湊かなえ「花の鎖」のネタバレ解説

花の鎖 (文春文庫)


この小説は、それぞれ雪、月、花が名前に入った、3人の女性が主人公です。

全6章構成になっており、1つの章につきそれぞれ3人の話があるので、
合計18パート分のエピソードがあることになります。

が、同時進行であらすじを書いていくと読んでいて混乱すると思うので、
1章から4章までは1人ずつまとめて書きます。

まずは1章から4章までの、梨花(りか)という27歳の女性のエピソードです。
「あたし」という1人称で書かれています。

梨花は最近まで英会話スクール「JAVA」で講師をしていたのですが、
経営破綻して倒産してしまいました。
これはおそらく、2007年に経営破綻した株式会社ノヴァがモデルなのではないかと思います。

梨花はアカシア商店街で創業80年の老舗和菓子屋「梅香堂」できんつばを買い、
山本生花店で幼馴染の健太に花束を作ってもらい、入院中の祖母のお見舞いに来ます。

梨花の両親は既に交通事故で亡くなっており、
祖母は梨花にとって一番身近な存在の肉親でした。

が、そんな祖母が病気で亡くなろうとしているのに、梨花は失業中で、
手術費用を捻出することができません。

おまけに、祖母は自分の全財産をつぎ込み、
何かをオークションで競り落としてほしいと梨花に頼みます。
手術費用すら出せないのだと打ち明けることができず、
梨花は「K」という人物にお金を借りることにしました。

Kは、梨花が小さいころから、
10万円もする花束を毎年10月20日に家に送りつけていました。
幼い頃、梨花は母親に「Kって誰?」と訊いたこともあったのですが、
そのときは「くじ引きのKよ」と誤魔化されてしまい、詳しい事情は知りませんでした。
3年前に両親が事故死した際には、Kの秘書という人が訪れ、
梨花に援助をしたいと申し出てくれたこともあったのですが、
梨花は当時既に24歳だったため断っていました。

お金を貸してくださいとKに手紙を書きますが、梨花はKの本名も住所も電話番号も、
何もかも知りませんでした。
祖母は知っていると思うのですが、Kに連絡を取りたい理由を説明できないので、
祖母には話せません。

そこで、毎年送ってくれていた花束を手がかりにしようと、
山本生花店へ行き、Kについて健太に訊ねます。
すると、Kからの注文は別の
「フラワー・エンジェル(全国花屋協会みたいなもの)」の加盟店が受け、
送り先である梨花の家に一番近い山本生花店が引き継ぐシステムになっていました。
つまり、健太もKの素性については知らなかったのです。

健太はフラワー・エンジェルの本社に問い合わせてくれますが、個人情報保護を盾に断られました。

そこで、健太に詳しい事情を説明すると、Kに手紙を送るくらいならできるだろうと言われました。
手紙と一緒に花を送ればお客として扱ってもらえるので、
「フラワー・エンジェル」を経由してKに手紙を送ることもできるのです。

が、実はフラワー・エンジェルに加入する前は山本生花店が直接Kから注文を受けていたので、
数十年前には健太の父親は電話でKの声を聞いたことがありました。
Kは有名な画家か建築家らしい、という情報が手に入ります。
また、花束のイメージは「愛する人へ」だったのだそうです。

Kに手紙を送ってから5日目。
とうとうKから返事が来ました。

9月の下旬の日曜日、午前10時にHグランドホテル1階、喫茶ラウンジ「アカシア」で待っている、
とメッセージがありました。

手紙には祖母の病気のことも伝えたので、Kは祖母にお見舞いの花も送ってくれました。
それを利用して、梨花は祖母からKの素性を聞きだそうとするのですが、
おそらく知っているはずなのに知らないと言われてしまいます。

祖母に頼まれ、Kからの花束をナースステーションに預けて病室に戻ると、
祖母は寝ており、見知らぬ高齢の男性がお見舞いに来ていました。
また、お墓参りに行くと、既に誰かがお墓参りに来た形跡がありました。

