恩田陸「七月に流れる花」のネタバレ解説

七月に流れる花 (ミステリーランド)


主人公の大木ミチルは、中学1年生の女の子です。
ミチルは、6月初めというはんぱな季節に転校してきました。

ある日、美術の授業で先生から「夏の人」を描きましょう、と言われます。
夏の人の意味が分からないミチルは、
ひまわり畑の中に麦わら帽子を被った子供がいる絵を描きました。
ところが、他のクラスメートたちは全員、
手足も含めて全身が緑色の人間を描いていました。

先生がミチルの絵を見て立ち止まると、
学級委員の佐藤蘇芳(すおう)という、
何もしなくてもみんなの目を惹きつけてしまうタイプの女の子が、
ミチルは先週転校してきたばかりなのだと助け船を出してくれました。

美術の時間の後、隣の席の子に、みんなが描いていた絵は何なのかと訊くと、
隣の席の子は「みどりお――」と言いかけた後、
この辺りの「夏の人」なの、みんな知ってる、と答えにならないことを言い、
美術室から出て行ってしまいました。

一学期の終業式が終わっても、ミチルは友達を作ることができず、
1人で帰っていました。
和菓子屋の中の鏡を覗くと、そこに全身が緑色の人間が映っていました。

ミチルは、隣の席の子が言いかけていたのは「みどりおとこ」だったのだと、
直感的に悟りました。

和菓子屋の戸を引こうとしますが、和菓子屋は留守でした。

ミチルは、ぴょんぴょん飛び跳ねるように追いかけてくる
「みどりおとこ」から逃げながら、「みどりおとこ」の容姿を観察します。
髪も緑色で、顔立ちは西洋人かと思うほど額と頬骨が高いです。
背は高くがっちりとしていて、
ヨーロッパの童話に出てくる王子様みたいな奇妙な服を着ています。
しかし、性別は男なのか女なのか分かりませんでした。

しばらく走ると、佐藤蘇芳を見つけ、蘇芳に助けを求めました。
しかし、振り返ると「みどりおとこ」はいなくなっていました。

蘇芳と2人で歩くと、「冬のお城」の城跡を発見します。
そのお城は元々あった窓を全部潰しちゃった、という話を蘇芳はしました。

蘇芳は、ミチルが持っていた美術の時間に描いた、丸めた絵の中に、
緑色の封筒が入っていることに気づきました。

蘇芳はそれを見て、ミチルは「夏の城」に呼ばれたのだと呟きました。
夏のお城はもっと離れた場所にあり、そこに呼ばれたら、
必ず行かないといけないのだそうです。

封筒の中には、ミチルが「夏流城(かなしろ)」
での林間学校に参加しなければなりません、と書かれていました。

ミチルの母はその封筒を見ると、あちこちに電話をかけた後、
「仕方ないわね」と言いました。

封筒を受け取って3日後に、ミチルは夏の城に向かう列車に乗りました。
しばらくして、列車は駅のない田圃のど真ん中で停まり、扉を開けます。

外を見ると、小さな旗を持った「みどりおとこ」がいました。

蘇芳を含む5人の女の子たちが列車から飛び降り、ミチルも列車から降りました。
すると、列車は再び走り出しました。

「みどりおとこ」に案内されて田圃を歩き、
雑木林の向こうの川で、ボートに乗ります。

やがて、緑色のツタに覆われた、石造りの古い建物に到着しました。
蘇芳によると、それが夏のお城なのだそうです。
山の斜面にへばりつくように、箱の形をした建物が連なっており、
小さな中庭や池、細い噴水がそこここにあります。

「みどりおとこ」は大きな扉の鍵を5回も開け、夏のお城の中に入りました。

そこで、ミチルと蘇芳の他に4人の少女たちとの共同生活が始まります。
鐘が1回鳴ったら食堂に集合する、とか、
鐘が3回鳴ったらお地蔵様にお祈りしないといけない、とか、奇妙なルールがあります。
そのお地蔵様はお城の隅っこにあり、後ろに大きな鏡がありました。

他にも、水路に花が流れてきたら、
その色と数を掲示板にあるノートに書かないといけない、というルールもあります。
蘇芳によると、流れてくる花の色は白と赤なのだそうです。

