西尾維新「囮物語 第乱話 なでこメドゥーサ」のネタバレ解説

囮物語 (講談社BOX)


この囮物語は、千石撫子が語り部を務めています。
最初の見開き2ページで、1行ごとに改行をするという
露骨なページ数稼ぎの自己紹介があった後、撫子の独白があります。

その際、多くの読者が、
地の文が敬語であることに戸惑ったのではないでしょうか。
敬語キャラの八九寺とかなら分かるんですが、
相手が年上でもあまり敬語を使わない撫子が敬語だと、違和感があります。
これはやっぱり、女性キャラが語り部だと一人称が私ばっかりになってしまい、
変わり映えがしないから、敬語にすることによって変化をつけてみたとか、
そういう理由なのでしょうか?
まあ、十数ページ読み進める頃には気にならなくなっているので、
別にいいのですが。

さて、本編のストーリーについてですが、クチナワさんという白い蛇が、
「どうしてもこうしても、どうしてもああしてもねーだろうよ――ああん?
ぜーんぶお前が悪いんだろうが――撫子ちゃん」
と撫子に話しかけます。
このとき撫子は、髪の毛1本1本が10万匹の蛇になっているという、
メドゥーサ状態になっていました。
ただし、伝説のメドゥーサとは違い、見た者を石に変える能力はありませんが。

撫子とクチナワさんは北白蛇神社の床下に潜んでいたのですが、
阿良々木くんと忍は神社を吹っ飛ばしてしまいます。
さらに忍は、
「今やこの娘は、お前様の妹御の友人でもなければ、
いたいけな後輩でもない――邪悪で凶悪でどうしようもない怪異じゃ」
と言い、阿良々木くんまでもが、
「こいつは僕の敵で――お前の食糧だ。食っていいぜ、忍」
などと、とんでもないことを言い放ちます。撫子も、
「暦お兄ちゃんなんて大っ嫌いだよ!」
と叫び、戦闘が始まります。

まさに最初からクライマックスという感じの冒頭のシーンの後、
どうしてこんな状況になってしまったのか、という撫子の回想が始まります。

10月31日、撫子は忍野メメの姪を自称する忍野扇と出会います。
その際、まだ出会っていないはずなのに、扇は撫子の顔や名前を知っているという、
あからさまに怪しい素振りを見せます。
扇は撫子と短い会話を交わし、去っていくのですが、なぜかこのとき、
それほど話し込んでいないはずなのに結構時間が経過していました。

そして下駄箱へ行った撫子は、
下駄箱の中にいた白い蛇に触れたような感覚を味わいます。
さらに教室へ行き、鞄の中や筆箱の中、体操着袋の中、
掃除用ロッカーの中からも白い蛇が現れて絡みつくのですが、
どうやらそれは撫子にしか見えていないようでした。

ちなみにこのときのクラスは、貝木泥舟が流行らせたおまじないせいで、
誰もが誰とも口をきかず無視し合うという、嫌なクラスになっていました。
撫子は阿良々木くんに公衆電話から相談し、
改めて10時くらいに話し合う約束をします。
ところがその公衆電話から大量の白い蛇が現れ、
「北白蛇神社に来な、撫子ちゃん」
という声が聞こえました。

そして実際に北白蛇神社へ行った撫子は、「なでこスネイク」で、
おまじないを解くために殺して刻んで磔にした蛇の幻覚を見させられます。
巨大な白い蛇のクチナワさんは蛇を殺したことに対する償いをするように撫子に言います。

クチナワさんは小さくなり、白いシュシュのふりをして撫子の左手首に巻きつくこととなりました。
撫子は10時の阿良々木くんとの電話で、何でもなかった、気のせいだった、と嘘をつき、
北白蛇神社でかつて祀られていたクチナワさんのご神体を探し始めます。

