貴志祐介「天使の囀り」のネタバレ解説

天使の囀り (角川ホラー文庫)


主人公の北島早苗は、ホスピスに勤める29歳の精神科医です。

早苗の恋人の高梨光宏は、かつては人気作家でしたが、
現在は落ち目の小説家です。
しかし、株の取引で儲けていたため、お金には困っていませんでした。

早苗は、高梨が死恐怖症(タナトフォビア)に蝕まれ始めていることに気づき、
心配していました。

高梨は新聞社の主催するアマゾン調査プロジェクトに加わることになり、
1997年の1月からアマゾンへ行きました。

高梨たち探検隊は、カミナワ族の集落の西にテントを張って生活しています。
集落の北のはずれには、3年ほど前から1年間、
オマキザルを研究していたアメリカ人の夫妻が住んでいた、
焼け焦げた小屋の残骸がありました。
しかし、カミナワ族の人たちは、
そのアメリカ人夫妻について詳しい事情を語りませんでした。

高梨は早苗に、メールでアマゾン探検隊のメンバーを紹介します。

救世主(メサイア)コンプレックスの持ち主である、
55歳の文化人類学の蜷川(にながわ)武史教授。

新世界ザルの専門家で、自分自身もオマキザルの一種に似ている、36歳の森豊。

苔と地衣類の研究をしている、大兵肥満の45歳の私立大学助教授の赤松靖。

32歳のカメラマン、白井真紀。
この4人が、高梨が主に行動を共にしているメンバーです。

3月の初めに、高梨は蜷川、森、赤松、真紀の4人と一緒に、
カミナワ族の集落を離れてフィールドワークに出かけました。
ゴムボートに乗って川を遡っていきましたが、
川の流れが前回の調査と変わっており、道を間違えて遭難してしまいました。

有毒物質が溶け出した「黒い川」だったため、釣りもできず、
わずかな量のレトルト食品を食べて寝ました。

翌日、川を下って、元来た地点に戻ろうとしましたが、またしても道に迷い、
ボートが転覆しかかったせいで弾丸を川の中に落としてしまいました。

日が暮れ、お腹を空かせていると、頭だけ1本も毛が生えていない、
50センチくらいのサルがやってきました。
ウアカリという種類に似ていましたが、これまでに発見された種類と違い、
頭が白くなっていました。

お腹を空かせていたため、高梨たちはそのサルを殺し、焚き火で炙って食べました。

その後、高梨たちはカミナワ族の集落に戻ることができましたが、
高梨たちが道に迷ったときに行った場所が「呪われて」おり、
高梨たちが「穢れて」いるからと、集落から追放されてしまいました。

ここで場面が変わり、早苗がホスピスで働いている場面になります。
早苗は、両親が薬害エイズで亡くなり、
自身もHIVに感染してしまった上原康之少年に対して心を痛めていました。

ある日、アマゾンに行っていたはずの高梨が、今は成田にいるという電話が入ります。

ホスピスへやってきた高梨は、以前は吸わなかった煙草を吸うようになっており、
表情が以前と比べてみちがえるほど明るくなっていました。
高梨は、死ぬことが、けっして恐ろしいことじゃないと気がついた、
と、以前なら絶対に言わなかったことを口にします。

さらに、高梨は「天使の囀り(さえずり)」と呼んでいる、幻聴を聞いていました。
早苗には聞こえませんでしたが、高梨には、最初は羽ばたきの音が聞こえ、
天使が囀っているような音が聞こえるのだそうです。

寝室のベッドに移動すると、高梨は自分の首にベルトを締め、
引っ張ってほしいと早苗に頼みました。

後日、早苗はアマゾンでの高梨の様子を知ろうと、
アマゾン調査プロジェクトを主催した新聞社に電話しました。
社会部の福家という男が出ますが、収穫はありませんでした。

早苗が職場でコーヒーを飲んでいると、高梨がアポなしでやってきて、
早苗を抱こうとしました。
しかし、早苗は当然怒り、高梨を追い返しました。

後日、早苗は高梨の紀行文が連載されている『バーズ・アイ』という雑誌を購入し、
読みました。
『バーズ・アイ』には蜷川が採集してきたというカミナワ族の民話も載っていました。

