東野圭吾「プラチナデータ」のネタバレ解説

プラチナデータ (幻冬舎文庫)


この「プラチナデータ」は、細かいジャンル分けをすると、
近未来SFミステリーということになるでしょうか。

警視庁捜査一課の浅間玲司警部補は、ある殺人事件の捜査に乗り出しました。
上司の木場に言われて、有明にある『警察庁東京倉庫』を訪れます。
実はそこは、警視庁特殊解析研究所なのでした。

所長の志賀孝志に、殺害現場に遺されていた毛髪を渡した後、
主任解析員の神楽龍平を紹介してもらいます。
この神楽と浅間が、この本の主人公です。

それから丸2日後の会議で、性別や細かい外見、身体的特徴、血液型、身長、
そして一般人の女性、山下郁恵の三親等以内に犯人はいる――と、
DNAを解析した結果を教えられます。
山下郁恵の甥が怪しいということで捕まえると、細かい身体的特徴が完全に一致していました。

浅間の調べでは、どうやら山下郁恵の診察を受けた病院が、
本人に無断でDNAのサンプルを研究所に提出していたようでした。

やがて、DNA法案が可決され、本人の同意を得て採取したDNA情報を、
国の監視の下、捜査機関が利用できるようになりました。

しかし、DNAの提出は国民の反発もあり、あまり進まず、
DNAを解析しても犯人が誰々の何親等以内にいる、
ということまでは分からないことが何度かありました。

その中の1つ、連続婦女暴行殺人事件の容疑者、通称NF13を浅間は追います。

一方、神楽は、DNA捜査システムを作成した、天才の蓼科早樹(たでしな・さき)と、
その兄の蓼科耕作の兄妹に会った後、脳科学者の水上洋次郎に会いに行きました。
水上に渡された「反転剤」という煙草のようなものを吸うと、
神楽の第二の人格であるリュウが現れました。

神楽の父親は有名な陶芸家だったのですが、精巧な義手で自分の作品そっくりに作られた陶芸品を、
自分の作品と見分けることができず、そのショックで神楽が子どもの頃に自殺していました。
その父親の自殺が引き金となり、神楽は二重人格となってしまったのです。

2週間に1回、神楽は反転剤を服用することでリュウという人格を表に出します。
その間、リュウは研究所内のアトリエで、誰かの手の絵を描いていました。
この日は、リュウはスズランという15、6歳くらいに見える少女の絵を描きました。

その日、蓼科兄妹が殺害され、その遺体を見た神楽は気絶してしまいました。

蓼科早樹の顔の右側には大きな痣があり、幼い頃からいじめられ、
そのことが原因で彼女は自閉症に似た症状が現れました。
しかし、蓼科早樹には数学的な分野で天才的な頭脳を持っていることが明らかになり、
やがてDNA捜査システムを殆ど単独で作り上げたのでした。

蓼科兄妹を殺害した凶器である銃は、
NF13が連続婦女暴行殺人事件で使用した銃と同一であることが明らかになりました。
蓼科早樹の衣服に付着していた髪の毛を、研究所が解析することになりました。

神楽は志賀から、白鳥里沙というアメリカから派遣されてきた女性を紹介されました。
3人は食事をしている最中に、システムから神楽の携帯電話に解析結果が送られてきます。
その画面に表示されていた男の顔は、神楽に酷似していました。

神楽自身には全く身に覚えがないのに、いきなり容疑者になってしまったわけです。
この辺の流れは、「マイノリティ・リポート」というSF映画の序盤に少し似ている気がします。

研究所に戻って調べ直しても、やはり蓼科早樹の衣服に付着していた毛髪のDNAは神楽のものでした。
混乱する神楽のところへ、白鳥里沙がやってきます。
神楽は解析結果はエラーだったと誤魔化し、自宅に戻った後、神楽はリュウを呼び出すことにしました。

しかし、反転剤を服用してもリュウは現れませんでした。
代わりに、スズランと名乗る少女が玄関のチャイムを鳴らし、部屋に入ってきました。
スズランはリュウの恋人なのだと、彼女は主張しました。

そこへ志賀から電話がかかってきて、少し目を離した隙に、スズランは姿を消しました。

一方、浅間は蓼科兄妹が殺された当時、研究所内の防犯カメラには偽の映像が流されていたことを知ります。
蓼科兄妹のいた7階だけではなく、
リュウのアトリエがある5階の防犯カメラにも偽の映像が流されていたことから、神楽が疑われます。

