東野圭吾「雪煙チェイス」のネタバレ解説

雪煙チェイス (実業之日本社文庫)


スキー場・根津昇平シリーズの第3弾です。

ただし、序盤、根津はなかなか登場しません。

男子大学生の脇坂竜実(わきさか・たつみ)は、
白銀ジャック」の舞台となった、
新潟の新月高原スキー場でスノーボードをしていました。

滑走禁止区域を滑っていると、
赤と白のツートンカラーのウェアに黒のヘルメットの女性スノーボーダーが、
カメラで自分を入れて写真を撮ろうとしていました。

竜実は、シャッター、押しましょうか、と声をかけ、
木の枝と山の稜線がハート形に見えるように写真を撮ってあげました。

女性がフェイスマスクを外すと、勝ち気な猫を連想させる美人でした。

ふだんはどこで滑ってるんですか、と竜実が聞くと、
ホームグラウンドは里沢温泉スキー場だと言われました。

竜実は滑り出した女性を追いかけますが、
女性は密集した木々の間を、雪煙を上げながら滑り抜けていき、
あっという間に引き離されてしまいました。

場面が変わり、刑事の小杉敦彦は仙台への出張から新幹線で帰る途中、
上司の南原係長からの電話に出ました。

南原は、三鷹市N町の一軒家で強盗殺人があり、
被害者は80歳の老人だと言いました。

小杉は嫌がりましたが、そのまま現場に行きました。

初動捜査が始まっていて、後輩の白井から状況を説明されます。

被害者の福丸陣吉(ふくまる・じんきち)という老人は、
息子夫婦と同居していました。
長男の秀夫の妻の加世子が、勤め先のスーパーから帰り、
陣吉が死んでいるのを発見して通報しました。

リビングボードの抽斗に入れてあった現金20万円ほどが消えていました。

署に戻ると、南原から、散歩係を当たってもらいたいと言われました。

福丸家では柴犬を飼っていて、散歩に連れていくのは被害者の役目でしたが、
半年ほど前に腰を痛めて以来、長い時間を歩けなくなりました。
散歩させないのはかわいそうなので、バイトを雇いました。

しかし、3ヶ月ほど前にバイトが散歩中に自転車と接触し、
柴犬は足を怪我して動けなくなり、
持病を悪化させて先月に死んでしまいました。

近所の主婦が、昨日の昼間、福丸家の中を覗いていた男を目撃していて、
それが散歩係のバイトの男でした。

犯人は郵便ボックスの底に隠してあった合い鍵を使って、
勝手口から侵入した可能性がありました。

南原の上司の刑事課長の大和田がいきり立っていて、
小杉と白井は逃げるように部屋を出ました。

署長が本庁の捜査一課に応援を要請したのですが、担当係の七係には、
大和田課長と昔から犬猿の仲の花菱(はなびし)係長がいて、
大和田課長ははらわたが煮えくりかえる思いをしているのでした。

小杉と白井は、散歩係のバイトをしていた、
開明大学4年生の脇坂竜実のアパートを訪れました。

しかし、竜実は留守で、隣の部屋の松下広樹に話を聞きました。

その途中、南原から電話があり、勝手口の合い鍵から不審な指紋が発見され、
竜実の部屋のドアノブと指紋を照合すると言われました。

鑑識が到着し、ドアノブと、竜実の自転車の指紋を採取しました。

一方その頃、竜実は友人の波川省吾(なみかわ・しょうご)の部屋で、
酒を呑んでいました。

松下広樹から電話があり、竜実の部屋に警察が来て指紋を採っている、
と教えられました。

勝手口の合い鍵に付いている指紋と照合するとかいってた、
と松下広樹に言われ、竜実の頭に閃いたものがありました。

さらに、殺人事件かもしれない、と松下広樹は言いました。

竜実は電話を切り、波川省吾に心当たりを説明します。

回想です。
昨年秋、竜実は研究室の大学教授から、
午前中に1時間ほど柴犬を散歩させるバイトを頼まれ、引き受けました。

飼い犬のペロはすっかり竜実に懐き、陣吉も竜実を信用して、
雨の日は郵便ボックスに隠してある勝手口の合い鍵を使って、
ペロを屋内に入れておいてくれと言われました。

しかし、考え事をして散歩をしている時に、
自転車に乗っていた主婦が自転車でペロとぶつかってしまいました。
主婦は、犬の姿は竜実の身体で隠されていて前方からは見えなかった、
と主張しました。

