時雨沢恵一「キノの旅」10巻7話「歌姫のいる国」のネタバレ解説

今回は8巻エピローグの「船の国」と同じく、中編です。

10巻は全部で270ページほどですが、
160ページ以上を「歌姫のいる国」が占めています。

キノとエルメスは円形の広い国にやってきました。

街角の電柱に設置されたスピーカーから、
ラブソングが流れ出しました。

歌い手の女の子の上手さと声の美しさが存分に引き立つ、
爽やかな歌でした。

キノはエプロン姿の中年の女性に話しかけられ、
そのラブソングは、
この国が誇る国民的人気の歌姫の歌だと教えられました。

2年ほど前に、とある小さな会社が、
国民全員に愛される歌手を生み出そうとオーディションをし、
デビュー以来あっという間に大人気になったのだそうです。

中年の女性は、
長い金髪の12、3歳のきれいな少女のブロマイドをキノに見せた後、
ここ何十日も、歌姫が皆の前に姿を現してくれない、という話をし、
嘆き悲しみ、歩いていってしまいました。

その後、キノは髭面で五十路の知り合いの男に話しかけられます。
五十路の男は商人で、馬車で部下と旅をしています。
男は、明後日、キノと同じ日に出国し、キノと同じく西に行く予定なので、
また一団の護衛と部下の鍛錬をお願いしたいと頼みました。

報酬として、同行中の全ての食事を出すと言われ、キノは承諾しました。

大きな荷物があったら次の国までは運ぶよ、
エルメス君じゃ運べないものを買いつけるといい、ということや、
この国は貧富の差が激しいということなどを話して、男は去っていきました。

キノはエルメスの修理のため、修理屋を探します。

一方その頃、エリアスという12歳ほどの貧しい少年が、
国の中央部の建設現場で働いていました。

休憩になると、エリアスは、隣の建物の1階にある店に貼られた、
12、3歳の歌姫のポスターを見に行きました。
店主はエリアスのような貧困層には10年働いても買うことができない、
たいそうな値段のついたラジオつき蓄音機で、
エリアスに歌姫の歌を聞かせてあげました。

休憩から戻ると、今日の仕事はなくなったと言われ、
人を減らすことになったと言われ、エルメスはクビになってしまいました。

エリアスが自宅のある貧困街に戻ると、
ロブという20代後半の男に、
金持ちの誘拐の仕事をしないかと話しかけられました。

エリアスは断りましたが、
この国では誘拐される方も誘拐保険に入っていて、ちゃんと金を払うし、
人質は無事解放される立派なビジネスであるとか、
ラジオ付き蓄音機や歌姫のレコードがほしいんだろと説得され、
小さく頷いてしまいました。

場面が変わり、ロブが、髭面で体格も立派な40代の男、ユアンと、
小柄で髪をそり上げた、40過ぎの男、ケインに対して、
エリアスは使えると説得していました。

エリアスは今までちゃんと働いていたので前科がなく、
あの町で警察に目をつけられていない稀有な存在で、
誘拐した子供をエリアスの部屋に置いておき、
お守りをさせるのにちょうどいい、ということを、ロブは主張しました。

場面が変わり、エリアス達が乗っている車は、
郊外の道を走っていました。

前の高級車へと追いつき、ロブが警笛を鳴らし、
ケインが粘着剤のついた煙幕弾を高級車に投げました。

車の後ろが燃えてるぞ! 危ないから止まれ!
と叫び、高級車を止めさせます。

中に乗っていた運転手とボディガードと、
ピンク色のワンピースを着た女の子が出てきました。
ケインが運転手を黒い棒で殴り、ユアンがボディガードを殴り、倒しました。

ユアンは女の子の口めがけ、小さなスプレーを突きつけて噴霧し、
眠らせました。

女の子はエリアスと同じくらいの歳で、
髪はややくすんだ赤毛で、長い三つ編みを左右に垂らし、
顔には、鼻を中心にたくさんあるそばかすが目立っていました。

女の子を乗せた車の中で、ユアンは、
あの高級車には構造上の欠陥があり、排気管の熱で、
ボディが焦げる事故が頻発していたので、
後部からの煙をそれと思いこみ、運転手は停車してドアを開けてしまった、
という話をしました。

夕方、エリアスの部屋で目覚めた女の子は、誘拐されたのを知り、
サラ・ローレンスという名前と、住所、電話番号、
秘密の暗号の“白い服と帽子”をユアンたちに教えました。

