鈴木光司「エッジ」のネタバレ解説

エッジ 上 (角川ホラー文庫)

この本が出版されたのは2008年、雑誌に連載されていたのは2004年なのですが、
物語の大部分の時系列は2012年の出来事を描いています。

まず冒頭で、アメリカのカリフォルニア州で2011年に起きた
謎の失踪事件に関するエピソードがあります。

また、2012年12月13日には、天文台にいたスタッフが、
空の星の光の一部が突然消えてしまったことに気付きました。

さらに2012年12月19日には、
円周率πの値が、それまでに分かっていたものと突然変わってしまった、
ということが明らかになります。

……ここまでの情報で既に勘のいい人なら気付いてしまったかもしれませんが、
2012年人類滅亡説が題材になっている話です
(ただし、作中では明言されていませんが)。
2012年人類滅亡説というのは、
マヤ文明の暦が2012年12月21日から23日ごろに区切りを迎えることから、
人類が滅亡するのではないかと一部の人達が騒いでいた話のことです。

2013年になった今となっては笑い話にもなりませんがw

正直に言うと、しまうましたは1999年のノストラダムスの大予言については
少し信じてましたけど、あれが何事もなく過ぎてしまったので、
2012年人類滅亡説については結構冷ややかな目で見ていました。

さて、いよいよ本編が始まります。
はっきり言って、この本の前半は時系列が入り乱れていて読みにくく、
あらすじを書くのにも苦労します……。
もう少し時系列通りに書くわけにはいかなかったんでしょうか?
例えば藤村精二の初登場シーンとか、
藤村家に初めて入るシーンとかは回想にする必要性は全くないと思うのですが……。

それはともかく。
主人公の栗山冴子は2012年の時点で35歳です。

大金持ちだった冴子の父親、栗山眞一郎は1994年に、
冴子が17歳だったときに謎の失踪を遂げていました。
その後、冴子は失踪事件専門の探偵、北沢に頼んで眞一郎を探してもらいますが、
結局見つかりませんでした。
冴子はやがて結婚しますが、離婚してしまいます。

それから冴子は眞一郎の莫大な財産を持て余しつつ、
フリーライターをしながら一人暮らしをしていました。

冴子は知り合いの編集者に頼まれ、高遠という場所で2012年1月に、
藤村という一家4人(両親と息子と娘)が突然姿を消していた失踪事件について調べました。

2012年11月5日に、冴子は自分の胸に乳がんのようなしこりがあることに気付きました。
が、それをスルーして仕事をします。
例の藤村家の失踪事件をテレビ局が取り上げることになり、冴子が呼ばれました。
冴子はそこで、もう1人の主人公と言うべき存在の、
チーフディレクターの羽柴と知り合いました。

本物の霊能力者の鳥居繁子をメインに据えて、番組の制作が始まります。

藤村家の鍵を所有しているのは、藤村家の主人である藤村孝太の兄、藤村精二です。
精二は無職であり、借金もあるようでした。

この精二が冴子のことを気に入っており、冴子にしか家の鍵を貸さないことから、
冴子もテレビ局のスタッフに同行し、藤村家を再訪します。

そこで鳥居繁子に霊視してもらうために、藤村家の様々なものを集めます。
その際、冴子は父親の栗山眞一郎の手帳を発見し、それをポケットに入れてしまいました。

その後、鳥居繁子が予言した直後に地震が発生し、冴子は戸棚の下敷きになり、
気を失ってしまいました。

目が醒めると病院にいて、付き添っていた羽柴が帰った後、冴子は再び眠ろうとしました。

が、夜中になぜか精二が病室にやってきて、ピンポイントで冴子の胸のしこりに触れていきました。

それから時間が経過し、2012年12月の中旬になります。
冴子は、今度は1年以上前に3人の男女が失踪した事件について追い始めました。

やがて冴子や北沢や羽柴は、全国の失踪事件についても調べ、その失踪場所が偏っていることに気付きます。
主に日本列島の中央で連続して失踪していたのです。
さらに、世界中の失踪事件についても調べていきます。

その帰りに、冴子と羽柴が夕食をとろうとレストランへ行くと、
そのレストランのビルから誰かが飛び降りました。
飛び降りたのは、何と藤村精二でした。

その後、冴子は羽柴を自宅に招き、セッ〇スしようとするのですが、
羽柴が冴子の胸のしこりに触れると、羽柴はその気をなくしてしまいました。

翌日、藤村家で発見して持ち帰った眞一郎の手帳の表紙の裏にフロッピーディスクがあることに気付き、
冴子たちはそれをプリントアウトしようとします。

そのとき、テレビが次のようなニュースを告げました。
熱海の近くのハーブ園で、100人近い人達が同時に失踪したというニュースでした。

ここで上巻は終わり、下巻になります。

エッジ 下 (角川ホラー文庫)


