌に与えられた魔力の、規定の回数は終りです〉
と昔の言葉で書かれた紙が出てきたのでした。


というあらすじなのですが、「結局、学者たちが打ち出の小槌以外に増やしたものは、ワインだけです。

一番もったいない願いの使い方でしたね……。

例えば残りの願い回数が100回の打ち出の小槌でもうひとつ打ち出の小槌を増やしたら、
最初の打ち手の小槌は99回、2つめの打ち手の小槌は100回、
という感じになってもよさそうなものですが、
実際には全ての打ち手の小槌の合計で、使える回数が決まっていたのでしょう。

例えば残り回数が100個の打ち出の小槌を使って、100個打ち出の小槌を増やしたら、
それだけで残り回数を使い切ってしまった、ということですね。

よくある魔法のランプなんかだと、願いは3つまで、と決まっていて、
願いを増やす願いは叶えられない、という縛りがあったりしますが、
この打ち出の小槌にも同じような縛りがあったのでした。

東川篤哉「ハッピーアワーは終わらない かがやき荘西荻探偵局」Case4「奪われたマントの問題」のネタバレ解説

師走の土曜日、関礼菜は『探偵戦隊サガスンジャー』に登場する
美しき悪のヒロイン『モリアーティ夫人』のコスプレをして、
特撮マニア向けのイベントに参加しました。

黒いゴスロリファッションの上に、紫色のマントを羽織っていました。

午後10時ごろに帰宅する際、近道をしようと公園に入った礼菜は、
背後から棒でコメカミのあたりを殴られ、気を失ってしまいました。

救急車に運び込まれる寸前に、一瞬だけ意識を回復した礼菜は、
私は法界院法子夫人の身内です、と図々しいことを告げて、
再び意識を失ったため、法子のところに連絡が行きました。

葵と美緒と啓介がお見舞いに行くと、礼菜は、
背中に『Mrs.Moriarty』と染め抜いてある
希少価値の高いマントがなくなっていることを告げました。

葵と美緒は翌日から調査に着手し、
18歳の柴崎智樹というフリーターから、
事件の夜に礼菜の悲鳴を聞いたという話を聞きました。

智樹は悲鳴の後、小走りで公園を出る男を見たのだそうです。

公衆トイレの傍の地面に、礼菜が倒れているのを発見しましたが、
智樹は酔っ払っていたため通報しなかったのだそうです。

マントはなかったと智樹は証言しました。

また、小走りに公園を出た男は、
西荻窪の駅の近くにある『めずらし屋』の店主だということを智樹は証言しました。

翌日、葵と美緒は、その古着屋『めずらし屋』に行きました。、
店主の望月勲は、確実なアリバイがあると言いました。

事件の夜、公園の傍を通った望月勲は、偶然、飲み仲間の山下正志と会い、
近所の飲み屋に向かって歩きはじめたのだそうです。

その道すがら、望月勲と山下正志は、
ゴスロリ・ファッションに身を包んだ若い女を見かけたと証言しました。

『山下骨董店』に行き、その店主の山下正志にアリバイの裏を取りましたが、
山下正志の証言は望月勲の証言と一致していました。

病院に行き、礼菜に聞きましたが、
礼菜は望月勲と山下正志のことをぜんぜん覚えていませんでした。

ゴスロリの衣装を着せた若い女の共犯者がいたのではないかと啓介は推理しますが、
山下正志と望月勲が公園付近で出くわしたのは、まったくの偶然だったはず、
と葵は否定しました。