金持ちの子供は、誘拐されたら一切抵抗せずに名前と住所と電話番号、
本人であることを確認する暗号を伝えることになっているのでした。

子供のエリアスがいるのを見て驚いたサラに、
ユアンはエリーという偽名でエリアスを紹介しました。

サラは強気な態度でエリアスを小馬.鹿にしましたが、
大人3人が部屋を出て行くと、小さく震え、半泣きになりました。

エリアスはサラにパンをあげ、お互いの身の上話をします。
エリアスにはもともと母親しかいなかったが、
2年前に病気で死んだという話をします。

サラも両親がいなくてちゃんと自分でも働いているという話をしました。

エリアスは先月12歳になりましたが、
サラは来月13歳になるという話をしました。

……個人情報をペラペラ喋るなんて、エリアスは犯罪に向いていませんね。

一方その頃、背広姿の男達が何人も集まった豪華な応接室で、
執事が誘拐犯と電話をしていました。
夕方日の入り直後に身代金の受け渡し時間を指定されます。

そこへ、血相を変えた中年男が飛び込んできて、
死んだ……、たった今、連絡があった……と言いました。

部屋にいた男の1人が、人差し指を向けて、親指を立てて、
無言のまま、執事をパースエイダーで撃つ仕草をしました。
さらに、手のひらを自分の首の位置で水平に動かし、
“首を切れ”というジェスチャーをしました。

執事は誘拐犯に、お金の準備に時間がかかってしまいます、
受け渡しの待ち合わせ、夜になりませんでしょうか? と話しかけました。

また場面が変わり、キノとエルメスのホテルへ誰かがやってきて、
腕を見込んで、頼みがあります、と言いました。

夜になり、ユアン、ケイン、ロブの3人は森で身代金を待っていました。

予定と違い、執事ではなくキノがやってきて、
“白い服と帽子を買いに来ました”と言いました。

キノは札束がぎっしりとつまったアタッシュケースをケインに渡します。

ユアンは、エリアスの部屋の住所を教え、
そこに、同じ年頃の男の子と一緒にいる、
我々がパースエイダーで脅して部屋を使わせた、
被害者の1人だから、彼も“白い洋服と帽子”と一緒に保護してやるように、
警察に伝えろ、とキノに言いました。

ケインがケースを閉じると、エルメスがカウントダウンを始めました。

取り引きが終わり、ユアンとケインとロブはキノから遠ざかります。

どういうつもりですか? とロブが訪ねると、ユアンは、
あの坊やの仕事は、今日で終わりだ、と言いました。
エリアスの分け前は口座を作ってそこに入れ、ほとぼりが冷めた頃に、
レコードと一緒に通帳を送るつもりでした。

また、ユアンとケインは今回で誘拐の仕事を引退し、
手にした金で、地元で店を始め、家族と一緒に暮らすと言いました。

エルメスが200を数えた時、ケインの持っていたアタッシュケースが、
爆発し、ユアンもケインもロブも死んでしまいました。

キノは全員死んでいることを確認し、あと1人だ、と言い、
さっき教えられた住所に向かいました。

一方その頃、エリアスは部屋で寝てしまっていました。

深夜、エリアスは車のヘッドライトで目覚めました。

カーテンを少し開けて外を見ると、
制服を着た警官がパトカーから降りてくるのが見えました。
エリアスはサラを起こし、変装のため自分の服をサラに着せ、
逃亡してしまいます。
しかし警官は、盗品のタンスが隠されているとタレコミがあり、
調べているだけでした。

そこへ、キノがやってきて、エリアスの小屋に入り、
狙っていた相手に逃げられていたことを知りました。
キノはそのベッドで仮眠をとりながら、
エリアスとサラの帰宅を待ちます。

一方、逃亡していたエリアスとサラは橋の下で口げんかしていました。
エリアスは疲れて眠ってしまいますが、
サラは当たり前のようにエリアスに毛布をかけてあげ、
残りの毛布に包まってエリアスの隣で眠りました。

朝、起きたエリアスは、今からみんなを探して合流する!
と言い、蓄音機を買うためにお金を貯めていた貯金箱を壊し、
少ない金額の貯金で朝ご飯を食べて、馬車に乗ることにしました。

