時雨沢恵一「キノの旅」15巻6話「犯人のいる国」のネタバレ解説

時雨沢恵一さんの「キノの旅XⅤ the Beautiful World」第6話、
「犯人のいる国」のネタバレ解説です。
同じく15巻に収録されている『ケダモノの国』のネタバレもあります。

ある国を訪れたキノは、夕食で「唐揚げがおいしい」と褒めたところ、
お店の人に「カラアゲって何だい?」と訊かれ説明すると、
「初めて知った! 他の国にもあるんだ!」と驚かれました。
この何気ない会話が伏線になっており、
この国が他国とあまり交流のない閉鎖的な国であることを示しています。

そしてキノとエルメスは、
夕食の帰りに殺人鬼が人を殺しているところを目撃してしまいます。
すぐに警察を呼んだキノでしたが、
目撃したはずの犯人の男には鉄壁のアリバイがありました。

入国2日目に、またしてもキノは例の殺人鬼と遭遇し、
『森の人』を奪われてしまいました。
再び警察を呼んで、あの男が犯人だと訴えたのですが、
やはりその男には鉄壁のアリバイがありました。

そして入国3日目。
エルメスは「『あの男って、実は双子なんじゃないの?』と確認します。
これは読者の大部分が思っていて、
しかしまさかそんな簡単なトリックのわけがないと
無意識に否定していた可能性でもありました。
ところが刑事は、『フタゴとは、なんだ? 何か特殊な……、
魔法のようなトリックが使える人間のことか?』と訊き返しました。

そうなのです。この国には有史以来双子が生まれず、
その可能性に誰も思い至らなかったのです。
あの男たちが双子であると確信したキノは、
『旅人にはこの国の法律が適用されない』という話を刑事から聞き、
あの男の家を襲撃して『森の人』を奪い返すことにしました。

ちなみに、241ページでキノが
『師匠と同じ作戦が、結局一番か……。使わせてもらいます』
と言っているのは、『ケダモノの国』で師匠たちが
ヒグマを追い詰めるときに煙で燻し出したことを言っているのだと思います。
この『犯人のいる国』の冒頭で、
キノがエルメスに『ケダモノの国』の話をしていますし、
まず間違いないでしょう。

そして地下室にいた男をゴム弾で気絶させ、
『森の人』を奪い返したキノは、さっさとその国を後にしました。
おそらく、キノは気付いていたのでしょう。
あの殺人鬼の男が、実は3つ子かそれ以上かもしれないということに――。

さて、この話はミステリーで禁じ手とされている、
『実は犯人が双子か三つ子かそれ以上』というトリックを使っています。
そのトリックが明かされたとき、
なーんだ、今さら双子トリックかよ……と思った人もいるかもしれません。
しかし、この話は実は結構凄い話なのではないかと思います。

つまり、『読者や主人公たちはみんな犯人が双子だという
可能性を考慮しているのに、警察はその可能性を考えていない』
という話なのですから。
これはファンタジー世界ならではの大胆なトリックだったと思います。
ミステリーを読み慣れている人であればあるほど
無意識に排除してしまう可能性に登場人物たちが思い至らないというのは、
どこか背筋がうすら寒くなるものがあります。
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