時雨沢恵一「キノの旅」11巻3話「アジン(略)の国」のネタバレ解説

今回は各短編ごとのタイトルが過去最長です。
とても目次には収まりきらないので、途中で略されていますw

アジン・ダー及びイエル・ダー及びパツエ・ダー及びアゲエ・ダー及び
ゼクス・ダー及びゼゼー・ダー及びイクエ・ダー及びケーン・ダー及び
……(中略)の国、という感じで、5ページ半タイトルが続きますw

タイトルが終わり、師匠と荷物持ちさんは、
陸地と砂で繋がった緑の島にある国を訪れました。

こんな辺鄙なところに攻めに来る国なんてないので、
城壁は、砂州(さす)が繋がっている位置に、
車両進入防止用に岩が適当に置かれているだけでした。

城壁の前で師匠と荷物持ちさんは車を降り、
その国の住人に入国の許可をもらいました。

城壁の隙間をくぐりぬける時、荷物持ちさんは、
岩に彫ってある文字に気がつきました。
岩の端から端まで、この国の名前が、
数千に及ぶこの国独自の文字で書かれていました。

荷物持ちさんは、そんなに長い理由を聞きましたが、
私達も知りません、と国の人は笑顔で言いました。

別の小さな岩には“1004”と数字が彫ってあり、
それが、今のこの国の人口でした。
変動があると、新しい岩に新たな数を彫り込むのだそうです。

師匠と荷物持ちさんは“公民館”で盛大な歓待を受けました。

食事は豪華ではありませんでしたが、
貧しく質素な国では食糧事情がギリギリなので、
師匠と荷物持ちさんは丁寧に礼を言ってから頂戴しました。

食事の後、島を案内してもらいます。
島全体が山で、この国の一番高いところには、
綺麗な水をたたえる池がありました。
雨季に降った雨を半年間蓄えておくための人工の池でした。

師匠と荷物持ちさんは公民館に戻り、
荷物持ちさんは、この国の名前はとても長いですよね?
覚えるのが大変では? と聞きました。

しかし、案内人だった1人が、遠巻きに見ている住人の中から、
“白い魚大好きちゃん”という女の子を呼び、
この国の名前を言わせました。

非常に長い「アジン・ダー」から始まる国の名前を、
女の子は喋り、他の国民が一緒に口を動かし、
女の子と一緒に間違えずにずっと言い続けました。

女の子は、見事に全てを言い切り、荷物持ちさんは喝采しました。

先ほどの、“白い魚大好きちゃん”と呼ばれた女の子ですが、
あれはあだ名ですね? この国では本名を隠し、
あだ名を常に使うのですね、と師匠が聞き、
案内人はそうですと答えました。

そこにいる皆でああだこうだと言い合って、
短い滞在の間、旅人の2人を呼ぶあだ名を考えることにし、
師匠は“流れる黒髪さん”、荷物持ちさんは“荷物持ちさん”
と呼ばれることになりました。

ちなみに、このブログ「ネタバレ解説、しまうました」で、
師匠の相棒の、少し背の低いハンサムな男のことを、
“荷物持ちさん”と呼んでいるのは、このエピソードが由来です。

師匠と荷物持ちさんはお客用の家に泊まり、
昼を少し過ぎた頃に出国しました。

出国して間もない頃、
緑色のジャケットを着た20代中頃に見える男と出会いました。
波打ち際には、小型エンジンや燃料タンクなど、
小さな舟を燃やした跡がありました。
男は、ここまでやって来た乗り物を、自らの手で放棄してしまったわけです。

男は師匠と荷物持ちさんに、あの緑の島の国で、
住人を皆殺しにするのだと言いました。

あの国の山の頂上の溜池に毒を入れるのだそうです。

その理由を訊ねると、復讐のためだと男は言いました。

15年前、あの国は、人口が1500人以上いたのだそうです。
あの領土では、
1000人くらいの人間を養うのがやっとといったところなのに、
完全に許容限界を超えていました。

それ以前の40年間に異常気象があり、雨がやたらに多く、
魚がやけに獲れ、当時の指導者たちは調子に乗って
“人口は千人と十からは増やしてはいけない”
という、有史以来続く国の禁忌をあっさりと破りましたが、
自然が、漁獲量が元に戻ったらお終いでした。

この先恐ろしい渇水と飢餓が襲うだろうと気づいた時、
指導者は揃いも揃って自殺しました。

10人ほどの集団の旅人がやってきて、
1500人は助けてくれと窮状を訴えました。

リーダーは、私達が全てを解決する、と言い、
役場にあった住人の名前と年齢、性別を調べたうえで、
“どの500人を殺せば人口のバランスを保ち残せるか”
を完璧に把握し、また遺児や遺族が出ないように、
必ず家族単位で、たった一夜に500人近く殺害しました。

男は10歳だったその日の夜、父と母と姉と妹2人を殺されました。
そしてリーダーは男にパースエイダーを向けて、引き金を引きましたが、
なぜか弾が出ませんでした。
“お前、生きたいか?”とリーダーに聞かれ、
男は“生きたいから連れていけ”と言いました。

男はこっそり彼らの仲間になって、一緒に旅をしました。

ちなみに、そのリーダーが女性であることを、なぜか師匠は知っていました。

半年前、いろんな国を荒らし回るお尋ね者だった彼らが、
優秀な追跡者に見つかり、殺されてしまいました。
男だけは、“水を汲みに行っていた”という理由だけで生き残りました。

男は死のうと思い、そんな時に、死んだ500人近い人間のことなど忘れて、
のうのうと生きている同胞のことを聞いて、
あいつらを殺して俺も死ぬぞ、と思ってここまでやって来たのだそうです。

師匠は男に名前を聞き、男は“ミライ・ツー”と答えました。

師匠と荷物持ちさんは男を見逃しますが、師匠は、
入国の時に一つ気をつけてほしいことが、と言いました。

あの国は、国名が昔と変わっています、
入り口にある石碑の名前を一度読んでから入るといいでしょう、
と師匠は言いました。

その次の日のこと、その国は――「名前が少しだけ変わり、
人工が1人増えました。

今頃、石碑を必死になって彫り直しているところでしょうかね?
と師匠は言いました。


というあらすじなのですが、その国の異常に長い名前は、
犠牲になった500人近い人達の名前を忘れないために、
そんな名前になったのでした。

ミライ・ツーという名前は、タイトルの3ページ目の最後の方に書かれています。

ミライ・ツーは石碑を読んでそのことを知り、その国の住人になり、
国の名前が変わった、というオチですね。


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