ミチルや蘇芳は、迎えが来るのを待つだけで、
それまではここから出られないのだそうです。

ミチルと蘇芳以外の女の子の名前は、斉木加奈、稲垣孝子、塚田憲子(のりこ)、
辰巳亜季代(たつみ・あきよ)です。
斉木加奈と稲垣孝子は、ミチルとは別の中学で1歳上の中学2年生です。
塚田憲子も中学2年生ですが、加奈や孝子とはまた別の中学校でした。

辰巳亜季代は、ひとりだけ市立のミッション系の中学校から来た、
おっとりとしたいいところお嬢さんという感じの子でした。
亜季代が1番年上で中学3年生で、お姉さんという雰囲気なのに、
みんなが世話を焼きたくなるようなところがありました。
亜季代はいつもニコニコと笑って、セーターを編んでいました。

ミチルは加奈や蘇芳に、どうして自分たちは夏流城に呼ばれたのかと訊きますが、
答えをはぐらかされてしまいました。

ある日、ミチルたちは亜季代が持ってきた線香花火をしました。

林間学校が始まって1週間目、ミチルは水路を花が流れていくのを目撃しました。
ミチルは食堂のノートにそのことを書いた後、
あの花がどこから流れてくるのか気になり、水路を遡りました。
土塀の下の小さなトンネルから花が流れてくるのを見ます。

土塀の向こうに人の気配を感じ、ミチルは「だれ?」と訊きました。

すると、「――なあんだ、蘇芳か」という男の子の声が聞こえました。
男の子はミチルのことを蘇芳と勘違いしたまま、
「計画はちゃんと進んでる?」とか、「あいつ絶対に何か企んでる」と話しかけます。
ミチルが困っていると、鐘が1回鳴りました。

鐘が1回鳴ったら食堂に集合というルールは男の子も知っているらしく、
男の子は去っていきました。

ミチルが食堂に戻ると、蘇芳、加奈、孝子、憲子が同時にミチルを見ました。

しかし、亜季代はいませんでした。

何で鐘を鳴らしたのかと訊くと、蘇芳は、ちょっとおかしなことがあったのだと言い、
加奈の部屋の前にあったひまわりが残らずなぎ倒され、
折られて積み重なっているのを見せました。

他にも、池が空っぽになり、周囲はびしょびしょの水浸しになっていました。
まるで誰かが飛び込んだみたいでした。
しかも、飛び込んだ誰かが出て行った足跡はありませんでした。

ミチルは、夏の人はここには入らないのかと訊きますが、
憲子は、あの人は、ここの中には入らないのよ、ときっぱりと言いました。
食料が補充されているのは、2日にいっぺん、
外からの差し入れ口に入れておいてくれるのだそうです。

ミチルたちは亜季代を探しますが、見つからず、その日以来、
亜季代は本当にぷつりと姿を消してしまいました。

その後、みんなはそれまで通りの生活を続けていましたが、
図書室で孝子から「あたしだって怖いの」と打ち明けられます。

しかし、鳩の声が聞こえ、孝子は怯えた目で窓の外を見ると、
食堂へ行ってしまいました。

ミチルも遅れて食堂の前へ行くと、孝子と蘇芳が、何かが危険だと話していました。
しかし、ミチルが食堂に入ると、2人は話すのをやめてしまいました。

夜になり、外で懐中電灯の光が見えるのに気づいて外に出ると、
蘇芳と孝子が何かを毒で処分すると話していました。

数日後、憲子や加奈と、天気が悪くなりそうだという話をしていると、
鐘が3回鳴りました。

ミチル、蘇芳、孝子、憲子、加奈はお地蔵様のところへ行き、
手を合わせました。
大粒の雨が降り、雷鳴があっても、蘇芳は手を合わせ続けていました。

夕食後、ミチルはトランプをしようと言い出し、
トランプの入っていた古い戸棚を開けました。

しかし、そこから、ビニールに包まれた鳩の死骸が落ちてきました。

そのタイミングで、再び鐘が3回鳴りました。
ミチルは自分が亜季代や鳩のように、みんなから処分されるのではないか、
殺されるのではないか、とパニックになりました。

しかし、みんなに引きずられてお地蔵様のところまで連れて行かれます。
ミチルが「あたし帰る」と駄々をこねていると、蘇芳に平手打ちを食らいました。
憲子がミチルに、お地蔵様に手を合わせるようにと言います。

