大樹連司・鬼頭莫宏「ぼくらの~alternative~」3巻8章「コダマ」のネタバレ解説

ぼくらの ~alternative~3 (ガガガ文庫)


コダマは、草の根系のアングラネットで最近流行している、
〈トミコローツ戦記〉というゲームをプレイしていました。

≪人形≫――〈アムシペ〉を操って、街の被害をなるべく抑えながら敵を倒します。
死者が少ないほど、高得点で、マップの自動生成機能があり、
自分の街を舞台にして戦うことができます。

小高勝ことコダマの結果は、死者数7511で、ランクC、
コダマの街で戦ったプレイヤーの中で、212人中58位でした。

212人中最下位の死者数は20万人超で、
敵そっちのけで自分の街を破壊しつくしたのでしょう。

この7511人の中にパパが含まれていたって、何もおかしくないのだ、
人間は死ぬ、人は、死ぬのだ……と、コダマは考えていました。

場面が変わり、矢村大地(やむら・だいち)ことダイチの視点になります。

原作の漫画ではパイロットの1人だったダイチですが、
小説版では、パイロットではない一般市民として登場します。

午前3時に起床したダイチは、新聞配達をします。

3年前に、ダイチの父親は、ダイチと3人の兄弟を置いて失踪しました。
ダイチは、叔父――父親の弟に面倒を見てもらいながら、新聞配達のバイトと、
叔父の造園業の手伝いをしながら、暮らしています。

200部を配り終えて営業所に戻ると、店長が新聞を広げていました。
一面は今日も怪獣災害です。
これまでに4度も起きた、巨大な怪獣同士の戦いでした。

店長はダイチに、近くの遊園地のチケットを4人分くれました。
ダイチは断ろうとしますが、妹のためだと言い、受け取らされてしまいました。

再びコダマの視点に戻ります。

キリエの戦いから1週間が過ぎていました。

カウンセラーとの面談で、ちゃんと戦います、
1万人くらい快調に死ぬかもしれないですけど、
死んでほしい上司とかいたらついでに踏み殺しますよ?
一緒にあなたまで踏んじゃうかもしれませんが、
などと投げやりな態度をとってしまったせいか、
今回の面談の相手はカウンセラーではなく、田中一尉でした。

軍人は、死ぬことを仕事とする、唯一の職業なの、と田中は言いました。

無人兵器を禁止する天津条約は、
戦争をすると必ず人が死ぬようにするための条約なのだと、田中は言いました。

その頃、関と佐々見はコダマの様子をモニタで見ながら会話していました。

関は上層部に、ワクの戦闘における錯乱が、
軍による強引な隔離によるもの、という所見を提出していました。

自分が子どもたちにとった強硬な態度こそが、
第三次怪獣災害(ワクの戦い)における海上国防軍の大損害を招いたのだ、
と佐々見は考えているように、関には見えました。

子どもたちのカウンセリングが終わり、定期ブリーフィングをします。

コダマが部屋に戻ると、
吉川寛治――カンジ、一之瀬マリア――マリア、阿野摩子――マコ、
徃住愛子――アンコ、古茂田孝美――コモ、宇白順――ウシロ、
宇白可奈――カナの、7人の仲間が待っていました。

まだ3巻なのに、コダマを含めて、もう8人しか生き残っていないのか、
という感じです。

学校に脅迫状が来て、それを口実に警備員が来て、
学校中に監視カメラが設置された、という話をアンコがしました。

コダマの学校では、飼っていたウサギが殺され、
コダマがやったのではないかと疑われていました。

ウシロのところでは小学生の女の子を狙った通り魔事件が起きて、
ウシロが疑われていました。

カナを庇ったマリアに、カンジもウシロも母親がいない、
という話をカンジはしました。

再び場面が変わり、ダイチの視点になります。
次の日曜日に遊園地に行くという話をすると、
ダイチの妹や弟たちの、フタバ、サンタ、ヨシは喜びました。

もっと、もっと、がんばらなくちゃ、とダイチは思いました。

一方、コダマは、人を殺す経験がしてみたかった、
14歳になるまでに、人を殺さなければいけないと思っていた、
命を殺める経験、それは、俺にとって、強烈な糧になるはずだ
――そう思っていた、と考えていました。