神楽に容疑がかけられていることを白鳥里沙に教えられ、神楽は彼女と書店で待ち合わせしました。
白鳥里沙は、神楽の逃亡を助ける代わりに、蓼科早樹が最後に作ったプログラム、
『モーグル』を見つけて欲しいと神楽に取引を持ちかけます。

その取引を飲んだ神楽は、里沙に用意してもらったマンションへ移動しますが、
またしてもスズランが現れました。
どうやってこのマンションを見つけたのかと尋ねると、テレパシーで見つけたとスズランは答えます。
しかし、リュウを疑う神楽の言葉に傷ついたスズランは帰って行きました。

先月、蓼科兄妹が会議に出席すると嘘をついて3日間研究所を抜け出していた、
と里沙から教えられた神楽は、蓼科兄妹は、生まれ故郷の「別荘」に行ったのではないかと考え、
そこへ向かうことにしました。

一方、蓼科兄妹殺害事件の捜査をしていた浅間は、突然上層部から圧力をかけられ、
この事件から手を引けと言われました。
しかし、納得できない浅間は独自に捜査を続けます。

過去にNF13に殺された被害者の中に、『ハイデン』を使った形跡があるものが見つかりました。
『ハイデン』というのは、微弱な電気で脳を刺激して、快楽を得るための装置、
『電トリ』ををパワーアップさせたものです。
浅間は『ハイデン』を扱っているお店を訪れ、そこで、『ハイデン』が出回り始めたのは3週間前なのに、
NF13に殺された被害者が『ハイデン』を使ったのは1ヶ月前だと明らかになりました。

つまり、NF13が『ハイデン』を作り出した可能性が高いことになります。

その頃、「別荘」に向かうために列車に乗ろうとした神楽は、そこでまたしてもスズランと出会いました。
スズランも一緒に行くと言い張ったため、神楽は乗車券を2枚購入し、
列車の中でもお弁当を2つ買いました。

駅からバスに乗り、ようやく暮礼路市(ぼれろし)にある別荘に辿り着いた神楽は、
蓼科早樹がアメリカの数学者に送った英文のメールを発見しました。
そのメールによると、『モーグル』はDNA捜査システムの補完プログラムであり、
『モーグル』を使えば『プラチナデータ』を取り出すことができるのだそうです。
『プラチナデータ』とは何なのか――というのが、大きな謎となっています。

神楽が東京を脱出してから5日後、ついに神楽が暮礼路市へ行ったことが捜査陣にバレてしまいます。
浅間と木場は、神楽を追って暮礼路市へ向かいました。
はるばる暮礼路市へやってきた浅間と木場でしたが、警察庁の北峰によって、
神楽の捜索対策室から追い出されてしまいます。

別荘の中で、蓼科兄妹のコンピューターをいじっていた神楽でしたが、
何も情報を取り出すことはできていませんでした。
5日ぶりに里沙に連絡をとってみると、
神楽が暮礼路市にいることがバレたからすぐに逃げろと言われます。
また、NF13が現場に遺していった体液のサンプルはどこにあるかと尋ねられ、
神楽はその場所とパスワードを教えました。

夜になり、しばらくいなくなっていたスズランが戻ってきた後、
神楽はスズランに案内されて教会の廃墟へ移動しました。
そこで神楽は、リュウの代わりにスズランと結婚式の真似事をしますが、
警官がやってきたため、バイクに乗ってその場から逃げ出します。

しかし、山道を走行中にバイクを操作しきれなくなり、急カーブの道から転落してしまいます。
神楽は気絶してしまい、目が覚めると、自給自足の生活をしている男たちの村で、
住人であるチクシに介抱されていました。
スズランは行方不明でした。
その村で神楽は、陶芸をしている男の手を見て、リュウが描いていた絵の中の手は、
自殺した父親の手だったことに気付きました。

神楽は再び夜になるのを待ち、チクシの運転するトラックの荷台の上のドラム缶の中に身を隠し、
検問を突破しました。

暮礼路市から東京に戻った浅間は、列車の中で神楽にお弁当を売った販売員の話を聞きます。
それによると、「神楽の隣の席には誰も座っていなかったのに、神楽はそちらを見ながら喋り、
お弁当を2つ買ったのだそうです。
はい。つまり、スズランは神楽が見ている幻覚だったのです。

