西尾維新「パノラマ島美談」1話「パノラマ島美談」のネタバレ解説

パノラマ島美談 (講談社タイガ)


美少年探偵団シリーズ第5弾、「パノラマ島美談」のネタバレ解説です。

探偵団のメンバー達6人は、大晦日から1月5日にかけて、
5泊6日の冬期合宿にやってきました。

そこに至るまでの流れは、「押絵と旅する美少年」で描かれています。

マユミたちがやってきたのは、琵琶湖の中にある人工の無人島、
野良間島(のらまじま)でした。

7年前に指輪学園を追われた永久井こわ子は、
指輪財団と双璧をなす一大グループ『キャメル』の創業者一族の1人、
野良間杯(さかずき)という老人が作った地図に載っていない人工島で、
捜索活動を行っていたのでした。

野良間はそれだけ永久井こわ子のことを高く評価しており、
パトロンになっていたのでした。

大晦日に野良間島にやってきた6人は、
5つの美術館に隠された5枚の絵を見つけることができれば、
美術室の鍵をプレゼントしてもらえることになりました。

逆に、5枚の絵を全部見つけることができなければ、
マユミ達が島に来るまでに乗ってきたヘリコプターを、
永久井こわ子にプレゼントすることになりました。

賭けとして釣り合っているのか微妙ですが、
大金持ちな探偵団のメンバーはそれで納得しました。

1日目は、5つの館を見て回り、
マユミの視力で絵が隠されていないかを確認しましたが、
見つかりませんでした。
ちなみに、それぞれの美術館は
たった1枚だけの絵を飾るために作られたという、酔狂なものでした。

翌朝の、合宿2日目。
マユミは寝坊してしまい、永久井こわ子に起こされました。
既に他の5人は出発しており、
ミチルが孔雀(くじゃく)館に、ナガヒロが雲雀(ひばり)館に、
ヒョータが烏(からす)館に、ソーサクが白鳥(はくちょう)館に、
マナブが鳳凰(ほうおう)館に行ったと教えられます。

新年の挨拶の後、マユミはお年玉と称して、
5枚の絵についてのヒントを永久井こわ子にもらいました。

マユミは遊撃部隊として、5人のフォローをすることにしました。
まず、一番頼りなさそうなヒョータのいる烏館に行きます。

烏館は、鉄骨を組み合わせて作った、二階建ての、
巨大なジャングルジムのような構造をした建物でした。

壁も天井もないので、生足をさらしているヒョータは寒そうです。

まず、マユミは「烏館に飾った絵は、どんな審美眼があっても、
どんな運が良くても、半日しか見れない」という「お年玉」を
ヒョータに伝えます。

マユミは考え事をしながら立ち上がろうとして、躓きそうになりました。
それをヒョータが支えます。

そのとき、マユミは「地面に映った自分の影を見て、
1枚目の絵を見つけました。

絵は絵でも、影絵だったのです。

太陽に照らされた鉄骨の影が地面に当たり、
そこに巨大な影絵が出現しました。

マユミとヒョータは半日かけてその絵が移り変わっていくのを見ていました。


夜になり、そのことを報告すると、リーダーのマナブは2人を褒めました。

が、他のメンバーは面白くないので、
マユミが永久井こわ子から預かった「お年玉」を受け取ろうとしませんでした。

翌日、合宿3日目。

またしても寝坊してしまったマユミは、永久井こわ子に起こされます。
永久井は、絵を1枚見つけるたびに、1つの質問に答えると言いました。

マユミは作品のテーマについて質問します。
すると、「自然に勝る芸術はない」という薄っぺらい言葉に反旗を翻したのだと
永久井は答えました。

さらに、「地水火風木、
すべてがあたしのアートを際立たせるための装置でしかない」
と、何やら意味深なことも言っていました。

マユミはミチルのいる孔雀館へ行きました。
孔雀館の上にはソーラーパネルがあり、館本体は地下に埋まっていました。

しかし、地下にあるのは1つの裸電球だけで、
壁はざらついたコンクリートでした。

マユミはミチルに「孔雀館の絵に関して言えば、
見ようとする者だけが鑑賞しても、決して見えない」というヒントを伝えました。

マユミは思いつき、孔雀館の「天井を取り外すことにしました。

地上にあるソーラーパネルを外し、その下の土をどけます。
剥き出しになった孔雀館の天井は、簡単に外せるトタン板でした。

その板を外すと、太陽の光が館の展示室を照らします。

すると、四方の壁が緑色に輝きました。
細かい凸凹のある面が光を反射する際に、
その複雑な構造に乱反射した光同士が干渉し合って、
本来の色素には含まれない色を形成することがあるのです。

孔雀館にあった電球は、緑色の波長を含まないオレンジ色の光だったので、
天井を外して太陽光を入れなければ見えない絵だったのでした。


翌日、合宿4日目。
今日の午前中は自由時間と誓っていたせいか、
マユミは自力で起きることができました。

こわ子先生は、この人工島のことをどう思っているのか、
というマユミの質問に、永久井は、
「最高の不自然」だと答えました。

島を2周した後、自由時間を持て余し、
マユミはソーサクのいる白鳥館へ行きました。
白鳥館は、紫色の紙で折った、巨大な折り紙でした。
ソーサクはそれを何枚も写生していました。