そして、いよいよKと待ち合わせをした日がやってきます。
梅香堂できんつばを20個も箱に詰めてもらい、Hグランドホテルの喫茶店へ行くと、
K本人ではなく、その秘書が代理で来ていました。

100万円貸してもらいたいと頼むと、Kの秘書はあからさまに不機嫌そうな態度をとりました。

実は秘書と名乗ってはいましたが、秘書はKの息子でした。
しかも、秘書は、梨花の母親が自分の父親の昔の恋人だと思い込んでいました。
100万円はあげるが、それを手切れ金として縁を切りたいと言いました。

あまりにも失礼な態度に、梨花も怒り、お金はいらない、関係も断とうと言いました。

険悪な雰囲気になったところで、祖母のお見舞いに来ていた高齢の男性が現れました。
秘書はその男のことを「専務」と呼びます。

専務は秘書に、梨花に対して高圧的な態度を取るのは間違っている、
梨花の祖母と秘書の一家がどのような関係なのか知らないのかと言いましたが、
秘書は知らないと言いました。

専務は梨花に、喫茶店の壁にかけられていた絵を見せ、
一般の人とは全く違う解釈をしました。

Kは2年前に既に亡くなっていることを教えられ、別れると、
2日後に速達で手紙が届きました。
Kの別荘があると思われる清里という場所に来てほしいという内容でした。


次に、高野美雪という女性の1章から4章までのエピソードです。
この美雪の話は、1人称は「私」で、ですます調で書かれており、
他の2人と区別できるようになっています。

美雪は母方の伯父が役員をしている建設会社で事務員をしていたころ、
和弥という営業職の男と親しくなり、結婚しました。

和弥は元々、設計の仕事を希望していたのですが、
美雪の伯父が役員をしている会社では営業職に回されていました。

美雪の従兄の陽介が新しく立ち上げた会社では設計の仕事ができるということで、
陽介の会社へ再就職したのですが、そこでも営業職に回されてしまいます。
美雪はもともと陽介や、その両親(美雪から見て伯父伯母)や、
陽介の妻の夏美と折り合いが悪く――というか一方的に辛く当たられていて、
それもあって、陽介に騙された、と美雪は思っていました。

自分の親戚に和弥の人生が振り回されていることに罪悪感も覚えていました。

しかし、ある日和弥は、
今自分の持っているものすべてを賭けてもいいと思えるくらいの目標ができたんだ、
と美雪に打ち明けました。

それから数日後、陽介の妻の夏美が美雪の家を訪れます。
が、やはりと言うか何と言うか、夏美はいちいち美雪の癇に障ることを言います。

和弥は設計の仕事がしたいのだと、和弥が引いた図面を見せても、
これじゃダメだと言いコーヒーの染みをつけてしまいます。
最後まで偉そうな態度をとり、夏美は帰っていきました。

美雪がアカシア商店街で買い物をした帰り、
陽介の会社で事務員をしている森山清志の母親に声をかけられ、
その家で育てていたコスモスをもらいました。

その夜、和弥は、香西路夫の作品が展示される予定の、
県の美術館の設計コンペティションに参加するつもりだと美雪に打ち明けました。
美雪は心から和弥を応援し、少しでもヒントになるかと、
香西路夫の絵に、この町で描いたのかもしれないものがあると伝えました。

美雪は家事の合間に、香西路夫について色々と調べます。
やがて、香西路夫の絵に、「未明の月」というタイトルの、
この辺では雨降り渓谷と呼ばれている場所を描いた絵があることを知りました。

週末に、美雪と和弥は、香西路夫に関する場所を、森山清志に案内してもらいます。

その際、「未明の月」の話題になり、
香西路夫の時代には描きたいものをそのまま描くことが許されなかったので、
前期は歪ませて描いていたが、後期は自由に描けるので楽しんで描いていたのではないか、
と森山清志は独自の解釈を教えてくれました。
と言っても、それは森山清志の祖母の受け売りだったのですが。

和弥は毎日の仕事が終わってからこっそり美術館の図面を引いていたので大変でしたが、
森山清志に教えてもらった解釈のおかげか、和弥の引いた図面は順調に進んでいきました。