しかし、「その啓介の推理がヒントになり、
何かに気づいた葵は礼菜の偽者を捜すよう、美緒と啓介に頼みました。

美緒は聞き込みをして、
『けやきハイツ』にゴスロリ・ファッションの若い女が住んでいる、
ということを老人から聞きました。

3人はその『けやきハイツ』に行きました。
西田真弓という女性の死体を発見しました。

望月勲は、西田真弓と同じゴスロリ・ファッションをした礼菜を、
西田真弓と間違えて襲ったのでした。

山下正志と擦れ違ったのは、礼菜ではなく西田真弓だったのでした。

マントを奪ったのは、西田真弓を警戒させないために、
これが間違い殺人であるという事実を隠蔽したかったからでした。

山下正志と飲み屋で飲んでアリバイを作った後、
望月勲は西田真弓を殺し直したのでした。

動機は、望月勲は妻がいながら西田真弓と不倫していた、痴情の縺れでした。


というあらすじなのですが、面白かったです。

今回の謎は他の話に比べてちょっと簡単だったような気もしましたが、
啓介の間違った推理がヒントになる流れがよかったです。

この本に収録されている話は、これで終わりです。

東川篤哉「ハッピーアワーは終わらない かがやき荘西荻探偵局」Case3「長谷川邸のありふれた密室」のネタバレ解説

荻窪の有名和食料理店『はせ川』で、法界院法子夫人と成瀬啓介が、
長谷川隆三、春江夫妻と会食をしました。

長谷川夫妻は『はせ川』のオーナーで、
今は現在の料理長、富田正和に料理を任せていましたが、
隆三は弟子である富田と仲が悪そうでした。

長谷川夫妻には綾乃というひとり娘もいて、
綾乃はいずれ富田と結婚する予定でした。

住み込みの家政婦、永井早苗が帰った後、法子が酔い潰れてしまい、
法子と啓介は『はせ川』の離れに泊めてもらうことになりました。

法子を離れに運ぶのは、『はせ川』の若い料理人の森崎弘樹に手伝ってもらいました。

翌朝、離れの別の部屋に住んでいる富田が起きてこなくて、
ドアは中から施錠されていたため、外へ出て、
窓から中の様子を覗くと、富田が死んでいました。

富田はフローリングの床の上に、うつ伏せに倒れて血を流していて、
脇腹から刃物の柄が出ていました。

窓を割って中に入りましたが、現場は密室でした。

刃物は、隆三の愛用する包丁で、
密室の扉を解錠することができる唯一の鍵は、
春江夫人が管理していました。

警察が長谷川夫妻が疑いの目を向けるのは確実なので、
法子たちは警察へ通報する前に、『かがやき荘』の葵、礼菜、美緒の3人を呼び、
密室の謎だけでも解いてもらうことにしました。

現場には窓が2つあり、そのうち1つはクレセント錠は掛かっていませんでしたが、
窓の外には鉄の格子が嵌まっていました。

美緒は現場で、血のついた麻紐を発見しました。

美緒は外の物干し竿の端にも血がついているのを発見し、
この密室、ウチには見えたっちゃよ! と断言しました。

美緒は関係者一同を集めようとしますが、葵はその前に、
啓介と法子を通して、春江にビデオカメラを2台借りてもらいました。

関係者である長谷川夫妻、その娘の綾乃、若い料理人の森崎弘樹、
家政婦の永井早苗の前で、美緒は推理を披露します。

美緒は、「物干し竿の先端に麻縄で包丁をくくりつけ、長い槍のようにして、
鉄の格子の隙間から富田を狙った、という推理を話しました。

密室の謎が解けたことで、法子と春江は警察に通報しようとしましたが、
もう少しだけ時間があれば真犯人が判りそうな気がする、
ということを葵は言い、通報を遅らせて欲しいと頼みました。

葵たちがランチに出かけてしばらくすると、
トイレで綾乃が悲鳴を上げました。

便器の溜まり水が血で真っ赤に染まっていて、綾乃のハンカチが浮いていました。

帰ってきた葵は、美緒の話したトリックは非現実的で、
綾乃が両親を庇うための小細工だということを言いました。

トリックが使われたと見せかけるトリック、だったのです。

実際の密室は、脇腹を刺されて傷を負った富田が、
犯人からのさらなる攻撃を避けようとして、刃物が刺さったままの状態で部屋の扉を閉めて、
中から鍵を掛けたという、ありふれたトリックでした。

犯人は、離れに法子と啓介が泊まっていることを知らなかった、永井早苗でした。

葵が設置したビデオカメラに、ハンカチを血で汚す永井早苗の姿が映っていました。

富田は綾乃と早苗に二股をかけ、最終的に綾乃を選ぼうとしたため、
早苗が激怒して富田を殺したのでした。


というあらすじなのですが、確かにタイトル通り、「『ありふれた密室』でしたね。

長い棒で槍を作って密室の外から刺すというトリックも、
傷を負った被害者が犯人から逃げるために自ら密室に鍵を掛けるのも、
どちらもありふれた密室トリックです。

ただ、そのありふれた密室トリックを上手く組み合わせて、
上質な短編に仕上げた作品だと思いました。

ついでに言うなら、痴情のもつれという動機もありふれていますねw

東川篤哉「ハッピーアワーは終わらない かがやき荘西荻探偵局」Case2「ビルの谷間の犯罪」のネタバレ解説

田辺惣太郎巡査が、西荻窪のビルとビルの1メートルほどの隙間で、
関礼菜が倒れているのを発見しました。

礼菜は、刃物を持っていて、悲鳴を上げると、
違うんですぅ、違いますからぁ!
とわめき声をあげ、ナイフを田辺巡査の方に投げ、逃げていきました。

田辺巡査は、ビルとビルの隙間に、
中里綾香という28歳の女性の死体を発見しました。

場面が変わり、かがやき荘に、神楽坂という苗字の中年男性刑事がやってきて、
関礼菜には殺人の容疑が掛かっている、と言い、
かがやき荘の中を調べましたが、礼奈はいませんでした。

