米澤穂信「いまさら翼といわれても」3話「連峰は晴れているか」のネタバレ解説

放課後、古典部部室の地学講義室にいると、ヘリコプターの音が聞こえました。

奉太郎は、中学の英語の小木が、ヘリが好きだったな、と言いましたが、
里志はそんなことは知りませんでした。

摩耶花もあまり憶えていませんでしたが、
奉太郎が詳しく話すと思い出しました。

入学したばかりの頃、鏑矢中学の上をヘリが飛んだとき、
小木は突然授業を止めて窓に駆け寄って、空を見上げたことがありました。
ヘリが遠ざかっていくまでずっと見ていて、
「ヘリが好きなんだ」と言って授業に戻りました。

しかし、別の時に自衛隊のヘリがスコードロンを組んで飛んできたときには、
小木先生は反応しなかった、と里志は言いました。

それよりも、小木がこれまでの生涯で3回、雷を食らっている、
ということの方がメジャーインパクトな伝説だ、と里志は言いました。

奉太郎が気になって、当時の新聞を調べようとすると、
里志も摩耶花も千反田さんも、奉太郎が自発的に行動したことに驚き、
失礼なことを言いました。

奉太郎は千反田さんと図書館に行きます。
自転車通学をしている千反田さんの方が先に図書館に着き、
「小木正清」という名前で新聞を調べておいてくれました。

去年の記事に、神山山岳会会長の小木正清が、
神垣内連峰(かみかきうちれんぽう)で登山道美化活動のボランティアをしている、
と書かれていたのを探してくれました。

奉太郎は、小木が3度も落雷にあったという話を聞き、
小木が山登りをしていたことを、すでに推理していました。

奉太郎が中学校に入学した年の、4月から5月までの記事のうち、
『遭難』で検索してもらうと、5月9日に、
神山山岳会員の男性2名が神垣内連峰で遭難したことが報道されていました。
天候悪化のため捜索は難航していましたが、
県警は天候の回復を待って、救難ヘリで捜索を行う予定だと書かれていました。

あの日だけ、小木がヘリを見ようとしたのは、
その日ヘリが飛ぶかどうか、どうしても気がかりだったからなのでした。

連邦が晴れていればヘリは飛びます。
ヘリが飛ぶなら、遭難者が助かる可能性も、高くなります。

新聞を何日分か後まで読むと、遭難した2人は遺体で発見されていました。
発見したのはヘリコプターでした。

帰り道で、どうして今日だけは自分の疑問を調べたのか、
と千反田さんが訊くと、実際はああいうことがあったのに、
小木はヘリ好きだったなあなんて、気楽には言えない、
それは無神経ってことだ、と奉太郎は答えました。


それを聞き、千反田さんは、「折木さん、それって、とっても……」
と何か言いかけましたが、うまく言えません、と続けました。

というあらすじなのですが、奉太郎の優しさが伝わってきて、
「うまく言えない」気持ちになった話でした。

米澤穂信「いまさら翼といわれても」2話「鏡には映らない」のネタバレ解説

今回は伊原摩耶花の視点で話が進みます。

日曜日、Gペンを買いに出かけた摩耶花は、
絵を描くためのパソコンの下見に電器屋にも行き、
そこで中学校時代のクラスメートの池平という女子と再会しました。

池平に奉太郎と同じ部活に入っていると言うと、
池平はサイアクと言い、追い出しちゃいなよ、と言いました。

池平の反応は過剰なものではなく、あの年、
鏑矢中学3年5組にいた人間は奉太郎を軽蔑していました。

ここで回想です。
中学3年生の11月に、学年全体で卒業制作をすることになりました。

縦が2メートル近い大きな鏡に、木製の飾り枠をつけることになり、
クラスごとに分担して、その木枠に彫刻を施すのでした。

市の絵画コンクールで銀賞を取った2組の鷹栖亜美がデザインを作り、
それを何十かのパーツに分割して、5クラスに均等に割り当て、
各クラス内でそれぞれ再度割り振って彫り、
最後にそれを組み合わせて完成でした。

