東野圭吾「祈りの幕が下りる時」のネタバレ解説

祈りの幕が下りる時


加賀恭一郎シリーズ10作目「祈りの幕が下りる時」のネタバレ解説です。

この巻では、これまで謎とされてきた、
加賀の母親が蒸発した理由が明らかになります。

仙台で小料理屋とスナックを営む宮本康代は、
当時36歳だった田島百合子という女性を従業員として雇います。

この田島百合子が加賀の母親なのですが、
百合子は当時12歳だった加賀恭一郎を残し、家を出てきたのだそうです。

百合子は妻としても母としても失格だったと自分を責め続けており、
質素な暮らしをしながら宮本康代の店で働き続けます。

しかしやがて数年後に、百合子は常連客の一人だった、
綿部俊一という当時五十歳代の男と親しくなります。

が、それからさらに数年後――仙台に来てから16年後に、
百合子は心臓の病気で亡くなってしまいました。

康代は百合子の葬儀をしてやり、綿部俊一に連絡をとりました。

やがて綿部は、当時警視庁に籍を置いていた加賀の住所を突き止め、
康代に知らせました。
が、綿部自身はそのまま姿を消してしまいました。

遺骨の引き取りと、百合子のアパートの引き渡しのために仙台へやってきた加賀は、
康代から生前の百合子の様子を尋ねます。

そして康代は、綿部が時々東京の日本橋に行っているようだと
百合子が言っていたことを思い出し、加賀に教えました。

それからさらに10年以上の月日が流れた、3月30日。

葛飾区にあるアパートの一室、越川睦夫の部屋で、
滋賀県在住の押谷道子の腐乱死体が発見されました。

押谷道子はなぜ滋賀県から東京へやってきて、
越川睦夫の部屋で殺されることになったのかと、
警視庁捜査一課に勤務している、加賀の従弟の松宮修平が捜査を開始します。

松宮は先輩刑事の坂上と一緒に滋賀県へ行き、
押谷道子が勤務していたハウスクリーニング社の従業員や、
その営業先で聞き込みをします。

そのうちの一軒である老人ホーム「有楽園」で、松宮は手がかりを発見します。

60歳代後半で身元不明の女がファミレスで無銭飲食をし、
逃亡する際に警官に肩を掴まれ階段から落ち、骨折してしまいました。

女は無銭飲食を認めず、困った警察が「有楽園」に女を預けたのでした。

で、「有楽園」の職員の話によると、押谷道子はその女の顔に見覚えがあり、
浅居博美さんのお母さんじゃないかと尋ねたのですが、女は否定したのだそうです。

松宮がその女に質問すると、やはり浅居博美という女性の母親のようでした。

押谷道子もそう考え、東京に住む博美を訪ねていき、
そこで殺されたのではないかという話になりました。

博美は日本橋にある明治座で「異聞・曽根崎心中」という芝居の演出家を
やっているのだそうです。

ここでその博美の回想があります。
博美は押谷道子の同級生だったのですが、
道子は30年ぶりに博美に会いに、明治座へやってきました。

中学2年生のときに博美の母親の厚子が借金を作って男と逃げ、
父親が飛び降り自殺をしたため、
博美は転校して養護施設で暮らすことになったのでした。

博美はそのことを道子に話し、
だからそんな母親とは会いたくないと拒絶しました。

回想終わりです。

松宮は博美に聞き込みをしに行きましたが、
そこで加賀の映った写真を発見し、加賀と会って話を聞きます。

加賀によると、博美は芝居の関係で子役に剣道を習わせるため、
加賀が参加していた剣道教室に子役を連れてきたのだそうです。
写真はその時のものでした。

博美は夫に内緒で堕胎したことがあり、
それが原因で夫と離婚した過去がある、と加賀は松宮に話しました。

新小岩の河川敷にあるホームレスの小屋で、
男性の遺体が焼かれていた事件がありましたが、
その男性が越川睦夫なのではないかと松宮は疑っていました。

しかしDNA鑑定の結果は別人だと判断されました。

ところがその話を聞いた加賀は、
DNA鑑定に使われた越川睦夫の部屋から発見された歯ブラシやカミソリは、
捜査を攪乱するためにホームレスの小屋から持ち運ばれたものなのではないか、
と推理しました。

そこで越川睦夫の部屋から発見された別のDNAと鑑定した結果、
ホームレスの小屋から発見された焼死体とDNAが一致しました。

その頃加賀は、博美が演出した「異聞・曽根崎心中」を観に行きました。
博美の方が加賀に気付き、声をかけました。
博美は最初、押谷道子の捜査の状況を知りたがりましたが、
すぐにやはり教えてくれなくていいと断りました。

また、越川睦夫の部屋から発見されたカレンダーには、
1月に柳橋、2月に浅草橋、3月に左衛門橋、4月に常盤橋、5月に一石橋、
6月に西河岸橋、7月に日本橋、8月に江戸橋、9月に鎧橋、10月に茅場橋、
11月に湊橋、12月に豊海橋、というメモが書かれていました。