図面の完成が近づいたころ、美雪は午前3時に和弥に起こされ、
雨降り渓谷へ連れていかれました。
月の歌を歌いながら山登りをし、雨降り渓谷で日の出を見ます。
そして振り返ると、そこには香西路夫の「未明の月」と同じ景色が広がっていました。

和弥はそこで完成した図面を取り出し、美雪に見せました。
美雪は完成を喜びます。

それから1ヶ月が過ぎ、そろそろコンペティションの結果が出る時期になりました。
森山清志の母と出会った美雪は、例の図面がコンペティションの最終選考に残り、
事務所に連絡が行ったことを教えられました。

美雪はお祝いをしようといつもより豪華な食事を作りますが、
帰宅した和弥の表情は暗いものでした。
和弥が応募した図面は、知らないうちに名前が書き換えられていたのです。
最終選考に選ばれたのは、陽介の事務所名義で応募した作品ということになっており、
代表者は陽介でした。


最後に、ミス・アカシア(アカシア商店街のミスコン)に選ばれたこともある、
紗月という女性の1章から4章までのエピソードです。

紗月は短大時代、希美子に誘われて、同じ寮の倉田先輩が所属している、
W大学の山岳同好会に入りました。
紗月はそこで浩一という男性と知り合いますが、
初対面のときになぜか浩一のことを「お父さん」と呼んでしまったことから、
紗月は浩一と親しくなっていきます。

ちなみに、紗月の父親は紗月が生まれる前に亡くなっており、
母親が女手一つで紗月を育ててくれました。

浩一のことが好きだという希美子から、そのことについて嫌味を言われます。

同好会に入って1月も経たない頃、八ヶ岳縦走合宿の最中のことです。
他人に頼るのが苦手な紗月に、倉田先輩は、お互い、一日一頼みをしようと言います。
1日1回、お互いに何か頼みごとをするという提案に、希美子の乗り、
3人は毎日お互いに頼みごとをするようになりました。

また、浩一の「娘」と認定された紗月は、浩一に惹かれていきます。

その年の夏合宿が終わり、帰省する際、希美子も紗月の実家についてきました。
母親の手料理を食べ、翌日、希美子と紗月は雨降り渓谷へ行きます。

そこで希美子は、今までは紗月が母子家庭だからと遠慮していたけど、
もう、同情も遠慮もしない、倉田先輩と浩一のうち、
どちらかを希美子に譲れと言われました。

短大の寮に戻った紗月は、倉田先輩と国立美術館へ行き、
この美術館は浩一の父親が設計したものなのだと教えられました。
倉田先輩は体長が悪そうでしたが、香西路夫展を見ます。
母親から教えられた、香西路夫の絵に対する一般とは違う解釈を倉田先輩に教えると、
倉田先輩は感心していました。

そして、雨降り渓谷を描いた「未明の月」を見ているときに、倉田先輩は倒れました。
倉田先輩は急性骨髄性白血病を患っていたのです。
白血球の型が一致する骨髄液の移植をすれば助かるのですが、
倉田先輩の家族は誰も倉田先輩と型が一致しませんでした。

紗月と浩一は手分けして、山岳同好会のメンバーに適合者がいないか調べてもらいました。
が、倉田先輩の型と適合する人はいませんでした。

血液型がAB型で倉田先輩と一致する希美子は、倉田先輩に血液を提供していました。

浩一に勧められ、絵が上手いと評判だった紗月は鼻のスケッチを描き、
倉田先輩に贈りました。
しかし、倉田先輩は亡くなってしまいます。
倉田先輩が倒れたことをきっかけにして紗月と浩一の中は進展していましたが、
最初は怒った希美子もやがては許してくれました。

短大2年生の夏、紗月と希美子は倉田先輩のお墓を作るために八ヶ岳縦走をしました。

しかしその後、何か決定的な出来事が起こり、紗月は浩一と希美子の2人と絶縁してしまいます。

そして25歳になった紗月は梅香堂で店員のアルバイトをしながら、
公民館で「花の水彩画教室」を開いていました。
山本生花店から季節の花を届けてもらい、その絵を描くという講座の講師をしています。

