東野圭吾「危険なビーナス」のネタバレ解説

危険なビーナス


主人公の手島伯郎(てしま・はくろう)は、38歳前後の獣医です。

伯郎が院長代理をしている池田動物病院に、
矢神楓(やがみ・かえで)と名乗る女性から電話がありました。

楓は、伯郎の弟である明人(あきと)の妻だと言いましたが、
伯郎は明人が結婚していたことすら知りませんでした。
楓は、明人が行方不明で、もう何日も帰らないと言いました。

ここで回想です。

伯郎の父親は手島一清(かずきよ)という売れない画家で、
手島家の生活を支えていたのは看護師だった母親の禎子(ていこ)でした。

小さな借家の2階で一清が不思議な絵を描いていた記憶がありましたが、
その絵が完成することはありませんでした。
一清は伯郎が2歳の頃に脳腫瘍を発症し、伯郎が5歳の冬に亡くなりました。
一清はそれまで静物画を得意としていたはずなのに、
脳腫瘍を発症してから2年ほどが経った頃に、
伯郎の記憶にある抽象画を描き始めました。

禎子が働いている間、伯郎は近所に住む禎子の妹、順子の家に預けられました。
順子の夫である健三は大学の数学の教授でした。

一清が亡くなってから3年後、
伯郎は禎子の交際相手である矢神康治(やすはる)と食事をしました。
まだ30代半ばだった禎子は康治と結婚してもいいかという意味のことを言い、
伯郎は、いいよ、と答えました。

それからしばらくして、伯郎は康治の家である豪邸に連れて行かれました。

禎子が康治の両親に挨拶してくる間、伯郎は別室で待たされます。
その部屋に、勇磨という伯郎より2、3歳上の少年がやってきて、
やっぱり貧乏人だな、無理して一張羅を着てきたんだろ、
そういうのがだせえんだよ、貧乏人は、と言われました。
伯郎は、この日初めて、矢神家が大金持ちであることを知りました。

康治が戻ってくると、勇磨は部屋から出て行きました。

康治に別の部屋に連れて行かれ、康治の両親と引き合わされました。

それから2ヶ月後、伯郎は康治が買ったマンションに引っ越すことになり、
転校し、学校帰りに叔母の順子の家に寄ることができなくなりました。

それから3ヶ月後、禎子は来年、伯郎に弟か妹ができると言いました。

伯郎が9歳の時、異父弟の明人が生まれました。

康治の父親である康之介は、明人を可愛がり、
早い時期から高い教育を受けさせ、跡継ぎとして育てました。

ある日、禎子から中学受験をしてほしいと言われましたが、
伯郎は断り、公立中学校に進学しました。
それから数ヶ月後、養子縁組をして正式に矢神家の人間になる気はないか、
と禎子は言いました。

回想終わりです。

伯郎は、明人の妻の楓と待ち合わせをしました。
楓は茶色のカーリーヘアの美人でした。

明人は今、IT関係の仕事をしていて、半年ぐらい前から先月まで、
楓と明人はシアトルにいたのだそうです。

明人は4日前、帰国して2日目に行方不明になったのだそうです。
急に帰国したのは、明人の父、つまり康治がもう保たないから、
父親の死に目に会いたいなら帰ってこいと言われたからなのだそうです。

帰国してお見舞いに行こうと思ったその日に、
『ちょっとしたミッションがあるので出かけます。
もしかするとしばらく戻らないかもしれない。でも心配しなくていいです。
その場合、申し訳ないけど父の見舞いは君一人で行ってください』
と書き置きを残して、明人は姿を消したのだそうです。
携帯電話も繋がらず、メールを書いても応答なしでした。

2日間待ったが、明人からの連絡はなく、楓は地元の警察に届け出ましたが、
書き置きがあるというだけで事件性はないと判断されたのだそうです。

楓は、「お義兄さま」にも一緒にお見舞いに行ってほしいと言いました。
伯郎は嫌がりましたが、お見舞いに行っていないことを楓に責められ、
大学まで進めたのだって、獣医さんになれたのだって、
お義父様のおかげのはずです、恩返しって言葉、知らないんですか?
と言い、伯郎は承諾しました。

