道尾秀介「カラスの親指」のネタバレ解説

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)


46歳の武沢竹夫は、共和銀行品川支店の前で、
43歳の筑紫(ちくし)章介に話しかけ、自分は銀行検査官だと名乗りました。

武沢は、筑紫が窓口で受け取った現金が
偽札の可能性があるので調べさせて欲しいと頼みます。
そこへ、共和銀行品川支店の支店長補佐の石霞英吾という
ネームプレートをつけた男が現れます。

武沢のことを胡散臭く思っていた筑紫は、
石霞に事情を話し、納得して現金を渡しました。

――が、実は武沢竹夫と、石霞(偽名)はグルの詐欺師であり、
筑紫から現金を騙し取っていたのでした。
ちなみに、石霞と名乗っていたイルカみたいな口の男のことを、
武沢はテツさんと呼んでいます。

話は3ヶ月前に遡ります。回想です。
武沢はアパートの自室の鍵穴がおかしいことに気付きます。
郵便受けを覗いたところ、鍵屋のチラシが入っていたので呼ぶと、
鍵屋は錠を交換しました。

そして武沢は、実は錠を接着剤で塞いでいたのが
鍵屋の仕業であるという推理を披露します。
イルカみたいな口の鍵屋――入川鉄巳(いるかわてつみ)は観念し、
武沢とコンビを組んで詐欺をやるようになったのでした。

回想終わりです。
筑紫を騙した後、武沢とテツさんは「豚々亭」という中華料理屋へ行きました。

そこでテツさんは、死んだ妻、絵里の話をします。
絵里は一度テツさんを捨てて浮気相手の男と出ていき、
戻ってきたときには覚.醒剤中毒になっていました。
さらに、覚.醒剤を買うために消費者金融やヤミ金に手を出し、
500万もの借金を作っていました。

やがて、絵里は自殺し、その生命保険金で借金を返すことになりました。

豚々亭を出るとき、店主が、
以前、妙な男が武沢について探りを入れていたことを話しました。

そしてアパートに戻ると、武沢の部屋が燃えていました。
テツさんが燃えさかる部屋から自分の荷物をとってくると、
2人はその場から逃げ出しました。

雨が降って来たので、公園にある白鳥型の滑り台の下に隠れます。

そこで武沢は、自分自身の過去を回想します。
武沢は12年前に妻を亡くし、娘の沙代と2人暮らしを始めます。

そんなとき、武沢は会社の同僚に誘われ賭場へ行きます。
そこで莫大な借金を作ってしまい、同僚も行方をくらましました。
消費者金融とか紹介屋とかヤミ金に騙され、借金はどんどん膨らみます。
返せないんので、嫌がらせをされます。
警察に相談しに行きますが何もしてくれません。

やがて、ヒグチという男に使われ、借金の取り立てをするようになります。
しかし、取り立てをしていた母子家庭の母親を自殺に追い込んだところで、
目が覚めました。

ヒグチの事務所から問題のある書類を持ち出し、警察に行きました。
そして――武沢の家が放火され、中にいた沙代は焼け死にました。

それから武沢は詐欺師として生活するようになり、
7年後にテツさんと出会ったのでした。

アパートを焼け出された武沢とテツさんは、不動産屋を回り、
小さな借家を借りることにしました。
引っ越してから4日後、前のアパートの大家から電話がかかってきて、
ヒグチと名乗る男から大家のところへ電話があった、と教えられました。

その後、2人は上野へ行きました。
そこで新しい携帯電話を購入し、骨董品詐欺をします。

駅に戻る途中、少女がスリを働くのを目撃し、2人はその少女を助けました。
そして、その18歳の少女――河合まひろが、
7年前に武沢が母親を自殺に追い込んだ母子家庭の娘だと、武沢は気付きます。

まひろがアパートを追い出されそうだという話を聞き、
武沢はまひろを自分たちの借家に住まわせることにしました。

翌日の夜、借家に子猫が迷い込んできて、
まひろが飼いたがったので飼うことにしました。
ペットショップへ行き、武沢とテツさんが注意を逸らしている間に、
まひろがトイレの砂や餌、首輪などを万引きしました。