紗月は、定食屋「竹野屋」で働いている母親と2人暮らしをしています。

ある日、Kと名乗る人物から手紙が届きます。
それは、短大時代、寮でルームメイトだった友人の希美子からの手紙でした。
手紙には、どうしても会って相談したいことがあると書かれていました。

手紙に返事を出すと希美子から電話があり、紗月の家の近くで会うことになりました。

そこで希美子は紗月に、浩一を助けて欲しいと言われますが、
希美子が宏一の子どもを産んだことを聞いた紗月は冷静ではいられなくなり、
逃げようとします。
が、希美子に腕を掴まれ、掴み合いの喧嘩になりかけたところで、
紗月が「花の水彩画教室」を開いている公民館で働いている、前田が通りかかり、
仲裁に入ってくれました。

希美子は、浩一は今、倉田先輩と同じことで苦しんでいると言いますが、紗月は、
「泣かないで! 
本気で頼みたいのなら、その涙を母さんとわたしに返してから、頼みなさいよ」
と突き放しました。

それから数日後、紗月がアルバイトをしている梅香堂に、前田が現れます。
前田は希美子から預かった伝言を紗月に伝えに来たのですが、紗月は拒絶しました。
が、その話を聞いていた梅香堂のおかみさんに言われ、渋々、
紗月は伝言を受け取りに公民館にいる前田に会いに行きました。

そこには「わたし以外の人が頼めば、さっちゃんなら、
二つ返事で引き受けてくれることなのに、わたしからしか頼めないので、
さっちゃんも引き受けることができないんです。
事実は何も変わりませんが、さっちゃんは倉田先輩を助けようとし、
倉田先輩が浩一さんを助けるのだと解釈してほしい」
と、禅問答のようなことが書かれていました。

その後、前田も学生時代に山岳部に入っていたことを知った紗月は、
倉田先輩は八ヶ岳のの硫黄岳の頂上付近にいっぱい咲いていた、
コマクサのような人だったと言い、
コマクサを見ることができたら希美子の頼みを受けられるかもしれないと言いました。

それを聞いた前田は、じゃあ八ヶ岳の赤岳にあるコマクサを見に行こうと提案します。
時期的にコマクサなど咲いているはずがないのですが、前田は自信たっぷりです。

家に帰った紗月は母親に、前田と食事したことを話すと冷やかされました。
そこで紗月は、今週末、八ヶ岳に希美子と登りに行くことにしたのだと、嘘をつきました。

そして、週末。
紗月は、香西久美子という人物から母親宛に届いた手紙を居間のテーブルの上に置き、
家を出ます。
そこへ「竹野屋」から母親が帰ってきて、からあげ弁当を紗月に渡しました。

翌朝、前田と一緒にからあげ弁当を食べた紗月は、いよいよ八ヶ岳縦走を開始します。

紗月は前田に、短大時代の出来事――倉田先輩や希美子や浩一のことについて話します。
そして、「わたし、浩一さんと同じ白血球の型をしているんです――」と打ち明けたところで、
第4章は終わります。


そして第5章に入るのですが、
港かなえさんはしっかりと伏線を張ってくれるタイプの作家さんなので、
少し勘の鋭い人ならこの章でもう大方のエピソードの真相が分かると思います。

「花」のパートでは、きんつばを買いに梅香堂へ行った梨花は、
梅香堂の奥さんから、梨花の母親が昔「梅香堂でアルバイトをしていたことがあり、
ミス・アカシアにも選ばれたことがある
」という話を聞きます。

また、森山のおばあちゃんという人物が時々、
梨花の家のお墓参りをしていることも教えられます。

森山の家へ行った梨花は、そこで突然、九十歳過ぎのおばあさんから、
「申し訳ございません、申し訳ございません……」
と謝罪されます。
どうやらおばあさんは、梨花のことを誰かと勘違いしているようでした。

