恩田陸「八月は冷たい城」のネタバレ解説

八月は冷たい城 (ミステリーランド)


この本は、「七月に流れる花」の続編です。
「七月に流れる花」のネタバレ満載なので、
そちらを先に読んだ方がいいでしょう。

主人公の中学生、嘉納光彦(かのう・みつひこ)は、
放課後の帰り道、「みどりおとこ」に話しかけられ、
緑色の封筒を渡されました。

「みどりおとこ」は長身で彫りの深い顔立ちで、
髪も肌も緑色でした。
「みどりおとこ」と呼ばれていますが、性別は不詳です。

光彦の母親は緑色感冒(りょくしょくかんぼう)を発症しており、
もうずっと会っていませんでした。
母親を見送るためには、招待状を受け取り、
夏のお城に行かなければなりません。

市立図書館で、光彦は佐藤蘇芳(さとう・すおう)と待ち合わせ、
「みどりおとこ」の話をします。
光彦と蘇芳は、医療関係者である2人の親が、
どちらの緑色感冒で隔離されている、という共通点があり、
仲良くしていました。

蘇芳は、「七月に流れる花」の主人公が、
小さい頃に離婚した父親が緑色感冒で隔離されていることも、
緑色感冒そのものも、何も知らされていなくて頭が痛い、
と愚痴をこぼします。

世間的には緑色感冒のパンデミックは過去のことで、
患者が激減し、封じ込めが成功したとみなされ、
徐々に忘れられているのでした。

「みどりおとこ」のように、緑色感冒から生き残った人は、
日本には1人しかいないことになっていますが、
世界中だったら、もっとたくさんいるのだそうです。

何でこんな面倒くさいことをしなきゃいけないんだ、と言う光彦に、
親の死を受け入れる儀式が必要なんじゃないのかな、
と蘇芳は言いました。

やがて、夏のお城に行く日がやってきて、光彦は列車に乗りました。
蘇芳によると、男子は午前中に、
女子は午後に夏のお城に行くことになっているのだそうです。

列車は、駅も何もないところで停まり、光彦は列車から降りました。

他にも3人、列車から飛び降りた少年がいました。
そのうちの1人が、小学校高学年のときに転校してしまった幼馴染、
大橋卓也でした。

旗を持っている「みどりおとこ」に案内され、ボートで川を渡ります。

その途中、小柄な少年が、以前にも親を緑色感冒で亡くしており、
ここに来るのは2度目だと言いました。

お城の門の中に入ると、外側から鍵をかけられ、
閉じこめられてしまいました。

建物の中に入り、階段を上ると、
首を折られた大きなひまわりの花がありました。

小柄な少年は丹羽幸正(にわ・ゆきまさ)という名前で、
最後の1人の大柄でおっとりとした少年は
唯野耕介(ただの・こうすけ)という名前でした。

光彦と卓也、幸正と耕介という組み合わせで、
不審な人物がお城の中に潜んでいないか調べて回りますが、
誰もいませんでした。

集合し、それぞれの部屋を決め、鐘が1回鳴ったら食堂に集合、
鐘が3回鳴ったらお地蔵さんのところに集まる、というルールを確認します。
何かあって全員を食堂に集めたい時も鐘を1回鳴らします。

経験者の幸正によると、4人全員の親が亡くなるまでは迎えは来なくて、
ここに閉じこめられるのだそうです。

部屋に着くと、卓也が光彦の部屋に来ます。
しばらくして、着いたばっかりだというのに鐘が3回鳴りました。

お地蔵さんのところへ行く途中、光彦は視界の隅に、
誰かが鎌を持って立っているのを目撃しました。
しかし、もう一度目をこらすと、影は消えていました。

お地蔵さんのところに全員が集合し、
幸正が地蔵の後ろにある電光掲示板を確認します。
その番号は「503」でしたが、光彦も卓也も幸正も耕介も、
全員が自分の親の患者番号ではないと言いました。