その中の『憑依』という作品は、兄弟が夜の森の中で大勢の人と出会い、
「これを食べろ」と言われ、猿の肉をもらう話でした。
弟は食べませんでしたが、兄は肉を食べてしまいます。
翌朝、帰り道には『悪魔の猿』の死骸がありました。
兄は人が違ったように貧食になり、村人のために持って帰るはずの獲物を食べてしまいます。
家に帰ると、兄は夜中に外へ出て、『悪魔の猿』から何かを受け取り、
それを明日村人たちと分ける肉に振りかけていました。
弟が村人たちにその話をすると、村人たちは兄弟の家に火をつけ、
家から出てきた兄を殺してしまいました。

以上が『憑依』の内容です。

後日、ホスピスで高梨と再会した早苗は、
高梨が120キロくらいに太っていることに驚きました。

高梨は眠れないから睡眠薬が欲しいと言います。
早苗は薬局へ向かい、処方箋を書いて薬を受け取って部屋に帰りました。
しかし、高梨はすでにかえってしまっていました。

数時間後、早苗は机の引き出しの奥に入っていた睡眠薬の瓶が、
3つとも消え失せていることに気づき、高梨に電話しました。

高梨は、様子がおかしく、天使の囀りがうるさいと言い、
お酒といっしょに睡眠薬を飲んでいました。
早苗は死なないでと叫びますが、高梨はおやすみと言い、自殺してしまいました。

ここで視点が変わり、28歳のフリーター、荻野信一の視点になります。
信一は子供の頃から重度の蜘蛛恐怖症でした。
人付き合いが苦手で、コンビニでのアルバイトもうまくいっていませんでした。

一人暮らしをしているアパートに帰ると、姉から電話がかかってきて、
お見合いの話をされました。
信一はお見合いを断り、自分はライターだと言いますが、
姉は信一のことをプー太郎だと言いました。

信一は一方的に電話を切り、
『天使が丘ハイスクール』というパソコン用のエ.○ゲーをプレイします。
今は、そのヒロインの川村紗緒里を攻略しようとしているところでした。
ゲームの中には、実は天使という設定の美歌&絵留というキャラクターも登場しました。

疲れてゲームを終えた信一は、インターネットに『美歌&絵留』と入力して検索し、
『地球(ガイア)の子供たち』というサイトを発見しました。
どうやら宗教か自己啓発セミナーのサイトのようでしたが、
美歌&絵留の画像があったため、そのまま読み進めました。

信一の章が終わり、また早苗の章になります。

高梨の死後、ずっと落ち込んでいた早苗は、新聞記者の福家からの電話で、
高梨の短編が純文学専門の月刊誌に載っていると教えてもらいました。
早速、その月刊誌を買うと、高梨の小説のタイトルは
『Sine Die(サイニー・ダイイー)』でした。
内容は、純粋な喜びを感じて『死』を志向しているようなものでした。
タイトルも、「死ね。Die(ダイ)」という命令文のように見えました。

早苗は、高梨の妹で27歳の鍋島圭子と一緒に、
高梨のマンションへ行き、形見分けをしてもらいます。
するとそこで、『死』をテーマにした大量の書籍を発見しました。

高梨の貸倉庫に行くと、一冊のルースリーフを見つけました。
そのルースリーフには、沢のような場所に、
いびつなキノコに似た物体が点在している写真が挟まっていました。

自宅に帰ってそれを読むと、高梨が冒頭のメールに書いていた、
アメリカ人夫妻の遺品のようでした。

ルースリーフには新聞も挟まれており、その記事によると、
霊長類学者、ロバート・カプランとジョーン・カプランの夫妻は、
アマゾンでオマキザルの生態調査をしていましたが、
ロバートが突発的に精神に異状をきたし、
妻のジョーンを殺害し、焼身自殺したのだそうです。