翌日の午後、楓は動物病院に来ました。

楓は、明人と会う前はJALのCAをしていて、
ステイ先だったバンクーバーにあるお寿司屋さんで、
カウンターで隣同士になり、出会ったのだそうです。
明人から、仕事の補佐をしてくれないかと頼まれ、
去年の3月にCAの仕事を辞めたのだそうです。

伯郎の車で、矢神総合病院に向かう途中、康治とは10年ほど会ってないと伯郎は言いました。
伯郎は康治の籍には入っていなくて、20歳になって間もなく、
本当の父親である手島姓を選んだ、という話をしました。

母親の禎子は16年前に亡くなりました。
10年前に康治と会ったのは、禎子の7回忌があったからでした。

再び回想です。
9つ下の異父弟、明人は極めて高い知能を備えていました。
この子は天才だね、と誰もが言いました。
ただ康治は、天才なんかじゃないよ、明人はせいぜい秀才だろう、
それでいいんだ、天才なんか、幸せになれないからな、と言いました。

公立高校に通っていた伯郎は焦りに似た感情を感じ、獣医になりたいと禎子に言いました。
神奈川県の大学に進学し、学生専用のアパートに引っ越しました。

4年生になり、解剖などの実践的な講義が始まった頃、康治から電話があり、
禎子が亡くなったと教えられました。
禎子の実家がある小泉の家の風呂場で頭を打ち、
そのまま気を失って湯船に……という事故だったのだそうです。

禎子は昨日、ちょっと荷物の整理をしてくる、
遅くなったら泊まってくると言って小泉の家に行きましたが、
今日になっても連絡がつかないので順子に様子を見に行ってもらったところ、
風呂場で禎子を発見したのだそうです。

警察の説明では、湯船の中で足を滑らせ、後頭部を強打して気を失い、
そのまま水に沈んだ可能性が高いのだそうです。
玄関の鍵はかかっていて、窓もすべて内側から施錠されていました。

中学1年生の明人と禎子が安置されている部屋で2人になると、
玄関の鍵なんて作ればいいんだ、合い鍵なんて、簡単に作れる、と明人は言いました。

回想終わりです。

伯郎と楓は矢神総合病院に行き、康治の妹の波恵(なみえ)と会いました。

楓は、明人が失踪していることは伏せ、新しいビジネスを開発中で、
どうしてもシアトルを離れられないと嘘をつきました。
去年の暮れにアメリカで結婚式を挙げたが、入籍はしていないという話をします。

康治は病気のせいで殆ど動くことができず、まともに話をすることもできませんでした。
しかし、伯郎が康治の顔に耳を近づけると、
「明人に、背負わなくていいと……」と言い、寝てしまいました。

矢神家の親戚が集まる親睦会で、遺産相続についても話し合われることになり、
明人の代理として伯郎にも出席してほしい、と楓と波恵の両方から頼まれます。
伯郎は嫌がりましたが、遺産の中には、禎子の遺品も含まれていると言われ、
出席することにしました。

見舞いの後、伯郎は港区にある明人のマンションに案内してもらいます。
非常に豪華な部屋で、後で分かりますが、家賃は120万円でした。

明人の部屋で小泉の家の写真を見つけ、写真立てを手に取ると、中に小泉の家の鍵がありました。

また、神経科医だった康治の元患者のサヴァン症候群の人が作った曲を聴きました。

明人によれば、一清の描いた絵を見た康治は、
これを描いた画家はサヴァン症候群ではないかと思い、画家のことを調べ、
画家の未亡人である禎子と出会ったのだそうです。

場面が変わり、また動物病院に楓がやってきます。
電車で移動中に、楓は友達が飼っていたミニブタが可愛かったから
自分も飼いたいという話をしました。
しかし伯郎は、その友達の家の広さがワンルームで、
最後にミニブタを見たのが2年くらい前で、最近、
その友達からミニブタの話を聞いていないと知ると、捨てたんだろう、と言いました。
ミニブタは1年で80キロぐらいになり、100キロを超えるものもあるのだそうです。

目的地である、伯郎の叔母の兼岩順子と憲三の家に到着します。
小学生だった明人は憲三の部屋で数学関連の資料や本を読み、
数学を勉強していた、という話を憲三はしました。