その翌日、11月1日に学校へ行った撫子は、担任の笹藪先生から、
以前『クラスの雰囲気を何とかしろ』と頼んでいた件はどうなったのか、と尋ねられます。

撫子はクラスで唯一、貝木が流行らせたおまじないをやっていないから、
という理由で学級委員に選ばれていました。
さらに、学級委員だから、という理由でそんな無茶な頼みごとを
笹藪先生から頼まれていたのでした。

いや、普通に考えてそれは生徒が何とかする問題じゃなくて、
担任のお前の仕事だろ、と言いたくなりますが、
こういう教師って結構いますよね(例えば今話題になっている、
大津中2いじめ自殺事件の担任教師とか……)。
ただし、撫子は撫子で、別に学級委員としての仕事も、
笹藪先生から頼まれた仕事も、何もせずに放棄していたので、
お互い様と言えばお互い様なのですが。

その日の夜、撫子はクチナワさんのダウジング機能を頼りに、
御神体を探しに行き、公園の砂場を掘り返すのですが、結局ご神体は見つかりませんでした。
その代わり(?)深夜徘徊しているところを阿良々木くんに
見つかってしまい、阿良々木家まで連れて行かれます。
実は撫子が家を抜け出したことに気付いた撫子の両親が、
月火ちゃんに電話しており、その電話を聞いた阿良々木くんが、
「馬鹿お前! 千石が絶滅したらどうするんだ!」
と家を飛び出し、撫子を探してくれていたのでした。

月火ちゃんが、『うちに泊まっています』と嘘をついたこともあり、
本当に撫子は阿良々木くんの家に泊めてもらうことになりました。
阿良々木くんは撫子を自分のベッドに寝かせることにし、
自分も撫子と一緒に寝ようとします。
しかし忍が吸血鬼パンチで阿良々木くんを気絶させ、止めました。
そして忍は撫子のことを魔性の女だと言い、部屋を出ていくときに、
「よかったの。たまたま可愛くて」
と捨て台詞を吐いていきます。

翌朝、撫子の隣には月火ちゃんが寝ていました。
そして撫子は前日の忍のセリフを話題に出したことから
月火ちゃんにキレられてしまい、「前髪を切り落とされてしまいます。
月火ちゃんの名誉のために言っておくと、さすがに髪を切り落とすのは
やり過ぎですが、撫子の態度には月火ちゃんでなくても結構苛々しました。

そして前髪を失ったまま学校へ行った撫子は、
『ところで千石、この間頼んでいた件は、どうなった?』
と、いつものように笹藪先生に尋ねられました。
いつもなら黙って俯いているだけで笹藪先生は呆れて
立ち去ってくれるのですが、前髪がなくなったせいで、
実はそんなに困っていないことがバレてしまい、今回は立ち去ってくれませんでした。

そして撫子は、
『――うっせえんだよ! 進展何かあるわけねーだろ、
俺様にてめえの仕事を押し付けてんじゃねーぞ――ああん?』
と笹藪先生に向かってキレてしまいます。
さらに撫子は教室へ行き、入り口の戸を蹴破り、
クチナワさんの口調でキレたままクラスメートたちに説教します。

いたたまれなくなり早退した撫子は、
実はご神体は阿良々木家にあったというクチナワさんの話を聞き、
真昼間から阿良々木くんの家に行きます。
当然、家の玄関には鍵がかかっているのですが、
クチナワさんに開けてもらい、撫子は不法侵入をしました。
ちなみにこのとき撫子は、玄関のドアが新しいことに気付きますが、
その理由は『偽物語 下』で語られています。

そして阿良々木くんの秘蔵のエ○本を調べ、その中からクチナワさんのご神体である、
ウロボロスの画が描かれたお札を発見しました。
クチナワさんはお礼に撫子の願いを叶えてやると言い、
『大好きな暦お兄ちゃんと、両想いになりたいとか……そんなお願いでも、叶うのかな』
と言いますが、間髪入れずに
『そいつは敵わないな、千石』
と、いつの間にか背後にいた阿良々木くんの声に否定されました。
ちなみに、『かなう』の字が2人で違っている点が重要です。

