西尾維新「終物語 上 第一話 おうぎフォーミュラ」のネタバレ解説

終物語 (上) (講談社BOX)


忍野扇の初登場は傾物語なのですが、
阿良々木くんが忍野扇と初めて出会ったときのエピソードを描いているのは、
この「おうぎフォーミュラ」です。
フォーミュラというのは、公式、定式、形式といった意味です。

(追記:終物語は当初の予定を変更して上中下巻となり、
終物語 上 1話おうぎフォーミュラ 2話そだちリドル 3話そだちロスト
終物語 中 4話しのぶメイル
終物語 下 5話まよいヘル 6話ひたぎランデブー 7話おうぎダーク
の7話構成となりました。)

10月下旬。
神原が阿良々木くんに、忍野メメの姪を自称する、転校生の忍野扇を紹介します。

で、阿良々木くんは放課後扇と待ち合わせをするのですが、
そのとき扇は、この学校には存在するはずのない部屋があると言い出します。

扇は学校の図面を描いたのですが、視聴覚室の隣に、
普通なら存在しないはずのスペースがあるのだそうです。

ミステリーならそこに隠し部屋があるというのが定番なので、
扇は阿良々木くんと一緒にその場所へ行きます。

すると、隠し部屋どころか堂々と謎の教室がありました。

その教室の中に入ったところ、阿良々木くんと扇は教室の中に閉じ込められてしまい、
脱出できなくなってしまいます。

扇は、机を窓ガラスにぶつけて割ろうとしたり、
黒板をボールペンで引っ掻いてその音でガラスを割ろうとしたり、
阿良々木くんのお腹を殴って胃液を吐かせて扉を溶かそうとしたりしますが、
無理そうでした。

疲れた阿良々木くんは机に座るのですが、その机はなんと、
1年生のときの阿良々木くんの机でした。
よくよく教室の中を調べると、他の生徒の机も1年生当時のものです。

日付は7月15日。

この日は、阿良々木くんにとって忘れられない日でした。
というのも、阿良々木くんが本格的に人間不信に、
正義不信に陥ってしまった日だったからです。

当時、期末試験の前に、クラスメートたちの一部が勉強会を開いたのですが、
勉強会に参加した生徒は参加しなかった生徒に比べて格段に数学の点数が良かったのです。
誰かが勉強会のときにテストの問題を横流ししたのではないか、
つまりカンニングしたのではないかという疑惑が浮上しました。

そして問題の7月15日の放課後。
老倉育(おいくら・そだち)という数学で99点を取った女子が、
クラスのメンバー全員を集め、犯人探しを始めます。

犯人が見つかるまでは誰も帰ることはできない、と老倉は宣言します。

しかしこのとき結局犯人を絞りきれなかったため、
いま阿良々木くんと扇は教室から出られないのだろう、
そのときの犯人を推理して当てることができれば教室から出られるだろう、と扇は言います。

勉強会に参加しなかったけど数学で100点を取ってしまった阿良々木くんが司会を務め、
犯人探しを始めたのですが、それはもうひどいものでした。

ちなみにこのとき、クラスのメンバー全員の名前が出てくるのですが、
阿良々木くんや戦場ヶ原さんも含めて、それはもう珍名奇名のオンパレードです。
まともに名前を読めるキャラなんて殆どいません。
しかも、ニックネームがついているキャラが多いときています。

西尾維新さんは普段から珍名奇名のキャラを数多く登場させていますが、
それが深遠霜乃、問島水仙、蟻暮琵琶、雉切帆河、糖根軸、周井通馬、速町整子、
目辺実栗、品庭綾伝、足根径離……などなど難読の名前のキャラが40人近く登場するのです。

しかも、1人1人にちゃんと細かいプロフィールがあるのです。
阿良々木くん、ぼっちだったのにクラスメートのプロフィールを詳しく覚えすぎだろ、
というツッコミはさておき……。

もうね。

読んでて投げ出したくなります。
名前が頭に入ってこないんですよ。


バトル・ロワイアル並のページ数があればクラスメート全員の名前も憶えられるかもしれませんが、
この枚数では無理です。

それでも頑張って読み進めて、いい加減うんざりしたところで、ようやく解決篇があります。

ちなみに、別冊少年マガジンに先行掲載されたバージョンには扇からの読者への挑戦状がありました。

読者への挑戦状ですよ、読者への挑戦状。
いいですよねえ。しまうましたもミスオタなので、読者への挑戦状は大好きです。

でも、容疑者候補が40人近くもいると、犯人を当てる気をなくします。

容疑者一覧表の中に犯人がいるのだと知らされていても、読み返して推理する気力がなくなります。

でも、犯人に迫る手がかりはちゃんと問題編に書いてあるので、
自力で推理したい人は頑張って推理してみてください。

そしていよいよ真犯人は誰かという点なのですが、
扇は、「犯人は鉄条径だと言います。

鉄条径というのはこのあらすじの中で未登場の名前ですが、それはわざとですw

鉄条径はクラスメートではなく、担任教師でした。
ただし、そのことは叙述トリックで読者には伏せられていました。
というか阿良々木くんが意図的に隠していたのですが、
扇はそのことをクラスの人数が不自然であることから見抜きました。