2012年12月22日。
冴子と羽柴、鳥居繁子、そして例の番組の製作スタッフたちはハーブ園に駆けつけ、
園の従業員や観光客91人が姿を消した事件について調べます。

ハーブ園の中では無数の蟻があり得ない動きをしていたり、
オーロラが出たりと、異常なことが起こっていました。

彼らは海辺のホテルにチェックインしますが、その夜鳥居繁子が自殺するところを冴子は幻視し、
駆けつけると鳥居繁子は老衰で亡くなっていました。

翌日、12月23日。
羽柴は冴子に、実は自分には妻と子供がいるのだと告白しました。
冴子にとっては寝耳に水だったのですが、冴子はそんなことは知っていたと嘘をつきました。

さらに翌日、12月24日。
冴子は自宅に戻り、途中だったプリントアウトの続きをやり、
主にマチュピチュの遺跡について書かれた、眞一郎の手記を読みます。

その手記には不自然な箇所がいくつかあり、父親には同伴者がいたのだろう、
その同伴者は藤村家の妻ではないかと冴子は推理します。

12月25日。
冴子は物理学者の磯貝直樹という人物と一緒に再びハーブ園へ向かいます。
この磯貝というキャラは、登場が遅い割には重要人物で、主にこの小説の探偵役を務めます。

冴子と磯貝がハーブ園へ行くと、そこには巨大なクレーターが出現していました。
そこの取材が終わると、父親の失踪の手がかりを掴むために、冴子は藤村家に向かいました。

一方、ホテルに残っていた羽柴は、磯貝から、
πの値が変化したこととか、宇宙の星が次々と消滅していることを知らされ、
その意味を解説してもらいます。

さらにそこへ、アメリカで数百キロにも及ぶ大地の亀裂――エッジが出現したというニュースが入ってきます。

磯貝は、「もうすぐ相転移というものが起こり、地球は消滅するのだと説明します。
磯貝は最後の時間を同性の恋人のクリスと過ごすために、羽柴たちを部屋から追い出しました。

しかし、それからしばらくして、磯貝は羽柴を呼び出しました。
磯貝は、世界中で失踪事件が頻発していたのは、ワームホールの影響だと言いました。
ワームホールというのは異世界への入り口であり、
失踪した人達はワームホールがあまりにも魅力的だったため、
自らの意志でワームホールに入り失踪したのだそうです。

そして、そのワームホールが出現する場所はある程度決まっており、
磯貝はこの近くだとハーブ園にワームホールができると推理します。
そこで、羽柴たちは近親者などをハーブ園に呼び寄せました。

しかし、口止めをしていなかったせいで無関係な人達も集まってしまいました。
羽柴や磯貝も含めると、その数、173人です。そのうち女性は150人もいました。

集まったメンバーの中には、失踪専門の探偵の北沢の息子である北沢俊哉もいたのですが、
人数を聞いた俊哉は青ざめました。

マチュピチュに遺されていた遺骨は173体あり、そのうち150人が女性だったのだそうです。
しかも、その遺骨は四肢が切断されていました。

つまり、羽柴たちはワームホールを通って過去のマチュピチュへ行き、
そこで四肢を切断されて殺されてしまうのです。
それを知った羽柴たちはワームホールを通るべきか悩みました。


一方その頃、藤村家を訪れていた冴子は、家の中に自分以外の誰かがいることに気付き緊張していました。
リビングへ行くと、そこで藤村精二が待っていました。

冴子は藤村精二にヒントをもらいつつ、父親の眞一郎や藤村一家が失踪した理由を推理します。

眞一郎には第三の乳首がありました。
18年前、藤村家の妻、藤村晴子と不倫していた眞一郎は、
晴子から、晴子の夫の藤村孝太にも第三の乳首があることを教えられ、興味を持ち、藤村家を訪れます。

……ここまではいいんですが、ここから先の展開が物凄い超展開です。
冴子は堕天使のような藤村孝太の姿と、その声を幻視します。

いえ、ごめんなさい。
はっきりと幻視したとは書かれていないので、これはしまうましたの推測なのですが、
冴子には予知夢とか千里眼っぽい感じの超能力があり、
これまでにも冴子は色んなものを幻視していたので、
おそらくこの藤村孝太の姿と台詞も幻視なんじゃないかと思います。

