米澤穂信「リカーシブル」のネタバレ解説

リカーシブル


主人公の越野ハルカは、「弟」のサトル、「ママ」のヨシエと一緒に、
ヨシエの生まれ故郷の坂牧市に引っ越してきました。
ハルカは中学1年生、サトルは小学3年生です。

ハルカが引っ越してきたのが中学に進学する4月だったため、
転校生扱いされずに済むかと思いきや、
クラスメートの在原リンカに転校生であることを見破られてしまいます。

ハルカはリンカと一緒に帰りますが、途中でサトルと待ち合わせした場所で、
リンカにサトルを紹介せざるを得なくなります。

ハルカはリンカに町を紹介してもらうことになりました。
その際、リンカはハルカが携帯電話を持っていないことに驚きます。

でも、後でこの小説内の時代設定が2003年であることが分かるので、
ハルカが携帯電話を持っていることを前提に話をしていたリンカの態度には、
ちょっと疑問を覚えます。
現在なら携帯電話を持っていない中学生は珍しいですけど、
2003年だったら、田舎に住んでいて携帯電話を持っている中学1年生は、
まだ少なかったはずなんですよね。地域にもよりますが、
当時はクラスの半分もケータイを持っていなかったのではないでしょうか。

それはさておき、ハルカは、
お蕎麦屋さんをやっているリンカの家がある商店街を案内してもらいます。
その際、ハルカはマルさんという中年の男が万引きするのを目撃しました。
しかし、リンカは、マルさんはお店の人だから万引きじゃないと説明しました。

家に帰ると、前にマルさんが万引きするのを見たことがある、
とサトルが言いました。

翌日、サトルは通学途中にある報橋(むくいばし)を渡るのが怖いから、
学校に行きたくないと言い出します。
ハルカはママに頼まれ、サトルと報橋を渡りますが、
確かに車が通るたびに揺れていて危険そうな橋でした。

その日の放課後、ハルカとサトルは商店街に行き、
ママから貰った福引券で福引をすることになりました。
福引所ではリンカが必死に場を盛り上げようとしていました。
もうすぐハルカたちの順番が回ってくる頃、サトルは、
自分達以外の誰かが大当たりを引く、と予言し、
本当にハルカ達の少し前の女の人が一等の温泉旅行を当てました。

そして、その女の人のバッグをスクーターに乗った男が置き引きしました。
ハルカとリンカは追いかけますが、見失ってしまいます。
そこへ、商店街の会長とサトルがやってきました。
サトルは、置き引き犯はパチンコ屋に入っていったと主張します。
既にハルカ達はパチンコ屋の駐輪場を調べていましたが、
置き引き犯がナンバープレートを偽装していたため気付かなかったのでした。
さらにサトルは、犯人がナイフを持っていることまで予言しました。

翌日、ハルカは歴史教師の三浦に、職員室に呼び出されます。
その際、サトルの予言について考えていたハルカは、
未来が見える子どもについて尋ねてしまいます

すると三浦は、ハルカは「タナマヒメ」に関心があるのだと思い、
「常井民話考」という本を貸してくれました。
帰ってその本を読んだハルカは、タマナヒメというのが、
この辺の信仰の対象である、未来が見える子どもであることを知りました。

深夜1時に目を覚ましたハルカは、ヨシエが、
ハルカの父親に宛てた手紙を書いているのを知りました。
そして、深夜の散歩に出たハルカは、過去を回想します。

ヨシエはハルカの実の母親ではなく、父親の再婚相手でした。
サトルもヨシエの連れ子であり、ハルカと血の繋がりはありません。
ハルカの父親は会社のお金を横領してしまい、自分だけ逃亡してしまいました。
そして、元の町にいられなくなったハルカたちは、坂巻市に引っ越してきたのです。
そんなわけで、ハルカの立場は非常に微妙でした。

深夜の散歩から戻ったハルカは、ヨシエに作ってもらったホット・ミルクを飲みながら、
改めて、サトルは引っ越す前にこの町に来たことはないんだよね、と確認しますが、
やはりヨシエは「そうよ」と言いました。

翌日、ハルカは学校の行事として、報橋付近の川の清掃ボランティアに参加します。

そのボランティアの最中に、ハルカはリンカから「水野報告」の話を聞きます。
ハルカ達が生まれる前に、坂牧市に高速道路が通るという計画が持ち上がりました。
過疎化が進んでいた坂牧市の人達は大喜びです。
しかし、坂牧市を通らない別のルートに決まりそうになり、
5年前に坂牧市の人達は高速道路誘致計画の権威である、水野教授を招きました。