阿良々木くんはそのお札を置くようにと言いますが、
撫子はあれやこれやと言い訳をし、はぐらかします。
それにイラついた忍が、
『クチナワさんなどという復活もしておらん神様にいつまでも
依存しておらんで――さっさとその札をこっちに寄越せ。
我があるじ様が臥煙伊豆湖から託された、その呪いの札を――』
と口を挟んでしまいます。

そして撫子が改めて右手首を見ると、そこに巻きついていたのは
クチナワさんなどではなく、ただの白いシュシュでした
(個人的にはこのシーンがこの本の中で一番ゾッとしました……)。

忍に刺激された撫子は、そのお札を食べてしまい、
撫子は物語の冒頭のメドゥーサ状態になってしまったのでした。
ちなみに蛇には毒があり、毒は吸血鬼にも有効なため、
撫子は北白蛇神社へ追いかけてきた阿良々木くんと忍を、あっさりと倒してしまいます。

そして撫子と、この時点では撫子の妄想ではなく、
復活したクチナワさんとの会話で、この物語の真相が解説されます。

撫子は9月の初めに阿良々木くんが戦場ヶ原さんと付き合っているのを
目撃してしまい、彼女に嫉妬したのです。
撫子は北白蛇神社へ何度もお参りをし、神頼みをしました。
ところが実はその時点では神社には神様がいなくなっており、
そのことを撫子は物語の初めに忍野扇から指摘されていたのでした。
ご神体は臥煙伊豆湖が阿良々木くんに預けているということも教えてもらい、
お近づきの印に、と白いシュシュを撫子は扇からもらいました。

それをきっかけにして、撫子は物語の捏造を始めたのです。
蛇を殺した償いというもっともらしい言い訳をし、
阿良々木くんの部屋に隠されているご神体を見つけ、神様を復活させるために。

阿良々木家の玄関の鍵をクチナワさんが開けたのも撫子の妄想であり、
実際には撫子が合鍵を使って開けていただけでした。
撫子は阿良々木家の鍵を手に入れるために、
わざと両親に見つかるように家を出て公園で時間を潰し、阿良々木家に泊めてもらったのでした。
そして昼間の留守中にゆっくりと時間をかけて捜索する予定だったのです。

解説が終わった後、撫子は阿良々木くんと忍にとどめを刺そうとしますが、
そのとき阿良々木くんの携帯に戦場ヶ原さんから電話がかかってきました。
電話に出た撫子は、阿良々木くんと忍と戦場ヶ原さんを殺すのを、
卒業式が終わるまで待ってほしい、と戦場ヶ原さんにお願いされます。

そしてそのままこの囮物語は終わってしまい、
この話は恋物語に続くことになりました。まさかの上下巻です。
傾物語で『残りのページ数を見る限り大丈夫だと思うのだけれど、上下巻という可能性もあるし』
と言っていたのはこの伏線だったのかもしれません。

さて、撫子はアニメでは大人気でしたが、原作では初期ヒロインの中で一番登場シーンも台詞も少なく、
地味で目立たない空気ヒロインでした。
それがまさかのラスボス化です。
『偽物語 上』での
『……阿良々木先輩は、どうやら真のラスボスの存在に、まだ気付いていないようだな』
という神原駿河の台詞をこんな形で伏線回収してしまいました。
あの時点では恋のラスボスというふうにしか読み取れなかったのですが、
本当に敵としてのラスボスになってしまったわけです
(と言っても、恋物語を読んでもらえれば分かりますが、実際にはラスボスではなく……)。


元から撫子のファンだった人には衝撃的な展開だったでしょうが、
しまうました的には、撫子のことが好きになってしまった物語でした。                  スポンサードリンク

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だいぶ前に原作読んだんですけど、アニメの前に復習しに来ました!
このブログがあって良かったです。

囮物語をどう映像化するか楽しみです。
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