時雨沢恵一「キノの旅」8巻エピローグ&プロローグ「船の国」「渚にて」のネタバレ解説

今巻はエピローグが「船の国」、プロローグが「渚にて」と、
タイトルが違っていますが、内容的には繋がっています。

エピローグが凄く長くて、
プロローグと合わせて120ページくらいあります。

あとがきを合わせても全部で230ページくらいなので、
全体の半分以上を「船の国」が占めていることになります。

さて、シズと陸は、シズの故郷がある大陸から、
西の大陸に渡るために、“船の国”と呼ばれる浮島に乗ることにしました。

200年以上前から“船の国”と取引をしている商人達に頼み、
輸送船に乗っていた黒ずくめの“指導者”を紹介してもらいます。

国の中で指導者が決めたルールに従うことを約束させられ、
シズと陸は輸送船に乗せてもらいます。

“船の国”は5日ほどこの大陸に沿って北上し、
その後海峡を5日ほどで渡り、
さらに5日後には西の大陸の商人達との接触があるのだそうです。

シズ達は輸送船の狭い一室に入り、直径3メートル程度の細長い長方形をした、
“船の国”に乗せてもらいました。

バギーを倉庫に停め、国中心部にある塔のエレベーターに乗り、
“船長”から話を聞きます。
この国は600年以上前から存在し、
彼ら指導者は『塔の一族』は“王族”としてこの国を長年に亘り支配していました。
被支配階級である一般国民は3000人、黒ずくめは50人ほどいるのだそうです。

旅人は大抵、塔の一族の指揮下で警察か用心棒の仕事をするそうですが、
シズは民衆との生活と肉体労働、同じ生活を希望しました。

塔の1階へと降り、そのさらに下層に住んでいる一般国民に会うために、
シズと陸は甲板を西の方向に歩き、階段を下りました。

そこで出会った一般国民に事情を説明し、
動く狭くて複雑な道を歩き、長老の住む部屋に案内されました。

長老は80歳ほどに見えましたが55歳でした。
案内人の男は50代に見えましたが実際は35歳でした。

案内人の男に、2段ベッドのある客用の部屋に案内されましたが、
そこも凄く狭いものでした。

灯りが消えると本当に真っ暗になりました。

2日目の朝、広間で蒸し上がった魚がまるまる1匹だけの朝食をもらいます。
長老の話ではほとんど全ての食事が魚でした。

長老は“ティー”という12歳くらいの女の子を、
滞在中いろいろ聞く案内人として紹介しました。

ティーは髪の毛が白く、瞳の色はエメラルドグリーンでした。

ティファナというのが本名ですが、ティーとお呼びください、
と長老は言いました。

ティーは仏頂面をしていて、話しかけても全く喋らない少女でした。

ティーは肯定の返事の時は頷き、否定では首を振るので、
シズが質問をしてイエス・ノーで答えてもらうことでコミュニケーションをとります。

シズは仕事を希望していましたが、旅人ができる仕事はないらしく、
ただ“船の国”の中をティーに案内してもらうだけの生活が続きました。

5日目の朝、輸送船で商人達との取引があり、
大陸から1人の旅人が入国したことを、仕事に出た男達からの伝聞で知りました。

その旅人は黒ずくめ連中の手下役を引き受け、
眺めのいい“一等客船”に収まったのだそうです。

その夜、灯りが消えてもティーがシズの部屋に残っていたので、
シズはティーに2段ベッドの上を使わせてあげました。

6日目になると、“船の国”は海流に乗って移動するようになり、
揺れが出てきました。

そして、鈍い悲鳴に似た、とても耳につく嫌な音がしました。

ティーによると、海流に乗って移動する場合にはよく聞こえるのだそうです。

その嫌な音は、シズが以前崩落したビルにいた時に聞いた音にそっくりでした。
悲鳴に似た音は、鉄骨が軋んで擦れて出す音だったのでした。

ティーに、構造物が潰れたり壊れたりしている場所に案内してもらうと、
崩れてからかなり経つようでした。
また、浸水している区画もありました。

この国の昔の構造図がある部屋に案内してもらい、その構造図を見ると、
大昔は甲板の上に大地と建物がたくさんあったことがわかりました。
甲板の下は本当に薄く、シズは驚きの声を出しました。
今の居住区はかつての整備用の通路や、水道や電気の通り道でした。

ティーに、“立ち入れない場所”、“浸水している場所”を、
順に指さしてもらうと、143カ所もありました。

この“船”は600年間まったく整備されることなく動いているため、
あと10日で沈むとは思わないが、この先どこかから崩壊して、
長くない、とシズと陸は判断しました。

昼食の時間に間に合わないため、ティーに携帯食料をあげると、
旅人には不評極まりない味の携帯食料を、
ティーはとても美味しそうに食べました。

7日目と8日目は、崩れている場所や浸水している場所に行き、
どれほどの破損か調べました。
40メートルほど“船底”がちぎれていて、
毎年2メートルくらいずつ亀裂が広がっている浸水場所もありました。

