三上延「ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと2つの顔~」のネタバレ解説

ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)


いつもは連作短編形式のビブリア古書堂シリーズですが、今回は江戸川乱歩にまつわる長編です。
そのため、いつもより記事のタイトルが短いです(注目するところそこか?)

また、この本には乱歩の短編小説「二銭銅貨」に関する重大なネタバレがあります。
未読の方は注意した方がいいと思います。

まずはプロローグです。

文香が預かっていた、本来栞子さんが智恵子から渡されていた「クラクラ日記」が、
栞子さんのところへ戻ってきました。
2011年3月11日に東日本大震災が発生し、
栞子さんは初めて「わたしたちは無事です」と智恵子にメールしましたが、
文香のときと同じく返信はありませんでした。

しかし、4月になったばかりのときに、智恵子から電話がかかってきました。
最初、店番していた大輔はそれを栞子さんの声と勘違いするのですが、
智恵子だと気付いて、少しでも情報を得ようとします。

智恵子が最近まで海外にいたことは分かりましたが、
駅のホームに智恵子がいるのに気付いたところで電車がやってきて、
智恵子は電話を切り電車に乗ってどこかへ行ってしまいました。

非常に印象に残る初登場シーンですが、
智恵子は店の中に栞子さんと文香がいないのを確認した後、
わざともうすぐ電車が来るというタイミングで電話をかけたんだろうなあと考えると、
ちょっと微笑ましいです。
優雅に泳いでいるように見える白鳥も水面の下では――というやつですね。

第一章『孤島の鬼』
智恵子が訪れた翌日、栞子さんと大輔は、地震に備えて老朽化した母屋を改築するため、
本を運び出していたのですが……本の山の奥の方に埋もれていた本を発見する度に
栞子さんが手を止めるせいで、作業はあまり捗っていませんでした。

そこへ、来城(きしろ)慶子の代理人と名乗る人物が現れ、依頼に来ました。
来城慶子はかつて智恵子が目録で通信販売をしていた頃の客の、
鹿山明の関係者ということでした。

翌日、栞子さんと大輔は来城慶子の家を訪れます。立派な家です。

前日にビブリア古書堂を訪れた人物は、慶子の妹の田辺邦代だと名乗りました。
江戸川乱歩のコレクションを見せてもらった後、いよいよ慶子と対面します。

すると、慶子は半年ほど前に喉頭癌で声帯をとってしまっており、
おまけに車椅子に乗っているため、色々と生活に支障があることが分かりました。
ビブリア古書堂へ行くのに邦代を代役を立てたのも、そのためだったのです。
慶子が上手く喋ることができないときは、
筆談か邦代の通訳を立てて意志の疎通をすることになりました。

慶子は鹿山明という江戸川乱歩マニアの男の愛人であり、
コレクションも、この立派な家も鹿山明から相続したものだったのだそうです。

慶子はカバーがかかったままの四六判の本を見せて、
乱歩の初版本だというヒントだけで手を触れずに書名を答えろと言いました。
栞子さんに問題解決能力があるかどうかテストしてきたのです。
栞子さんは10秒ほどで、昭和5年に刊行された『孤島の鬼』だと言い当てました。

凄いです。言うまでもないですが、しまうましたは4択問題にしてもらって、
なおかつヒフティ・ヒフティとかテレフォンがないと当てられませんw

そして、いよいよ本題に入ります。
鹿山明は生前、慶子の家の金庫の中に何か貴重なものを入れたのですが、
鍵は本妻の家にある上に、暗証番号(カタカナで何文字かは不明)も分からず、
金庫を開けることができないのだそうです。

その金庫を開けて欲しい、というのが慶子からの依頼でした。
成功したら、鹿山明の貴重なコレクションをビブリア古書堂に売る、というのが報酬です。
100万円以上もする「江川蘭子」のコレクションをそうと知らずに大輔が手に取って
落としそうになるというハプニングがあった後、大輔は栞子さんを自宅に送りとどけます。