超高層マンションの最上階から地上を見下ろしながら、
命は使い捨てられるために存在する、
命には、使われる側の命と、使う側の命がある、と考えていました。

一代で、この街を牛耳る土建屋に成り上がったパパは、文句なしに使う側だ、
だけど、俺は?
人を殺し、自分が使う側の存在であると、証明することで、
俺は、いまとは違った俺になれるはずだ、とコダマは思っていました。

コダマは、コズエのことを使われる側の人間だと思っていました。
しかしコズエは戦闘に勝利し、自分の足で立ち上がり、
人の死にかかわるという行為は、人を確実に成長させる、と思いました。

コダマはコズエを羨みましたが、コズエはあっさりと海へと転落し、死にました。

次にパイロットになったカコは、≪人形≫の力を使って、
自分を虐めてた連中を殺しましたが、自らの成した殺人に怯え、
こんなものは、俺の考えていた殺人の姿とは違う、と思いました。

そしてカコの戦いの後、新たなルール、≪人形≫を動かす代償は、
自分たちの命だと明らかになり、コダマもまた、
使い捨てられる側の人間だと知りました。

自分のためにワクを殺したチズだけは違う、とコダマは思っていましたが、
手違いから、自分の愛する肉親を殺してしまった瞬間、
コダマが憧れた女は死にました。

コダマは役立たずになったチズを殺して、俺だけは違うと、
証明しようとしましたが、銃の引き金を引くことができず、
いくじなし、とチズに言われました。

コダマは自分が死ぬと宣告されて、急に死ぬのが怖くなり、
自分が死ぬのが怖いから、相手が死ぬのも怖くなり、
人を殺せない、いくじなしになってしまった、とコダマは考えていました。

一方、ダイチは叔父から、自分の住む街が「怪獣災害重点警戒地区」になり、
今度の日曜日に行くはずだった遊園地のアトラクションを撤去し、
ヘリコプターが降りられるようにして、避難場所になるのだと教えられました。

フタバはそのことを、回覧板を見て知りましたが、
大喜びしているサンタとヨシにはそのことを教えられませんでした。

一方、コダマはフランス料理屋の個室で、家族と外食していました。

コダマの父は、ハゲで、チビで、デブで下品な成金でしたが、
上の兄は違っていました。

兄が違う金を稼いだのは父でしたが、
金の使い方は兄のほうがよっぽど知っていました。

パパはむしろ、金に使われている、とコダマは思いました。

コズエもカコもワクもチズも、≪人形≫の力があまりに大きすぎて、
殺しすぎたのだ、とコダマは考え、自分の父とコズエたちを重ねました。

しかし、父の会社は父が築いたもので、≪人形≫のような、
突然与えられた力じゃない、だから、パパは俺たちとは違う、とコダマは考えます。

そして、パパは……俺とは、違う、とコダマは悟りました。

コダマの父は、怪獣のおかげで、全国のいくつもの街に避難用のシェルターや、
ヘリポートをつくることになり、自分の土建屋が一手に引き受けることになった、
と上機嫌でした。

しかしそれは、コダマが≪人形≫の操縦者であり、
父親の会社が倒産するなり業績が悪化するなりで家庭環境が激変すれば、
戦えなくなってしまうかもしれない、と心配した大人たちが、
コダマの父親を操ったからでした。

その頃、畑飼はコエムシにテレポートされ、マーヤから2枚の紙を渡されました。

次の怪獣の出現が予想される特別災害重点警戒地区と、
宇津帆島学習交流自然学校・参加者名簿です。
その自然学校に参加した14人のほとんどの住所が、
近くで戦闘が起こるか、特別警戒地区に指定されていました。

あなたにとってこの世界に意味がないというんなら、
滅ぼしちゃえばいいんじゃない? と、マーヤは畑飼に言いました。

畑飼が消えると、マーヤはコエムシに、
『神』は世界の剪定の方法に『ゲーム』という私たち人間に理解可能な形式を選んだ、
世界の剪定を人間の手に委ねた、だとしたら、『神』は私たち人間を知っている、
認識している、いまこの瞬間も私たちを見ている――そう思わない?
と言いました。