順子は、伯郎が見たがると思い、10畳ほどの和室に一清の絵をずらりと並べておきました。
しかし、伯郎が最後に描いていた、幾何学模様のような絵はありませんでした。
憲三は大学の数学教授を退職した後、リーマン予想について研究を続けているのだそうです。

楓は、今月7日に、明人が順子と憲三の家に電話したが留守だったみたいだ、という話をしました。

午後9時に兼岩家を辞去した後、今月7日といえば明人が行方をくらました日じゃないか、
あれはアリバイ確認だ、と伯郎は楓を責めました。

場面が変わり、伯郎が午後1時に池田動物病院でシマリスの診察をしているところに、
波恵から電話がかかってきます。
明日、親睦会があるので正午に来て欲しいという内容でした。

電話の後、院長の池田幸義(ゆきよし)老人がやってきて、
例の話をしたい、考えてくれたかね、と言いました。

池田は伯郎に、自分の養子になって池田動物病院を継いで欲しいと話をしていましたが、
伯郎はまだ結論が出ていませんでした。

通称として手島を使ったらどうだとか、
病院の名前を手島動物病院と変えてもいいと池田は言いますが、
無関係な名称に変更するのは筋が通りません、と伯郎は断りました。

動物看護師の蔭山元美(かげやま・もとみ)は、
私、どちらでもいいですよ、池田動物病院でも、手島動物病院でも、と言いました。

翌日、伯郎は明人のマンションに楓を迎えに行きました。
矢神邸に向かう途中、明人の失踪については隠しておくことや、
相続についての明人の以降を確認した、ということを打ち合わせしておきました。

矢神邸に着くと、波恵以外に6人の男女が待っていました。

まず、康治の次妹の支倉祥子(はせくら・しょうこ)、
その夫の支倉隆司(たかし)、その娘の支倉百合華です。
祥子は康之助の2番目の妻の子供で、康治や波恵とは母親が違います。
支倉夫妻は有料老人ホームを6箇所経営しています。
百合華はブックデザイナーです。

祥子と母親が同じ、祥子の弟の矢神牧雄(まきお)は50代半ばの不気味な人です。
牧雄は泰鵬(たいほう)大学医学部神経生理学科の研究者で、脳の研究をしていました。

後の2人は養子の、矢神佐代(さよ)と矢神勇磨でした。
佐代は銀座のクラブのオーナーママです。
居酒屋やダイニングバーのチェーン店を経営している勇磨は、
美人の楓を気に入り、口説き始めました。

食事後、一旦解散となり、勇磨が楓に、僕が邸内を案内しようか、と言い、
勇磨と楓は部屋を出ていきました。

伯郎は百合華に話しかけられました。
おかしいなあ、あんな軽い女に引っ掛かるようなタイプじゃなかったのに、
アキ君は、と百合華は言いました。
百合華は明人のことが好きだったのでした。

また、勇磨は康之助の子供だが、愛人に生ませた子供だ、という話を百合華はしました。
また、佐代は勇磨の母親なのだそうです。

話し合いの準備が整い、再び全員が集合します。

今から20年前に康之助が亡くなり、康之助の個人資産はすべて矢神明人に譲る、
という遺言状があったのだそうです。
しかし、当時の明人はまだ小学生で、
法定相続人には遺留分という最低限受け取れる額が決められています。
子供は、実子と養子合わせて6人ですから、
それぞれの遺留分は全財産の12分の1ということになります。

康之助は医療法人『康親会』の理事長で、矢神総合病院や老人保健施設『矢神園』など、
6つの事業を行っていました。
しかし、いずれも極めて深刻な経営不振に陥っていて、
銀行から融資を受けられた矢神総合病院と、支倉夫妻が引き継いだ『矢神園』を除いて、
4つの事業は閉鎖されました。
その過程で、康之助の資産は、100億円近くから10分の1以下にまで目減りしました。
しかもその半分近くが、この屋敷を含めた不動産だったので、
屋敷などは将来明人に譲るという前提で、現金だけを子供たちで分けることになりました。

康治が亡くなれば、当然明人が遺産を引き継ぎますが、
その前に康之助の遺産を整理しておく必要があります。
波恵は、掛け軸や壷、絵画といった品々がずらりと並んだ財産目録を皆に配りました。