おばあさんの娘さんは、「自分には兄がいて、兄は昔梨花の祖父にお世話になったのだと言いました。
梨花にとっては初耳です。

そして梨花は、おばあさんがKの秘書が専務と呼んでいた人物に似ていることに気付きました。
おばあさんの娘さんに確認すると、やはり同一人物でした。

山本生花店へ行って健太にそのことを話すと、健太は、
森山のおばあちゃんは梨花と梨花の祖父を見間違えたのではないかと指摘しました。

予約しておいたきんつばを取りに、健太と一緒に梅香堂へ行くと、
奥さんから、Kという人物の心当たりについて大将が『きみこ』と言っていたことを聞きました。



次は第5章の「雪」のパートです。
応募者の名前が和弥から陽介の事務所に書き換えられていたことを知った美雪は、
家を飛び出し、陽介に抗議しに行きます。
途中で出会った森山清志に自転車を借り、事務所へ飛ばします。

明らかに盗作なのですが、陽介は、自分の会社の従業員が個人名義で送ったものを、
選ばれた後でトラブルが生じないよう、会社の名義に書き直しただけだと開き直りました。
さらに陽介は、ただ名義を書き直しただけではなく、降雨量が多いことを考慮し、
地盤の緩さや土砂災害を考慮して図面を修正したのだと付け加えました。

さらに美雪が抗議していると、和弥が追いかけてきて美雪に「もういい」と言いました。

それから半月の間に、美雪はこのことを母親と伯母に手紙で知らせましたが、
伯母からの返事はなく、母親からは兄の反感を買うなと書かれていました。
とうとう最終選考が終わり、和弥が書いた図面が選ばれました。
美雪がおめでとうと言うと、和弥は名前にこだわる必要なんかないと言いました。

古い図面を整理していた和弥は、コーヒーの染みがついていることに気付きます。
それを見た美雪は、夏美がコーヒーの染みをつけたことを思い出しました。
和弥がコンペティションに応募したことを陽介が知ったのは、夏美が教えたからなのだと、
美雪は思い至り、絶望して吐いてしまいました。

翌日の午後5時。
昼寝をしていて、雨の音で目を覚ました美雪のところへ森山清志が訪ねてきて、
和弥が事故に遭ったことを伝えました。


そして第5章の「月」のパートです。
倉田先輩へ移植するために白血球の型を調べたところ、紗月と浩一の型は一致していました。
全くの赤の他人で型が一致する可能性は何万分の一なので、凄いことだと思ったのですが、
実は「紗月と浩一は血が繋がっていたのでした。

倉田先輩が死んでから1年後、紗月の母親の母親が亡くなった際に、
紗月はそれまで絶縁中だった親戚と初めて会いました。
そのとき判明したのですが、紗月と浩一は『はとこ』だったのです。

初めて出会ったときに浩一のことを『お父さん』と呼んでしまったのも、
無意識のうちに血の繋がりを感じていたからなのでした。

祖母の葬式から帰り、有名な建築家である浩一の父親といとこ同士だったんだね、
と母親に言うと、母親は『やめて!』と言いました。
そして、『――お父さんは、あの人(浩一の父親)に殺されたのよ』と衝撃の告白をしました。

結局、そのことがきっかけとなり、紗月と浩一は破局してしまいます。


――そして前田と登山をしていた紗月は、もうすぐ赤岳山頂に到着します。


最終章となる第6章の「雪」のパートです。
第5章までは「花→雪→月」の順だったのですが、
最終章では「雪→月→花」の順になっています。

和弥は陽介と森山清志の3人で雨降り渓谷へ行き、そこで和弥が岩から川へ転落し、
溺死してしまいました。
しかし、陽介は和弥が死んだのは自業自得だという意味のことを言い、
美雪は陽介に食ってかかります。
陽介の両親だけではなく、美雪の母親までもが陽介の味方になり、
美雪は孤立無援状態でした。

それから3日後、美雪は自殺するために雨降り渓谷へ行きます。
が、それを察知した森山清志に助けられ、美雪は一命を取り留めます。

そして美雪は医者から自分が和弥の子どもを身ごもっていることを知らされます。
いち早く美雪の妊娠に気付いていた和弥は、
女の子が生まれたら『雪月花』という繋がりのある名前をつけられるようにと、
いくつか名前の候補を考えたメモを遺していました。
その中には『紗月』という名前もありました。

