時雨沢恵一「キノの旅」17巻11話「鉄道の国」のネタバレ解説

キノとエルメスは、かつては巨大な1つの国だったのですが、
50年前に5つの国に別れてしまった国々を訪れます。

すると、線路の前に、この先は我が国の領土だと書かれた看板がありました。
その前でどうしようかと悩んでいると、ちょうど巨大な電車がやってきました。

キノとエルメスは「鉄道の国」の電車に乗せてもらい、入国審査官から説明を聞きます。

鉄道の国の人々は、ずっと列車の中で寝起きし、生活しているのでした。
「船の国」の電車版だと思えばいいですね。

鉄道の国は、大きな盆地の端にある他の4つの国を環状線の線路で結び、
ぐるぐると回り続けているのでした。
国と国との間は離れており、一つの国から隣の国まで2日ほどかかります。
彼らは貿易を生業としています。

列車は3つあるのですが、キノ達が乗せてもらった列車は55両編成で、
934人が乗っているという、とてもスケールの大きな列車です。

50年前に国が5つに別れてしまったとき、
彼らの先祖がどうして列車の上での生活を選んだのか、
鉄道の国の住人達も知らないのでした。

しかし、20日後に建国50周年があり、
そのときに当時の部族の長老が書いた手紙が公開されることになっており、
どうして列車の上での生活を選んだのか明らかになる予定でした。

3日ルールがあるので、キノは2日経ったところで鉄道の国を降り、
エルメスに乗って移動し、4つある普通の国のうちの1つに滞在していました。

キノはその国で、60歳くらいの男に、50年前の様子を聞いてみました。

列車の上で生活するようになった理由はその男も知らなかったのですが、
50年前、鉄道の国の先祖たちは、5つある部族の中でもっとも差別され、
蔑まれ、虐げられていた部族だったのだそうです。

他の3つの国を回ってみても、鉄道の国があるおかげで助かっているけど、
列車の上で生活している理由は分からないという答えが返ってきました。

キノ達が最初に鉄道の国と出会ってから20日目。
キノ達は再び鉄道の国に乗せてもらいました。

正午になると、列車が止められ、
いよいよ50年前の手紙が公開される時間がやってきました。

現在の部族長である中年女性は、同時に3つの列車に聞こえるように手紙を読み上げます。

手紙には、次のように書かれていました。
50年前、鉄道の国の先祖たちは不当に虐げられていた。
彼らは50年間鉄道を運営し続け――建国50周年の日に、
列車を止める計画だったのでした。

すると、今まで鉄道の国に頼り切っていた他の4つの国は混乱し、
争いすら生まれるかもしれません。
それこそが鉄道の国の先祖たちの復讐だったのです。
復讐を終えてしまったら、その後はどんな生き方をしようと自由だと書かれていました。

真実を知った鉄道の国の住人達は大騒ぎをします。

2時間後にどうするか決めることになり、それぞれの列車で話し合われました。

そして――彼らは、今まで通りに鉄道の国として列車を動かし続ける未来を選びました。

いつもより到着が2時間遅れてしまったので到着した国の住人達には怒られてしまいましたが、
『あんた達がいないと、もう国が回らないんだからね!』
などと言いながら、その国の住人達は鉄道の国の荷下ろしを手伝っていたのでした。

鉄道の国を出たキノにエルメスは、草原の道の真ん中で止まるようにと言いました。
するとエルメスは、
『はい、ここでキノの旅は終わり!』
と言い、2秒後に
『うん、そして始まり。さあ、出発だ!』
と言ったのでした。


というあらすじなのですが、このオチのエルメスの台詞の意味は、
次の第12話「旅の終わり」で明らかになります。

ところで、この話はストライキが隠しテーマの話だったのではないかと思います。

ストライキというのは、「賃金を上げろ」とか「休日を増やせ」とか
「もっと安全対策をとり労働者を大事にしろ」とか様々な理由で、
雇用側に対して反対するために、労働者側が労働を行わないで抗議することです。

ストライキ自体は労働者の権利として、先進国なら殆どの国で認められています。

ストライキが実行されると雇用側の損失が大きいので、
立場の弱い労働者側にとっては貴重な抗議の手段です。

が、貧しい社会ではストライキは容認される傾向にあるのですが、
豊かな国ではストライキをされている側よりもストライキをしている側に批判が集まることが多いです。

特に、直接顧客に被害が及ぶ、電気・ガス・水道などのインフラや、
鉄道・バス・フェリーなどの交通機関がストライキを行うと、利用者にとっては大迷惑です。
直接的な影響はなくても、間接的にストライキの被害に遭うことも多々あります。

そこで、労働者側は事前にストライキをするぞと警告し、雇用側も意見を出し、
できるだけストライキが実行されないように苦心します。

しかし、それでも意見のすり合わせができないと、ストライキが実行されることになります。

最近だと、アメリカの「2007年-2008年全米脚本家組合ストライキ」が有名ですね。
簡単に説明すると、インターネット配信などで得られる利益を、
脚本家にも還元しろと全米脚本家組合が申し出て、
それが受け入れられなかったために起こったストライキです。

ストライキは3ヶ月以上も続き、
結果的にハリウッド過去20年の中で最も大規模なストライキとなりました。

ハリウッド製の連続ドラマにもその影響が及び、
「デスパレートな妻たち」は1シーズンにつき通常24話前後なのに、
シーズン4だけ全17話になってしまっていました。
他にも、その年の色んなドラマの話数が少なくなったり、
ドラマの放送を翌年に見送ったりしていました。

……話を元に戻すと、この「鉄道の国」の先祖たちがやりたかったのも、
ストライキの一種だと考えることができます。
ただし、通常のストライキと違い、国と国との間で行うものですし、
先祖たちはもう鉄道の運営を再開するつもりはありませんでしたが。
しかし、2時間だけとはいえ、運行をストップしたことで、
他の国の住人たちも改めて鉄道の国の重要性に気付いたので、
多少の地位向上の効果はあったのではないかと思います。
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