2階の書庫に行き、その品々を全員で見ます。

牧雄は、康治のものである絵を気にしていました。
もしかすると、サヴァン症候群患者が描いたものでは?
と伯郎が訊ねると、牧雄は認めました。

かつて康治の共同研究者だったという牧雄は、
『資料・ファイル類』と記された段ボール箱も調べようとしていました。
動物実験も手伝ったんですか? と伯郎が訊くと、
科学の発展のためには何かを犠牲にしなければならないこともある、と牧雄は言いました。

康治の所持品に混じっていた禎子の荷物を調べると、家族のアルバムや、
一清の作品集を撮影した写真のアルバムもありました。
しかし、最後のページには何も貼られていませんでしたが、写真が剥がされた形跡がありました。
一清が死ぬ間際まで描き、とうとう完成しなかった絵です。
写真はありませんでしたが、書き込みがあり、絵のタイトルが『寛恕の網』だと判明しました。

佐代が近寄ってきて、気をつけたほうがいいですよ、その箱の中に、
禎子さんの遺産のすべてが入っているとはかぎらないということです、と言いました。

今後の方針を決めることになり、支倉隆司と勇磨がそれぞれ鑑定士を連れてくることになりました。

また、楓は明人の意向として、喜んで、亡き祖父の意志を継ぎたい、その際、
20年前に支払われた法定相続人への遺留分についても改めて精査を行い、
不正が判明した場合には、直ちに返還を要求する、と皆に伝えました。

車に戻ると、その明人の意向は楓のオリジナルだと楓は言いました。
また、勇磨から楓のスマートフォンに電話がかかってきて、ディナーに誘われ、楓は承諾しました。

伯郎と楓は明人のマンションに行き、禎子のアルバムを確認します。

その時伯郎は、康治を自分の父親だとは思えなかったという話をしました。

禎子と康治が結婚して、まだ何か月も経っていない頃、
泊まりがけで仕事をしている康治に禎子が着替えを届けに行くことになり、
8歳の伯郎も一緒に行きました。

泰鵬大学に着くと、康治は実験中で、若者に応接室に案内されました。
禎子がトイレに行き、伯郎はテレビとビデオデッキのスイッチを押しました。
すると画面に変化が起き、猫が映りました。
頭蓋骨に穴を開けられ、脳を露出させられ、脳に電流を流されていた猫でした。
禎子が戻ってきて、伯郎はテレビを消しました。
その後、伯郎は若者に案内され、ケージにいた5匹の猫を見せられました。
生気のない目を見て、伯郎は嘔吐しました。

それがトラウマになり、伯郎は康治を父親と思えなくなり、獣医になったのでした。

そのことを楓に打ち明けると、その時のお義兄様が……8歳の伯郎少年が今ここにいたのなら、
この手で抱きしめてあげるのに、と言われました。

場面が変わり、伯郎は禎子のアクセサリーやアルバムを、順子と憲三に見せに行きました。
伯郎は、スマートフォンで撮影していたサヴァン症候群患者の絵を憲三に見せました。
憲三は、これはフラクタル図形の一種だ、と言いました。
その後、勇磨と会っている楓が気になり電話すると、
今、明人のマンションにいると教えられ、伯郎はそこに駆けつけました。
正面玄関の前で勇磨と会い、嫌みを言われました。

あいつをたらしこんで、情報を引き出そうってわけか、と伯郎が言うと、
明人君の居場所を突き止めるためなら、あたしは何でもやります、と楓は言いました。

明人は生きてると思うのか、と伯郎が言うと、
楓は伯郎を引っぱたき、今夜は帰ってください、と言いました。

翌日、伯郎は喫茶店で楓と待ち合わせをし、小泉の家について話をしました。
あの家は禎子の名義になっていたので、康治だけではなく、伯郎や明人にも相続権があるはずでした。

いっそのこと、これから行っちゃいません?
と楓に言われ、車で1時間かけて、伯郎と楓は小泉の家に行きました。
その途中、昨晩、明人の消息について、無神経なことをいった、と伯郎は謝りました。