そして、まひろが先に家に帰り、武沢とテツさんが帰宅すると、
どうやらまひろが男を連れ込んでいる様子でした。
が、それは勘違いで、男――売れないマジシャンの石屋貫太郎を
連れ込んでいたのは、まひろの姉の河合やひろでした。

貫太郎とやひろも、まひろと同じアパートに住んでいたため行くあてがなく、
武沢は2人も住まわせることにしました。
布団を買ったり一緒に食事をしたりして、6人は打ち解けます。

しかし、ある日、テツさんはまひろの持ってきたボストンバッグの中に、
2、300万円くらいの大金があったという話をします。
実はそれは武沢が7年間、まひろ達姉妹に送り続けていたお金だったのですが、
アパートを追い出されるほどお金に困っていながら、
2人はそれに全く手をつけていなかったのでした。

テツさんに言われて武沢がバッグの中を確認すると、
そこにはまひろ達の父親と思しき人物からの手紙も入っていました。
武沢はその手紙の筆跡に見覚えがありましたが、
気のせいだと片づけてしまいます。

その後、武沢はテツさんに、
まひろ達姉妹の母親を自殺に追い込んだことについて告白します。

翌日の夕方、家の台所の裏に火が放たれるのですが、
5人全員で協力し、何とか火を止めることができました。
そのとき家の近くに停まっていたセダンに乗っていた男が、
火事が多くて大変ですねと声をかけた後、武沢さん、と付け加えました。

そしてその男は、テツさんを昔騙した債務整理屋だと、テツさんは言いました。

武沢とテツさん、まひろとやひろは全員、同じ組織に恨みがあった、
ということが判明します。
とりあえず5人は借家を出ることにします。
夜になり、飼っていた猫の死体と思われるものを発見しました。

みんなで話し合った結果、逃げるのはやめ、組織に復讐することにしました。
武沢がまひろ達に送りつけていたお金も使うことにします。

作戦初日。
見張りをしていて、借屋が荒らされるのを目撃した貫太郎は、
武沢とテツさんに知らせ、武沢たちは例のセダンをタクシーで尾行し、
組織の事務所があるマンションを発見します。

翌日、武沢はアメ横へ行き、外国人たちから携帯電話を11台購入します。
そして盗聴専門の探偵事務所に依頼し、携帯電話に盗聴器を仕込みました。

11台のうち10台の携帯電話を、1台1000円という値段でチラシに載せ、
組織の事務所の郵便受けに入れておきます。

そして、残った1台の携帯電話に、組織から電話がかかってきて、
送ることになりました。

さらに、そのマンションの空き部屋になっていた902号室の錠を、
元鍵屋のテツさんが開け、そこで盗聴の電波を拾うことにします。
武沢たちはそれを録音しつつ、債権の回収に使用している振込口座を探ります。
会話の中に、武沢の名前も出てきます。

振込口座が凍結されるという偽の手紙を出し、口座の現金を引き上げさせます。
組織の人たちは、そのお金を事務所の金庫に仕舞うことにしました。

組織の事務所は1001号室なのですが、
その隣に住むホステスが水曜と金曜はお店に出ていることを、まひろが調べました。

翌日、ヒグチが不在のときを狙い、5人は作戦の本番を決行することにしました。
武沢、テツさん、貫太郎、やひろは『盗聴バスターズ』のつなぎを着て、
事務所を訪れ、事務所の中から盗聴の電波が出ていると言いました。

事務所の中に入った4人は、例の携帯電話の中から盗聴電波が出ていると教えます。
盗聴の中継器があると言い、金庫の中を調べます。

やがて貫太郎は金庫の中から中継器を発見したふりをします。
その後で貫太郎が銃を出し、金庫から出した現金を寄越せと脅迫します。
もちろん、簡単にお金を渡すわけにはいきませんが、
まひろがこっちにお金の入った袋を渡すようにと言うと、
組織の人間はまひろに渡しました。