加奈は、ミチルをお地蔵様の正面に立たせ、「大木ミチルちゃんです、
とミチルを紹介しました。
さらに、ミチルに、鏡の向こうのお父さんに、
ちゃんと顔を見せてあげてと言いました。

お地蔵様の後ろに『556』という電光掲示板の数字があり、
それがミチルの父親の番号なのだと加奈は言いました。

ミチルの父親は、ミチルが小さい頃に離婚し、長いこと海外生活をしているうちに、
緑色感冒(りょくしょくかんぼう)という病気になりました。

緑色感冒は、今世紀の初めに世界で猛威を振るった恐ろしい病気でした。
高熱を発して全身が緑色になり、次第に重い肺炎を起こし、
呼吸困難で死んでしまう病気です。
感染率も致死率も高く、世界中をパニックに陥れました。

しかし、身体が緑色にならないうちは他人への感染率はそんなに高くなく、
身体が緑色になる前に適切な治療を施せば感知する死、
身体が緑色になった時点で隔離すれば感染が防げると分かりました。

ただ、身体が緑色になるほどに症状が進むとまず助からないし、
この時期の他人への感染力は非常に高く、しかも感染した相手も必ず重篤化します。


ここ夏流(かなし)は、
最大の『シェルター』と呼ばれる専門施設を併設した病院があるため、
あちこちから患者とその家族が移り住んでくるようになりました。

町の中にある冬のお城は、まだ流行が続いていた時に、
感染を避けるためにみんなが立てこもったのだそうです。

ミチルの父親は、緑色感冒の症状が進み、この『シェルター』に入ることになり、
ミチルの母親に、ミチルに合わせてほしいと頼んだのそうです。

『シェルター』と病院はこのお城の地下にあり、地下の隔離された施設で、
みんな治療を受けているのだそうです。
林間学校にやってくるのは、夏休み中、いつ亡くなっても不思議ではないほど、
重い病状の親がいる子供だけで、お地蔵様の後ろにあるマジックミラー越しに、
面会していたのだそうです。

蘇芳は一昨年に父親が亡くなった時にもここに来たことがありました。
今年は母親で、両親は2人とも緑色感冒の治療方法を研究していたのだそうです。
さっきの1回目の鐘は、蘇芳の母親が亡くなったときのものでした。

ミチルの母親は、父親のことをミチルに内緒にしてほしい、
と蘇芳たちに頼んでいたため、ミチルだけ何も教えられていなかったのでした。

小動物や鳥を媒介にした感染を避けるため、壁から音波を出して、
小動物が入ってこないようにしていました。
ところが、穴が開いていて、そこから鳩が入ってきたため、
毒の入った餌を食べさせ、次に『夏の人』が来るまで、
食堂の戸棚に隠していたのだそうです。

亜季代の母親も鏡の向こう側にいましたが、
亜季代本人も脳腫瘍で手遅れになっており、
いなくなった日に脳の中で大出血し、加奈の部屋の前のひまわりをなぎ倒し、
行けに飛び込んで頭を打ちつけ気絶してしまいました。
加奈は鐘を鳴らしてみんなを集め、亜季代を毛布に包んで運び出しました。


しかし、そのときミチルだけ遅れて食堂にやってきたため、
口裏を合わせて不思議な事件ということにしたのでした。

亜季代はすぐに集中治療室に入りましたが、死んでしまいました。

蘇芳の母とミチルの父が亡くなってから2日後に加奈の父が、
その翌日に憲子の母が亡くなりました。

『夏の人』は唯一、緑色感冒の完璧な免疫を持っているため、
『シェルター』と外を行き来することができるのだそうです。
『夏の人』がお城にやってきて、月曜日の朝10時に迎えが来る、と言いました。

帰り際、ミチルは水路を花が流れていくのを目撃します。
国内で緑色感冒で亡くなった人がいたら、
男なら白、女なら赤の花を流しているのだ、と憲子が教えてくれました。


というあらすじなのですが、主人公だけが、
何が起こっているのか分からず、怖がっていましたが、
ちゃんとその理由が明かされるのがよかったですね。

土塀の向こうの男の子の話は、続編の「八月は冷たい城」で語られます。                  スポンサードリンク

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