ペロは骨折し、竜実はクビになり、
それ以来、福丸老人ともペロとも会っていませんでした。

ところが昨日、たまたますぐ近くまで行く用事があり、
ペロのことが気になって福丸家に行きました。

インターホンを押しても応答がなく、竜実は門扉を開き、
敷地内に足を踏み入れました。
郵便ボックスが目に入り、合い鍵がまだ秘密の場所にあるか気になり、
手に取って確かめてみて、戻しました。

ペロの犬小屋には『1月19日没』と書かれていて、
竜実は気持ちが落ち込みました。
犬小屋の中に古いリードが放置されているのを触っているうちに、
ペロの形見が欲しくなり、竜実は持ち帰ることにしました。
門から外に出た後、ぼんやりと眺めていると、
ペロの散歩中に何度か会ったことがある近所の女性と顔を合わせました。

回想終わりです。

……っていうか、意味不明な行動のオンパレードですねw

まるで、この翌日に殺人事件が起こるのを予知していて、
警察に疑われるために行動しているみたいですwww

竜実の話を聞いた波川は、かなりまずい状況だと言いました。

警察が竜実の意味不明な話を真に受けるはずがありません。

今日1日、竜実は、新月高原スキー場でスノーボードに行っていて、
午後7時過ぎからは波川の部屋にいたと答えました。

竜実は高速道路の領収証を出し、
新潟の湯沢インターを出たのが朝の9時で、
練馬インターを出たのが午後7時だと言いました。
しかし波川は、新幹線を使えば、往復5時間の距離なので、
新幹線を使ってアリバイ作りができるから証明にならない、と言いました。

その頃小杉は、竜実の隣人の松下に立会人になってもらい、
管理人から預かった鍵で竜実の部屋のドアを開け、
家宅捜索をしていました。
そして、福丸陣吉の首を絞めるのに使われたリードが発見されました。

一方、竜実は波川にアドバイスされ、スマートフォンの電源を切りました。

松下から電話があり、家宅捜索で凶器のリードが見つかったと聞くと、
竜実は、ペロのリードは2本あり、
凶器に使われたのは新しい方だと言いました。

今帰ったら、竜実は120パーセント逮捕されてしまいます。
冤罪で人生を棒に振ってしまいます。

竜実は、物語冒頭で出会った女性スノーボーダーの写真を
撮ってあげたのを思い出し、彼女がホームグラウンドにしている、
里沢温泉スキー場でその女性を探し、
アリバイの証言をしてもらうことにしました。

波川も一緒に行ってくれることになり、波川のマンションを出て、
後輩の藤岡に口止めをして車を借りました。
時刻は午後11時を少し過ぎたところでした。
Nシステムを避け、高速道路は使わず、下の道で行くことになり、
カーナビで検索しました。

車を発進させようとした時、波川の女友達に声をかけられ、
N駅まで送って欲しいと言われました。
波川は、その女友達と一回やっていて、断り辛く、送ってあげました。

翌朝になり、やっと根津昇平が登場します。

里沢温泉スキー場で、ゲレンデを舞台にした結婚式を始めようということになり、
老舗旅館『板山屋』の経営者の長女の成宮葉月と、
根津の後輩パトロールの長岡慎太が、
宣伝のためにスキー場で結婚式を挙げることになりました。

しかし、スキー場関係者に、そんなノウハウを持っている者はいませんでした。
成宮葉月の妹、莉央(りお)は東京の広告代理店にいたことがあり、
自分がプロデュースしたいといいだしました。

莉央は昔からの伝手を使い、スタッフを集め、
シリーズメインヒロインの瀬利千晶にも声をかけました。
千晶は莉央の親友でもあり、スノーボード選手時代のライバルでもありました。