鉄条径は数学のテスト問題を作成した教師なのですが、
彼女は勉強会の中に出てきた内容に合わせてテストの問題を作ったのです。
逆転の発想ですね。

ちなみに1年生のときの犯人探しでは、老倉の提案で多数決で犯人を決めることになりました。

老倉としては阿良々木くんを犯人に仕立て上げたかったのでしょうが、
犯人探しにうんざりしていたクラスメートたちは、
そもそも犯人探しを始めた老倉にうんざりしており、
老倉が犯人だと思う人、と言われたときに一斉に手を挙げました。

その中には、鉄条径も混じっていました。

老倉はその多数決の結果にショックを受け、不登校になってしまいます。

そしてその日以来、阿良々木くんは人間不信、正義不信になってしまったのでした。

扇の指摘した犯人は正解していたようで、阿良々木くんたちは外に出ることができました。
というか、扇が阿良々木くんを解放しました。

その翌日。
阿良々木くんが学校へ行くと、産休をとって休んだ鉄条径の代わりのように、
ずっと不登校だった老倉が登校してきた――ということを羽川さんが教えてくれたのでした。


そしてこの話は2話の「そだちリドル」に続きます。

というあらすじなのですが、多数決をとって多数派になったからと言って正しいとは限らないし、
少数派になったからと言って間違っているとは限らない、というテーマの話だったと思います。
ありきたりな感想ですが。

人種差別は、その人種がそのコミュニティの中で少数派だから起こることです。

障害者差別は、障害者が健常者よりも少数派だから起こることです。
もし99パーセントの人の耳が聞こえなくなったら、
残り1パーセントの聞こえる人の方が差別されることになるでしょう。

他にも例えば、同性結婚を合法化するかどうか、多数決で決めようとしている国が結構ありますけど、
そんなもん同性愛者より異性愛者の方が数が多いんだから多数決で決めるのはおかしいと思います。

でも、「人数」ではなく「国の数」で見てみるとどうなるでしょうか?

主要先進国(G8)であるフランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、
ロシアの8ヶ国の中で、同性結婚を全く認めていない国は、
日本とロシアの、たった2ヶ国だけなんですよね。
G8に限らず、他の先進国を含めてみても、
同性結婚を全く認めていない国よりも認めている国の方がずっと多いのです。

そういう意味では、先進国の中で日本はいつの間にか同性結婚に関して少数派になっていました。

このように、多数派と少数派なんてものは、
ちょっと物の見方を変えるだけで簡単に入れ替わってしまうのです。

他にも、日本語ネイティブとか、死刑制度とか、平和憲法とか、島国とか、人種とか、
先進国の中で少数派になる要素はたくさんありますが。

「多数派だから正しい」
「多数派だから間違っている」
「少数派だから正しい」
「少数派だから間違っている」

これは本来、全部正しくない等式なのに、
いつの間にか多数派=正義みたいな価値観にずっぷりと浸かってしまっていますよね。

そしていつの間にか、その価値観を疑わなくなってしまっているのです……。

地球は平らだ、太陽が地球の周りを回っていると考えていた人達が多数派だった時代がありましたが、
きっと現在の多くの「常識」も数百年後には「非常識」に変わってしまっているんでしょうね。

そんなことを考えてしまった、しまうましたでした。

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鉄条は普通に本文に出てた

Re: タイトルなし

> 鉄条は普通に本文に出てた
というのは、
>鉄条径というのはこのあらすじの中で未登場の名前ですが、それはわざとですw
という文に対する返信でしょうか?

もちろん小説本文には出てきていますが、
問題編のあらすじの中で未登場という意味のつもりでした。

問題編のあらすじには出てきていない名前なんだから、
あらすじだけ読んだ人は絶対に当てられないだろう、というちょっとした悪戯心ですw

ちなみに、クラスの人数を「40人近い」とぼかしているのも、ヒントを減らすためです。
せっかく読者への挑戦を挟んでくれたのだから、という作者に対する配慮です。

あとがき

上巻と下巻との間に中巻が挟まらないように云々
中巻確定デスカー
拡げた風呂敷が畳めなくなったとかw
いやいや続刊大歓迎デスケドー
了わり方が子荻ちゃんっぽくて素敵デシタ

Re: あとがき

> 上巻と下巻との間に中巻が挟まらないように云々
> 中巻確定デスカー

やっぱりあれは中巻フラグですよねwww
もしくは、終物語(下)と続終物語の間に別の物語が挟まったり、
続々終物語が発売されたりとか……w
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