鈴木光司「エス」のネタバレ解説

エス


この『エス』は、映画『貞子3D』の原作ということになっていますが、
内容は映画と全然違います。

映画は見ている途中で寝てしまったので、
どこがどう違うのか細かく言うことはできませんが、
まず冒頭の設定からして『エス』と『貞子3D』は全く違います。

どれくらい違うかと言うと、映画では呪いの動画を
見た人間は死ぬという設定になっていますが、
原作にはそのような設定はありません。


最後まで観ていないしまうましたが言うのも何ですが、
やっぱり映画は脚本と演出に問題があったなあ、と思います。

まあ、既に『ループ』以降のリングシリーズはホラーではないので、
ホラーではない小説を元ネタにホラー映画を作れ、
と無茶なことを言われた映画スタッフにも同情しますが。

ちなみに、『エス』はホラーではないけど面白い小説です。

また、『エス』は最低でも原作版『リング』『らせん』を読んでいないと、
内容をまともに理解することはできません。
と言うか、『リング』『らせん』のネタバレが大量にあるので、
そちらを先に読まないのはもったいないです。

……前置きはこのくらいにして、いつものようにあらすじを書きます。

(おそらく)2016年の5月。
少女4人を誘拐して殺害し、
遺体の一部を切除したということになっている死刑囚の柏田誠二は、
死刑執行当日に「S」という遺言を遺しました。
柏田は首にロープをかけられ奈落に落とされる際に、
監視カメラに対して「焦点を合わせ」てから死にました。

それから1ヶ月後。
24歳の女子高教諭の丸山茜は、
産婦人科の病院を訪れ、妊娠を告げられました。

その妊娠をきっかけに、茜は恋人の安藤孝則と結婚することになりました。
要するに、出来ちゃった結婚ですね。

映像プロダクション、スタジオ・オズの社員である孝則は、
社長の米田に呼び出され、USBメモリを渡されます。
米田の説明によると、1ヶ月前にある動画サイトにアップロードされた、
自殺の生中継の映像がUSBメモリに保存されているのだそうです。

その映像を夏の特番で使いたいと言われ、
孝則はそのUSBメモリを自宅に持ち帰ります。
自宅で映像を確認すると、
確かに男が首吊り自殺しているように見える映像が保存されていました。

スタジオ・オズに戻った孝則は、タロット占いをしていた米田から、
その映像を持ち込んだのが酒田清美という元女優であることを教えられます。

一方、職場である女子高に行った茜は何らかの理由で失神しますが、
その直前、自分が昔ある男に殺されかけたことがあるのを思い出しました。

2時間50分後、病院で目を覚ました茜は、21年前に死んだ母親の幻覚を見ます。

入院した茜のお見舞いに行った孝則は、
その帰りに乗った京浜急行の下りの電車の窓から見える青物横丁駅のアパートに
注意を寄せ付けられました。

自宅に戻った孝則は、例の映像に一瞬映っていた特徴から、
映像が撮影された部屋はこのアパートの303号室なのではないかと推理しました。

その2日後。
孝則はそのアパートへ行き、
303号室の住人の名前が新村裕之であることを確認していました。

孝則のマンションに引っ越すことにした茜は、
見知らぬ男に尾行されていることに気付きます。
さらに、自分の携帯電話のGPS機能によって自分の居場所が検索されていました。

その頃、自宅にいた孝則はパソコンに保存していた例の映像が
変化していることに気付きますが、そのとき茜から電話がかかってきました。
茜を迎えに行った孝則は、GPS追跡アプリは自分がインストールしたものだと
嘘をついて茜を安心させ、お風呂に入れさせました。

茜の回想があります。
3歳のときに未婚の母を亡くした茜は児童養護施設「ふれ愛」に入りました。
18歳になり施設を出るときのパーティで、茜は孝則と出会いました。
「ふれ愛」は孝則の父、安藤満男が作った施設だったのです。