ルースリーフの研究日誌によると、
ジョーンは、群れから放逐されたアカウアカリというサルを、
飼育していたそうです。
その日誌には、守護天使(ガーディアン・エンジェル)の羽ばたきが聞こえる、
という、高梨が聞いていた天使の囀りと酷似したものが書かれていました。

ロバートによる「エウメニデス」という走り書きも残されていました。

早苗は、世界各国の神話の比較研究を大学で教えている、
同級生の黒木晶子に電話し、エウメニデスとは何かと訊きます。
すると、ギリシャ神話に出てくる、
髪の毛が蛇の、復讐の女神たちのことなのだと言われました。

さらに、ロバートの手記には、エウメニデスの正体を、
「Pseudopacificus cacajaoi」と命名する、と書かれていました。
これは生物の学名なのではないかと思い、調べてみると、
「偽りの平和を与えるもの」という意味らしい、と分かりました。

ここで再び信一に視点が変わります。

信一は『サオリスト』というハンドルネームを使い、
『地球の子供たち』のオフ会というかセミナーに参加しました。

オフ会参加者の『トライスター』というハンドルネームの少女が、
エ.ロゲーの『天使が丘ハイスクール』に登場する、
若杉美登里というキャラクターに似ていることから、
心の中で勝手に美登里ちゃんと呼んでいました。

東京から1時間40分ほどバスに揺られ、セミナーハウスに到着します。

『庭永先生』や『めめんと』氏の進行で、セミナーが始まります。

夕食後、グループを作ることになり、
信一は『美登里ちゃん』と、先端恐怖症の中年女性の『憂鬱な薔薇』、
醜形恐怖症の青年の『ファントム』と同じ班になりました。

研修の最初のプログラムは、自分の悩みについて打ち明ける、
というものでした。
信一は、幼少時から、異常なレベルの「教育ママ」である母親に、
虐待と言っていいような英才教育をされていました。

しかし、小学4年生になったある日、
心因性の腹痛に襲われて大量の習い事に行けなくなったことをきっかけに、
母親に見放されました。

担任教師にも嫌われ、学校へ行かなくなり、それ以来、28歳の今日に至るまで、
信一は再び人生に参加する機会を見つけられないでいました。

『憂鬱な薔薇』は、高校時代にクラスの中で吊し上げのような非難を受け、
全員からいっせいに指を突きつけられたことで、先端恐怖症になりました。
家族との折り合いや近所づきあいがうまくいかず、
新興宗教をはしごするのが趣味になってしまいました。

『ファントム』は、20年前、彼が4、5歳の時に、
実家のメッキ工場で事故に遭い、
顔に痣が残ってしまったことで苦しんでいました。

しかし、信一は『憂鬱な薔薇』と『ファントム』の悩み事を聞き流し、
そのことで『美登里ちゃん』から睨まれます。
いたたまれなくなった信一がトイレに行っている間に、
『美登里ちゃん』は『憂鬱な薔薇』と『ファントム』に悩み事を打ち明けてしまい、
信一は『美登里ちゃん』と不仲になってしまいました。

研修最終日に、大広間に集められた信一は、
『庭永先生』が守護天使について話すのを聞きました。
研修の締めくくりの儀式である『聖餐』と称し、
得体の知れない生焼けの肉を食べるようにと強要されます。

苦労して食べると、守護天使はみなさんの中に迎え入れられました、
と『庭永先生』が宣言し、拍手が起こりました。

再び早苗の視点に戻ります。

早苗は、アマゾン探検隊のメンバーの赤松靖が、
那須高原サファリパークで、禁止地域で車から降り、
トラに咬まれたというニュースを見ました。

新聞記者の福家に誘われ、早苗は赤松が入院している病院へ行き、
赤松が危険な状態だと聞きました。

警察へ行くと、赤松が所持していた紙切れを見せてもらえました。

その紙をタクシーの運転手に見せ、
天使の荊冠(けいかん)美術館に案内してもらいます。
そこで、天使の羽は猛禽類の羽をモチーフにしている、
と意外な話を知りました。