何かの間違いではないか、という話になりましたが、
卓也は、この夏のお城に来ていないやつがいて、
そいつの親が亡くなったのではないか、と言いました。

その後、光彦は、女子の場所との境界にある土塀のところに行きました。
何日かに一度、蘇芳とそこで待ち合わせて話をすることになっていましたが、
約束はありませんでした。

しかし、土塀の向こう側で「だれ?」という低い少女の声が聞こえました。
「七月に流れる花」で、ミチルが土塀の向こうの男の子と話した時の会話を、
光彦の視点で描写します。
やがて、女子の側から鐘が1回鳴り、光彦は戻りました。

母屋の方に戻ると、悲鳴が聞こえ、真っ青な顔をした幸正と、
彼をかばうようにしている耕介の姿がありました。
戸を開いたら、麻紐が結わえつけられている鎌が、
天井から落ちてきたのだそうです。

その数日後には、ベンチの下に縄が張ってあり、
ベンチに腰をかけると足が引っかかって縄が引っ張られ、
背後にある彫像が崩れ落ちてくる、という仕掛けがあるのが見つかりました。
幸正がその仕掛けに引っかかりそうになりましたが、
耕介が「ユキ、左に倒れろ!」と叫んだおかげで、幸正は助かりました。

その後、卓也は光彦と2人きりになったときに、
女子の誰かが土塀を乗り越えて嫌がらせをしているのではないか、
とほのめかしました。

その日は蘇芳と土塀の前で待ち合わせしていたので、
蘇芳にこれまで数日間に起きた出来事を洗いざらい話しました。

光彦は「みどりおとこ」に悪意を感じており、
「みどりおとこ」が嫌がらせをしているのではないか、と蘇芳に言います。

すると蘇芳は、「夏の人」が物騒なことをやっている犯人なら、
「夏の人」が何かを仕掛けているあいだは、
外部に通じる扉は開いているはずだ、と言います。

光彦は2日後に蘇芳と待ち合わせをする約束をし、
お城の門の扉の前に行きました。
扉の前に水を撒いて足跡が残るようにし、隙間に松葉を差し込み、
扉の下に葉っぱを置き、誰かが侵入したらわかるようにしました。

部屋に戻る途中、卓也が池の上に張り出した部屋の窓と平行になる格好で
窓枠に座っているのが見えました。
卓也の部屋に中にもう1人誰かがいて、
緑色の手が卓也を窓から突き落とすのが見えました。

門の扉のところに戻ると、泥の中に足跡が残り、
扉に挟んでおいた松葉は落ち、地面に置いた葉っぱは乱れて飛んでいました。

その数日後の日曜日の朝、鐘が3回鳴りました。
お地蔵さんのところに行くと、「415」という番号が表示されていました。
それは光彦の母の患者番号でした。

番号が表示されなくなると、光彦は他の3人を先に帰し、
自分だけお地蔵さんの前に残りました。
すると、水路から「みどりおとこ」が出てきて、
「光彦はいい子ねえ」と、光彦の母親の口癖を言いました。

光彦はすぐに逃げたものの、
卓也にも耕介にも幸正にもそのことを話しませんでした。

その日の深夜に鐘が3回鳴り、耕介の家族が亡くなりました。

翌日の昼食後に再び鐘が3回鳴り、今度は卓也の親が亡くなりました。

その後、土塀の前で、光彦は蘇芳にこの2日間の出来事を話しました。

蘇芳は、「みどりおとこ」が光彦の母親の口癖を言った、
という部分に反応しました。

蘇芳は、これまで疑問に思っていたことや、
生前蘇芳の親が話していたこととも辻褄が合うと言い、
ある「個人的な意見」について、光彦に説明しました。
が、読者にはまだその「個人的な意見」の内容は明かされません。