そしてこの時点で、結婚式は2日後の午後1時に迫り、
根津たちはその練習をしていました。

その頃、警察は竜実を犯人と考え、
小杉は捜査一課の中条という若い巡査長とペアを組み、
竜実が所属しているアウトドアスポーツのサークルを当たることになりました。

中条はスマートフォンで調べ、
竜実が『マウンテン・モンキーズ』というサークルに所属していることを突きとめ、
『マウンテン・モンキーズ』が溜まり場にしているお好み焼き屋に行きました。

お好み焼き屋の店主に頼み、リーダーの藤岡という3年生を呼び出してもらいます。
藤岡は竜実と波川に車を貸していましたが、もちろんそんなことは話さず、
最近は会っていないと答えました。
中条に頼まれ、藤岡はサークルのメンバー全員に、竜実の行き先を知らないか、
とメッセージを送ります。

波川だけが未読だと知り、中条と小杉は波川の部屋に行きました。
所轄の刑事には荷が重いだろうから、本部に戻ってください、
という意味のことを中条に言われ、小杉は内心で怒りながらマンションを出ました。

小杉は自転車を倒した女子大生を助け、その女子大生から、
昨夜、波川と竜実にN駅まで送ってもらい、
カーナビに里沢温泉スキー場までのルートが表示されているのを見た、
という情報を得ることができました。

南原は、本庁を出し抜こうとして、小杉と白井の2人だけで、
3日以内に脇坂竜実を発見し、確保しろと命令しました。

一方、里沢温泉スキー場に着いた竜実と波川は、
アリバイを証言してくれる女性のことを『(救いの)女神』と呼び、
女神を探していました。

まず、女神はスキー場のスタッフではないかと考え、
事務所でインストラクターの顔写真を見ますが、女神はいませんでした。

女神はパウダー好きで、コース外で出会ったと竜実が言うと、
波川は、圧雪などの整備が入っていない山の中を、
地形や自然を熟知したスタッフに案内されながら滑る、
バックカントリーツアーに申し込みました。

講習を受け、ガイドの男性に、友人が一目惚れをした女性スノーボーダーを捜していて、
その女性はコース外を滑るのが好きだから、
地元の人たちがコース外を滑るとしたら、どのあたりが多いか、
と竜実たちは聞きました。
しかし、当然、教えてもらえませんでした。

そこへ、無断で山に入ったきり戻ってこない男を探している根津昇平が現れ、
その男を見かけていた竜実がその場所に案内しました。
すると、その男は木に激突して肋骨を折り、動けなくなっていました。

その頃、小杉と白井も里沢温泉スキー場に到着し、
レンタルショップでスキーヤーの衣装を調達し、
予約してある宿で聞き込みをしましたが、誰も竜実達を見かけていませんでした。
夕食を済ませようと、小杉と白井は店を探します。

偶然前を歩いていた根津と長岡を発見し、根津達が入った居酒屋に、
小杉と白井も入りました。

小杉と白井は、家出したボンボンを探している調査会社の者だと名乗り、
竜実の写真を居酒屋の女将見せましたが、女将は知らないと答えました。
根津もその写真を見ましたが、
木に激突して肋骨を折った男を探していたときに竜実に会っていたのに、
見覚えはないと嘘をつきました。

千晶と莉央と葉月も店にやってきて、明日のリハーサルの話をします。

小杉と白井が店を出ていくと、さっきの写真の男性に見覚えがあった、
という話を根津はしました。
自分たちのツアーそっちのけで案内してくれた竜実達のことを、
悪い人ではないと直感し、根津は竜実達の味方をしてあげたのでした。

一方、公衆電話から大学の仲間に連絡をとった竜実と波川は、
実家に電話して心配ないと伝えました。
パウダーランが好きな女神は朝一番の山頂近くまで行く方のゴンドラに乗る、
と考え、翌朝午前8時にゴンドラ乗り場に行くことにしました。

(ちなみに、このシーンに本編の内容とは関係ないラジオで、
「東京にお住まいのホテルマンのMさん」の話がありますが、
これは「恋のゴンドラ」に登場した水城という男が女性達に話していた笑い話です。
根津昇平も「恋のゴンドラ」にゲスト的な扱いで登場しています。)

一方、旅館で休んでいた小杉と白井は、南原から、
竜実のスマホの過去のGPS位置情報や車の動きを調べ、
事件当日、新潟のスキー場に行っていたことを突き止めたと教えられました。
竜実にはアリバイがあることになりますが、
それは波川が竜実のスマホと車を使い、
アリバイ工作をしたのだと南原は考えていました。