帰りの新幹線の中で、福家は、アマゾン探検隊のメンバーである、
白井真紀というカメラマンも死亡していたことを教えてくれました。

白井真紀は、中央線の水道橋駅のプラットフォームで、
6歳の娘を線路に投げ落としました。
その後、自分も線路に飛び降り、母子ともども死亡していました。

白井真紀には、乳幼児突然死症候群で長男を亡くした過去があり、
何よりも子供を失うことを恐れていたはずでした。

赤松も、肉食獣に襲われることを恐れており、
高梨も、自分が死ぬことを何よりも恐れていました。

亡くなった3人には、本人が一番恐れていたことを実現してしまった、
という共通点がありました。

アマゾン探検隊の残りのメンバー、蜷川教授と森豊は、
現在行方不明になっているのだそうです。

再び信一の視点になります。
セミナーから帰った後、信一はコンビニのバイトも上手くいくようになり、
『美登里ちゃん』とも仲直りし、順調でした。
ライター兼評論家になるという夢を叶えるため、評論を書き始めます。

また、蜘蛛恐怖症を克服しようと、外に出かけて蜘蛛を捕まえてきます。
アパートに帰った信一は、守護天使の声を聞きました。

再び早苗の視点になります。
赤松は亡くなってしまい、その赤松を解剖した渡邊教授に話を聞きます。
赤松の脳からは、微細な線虫が百匹以上も発見されたのだそうです。

渡邊教授の紹介で、線虫の分野の第一人者である、
40代前半の依田健二に話を聞きに行きます。

線虫を顕微鏡で見せてもらうとき、
早苗は液体窒素の入った容器を倒してしまいそうになりました。
液体窒素は、線虫を冷凍保存するときに使うものでした。

線虫について詳しい話を聞いた後、
赤松の脳から見つかった線虫を実験のために育てている、と教えてもらいました。

場面が変わり、早苗は同窓会で黒木晶子と再会します。
そこで、宗教には蛇のモチーフが繰り返し登場すると教えられました。
また、ロバートの手記にあった「Typhon(テュポン)」という言葉も、
ギリシャ神話に登場する怪物神の1人だと教えてもらいます。
その身体は、無数の蠢く毒蛇が寄り集まってできていたのだそうです。

ホスピスへ行った早苗は、先輩医師の土肥美智子から、
不審な自殺について話をするため警察に呼ばれていた、という話を聞きます。

メッキ工場で、4、5歳くらいころに事故に遭った醜形恐怖症の青年が、
深夜、工場に忍び込んで、劇薬の溶液に顔を着けて自殺したのだそうです。
さらに、競泳用のゴーグルをつけていた形跡があり、
そばには鏡もあったのだそうです。
自分の顔が無残に溶けるのを見たかったとしか考えられない状況でした。

再び信一の視点に変わります。
信一は天使の囀りを聞きながら、アパートの部屋で大量の蜘蛛を飼い、
その蜘蛛を食べるようになっていました。

早苗の視点に戻ります。
早苗は、依田に呼び出されます。
依田は、赤松の脳に寄生していた線虫にブラジル脳線虫という名前を付け、
動物実験をしていました。

ブラジル脳線虫は、動物や人間の脳に快感を与えることで、
動物や人間を操る力がありました。

『天使の羽音』という、鳥の羽ばたきを思わせるような音は、
虫が内耳の迷宮に入って起こすものであり、
『天使の囀り』は、聴覚情報を伝える中脳の蝸牛神経核を刺激し、
聞こえるものだろう、と早苗は仮説を立てました。

ブラジル脳線虫に感染したサルの、頭長から、
放射状に、蛇行する白いミミズ腫れのような跡ができており、
それが髪の毛が蛇のメドゥーサのように見えました。

また、ブラジル脳線虫がたくさん寄り集まり、
『テュポン』のように球体を作っているところも見せてもらいました。

後日、早苗は福家から、吉原逸子という43歳の主婦が、
果物ナイフで自分の右目を突いて自殺したことを知らされます。
その部屋には無数の薔薇が飾ってあり、ナイフやフォークが百個以上、
椅子の背やドアにくくりつけられていたのだそうです。