回想が終わり、お風呂を出た茜は、例の映像を見てしまいます
(この辺の流れは『リング』のオマージュになっていますね)。
そして茜は、映像の中で首を吊った男に、
12歳のときに殺されかけたことを思い出し倒れました。

駆けつけて茜を抱き締めた孝則は、パソコンに保存された映像が、
さらに変化していることに気付きました。
そして茜の口から、映像の男が柏田であると教えられます。

柏田は、2003年6月から1年3ヶ月の間に、
4人の少女を誘拐して殺害した罪で死刑判決を受けていました。
柏田は5人目の少女を連れ回して殺す寸前で逮捕されましたが、
その5人目の被害者になりかけたのが茜だったのです。

柏田についてネットで検索した孝則は、
5月19日午前10時4分という、死刑が執行された日時に驚きました。
その時間に、孝則と茜は、茜が妊娠するきっかけとなった行為をしていたのです。

1ヶ月前、孝則と茜は、誤作動するカーナビに導かれ、貞子が死んだ箱根の井戸や、
柏田が殺したという少女の遺体の発見現場などを訪れていました。

数日後、婚姻届と戸籍謄本を受け取りに行った孝則は、
戸籍上、自分が3歳から5歳まで、死んでいたことになっているのに気付きました。

さらに数日後、孝則は、柏田の事件について本を出していたノンフィクション作家、
木原に会いに行くために高田馬場を訪れました。

連続少女誘拐殺人事件の犯人は本当に柏田なのか確信が揺らいでいるように見える、
と孝則が本の感想を述べると、木原は満足げに頷き、認めました。

動機が不明なことや、少女たちが被写体のようなポーズをしているのに、
柏田の家からは被害者を撮影した動画や写真が見つからなかったのがその理由です。

ちなみに、この会話の最中に、
茜が1992年6月生まれであることが判明します。
この小説は茜が24歳の6月の出来事を描いているので、
西暦は2016年か2015年であると分かります。

孝則はパソコンに保存されていた例の映像を木原に見せますが、
柏田は映像の中から姿を消していました。

その後、父の勤める病院へ行った安藤は、父の安藤満男に、
戸籍上自分が3歳から5歳まで死んでいたことに対する説明を求めます。
しかし、満男は到底信じられないような作り話をするだけでした。

孝則は幼い頃海に行ったときのことを思い出します。
『らせん』や『ループ』のラストシーンの出来事です。

茜は青物横丁駅で、以前自分を尾行していた男を発見し、
携帯電話の電源を切って、逆に男を尾行しました。
そして男は例のアパートの新村裕之の部屋に入っていったようでした。

再び木原の部屋を訪れた孝則は、例の映像に、
『リング』の主人公、浅川和行の兄が出した本の初版本が
17冊も映っていることを木原から教えられました。

書店を回ってその本、『リング』を入手した孝則は、その本を読みます。

さらにもう一度木原のところを訪れた孝則は、浅川とその妻子について尋ねますが、
3人とも死んでいました。

そして、『リング』の重要人物、高山竜司を解剖した執刀医が、
自分の父親であることを孝則は知りました。

孝則は満男から、リングウィルスについて説明を受けますが、
その説明には一部嘘がありました。

その後、孝則は、酒田清美の映画『スタジオ104』の記者会見に行きました。
そこで米田から、例のUSBメモリの映像は、
動画サイトにアップロードされたものとは別物であり、
酒田清美のメールアドレスに直接送られてきたものだと教えられました。

孝則はその記者会見でカマをかけ、
新村裕之は酒田清美が10代で産んだ子どもであると確信しました。

その後、孝則は木原から、安藤満男の元同僚の宮下教授が語った話を聞きます。

リング状のウィルスは心臓の冠動脈に肉腫を作ります。
しかし、話の切れたS状のウィルスにはある危険がありました。

ビデオテープの映像を見たときに排卵日にあたっていた女性は、
S状のウィルスの侵入を受けて妊娠し、
わずか1週間で山村貞子を産むことになったのです。

柏田が殺したという少女たち4人は、そうして生まれてきた山村貞子でした。

その後、さらに高山竜司や柏田について調べていた孝則は、
高山竜司と柏田が同一人物であることに気付きました。
そして高山竜司も死んだことになっている以上、何らかの方法で蘇ったのです。