また、もう帰る場所もない、とマーヤは言いました。

一方、コダマは誰かに話をしたくなり、ウシロのところに行きました。

すると、ウシロがカナを殴っていて、やめろよ、と言いました。
しかしウシロは、あんたには関係のないことだろう、
こうするとよく眠れるんだよ、と言いました。

コダマはウシロに、10歳の時にエアガンで野良猫を撃っていた自分自身を重ね、
何も言い返せませんでした。

そこへカンジがやってきて、助け船を出し、
コダマとカンジは散歩することになりました。

コダマは、「人」の形をした高層ビル、沖天楼(ちゅうてんろう)を見つけ、
いつかあれより高いビルを建ててやるんだ、と父親が言っていたのを、
カンジに話しました。

戦って死ぬのも怖いし、もうひとつの別の世界を壊すのも怖い、
キリエみたいにちゃんとやれる自信がない、とコダマが言うと、
キリエだって、怖かったんじゃないか? とカンジは言いました。

おまえだけっじゃない、みんな怖いんだ、とカンジは言いました。

翌日、マコから電話がかかってきて、頼みごとをされました。

電話を切ると、下の兄が、コダマが捨てた、
グロック17のエアガンを手に持っていました。
コダマがチズを撃てなかった拳銃で、自分に、人は撃てない、と思ったコダマは、
昨日の夜、捨てたのでした。

下の兄は、そのエアガンで、コダマを撃ち、コダマが痛がると、
猫の気持ちがわかったろう、と言いました。

上の兄が眼科医になる、という話を、下の兄はします。

昔、父親は家庭内暴力寸前のスパルタで、
しょっちゅう、上の兄を殴っていたのだそうです。
中学受験が近づいてきて、限界まで達した上の兄は、
エアガンで同級生の目を撃ち、同級生は障がいが残ったのだそうです。

父親と上の兄は相手の玄関で泣きながら土下座し、
上の兄は眼科医を目指すようになり、
父親は子どもを甘やかすようになったのだそうです。

だから、コダマの父親は、エアガンを持ち出したコダマのことを怖がり、
人に銃を向けたら、すぐに教えろと下の兄に言っていたのだそうです。

コダマは下の兄に、パパを助けてやってほしい、と頼み、
下の兄は悩んでから、会社のほうは、オレにまかせろ、と言ってくれました。

下の兄は伊達メガネを外し、捨てようとしました。
父に顔が似ているのが嫌で、伊達メガネをしていたのだそうですが、
父の仕事を継ぐのなら、父の子どもであることを受け入れる、
という意味のことを言いました。

コダマはその伊達メガネをもらい、かけました。

命に価値がない、と言っておきながら、殺人という行為に魅せられたのは、
人の命は尊い、だからこそ、それを殺すことは、俺の糧になる、
と思っていたからだと、コダマは気付きました。

命は、使い捨てられるために存在する、と今のコダマは考えていましたが、
同時に、それでも、人は命に価値を与えようとする、命を守ろうとする、
命は、尊い、と考えました。

コダマの心は、迷いと恐れで、いっぱいで、人を殺すことが、
自分が死ぬことが、どうしようもなくて体が震えましたが、
それでも、守りたいという意思はありました。

場面が変わり、ダイチの視点になります。

ダイチは黒い怪獣を見上げていました。
家にいるフタバたちを助けに、ダイチは家に戻りました。

一方、操縦席に転送されたコダマは、銀色の肩パッドのついた、
青砥赤と黒の見慣れない意匠の服を着て、メガネをかけていました。

マコは、ユニフォームみたいなのが欲しい、と言っていたワクの言葉を聞き、
ユニフォームを作ったのでした。
1着だけ、試着用のが先にできたから、コダマに着てもらったのだと言いました。