また、歯が溶けた美少女が、千葉県の手賀沼(てがぬま)という、
汚い沼で入水自殺し、その身元が分かっていないことを教えられました。

早苗はその少女の遺体を見て、拒食症の慢性的な嘔吐によって、
胃酸で歯が溶けていたのではないか、と言いました。
また、右手の人差し指だけ爪が薄くなっていることや、
少女の頭に蛇行する白いミミズ腫れのような跡があるのに気づきました。

右手の人差し指だけ薄くなっていたのは、中指と人差し指で、
何かを挟んでいたからではないか、と早苗は思い、
自殺した少女は囲碁をやっていたのだと気づきました。

日本棋院に問い合わせ、
自殺した少女の名前が滝沢優子であることが判明します。
滝沢優子の友人の浜口麻美によると、滝沢優子は天使の囀りを聞いており、
極度の潔癖症だったことが判明しました。
また、名前にガイアがつくセミナーに参加していたのだそうです。

早苗は「地球の子供たち」についてインターネットで調べ、
都内で開かれたオフ会に参加しました。
そこで講演していた『庭永先生』の正体が、
行方不明になっていた蜷川教授であることに気づき、
早苗はブラジル脳線虫について問い質しました。

蜷川教授によると、
ブラジル脳線虫がやっていることは、「宿主の脳が強い不安やストレス、
恐怖などを感じたときに、自動的に快感へと変えるだけでした。

ブラジル脳線虫は本来、アマゾンでサルに寄生していますが、
サルは天敵である巨大な猛禽に恐怖を感じています。
その恐怖を快感に変えることで、捕食者に身を任せ、
寄生を拡大させていました。

しかし、人間はサルよりも複雑で、特定の対象に強い恐怖症を持っていた場合、
その対象に強く引き寄せられてしまうことになります。

動物恐怖症の赤松はトラに近づき、
我が子を失うことを恐れる白井真紀は自らその子を殺害し、
醜形恐怖症の『ファントム』は自らの顔貌を薬品でどろどろに溶かし、
不潔恐怖症の滝沢優子はアオコの腐敗臭漂う沼で水浴し、
死恐怖症の高梨は自殺したのでした。

蜷川教授はそれを分かっていながら、セミナーに参加した人たちに、
ブラジル脳線虫に感染した肉を与え、被害を拡大させ、実験していました。

病的な救世主(メサイア)コンプレックスの持ち主である蜷川教授は、
人類を救うために、ブラジル脳線虫で実験していたのです。

(あるいは、誰かを救えないということに対する恐怖が快感に変わり、
救われない人々を増やそうとしていたのかもしれません。)

蜷川教授と、その手下の森豊はオフ会の会場から出ていき、
再び行方不明となりました。


後日、早苗は依田から、
ブラジル脳線虫に感染したサルが捕食されずに生き延びた場合、
最終的にどうなるのか、映像を見せられて知りました。

オマキザルの研究をしていたロバートは、
妻がブラジル脳線虫に感染していることに気づき、
感染者が最終的にどうなるか知ったからこそ、
妻とともに焼身自殺していたのでした。

2ヶ月後、早苗は浜口麻美から、
滝沢優子がセミナーに行った後にもらったお土産のジャムの産地が、
那須であると教えられました。

赤松が自殺したのも那須高原サファリパークだったことから、
早苗は那須に何かあると考えます。
滝沢優子の母親に電話し、滝沢優子の手帳に028で始まる
栃木県の電話番号がないか調べてもらいました。

その番号に電話しますが、繋がりませんでした。

早苗は依田と一緒に、その電話番号のセミナーハウスへ向かいます。

その途中、依田の妻が妊娠8ヶ月のときに交通事故で死んだ、
という話を聞きました。
依田が車を運転していた際、対向車が反対車線を逆走してきて、
左に急ハンドルを切った結果、電柱にぶつかってしまったのでした。