小泉の家は更地になっていたはずで、伯郎は更地になった写真も見ていましたが、
小泉の家は現存していました。
その写真は加工された画像だったのだと楓は言いました。

楓は明人の部屋に飾ってあった小泉の家の写真立ても持ってきていたので、
その写真立ての中の鍵を使い、家に入りました。

ブレーカーを上げると天井の明かりが点きました。
中は綺麗で、靴を脱いで上がります。

日本間に入り、子供の頃に祖母にプレゼントしてもらった空気銃で
襖や障子を穴だらけにしてしまったことを思い出しました。

母親のアルバムを楓と一緒に見ていると、老人が家に入ってきました。

老人はこの家の裏に住んでいるイモトで、伯郎も子供の頃に会ったことがありました。
イモトは康治に頼まれ、この家の管理や掃除をしていたのでした。

明人もここに来たことがあり、禎子が亡くなった風呂場を見ていたのだそうです。

老人が帰った後、伯郎と楓はこの家を見て回りましたが、何も見つかりませんでした。
明人は禎子の死に疑問を持っていたので、
この家を殺人事件の証拠物件として残す必要があると思ったんじゃないだろうか、
という結論になりました。

小泉の町を出た後、明人と楓の行きつけの店だというワインバーに行きました。
楓は、明人とこの店に来た時には、まず生牡蠣のセットを注文するのだそうです。

伯郎は、楓が佐代から貰っていた、佐代の名刺を見せてもらいました。

また、楓はサヴァン症候群の患者でフラクタル図形を描けるようになった人が
ほかにいもいるかどうかスマートフォンで調べ、
康治が所有していたのと同じ絵をブログにアップしていた主婦を発見しました。
その絵を描いたのは、その主婦の父親だったのだそうです。
伯郎はその主婦と連絡を取ることにしました。

伯郎1人で佐代の店に行くことになり、楓と別れると、
伯郎は小学生の頃の明人が牡蠣が嫌いだったのを思い出しました。

銀座8丁目にある佐代の店『クラブ CURIOUS』に行くと、
VIP席に案内されました。

佐代は、矢神総合病院はすでに経営が破綻していて、銀行の支配下にあり、
矢神邸も今後の状況次第ではどうなるかわからない、という話をしました。

伯郎は1度店を辞去してから、唐突に閃いたことがあり、店に戻って、
アルバムから剥がした写真を出し、説明を求めました。

向かいのビルの地下にあるバーで待ち合わせをし、佐代と再び話をします。

実家のアルバムに、禎子と佐代が一緒に映った写真があったのでした。
佐代は禎子と高校3年生の時、同じクラスで、同窓会で再会したのだそうです。

禎子の夫の一清は脳腫瘍の影響で、しばしば錯乱状態になっていて、
そのことを知った佐代は、康之助に何気なく話しました。
すると康之助は、康治に任せてはどうかと提案したのだそうです。
当時康治は、脳に電気を流すことで痛みを和らげたり、
精神的な疾患を改善するという研究をしていたのだそうです。

康治の治療で一清が錯乱することはなくなりましたが、
見た目には快方に向かっているようでありながら、
じつは急速に脳腫瘍は悪化していて、やがて亡くなりました。

康治は、自分が施した治療が原因ではないかと考え、
2度と同じ過ちは犯したくないといっていたのだそうです。
また、禎子は佐代に、自分はすでに貴重すぎて手に余るほどのものを康治から貰っている、
と言っていたのだそうです。

場面が変わり、池田動物病院に百合華がやってきて、
百合華と明人の共通の友達は明人が結婚したことを誰も知らず、
明人に電話しても繋がらない、と言いました。
しかし蔭山元美が口裏を合わせてくれて、百合華は帰っていきました。

その後、楓と矢神総合病院に向かう途中、百合華から聞いた話を楓に話すと、
明人が誰にも知らせていなかったことは楓も知らなかったようでした。
その理由は、サプライズ狙いかな、帰国した時、みんなを驚かせたかったとか、
と楓は説明しました。

伯郎1人で康治の病室に行き、
楓がナースセンターに電話して波恵を呼び出して時間を稼いでいる間に、
伯郎は康治に大きな声で話しかけます。

お袋に……禎子に何かあげましたよね、貴重な何かを、それって何ですか?
と伯郎が訊くと、康治は、「明人、恨むな……」と言いました。

その後、伯郎と楓は、例のブログの主婦、仁村香奈子(にむら・かなこ)と
東白楽駅の近くにある喫茶店で会いました。

香奈子の父親は銀行マンでしたが、居眠り運転で電柱に激突し、脳に重度の損傷を受け、
ある時期から急に奇妙な絵を描くようになりました。
ふつうのサヴァン症候群とは違う、後天性サヴァン症候群の研究のために、
康治が訊ねてきて、脳の状態を細かく調べる代わり、
香奈子の父の看護はすべて引き受けることになりました。