第二章『少年探偵団』

第一章の終わりと同じ日、鹿山明についての資料が篠川家に届いたということで、
大輔は再び篠川家へ行きます。

するとそこには文香と、ホームレスせどり屋の志田がいて、
今回の以来の件や、智恵子は栞子さんには「クラクラ日記」を残したのに、
文香には何も残さなかったのは不公平だ、という話をしていました。

大輔は栞子さんと2人きりになると、鹿山明についての資料を見せてもらいました。
かなりの分量があり、
どうやら栞子さんが依頼を引き受ける以前から用意してあったもののようでした。

話の流れで大輔は栞子さんにデートしてほしいと言い、篠川家を出ました。

翌日、栞子さんと大輔は鹿山明の本宅へ行き、明の息子の義彦と会いました。
義彦が持っているはずの金庫の鍵をもらいにくるのが第一の目的だったのですが、
義彦は本当に鍵の在り処を知らない様子でした。

当たり前のことですが、義彦は父親の愛人の慶子に良い感情を抱いておらず、
厳格だった父親が愛人を囲っていたこと、そして江戸川乱歩マニアだなんて信じられない、
という話をしました。

義彦の母親、つまり鹿山明の本妻は、
自分の夫や子どもが江戸川乱歩のような低俗な小説を持つのは許せない、
というタイプの人でした。

後で登場する義彦の妹の直美なんかは、自分のお小遣いで本を買うことも許してもらえず、
図書館の貸し出しカードすら母親に取り上げられていました。

漫画やアニメやゲームどころか、自分の子どもが小説を読むことすら禁止するような母親って、
正直気持ち悪いです。
これはもはや虐待なんじゃないかと思います。

義彦が、唯一の例外として所有していた小説は、江戸川乱歩の「少年探偵団」でした。
鹿山明が買い与えてくれたものです。

子どもの頃の義彦はそれを宝物にしていて、妹の直美にすら貸さないほどでした。

栞子さんたちは義彦の「少年探偵団」のを見せてもらった後、
鹿山明の書斎を見せてもらい、書斎で少年探偵団のBGバッジを発見します。
書斎の中に隠し戸棚のようなものがあり、
そこに鹿山明の「少年探偵団」のコレクションがあるのではないか、と栞子さんは推理します。

義彦の妹の直美からも話を聞くことになったのですが、
直美は現在、何と3巻に登場したヒトリ書房で働いているのだそうです。

義彦、直美、そしてヒトリ書房の井上太一郎の3人は、
子どもの頃に少年探偵団ごっこをしていた幼馴染だったのでした。

栞子さんと大輔はヒトリ書房へ行き、そこで店番をしていた直美に話を聞きました。
直美も義彦と同じく、不倫していた父親に裏切られたと感じていました。

いや、感じていました、っていうか、実際に鹿山明は妻子を裏切っていたんですけどね。
そのため、直美は非協力的でした。

ところが翌日、意外な協力者が現れました。
3巻ではあれほど敵対的だった、ヒトリ書房の井上です。
井上は、ヒトリ書房が経営危機に陥ったときに鹿山明に救ってもらった過去があり、
鹿山明が不倫していることも知っていました。
しかし、そのことを、密かに思いを寄せていた直美にも黙っており、罪悪感があったのでした。

智恵子と敵対したのもこのときで、智恵子は井上と直美の関係の邪魔をすると仄めかし、
自分に鹿山明を紹介するようにと迫っていました。

井上は何とかして、直美を傷つけずに軟着陸したいと考えており、
栞子さんは井上の協力を得ることができました。

昔の強敵が、ピンチの時に救いに現れるというドラゴンボール的展開ですね。

昔、井上が送った手紙が見つかるかもしれないと言って直美を鹿山邸におびき寄せ、
先回りして隠れていた栞子さんたちは鹿山明のコレクションの隠し場所を知りました。

直美は生前の鹿山明がソファの中にコレクションを隠していたのを偶然知っていたのです。
直美は栞子さんに指摘されて初めて、
鹿山明が直美にそのコレクションを遺していたことに気付きました。
送ろうとして送れなかった井上の手紙の存在も知り、
直美は予想していたよりは穏やかな様子で帰って行きました。