9日目、シズはこの国の綻びについて長老と話しましたが、
長老は塔の一族に任せっきりで、何も考えていませんでした。

生まれた赤ん坊の生存率や、平均寿命は、
かつて見たことも聞いたこともないほど、相当過酷なものでした。
劣悪な環境と極端な食生活が原因なのですが、
外の世界を知らない長老達は“船の国”を楽園だと信じていました。

ティーに頼み、気分転換として城壁の上に案内してもらい、夕日を見ました。
ティーが景色に見入って動かないせいで夕食を逃し、携帯食料を食べました。
カリカリと美味しそうに食べるティーを見て、
陸はこれが目的だったんじゃないかと思いました。

10日目、シズは戦闘の準備をし、塔へ近づきました。
塔の入り口まで10メートルほどを残した場所で、
スピーカーから声が指導者の聞こえ、
シズはこの国の未来について話があると言いました。

この国の欠陥について思うところをシズは伝えましたが、指導者たちは、
そういった運命なのだと言い、一般国民と一緒に滅びるつもりでした。

シズが塔を占拠してこの国の行き先を変えると言うと、
塔入口のドアから黒づくめの人間が出てきて、戦闘が始まりました。

黒ずくめはパースエイダーを撃ちましたが、シズは避けます。
しかし、黒ずくめはそのパースエイダーを投げ、
シズがそれに驚いている隙に別のハンド・パースエイダーを抜きました。
シズが相手との距離を詰めると、黒ずくめはベールを掻き上げました。

そこにいたのは、キノでした。
5日前に入国し、シズ達と同じように西の大陸に渡ろうとしている旅人が、
キノだったのでした。
キノは渡し賃として指導者達のために働いていました。

キノはシズの名前は忘れているけど陸の名前は覚えているという、
心理的攻撃をし、戦闘再開です。

キノはリヴォルバーの狙いを、陸とティーの方に向け、発砲しました。
弾丸はティーの頭の、かなり上を通過しました。

シズがそちらに気を取られている間に、キノは塔の中に入りました。

シズは閃光手榴弾、スタングレネードを廊下に転がし、爆発させました。

通風口か排水溝のような穴に逃げ込んだキノを追い、
シズと陸とティーも穴に身を滑らせました。

シズはタンクを刀で切って、キノをびしょ濡れにしました。

キノはまた隠れていましたが、水滴を追いかけます。

キノは黒いコートだけを落としたり、フェイクの足音を出したりして、
シズを翻弄させ、天井から頭を下にして現れ、シズに発砲しました。

しかし、その弾丸は硬質ゴムだったので、シズは生きていました。

シズは負けを認めますが、場所が悪くてキノの返答が聞こえないせいで、
塔の一族達はキノがシズに負けてしまったと思い込んでいました。

この国は大洋へと戻り、陸には行かぬ、シズ殿は、
この後死ぬまで民衆と暮らすといい、という声が聞こえました。

キノはシズに勝ちましたが、仕方なくシズの手伝いをすることになりました。

格納庫で閃光手榴弾などの武器を調達し、塔に侵入し、
“船長”のいる制御室へ行きます。

この国の、王にでもなるつもりか? という“船長”の問いに、
シズは、必要なら、と答えました。

「いいだろう。――お前が次だ。――そして一緒に生きろ」
と“船長”は言い、床に崩れ落ちました。

その“船長”の帽子を取ると、そこには中綿を入れた布の塊がありました。
黒いコートの袖をめくると、そこに見えた腕も、
芯が入っているだけのぬいぐるみでした。

シズは西の大陸の砂浜に“船の国”を乗り上げさせ、
“船内放送”で、国中の人間に、国が陸についたことを知らせ、
外に出て確かめるように言いました。

キノは先に出国の準備をして船を降りました。

シズ達は倉庫に行き、バギーで外に出ました。

シズは、指導者達は全員、別の船に乗って別の国に逃げ、もうこの国にはいない、
と嘘も混ぜながら、4つの部族に分かれた一般国民達に事情を説明しました。

これからは陸での新しい生活を選ぶことができるとシズは言いましたが、
子供が母親に戻ろうと言いました。

ここ、全然揺れないよ、足元が柔らかいよ、壁も屋根もない、気持ち悪いよ、
と子供が言うと、人々は戻りたがりました。

この国はやがて海に沈む、これからは陸の上で生きないと、
あなた達に未来はないんだ、とシズは真実を告げますが、
そんなことがあるはずはない! と長老が言い、
彼らは自分たちの部族が先に塔を占拠しようと、
“船の国”の中に戻っていきました。

