星新一「生活維持省」のネタバレ解説

主人公の「私」は、課長からカードを受け取り、
隣の席の同僚と一緒に車に乗りました。

同僚は、道順はどうするのかと尋ねます。
主人公は、今日は天気がいいから、道順なんて考えず、
カードを引いて出た順番に回ろうと言いました。

平和な住宅街の中を車で移動しながら、世間話をします。

国民1人あたりに、充分な広さの土地を確保しなければならない、
という政府の方針のおかげで、
あらゆる犯罪や事故や病気や自殺がなくなり、
社会が平穏に保たれている、という話をします。

やがて、アリサという女の子が住む家に到着しました。

その家の母親に、主人公は生活維持省のバッジを見せます。

母親は「ああ、死神……」と口走った後、
自分がアリサの代わりになりたいと言いました。

しかし、主人公は母親を説得し、
生活維持省の計算機が毎日選び出しているカードは、
絶対に公平だから、社会の秩序を維持するために、
母親が代わりになることはできないと言いました。

主人公は、イチゴの入ったかごを持ち、
明るい歌を歌いながら帰ってきたアリサを、
光線銃で射殺しました。

その後、次のカードを引いた主人公は、
次の場所はさっき通った小川だと言います。

それから、カードと光線銃を同僚に渡し、
『生存競争と戦争の恐怖のない時代に、
これだけ生きることができて楽しかったな』
と言いました。


というあらすじなのですが、「主人公も計算機に選ばれ、
同僚に殺してもらうことになったわけですね。


主人公は、計算機は公平に犠牲者を選んでいると言ってますが、
現実世界でこんなことをしようとしても、
絶対に時の権力者が自分とその親族を除外させようとして、
骨抜きになるに決まってますよね。

ところで、この記事を書いている時点での最新データによると、
現在の人口は1億2700万人くらいらしいです。

少子高齢化が進んでいる現在の日本ではピンときませんが、
この小説が書かれた頃は、日本の人口はまだ9000万人くらいで、
これからどんどん人口が増え続けると、
そのうち家も土地も足りなくなると言われていたのです。

しかし、日本の人口は少しずつ減り始めていますが、
世界全体の人口は物凄い勢いで増え続けており、
格差も広がり続けています。

この小説「生活維持省」の、平和を維持するために口減らしをする、
という発想は、どこか共産主義っぽいですね。

そう言えば、かつて、人口に関してとんでもない施策を行なった、
共産主義国家がありました。

それは、ルーマニアです。

1960年代から24年間続いたチャウシェスク政権時代に、
45歳までの女性は、5人の子供を産むまでは中絶してはならないとし、
14~15歳の中学生にも出産が奨励されました。

女性の職場を巡回して妊娠検査を実施し、
何度も妊娠しないでいると高い「禁欲税」を払わされたのだそうです。

子供を産んでも経済的に育てられない親が子供を捨て、
大勢の子供が餓死寸前で孤児院に収容されました。
その子供たちには栄養補給のために輸血が行われましたが、
注射器の使い回しや不十分な検査などが原因で、
子供たちはHIVに感染してしまいました。

そんな劣悪な環境の孤児院や、虐待する親から逃げ出した子供たちは、
ストリートチルドレン化してしまい、
それから何十年も経った現在でも路上生活を続けています。

こういった、とんでもない人口増加施策によって、
ルーマニアの人口は大幅に増加しましたが、
子供(人口)が増えても、経済的に豊かになるわけではなく、
生活水準はどんどん下がっていき、国民は困窮し、治安は悪化しました。

1989年にルーマニア革命が起き、
チャウシェスクが銃殺されるまで、この人口増加施策は続けられましたが、
その間にどれだけの人たちが餓死したのか想像もつかないレベルです。

しかし、革命が起きる直前まで、
チャウシェスクは毎朝、総人口数のカウンターを見て、
人口が増えていると喜んでいたのだそうです。

一方、その頃の日本はちょうどバブルを謳歌し、
人口の伸びは緩やかになっていましたが、
日本人は豊かな生活を楽しんでいました。

この小説「生活維持省」とは真逆のエピソードですが、
単純に人口が増えればいいという問題ではないのがよく分かると思います。 見やすい記事一覧はこちらです。
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