一方、キノは誰も戻ってこなかったので、移動を開始していました。

エリアスとサラは馬車に乗り、ロブの車を見つけ、
森の中に入り、3人の無残な躯を発見しました。
サラは悲鳴を上げました。

サラは、やっぱり殺そうとしているんだ!
“彼女”が死んじゃったんだ! 私にも死んでほしいんだ!
と叫びました。

エリアスは、僕が……、守らないと……、と言い、
死体からパースエイダーを拾い、少し射撃練習をした後、
パースエイダーと財布を持ってサラと逃げることにしました。

そこから数百メートル離れた森の中で、キノが『フルート』を構え、
狙撃しようとしていました。
しかし、引き金を引こうとした時、
『フルート』のバレルの先端に、小さな鳥が一羽留まったせいで、
狙撃できませんでした。

エリアスとサラは貧困街の裏路地に移動していました。
エリアスは、サラに説明を求めますが、
サラは、だって私はいらないんだもん!
役に立たなくなっているんだもんっ! と叫ぶばかりで、
エリアスには意味が解りませんでした。

そこへ、不良5人組が現れ、サラを連れて行こうとしました。

しかしエリアスは、僕はその子を守らないといけないんです……、
今はもう生きていない人と、約束したんです……、
と言い、リーダーの腕を撃ちました。

どっか、行ってください、お願いします、とエリアスが言うと、
5人は遁走していきました。
エリアスとサラも、5人とは反対側へ逃げます。

昼過ぎ、キノも貧民街にやってきて、
12歳くらいの少年とおさげの少女を見なかったかと聞きこみをしていました。

キノは、腕から血を流したリーダーの少年と、おろおろしている4人の少年を見かけ、
22口径で低速の弾道の傷跡ですね、撃たれてから、さほど経っていませんね、
と話しかけました。

おさげの女の子を連れた12歳くらいの少年に撃たれたのではないかと質問します。
リーダーが、関係ねえだろ! と言い放ち、
キノは『森の人』を向けて答えさせました。

一方、エリアスとサラは貧困街から抜け出て、
トラックを運転していた農夫のおばさんに手を振り、
隣町までという約束で助手席に乗せてもらうことに成功しました。

しかし、キノがターミネーターのように追いかけてきて、
トラックの中にエリアスとサラがいるのを確認し、『森の人』を抜きました。
キノは威嚇射撃をし、「止まれ!」と大声で叫びましたが、
「止まるなぁ!」とエリアスが叫び、パースエイダーをおばさんに向けました。
おばさんは緩みかけていたアクセルを乱暴に踏み、乱暴に加速していきます。

エリアスはおばさんにパースエイダーを向けて、
一気に川に下りて、そのまま川を渡らせました。
川を背にして、畑の中を、その先に見える森へと遁走します。

モトラドで川を渡ることはできないので、キノは手前の橋に戻り、
タイヤ痕を追いかけることにしました。

森の入り口で、エリアスはおばさんに謝り、
手持ちのお札のすべてを渡そうとしましたが、
彼女を連れて、逃げます、とエリアスが言うのを聞いて、
その金はあんたが持っていき、家出か何かか知らないけど――、まあ、訳は聞かない、
とおばさんは言いました。

おばさん、かっこいいです。

エリアスとサラは薄暗い森へと入っていきました。

遅れて、キノもその足跡を見つけ、エルメスを残し、
『フルート』を持って森へ入っていきました。

丸太の橋の下で、エリアスは偽名のエリーではなく本名を名乗り、
サラが見捨てられた理由を訊ねました。

するとサラは、ラブソングを歌いました。
物語冒頭で、キノやエリアスが聞いていた、あの歌姫の歌声でした。

回想です。
ちょうど1日前、キノはホテルの食堂で、背広の男達に、
誘拐犯の殲滅を頼まれていました。
さらに、男達の会社の恐ろしく重要な機密を知ることができた
人質も抹殺してほしいと男達は考えていました。

キノは「師匠の話を思い出した」と言いましたが、
これはおそらく6巻4話「長のいる国」のことでしょうね。

男達は報酬として、宝石のぎっしり詰まった箱と、
金属の固まりを取り出しました。
それは、摩耗しかかっている、キノが探していたエルメスのパーツでした。
しかしこの国には規格品がなく、一品物を造ってもらうと、
猛烈な金額になるものでした。

キノは諦めて、次の国に望みを託しましたが、
次の国にあるとは限りませんよ、もしあっても、また猛烈に高価では?
すぐにできあがるものでなかったら? と男は言い、
キノはその仕事を引き受けました。

