湊かなえ「告白」第1章「聖職者」のネタバレ解説

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)


湊かなえさんのデビュー作です。

第1章「聖職者」は、中学校の理科教師の森口悠子が、学年最後の終業式の日に、
受け持ちの1年B組の生徒たちに向かって、
一方的に話しかけているという独白形式で書かれています。

森口悠子という氏名は、1章には出てこないのですが、
名前がないとあらすじが書きにくいので、そう呼ぶことにします。

この中学校では、
『厚生労働省・全国中高生乳製品促進運動』のモデル校に指定され、
終業式の日まで生徒たちは小さな紙パックの牛乳を飲まされていました。

普通、給食のない日は牛乳は出ないので、
そういった不自然さをなくすための設定でしょうね。

牛乳を飲み終わった生徒は、紙パックを自分の番号のケースに戻し、
席に着きます。

30歳前後のシングルマザーの森口は、一人娘を亡くし、
それがきっかけで教員を辞職することになった、という話を始めます。

森口は、家が貧乏で、
教員になると奨学金の返済が免除になるという理由で、教師になりました。

最初は都市部のM中学校で3年、1年休職し、
このS中学校で4年、教員として勤務しました。

M中学校は、最近テレビでよく見かける熱血教師、
『世直しやんちゃ先生』こと桜宮正義(さくらみや・まさよし)が
いることで有名です。

桜宮は高校2年のときに担任教師への傷害行為で退学処分になり、
世界中を放浪しながら危険なことをしていましたが、
紛争や貧困の中で生きる人たちと出会い、自分の過ちに気付き、
帰国後、進学して中学校の英語の教員になりました。

桜宮は数年前からは繁華街を夜回りし、子供たちに熱く説き続け、
テレビ番組に出演したり本を出版したりして有名になりました。

桜宮は33歳を迎えた昨年末、医師から余命数ヶ月の宣告を受けるものの、
最後の瞬間まで教育者としてあり続ける「聖職者」でした。

話が変わり、以前S中学校の若い男性の先生のもとに、
授業中のおしゃべりを注意されたクラスの女子から
「助けて」というメールが届き、ラブホ○ルの前に呼び出され、
駆けつけました。
そこを写真に撮られ、翌日、保護者が学校に乗り込んできました。
その先生は外見の性と内面の性が違う性同一性障害だと公表しましたが、
保護者は学校を糾弾し、
その先生は転任して別の中学校で女性教師として働くことになりました。

これが別の男性教員だったら無実を証明するのは難しいので、
それ以降、S中学校では、
たとえ自分のクラスの生徒でも呼び出した相手が異性の場合、
別の同性の先生に連絡をとって行ってもらうことになりました。

また話が変わり、森口の4歳の娘の愛美(まなみ)の話になります。

森口は愛美を妊娠したのをきっかけに、できちゃった結婚をする予定でしたが、
結婚式直前に、森口の婚約者がHIVに感染していたことが判明しました。

婚約者は一時期外国で自暴自棄な生活を送っていて、そのときに感染しました。
世間ではHIV感染者に偏見の目が向けられているため、
話し合いを重ね、森口はシングルマザーとして愛美を出産しました。

愛美を保育所に預け、森口は仕事に復帰しましたが、
保育園が終わる4時以降は、学校のプールの裏手に住んでいる、
竹中という老婆に愛美を預かってもらっていました。

しかし、今年に入り、竹中が入院することになり、
森口は職員会議のある水曜日は愛美を4時に迎えに行き、
保健室で待たせていました。

愛美が亡くなる一週間前、
愛美は『わたうさちゃん』というキャラクターのポシェットを欲しがりましたが、
今度来たときのお楽しみ、と森口は言って愛美の手を引きました。

その場面を、家族と買い物に来ていた下村直樹というクラスの生徒に目撃されました。

それから一週間後、愛美が保健室からいなくなりました。
野球部の星野という男子から、
前に一度プールの方から出てきたことのを見たことがある、
と言われ、森口と星野はプールに行き、水面に浮かんでいた愛美を発見しました。

警察の調べで、パンの欠片が落ちていたことがわかり、
竹中の飼っていたムクという犬にごはんをあげに行っていたのだと判明しました。

そして森中は、愛美は事故で死んだのではなく、
このクラスの生徒に殺されたから、辞職するのだと言いました。

森口は、昨年8月に起こった『T市・一家五人殺害事件』、
通称『ルナシー事件』の話をします。
ブログでルナシーと名乗っていた13歳の少女が、
青酸カリを夕食のカレーに混入し、両親、祖父母、弟を殺害した事件です。

この事件で、少女は通っていた中学校の化学室から青酸カリを持ち出していたため、
世間から厳しく追及された理科のT先生は教員を辞職しました。
さらに、連日の誹謗、中傷に、T先生の妻が精神を追いつめられ、
現在も入院している、という話を森口はしました。

話が変わり、先週、竹中が、ムクの犬小屋で見つけたと言い、
愛美が欲しがっていた『うたわさちゃん』のポシェットを届けてくれました。
しかし、森口はそのポシェットをまだ買ってあげていませんでした。

そのポシェットのファスナーを開けると、
生地の下にコイルのようなものが透けて見えました。

翌日、森口は2人の生徒、少年AとBを別々に呼びました。
話しかけている生徒たちには、A・Bという仮名を使っていますが、
2章以降で名前が明らかになるので、
あらすじでは少年Aを渡辺修哉、少年Bを下村直樹と書きます。

