時雨沢恵一「キノの旅」17巻7話「楽園の話」のネタバレ解説

シショーと呼ばれる老婆が、「楽園」について少女に昔話をしている、
という場面から物語は始まります。

楽園の入り口にある「最初の池」に、
師匠が仰向けに浮かんでいるのが数人の女性たちに発見されました。

発見した40歳代の女性は、ここは楽園だと言い、
自分はそこの頭(かしら)なのだと名乗りました。

師匠が発見された池を遡ると、そこは厳しい渓流があり、
師匠はそこから流されてきたのでした。

今いる場所は、断崖絶壁に挟まれた谷の底です。

上流へ行けば行くほど厳しくなる渓流、
そして左右の何百メートルあるのかも分からない絶壁が続いており、
上流の方から脱出するのは不可能でした。

では、下流の方はと言うと、大地が突然終わってしまっており、
その先には巨大な滝と海があるのでした。

つまり、この谷――楽園は、脱出不可能な天然の牢獄なのでした。

楽園にやってきた人たちは、谷の底に村を作っていました。
大人の男性は10人、大人の女性は39人、子どもたちは17人もいました。

川を流されてきて生き残るのは女性の方が多く、
女性たちは男性を「共有」していました。
そんなわけで、ここで生まれた子どもたちは父親が誰かも分からず、
みんなで協力して育てている、という感じでした。

頭はこの村で一番長く住んでいる人物で、
もう20年も楽園に閉じ込められていました。

そういった事情を聞いた師匠は、ある国で宝物庫から盗み出したという、
宝石をふんだんに使った豪華で美しいブローチを出しました。
これは皆の物として、誰かのお祝いの席にでもつけることにしました。

そして師匠はブローチをジャケットの内ポケットにしまうと、
突然「ああああああああ――っ!」と叫び、砂浜へ仰向けに倒れ、
手足をジタバタと動かしました。

突然の奇行ですが、この楽園へ流れ着いた人たちは最初、
もっと取り乱すのが普通なので、誰も止めませんでした。

奇行を止めると、師匠はいつも通りの師匠に戻っていました。

翌日、師匠は楽園の住人達にせがまれて、それまでの旅の様子を語りました。

そして一番新しい話として、とある国では先王が落馬で突然死んで以来、
酷い権力争いが続いており、王の兄弟やその子どもや従兄弟同士が、
王座を狙って殺し合っていたのです。

師匠と荷物持ちさんは混乱続く王宮に侵入し、宝物庫からお宝を奪い、
国民たちの目のつくところにばら撒きました。

師匠と荷物持ちさんはその後出国したのですが、
王家の追手がかかり、何日も逃走を続け、増水した川を小さな車で渡ろうとして、
川に流され、この楽園に辿り着いたのでした。

という話をした夕方のことです。
師匠は無言で川のすぐそばの砂丘の上で仰向けになり手足を動かしていました。

薄暗くなってきた頃、師匠のところへ20歳代後半くらいの女性、
ルイーゼがやってきました。
ブローチを見たがるルイーゼにブローチを見せ、今夜だけ預けようかと言うと、
ルイーゼは否定して逃げていきました。

翌朝。
今日も師匠が仰向けになって手足をバタバタと動かしていると、
頭(かしら)とルイーゼがやってきました。

半年前に楽園にやってきたのに、いまだに引っ込み思案なルイーゼのことを心配した頭は、
「アタシは、どれだけ時間をかけても、アンタに“嫌です”って言わせてみせるよ!」
と満面の笑みで言ったのですが、
あっ、ヤバい、この台詞は何か死亡フラグっぽいぞ、
と初めて読んだときは不安になりましたwww

お昼になり、みんなは昼寝をしていました。
師匠はそんなルイーゼのところへ行くと、腹に強烈なパンチを送り込み、
肩に背負うと、下流近くの砂浜へ行きました。

住人達に気付かれ、師匠とルイーゼを取り囲みますが、
師匠は自分は魔女であり、雷の魔法で皆の足元に穴を開けると宣言します。
そして師匠が手を動かすと、本当にその先の砂が噴水のように噴き出し、
穴が開きました。

住人達は驚きましたが、頭だけは冷静でした。

まず、頭は、師匠がわざとこの楽園にやってきたことを指摘します。
師匠はウェットスーツを着て、ヘルメットなどの防具を装着して、
足から長されて滝に飛び込んだのでした。

次に、頭は、先ほどの雷の魔法というのは、崖の上の仲間が、
師匠が指示した場所をパースエイダ―で撃っただけだと指摘しました。

実際その通りで、砂浜の上で仰向けになり手足をバタバタさせていたのは、
崖の上の方にいる荷物持ちさんへの合図だったのです。

そこまでして楽園へやってきた師匠の目的は「ルイーゼでした。

師匠はルイーゼに例のブローチを渡し、ルイーゼのことを陛下と呼び、
国に戻るようにと言いました。
もう誰も残っていないのです、と告げるとルイーゼは絶叫しました。

ブローチを手に入れた王国では、醜い殺し合いがずっと続き、王宮が大火災に見舞われ、
王家の血を引く者は全滅してしまったのでした。
ただ1人、争いを嫌って旅に出て、悲しみのあまり川へ入水自殺を図った王女、
ルイーゼを除いて。

師匠と荷物持ちさんは、国民たちに頼まれてルイーゼを連れ戻しに来たのでした。

師匠が荷物持ちさんに合図を送り、パラシュート付きのリュックサックが落下してきました。

師匠はリュックサックを拾い、パラグライダーを広げると、
空を飛んで脱出することにしました。

17巻口絵2の『遊んでいる国』がこの伏線だったわけです。

頭はルイーゼに、
『行きなさい! そして、もう戻ってくるんじゃないよ! この村のことは!
アタシ達のことは! 一切忘れるんだよ! いいね!』
と叫んだのですが、宙を飛んだルイーゼは、
『嫌ですっ!』
と叫びました。
あの台詞の伏線もちゃんと回収しています。さすがです。

そして冒頭のシショーという老婆と、その孫娘の会話に戻りますが、
ルイーゼはその後、国民と師匠に命じて楽園の住人全員を助け、自分の国に迎え入れ、
2度とあの村に人が流れ着かないように頑丈な橋を作ったのでした。

そして老婆――元頭は、なくした名前の代わりにシショーの名前をもらったのでした。


というあらすじなのですが、これまで短い話が連続していたこともあり、
とても満足感のある話でした。

あと、手足をジタバタさせたり、魔女を名乗ったりする師匠が可愛いですね。

個人的には、「ルイーゼの国は、もう血縁主義の王族にこだわらず、
民主主義でリーダーを選べばいいのになあ、とか思っちゃいましたけど、
まあ、それはその国に住んでいる人たちの自由ですからね……。
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