回想終了です。

歌姫の歌を歌い終えたサラは、“歌姫”なんて――、本当はいないの、
と言いました。
本当は、偽者の歌姫が2人いるだけなのだそうです。

写真に写ったり、ラジオで喋ったり、
映画の画面の中で歌うフリをするための歌姫と、
歌うだけの歌姫であるサラがいるだけでした。

サラはもともと孤児で、小さい頃から歌が上手でした。
2年前、歌姫のオーディションが行われたことになっていましたが、
お人形さんのように美しくて可愛らしい“あの子”が選ばれることも、
サラが歌うことも、最初から決まっていました。

サラは“あの子”みたいな綺麗な髪も顔も持っていませんでしたが、
“あの子”は『私はあなたみたいに歌えない。だからこれでいいの。
2人で1人。頑張りましょう』と言ってくれ、
サラと“あの子”は2人で1人の歌姫になりました。

しかし、最近、“あの子”はずっと病気だったせいで休んでいました。
サラが誘拐されたのと同じ頃に“あの子”が死んでしまい、
サラはいらなくなったのでした。
必要だったのは“私達”だったの、“私”はもう、いらないの、
とサラは言いました。

“歌姫の半分”でも“人質”でもない、僕は“サラ”を守るんだ、
絶対に殺させないから、とエリアスは言い、
2人はしっかりと抱き合いました。

キノは300メートル離れた位置から『フルート』のスコープを覗きながら、
そこの少年――、君は殺したくはないんだ、それなのにどうして君は、
そうやって何度も何度もボクの邪魔をするのかな?
とつぶやきました。

エリアスとサラの話が終わり、サラの頭に狙いをピタリとつけて、
引き金に指が触れて、その視界が急にぼやけました。
急に降ってきた雨のせいでした。

キノは水煙の灰色に包まれた森の中を走り、丸太橋まで行きましたが、
そこに2人はいなくて、足跡も雨で消えていました。

キノは今日はもう止めて、ホテルに戻り眠りました。

エリアスとサラは農具小屋で眠りについていました。

次の日の、キノが入国してから3日目の朝、
キノは、もしボクがその子だったら――、自分の命を守るため、
決定的な物的証拠を持ち出してどこかに持っていくのではないか、
と考えていました。

男達は、証拠があるのは事務所や、住んでいた家くらいで、
両方ともあからさまに多くの人間が見張っているので近づくはずはない、
と言いました。

キノは、その家にいる人達を今すぐ全員引き払わせ、
そこで待ち伏せすることにしました。

その時、エリアスは、
サラが歌姫の歌を歌っていた証拠があればいいんだ! と言いました。

サラは、ある時、歌の収録が失敗して、使えなくなった音源が家にあり、
それには、歌姫の彼女の話し声とか、
サラがどう歌えばいいか歌の先生に聞いている声とか、
まわりの大人の声とか、いろいろ入っていることをエリアスに言いました。

エリアスはそれを奪いに行こうと言いましたが、
それじゃあエリアスは捕まっちゃう! 誘拐犯になっちゃう!
とサラは言いました。

サラが死ぬよりはいい、僕は、レコードがほしかったんだ、歌姫の、
でも、どんなに働いても何年経っても買えないって分かっていた、
どんなにお金が入っても、歌姫が死んじゃったら意味がないんだ、
大丈夫だよ、刑務所だって、ラジオは聴かせてくれるよ!
とエリアスは言いました。

じゃあ、その後は私がエリアスを助ける!
将来、私は私として歌を歌って、お金をたくさん稼いで、
エリアスを助けてあげるからね!
とサラは言いました。

一方、キノはとても大きな豪邸の庭で待ち伏せしていました。

タクシーでエリアスとサラが家にやってきたのを、
真向かいの屋敷で見張っていた背広の男2人が見つけました。

男の1人がライフルを構えてサラを殺そうとしましたが、
サラに情が移っていたため、撃てませんでした。

エリアスとサラは廊下を走り続け、
突き当たりの部屋のドアを開けると、キノが先回りしていました。

キノはサラを『森の人』で撃ち殺そうとしますが、
真向かいの屋敷にいた男が、キノの腕を撃ってしまい、
エリアスとサラは逃げました。

真向かいの屋敷にいた男は、嫌だ……、やっぱりこんなのは間違ってる……、
お嬢様はあそこにいるじゃないか? 俺たちは何をやっているんだ?
と錯乱していました。
もう1人が、彼の頬を殴り、男は昏倒しました。

エリアスは逃げ込んだ部屋で、廊下にいるキノに消火器の消火剤を噴霧し、
キノがいたはずの場所に向けて、狙いもつけずに乱射しました。

キノは消火剤の噴霧が始まると即座に中庭へと避難していました。

キノは、キノから見て右側へ、廊下をエリアスとサラが逃げていくのを見て、
こっちはこっちで、やり方を変えるか、と言いました。

『フルート』を、廊下めがけて乱射し、
緑色の液体燃料が詰まった小瓶を取り出し、瓶の口を、
導火線付きのものに取り替えて、先端にマッチで火をつけ、
勢いよく放り投げ、爆発させました。