敵の怪獣は、山のように盛り上がった胴体部に、4本の足と頭部があり、
≪人形≫より敵のほうが一回り大きく、全体的に太いです。
巨大な亀――≪岩亀≫です。

敵も避難を待っていて、動きませんでした。
避難が終わるまで、動かないでくれ……、とコダマは祈るようにつぶやきました。

しかし、自分の家に戻ったダイチは、フタバから、
サンタとヨシがいないと教えられました。

きっと、2人とも遊園地に行ったんだと思う、とヨシは言いました。

遊園地は、たしかに避難先に指定されていましたが、
ちょうど人型の怪獣の目の前で、いま、一番危険な場所でした。

ダイチはフタバを自転車の後ろに乗せ、遊園地に向かいました。

その様子を、コダマは操縦席から見ていました。

マコは、大声で、何ごとか叫ぶ、自分たちと同い年くらいの少年と、
少し年下の女の子が、幼い男の子と女の子を、捜してるんじゃない?
と言いました。

ダイチとフタバのいるところから、サンタとヨシのいるところまで、
コダマは≪人形≫のレーザーの出力を最小まで絞って撃ち、
道を作ってあげました。

そのおかげでダイチとフタバは、サンタとヨシを見つけ、
遊園地から離陸していくヘリコプターに乗って避難しようとしました。

しかし、≪岩亀≫は、そのレーザーを攻撃だと誤認し、一歩、前に進みます。
その先には、ダイチたちが逃げ込もうとしている遊園地がありました。

そこはまだ、ダメだろう!
とコダマは叫び、≪人形≫を前進させ、遊園地の上をまたぎ越えて、
≪岩亀≫の突進を受け止めました。

そのおかげで、ダイチたちを乗せたヘリコプターは
空へと飛び立つことができました。

コダマは海へと移動します。
≪岩亀≫も海へと移動し、後脚で立ち上がりました。

コダマは、≪人形≫の左腕を途中で切り離し、
こいつは、俺たちの命を喰って動く化け物だ、あまりに強すぎて、
本当に守りたい人を、逆に殺してしまう、と言います。

しかし、こいつだって使い方次第じゃ――ちゃんと人を助けられるんだ、
≪人形≫だって、未来を開けるはずなんだ、こいつを信じよう、
こいつは、もう1人の、俺たちの仲間なんだ――と、コダマは言いました。

コダマは、俺たちは、この≪人形≫の大きさに惑わされているんじゃないか、
空を飛んで襲いかかってきた敵くらい速く動くポテンシャルは秘めているんじゃないか、
と言いました。

ひとつひとつの動作はさして、速いわけではありませんが、
ゲームは得意なコダマが操る≪人形≫は、ひとつひとつの動作を流れるように繋いでいき、
効率的な重心移動と機体制御で敵を攻撃します。
満身創痍となった敵の中心を、≪人形≫の腕が貫き、相手のコックピットを握りました。

死者数0、ランクS、と考えてから、「相手の世界は滅ぶのだから、
死者数、百億、ランクEだと考え直しました。

たとえ、百億人と百億一人の差であったとしても、
その1人は、きっと誰かにとって、かけがえのない1人なのだから、
コダマの戦いを見ていた皆が、
1人でも多くの人が助かる戦いをしてくれることを、コダマは期待し、
レーザーで敵コックピットを破壊しました。

一方、ダイチたちは、防衛軍のヘリから怪獣同士の戦いを見ていました。
人型の怪獣が、これまで多くの街を壊滅させた四足の怪獣を打ち倒しました。
ダイチは人型の怪獣に、心の中で、感謝し、
怪獣災害も終わったんだし、遊園地の営業も再開するかもしれない、と思いました。

今度こそ、次の日曜日に遊園地に行こう、
とダイチがフタバとサンタとヨシに約束する途中で、
ダイチたちの世界は消滅しました。


というあらすじなのですが、実はダイチたちは、
コダマたちにとって敵性の地球人だったのでした。

コダマの戦いは、アウェイ戦だったのです。

小説版はモジの扱いがひどい、という意見を多く目にしましたが、
モジなんかよりダイチのほうが扱いひどいよなあ、と思います。


それにしても、コダマの成長っぷりは本当に凄いですね。

「『ぼくらの』キャラクター登場頻度のネタバレ解説」の記事を
読んでもらえばわかりますが、
コダマは原作だと、たったの118コマしか登場していないキャラです。

そのコダマも、戦闘順がもっと後のほうなら、
他の子どもたちと同じように成長していたのかもしれない、
という「IF」の世界を示したことが、凄いと思います。

そしてこの話は、9章に続きます。

(「ぼくらの~alternative~」3巻 8章 9章 10章                  スポンサードリンク

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