乙一「ZOO2」4話「神の言葉」のネタバレ解説

主人公の「僕」の『言葉』には昔から不思議な力がありました。

自覚した上ではじめて『言葉』の力を使ったのは小学一年生の時でした。
足の速いユウイチというクラスメートのアサガオが
クラスでもっともお大きく美しいものでした。

主人公は浅ましい気持ちになり、ユウイチの植木鉢に
「枯れろオオ……、腐ってしまえエエ……」と念じ、声を出しました。
気づくと鼻血が出ていました。
数時間後、ユウイチのアサガオはしおれて腐り薄汚い茶色に染まりました。

小学校高学年のころ、クラスメートにいいところを見せようと、
近所のよく吠える犬に「僕に服従しろオオ……」
と『言葉』を使い、その通りになったことがありました。
しかし、そのうちに少しずつ罪悪感に蝕まれはじめました。

一度『言葉』を行使したら、もう二度と元には戻りませんでした。

ある日、母親が勝手に主人公の部屋に入り掃除をして
主人公が気に入っていたサボテンの植木鉢を落として壊したことに腹を立て、
母親に向かって「おまえはアア、猫とサボテンの違いがわからなくなるウウウ……」
と『言葉』を使ったことがありました。
母が再び猫とサボテンの見分けがつくようになるよう
『言葉』を囁いてみましたが、元には戻りませんでした。

主人公の父親は大学の講師をしており、
コンピューターゲームで遊ぶのを主人公とその弟に禁じていました。
しかし主人公は父親に隠れて携帯ゲーム機を買い、
自室でゲームをやっていました。

突然、父親が扉を開け、ゲームを取り上げました。
主人公はゲーム機を取り返そうとして、
「この指よオオオ、外れエエろオオオ……!」と『言葉』を使いました。
父の左手から5本の指が外れ血が噴出しました。

主人公は左手の傷口を『言葉』で完治させ、
主人公の部屋で起きたことを忘れさせました。
さらに、指のない左手を見た者に対してそれが当たり前の状態であると
感じさせるように『言葉』を使いました。

一学年年下の主人公の弟、カズヤがひそかに主人公を軽蔑していることに、
主人公は気づいていました。
世間の人たちは主人公を高く評価していましたが、
カズヤだけは主人公の内面の醜さに気づいて軽蔑しているようでした。

ある夜、近所の犬が死にました。主人公が『言葉』を使った犬でした。
主人公はその犬に抱きつき泣きました。

また別のある夜、ふと気づくと主人公は片手に彫刻刀を握り締め
自室の真ん中で泣きながら立っていました。
机からは腐臭が漂ってきて、気づくといつのまにか机の傷が増えていました。
しかし主人公には彫刻刀で彫った記憶などありませんでした。

ある夜、主人公は弟のカズヤに軽蔑されることに耐えられなくなり、
カズヤを殺そうと決意し、寝ているカズヤに
「お前はアアア、死ぬんだアアアア!」と『言葉』を行使しました。

しかし何も起こらず、カズヤは再び寝てしまい、
主人公は自室の机の上のカセットデッキのテープを
再生しなくてはいけないような気がして、再生しました。

すると、スピーカーから主人公の声が聞こえてきました。

その声は、「主人公がだれかを殺そうとしたり、自殺しようとした場合、
机の上にそれまで気づかなかったカセットデッキを見つけて、
中に入っているテープを再生したくなる、
とテープの最後の方に『言葉』が吹き込んである、と言いました。

もう主人公の父も、母も、弟も、クラスメイトや先生、
今まで会ったことのない人々もみんなすでに生きていなくなっていて、
主人公がだれかを殺そうとしたり自殺したりする必要はまったくないのでした。

犬が死んだ次の日の朝、
主人公は急に耐えられなくなりみんなを殺すことにしました。

一時間後、おまえらの首から上が落ちる。
地面に転がったおまえらの首は、
それを目にした主人公以外のすべての人間に対して、
おまえらに与えられていた『言葉』をそっくり感染させる。


主人公は父と母と弟にそのような『言葉』を行使しました。

その日の夕方には「すっかり町は静かになりました。

その日の夜、星を眺めていると、歩く若い女性が見えました。
主人公はその女性に話しかけ、その女性の目が見えないことを理解しました。

そして主人公は罪悪感に苦しめられ、
世界を埋め尽くす動かない人々が腐っていくのを見ながら
もう自分がこの世界にも耐えられないのだということを感じました。

そこで今の状況に気づかず
正常な世界に生きているのだという錯覚を見ることにしました。

彫刻刀で机に傷を彫るたびに今まで過ごしてきた日常の世界で生きているつもりになる、
と『言葉』をテープの最後に録音してありました。

生きているようでいて実際はどこかで死んでいる母親が部屋の扉をノックし、
手を震わせて泣いている主人公を心配しました。

しかし主人公は、かつて望んだ一人きりの世界にこられて、
ほっと気持ちが安らいだせいで泣いていたのでした。


というあらすじなのですが、これは新しいタイプの「人類の滅亡の仕方だな、
と思いました。

超能力を持ってはいけない性格の人が超能力を持つと、こうなってしまうのでしょうね。

『おまえは偽善者ではなく本物の善人になる』
とテープに『言葉』を吹き込んで、それを聞けばよかったのに、
としまうましたは思いました。
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