美雪が1人で子どもを産んで育てる決意をしたところで、『雪』のパートは終わります。



次は第6章の「月」のパートです。
紗月と前田は「赤岳の山頂付近にある山小屋へ行きます。
その山小屋の天井には、コマクサの絵が飾られていました。

しかし実は、前田は知らなかったのですが、そのコマクサの絵を描いたのは紗月自身でした。

倉田先輩が死んだ後、紗月と希美子は倉田先輩のお墓を作るために八ヶ岳に登りました。
しかし途中で、山にお墓を作るのはよくないと思い直しました。
その代わり、山小屋に着くと、
希美子は一日一頼みを使い、倉田先輩の絵を描いてほしいと紗月に頼みました。

そのリクエストで紗月が書いたのが、コマクサの絵だったのです。
さらに、希美子や浩一など、山岳同好会のメンバーの絵を描いていきます。

描き上げた絵の束は、山小屋の主人に頼み、山小屋に置いてもらいました。
そして後日、雪山登山中に遭難して山小屋に運ばれた前田がその絵を見て感動し、
前田はずっとその絵のことを憶えていたのでした。

やがてその絵は登山客の間で話題となり、有名な作家の山岳小説の表紙にもなりました。

前田は、その絵を描いたのが紗月だとは知らずに紗月をここに連れてきたのですが、
紗月自身も、前田の言うコマクサが自分の絵だとは気付かずにここまで来たのでした。

念願のコマクサを見た紗月は、浩一のドナーになる決意をしました。



最後に、第6章の「花」のパートです。
Kの秘書と、専務と呼ばれる森山の2人に連れられて、
紗月はログハウスのような別荘へ連れて行かれます。

そこにいたのは、「秘書の母親である、北神希美子と、希美子の義母である夏美でした。
秘書の父親である浩一は白血病とは関係なく既に故人となっていました。

希美子は、梨花の母親である前田紗月(旧姓・高野紗月)が、
希美子の夫の浩一が白血病になったときドナーになってくれたという過去を梨花に教えました。

それに気付いた浩一は、毎年『K』と名乗り紗月に花を贈り続けることにしたのでした。

……ここでちょっと状況を整理すると、
まず、美雪と和弥の子どもが紗月で、紗月と前田の子どもが梨花です。

梨花のパートが始まった時点で、和弥と紗月と前田と浩一は既に亡くなっています。
陽介は認知症で施設に入っています。

――和弥のドナーになるか迷っている紗月が、前田と八ヶ岳に登っている間に、
陽介と夏美は、紗月の母親である高野美雪に、
紗月にドナーになってもらえるように頼みに行っていました。
そのとき、紗月と浩一がかつては恋仲であったことや、
紗月の描いた絵を作家の本の表紙に使ってもらうよう出版社に働きかけたことも、
陽介と夏美は美雪に話しました。

陽介は、香西路夫美術館は経歴から削除すると言いましたが、
美雪は、和弥の才能から逃げ出したいだけだろうと一蹴しました。

陽介と夏美は絶望的だと思いましたが、美雪は、
ドナーになるかどうかを決めるのは紗月自身だと言いました。

……ちょっと話が逸れますが、はとこである紗月が浩一のドナーになれるということは、
美雪も浩一と白血球の型が一致する可能性は比較的高いと思うのですが、どうしたんでしょうね。
本編では全く触れられてませんでしたが、誰もその可能性を思いつかなかったのでしょうか。

夏美と希美子の話を聞いた梨花は、祖父である和弥が亡くなったのは、
本当に事故だったのかと改めて聞きました。

すると専務――森山清志は、雨降り渓谷に行こうと言い出し、
渋る和弥を無理やり連れて行ったのは陽介であったことを告白しました。
森山清志は、和弥がコンペティションに参加していることを
陽介に告げ口したという負い目があったので、陽介の言いなりになっていました。

森山清志が陽介に告げ口した理由は、香西路夫の絵の解釈についてでした。
森山清志は、和弥と美雪に、自分の祖母の解釈を教えており、
それがインスピレーションとなり和弥は図面を完成させました。
森山清志は、コンペティションの応募者として和弥と連名にしてもらえるのではないか
と期待していたのですが、応募者には和弥の名前しかなく、
それで逆恨みして陽介に告げ口をしていたのでした。