散々撃たれ、爆弾を投げられ、サラはパニックに陥っていました。
その部屋へ、キノが近づいてきます。
エリアスはキノにパースエイダーを向けて撃ちますが、
キノは自分のパースエイダーでエリアスの武器を弾き、
弾は天井に当たりました。

残弾ゼロになると、キノはエリアスの腹を蹴りました。
エリアスは割れたガラスの上で尻餅をついて、手や尻を細かく切りました。

サラは、キノが2日前の朝に聞いたあの歌を歌っていました。

お前なんかに、世界一の歌姫を殺させるもんかあっ!
とエリアスが叫び、ガラスの破片を拾い、突進してきました。
キノはヒョイと足を引っかけて、エリアスは簡単に転びました。

キノはこの時点で初めてサラの事情を知り、詳しく説明してもらいます。

しかしボクも、“仕事”はしないといけないんですが、
とキノは言い、
ああ――、そっかー、別の“仕事”があった――、
と何かに気づきました。

キノはサラの目の前に立つと、「悪いですね、と言い、
その首筋でナイフを走らせました。

一方、燃える家のまわりには、背広の男達が集まっていました。

キノがエルメスに乗って出てくると、大きな袋を取り出しました。
クリーム色の布製の手提げで、中は大きく膨らんでいて、
じっとりと赤く染まっていて、袋の端から、
赤毛の2本のおさげの先が、飛び出していました。

仕事は完了しました、もう1人の少年も、今頃はあの中で燃えているでしょう、
とキノは言いました。
袋を渡そうとしましたが、誰も受け取ろうとしないので、
キノは袋を燃えさかる家の中へと投げました。

キノは、血で真っ赤に染まった手のひらを男に差し出しました。
男の1人が、金属の部品と、宝石の入った箱を手に載せました。

ボクを撃ったのは、どなたです? “へたっぴ”とお伝えください、
とキノは言い、エルメスに乗って走り出しました。

人殺しめ、地獄へ落ちろ、と男の誰かが言いました。

秒数を数えていたエルメスのカウントが200に近づくと、
キノは宝石箱を池へ放り投げました。
箱は派手に爆発しました。
やれやれだ、どうにも分かりやすい人達だね、とエルメスが呆れ、
まずは商人さんに会わないと、とキノは言いました。


場面が変わり、キノは国の外で、商人の馬車の一団の左斜め後ろを、
低速でトロトロと走っていました。

キノが食べるはずだった豪華な食事は、「馬車の幌に乗っていた、
短い髪の少女と、手に包帯を巻いた少年が食べることになりました。

下水に汚れた服を着ている2人は、生まれ個K票の城壁を見ました。
少年はキノを睨み、少女は小さく微笑みました。
少女はすうっと息を吸って、歌を歌い始めました。
商人は慌てて振り向いて、歌い手の姿を見て絶句し、その顔が綻びました。


というあらすじなのですが、キノは冒頭の商人の、
『大きな荷物があったら次の国までは運ぶよ。
エルメス君じゃ運べないものを買いつけるといい』
という言葉を思い出し、別の“仕事”として、
エリアスとサラを次の国まで逃がすことにしたのでした。

キノが男達に見せた布製の袋に入っていたのは、
メロンか何かと、ナイフで切り取ったサラのおさげだったのでしょう。
袋についていた血は、
手をガラスで切って鮮血を流していたエリアスのものでしょうね。

ところで、キノの気が変わってサラを助けた理由のひとつには、
1巻5話「大人の国」で、初代キノから、
『キミは歌が好きなら、そしてこんなに上手く歌えるのなら、
歌手になるのはどうだい?』と言われていたから、
というのがあるかもしれませんね。


また、この10巻が発売されたのは2006年の10月ですが、
2008年8月に開催された北京オリンピックでは、
開会式の歌を歌っていた歌姫の少女、林さんが実は口パクで、
本当に歌っていたのは別の少女、楊さんだった、という事件がありました。
林さんは容姿は抜群で、楊さんは歌声は抜群、
という理由で、2人を組み合わせたのだそうです。

まるでその事件を予言していたかのような話で、
今読むと別の驚きがありますね。 見やすい記事一覧はこちらです。
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