で、その幻視の内容なのですが。
実は冴子の父親と藤村孝太は、表裏一体の天使と悪魔のようなものでした。
冴子の父親の来訪によって力を取り戻した藤村孝太は、冴子の死を予知し、それを冴子の父親に告げます。

藤村孝太は冴子の父親の力を奪います。そうしなければ冴子は死ぬと脅して。

それから、冴子の父親は、藤村孝太に姿を変え、藤村孝太として17年過ごしてきました。

藤村一家が失踪したのは、自分の意志でした。
藤村孝太になった栗山眞一郎は、いずれ宇宙が消滅することをしっていたので、
藤村晴子やその子どもたちをワームホールに逃がしました。
そして自分は、予め生きているように見せかけていた藤村精二になりすましていたのでした。

つまり、藤村精二の正体は栗山眞一郎だったのです。

何を言っているのか分からないと思いますが、本当にこんな感じの話なのです。
ただし、正直に言うと、この部分、しまうましたには何が書いてあるのかよく分かりませんでした。
何回読んでもよく分からないのです。
意味不明です。
ですから、もしかするとこの部分のあらすじは間違っているかもしれません。ご了承ください。

何が書いてあるのかよく分からないせいで、自分の頭が急に物凄く悪くなったような感覚を味わいました。
それまでは割とリアリティのある描写が続いていたのに、急に悪魔とか天使とか出てきても困ります。
最終的にこういう話になるんなら、もっと悪魔とか天使とかに関する伝承とかをストーリーに絡ませて、
それがどういったものなのか伏線を張っておくべきだったんじゃないかと思います。

……気を取り直して解説を続けます。

一瞬だけ眞一郎になった精二と別れを告げた冴子は、羽柴たちとは別のワームホール出現場所へ行きました。
電話で羽柴たちが過去のマチュピチュへ行くか迷っていることを教えられた冴子は、
行って過酷な運命と闘うべきだと勇気づけました。

その後、冴子もワームホールを通って別世界へ移動しました。

そしてエピローグになり、栗山眞一郎の視点で、栗山冴子がこの世に生まれたときの話が語られます。
冴子の母親は、飛び降り自殺をしようとしていた藤村精二の下敷きになり、命を落としてしまいました。
冴子は死んだ母親の体内から、帝王切開で生まれました。

さて。別世界へ行った冴子がどうなったのかですが……、
おそらく、もう一度栗山冴子として生まれ変わったのではないかと思います。

そう考える根拠は、ワームホールを通って別世界へ行った冴子が
『自分は今、球体の中にいるとはっきり認識できた』
と書いてあるからです。

その後、球体の薄皮に鋭利な刃物が差し込まれ、外へ出ようとした冴子は身体が動かないことに気付きます。
『膝を両手で抱え、冴子は玉虫のように丸くなっていた。
歓喜の声を上げようとして、口が開かない。
顔一面が、べとべととした粘液で覆われていた。』
という描写もあります。

これはつまり、胎児の状態に戻った冴子が帝王切開で誕生したことを意味しているのでしょう。

うーん。最後まで、分かったような分からないような話でしたね。
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難解(>_<)

遅ればせながら読了しました。

人間消失から入る下りはなかなかの食付きをみせますが、天体に話が及ぶと少し失速しますね。それでも謎が解けないうちはまだまだ求心力は有ります。
文庫本でいうところの上巻まではいい展開だと思います。
筆者は「らせん」でもそうでしたが、物理や化学の知識があるようで、それをひけらかすような、何やら難しい自分の哲学とやらをグダグダ書き連ねるようなクセがありますね。
簡単に書きゃいいのに遠回りに回りくどいことを書いている。読む方は苦痛です。
下巻の父の日記(新作原稿)?の下りはいらなかったのではないかと思われます。
小説の中の小説を読まされるというのは…(^_^;)
ラストの展開も「どうした、鈴木!?」状態。

天使と悪魔はともかく、
元々存在していた孝太はどこ行っちゃったんでしょうね。
35年前の飛び降り自殺したオリジナルの精二はどこ行っちゃったんでしょうね(復唱)

冴子は産まれ直したということだと彼女は永久ループでしょうか?

「結果を知っていれば抗える」みたいなこと言ってましたけど…

作者途中でやになっちゃったんじゃないかと(^_^;)

もう少しきれいな着地できたのではないかと悔やまれます。
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