小杉は南原に、竜実と波川のウェアの色と写真が欲しいと頼みました。
南原は小杉と白井に、竜実の車を探せと命令されました。

翌朝、車中泊をした竜実と波川は少し寝坊してしまいましたが、
ゴンドラの営業前にゴンドラ乗り場に到着し、女神を探しました。
しかし、ゴンドラの列の中には女神はいませんでした。

昨日バックカントリーツアーで竜実たちを案内してくれた、
高野誠也(たかの・せいや)という若い男性ガイドを発見し、
その高野から、女神が滑っていそうな滑走禁止エリアを教えてもらいました。

その滑走禁止エリアのコースの入り口で、
竜実と波川は1時間以上見張りましたが、女神は現れず、
諦めて別の場所を探そうと下まで滑り、リフトに乗り直することにしました。

ところが、その途中、竜実は女神を発見しました。
白地に赤の水玉模様のウェアで、ヘルメットは黒、パンツはライトブルーでした。
竜実は女性を追いかけますが、彼女のスピードとテクニックは尋常ではなく、
追いつけず、竜実は途中で転倒して女神を見失ってしまいました。

一方、白井と手分けして竜実の車を探していた小杉は、
昨日入った居酒屋の女将に不審者扱いされて話しかけられました。
村の旅館組合に、長野県警からの竜実の車両の問い合わせのファックスが
あったことを女将に教えられました。

小杉は白井を呼び、刑事の身分を明かし、
上司の指示で自分達2人だけが独自に竜実を追っているということも含めて、
女将に詳しい事情を説明しました。

その時、若者が明日のゲレンデ・ウェディングの資料を持ってきて、
結婚式のことを思い出した女将は、結婚式を成功させるために、
明日、結婚式がすべて終わるのを見届けてから、
竜実がこの村に来ていることを警察に知らせると言いました。

小杉は女将に頼み、竜実を見つける手助けをしてもらうことにしました。

一方、竜実と波川は、コース外を滑っているのを根津に見つかってしまい、
自分達を探している2人組の男がいるのを教えられました。
女性スノーボーダーを探していることを根津に伝えると、
スカイウェイに入ってすぐのところに、
ローカルの悪ガキどもが侵入するポイントがある、と教えてくれました。

公衆電話で後輩の藤岡に電話し、ウェアの写真を刑事が知った、
ということを知った波川は、今すぐ服を着替えないといけない、と言いました。
しかし、刑事がレンタルショップを張っている可能性があるので、
レンタルは使えません。

波川と竜実は高野に、女性に一目惚れをしたのは竜実本人だと言い、
親の決めた婚約者と結婚させたい親に追われていると説明し、
追っ手の目を欺くためにウェアを貸してほしい、と頼みました。

高野は了承し、『カッコウ』というレストランに行ってほしいと言いました。
この『カッコウ』は、「疾風ロンド」に登場したお店です。

『カッコウ』に向かう途中、結婚式のパフォーマー達の会話を聞き、
明日、このスキー場で結婚式があることを竜実と波川は知りました。

『カッコウ』に着くと、高野の弟の裕紀(ゆうき)に話しかけられ、
裕紀とその友達の川端健太のウェアを貸してもらえることになりました。

裕紀と健太も、「疾風ロンド」に登場した悪ガキ達です。

一方、女将は、竜実たちはスノーボードが大好きだから、
逮捕される前に最後の晩餐とし極上のパウダースノーを滑りに来たのだろう、
と考えました。

スキー初心者の白井にはレンタルショップを回らせ、
小杉と女将はスキー場でスキーをして竜実たちを追いかけることにしました。

顔の広い女将は、ゴンドラ乗り場の係員たちに声をかけ、
竜実たちを見かけたら連絡してほしいと頼んで回りました。

女将は若い頃はアルペンスキーの高速系の選手で、地元では有名人なのだと、
ゴンドラの中で話しました。
女将は15年前に夫と結婚し、
夫の祖父の代からやっている旅館を引き継ぎました。

