星新一「天国からの道」のネタバレ解説

この「天国からの道」は、「天使考」の改稿前のバージョンの話です。

序盤に天使が2組に分かれて競争する流れは同じなのですが、
途中の展開とオチが全然違います。

天国は長い間独占企業だったので、天使たちはしだいに役人臭を帯びてきて、
怠け癖がついてしまい、人間に対するサービスが悪くなっていました。

それに怒った神様は、世界を破滅させ、
天使たちに天の川で土木工事をさせる、と言い出しました。

土木工事をやりたくない天使たちは、心を入れかえて、
どんないいつけにも従いますと言いました。

神様は、天使たちをガブリエル社とミカエル社の2組に分けて、競争をさせ、
魂を大ぜい天国まで案内してきたほうの組には褒美を出し、
魂のこなくなったほうは天の川に工事に行ってもらう、と言いました。

天使たちがやる気になったのを見て、
神様は神殿のなかの雲のベッドで昼寝をはじめました。

まず、天使たちは門の見栄えをよくしますが、
魂たちは今までと同じように長い暗い虚空を旅して
天国にたどりつかなければなりませんでした。

ガブリエル社は虹を引き伸ばし、銀色のボートを浮かべて、
ミカエル社の客を横取りしました。

しかし、ミカエル社は彗星の尾を長く引き伸ばし、
金のケーブルカーを作りました。

魂は早く天国に行きたがっているので、スピード対決になりますが、
両社のスピードは頭打ちになり、差がつかなくなりました。

こんどは、人間が生きているあいだによく考えさせておき、
その判断に任せることにしました。

ミカエル社の天使は死刑囚に目をつけ、
生前にミカエル社の客になるよう約束させましたが、
出し抜かれたガブリエル社の天使は牧師に頼み、
ガブリエルを信じ任せなさい、と死刑囚に言わせました。

ミカエル社から神経痛の薬をもらった牧師は、
1回置きにミカエル社と伝えることにし、
またしても差がつかなくなりました。

(……ところで、死刑囚が天国に行くのって、
しまうましたは納得いかないんですけど……。)


ガブリエル社の天使たちは病院へ行き、病人の世話をして、
自分たちの社に死んだ病人がくるように工夫しました。

しかし、ミカエル社は病人たちに病気が治る薬を与え、
病院はひまになり、ガブリエルの努力は水泡に帰しました。

ガブリエル社はラジオA社を買い取り、テーマソングを流します。
すると、ミカエル社もラジオB社を買い取り、テーマソングを流します。

テレビの番組のスポンサーにもなりました。

宣伝としてマッチや鉛筆を配ったり、結婚相談所を作ったりもします。

人間たちは誰もが天使のサービスを喜びましたが、
ずっと医者を目指していて、やっと開業にこぎつけた、
タンという男は天使たちを憎んでいました。

タンは、頭を枕に乗せれば眠りに落ち、朝まで楽しい夢を見られる、
ユメミキという枕を開発しました。

ガブリエル社とミカエル社は、そのユメミキを欲しがり、
タンのところに通って札束で交渉します。

しかし、金銭に価値がないように思えてきたタンは、
一生使える奴隷をよこせ、と言いました。

ガブリエル社の天使は、美人のロボットをタンに与えました。
ロボットに世話してもらううちに、タンは気が抜けてしまいました。

タンと結婚する予定だった、薬剤師のミムコは悔しがり、
すぐに眠れる新香水ハープを開発しました。
香水は流行し、ユメミキの威力は減りはじめました。
ミムコも気が抜け、タンの家に行き、結婚しました。

ミカエル社の天使は、最初に「ミカエル」と言うことで自動で作動する、
水道の蛇口、ガス台、スイッチ、テレビなどを開発し流行らせました。

一方、ガブリエル社は「ガブリエル」と言うことで言うことをきく、
サンタクロース型のロボットを流行らせます。
蛇口やガスに向ってミカエル社の名前を呼ぶのは、
ロボットの役目になりました。

ミカエル社は、立体的に見えるメガネ式テレビを完成させ、
流行らせました。

(これはよく考えると、今、世界中で流行の兆しを見せている、
VRゴーグルですね……。
とうとう、時代が星新一さんの想像力に追いつきはじめましたね。)


人々はロボットに仕事をさせ、
一日中メガネ式テレビで番組を観ているようになりました。

番組は、天国で退屈している魂たちにつくらせ、
さらに自動でアニメ番組を作ってくれる機械も開発しました。

(最近、アニメ会社の社長が、
「アニメ制作は全てAIに代替されるかもしれない」
と発言して物議を醸しだしていましたが、
星新一さんはそれを何十年も前に予言していたわけですね。)


人間たちの一生は「軌道に乗りました。

子供の頃はロボットが世話してくれ、
ある程度成長するとメガネ式テレビをつけて勉強し、
天使のサービス社に結婚相手を探してもらい、
一生、仕事をせずにメガネ式テレビをつけて生活し、
ハープ香水かユメミキで眠る、という人生を送るようになりました。

ガブリエル社とミカエル社のサービス競争は、
これ以上人間の生活に食い込めない限度に達し、均衡状態を保ちます。

長い昼寝から目覚めた神様は、地上を見渡し、あっ、と叫びました。

地上は完全な魂製造機となり果てていました。
人間の一生は苦しみも悩みもなく、栽培される作物のように、
魂を天国に提供するだけのものになっていました。

天使たちは悪いことをしたと思っておらず、
神様にほめてもらいたがっていました。

神様は、この次に世界を作る時にはもっと注意してやらなくては、
と考えました。


というあらすじなのですが、天使たちが頑張りすぎたせいで、
人間は天使たちの家畜になってしまったわけですね……。

人間は、食べられるのを待つ、鶏や豚みたいになってしまいました。

何ともブラックなオチですが、どんどん便利な世の中になって、
誰もが働く必要がなくなれば、天使がいなくても、
そのうちこんな世界がやってくるのかもしれませんね。                  スポンサードリンク

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