水野教授は坂牧市に高速道路を建設するべきだという「水野報告」を書きますが、
報橋から落ちて溺れ死んでしまいます。
坂牧市の人達に渡すはずだった「水野報告」は行方不明になってしまい、
その「水野報告」に対し、100万円という賞金がかけられている、
という噂があるのだそうです。

ただ……ハルカも指摘していましたが、高速道路で東京や名古屋と結ばれたところで、
過疎化に歯止めがかかるどころか、むしろ人口の流出に拍車がかかりそうだな、
と、しまうましたは思います。

その日の放課後、ハルカはリンカに、
三浦先生から借りた「常井民話考」を持っているのを見つかってしまいます。
その本の中から落ちてきた『誘致を考え直す会』というチラシを、
リンカはさり気なく自分のポケットに入れました。

本を三浦先生に返しに行ったハルカは、
タマナヒメの伝承について三浦先生に詳しく訊きます。

まず、タマナヒメは代々、条件を満たした常井村(現在の坂牧市)の女の子に憑依する、
神様の一種のような存在です。
タマナヒメは、常井村の発展のために、我が身を犠牲にしますが、
役目を終えると自殺してしまいます。
また、タマナヒメのお願いを聞いたお役人や県職員、
工場の誘致をしていた家電メーカーの社員は、報橋のある佐井川に落ちて死んでしまいます。

常井村(坂牧市)では、何百年も前からそんなことを繰り返してきた、
という言い伝えがあるのでした。

しかしリンカは、三浦先生の説明は間違っており、タマナヒメは劇の名前のようなものだと言います。
翌日、ハルカは現在のタマナヒメを見せてもらうことになりました。

その夜、ハルカは、サトルが押入れの襖の中にテストの答案を隠しているのを発見しました。
以前住んでいた家でもサトルは似たようなことをしていたのだそうです。
また、サトルは、過去に報橋から落ちたのは、学校の先生で、太ったおじいさんだった、
という、知っているはずのないことを言います。

翌日の土曜日、ハルカは図書館へ行き、5年前の新聞を調べました。
そして、5年前に報橋から佐井川に落ちて死んだ水野教授が、
丸々と太っていたことを知ります。

その後、ハルカはリンカに案内され、町の高台にある庚申堂へ行きます。
そこで、現在のタマナヒメだという宮地ユウコを紹介されました。
リンカやユウコの話を聞く限りでは、確かに現在のタマナヒメは劇の名前みたいなものと言うか、
タマナヒメごっこ、という他愛もないものに思えました。

その帰りに、ハルカはサトルを発見します。
サトルは「森元」という表札のかかった家に昔住んでいたことがあると言い出し、
その家の特徴をいくつか口にしました。

翌日。4月13日、日曜日。ハルカはリンカに誘われ、
坂牧文化会館の駐車場で行なわれているフリーマーケットに行きました。

その際、三浦先生も持っていた例の「誘致を考え直す会」のチラシが落ちているのを発見します。
散らしによると、会合は、今日の午後5時からここで行なわれるのだそうです。

ハルカは何気なくそのチラシを貼り直してあげますが、突然現れたマルさんから、
紛らわしいことをするなと注意されました。

ハルカは、このフリーマーケットは、
「誘致を考え直す会」の会合を邪魔するために開催したのではないか、と思いました。

その夜、散歩に出たハルカは、報橋の上で事故に遭った車の野次馬をしました。
翌日、その車に乗っていたのが三浦先生であったことが学校で噂になっていましたが、
誰もお見舞いに行こうとは言いませんでした。

その日の放課後、いつも一緒に帰っていたリンカが先に帰ってしまいました。
また、報橋の上でリンカとサトルが話しているのを目撃します。

そこでハルカは三浦先生から、自損事故ではなく、
ナンバープレートを隠したワゴン車にぶつけられたのだという話を聞きました。
さらに、『常井民話考』は何者かに破棄されているせいでどんどん数が少なくなっていることや、
『常井民話考』に関わった人達が次々と不審な死を遂げている、ということも教えられます。

その夜、ハルカは、以前住んでいたアパートには押入れがなかったことを思い出します。
つまり、前の家でも押し入れの襖の裏に大事なものを隠した、
というサトルの記憶に矛盾が生じていることになります。
また、報橋の上でのリンカとの会話について、
ヨシエがサトルを問い詰めているのを目撃してしまいます。