シズはティーに、私は失敗した、ティー、戻るといいよ、と言いました。

しかしティーは、「格納庫から持ち出していたナイフでシズを切りつけました。

するとエルメスは、その女の子が“ティファナ”だね? と言いました。

エルメスは倉庫にしまわれていた時に、同じ人間じゃないよしみで、
黒ずくめからいろいろな話を聞いていたのだそうです。

600年以上前に、既に前の住民によって完全に放棄されていた浮遊都市国家に、
“ティファナ号”という一隻の漂流船がたどり着きました。
その大きな船には、その時数百人の、3歳以下の子供達が乗っていました。
それより年上の人間はみんな、新種の疫病で死んでいました。

船を一括管理するための機械は、子供達に食事を与えながら大海原を漂流しました。
その子供達の子孫が一般国民で、機械が黒服の王族一族となりました。

機械は子供達を“船の国”で生活させることにし、
人間の形が子供の世話に必要だから黒ずくめの“ぬいぐるみ”を作りました。

子供達が成長すると、彼らを纏めるものがいないせいで問題が起き、
機械は“偉い存在”として王族一族を作ったのでした。


“船長”の“次はお前だ”という言葉は、
文字どおりその後のこの国の未来をシズに任せるとのことだったのでした。

ティーは、「“渡し”に使った旅人の子供でした。

ティーの両親は13年前、1年以上“船の国”に滞在し、
当時は別の名前だった赤ん坊を置き去りにして出国してしまいました。

機械は、民衆が快く受け入れるとは思えず、
新たにティファナという名前をつけて育てました。
交易で得た食べ物は、主にティーの健康維持のために使われ、
ティーは民衆のスパイのようなこともしていました。

“そして一緒に生きろ”という“船長”の言葉はティーに向けられたものでした。
黒ずくめはいなくなり、あの国にティーの居場所はありません。
シズと一緒にいないと、のたれ死には確実です。

そんなティーに『戻るがいいよ』のシズの一言は、死刑宣告に等しいものでした。

ティーは、わたしにもどるところなんてない!
と言い、ナイフの刃をバネ仕掛けで飛ばしました。
刃はシズの腹部に深々と当たり、危険な傷でした。

キノは、どっちの人間が死ぬ方を選択すればいいかという意味のことを、
陸に訊ねましたが、シズは、どっちでもない! と言いました。

シズはティーに謝り、俺は、君を見捨てない、これから、一緒に助け合っていこう、
と言ってティーを抱きしめました。しかし、シズは倒れてしまいます。

ティーは、おいていかないで! と何度も叫び、手榴弾でシズと心中しようとしました。
しかし、キノはパースエイダーで手榴弾をティーの手からはじき飛ばしました。
手榴弾は誰もいない波打ち際に落ちて爆発しました。


船の国は海に去っていき、それから何日か経過して、
プロローグの「渚にて」の場面になります。

キノは金目の物を3分の1いただき、黙って立ち去ろうとしていました。
シズが起き、別れの挨拶をしました。

ボクが旅を続けていれば、あなたがいつか住む場所にたどり着くと思います、
とキノは言いました。
シズは、私がそこに落ち着いていることを願う、そして心から歓迎する、
と言いました。

というあらすじなのですが、ティーはこの後、
レギュラー・キャラクターとして、毎巻登場することになります。

今回、今までいた東の大陸から西の大陸に移動しましたが、
キノの旅の内容は今までと殆ど変わりません。

ちなみに、17巻のエピローグ「渡す国」でティーとフォトが共演しているので、
3巻のエピローグ「雲の中で」は、大陸移動後の話であることが確定しています。                  スポンサードリンク

さとり世代探偵のゆるやかな日常 (新潮文庫nex)

新世界より(上) (講談社文庫)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール
Author:しまうました
見やすい記事一覧はこちらです。
スポンサードリンク

十二大戦

さとり世代探偵のゆるやかな日常 (新潮文庫nex)

祈りの幕が下りる時 (講談社文庫)

このブログについて
見やすい記事一覧はこちらです。
このブログの記事は管理人「しまうました」の独自の解釈によるものなので、制作者の意図したものや一般に考えられているものとは異なる場合があります。
個人の趣味でやっているブログなので、解説してほしい本のリクエストは受け付けていません。
重要なネタバレ箇所は白字にしてあるので、反転してお読みください。
現在、荒らしをした人物のコメントを拒否しており、巻き添え規制される場合があります。詳細はこちらに書いてあります。
承認したコメントに対しても、管理人は基本的には返信しません。また、後日予告なく削除する場合があります。ご了承ください。
今月の人気ページ
人気ページの集計期間は30日間です。2017年7月9日リセット。
スポンサードリンク
カテゴリ
最新記事
検索フォーム
月別アーカイブ
最新コメント
FC2カウンター
スポンサードリンク

ソードアート・オンライン プログレッシブ (4) (電撃文庫)

業物語 (講談社BOX)

キノの旅XX the Beautiful World (電撃文庫)

悪の教典 上 (文春文庫)

                amazon人気本ランキング
RSSリンクの表示
リンク
最新トラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
記事一覧
見やすい記事一覧はこちらです。