貴志祐介「鍵のかかった部屋」4話「密室劇場」のネタバレ解説

短編集最後の話で、今回はギャグ回です。

純子と榎本は、
「Dog knows 犬のみぞ知る」に登場した劇団、
『土性骨(どしょつぼね)』の公演に招待されました。

劇団の名前は『ES&B』に改名されましたが、
役者は同じです。

開演を告げるブザーが鳴り、進行役のジョーク泉が舞台に出てきて、
『彼方の鳥(ヨンダー・バード)』の上演の前に、
前座のパフォーマンスがあることを告げます。

まず、日本一高速の手品師、須賀礼(すが・れい)が出てきて、
高速でレパートリーを一通りやりました。

次に、力業師のマービン羽倉(はぐら)という、
スキンヘッドで筋肉隆々の男が出てきて、
アシスタントのバニーガールたちを宙に投げ上げ始めました。

3人目は、パントマイマーの富増半蔵(とます・はんぞう)が出てきて、
静かなパフォーマンスを見せました。

4人目は、日系パナマ人という触れ込み(要するに嘘)の空手家、
ロベルト十蘭(じゅうらん)が出てきて、空手の型で、
瓦割りやビール瓶の首を手刀で切り落としたりしましたが、
終わりの方はただ力まかせにぶっ叩いているようになりました。
するとマービン羽倉が進み出て、舞台用の作り物のビール瓶で、
ロベルト十蘭の頭を殴りました。

4人が、2人ずつ左右の舞台袖に下がると、
いよいよ休憩なしの90分ほどの劇『彼方の鳥』が始まります。

近未来のモハベ砂漠に飛行機が墜落したという設定で、
舞台の上には飛行機の残骸のセットや大小様々なサボテンがありました。

力八噸(りき・はっとん)や松本さやか、
アントニオ丸刈人(マルガリート)など、
劇団の人気俳優たちがドタバタ劇を繰り広げます。

やがて無線がつながり、飛行機から飛び出してきた力八噸が、
サボテンの切り出しに正面衝突し、顔面を強打して仰向けにひっくり返ると、
客席は爆笑に包まれました。

そのとき、純子の隣に座っていた左栗痴子(ひだり・くりちこ)が、
ロベルト十蘭が劇にも出演するはずなのにちっとも出てこない、と言います。
栗痴子は、本番中の舞台にいる力八噸に向かって、
十蘭を見てきてと大声で言いました。

力八噸は、いったん上手に退場してから戻り、下手の舞台袖に下がりました。

突然、力八噸が舞台に飛び出してくると、「しんしんしん!」とか、
「ころころころ……!」と、鶏の真似のように必死で両手を上下させたり、
頭をぱしぱしと叩いたりして、顔を真っ赤にして叫び続けます。

笑いの神が降りてきて、純子も榎本も大笑いしました。

芝居はグズグズのまま幕となり、観客たちは引き上げていきました。

榎本はロビーの前の売店で立ち止まり、緑色のモヒカンの劇団員から、
ビールを買いました。
榎本は売店の奥のドアを不正解錠し、控え室に進みます。

そこで、ロベルト十蘭が何者かに頭をビール瓶で殴られて殺されていました。
力八噸はさっきのお芝居の間にこの死体を発見し、取り乱したのでした。

純子は警察に通報しようとしますが、榎本は猶予が欲しいと言い、
劇団員たちから話を聞きます。

舞台上手からは楽屋口を通して直に建物の外に出られますが、
ロベルト十蘭が殺された下手の楽屋から出ようと思ったら、
ロビーの売店横の出口を通るか、舞台を横切るかの、
二択になってしまうのでした。

舞台で手品やパントマイムをした後、4人が2人ずつに分かれて、
上手と下手に引っ込んだとき、ロベルト十蘭と一緒に下手に行った人間が、
犯人の可能性が高いということになりました。

しかし、容疑者の須賀礼、マービン羽倉、富増半蔵の3人は、
全員が上手に行ったと主張しており、
自分と一緒に上手に行ったのが誰なのかは覚えていませんでした。

(ところで、マービン羽倉のアシスタントのバニーガールたちは、
どうなったんでしょうね?
誰がどのように舞台袖に下がったかが重要な話なのに、
全く説明がないです。)


モヒカンは、ロベルト十蘭と誰かが言い争うような声を聞いた、
と証言しました。

榎本はその証言を聞いて、ロベルト十蘭は他の誰かと、
漫才をやろうとしたのではないか、と推理しました。
なぜ漫才なのかというと、ロベルト十蘭の遺品に、
漫才のネタ帳が見つかったからです。

また、3人のうち、マービン羽倉は「マーベラス!」と叫びながら、
差し入れの寿司をぱくついていたところを目撃されており、
アリバイがありました。

榎本は、「インチキ関西弁を喋る富増半蔵に向かって、
あなたが、誤って、ロベルト十蘭さんを死に至らしめたんですね?
と訊きました。

ロベルト十蘭が控え室で『本気でM1目指してみいひんか?』と、
とっくに終わったM1の話をしたため、
富増半蔵はビール瓶で突っ込みをしようとしました。
ところが、そのビール瓶は、飴で作った偽者ではなく、
本物のビール瓶だったため、ロベルト十蘭は死んでしまったのでした。

控え室から脱出したのは、サボテンの切り出しを持ち、
その背後に隠れて、舞台を横切ったのでした。

舞台上を移動しなければならない距離は10メートルほどで、
犯人が使えた時間は80分ほどはあったので、時速7・5メートル、
秒速にして0・2センチほどで移動したことになります。
動きがあまりにもゆっくりすぎて、
観客はサボテンが移動していることに気づかなかったのでした。

クイズ番組などで流れるアハムービーという動画でも分かるように、
人間はゆっくりすぎる変化を見逃してしまうのです。

そして、このトリックが可能だったのは、
パントマイマーの富増半蔵だけでした。

富増半蔵が、ロベルト十蘭の最後の言葉は、ひょっとしたら、
マジやったんかなあ、と遠い目をして言ったところで、
この話は終わります。


というあらすじなのですが、ギャグ回であっても、
トリック自体はとても意外なものでしたね。

視線による密室からの脱出トリックとして考えると、
物凄い新機軸なんじゃないでしょうか。 見やすい記事一覧はこちらです。
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