……これまでいい人そうだった森山清志が、元凶の1人だったことが判明したわけです。
地味にショックです。
しかも、連日徹夜のような状態で図面を書き上げたのは和弥の力なのに、
絵の解釈を教えただけで名前を載せてもらえると思うのが凄く図々しいです。

すべてを知った梨花は、当然、美雪の手術費の援助や、自分の再就職の斡旋を辞退します。
が、希美子から一日一頼みをしてと言われ、美雪の願いを叶えて欲しいと言いました。

美雪がずっと欲しがっていたのは香西路夫の『未明の月』でした。
競売に出されていたのを北神建築事務所が買い取り、
『高野和弥氏の功績を称えて』と記して香西路夫美術館に寄贈したのでした。

ラストは、『未明の月』を観に香西路夫美術館を訪れた梨花と美雪が、
そこで結婚式を挙げていたカップルに花を渡そうとする場面で終わります。


というあらすじなのですが……、正直、あらすじを書くのが非常に大変でした。
伏線だらけの複雑な構成の小説なので、普通の長編小説の3倍は疲れました。

実際、「白ゆき姫殺人事件」と比較すると、4倍近い文字数になっていますwww

途中で何度も挫折しそうになりがらも、
他の小説と同時進行で2ヶ月以上かけてコツコツとあらすじを書いたのですが、
そのせいで解説待ちの本がとうとう30冊を超えてしまい、予定が狂いまくりですwww

感想としては、「美雪の出番が凄く多いなあ、という感じです。
紗月と梨花は自分のパートにしか登場していませんが、
美雪は紗月の母親として、梨花の祖母として、全部のパートに登場していますからね。

後、紗月のパートはさほど違和感がありませんが、
やっぱり美雪のパートは現代から見てざっと半世紀以上前の話なので、
かなり時代がかっている感じでしたね。

例えば、美雪と和弥が家でテレビを見ているシーンとか、
電話をしているシーンというのがないんですよね。
美雪の時代にはまだ、テレビも電話も一般家庭にはあまり普及していませんでしたからね。

それでも、アカシア商店街とか山本生花店とか梅香堂のきんつばとか登山とか香西路夫とか、
紗月や梨花と共通したワードを出すことで上手に違和感を薄めているのですが。

他に気になる点としては、美雪はなぜ、
紗月や梨花に、陽介一家との確執を話しておかなかったのか、という点ですね。
誰かを恨みながら生きて欲しくないとか、そういう理由だったのかもしれませんが、
美雪が最初から和弥のことを話しておけば、紗月が浩一と恋仲になって別れて傷ついたり、
梨花が『K』にお金を貸してもらおうなんて考えたりしなかったのに……と思ってしまいます。

特に、もし紗月がまだ小さいうちに美雪が不慮の事故等で亡くなってしまったら、
紗月は美雪の両親に引き取られることになり、そこであることないこと吹き込まれて、
真実を知ることすらできなくなってしまっていたでしょう。
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この本を読んでも内容がわからず、

このサイトでよくわかりました。

もう一度、読んで見る気になり、

2回目は内容がわかり、スッキリしました

ありがとうございます!

No title

この本を読んでも内容がわからず、このサイトでよくわかりました。
もう一度、読んで見る気になり、2回目は内容がわかり、スッキリしました

ありがとうございます!

Re: No title

> この本を読んでも内容がわからず、このサイトでよくわかりました。
> もう一度、読んで見る気になり、2回目は内容がわかり、スッキリしました
>
> ありがとうございます!

この本のあらすじは本当に苦労して書いたので、そう言ってもらえると嬉しいです。

No title

はじめまして。古い記事にコメントも失礼かと思いますが、あえて書かせていただきます。

大変読んでいてわかりやすかったです。時系列がバラバラだとどうしてもいまいち理解できないところも出てきてしまいますので……。

助かりました。ありがとうございます。(3年越しのコメントですが笑)
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