しばらく、マユミがソーサクに話しかけても無視され、
マユミは立ち去ろうとしましたが、
「いていい」「邪魔だけど、迷惑だなんて思わない」
と、珍しくソーサクが喋りました。

永久井からは、「白鳥館に展示した作品だけは、
合宿中に見つけられなくても、
あんたらの勝ちってことにしてもいいよ」と言われていました。

マユミは白鳥館に隠された絵についてソーサクに話しかけますが、
ソーサクは「まゆ。謎はもう解けている」と言いました。

初めてマユミのことを呼んだ瞬間でした。

実はソーサクは初日に白鳥館を見たときに謎に気付いていました。

そのとき、「雨が降り始め、マユミも謎を解き明かしました。

白鳥館の絵は、雨が降らない限り見られなかったのです。

紫色の紙があっという間に赤く染まりました。

実は、白鳥館は巨大なリトマス紙を使って折られており、
それが酸性雨に濡れることで赤くなるという仕組みだったのです。


その日の夜は、それまで使っていたテントが流されてしまったため、
みんな永久井のテントに入れてもらいました。

テントと聞くと、
登山者が使うような小さなものをイメージしてしまいますが、
どうやら永久井のテントは遊牧民が使うような大きなテントみたいですね。

マユミが3つめの質問として、野良間からの投資に対して、
こわ子先生は何を返しているのか、と訊くと、
永久井は、野良間のおじいちゃんがあたしにしてくれているのは、
投資じゃなくて散財だと答えました。

翌日、合宿5日目。
マユミはナガヒロのいる雲雀館へ行きました。
雲雀館は、これまでに見た館の中では、一番美術館っぽい感じの建物でした。

ただし、谷底に建てられていましたが。

マユミは、「音楽室の鍵もあたしが持ってるから、
雲雀館の絵だけでも見つけられたら、オマケであげるよ」
という永久井からの「お年玉」をナガヒロに伝えました。

地水火風木のうち、この雲雀館は「風」を表していると思われますが、
「まさか風を展示しているというわけじゃないんでしょうけど……」
とマユミが何気なく言ったところ、ナガヒロは強く反応しました。

ナガヒロとマユミが「雲雀館の窓と出入り口を全て解放すると、
音絵(サウンドアート)というべき音が聞こえてきました。

雲雀館そのものが巨大な笛のような構造になっており、
谷底に吹く風がそれを鳴らしていたのです。


そのとき、ナガヒロはついうっかりという感じで、
美少年探偵団にいた音楽担当の『美談のオドル』こと、
「双頭院踊」のことに言及しました。

オドルはゼロ人目とでも言うべき美少年探偵団の創設者であり、
マナブの実兄でした。

その設定は初出ですが、苗字に「双」という字が入っていますから、
何となく納得できますね。

翌日、合宿6日目の、最終日。

マユミは4つ目の質問として、
もっと名を売ろうとか世に出ようと思わないのか、
と永久井に訊ねました。

永久井は、自分には自由なんてなく、籠の鳥みたいなものだと言いました。
だから、永久井はこの島から自由に羽ばたくために、
ヘリコプターを手に入れようと、美少年探偵団に勝負を挑んだのでした。

その後、マユミは鳳凰館に行きました。
そこには、マナブを始めとする探偵団のメンバー全員が揃っていました。

鳳凰館は、その大仰な名前に反して、ただのビニールハウスでした。

ビニールハウスと言われてもピンと来ない人もいるかもしれませんが、
畑とかにある、ビニールでできた温室のことです。

ビニールハウスの中は高温多湿になるので、冬でも植物を育てることが出来ます。

ひとまず、マユミとマナブは2人で鳳凰館の中に入りました。
入り口で靴をスリッパに履き替えます。

そこには、色んな植物があり、ちゃんと整備された庭園といった感じでした。

永久井からの「お年玉」の内容は、
「鳳凰館の絵画は、もっとも伝わりやすい、よくある絵画よ。
だけど、もっとも受け入れられない、
場合によっては忌避されかねない絵画でもある」
でした。

マユミは、マナブのアドバイスで目を閉じて考えるうちに、
この野良間島に降り立ったときのことを思い出しました。
ヘリコプターから降りるとき、島に外来種を持ち込まないよう、
靴の裏の泥を丁寧に拭かされたのです。

そのことと、鳳凰館に入るときにスリッパに履き替えたことを結び付け、
鳳凰館の中にある植物はすべて、
ぐっちゃぐちゃにDNA図を描き換えられている、とマユミは気付きました。

遺伝子絵(ゲノムアート)というわけです。
……まあ、これのどこが絵なのかとか、芸術家にそんなことができるのかとか、
色々と突っ込みどころはありますが。

鳳凰館から出た後、マユミはみんなに、遺伝子絵のことを伝えます。

その上で、鳳凰館の絵を見つけられなかったことにしてほしい、と頼みました。

こうして永久井は、
ヘリコプターに乗って野良間島から脱出することができました。

ヘリに乗る直前、永久井はマユミにだけ、お年玉をあげてなかったと言い、
これから自分はヘリコプターじゃ行けない高さまで行くのだと言いました。

その後、島から脱出するために、マユミ達が筏を作っているところで、
この物語は終わります。


というあらすじなのですが、スケールが大きくて面白かったです。

この「パノラマ島美談」には、他に「曲線どうか?」と
「白髪美」というショートストーリーも収録されています。                  スポンサードリンク

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