綾辻行人「Another アナザー エピソードS」のネタバレ解説

Another エピソード S (単行本)


シリーズ第2弾、「アナザー エピソードS」のネタバレ解説です。

1作目の「Another」のネタバレ満載なので、未読の方はご注意ください。

正直に言うと、この話はアニメ化・漫画化もされた1作目に比べると、
かなり見劣りしています。
が、メインヒロインである見崎鳴の出番はかなり多いので、
鳴のファンならキャラ萌え小説としては楽しめるのではないかと思います。

さて、あの「現象」が終わった1998年9月の下旬。
榊原恒一は鳴から、鳴が8月のクラス合宿の前に1週間ほど夜見山を離れていたときの
話を聞かせてもらうことになりました。

今回メインとなるのは、その1週間のエピソードです。

鳴の「父親」の知り合いの比良塚(ひらつか)一家が、
緋波町にある鳴の家の別荘からそう遠くない場所に住んでいます。
比良塚月穂(つきほ)には想(そう)という、鳴より3歳年下の息子がいます。
想は実の父親とは死別しており、月穂の再婚相手の男との間にできた子供、
つまり想にとっては異父妹、美礼(みれい)がいます。

……少しややこしいですね。

一昨年、1996年の夏休みに、鳴は賢木昇也(さかき・てるや)と出会いました。
賢木は比良塚月穂の弟にあたる人物です。

そして賢木は中学生のとき、夜見北の3年3組であり、
「八七年の惨事」の年の生徒でした。
賢木にとって中学3年生の5月に、修学旅行へ向かうバスが事故に遭い、
大勢の生徒が亡くなりました。
その際、賢木は左脚を怪我してしまいました。

さらに、6月の半ばには母親の日奈子も心不全で突然死してしまいます。

賢木は「災厄」から逃れるため、
緋波町の水無月湖のほとりにある屋敷に引っ越してきて、
それ以来ときどき旅に出たりはしたもののずっとこの屋敷に住んでいました。

鳴はそのときの話を、今年(1998年)の夏休みに賢木に聞こうと思っていたのですが、
今年の5月の初めに、既に賢木は亡くなってしまっていました。

そして鳴は今年の夏休みに賢木の「幽霊」と出会うのですが、
彼はまだ見つかっていない自分の死体を探していたのでした。

という導入部分があり、賢木の視点から見た話が始まります。
賢木は裕福な家庭に生まれ、20歳になる直前に父親が亡くなり、
近い親類が姉の月穂だけになったのをいいことに、大人になっても働かず、
毎日を静かに過ごしていました。

月穂の息子、つまり賢木にとっての甥である小学生の想は賢木のことを慕っており、
それなりに友好的な関係を築いていました。

ところが、5月3日、26歳の誕生日の午後8時半過ぎに、
賢木は吹き抜けのある自宅の玄関ホールで、転落死してしまいます。
そのとき家の中には、月穂や想もいました。

それから2週間後の5月17日、賢木は幽霊として「目覚め」ました。

幽霊として活動できる時間は限られているらしく、すぐに時間が飛んでしまいます。

5月27日には、月穂や想や美礼が住んでいる比良塚家の食卓に、賢木は「出」ました。
月穂は賢木が死んだことを知っているはずなのに、
なぜか賢木は旅行に出かけたみたいだと、美礼に嘘を吐いていました。

5月27日の朝刊の新聞には、夜見山北中学で桜木ゆかりが階段から転落し、
亡くなったという記事が載っていました。

それからも、賢木は自宅以外の場所に「出る」ようになったのですが、
やはり賢木は世間的には死んでいると認められていないらしく、
旅行に出かけたまま帰らないとみなされているようでした。

6月に入ってすぐには、月穂と、その夫の修司会話を聞くことができました。
その会話によると、やはり月穂が賢木の死を隠蔽したようでした。

それ以来、賢木は自分の遺体を捜すようになりました。

7月29日、水曜日。
賢木が水無月湖のほとりの屋敷に出たとき、鳴がやってきました。

そして鳴は、賢木に話しかけます。
賢木は鳴が自分を見えるということに驚きましたが、
自分は幽霊であり、死体が見つかっていないことを説明します。

自分の姿が見えるのは、
おそらく鳴の「人形の目」の力なのだろうと賢木は考えました。

その日以来、賢木は鳴と毎日のように会うようになりました。
8月1日には、賢木と鳴は、
昔鳴が描いた屋敷のスケッチと、現在の屋敷の様子を見比べてみました。
すると、建物の外に1メートルくらいの高さの天使の像を発見しました。
賢木が生きていたときにはなかったものです。

