小林泰三「惨劇アルバム」のネタバレ解説

惨劇アルバム (光文社文庫)


辺野古美咲は、
「なぜ私の人生には幸せなことしか起こらないのか」
という疑問を持ち、アルバムを開いてみます。
そのアルバムの中の幼稚園に入ったばかりの写真を見た美咲は、
自分は幼い頃に沼に落ちて死んだ、
という信じ難いことを思い出します。

驚いた美咲が母親に問いただすと、
母親はそれは偽の記憶であると説明します。
何と、美咲の母親は美咲に対し、自由に偽の記憶を植え付けたり、
その記憶を簡単に消すこともできるのでした。

そのことに動揺した美咲が婚約者の三浦智一に電話をすると、
何と「婚約者であるというのは偽の記憶であると言われます。
さらに、卒業したはずの大学の事務に問い合わせても、
辺野古美咲という卒業生はいない、と言われてしまいます。

母親は、美咲には元々大学生活自体もなく、恋人もなく、
可哀想に思って偽の記憶を植え付けたのだ、と説明します。


そして美咲の家族について七奈が話そうとしているところで、
第1章の「幸福の眺望」は終わります。

第2章の「清浄な心象」では、
美咲の母親の七奈の視点で話が進みます。
「完璧な子供を作りたい」と願う七奈は、
夫の迩に次々と無茶な要求をし、少しでも子供が穢された、
と思うと流産してしまう、ということを何度も繰り返します。
しかしやがて、「無抵抗だった迩が妻に反逆し、
無理やり子供を産ませ誕生したのが美咲だったのでした。


第3章の「公平な情景」では、美咲の弟の福が、
頭のおかしい教師から少しずつ悪平等な思想を押し付けられ、
最終的には同級生たちからリンチされて死にそうになってしまいます。
この話のネタは、教師に全責任を負わせず、
狂った論理についてもっと煮詰めれば、
より面白い話になったような気がします。

ところでこの話には西中島という男子が登場するのですが、
彼は「密室・殺人」や「獣の記憶」や「タルトはいかが?」や
「大きな森の小さな密室」や「氷橋」に登場する西中島巡査と
同一人物である可能性があります。

第4章の「正義の場面」では、美咲の祖父が風呂場で溺れ死にそうになる
――というシーンから始まります。
その日から祖父の生活は一変し、誰とも会話ができなくなった代わりに、
念力で物を動かせるようになりました。
祖父は、孫の福の様子を見に小学校へ行き、
福がいじめられているのに気付き、福を殴っている虐めっ子を、
シャベルで殴りました。
その後、霊であることを利用し、万引き犯や珍走団を半殺しにします。
ところが、「実は彼は自分が死んで幽霊になっていると思い込んでいる、
徘徊老人だったのでした。


第5章の「救出の幻影」では、迩が息子である福の日記を発見し、
怪物をお化け病院という廃墟に閉じ込めたという内容を読み、
お化け病院へ行きます。
そしてそこで、「実はその日記は福のものではなく
自分が書いたものだったということを思い出します。
一度は怪物を閉じ込めた迩でしたが、怪物のかけた呪いによって、
こうしてまたお化け病院へ戻ってきてしまったのでした。


そして終章で美咲は、「本物の辺野古美咲はやはり既に死んでおり、
自分は偽物であると主張します。
娘の死を受け入れることのできなかった七奈は、
自分の中に美咲としての人格を作り出してしまっていたのでした。

後味が悪い話のはずなのにラストで不思議な感動があるのは、
第2章では不完全な子供扱いしていた美咲の死を、
七奈が本当に悲しんでいたことが分かるからだと思います。


全体的にバラバラで統一感がないというか、
少し消化不良な感じの話が多いですが、
それこそがある意味小林泰三さんらしく、
これはこれで有りかな、とも思います。
小林泰三さんは作品によって出来の差が激しいですが、
この「惨劇アルバム」は平均点といったところでしょうか。
ファンならば読んでも損はないです。 見やすい記事一覧はこちらです。
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No title

はじめまして^^

「惨劇アルバム」、すごく読んでみたくなりました。
「なぜ私の人生には幸せなことしか起こらないのか」という一文がキャッチーです。
普通は逆のことを思う人の方が多いわけで・・・。おや?と思わせる感じですね。

本屋さんで探してみたいと思います!

No title

エフさん、初めまして。
読んでくれて嬉しいです^^
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