栞子さんはさらに書斎の中を調べ、扉の中の隠し棚に貴重な「怪人二十面相」「少年探偵団」
「妖怪博士」「大金塊」の講談社版があるのを発見しました。
例の金庫の鍵も発見し、来城慶子の家へ行くと、何とそこには智恵子がいました。


第三章「押絵と旅する男」
車に智恵子を乗せ、ビブリア古書堂へ向かう途中、1章の書名宛クイズの話題になります。

智恵子は栞子さんよりも早く、
そして栞子さんも気付かなかった評論集「鬼の言葉」の可能性もあると指摘しました。

智恵子は完全に、これだけ凄い名探偵、篠川栞子を上回っています。

ビブリア古書堂へ行くと、店番をしていた文香が臨時休業にしていました。
文香は、母親が失踪する際、自分には本をくれなかったことで僻んでいましたが、
実は文香は小さいときに母親がくれた安野光雅の「旅の絵本」を捨ててしまい、
それを栞子さんが保管していたことが明らかになりました。

「クラクラ日記」もそうでしたけど、失踪した母親が娘に送る本のチョイスとは思えないです。

文香は智恵子と対面し、「お母さんがいなくたって、(栞子さんと)二人で生きていけるんだよ」
と言いました。
母親が失踪したとき、栞子さんと違ってまだ小さかった文香の年月を考えると、胸が痛みます。

その後、智恵子は、鹿山明が昔小説家を目指していたことや、
金庫の中に入っているのは、乱歩が自分の手で捨てたはずの「押絵と旅する男」の第一稿の
可能性があると話しました。

金庫の暗証文字について鹿山明が「わたし以外は誰も知らない名前にするつもりだ」と
言っていたというヒントもくれました。

そして、智恵子は無言でビブリア古書堂を出ていきました。

すると、栞子さんは切羽詰まった様子で大輔を呼び、今すぐ鹿山邸へ行きたいと言いました。
智恵子が暗証文字を調べに鹿山邸に向かっている可能性があるのだそうです。

案の定、先回りされていました。
智恵子は先に鹿山邸に電話をかけ、栞子さんと声がそっくりなのを利用して栞子さんに成りすまし、
堂々と侵入していました。

もう駄目だ、やられた……と思いきや、
鹿山義彦の息子の鹿山渉が暗証文字のヒントになりそうなものを持ち出していたことが分かりました。

軽薄な感じの鹿山渉は栞子さんをナンパしようとしますが、
栞子さんが古本オタク文学少女であることを知ると、手の平を返すようにヒントをくれました。

それは二銭銅貨のレプリカでした。
乱歩の短編小説「二銭銅貨」のレプリカではなく、本物の銅貨のレプリカでした。

その中に「二銭銅貨」に登場する「点字の」暗号を元にした、暗号文が書かれた紙が入っていました。

栞子さんは暗号解読にとりかかりますが、「二銭銅貨」に登場する暗号解読法を用いても、
解くことができませんでした。

しかし、大輔が口にした、二銭銅貨のレプリカに「大正十二年」という、
実際にはあり得ない年号が刻まれていたことから、
栞子さんは「江戸川乱歩がデビュー作の『二銭銅貨』で暗号文を間違えていた、
というエピソードを思い出し、間違っている方の暗号解読法を用いて暗号を解くことができました。

