西澤保彦「からくりがたり」のネタバレ解説

からくりがたり


西澤保彦さんの「からくりがたり」のネタバレ解説です。
連作短編集なのですが、あまり出来がいいとは言えないので、
もしもあなたが「七回死んだ男」とか「人格転移の殺人」や
匠千暁シリーズを読んでいないのなら、
そちらを先に読むことをお勧めします。

官能小説的な描写の多い作品集なので、
耐性のない人は注意した方がいいと思います。
(男も女もヤ○チンヤ○マンばっかりです。
避妊とか性感染症の予防とかしてる描写がないけど大丈夫なんだろうか、
と不安になります。
特に女性は妊娠というリスクがあるのにこれはないだろう……と
思ってしまうのですが。)

また、2~7話は、それぞれの前話の約1年後の話になっています。


第1話「遺品がたり」は浅生倫美の視点で進みます。
高校3年生の1月に、倫美は佐光という苗字の女性に会うために
喫茶店〈そねっと〉を訪れますが、佐光は既にお店を辞めていました。
倫美が佐光に会いたかったのは、2年前に自殺した兄・唯人の遺した日記に、
彼女の名前が登場したからでした。
その日記に寄よると、倫美の兄は佐光や梶尾順子教諭、
倫美の友人の下瀬沙理奈といい関係にあったらしいのですが、
倫美はその日記の内容が嘘であると推理します。

お正月にスエツグというお婆さんが殺されたという事件を
〈そねっと〉で耳にした倫美はそれが気になり、翌日調べます。
スエツグというお婆さんが殺された事件では写真が盗まれていたのですが、
沙理奈の家でも2年前に写真が盗まれるという事件が起こっていたのでした。

やがて"計測機"という印象を受ける男が倫美に話しかけてきます。
"計測機"は「犯人が写真を盗んだのは自分だけのアルバムを
作りたかったからではないか、という推理を披露します。



第2話「桟敷がたり」では、下瀬沙理奈は、
地元の御霊谷空港から羽田空港へ向かう途中、
機内に爆弾を仕掛けたという電話があったせいで、
飛行機が空港に足止めされてしまいます。

そこで沙理奈は友人の進藤笹絵と出合います。
笹絵は東京に行っている父親が危篤状態だという悪戯電話を受け、
東京へ向かう途中だったのでした。
さらに、沙理奈のところにも悪戯電話がかかっている最中に、
2人が乗るはずだった飛行機の次の便が爆発するという事件が起こります。

タクシーに乗り合わせた"計測機"は、沙理奈に「彼女たちが昨夜の合コンで
手ひどく振った男の子達の中の誰かが悪戯電話の犯人だろうと推理します。
そして紗理奈は新聞に載っていた飛行機の予約状況から、
あの悪戯電話は本物の爆弾犯に便乗したものであると結論を出しました。



第3話「玩具がたり」では、行方不明になっている国生真紀が、
藻原という男の家に監禁されているのではないか、という話を、
真紀の友人の貞広華菜子は浦部櫂児から聞きます。
そして華菜子と櫂児と阿東誠治郎の3人で藻原の家へ行くのですが、
そこにあったのは人形だったのでした。

やがて「藻原とは全然関係なく遊び呆けていただけの真紀は、
ひょっこりと戻ってきました。
本来、藻原とグルだった櫂児は華菜子と2人で藻原の家へ行く
予定だったのですが、阿東も来たため急遽人形を用意し、
後日気になった華菜子が1人で家へ行くように仕向けるつもりだったのですが、
"計測機"のせいでそれは実現しなかったのでした。



第4話「除夜がたり」では、「遺品がたり」に名前だけ登場した佐光彩香は、
食べきれないほど大量の惣菜を買い込み生ごみを作り出す認知症の姑から逃れ、
末次嘉考の愛人となっていました。
彩香の夫の佐光陽志は、「自分が4年前から連続している、
毎年元旦の前後に女性が殺されるという事件の犯人は自分だ――
という妄想に囚われていました。
陽志は彩香を殺そうとしますが、2人とも暴走車に跳ねられ亡くなりました。


ところでこの大量の生ごみを作る老婆というのは、
同じ西澤保彦さんの「夢は枯野を駆け巡る」で使われたエピソードを
流用したものになっています。


第5話「幼児がたり」では、倫美、沙理奈、華菜子、
真紀などの友人である加代子が、
毎年正月に女性が殺されるという事件の被害者となってしまいました。

さらに国生真紀は、「自分の住むマンションの上の部屋に住む宮内夫人が
夫から虐待されていることを見抜いてしまったせいで、
彼女に殺されてしまいます。
加代子も同じ理由で殺されていたのでした。
真紀はそのことを死後に"計測機"から教えられるという、
かなり超常的な話となっています。



第6話「不在がたり」は「幼児がたり」から1年後の話です。
梶尾順子教諭は、彼女のかつての教え子であり、
昔付き合っていた鵜飼広親の結婚式会場の前で、
倫美たちの友人の相田貴子に話しかけられます。
実は貴子も鵜飼の元カノであり、鵜飼が自分たちの性○為を
隠し撮りした写真を保存していることを教えられます。

貴子には「予知能力があり、
鵜飼広親が殺されることを予知していたのですが、
その際に元カノの自分たちが疑われるかもしれないと思い、
順子を誘って乱交パーティーを開きました。
殺人があった時間には乱交をしていましたよ、
というアリバイを作るつもりだったらしいのですが、
高校教諭であり夫もいる順子にしてみればとんでもない有難迷惑だったため、
激高した順子は貴子を殺してしまいます。