康治は、後天性サヴァン症候群の発症、つまり、
人為的に天才脳を作りだす研究をしていましたが、康治はそれを発表せず、
研究自体をやめてしまった感じでした。

その後、伯郎は1人で動物病院に戻りました。
楓が勇磨とこれから会うとメールで知り、電話しましたが、
話の途中で切られてしまい、その夜は眠れませんでした。

翌日の夕方、楓は勇磨を連れて動物病院にやってきました。

勇磨は、明人がシアトルにいるのか、海外の伝手を使って調べてもらい、
楓と2任で日本に帰ったと知ったのだそうです。
楓は事情を全部勇磨に話してしまいました。

勇磨は、明人が失踪しているのを隠しておく見返りとして、
後天性サヴァン症候群に1枚噛ませてもらうことにしたのだそうです。

勇磨の提案で、伯郎と楓と勇磨は牧雄の住むアパートに行きました。

伯郎達が説得し、牧雄は後天性サヴァン症候群の研究について話しました。
康治は、一清の脳腫瘍が急速に悪化したのは電気刺激治療にあるのではないかと疑い、
人体への施術は一切見合わせることにし、動物実験が主になりました。
しかし猫は絵を描かないし、楽器も演奏しないし、
天才脳を獲得したかどうかを確認する術がありませんでした。

康治は、事故あるいは病気によって脳を損傷したしたせいで、
それまではなかった特殊な才能を発揮した例があるはずだと考え、
仁村香奈子の父親などのデータを集め、仮説の正しさを証明しつつありましたが、
ある日突然、康治は後天性サヴァン症候群の研究から一切手を引きました。
また、その研究データも行方不明でした。

牧雄の部屋を後にした伯郎達は、その研究データは小泉の家にあると考え、
明日、家捜しすることにしました。

勇磨が楓を明人のマンションに送っていき、伯郎は順子と憲三の家に行き、
小泉の家で見つけたアルバムを順子に見せました。
憲三はもう寝ていました。

どこにあったの? と訊かれ、
伯郎が禎子から預かっていたのをクロゼットの奥にしまいこんでいて、
たまたま見つけたのだと説明しました。

伯郎は、小泉の家に書類なんかを隠せるところがあったのを
知らないかと訊きましたが、順子は知らないと言いました。

もう午前1時でしたが、伯郎は、これから小泉の家に行って家捜ししようと思い、
明人のマンションに行きました。
コインパーキングに勇磨の車が駐まっているのを見つけ、部屋に押しかけました。

楓は、明人が撮影したと思われる小泉の家の写真を勇磨に見せていたのだと説明しました。

楓は伯郎の車に乗り、勇磨は自分の車で、小泉の家に向かいます。

伯郎は、明人が戻らないと楓が諦める日が来たら、
楓の力になりたいと思う、という意味のことを言いました。
その勢いで告白しようとしますが、今夜は、そこまでにしておいていただけませんか、
その続きを聞くのは今ではないと思いますので、と楓は言いました。

小泉の家に到着し、手分けして家捜しをすると、
勇磨は天井裏で『後天性サヴァン症候群の研究』というレポートを発見したと言いました。
しかし、天井裏は前回この家に来た時に伯郎が調べたはずの場所で、伯郎は釈然としませんでした。

午前4時に解散し、勇磨は帰っていきました。
伯郎も楓と帰ろうとしましたが、突然閃き、急ブレーキを踏みました。

伯郎と楓は夜道を歩き、小泉の家に引き返します。

家の中に誰かがいて、照明をつけました。

伯郎はインターホンを鳴らして家に入ります。

居間に「順子の夫の兼岩憲三がいました。
憲三は、伯郎と順子の話を立ち聞きして、伯郎が古いアルバムを持っていたことに驚き、
この家が今も残っていたことを初めて知ったのでした。