成瀬啓介から電話があり、小野寺葵と占部美緒は、
法界院家に呼び出されました。

礼奈はそこで、警察も恐れる権力を持つ法界院法子に匿ってもらっていたのでした。

中野のコスプレ専門店でのアルバイトを終えた礼菜は、
三毛猫がビルとビルの隙間に入っていくのを、
前かがみの体勢で追いかける途中、後頭部にガツンという衝撃が走り、
意識を失ってしまったのだそうです。

三毛猫に起こされた礼菜は、深く考えることなく地面に落ちていた刃物を拾ってしまい、
そこを通りがかった田辺巡査に誤解されてしまったのでした。

随分と前に、礼菜はべろんべろんに酔っ払って、
居酒屋の看板を素手で叩き壊して、警察のお世話になったことがあり、
指紋も登録されていたため、神楽坂刑事がかがやき荘にやってきたのでした。

葵と美緒の2人で礼菜の無実を証明することになります。

2人が死体の発見現場に行くと、中里綾香の会社の同僚の、杉本智美という27歳の女性がいました。

葵と美緒が、礼菜は真犯人ではないということを説明し、
怪しい奴の心当たりを聞くと、智美は、高原雅史という男について話しました。

高原雅史は40代の男性で、別居中の妻がいながら、綾香と不倫していたのだそうです。

高原は、死体の発見現場の隣にあった『東和ハイツ』というマンションの5階で、
ひとりで暮らしているのだそうです。

葵と美緒が高原の尾行を始めて2日目、土曜日に、
高原は大きな楽器ケースを背負って出かけました。

しかし、途中で尾行に気づかれてしまい、高原は白いミニバンでどこかへ行ってしまいました。

そこへ神楽坂刑事が現れ、高原は事件の起きた夜、『東和ハイツ』から1歩も外に出ていない、
ということを話しました。

共用玄関の防犯カメラには、夕刻に会社から帰宅する高原の姿が映っているだけで、
それ以降、彼の姿は防犯カメラに映っていなかったのだそうです。
高原は大柄で中年太りの特徴がある体型で、
変装してマンションを出入りした可能性はないのだそうです。

その後、葵と美緒は、『東和ハイツ』の逆隣の『北商ビル』の屋上に行き、
手すりに、真新しい傷があるのを発見しました。

また、『東和ハイツ』に、黒い楽器ケースを担いだ高原が帰ったのが見えました。

葵は、法子夫人からポルシェを借り、「白いミニバンを見張りました。

翌日、日曜日の夜に、楽器ケースを担いだ高原が白いミニバンに乗り、
多摩川に行き、楽器ケースに大きな石を詰め込んでいるのを、葵と美緒は目撃しました。

楽器ケースを川に捨てられる前に、葵と美緒は高原に話しかけます。

美緒が楽器ケースを調べますが、中は大きな石が詰められているだけで、
それ以外は完全にカラッポでした。

美緒の首筋にナイフが当てられ、葵は時間稼ぎのために推理を話します。

突発的に綾香を殺した高原は、防犯カメラのあるエレベーターと共用玄関を通らず、
綾香の死体を運び出すことにします。

高原はロープの先端にカギ状の金具を括り付け、隣の『北商ビル』の屋上の手すりに引っ掻け、
2つの支点を作ることで、負担を軽くして、
死体の入った楽器ケースを少しずつ地上へ降下させていきました。

しかし、楽器ケースの蓋が中身の重みに耐え切れず、開いてしまい、
中の死体が落下し、死体の一部が礼菜の後頭部を直撃してしまったのでした。

葵が推理を話している間に忍び寄っていた神楽坂刑事が、高原を逮捕してくれました。

神楽坂刑事は、いずれ葵と美緒が礼菜に接触するに違いないと考え、
葵と美緒を尾行していたのでした。


というあらすじなのですが、葵の推理力は凄いですよね。

そんな葵の職業はコンビニ店員ですが、職業選択を間違えているような気がします。

今回登場した神楽坂刑事は、今後、準レギュラーとなります。

神楽坂という苗字は、新宿区にある神楽坂という地名から取られたのでしょうか。

江戸時代の面影を残しながら、洗練された雰囲気を持つ神楽坂は、
カジュアルな雰囲気の大衆店や個人店が多い西荻とは対照的です。

それが、かがやき荘の3人と対立する
刑事の苗字に選ばれた理由なのかもしれませんね。
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