しかし、女将の夫は8年前に肝臓癌で亡くなり、
それ以来女将は旅館と居酒屋の切り盛りをしていました。

一方、根津や千晶や莉央は、
ゲレンデでパフォーマンスのリハーサルの見学をしていました。

千晶の親から電話がかかってきて、電話を切った後、
家業の保育園を継げと親に言われていることを千晶は告白しました。

若いうちは好きなスノーボードをやらせてもらいましたが、
家業を継ぐことが決まったら、二度とスノーボードには乗らない、
と千晶は言いました。

根津も、新潟の小さい建築事務所を継いでいて、
冬場以外は建築士として働いていました。
昔、遊園地みたいなスキー場を作りたいという夢を千晶にしたことがありました。

その頃、根津に教えてもらったコース外のエリアを見張っていた竜実と波川は、
今日はもう女神は現れないかもしれないと思い、正規のコースに戻ろうとします。

しかし、パトロール隊員達がそのコースに『貸し切り閉鎖中』と
書かれた札を立てていました。
ゲレンデ・ウェディングのリハーサルをしていたメンバーの中に、
竜実は女神を発見しました。

パトロールがいますし、警察もこのスキー場に来ている可能性が高いので、
揉め事を起こすわけにはいかず、様子を見ることにしました。

一方、女将のところにゴンドラ乗り場の作業員から連絡があり、
グレーにピンク、ブルーに黄色、という竜実と波川のウェアを発見しました。

しかし、そのウェアを着た2人は林道を滑って逃げてしまいました。

しばらくして、リフトに乗っている2人が小杉達に手を振っているのを見て、
女将は、何だか、おかしいと思いませんか、あの2人、と小杉に言いました。

その頃、竜実と波川はコースを大きく迂回して山麓まで降りていました。
しかし、降りる場所を間違えてしまい、結婚式の集団はもういなくなっていました。
食道やコーヒーショップを回っても見つからず、
高野を頼ろうと『カッコウ』まで行きました。

すると、そこに小杉と女将が待ち構えていました。

川端健太と高野裕紀が、勝手に竜実と波川のウェアを着て滑っていたのでした。

女将は、地元の悪ガキの仕業だと考え、
悪ガキが溜まり場にしている『カッコウ』に来たのでした。

ちなみに、川端健太は女将の甥っ子でした。

小杉は竜実を逮捕して警察署に連れて行こうとしますが、
竜実と波川は無実を訴え、
アリバイを証明できる女性がこのスキー場にいると説明しました。

小杉は竜実達の説明に説得力を感じ、信じ始めていました。

南原から電話があり、一課が藤岡の駐車場で竜実の車を発見し、
竜実達が藤岡の車で逃走していると突き止めた、と教えられました。
本庁の花菱は、人海戦術で逃走車両を調べており、
リミットは明日の午前中だと南原に言われました。

高野誠也は、結婚式のパフォーマンスについて調べ、
例の女将がいる居酒屋で、
パフォーマンスを仕切っている千晶と待ち合わせしました。

やってきた千晶と根津に事情を説明しますが、
さっきのパフォーマンスのリハーサルで滑っていたのは千晶であり、
千晶は今シーズン、一度も新月高原スキー場に行っていない、
人違いだと言われてしまいました。

今朝、コース外でツリーランをしていたのは千晶ではありませんでした。
実はあのウェアは、某スキー場がレンタル用に作ったもので、
市販はされていませんでした。
古くなったそのウェアを処分すると聞き、
赤と白だから縁起がいいと考えた千晶は、
パフォーマンスのウェアを統一するのに使おうと、
数日前に全部で50着くらい、こっちに送ってもらったのでした。

根津に言われ、千晶はパフォーマーにメッセージを送りました。

一方、小杉は女将に、俺たちは将棋の駒だから、
竜実が犯人ではないと思っていても明日の午後には竜実の身柄を確保し、
東京に連れて帰らないといけない、という話をしました。

しかし女将は、小杉は一度は上司に逆らおうとしたと言い、
この人も五分の魂を持っている人だなって思った、という話をしました。

女将が夫と結婚した時、村全体で借金が20億円もあり、
大手企業がスキー場を買い取ろうという話が飛び込んできました。
しかし女将の夫は真正面から反発し、
村の最大の財産を売るというのは魂を売るのと同じだ、
一人一人は小さな虫みたいな存在かもしれないけど、
一寸の虫にも五分の魂がある、
その魂を集めれば大きな力になるはずだ、と主張しました。