もし康治の報告書を見つけられなかったら、朝まで伯郎達は家捜しをしていたので、
それを終了させるために、先回りして天井裏に報告書を置いたのでした。

16年前、憲三は一清が描いた『憤怒の網』を探しにこの家に来たことを話しました。

『憤怒の網』は、素数の分布に法則性があることを示す『ウラムの螺旋』の表現方法を変えたものでした。
康治の『明人、恨むな……』は本当は『明人、ウラムの……』と言っていたのでした。

しかし、一清はその絵を描くのをやめました。
一清がこの世を去った後、『憤怒の網』が消えていたのを憲三は知りました。
一清が処分したと憲三は思っていましたが、
明人が禎子のアルバムから剥がしてきた『憤怒の網』の写真を見て、動揺しました。
その日付は、一清が亡くなった時より、ずっと後だったからでした。

憲三は順子の鍵を使い、小泉の家に忍び込み、絵を探しました。
しかし禎子は、イモト老人から、時々電気がついていることを教えられ、
憲三を待ち伏せしていました。

禎子は、順子に電話をかけて教え、絵を燃やすと言いました。
憲三は電話を取り上げようとし、揉み合いになり、折り重なるように倒れ、禎子は脳震盪を起こしました。
憲三は禎子を風呂場まで運び、事故に偽装して殺したことを告白しました。

明人を監禁したのも憲三でしたが、間もなく解放されると憲三は言いました。
憲三は、この家はないと思っていたから、『憤怒の網』は康治の元にあると思い込んでいました。
康治が死んで遺品が出揃うまでの間、明人を監禁すれば、
伯郎を通して兼岩家に『憤怒の網』も来るだろうと予想し、明人を監禁したのでした。

罪を告白した憲三は、灯油をまいて火を放ちました。
しかし、楓が憲三を抱え上げて家の外に出ました。

伯郎は燃える家を見ながら、子供の頃、空気銃で襖を穴だらけにしたのを思い出し、
家に飛び込みました。
襖にスコップを突き立てると、『憤怒の網』が見えましたが、焼けた天井が落ちてきて、
『憤怒の網』が隠された襖にも燃え移ろうとしていました。

伯郎は襖に近寄ろうとしましたが、明人に腕を掴まれ、
絵なんか、どうでもいいじゃないか、たかが絵だ、逃げよう、と言われ、家を出ました。

伯郎は小さな警察署に連れていかれ、応接室のような部屋で眠ってしまいました。
午前7時に目覚めると、明人から事情を説明してもらえました。

明人がシアトルから帰国すると、成田空港で警視庁の人間が待ち受けていたのだそうです。
警視庁のサイバー犯罪対策課は、インターネットを通して、
明人の拉致、監禁を実行してくれる人間を募っている者がいるのを知り、
警察は明人を待ち伏せしていたのでした。
警察は、明人を実際に監禁したように見せかけ、相手の出方をうかがう作戦を考えました。
明人は、犯人が親戚の人間にいると考え、警察に協力するから、
禎子の死を再調査してほしいと頼みました。

明人がそこまで話したところで、女性警察官の制服に身を包んだ楓が入ってきました。
楓は潜入捜査官で、明人は独身だったのでした。

2日後、康治が死んだ、と明人から連絡が入りました。
憲三が逮捕されたことを知り、順子は倒れ、入院していました。

通夜の焼香の後、明人は、例の後天性サヴァン症候群の研究報告書をビジネスに使うのはやめ、
明人が保管しておくと話しました。
報告書の最後のページには、
『天才が幸せをもたらすとはかぎらない。不幸な天才を生むより、幸せな凡人を増やす努力をしたい』
と書かれていたのだそうです。

明人は勇磨と2人でこのおちぶれかけている一族を建て直すことにしたのだそうです。
また、明人は百合華と付き合うことになったようでした。

後日、伯郎は池田老人の養子になり、池田動物病院を引き継ぐことを決めました。
また、ミニブタを飼うことにしたので、アドバイスをいただこうと、楓が動物病院にやってきました。
楓は伯郎のことを『伯ちゃん』と呼び、ミニブタって病気しがちらしくて、
これからながーい付き合いになると思います、よろしくね、伯ちゃん、と言ったのでした。


というあらすじなのですが、凄く面白かったです。

ただ、勇磨に対してヘイトが溜まったので、
一度くらいは勇磨にぎゃふんと言わせてやりたかったですが。                  スポンサードリンク

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