渡辺修哉は1学期の中間テストで満点をとった生徒ですが、
他の男子Cから聞いた話では、
修哉は小学校高学年になる頃から、犬や猫を虐待し、無残に殺し、
『天才博士研究所』というウェブサイトで公開していました。

6月の半ばには、修哉は、ファスナーに電流が流れる財布を作り、
森口にその財布を渡して指先に強い衝撃を走らせました。

翌週、修哉は1枚の用紙とファイル、あの財布を森口のところに持ってきて、
6月末が締め切りの『全国中高生科学工作展』の応募用紙を見せました。

応募用紙の題名の欄には『盗難防止びっくり財布』、
目的の欄には「大切なお小遣いを泥棒から守るため」と書かれていました。

指導員の署名の欄に名前を書いてほしいと頼まれましたが、森口はためらいます。

僕は正義のためにこれを作った、でも、先生はこれを危険なものだと言う、
どっちが正しいか専門家に判断してもらおうよ、と修哉は言い、
森口は名前を書きました。

盗難防止びっくり財布は知事賞を受賞し、
全国大会の中学生の部で3位にあたる特別賞を受賞し、高い評価を得ました。

しかし、夏休み後半、修哉が新聞の地元版に大きく取り上げられたその日、
『T市・一家5人殺害事件』が一面を飾り、
誰も修哉には注目しませんでした。

愛美の死の真相を確かめるため、修哉を化学室に呼び出すと、
修哉は処刑マシーンを使って愛美を殺したことを認めました。

次に、下村直樹の話になります。

直樹は1学期にテニス部を退部し、塾通いを始め、
2学期には成績がメキメキと伸びました。

しかし、冬休みに入り、直樹の成績は横這い、下降状態を見せるようになり、
塾の先生からクラス全員の前で叱咤激励をされました。

ムシャクシャした直樹は不愉快な気分になり、
校則で出入りを禁止されているゲームセンターに行き、高校生に取り囲まれ、
殴られているところを警察に保護されました。

夜11時に、警察から森口に電話がかかってきましたが、
前述の、呼び出した生徒が異性の場合は同性の先生に迎えにいってもらうというルールで、
森口はA組の戸倉先生に電話をしました。
直樹はショックを受け、所詮シングルマザーの教師なんて、
自分のクラスの生徒より自分の子供優先なんだろう、と逆恨みをしました。

校則を破った直樹は、プールサイドと更衣室の掃除を、放課後1時間ずつ、
1週間おこなうことになりました。

2月初め、修哉はファスナーにかかる電圧の3倍増に成功し、
隣の席の直樹がノートの端に「死.ね」と書き殴っているのを見て、直樹に声をかけました。
直樹はターゲットとして、戸倉、森口、愛美の名前をあげ、
修哉は愛美をターゲットにすることにしました。

翌週の水曜日、修哉と直樹はムクにパンを与えていた愛美に声をかけ、
『わたうさちゃん』のポシェットを渡しました。

ファスナーに手をかけた瞬間、愛美は声もあげずに、その場に倒れました。

みんなに言いふらしていいよ、と修哉は直樹に言い、帰っていきました。

直樹は、プールに落ちたことにしようと考え、
ポシェットをフェンスの向こう側に投げ、
愛美を冷たく濁った水の中に放り込みました。

警察に真相を話し、然るべき処罰を受けさせるのは大人としての義務ですが、
教師には子供たちを守る義務があります、
警察が事故と判断したのなら、今さらそれを蒸し返すつもりはありません、
と森口は直樹の母親に、聖職者っぽい発言をしました。

しかし、森口は聖職者になりたいなどと思っていませんでした。

森口はポシェットを分解し、電圧を測り、「たとえ4歳の子供でも、
あれで心臓を停めることはできないと結論づけました。
また、愛美の死因は『水死』でした。
気を失っていた愛美を殺したのは、修哉ではなく、
プールに落とした直樹の方でした。

森口が警察に真相を話さなかったのは、
修哉と直樹の処罰を法に委ねたくなかったからでした。
修哉を感電死、直樹を水死させてやろうかとも森口は思いましたが、
2人に命の重さ、大切さを知った上で、自分の犯した罪の重さを知り、
それを背負って生きてほしいと考えました。

森口は、愛美の父親であり、HIVに感染している桜宮正義の血液を、
紙パックの牛乳に混入させ、修哉と直樹に飲ませていました。

効果が出ていれば、そのあいだじっくりと命の重さと大切さを実感してみてください、
と森口は、クラス全員の前で修哉と直樹に言いました。

効果が出なかったら、交通事故にはお気をつけくださいと言いました。

森口は、事件後一緒に暮らし始めた桜宮と、
最期の日まで穏やかに過ごしていきたいと思うと言い、話を終えました。


というあらすじなのですが、胸糞悪いけど、
読者をぐいぐい惹きつける力のある小説だと思います。

ただ、世間のHIVへの偏見から、結婚を断念した過去があるのに、
それを利用して修哉と直樹を裁こうとするのは、どうかと思います。

どうせ聖職者になりたくないのなら、素直に修哉を感電死、
直樹を水死させればよかったのに、と思いました。

この話は2章「殉教者」に続きます。

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