そして、まひろは事務所を飛び出しました。
何かが落ちるような音がして、外廊下の下を見ると、
隣の2階建のビルの屋上に、女が墜落しているように見えました。

しかし実は、「まひろはテツさんが予め開錠しておいた隣室に隠れており、
ビルの屋上にいたのはまひろと後ろ姿がそっくりな、やひろだったのでした。

上手くいった――と思ったのも束の間、5人は組織の人間に掴まってしまいました。

実はヒグチは、部下が異常なほど安い携帯電話を購入したという話を聞いた時点で、
怪しいと思い携帯電話を分解し、盗聴器を発見していたのでした。

今日の一連の作戦も、ヒグチは盗聴しながら観劇していたわけです。

そんな話を聞いた後、武沢はヒグチに向かって、
あんたはいったい誰なんだと尋ねます。

ヒグチは、武沢を恨んでいたのは自分の兄だったのだと答えました。
本物のヒグチは刑務所に服役し、出てきたところを刺されて殺されたのだそうです。

アパートや借家に火をつけたのは、ただのお遊びで、
猫を殺してしまったのは弾みだったのだと言います。

ヒグチは今日の件は見逃してくれることになりましたが、最後に、
まひろとやひろの母親を自殺させたのが武沢だったことをバラしてしまいます。

しかしまひろは、借家の中で武沢がテツさんに語った過去を話しているのを聞いていたため、
既にそのことは知っていたのでした。
まひろは考えて考えて、
恨むのは武沢に命令して残酷なことをやらせていた上の連中だと結論を出していました。

そして、貫太郎の提案で、5人は二階建てのビルの屋上に戻り、
そこに残されていた白い紙袋に入れておいた、
武沢がまひろとやひろに送り続けていたお金の残りを5人で山分けしました。
そこで5人は別れて、それぞれの道を歩くことにしました。

それから1ヶ月後。
武沢は、まひろ、やひろ、貫太郎からの葉書を受け取りました。
まひろとやひろは働き始め、貫太郎も就職が決まりそうだと書かれていました。
また、死んだ子猫の生まれ変わりのような子猫がアパートに現れ、飼い始めたのだそうです。

……ここに来て、何もかもがよくできすぎている、と武沢は疑念を覚え、
豚々亭の店主に電話しました。
店主から、以前住んでいたアパートの火事は悪戯で、
ただのタイマー仕掛けの煙幕だったのだと言われます。

さらに、まひろとやひろの父親の苗字を確認します。
2人の父親の名前は、河合光輝――カワイミツテル。
テツさんが名乗っていた入川鉄巳――イルカワテツミは、そのアナグラムでした。
また、妻の名前もアナグラムになっていました。

まひろ達の父親の手紙の筆跡に見覚えがあったのは、
テツさんが書いた字と似ていたからです。

つまり、テツさんは、まひろとやひろの生き別れの父親だったのです。

ヒグチやその部下、前のアパートの大家を騙っていたのは、テツさんが雇った劇団員でした。
その劇団を訪れた武沢は、テツさんと再会します。

テツさんは詐欺師であることを理由に妻と別れました。
が、今から1年前にガンを患い、先が長くないと言われたのをきっかけに、
妻と2人の娘の消息を調べました。
そこで初めて、妻が自殺しており、娘たちの生活苦や、
妻を自殺に追い込んだ武沢のことを知ったのでした。

そして、娘たちと武沢が過去を乗り越えて生きていけるように、
あんな大がかりなお芝居を仕掛けたのです。
あの猫の遺体は偽物で、後日まひろ達のアパートに現れたのが本物の猫でした。
作戦の舞台となったマンションも、
取り壊し予定の無人のマンションだったのです。

さらに、武沢がテツさんと組んでやった仕事で得たお金は、
実は全部テツさんが懐から出していたものでした。

そして、それらのお芝居にかかった費用は、本物のヒグチを詐欺で騙して得たお金でした。

それから月日が流れ、武沢はテツさんを看取りました。

というあらすじなのですが、
結局武沢は全部、テツさんの手の平の上で踊らされていたわけですよね……。
空しいような哀しいような、変な気分になります。

ところでタイトルの由来ですが、カラスはプロの詐欺師のことで、
親指はお父さん指、5人の中で父親的存在のテツさんのことを示していました。
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