女将はその話をした後、小杉さんの魂はどうなんですか、と言いました。

その頃、竜実の部屋の電話に、今回のパフォーマーの中に女神はいない、
ウェアを貸した人もいなかった、という千晶から電話がありました。

女神が何らかの事情で嘘をついている可能性もあるので、
翌日の朝9時に、竜実が直接パフォーマーの女性たちの顔を見て、
女神を探すことになりました。

その話を小杉に伝えると、犯人を明らかにすれば、君の無実を証明できる、
と小杉は言いました。

小杉は殺人事件の概要を竜実たちに説明します。

というか、読者に事件の概要が説明されるのも、これが初めてです。

殺されたとき、
被害者の福丸陣吉は「テレビを見ながら囲碁の研究をしていたのではないか、
と警察は考えていました。

福丸に生前、臨時収入が入ったとかで寿司を食わせてもらったことがあった、
という話を竜実はしました。

現場の写真を見た竜実は、
すでに知っていることばかりで役に立たなかった、
と福丸が言っていた『囲碁ワンランクアップ術』という本が、
テーブルの上に載っているのはおかしいと言いました。

また、福丸は殺されたときにセ○シータレントのイメージDVDを見ていた、
ということになっていましたが、
仏壇が開いていると死んだ奥さんに見られているみたいで落ち着かない、
と福丸が言っていたのに、仏壇が開いているのは変だと竜実は言いました。

仏壇が開いていたのは、犯人がDVDをセットしたからで、
本当は囲碁のDVDが入っていたのだろうということになり、
小杉は始発の電車で東京に戻って犯人を捜すことにしました。


何としてでも証人の女性を見つけるんだ、それができない場合は、必死で逃げろ、
と小杉は言い、部屋を出て行きました。

翌朝、南原からの電話で、
間もなく警察が里沢温泉スキー場にやってくると知った小杉は、
そのことを竜実達に伝えるように女将に頼みました。

竜実はパフォーマーの女性達の顔を見せてもらいますが、
女神はいませんでした。

しかし、ヘルメットに星型のシールが貼ってあったことを話すと、
千晶は、このウェアを持っている人間がもう1人いるのを忘れていた、と言い、
新婦の葉月の妹の莉央がウェアとヘルメットを持っていると言いました。

莉央がいる場所へ行こうとゴンドラに向かいますが、
竜実は警官に見つかってしまいます。
竜実は必死で無実を訴え、アリバイの証人が近くにいると話しますが、
警官は話を聞いてくれません。

竜実はスキーで逃げ出しますが、大勢の警官に囲まれてしまいました。


千晶は「莉央に会いに行き、新月高原スキー場で竜実に会ったのを証言してほしい、
と頼みました。

その頃、中条は完全に竜実を犯人扱いし、
竜実や波川の話を全く聞こうとしていませんでした。

しかし、そこへ小杉から中条へ電話があり、
『たまには被疑者たちの話を聞いた方がいいですよ。
あんたより、よっぽど賢い人間かもしれませんからね。
後で恥をかきたくなかったら、いう通りにすることです』
と言われました。

千晶と莉央がやってきて、莉央が竜実に顔を見せますが、
女神ではありませんでした。
しかし、莉央の姉の葉月が、莉央に無断でウェアとヘルメットを借り、
新月高原スキー場に行き、竜実に写真を撮ってもらっていたのでした。

莉央は葉月に電話しますが、たった今、
妊娠3か月の葉月の具合が悪くなり、
ゲレンデ・ウェディングができなくなってしまいました。

莉央は、千晶と根津に結婚式の代役を頼みました。

葉月は病院に行く前に、竜実と中条のところにやってきて、
アリバイを証明してくれました。

竜実たちは見張りをつけられつつもある程度の行動の自由が許され、
根津と千晶の素晴らしい結婚式を見学しました。


一方その頃、小杉と白井は「岡倉貞夫(おかくら・さだお)という老人の家を訪れ、
福丸と結構な金額を賭けて囲碁をやっていただろう、と言い、
事件前日に囲碁番組を録画したDVDを押収しました。