翌日、来城慶子の家を訪れた栞子さんはそのことを説明し、
『ひしょううえじま』という暗証文字を入力し、金庫を開けました。

中には『押絵と旅する女』の原稿が入っていました。

固定電話に電話がかかってきて、邦代がそれに出ている間に、
栞子さんたちは約束の売ってもらえる乱歩のコレクションを見せてもらっていました。

すると、栞子さんは邦代が実は本に詳しいことに気付き、
慶子のところへ戻ってこの家のブレーカーはどこかと尋ねました。

しかし、慶子は答えることができず……この車椅子に乗っている慶子は本物の来城慶子ではないと
確信した栞子さんは、いつの間にか姿を消していた邦代を追って駅へ急ぎました。

そこで何とか、邦代に追いつくことができ、
栞子さんは邦代が本物の来城慶子であることを指摘しました。
慶子は本妻の息子たちの同情を引いて協力してもらいやすくするために、
車椅子に乗っていて声を出すこともできない妹の邦代と入れ替わっていたのでした。

……正直に言うと、しまうましたはこの姉妹が登場した時点でその可能性を疑っていました。
これでもミステリーオタクの端くれですし、今回は江戸川乱歩がテーマですからね。
ただ、栞子さんのように論理的に入れ替わりの証拠を突きつけることはできず、ただの勘でしたが。

栞子さんたちは喫茶店へ移動し、『押絵と旅する女』の原稿は偽物であることを指摘しました。

鹿山明が『江島日生(えじまひしょう)』というペンネームで書いたものだったのです。
これこそが、慶子が色んなものを犠牲にしてでも手に入れたかったものでした。

栞子さんはその話を信じて慶子を見送りましたが、後からやってきた智恵子は、
鹿山明が、本物の『押絵と旅する男』の原稿の断片と、
自分が書いた原稿を組み合わせて『押絵と旅する女』という小説を書いた可能性がある、
と指摘しました。

そして智恵子は栞子さんに、『押絵』を見せてもらいに慶子を追おう、と誘いました。

栞子さんは誘惑に負けそうになりますが、大輔が名前を呼ぶと、
『次の休日、大輔さんとデートですから』と言って智恵子の誘いを断りました。

おおおっ、という感じです。
ちょっと感動してしまいました。

そして次の休日デートへ行き、いい雰囲気になったところで大輔は、
『俺と付き合ってください』
『あなたのこと、ずっと好きでした』
と告白しました。
栞子さんの返事は次巻以降に持ち越しです。

そしてプロローグになります。
大輔は、3巻の終わりに登場した、智恵子が井上に送ったクリスマス・カードを志田に見せます。

そして、文香はヒトリ書房のことを知らないはずなので、
井上が栞子さんのことを嫌っていることも知りようがないのに、
クリスマス・カードにそのことが書かれている。
さらに、栞子さんが慶子から依頼を受けていることをしっていた関係者は非常に限られている。

……つまり、第三者がずっと智恵子に情報提供しており、
その人物こそが志田だろうと大輔は言いました。

語り部の大輔が単なるワトソン役に終わらず、
独自に推理して真相に辿り着くのがこのシリーズの面白いところですね。

志田は智恵子の情報源だったことを認め、3年間に台湾で智恵子と出会っており、
そのとき必要だったお金と、
例の『落穂拾ひ・聖アンデルセン』の本を智恵子に渡されたのだと告白しました。

ちなみに、文香が智恵子に送っていたメールに返信がなかったのは、
そのアドレスをチェックするのを忘れていたからなのだそうです。
10年前に出て行って、それから何年もメールが来なかったのですから、
娘と連絡をとるためだけに作ったアドレスをチェックするのを忘れるのも無理ないと思います。

しまうましただって、パスワードやIDを忘れてしまって
ログインできないフリーメールアドレスがいくつもあります……。

最後に志田は、智恵子には10年以上ずっと探し続けている本があると言いました。

おそらく、その本が見つかったとき、智恵子はビブリア古書堂に帰ってきて、
このシリーズも完結するのではないか、としまうましたは予想してみます。
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