孝則は、柏田が連続少女誘拐殺人事件の犯人でなかった場合、
誰が犯人なのかと考えて、新村裕之に辿り着きました。

孝則は同僚の水上に頼み、新村のパソコンにハッキングしてもらいました。
そして、『S』というキーワードで検索し、
殺された少女たちの遺体の画像を発見しました。
さらに、茜を被写体とした写真も大量にありました。

これで、新村が真犯人であることは確定しました。

その後、孝則はパソコンの画面の中に高山竜司の姿を発見しました。
現在、竜司は二次元の世界にいるのだそうです。

呪いのビデオテープを見た高野舞が産んだ、山村貞子の遺伝子を引き継いだ女、
丸山真砂子こそが茜の母親でした。

25年前、リングウィルスが蔓延しかけました。
放っておけば爆発的に山村貞子が増殖し人類は滅亡していたでしょうが、
復活した竜司がそれを食い止めたのだそうです。

しかし、回収した『リング』の初版本には取りこぼしがあり、
この世に4人の山村貞子が生まれてしまいました。
その4人の情報を、竜司が家庭教師を務めていた新村裕之に持ち逃げされ、
4人の少女は誘拐され殺されてしまったのでした。

裕之が5人目の茜に手を出そうとしたところで、竜司は茜を救ったのですが、
茜には竜司が犯人であると勘違いされてしまいました。

竜司からそんな説明を受けていたところに、茜が帰宅します。
孝則は、茜と竜司を引き合わせました。

竜司は、自分と真砂子が愛し合って生まれたのが茜であると告げました。

翌日の朝になり、昨日、品川駅で新村裕之が電車に轢かれて死んでいたことを、
孝則は知りました。
さらに、そのとき茜は品川駅で携帯電話の電源を切っていたことから、
茜が裕之に幻覚を見せてホームから落としたのではないか、
と孝則は疑惑を覚えました。

が、そのことを茜には話しませんでした。

そして、9月になり、登校した茜が、
女子生徒たちが『S』という画像について話しているのを聞くという、
どこか不穏な気配の漂うエピソードがあり、話は終わります。


……というあらすじなのですが、
この作品は『ループ』や『バースデイ』と話が繋がっていないように見えるんですよね。

その原因は、「本作に登場する柏田誠二の人格が、
『リング』の高山竜司なのか、それとも『ループ』の二見馨なのか、
いまいちはっきりしない点や、
柏田誠二の死に様が『バースデイ』と矛盾している点です。

この作品は『リング』『らせん』の続編ではあっても、
『ループ』『バースデイ』の続編ではないように見えます。
ですから、これはおそらく、
『ループ界』の中でのパラレルワールドなのではないでしょうか。

個人的には、『らせん』のラストで復活した高山竜司の人格が、
二見馨ではなくオリジナルの高山竜司である世界が、
この『エス』なのではないかと思います。

真砂子と二見馨が愛し合って生まれた子どもが茜というのは、
『ループ』の内容を考えるとあり得ませんからね。

ただ、個人的には、茜の父親は安藤満男の可能性もあると思うんですけどね。
その場合、孝則と茜は異母兄妹ということになるので、
高山竜司はそれを隠すために嘘をついたという可能性も……やっぱりないか


それと、結局、茜のGPSアプリは、茜が序盤で失神しているときに、
ストーカーしていた新村裕之がインストールしたのでしょうか?
序盤の無意味な失神はその伏線だったのでしょうが、
ちゃんと回収してほしかったです。

いや、それ以前に、ストーカーされてるのに気付いた時点で、
さっさとアンインストールするかケータイを機種変更しろよ、
と突っ込みたくなりますが。 見やすい記事一覧はこちらです。
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