翌日。
ヨシエのところへ、ハルカの父親から離婚届が送られてきました。
ヨシエは離婚届を出すつもりだと言い、ハルカが中学校を卒業するまでは家に置いてあげるけど、
それ以上は知らないと言います。

二階の自分の部屋に戻ったハルカは、昔、父親が帰ってくることを祈って引き続けたおみくじを、
泣きながら破り捨てました。

そこへ、サトルがやってきて、ハルカを止めます。
2人はヨシエから貰った千円で、外へ夕食を食べに行きます。

ハルカは夜風に吹かれながら、この町に来てから起こった、
不可解な出来事に説明をつけられることに気付きます。

翌日、学校へ行くと、クラスの様子が一変していました。
どうやら、ハルカが三浦先生のお見舞いに行ったことを知られ、
村八分というか仲間外れにされているみたいでした。
頼みの綱のリンカもその日は休んでおり、ハルカは憂鬱な一日を過ごしました。

さらに、ヨシエが帰ってきたのにサトルがまだ帰っていない、ということに気付き、
ハルカは青ざめました。
時刻は5時半です。
この時間になっても、田舎の小学3年生が帰ってこないというのは、ただごとではありません。
過去にタマナヒメと関わった人が何人も不審死を遂げていることや、
最近、三浦が事故に遭ったことを考えると、サトルに命の危険が迫っている可能性もあります。

しかし、「ヨシエは、『弟』の不在に気付かなかったハルカを責めることなく、優しく接します。
ハルカはその不自然な優しさの理由に気付いていました。

ハルカはたった1人で、サトルを取り戻すことにしました。
まず、ある場所へ電話し、午後11時に庚申堂で『交換』しようと持ちかけます。

『森元』という表札のかかった家を訪れたハルカは、その家の住人が留守であることを知り、
サトルから聞いていたこの家の特徴を頼りに不法侵入します。
そこへ、住人が帰ってきますが、何とか切り抜けました。
ハルカはその家の仏間の押し入れの襖の裏から、MOディスクを発見しました。

ハルカはそれを持って、庚申堂へ行きます。
庚申堂の前にいたリンカと会ったハルカは、リンカこそが現在のタマナヒメであり、
ユウコはその影武者に過ぎないという推理をつきつけます。

5年前、水野教授は、5年前のタマナヒメに水野報告を渡した。
その時点で水野教授は用済みとなり、
報酬を支払うのが惜しくなったタマナヒメ信仰の信者に消された。
一方、5年前のタマナヒメも死に、庚申堂は火に包まれた。

その火事を目撃していたのが、当時『森元』の家でヨシエと一緒に暮らしていた、
サトルだったのです。
サトルはタマナヒメから水野報告を託され、自宅の押し入れに隠していたのです。
しかしサトルは、大人に聞かれても水野報告を隠した場所を教えようとせず、
身の危険を感じたヨシエは坂牧市を出て、ハルカの父親と再婚しました。

しかし、ハルカの父親が横領で会社を追われ、困窮したヨシエは、
実の息子であるサトルを、信者たちに『売る』ことにしたのでした。
サトルが帰ってこないのにハルカに優しかったのも、
最初からサトルが帰ってこないことを知っていたからでした。

サトルがこの町に来てから、過去や未来を予知しているように見えたのも、
町の人達がそう仕組み、サトルが過去の記憶を取り戻しやすいようにしていたからでした。

そして、この日、リンカは5年前の火事すら再現しようとしますが、
ハルカにMOディスク――水野報告を渡され、思い留まります。

ハルカは眠り続けているサトルをおんぶして、家に帰りました。


というあらすじなのですが、「これは地味に後味が悪い話ですよね。
結局、ハルカもサトルも、実の親から見捨てられてしまったわけですから。
そして、町中が自分たちの敵であることを自覚しながら、
これから3年間はこの町で暮らさなければならないハルカの気持ちを考えると、
息苦しさを覚えます。

ただ、ハルカが、大嫌いな『弟』を助けるために活躍したのには、素直に感動しました。

ところで、水野報告に関してですが、
しまうましたは今さらこんなものを発掘したところで無意味じゃないかなあ、と思います。
5年前には誘致の権威だった水野教授ですが、今は別の人が権威になっているでしょうし、
水野報告など無視される可能性が高いような気がします。

ただ、そんなものにすがりつきたくなるほど、
坂牧市の現状は厳しいということなのでしょうね……。
今、こんな村や町が日本全国にあるのかと思うと、暗い気分になります。
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