デザインは、横に伸びたツルが一度大きく垂れ下がり、
弧を描いて上っていくように描かれていました。

摩耶花の班の男子は、
割り当てられたパーツの作業量が他の班より多いことに文句を言い、
摩耶花と、美術部の三島という女子の2人だけでパーツを彫りました。

提出日になりましたが、奉太郎が提出したパーツは、
デザイン画を完全に無視して、
板の中央に横一本のツルがあるだけに変更されていました。
学級委員長の男子の細島が、どういうつもりなんだよ、と声を荒げると、
奉太郎は、だって曲がってると面倒だろ、と答えました。

体育館でレリーフを組み立てると、
奉太郎の班が担当したパーツは目立たないように見えました。

ところが、デザインを担当した派手な女子、鷹栖亜美が、
その友達3人とやってきてレリーフを見ると、
奉太郎の班が彫ったパーツを見て悲鳴を上げ、
泣き始めてしまいました。
鷹栖亜美の友達に責められ、5組の代表として摩耶花が名乗り出ると、
先生がフォローするまで3人組に罵られ続けました。

また、5組の生徒は奉太郎に詰め寄り、
奉太郎は教室から消えて図書室で本を読むことが多くなりました。

回想終わりです。

古典部に入ってからの奉太郎を知っていた摩耶花は、
あのとき、奉太郎は何か企んでいたんじゃないか、と考え、
月曜日の部活の時間に奉太郎に訊きました。
しかし、奉太郎は「忘れた」「よく憶えてない」と繰り返しました。

翌日、中学時代に奉太郎と同じ班だった、E組の芝野めぐみを訪ね、
当時のことを訊きました。

班単位で作るはずのものだったのに、奉太郎1人で作ることになったのは、
奉太郎が自分から、手伝ってくれる人がいるからと言い出したからなのだそうです。

奉太郎が頼もうとしていたのは、鳥羽麻美(とば・あさみ)という子で、
奉太郎の彼女だったみたいだ、と芝野めぐみは言い、摩耶花は驚きました。

翌日、鳥羽麻美が所属する写真部に行きますが不在でした。
しかし、部長は、鳥羽麻美は屋上にいることを教えてくれ、
摩耶花は屋上に行きました。

鳥羽麻美は摩耶花に対して拒絶的な態度をとりましたが、
奉太郎が手抜きしたんじゃないのなら、謝る、と言うと、
鳥羽麻美は少し協力的になりました。

鳥羽麻美にとって奉太郎はヒーローであり、摩耶花は最低だと言い、
知りたければ鏡を見てきたら? と言いました。
逆立ちでもしないと、あなたにはわからないと思うけど、
と鳥羽麻美は言いました。

摩耶花は鏑矢中学校に行き、問題の鏡を見て、
下の方ほどデザインが入り組んでいると思いました。

摩耶花は、鳥羽麻美の「『逆立ちでもしないと』という言葉をヒントに、
携帯電話で写真を撮り、上下逆さまにして見ました。

翌日、プリントアウトした15枚の写真を逆さにして、
奉太郎と里志に見せました。
ただ見ているだけでは、曲がりくねったツルだとしか思えませんが、
逆さまにすると、“WE HATE A AMI T”
と読めるようになっていました。