そのDVDに福丸の指紋が付いていたのが決め手となり、
岡倉貞夫は逮捕されました。

あの日、岡倉貞夫は福丸に頼まれ、前日の夜に録画した囲碁番組のDVDを持参し、
そのDVDを見ながら、金の無心をしました。
岡倉貞夫は日々の生活に困窮し、賭け囲碁仲間に加わりましたが、
負けが込み、支払いに苦労していました。

話を聞いた福丸は、借金を頼む前に、まず負けた分を払え、と怒り、
岡倉貞夫の息子に電話しようとしました。

息子に知られたくなかった岡倉貞夫は、福丸を殺害し、
DVDを入れ替えたり、カムフラージュに教本を置いたり、
お金を盗んだりして逃げ出したのでした。

岡倉貞夫が自供してから一週間後、小杉は再び里沢温泉スキー場を訪れ、
女将に事件解決を報告しました。

そこへ根津と千晶が通りがかり、千晶の家の家業は莉央がやってくれることになった、
という話をしていました。
根津と千晶は本当に結婚することになったのですが、
もう一回本物の結婚式をやりたいと言う千晶と、
二回もやりたくないと言う根津は口喧嘩していました。

また、竜実や波川や藤岡を含めた『マウンテン・モンキーズ』のメンバーは、
お揃いの白地に赤い水玉模様のウェアを着て、
里沢温泉スキー場でスノーボードをしていました。


というあらすじなのですが、東野圭吾作品のシリーズの主人公は、
なかなかヒロインと結ばれないことが多いので、
根津が幸せになってくれたのは良かったと思います。

とても面白かったですし、
ハッピー・エンドになってくれたのも良かったです。

しかし、殺人事件の真犯人の正体がひど過ぎます。

物語のメインは、竜実と警察の攻防や、女神探しであり、
真犯人なんか誰でもよかった、というのは分かります。

でも、いくら誰でもよかったからと言っても、これはないでしょう……。

真犯人の正体がひど過ぎる理由を、メタ的な視点で解説します。

まず、竜実は警察から逃げるだけで精一杯ですし、
警察は竜実が犯人だと思い込んでいるから他の犯人を探そうとしていません。

しかし、読者は違います。

読者は竜実が犯人ではないと知っているので、
誰が犯人なのだろうと考えながら読み進めます。

終盤になって小杉が竜実の無実を信じて、竜実以外の犯人を探そうと、
竜実から情報を聞きますが、その時の会話が事実上答えになっているので、
そこからが解答編で、その直前までが問題編、という風に捉えることができます。

それなのに、「問題編に真犯人の岡倉貞夫が全く登場していません。
全部で409ページの話なのに、岡倉貞夫が初めて登場するのは395ページ目です。

問題編には、物語の鍵となる囲碁の囲の字もなければ、
セ○シーDVDや囲碁の教本というヒントも全く登場しません。

つまり、この話は、問題編に登場しなかった犯人が、
問題編には登場しなかった動機で、
問題編には登場しなかった方法を使ってカムフラージュしていた話だった、

ということになります。

いくら何でもひど過ぎるでしょう。

ほんの一行でいいから、「岡倉貞夫が序盤に登場していたり、
福丸陣吉の趣味が囲碁だと序盤で書かれていれば、
こんな不満は抱かなかったのに、と思います。

っていうか、全く登場してなかった岡倉貞夫を犯人にするくらいなら、
動機の賭け囲碁やカムフラージュはそのままで、
柴犬のペロの散歩のバイトを竜実に紹介した大学の教官が犯人だった、とか、
『マウンテン・モンキーズ』が溜まり場にしている
お好み焼き屋の店主が犯人だった、という風にすることもできたはずです。

何でよりによって、一行も登場してない奴を犯人にするんだよ、と思います。

現実の事件ならそれでいいですが、これは小説なんですよ。

解決編で初めて真犯人が登場して喜ぶ読者がいるとでも思っているのでしょうか。


全体としてはとても面白い話だっただけに、その部分が残念です。 見やすい記事一覧はこちらです。
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