しかし、順子自身も気が動転していたため、
逃亡の際に自転車で側溝に転落し溺れ死んでしまいました。



第7話「傀儡がたり」では、倫美は自分の母親が、兄・唯人の亡き後も、
唯人の代わりに日記を書いていることを知ります。
その日記の中では、唯人や加代子や真紀や貴子が
まだ生きていることになっており、
男の妄想が詰まった官能小説のような話が延々と続いていたのでした。

精神状態のおかしくなった母が、お正月殺人に便乗して、
沙理奈や華菜子や笹絵を殺すかもしれないと考えた倫美は、
沙理奈や華菜子を集めて年越しパーティーを開くことにしました。

しかし年が明けてもなかなか沙理奈が現れず倫美は不安になりましたが、
バスが爆発するという事故から間一髪で逃れた沙理奈は無事に遅れて到着し、
元日の夕方になっても倫美たち3人は無事でした。

ところが家に帰った倫美を待っていたのは、「ハワイにいた笹絵が、
ホテル〈ミクリヤ・サザンステイ〉で起こった爆弾テロに巻き込まれた
と推測できるニュースを見ます。
さらにその直後、倫美は母親が血の海に沈み、
その傍に兄の筆跡で『解雇通知』と書かれた紙が落ちているのを発見します。



第8話「呪詛がたり」は「傀儡がたり」から半年後の話です。
唯人の怨念が倫美の周囲の人物を次々と殺していった、という話になっていきます。
華菜子が櫂児に殺されるところを櫂児の視点から見るという描写まであります。

倫美は唯人の思念と同化し、自殺することで兄を「成仏」させようとします。
ところが自殺する直前に、携帯電話に"計測機"から電話がかかってきます。
さらに、倫美の前に沙理奈も現れ、"計測機"の話を聞くようにと言います。
実は「この『呪詛がたり』の中で唯人の視点から書かれた話はすべて、
倫美が書いていたものだったのでした。

そして、読者にとっては受け入れがたいですが、
お正月連続殺人はそれぞれ別々の殺人事件が偶然お正月に起こっただけ、
という結論になってしまいました。



長くなりましたが、あらすじは以上で終わりです。

さて、この本を読んだ大部分の人は、
結局"計測機"は何者なんだよ!
と思ったことでしょう。

本の最後のページで、
「単純な話だ、奇天烈なからくりなどありはしない、なにひとつ……」
と開いたままの携帯電話の待ち受け画面が呟く、という描写があります。

いやいや、お前の存在の方が奇天烈なんだよ、とツッコミを入れたくなります。

それでは"計測機"の正体について考えてみたいと思います。
何か超常的な存在だったならそれまでですが、
仮に"計測機"が超常的な存在ではなかったとしたらどうなるのか?
という前提で考えると、次のようになります。

"計測機"の正体は倫美の妄想です。

ええー……という感じの解釈ですが、考えた中ではこれが一番矛盾が少ないです。
開いたままの携帯電話の待ち受け画面から"計測機"の呟きが漏れているのを
倫美が聞いていたということは、
少なくとも第8話『呪詛がたり』に登場する"計測機"の声は、
倫美の幻聴だったことになります。

しかし、ここで問題が1つ発生します。
最後に唐突に現れた沙理奈も、"計測機"の存在を認知しているんですよね。
倫美に"計測機"の話を聞くようにと言っていますから。

そうなると、この『呪詛がたり』に登場した沙理奈も倫美の妄想
だったということになります。

おいおい、という感じですが、それには一応根拠があります。
『呪詛がたり』の前話の『傀儡がたり』で、
沙理奈はバスが爆発するという事故から間一髪で逃れています。
実はこれは倫美にとって都合のいい妄想であり、
本当は沙理奈はこのとき爆発事故に巻き込まれて
死んでいたのではないでしょうか?

もっと言うと、沙理奈がバス爆発に巻き込まれて死んだというニュースを、
笹絵が爆弾テロに巻き込まれて死んだというニュースに置き換えて
認識していた可能性もあります。
倫美は2人が『桟敷がたり』で飛行機の爆発に巻き込まれそうになった、
という話を知っていたでしょうから、そこから連想したのかもしれません。

ところで、"計測機"が超常的な存在ではないという仮定に立つと、
第5話『幼児がたり』も問題になってきます。
この話では"計測機"は、既に死んでいる真紀と話をしています。
これを『奇天烈なからくりなどない、単純な話』だとして考えると、
この第5話そのものが倫美の書いた文章だった可能性が浮上します。

最終話で倫美は兄・唯人の視点から華菜子が死んだ状況を見ている手記を
書いています。
この手記と同じように、死んだ真紀の視点から真紀が殺された事件について
書いたのではないでしょうか。

そうすると、第2話から第7話まで、
すべてが倫美の書いた手記だった可能性もあります。
ただし、第1話で出会った"計測機"は実在の人物だったのかもしれません。
18歳の倫美に強烈な印象を残した"計測機"を2~7話に登場させ、
探偵役をやらせることで、
倫美は自分が本格的に狂い、自殺しそうになったとき、
"計測機"に自殺を止める役目を担わせようとしたのではないでしょうか。
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