次に、ガレージの中を調べたのですが、棚が倒れてきて、
鳴が危うく下敷きになるところでした。
ここが夜見山の中だったら死んでいたかもしれませんでした。

――5月3日に賢木が死んだとき、
賢木は鏡の中の自分が何かを呟いていたのを目撃していました。
その言葉が何だったのかは思い出せないのですが、
「つきほ」に近い言葉だったのではないかと考えていました。
そのことについて賢木は鳴と話し合います。

屋敷の二階には鍵のかかった部屋がいくつかあり、その部屋を調べてみると、
「災厄」について書かれた新聞などを集めた部屋がありました。

鳴は帰っていき、翌8月2日。

再び屋敷に「出た」賢木は、自分が死んだときの状況を思い出します。
賢木は前々から死にたがっており、26歳の誕生日に、
天井の梁からロープを吊るして首吊り自殺をしようとしていました。
しかし、そこを月穂と想に見つかってしまいます。

月穂は想をその場から遠ざけ、必死に賢木の自殺を思い留まらせようとします。
が、月穂の手を振り払った賢木はその勢いで吹き抜けの上の手すりを乗り越えてしまい、
転落死してしまったのでした。

そして、8月2日の午後6時過ぎになっても、鳴は現れませんでした。
しかし、賢木は鳴の描いていたスケッチと、現在の屋敷の外側を比較してみて、
地下室の明り採りの窓の数が減っていることに気付きました。

屋敷の地下に封印された部屋がることに気付いた賢木は、そこへ行き、
とうとう腐った遺体を発見しました。

賢木が何度も『助けて』と言っていると、鳴がツルハシで地下室の壁をぶち破り、
助けに来てくれました。

……賢木は幽霊のはずなのに、鳴が助けに来た?
と疑問に思った人もいるのではないでしょうか。

実は、賢木は賢木晃也ではなく、比良塚想だったのです。
これまでずっと話を合わせていた鳴は、そのことを『賢木』改め『想』に説明します。

このあらすじではずっと『賢木』と書いていましたが、
幽霊の賢木が登場する場面は、小説本編では『僕』と書かれていました。

ただ、あらすじで『僕』と書いてしまうと本当は賢木ではないことが
バレバレになってしまうので、仕方なく『賢木』と書いていましたが。

さて、まだ11歳か12歳の想少年は、3ヶ月前に賢木の死を目撃したのをきっかけに、
自分は賢木の幽霊だと思い込むようになってしまったのでした。

月穂の夫が選挙を控えていることから、賢木の死を公にするのはまずいと判断し、
月穂たちは賢木の死を隠蔽することにしました。
想には忘れなさいと言い聞かせていたのですが、想は納得できず、
幽霊を作り上げてしまったのです。

賢木の死体を再発見した場所は元々はストーブ室だった場所で、
想は石炭を落とすための穴から落ちたため、自力では脱出が困難になってしまっており、
鳴に助け出されなかったらヤバいことになっていたかもしれませんでした。

榊原にその話を語った鳴は、賢木の部屋にあった写真を榊原に見せます。
おそらくその写真にはかつて『死者』が写っており、
その『死者』こそが賢木の初恋の相手だったのでしょう。

賢木が死の間際に呟いたのは、その年の『死者』である四宮沙津季(しのみや・さつき)の
『さつき』の『つき』の部分だったのだろう、と鳴は推測しました。

その後、鳴は想から届いたという手紙を榊原に見せるのですが、
そこの住所には『赤沢』という名前が記載されていました。

想は赤沢という家でお世話になっているのですが、
それが、あの赤沢泉美の家なのかどうかはまだ不明です。

でも、アニメや漫画の『Another』では出番も台詞も多く大活躍だった赤沢泉美ですが、
原作では空気だったので、小説しか読んでいない人にはさほど意外性はありませんね……。


というあらすじなのですが……。

このラストの「引き」は、
Anotherシリーズしか読んでない人ならワクワクする展開なのかもしれませんが、
しまうましたのように綾辻作品を全部読んでいる人なら、
「どうせまた風呂敷を広げるだけ広げておいて、畳めないんだろうなあ」
とか、
「館シリーズの二の舞にならなきゃいいけどなあ」
と心配してしまいます……。                  スポンサードリンク

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