意味は、『私達は亜美が嫌い』です。
しかし、元々のデザインは“WE HATE ASAMI T”で、
『私達は麻美が嫌い』になるはずでした。

それを奉太郎がデザインを変えて一文字落としたことで、
文章が変わってしまったのでした。

鷹栖亜美とその取り巻きは鳥羽麻美をいじめていましたが、
奉太郎は逆さ文字に気づき、卒業制作の進行を担当していた里志に相談し、
メッセージの文章を変えたのでした。


摩耶花が奉太郎に謝ったところで、この話は終わります。

というあらすじなのですが、シリーズ第一作の「氷菓」で、
なぜ摩耶花が奉太郎のことを軽蔑しているような態度を取っていたのかが分かり、
面白かったです。

米澤穂信「いまさら翼といわれても」1話「箱の中の欠落」のネタバレ解説

いまさら翼といわれても


古典部シリーズ第6弾です。

この短編のタイトルは、竹本健治さんの「匣の中の失楽」が元ネタですね。

6月の午後7時半に折木奉太郎が焼きそばを作って食べようとしていたところに、
福部里志から電話がかかってきて、8時に外で待ち合わせることになりました。

里志は夜道を歩きながら、今日、生徒会長選挙の投票で、
開票に問題があった、という話を始めました。

D組の小幡春人(おばた・はると)と
E組の常光清一郎(じょうこう・せいいちろう)の一騎打ちで、
里志は総務委員会の副委員長として、開票の立会人をしました。

現在、神山高校は1学年8クラスで、生徒総数は1049人なのに、
集計された票は1086票あり、不正票が増えていたのでした。

投票用紙は切った紙にスタンプを押すだけで、誰にでも作ることができました。

里志も考えましたがわからず、奉太郎に電話したのだと言いました。

しかし、里志は里志自身の解きたい理由を隠していたので、
奉太郎は帰ると言い出します。

選挙管理委員会の委員長は、とにかくいばる人物でした。
1年E組の選管の男子生徒は、開票所である会議室に一番乗りし、
立会人が来る前に箱の中身を出してしまいました。
そのことから、選管の委員長は1年E組の男子を疑い、罵倒し、
1年E組の男子は泣いてしまいました。

里志はそのことに腹を立て、謎を解きたいと思ったのでした。

選管は昨日の放課後、一階の倉庫から投票箱を出して、会議室に運びました。
今日、箱の中が空っぽであることを確かめてから、
各クラスの選管委員に投票箱と投票用紙を渡し、鍵をかけます。

クラスでの投票時間が終わると、選管は箱を持って会議室に戻ってきて、
何年何組の箱が戻ってきたかというリストにチェックを入れ、
立会人が見ている中で開票し、集計しました。

テーブルに広げられた票は常に複数人に見られていたので、
不正票は箱に加えられていたとしか考えられないのですが、
不正票が40票も入っていたら気づかないはずがなく、
複数のクラスの箱に分散して入っていたというのも、非現実的です。

奉太郎と里志はラーメン屋に入り、ラーメンを食べながら話を続けます。

奉太郎は係の分担を聞き、48人の選管委員中、
24人が箱係、2人が箱渡し係、1人が鍵係、10人が開票係、
委員長が1人、副委員長が2人、ホワイトボードに書き込む集計係が2人、
雑用と片づけをするのが6人だと判明しました。

ラーメンを食べ終えて外に出た奉太郎は、選管の手順には大きな穴が2つある、
と言いました。
どのクラスのものでもない箱が、選管じゃない人物によって運び込まれても、
システム上はチェックできなかった、ということです。

今は1学年8クラスですが、奉太郎の姉の時代は1学年9クラスあり、
箱が倉庫に余っていたはずなので、
誰かがその箱に不正票を入れて会議室に持ち込み、
戻ってきたクラスをチェックするリストには何も書かなかったのでした。

『箱の中ばかりを見過ぎた。……なにか、欠けていたな』
と里志は言い、総務委員長に報告しました。

翌日、会議室に残されていた投票箱が25票だったこともあって、
1年E組の男子の疑いは晴れました。
再投票では常光清一郎が新生徒会長の座につきました。
犯人は早朝に25箱目を回収に来たところを押さえられましたが、
ここから先は選管の仕事なので、
犯人の名前も動機も、里志や奉太郎は知らないままでした。


というあらすじなのですが、犯人の行動がちょっと謎ですね。

不正票を入れたところまではよかったのですが、
箱を回収するのが翌日の朝というのは、遅すぎるでしょう。
っていうか、集計された票の数が合わないのが発覚するのは予想できますし、
箱を回収せずに放置すればよかったんじゃないでしょうか。
そうすれば、自分が犯人だとばれなかったのに、と思いました。

星新一「シンデレラ」のネタバレ解説

広い庭に面した凝ったつくりの豪華な邸宅のなかの、
高価な骨董で飾られた部屋のなかで、
興信所の男が、老人に、なにか仕事をまわして欲しいと頼みました。

しかし、男に以前頼んだ調査もいいかげんだったので、
老人は断りました。

それでも男は必死に頼み、老人は、
20年前にある女との間につくった女の子をさがしてほしい、
と頼みました。

その女の子にこの家を譲るつもりなのだと言います。

母親はすでに死亡していますが、女の子には2つの大きな特徴がある、
と老人は言います。
生まれてまもなく思わぬ事故がつづいたせいで、
女の子は左手の親指がなく、
しりの右側に大きなやけどの跡があるのだそうです。