実はその書き込みと同じメモが、加賀の母親の百合子の遺品から発見されており、
それが理由で加賀が日本橋署に異動したことが明らかになります。

ここでようやく、冒頭の百合子の話と押谷道子が殺された話が繋がり、
加賀も公式に捜査に協力することになりました。

加賀は、仙台にいる宮本康代に、越川睦夫の似顔絵を見せに行きますが、
康代は越川睦夫の似顔絵が綿部俊一に似ていると言いました。

一方、松宮は、博美と同じく演劇関係の仕事に就いている、
博美の元夫の諏訪健夫に話を聞きに行きます。
博美には諏訪健夫の前に深い仲になった男がいて、
元女優の月村ルミがその男のことを知っていると諏訪健夫は言いました。

その後、加賀と松宮は船に乗って例のカレンダーから発見された橋を見て回ります。

すると船の操縦をしていた男が、
7月には日本橋で橋洗いという行事があることを教えました。
加賀は橋洗いの写真を集め、そこに越川睦夫が写っていないか調べることにします。

「赤い指」や「麒麟の翼」に登場した金森登紀子の弟が出版社に勤務しており、
橋洗いの写真を持っていたので、彼にも写真を提供してもらいます。
その際、加賀は金森登紀子を、事件が終わったら食事をしようと誘いました。

加賀は膨大な量の写真を調べ、博美が写っている写真を発見しました。

しかし、そのことで博美に1月「柳橋」から始まるメモの意味を尋ねても、
博美は知らないと言いました。

一方、松宮は月村ルミから、20歳代半ばごろ、
博美が男性と付き合っており、
彼からルビーのペンダントをプレゼントされていたらしい、という話を聞きました。

松宮が捜査本部に戻ると、越川睦夫の部屋から発見された指紋と、
加賀の母親の遺品にあった時刻表から発見された指紋が一致したという
情報が入っていました。

つまり、越川睦夫と綿部俊一が同一人物の可能性が高まりました。

時刻表に残された指紋からは女川駅の時刻を調べた形跡があり、
そこにある原子力発電所に綿部俊一は勤めていたのではないか、
という話になりました。

その後、博美の周囲にいる人物で、
行方が分からなくなっている年配の男性はいないかと調べたところ、
博美の中学二年生のときの担任の苗村誠三が、
随分前から行方不明になっていることが明らかになりました。

松宮と坂上は、再び滋賀県へ行き、情報を集めます。

滋賀県の警察が調べてくれた話によると、
苗村は19年前に妻と離婚し、教師も辞め、
それ以来行方が分からなくなっているのだそうです。

苗村の教え子で、博美や押谷道子の同級生たちからも話を聞きますが、
彼らは博美が転校した理由などを知らず、
殆ど記憶にも残っていないようでした。

越川睦夫の似顔絵を見せても、芳しい返事はありませんでした。

苗村が教師を辞めたころの教頭など、元同僚から話を聞いても、
越川睦夫の似顔絵が苗村に似ているという証言は得られませんでした。

母の失踪と父親の自殺以降、
博美が住んでいた児童養護施設「琵琶学園」を松宮は訪問します。
苗村は博美が転校した後も、
博美に会いに「琵琶学園」を何度も訪れていたことが明らかになりました。

その職員は苗村のことをよく憶えていると言っていたのに、
松宮はなぜか越川睦夫の似顔絵をその職員には見せませんでした。

……おそらく、見せ忘れたんじゃないかと思いますwww

他にも、苗村のことを知っていそうな人物、
老人ホーム「有楽園」に入居している博美の母親と思しき女にも、
松宮や坂上が苗村について尋ねた描写がありません。
読み飛ばしてしまっただけかもしれませんが。

うーん……まあ、文章として書いていない部分で調べていたんじゃないか、
と脳内補完しておきます。

それはともかく、松宮は苗村の元妻の妹に、苗村のことを聞きに行きます。

そこで、苗村には不倫相手の女がいたこと、
離婚前にルビーのペンダントを買っていたことなど、
重要な証言を得ることができました。

一方、加賀は東京で、
綿部がどうやって百合子の息子である加賀の住所を知ったのかと考え、
加賀が載った剣道雑誌の記者から漏れたのではないかと考えました。

そしてそのセンで調べると、博美が加賀の住所を調べていた痕跡が見つかりました。

ここでまた博美の回想があります。
博美が高校卒業間際に、中学時代の恩師である苗村と不倫関係に陥ったこと、
女優を目指して上京した博美を追いかけて苗村も上京してきたことなどを、
博美は回想しました。

また、松宮は滋賀県から東京に戻ってきました。
そしてすぐに加賀と一緒に仙台へ向かいます。

仙台へ行き宮本康代に、苗村の写真を見せたのですが、
この人は綿部俊一ではないと、きっぱりと否定しました。

一方、東京の捜査本部では、
綿部俊一は横山一俊という原発作業員になりすましていたのではないか、
という疑いが浮上していました。

加賀は博美に再び話を聞きに行きますが、その際、女性も同伴していました。

博美が加賀の住所を調べていたことで揺さぶりをかけ、
さらに、博美の父親が飛び降り自殺したのは滋賀県から遠く離れた場所なのではないか、
だから博美の同級生たちは博美に関する記憶が曖昧だったのではないか、
という推理を話します。

