貴志祐介「悪の教典」のネタバレ解説・前編

悪の教典 上 (文春文庫)


貴志祐介さんの「悪の教典」のネタバレ解説の前編です。
後編はこちらです。

映画版ではなく原作の小説について解説していきます。

主人公の蓮実聖司は、
東京都町田市にある私立高校の英語教師です。
蓮実はイケメンで頭がよく、ハスミンというニックネームで慕われており、
学校で一番女子生徒から人気があります。

この本は、そんな蓮実聖司が、高校で起こる様々な問題を解決していく
というストーリーです(嘘はついてませんよ、嘘は)。

第1章は簡単に説明すると、
主要登場人物の紹介のために書かれた短編のような作りになっています。
キャラクターの数は多いですが、全員キャラが立っており、
この章は一貫してハスミンの視点で描かれていることもあり、
「新世界より」に比べたら非常に読みやすいです。

第1章では蓮実が大きく分けて3つの問題を解決します。

まず、受け持ちの生徒の片桐怜花から、
気の強い安原美彌(みや)が体育教師の柴原にセクハラされている、
という相談を受けます。
蓮実が美彌に訊ねたところ、万引きをネタに柴原に脅迫されていたので、
蓮実は美彌と一緒にお店に行って謝罪してきました。
さらに、柴原にも釘を刺しておきます。

次に、体育教師の園田が、鳴瀬修平を殴って怪我をさせたのですが、
鳴瀬の親が弁護士であり、おまけに園田も意地になっている面があり、
問題がこじれていました。
ちなみに、同じ体育教師でも、柴原がチンピラのような奴なのに対し、
園田は自分にも他人にも厳しい戦国武将のような人物です。

蓮実は園田に「体罰をしたことについて」謝罪させるのではなく、
「怪我をさせたことについて」謝罪させることで解決しました。
一休さんみたいですね。

最後に、蓮実はここしばらくの間、
早朝のカラスの鳴き声に悩まされていたのですが、
カラスをT字型の特殊な電線で焼き殺す」という方法で解決しました。
ちなみにその描写がやけに細かいのですが、たぶん、
作者は実際に装置を作っているのでしょうね。

1つめと2つめの問題までは、
よくある青春小説の主人公っぽかったのですが、
最後に、「あ、こいつまともじゃないな」と分かる仕掛けになっています。

第2章から3章にかけては、並行して3つの問題を解決します。

まず、1つめの問題はカンニング事件です。

片桐怜花の友人には、クラスメートの夏越雄一郎と、
別のクラスの早水圭介がいます。
そのうちの圭介が、頭がいいのにひねくれており、
保健室の田浦潤子教諭と性的な関係にあり、
麻薬の常習犯であるという問題児です。

圭介は自分が解答したテストの答えを携帯電話で「会員」に教えるという、
カンニング幇助をしていたのですが、
蓮実が校内では携帯電話を使えないように妨害電波を出し、
カンニングは失敗しました。

2つめの問題は、クラス内でのいじめ事件です。
前島雅彦という生徒が、不良の蓼沼将太が率いるグループにいじめられ、
恐喝されていました。

蓮実はこのいじめには裏があるのではないかと考え、
スクールカウンセラーの水落聡子のところへ行きました。
そして聡子を誘導尋問し、心理テストなどの結果から、
前島が同性愛者なのではないかと確認するのですが、
正直、この部分は……。

情報が古いというか偏見に満ちているというか……
結論ありきの調査をしているような感じです。
こんなインチキくさい心理テストをどこまで本気で信じているのでしょうか。

また、「性的指向」と「性的嗜好」は厳密には違うものなのですが、
作者はそれを混同している節が見られます。
発音は同じなので口頭ならば構いませんが、
小説の文章で「性的な嗜好」とか書いてしまうのは問題があると思います。
そこだけ見ても、この辺の調査がおざなりであることが分かります。

まあ、それはさておき、蓮実は、
前島が金持ちな美術教諭の久米と付き合っていることを突き止めます。
久米が前島の代わりに、蓼沼にお金を渡していることを蓮実は知ります。

そして、蓮実は蓼沼を排除し、代わりに自分が久米を脅迫することにしました。

蓮実は蓼沼をネット上のいじめのターゲットに仕立て上げ、
クラスメート全員が蓼沼を敵対視していると思い込ませます
(まあ、思い込ませるも何も、
実際に蓼沼はクラスメートの殆どから嫌われていたんですけど、
それを露骨な形で自覚させたのですね。
自覚がないのが凄いですが、いじめっ子なんていうのはそんなものです)。

そして避難訓練の日がやってきます。
救助袋やAED(自動体外式除細動器)の使い方に関する説明があります。

その後、教師だけで学校に不審者が侵入してきた際の訓練をしていたのですが、
そのとき教室では蓼沼が大暴れしていました。
駆け付けた蓮実を蓼沼はカッターナイフで切り付けますが、
蓮実は如才なく防刃チョッキを用意していたので助かりました。

この事件のせいでとうとう蓼沼は退学になります。

数日後、蓮実は久米のポルシェやマンションを借り、
安原美彌とのデートに使いました。
ちなみに泊まりであり、「露骨な描写があります。
愛撫だけで3時間とか、ハスミンマジパねぇッス!