時間はかかってもいいいし、調査費用は毎週払うと老人は言いました。

数ヶ月がたち、やっと女の子が見つかったと言い、
男が女を連れて訪問しました。

その女は左手の親指がありませんでした。
やけどの跡のほうも見せようとすると、老人は、
見るまでもあるまいと言い、約束の報酬を渡しました。

男が帰ろうとすると、老人は、「この女も連れていってくれ、
と言いました。
じつは、老人が男にたのんだ依頼は作り話だったのです。
ただ金をあげては、自尊心を傷つけると思い、
架空の仕事を考え出してたのんだのでした。

老人は親指のない女の手をみつめながら、友情と、想像と、
快楽のまざった笑いをあらわしました。


というあらすじなのですが、「少なくとも女は嘘つきですが、
男のほうは分かりませんね。
女とグルになって豪華な邸宅を手に入れようとしたようにも読めますが、
男も女に騙されていた可能性があります。

それより、問題は、
女は老人を騙そうと考える前から左手の親指がなかったのか、
それとも老人を騙すために親指を切り落としたのか、という点です。

結局、女は豪華な邸宅を手に入れることができないので、
前者ならともかく、後者だと……。


タイトルの「シンデレラ」ですが、
これはシンデレラが残していったガラスの靴を手掛かりに、
王子が家来たちにシンデレラを探すように命令したエピソードが由来なのでしょうね。

ちなみに、「シンデレラ」には、
シンデレラをいじめた姉2人がガラスの靴を履こうとしますが、
足が大きすぎて履けず、
長女は爪先を、次女は踵を切り落とす、というバージョンがあります。

老人はその話を思い浮かべながら、
左手の親指がない女の子の話を男にしたのかもしれない、
と思うと、ゾッとします。

星新一「黄金のオウム」のネタバレ解説

午前2時に、ひとりの青年が起きていました。

電機会社の技師の職を、少し前にやめてしまい、
独立して仕事をはじめようとして
資金をつぎこんだまではよかったのですが、
利益があがらず、眠れない夜を過ごしていました。

そこへ、黒い布で顔を覆った2人の男たちが侵入してきて、
青年に拳銃をつきつけると、
窓ぎわにあった金色のオウムの置物をだきあげました。

その純金のオウムだけは困ります、と青年は言いましたが、
こんな物を外から見える窓ぎわに置いて、
おれたちを刺激したおまえさんにも責任がある、
と言って、男たちは金のオウムを持ち去ってしまいました。

2人組の男たちはかくれ家に戻ると、金色のオウムを見て、
これをご神体にして、
オウム教とかいう宗教でもはじめるつもりだったのかな、
などと言い、眠りました。

つぎの朝、ノックされてドアを開けると、
そこに「昨夜の青年がいて、長い棒と四角い箱を持っていました。

あの黄金のオウムのなかには、マイクと小型無線機が入れてあり、
すべてを記録していたのでした。
青年はアンテナで発信地をたずねてきました。

昨夜の会話も記録されていて、青年はその会話を流します。
男はふたたび拳銃をつきつけましたが、
青年が死んだらコピーをすぐ警察に送るように、
友人にあずけてありました。

青年は2人組の男たちを強請り、毎月口止め料をもらうことにしました。
これこそが、青年の考えた商売だったのでした。


というあらすじなのですが、
オウムを盗んでもらうのに毎回リスクを負わないといけませんし、
男たちが別件で逮捕されたら青年も芋づる式に逮捕されるかもしれませんし、
指名手配犯にはこの商売は通用しませんし、
割に合わない商売だなー、と思いました。

真面目に働いた方がいいですね。


ところで、この話の中には「オウム教」という言葉が出てきますが、
オウム真○教が地下鉄サ○ン事件を起こすのは、
この話が発表されてから30年以上後のことなので、無関係です。
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