セミナーハウスに行く途中、『天使の荊冠美術館』の看板も発見しました。

セミナーハウスに到着すると、一、二週間前まで誰かが生活していて、
急にいなくなったような感じがしました。

大浴場へ行った早苗と依田は、そこで「ブラジル脳線虫の感染者たちの、
変わり果てた姿を発見しました。

ブラジル脳線虫は、感染者の遺伝子を書き換えていました。

頭部や胴体が提灯のように膨れ上がり、
四肢は脂肪や筋肉や骨が消失し、萎びた紐と化していました。
その袋のようになった身体の中には、大量のブラジル脳線虫が詰まっています。

変貌した無数の死体を確認するうち、蜷川教授と森豊の死体も発見しました。

また、浴槽の水の中には大量のブラジル脳線虫が泳ぎ回っていました。
早苗と依田は、浴槽の中に、持ってきた大量の殺虫剤を振りまきました。

そのとき、変貌した感染者の中に7人の生存者がいて、
そのうち3人には意識があることに気づきました。

生存者の中の一人、荻野信一が、紙のように薄くなった声帯を震動させ、
『コロシテ』と頼みました。

早苗と依田は、ガレージにあった車のエンジンをかけ、
排気ガスをホースで大浴場に引き込み、安楽死させることにしました。

そのとき、信一は『天使が丘ハイスクール』のテーマソングを歌っていました。

最後の仕上げとして、遺体にガソリンをかけていきます。
しかし、ある遺体の触手のような蕾に接触した瞬間、
すべての蕾がいっせいに弾け、
早苗と依田はブラジル脳線虫が詰まった粘液を浴びました。

急いで粘液を洗い流した後、ガソリンに火を点け、
セミナーハウスごと遺体を燃やしました。


それから1ヶ月後、早苗は依田と結ばれました。
ある日、依田が、どろりとした緑色の薬草茶を飲むように、早苗に勧めました。
しかし、早苗は飲む気になれず、断りました。

早苗は依田と行為をした後、シャワーを浴びます。
洗面所で身体を拭くとき、偶然、
ゴミ箱に多量の抗精神剤のパッケージが捨てられているのを発見しました。

依田がシャワーを浴びている間に、早苗はキッチンの冷蔵庫の中を見て、
そこに「凍結されたブラジル脳線虫が入った試験管があるのを発見しました。

依田は、ブラジル脳線虫に感染してしまっていたのでした。

早苗は、浴室から出てきた依田から逃げ惑い、書斎に閉じこもります。
ドア越しに、依田がブラジル脳線虫に感染しており、
早苗にも感染させようとしていたことを聞きました。

依田の部屋は地上11階にあり、逃げ場はない状態でした。
依田はドアをこじ開けようとします。

早苗は、書斎の中に液体窒素の入った容器があることに気づきます。
その中のブラジル脳線虫が入った試験管をハンドバッグに入れます。

液体窒素を爆発させるために、
ティッシュペーパーを花瓶で濡らして、液体窒素の容器に入れました。

ドアを開け、依田と話して時間稼ぎをしていると、
依田は早苗の掌が赤いことに気づき、冷蔵庫に歩み寄りました。
その途端、液体窒素の容器が爆発し、冷蔵庫の扉が弾け飛び、
依田に直撃しました。

その間に、早苗は1階に降りました。
窓から依田が顔を出し、早苗を見下ろします。
バランスを崩した依田は恐怖を感じましたが、
その恐怖がブラジル脳線虫によって快感に変換され、
依田は飛び降り自殺してしまいました。

クリスマスが近づいたころ、ホスピスに福家がやってきて、
セミナーハウスで起こった大量殺人について、
警察が早苗に会いに来るかもしれないと教えられました。

早苗は、依田のマンションから持ち出したブラジル脳線虫を、
死ぬ寸前の患者である上原康之少年に投与し、
死への恐怖を感じさせないようにしました。

上原少年の死後、早苗は警察に出頭し、
今後、1人たりともブラジル脳線虫の犠牲者を出さないために、
何もかも話すことにしました。


というあらすじなのですが、怖いけど悲しくて、
どうしようもない絶望に襲われる話でした。                  スポンサードリンク

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