一方、その隙に、加賀と同伴していた女性は洗面所にある博美のヘアブラシから、
博美の髪の毛を採取していました。

松宮は横山一俊の元同僚の老人に話を聞きに行き、
越川睦夫の似顔絵を見せました。
すると、今度は、横山一俊に似ているという証言を得ることができました。

さらに、下請けの会社の名前がワタベだったと明らかになり、
それと「一俊」という名前を組み合わせ、
綿部俊一という偽名を名乗っていたのではないかと松宮は考えました。

その頃、博美に動きがありました。
博美は新幹線で滋賀県へ行き、「有楽園」で母親の厚子と対峙しました。
その直後、厚子は自殺を図りましたが職員に見つかり止められました。

一方、加賀は、「能登半島で博美の父親の浅居忠雄が自殺した、
という新聞記事を発見します。
そして博美の部屋から採取した髪の毛と、越川睦夫のDNA鑑定を依頼しますが、
2人の親子関係が証明されました。

そしてまた博美の回想です。
借金取りに追われて夜逃げした博美と忠雄でしたが、逃亡資金も尽き、
忠雄は自殺、あるいは心中を考え始めました。

石川県の旅館で最後の晩餐をとっていた博美と忠雄は、
そこで横山一俊という原発作業員と知り合います。

横山は博美に〇春を持ちかけ、博美も一度は承諾しかけますが、
やはり途中で嫌になり逃げだそうとして争いになり、
博美は割り箸で横山の咽喉を突いて殺してしまいました。

それを知った忠雄は、横山を自分に見せかけて崖から転落させ、
自分は横山になりすますことを思いついたのでした。

以降、博美は架空の同級生『小泉今日子』という偽名を名乗る父親と
文通をして連絡を取り合いました。

高校を卒業して上京した博美は、上野動物園で忠雄と待ち合わせし再会します。
それからも2人は数ヶ月おきに会うようになりましたが、
やがて博美の顔が女優として売れてきたため、
ホテルの一室で密会するようになりました。

ところが、当時博美と付き合っていた苗村がその秘密を知ってしまったため、
忠雄は苗村を殺害してしまいます。

さらに、それから二十数年後に、
博美は自分が演出した『異聞・曽根崎心中』の舞台初日に、忠雄を招待しました。

ところが、その芝居を押谷道子も見て、
そこで忠雄を発見して声をかけてしまいました。

道子は前日、博美から父親は自殺したと聞いていましたが、
苗村が博美の家庭環境を生徒たちにぼかしていたため、
道子は博美が、父親は自殺したのだと嘘を吐いていたのだと思い込んでいました。

そして道子は厚子の件で忠雄(=越川睦夫)の部屋へ行き、殺されたのでした。

忠雄はそのことを後悔し、生きるのに疲れてしまい、
ホームレスの小屋で焼身自殺しようとしました。
焼身自殺という方法を選んだのは、浅居忠雄は既に死んだことになっているので、
顔や指紋が出回って、最近まで生きていたことが分かるとまずいからです。

が、博美はそのことに感づいて忠雄を追いかけてきました。
博美は忠雄の意志をくみ、彼を殺して楽にさせてあげました。

そして現在。
『異聞・曽根崎心中』の千秋楽の後、加賀は博美を、父親殺害容疑で逮捕しました。

その後、加賀は再び本庁へ異動することになりました。
百合子の死の真相を探るために日本橋署への異動を希望していましたが、
今回の件で、結局、母親の遺品から見つかった日本橋に関するメモは、
百合子と直接の関係はないことが分かってしまいましたしね。

それからしばらくして、松宮は博美から預かった手紙を、金森登紀子に渡しました。

実は、博美の部屋のヘアブラシから髪の毛を採取した女性は、登紀子だったのです。

登紀子は松宮に促されて、博美の手紙を読みました。
するとそこには忠雄が加賀に宛てた手紙も入っていました。

夫との親戚関係に疲れた百合子は鬱病になっており、
無意識のうちに息子を道連れに無理心中しようとしていたのですが、
直前で我に返り、家を出て仙台へ行き、
そこで康代や綿部俊一(=浅居忠雄)と知り合ったのだそうです。

加賀の載った剣道雑誌を百合子に見せると、彼女は、
息子が父親と同じ職業を選んだことから、
父親と上手くいっているのだと喜んでいたそうです。

そして登紀子が剣道の練習をしている加賀に話しかけ手紙を渡そうとするところで、
この物語の幕は下ります。


というあらすじなのですが、捜査は着々と進んでいるはずなのに、
なかなか真相が分からず、面白かったです。

ただ、これは殆ど難癖なのですが、
若干、同じ東野圭吾さんのある著作(ここをクリックすると別窓で開きます。ネタバレ注意)
焼き直しというか使い回し感があります。

しかし、その方向性は違っているため、こんなことを気にする人は殆どいないでしょう。

それより、端役ではありますが、
すっかり金森登紀子がヒロインっぽくなったことの方が気になりますね。

そのうち本当に加賀と付き合いだすかもしれません。                  スポンサードリンク

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