その日の晩、夕食後に卓也が光彦に話しかけ、
卓也の親が死んだあたりから耕介が挙動不審だと打ち明けました。

卓也と光彦で耕介を見張ることにします。
すると、耕介が自分の部屋から抜け出し、幸正の部屋に近づき、
幸正を見張り始めました。

夜中になり、幸正が食堂へ行きました。

耕介も、鎌を持って食堂へ入ろうとします。
そこへ、光彦と卓也が近づき、耕介を止めようとしました。

しかし、耕介は、「自分ではなく幸正を止めろ、と叫びます。

耕介と光彦と卓也が食堂に入ると、
幸正が首吊り自殺をしようとしているところでした。
しかし、耕介が縄を鎌で切り、幸正は助かりました。

耕介は、明日になったら『みどりおとこ』が迎えに来てしまうから、
やるとしたら今夜だと思った、と言いました。

実は、初日の該当者がいなかったはずの番号は、
幸正の親の番号だったのでした。
幸正は親の死を受け入れることができず、自殺願望がありました。

前の林間学校に行った時も、帰ってから死のうとしたのです。
だから、今回も気をつけていてくれと、
耕介は先生から頼まれていたのでした。
自分に鎌を仕掛けたのも、彫像を倒したのも、
それで死んでもいいと思っていたからでした。

最初の死者の時には、これは親の番号ではないと否定しましたが、
『みどりおとこ』が迎えに来たら、親の死を受け入れなければならなくなるので、
今夜が危ない、と耕介は気づき、幸正を見張っていたのでした。

幸正は死にたいと思う一方で、卓也を池に突き落としたり、
いろいろ仕掛けたりして、生きたいというサインも出していました。

光彦が仕掛けた門の葉っぱが乱れていたり、門の前に足跡があったりしたのは、
光彦がこそこそしているのに気づいた幸正が、
門の様子を見に行っていたせいでした。

おまえらも、僕も――ほんとに、大馬.鹿だ、
と幸正は言い、声を押し殺して泣きました。


帰りのボートの中で、光彦は蘇芳から聞いた
「個人的な意見」を思い出していました。

蘇芳によると、緑色感冒のパンデミックで生き残った、
世界各地のサバイバーには、ある共通点があったのだそうです。

それは、「食糧がなくなってしまったために、
死体の肉を長期に亘って食べたことでした。
緑色感冒で死んだ人の肉を食べると、みんな同じ、
独特のああいう姿になるのだそうです。
そして、それはいつしか緑色感冒の患者どうしで引き継がれるようになりました。
コロニーに常に1人はいる『夏の人』と死に際の患者が退治した時、
受け継ぐほうが、弱い方を食べるのです。
食べたほうが次の代の『夏の人』になるのでした。

引き継いだほうは、それまでの患者の記憶も引き継ぐため、
光彦の母親が死んだばかりの時に水路から現れた『みどりおとこ』は、
光彦の母親の口癖を言ったのでした。

死ぬところを遺族に見せられず、緑色感冒がタブーになったのはそのせいでした。
いずれ、『夏の人』は統合され、1人になると思われました。

ボートから降りると、『夏の人』は、もうここのことはすっぱり忘れ、
振り返るんじゃないと言いました。
『いい子ねえ、光彦は』と『夏の人』が言ったような気がしましたが、
光彦は振り返りませんでした。


というあらすじなのですが、意外な展開の連続で面白かったです。

ただ、1つだけ、時系列的な矛盾があるのに気づいてしまいました。

「七月に流れる花」では、主人公のミチルが、
土塀の向こうの男の子から話しかけられたのは、
夏の城に来てから1週間目のことでした。

ところが、「八月は冷たい城」の中では、光彦が、
土塀の向こうにいるのが蘇芳ではなくミチルだと気づかずに話しかけるのは、
夏の城に来たばかりの、初日の出来事なのです。

(「七月」では、ミチルが滞在一週間目に水路を流れてくる花を追い、
土塀を見つけ、その向こうに人の気配を感じる、という流れです。
「八月」では、城に来た初日に鐘が3回鳴り、誰かの親が死んだ後、
蘇芳と約束はないけど光彦が土塀に行ってみたらミチルがいた、
という流れです。)

男子と女子が違う日に来たのならおかしくありませんが、
「八月は冷たい城」の中で、男子と女子は、
同じ日の午前と午後に分かれて夏の城にやってくる、と書かれていたので、
どう考えても矛盾しています。                  スポンサードリンク

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