久米が未成年と付き合っていることをネタにして脅迫しておきながら、
久米のポルシェやマンションを未成年とのデートに使うという
ハスミンの鬼畜っぷりが凄いです。

それにしても、蓮実と美彌、久米と前島、潤子と圭介、という風に、
教師と生徒という組み合わせのカップルが既に3組もいるのですが、
この学校はいったいどうなっているのでしょうか。
乱れきっています。

3つめの問題は、モンスター・ペアレント問題です。
清田梨奈という受け持ちの生徒の父親がモンスター・ペアレントであり、
娘はいじめられている、
と蓮実に難癖をつけることを生きがいにしていたのですが、
相手が悪かったですね。
蓮実は何と、「清田梨奈の家に放火をし、父親を殺害してしまいました。
とうとう人を殺したか……という感じですが、こんなのは序の口です。


第4章では、
安原美彌がある教師と交際しているという噂について、
真田俊平教諭が蓮実に相談してしまいます。
あーあ、死亡フラグ立てちゃったなあ……という感じです。

蓮実は真田を泥酔させて真田の車に乗せ、
自分が車を運転して学校まで行き、
そこにいた堂島智津子教諭を轢きました。
堂島は以前から蓮実とトラブルを起こしていたので、
ついでに始末されてしまったのでした。

今回は2人とも命は助かりましたが、真田は逮捕され、
堂島は蓮実を陥れるためのビラを作っていたことが明らかになり、
学校を退職しました。

第5章では修学旅行で京都に行きます。
例の3組の教師と生徒のカップルは、
旅行先のホテルでもやってくれてました。

第4章から第5章にかけて、ちょくちょく回想シーンが挟まり、
蓮実聖司の過去が読者に明かされます。

蓮実聖司は理想的な両親に育てられましたが、
ハスミンが同級生の女子に猥褻な行為をしたことを知った教師を殺したり、
自分より人気のある男子生徒を殺したりするという、
絶望的な子どもに育ってしまっていました。

蓮実聖司は生まれながらのサイコパスだったわけです。

蓮実聖司は、自分の正体を知った実の両親を殺害し、
自分も殺人鬼に襲われたように見せかけました。
このとき、蓮実聖司は中学2年生でした……。

ハスミンは転校先で、ある女子と友人になります。
その女子に乱暴して自殺に追い込んだ男に復讐したところだけは
唯一人間らしいエピソードに見えますが、
単に靭帯実験をしたかっただけのようにも見えます。
 (↑人体実験の誤変換なのですが、偶然にも内容と一致しており、
  せっかくなのでこのままにしておきますw)

第5章の終わりに、蓮実の前任の高校の同僚が話しかけてきたため、
それを聞いていた釣井正信という老教諭と、
片桐怜花、早水圭介、夏越雄一郎たちがそれぞれ、
蓮実の前任の高校について調べます。

すると、その高校では、
4件もの自殺連鎖が起こっていることが明らかになりました。
その件について
「うちだったら、絶対、大騒ぎだぜ」
と雄一郎が言っているのですが、
現時点で既にお前らの高校の方がよっぽど酷いだろ!
と突っ込みたくなります。

自殺したことになっている4人は、皆、
快活な人気教師の蓮実に疑いの眼差しを向けていたのだそうです。

カンニング事件のときに、
学校で蓮実に盗聴されているのではないかと疑っていた圭介は、
さらに深入りしようとします。
うわあ……完全に死亡フラグ立っちゃってるよこれ、という感じです。

一方、釣井教諭は、生徒から軽んじられている駄目教師なのですが、
なぜか怜花だけは彼のことを怖がっていました。

実は、釣井は「10年前に、妻が灘森校長と不倫していることを知り、
校長の目の前で妻を殺害した上で、
校長にその死体を埋めさせていたという過去があったのでした。
そのため、校長は釣井に逆らうことができなかったわけです。

釣井は蓮実の前任の高校に出向くのですが、それを蓮実に知られます。
蓮実は釣井を終電の中で首吊り自殺に偽装して殺害しました。

釣井は第1章からずっと、ラスボスっぽい雰囲気を醸し出していましたが、
怪物の相手をするには力不足でした……。

釣井から解放された灘森校長が、全校生徒の前で熱弁を振るい、
拍手喝采されたところで、
」前編は終わります。

この記事は後編に続きます。                  スポンサードリンク

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