さらにその後、白鳥里沙が殺されたという知らせが入り、浅間は現場へ向かいます。
里沙の遺体には『ハイデン』を使用した痕跡がありました。
浅間は木場に頼み、里沙の携帯電話を1日だけ持ち帰らせてもらいます。

しばらくして、里沙の電話に神楽からの着信がありました。
苦労して神楽を信用させた後、浅間は神楽の指示で研究所内のリュウのアトリエへ行きます。
そして、スズランをモデルにした絵のキャンバスの内側から、浅間は『モーグル』を発見しました。

さらに、神楽の指示で蓼科早樹の部屋へ行き、スパコンの端末に『モーグル』を入れ、操作します。
すると、神楽は何かに気付きました。

しかし、富山から浅間の携帯電話に連絡が入り、科警研が来たと教えられます。
浅間が神楽と待ち合わせをしてそこから出ると、浅間の前に水上が現れました。
神楽が水上に連絡し、浅間を匿うように頼んだのだそうです。

浅間は水上に、神楽がスズランの幻覚を見ていることを話すと、
水上も神楽に会いたいと言ったので、連れて行くことにしました。

そして待ち合わせ場所に着くと、水上は浅間に拳銃を突きつけました。
NF13の正体は、水上だったのです。
水上は心の謎を解くために『ハイデン』を使い、殺人を繰り返していました。
水上は浅間に注射をし、浅間を昏倒させました。

神楽は水上に、『プラチナデータ』に関する推理を話しました。
DNA捜査システムは、特権階級の人間だけはシステムの網に引っ掛からないようになっており、
そのデータのことを『プラチナデータ』、
『プラチナデータ』を捜すためのプログラムが『モーグル』だったのです。

神楽は水上に『ハイデン』をつけられ、倒れます。
神楽と入れ替わるようにして浅間が目覚めましたが、まだ体は麻痺しています。
しかし、リュウが目覚め、水上を射殺したおかげで、浅間は助かりました。

数日後、神楽は志賀から、スズランの正体は蓼科早樹だったことを教えられます。
リュウは、最後に1枚だけウェディングドレス姿のスズランの絵を描き、消失しました。

浅間は『ハイデン』が関係した別の事件を追い続け、
神楽は暮礼路市の自給自足の村へ引っ越し、陶芸をするようになったのでした。


というあらすじなのですが、とても面白かったです。
しかし、一見ハッピーエンドっぽく見えて、いまいちスッキリしない終わり方ですね……。
結局、これからも『プラチナデータ』は特権階級の人間を守るために働き続け、
『ハイデン』は人々を狂わせ続けるのかと思うと、暗い気持ちになります。
その辺が妙にシビアというか、リアルです。

神楽は一応、陶芸家だった父親を尊敬し直すことができましたが、
リュウもスズランもいなくなってしまいました。
彼はこれからの長い人生を、どうやって過ごすのでしょうか。
読者的には神楽の将来が心配ですが、本人は満足そうなのが救いと言えば救いです。
                 スポンサードリンク

さとり世代探偵のゆるやかな日常 (新潮文庫nex)

新世界より(上) (講談社文庫)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール
Author:しまうました
見やすい記事一覧はこちらです。
スポンサードリンク

結物語 (講談社BOX)

さとり世代探偵のゆるやかな日常 (新潮文庫nex)

雪煙チェイス (実業之日本社文庫)

このブログについて
見やすい記事一覧はこちらです。
このブログの記事は管理人「しまうました」の独自の解釈によるものなので、制作者の意図したものや一般に考えられているものとは異なる場合があります。
個人の趣味でやっているブログなので、解説してほしい本のリクエストは受け付けていません。
重要なネタバレ箇所は白字にしてあるので、反転してお読みください。
現在、荒らしをした人物のコメントを拒否しており、巻き添え規制される場合があります。詳細はこちらに書いてあります。
承認したコメントに対しても、管理人は基本的には返信しません。また、後日予告なく削除する場合があります。ご了承ください。
今月の人気ページ
人気ページの集計期間は30日間です。2017年4月10日リセット。
スポンサードリンク
カテゴリ
最新記事
検索フォーム
月別アーカイブ
最新コメント
FC2カウンター
スポンサードリンク

ソードアート・オンライン プログレッシブ (4) (電撃文庫)

業物語 (講談社BOX)

キノの旅XX the Beautiful World (電撃文庫)

悪の教典 上 (文春文庫)

                amazon人気本ランキング
RSSリンクの表示
リンク
最新トラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
記事一覧
見やすい記事一覧はこちらです。