時雨沢恵一「キノの旅」3巻5話「差別を許さない国」のネタバレ解説

この話の前半は地の文がなく、会話だけで話が進みます。

「×××××を探しているんです。近くにありませんか?」
と、その国の住人に尋ねたキノは、表現について非難されまくります。

仕方なくキノは言い方を変え、
「×××××はこの国にないんですか? もしくは、×××××はありませんか?」
と尋ねるのですが、さらにその住人は激昂し、他の人たちを呼びます。

ここから先は×××××のオンパレードです。
ちなみにこの「×××××」というのは、
時雨沢さんが伏字にしたいときに使う表現であり、文字数は関係ありません。

文脈から考えると、キノは安ホテルを探していたのではないかと思います。
いつもキノは入国すると真っ先にホテルを探しますからね。
そしてそれを、宿屋とか宿泊施設とか寝泊まりできる所とか、
色んな表現で訊ねてみたのではないでしょうか。

しかし住人達は「キノとエルメスを非難しまくり、
とうとう「出ていけ!」と何度も叫び、追い出しました。
キノの滞在の短さでは新記録でした。

残された住民たちは、キノや入国審査官たちを汚い表現で罵りました。

そしてここからは地の文があり、
キノは入国審査官に出国の手続きをお願いしました。
が、実は入国の手続きすらしていませんでした。
どうせすぐに出国することになるから、ということなのでしょうね。

キノたちは、その卵型のドームに覆われたその町が
いかに汚かったかについて話しました。
ところでキノはゴキブリを見たことがないそうなのですが、羨ましいです。
北海道にもゴキブリはいないそうなので、
きっとキノは今まで寒いところにしか行かなかったんでしょうね。

その後、『本当の蒼い空』って何だと思う? と審査官に聞かれ、
キノは、そんなものはないと答えました。
そして、『ここの空の蒼さも、とてもきれいですよ』と
キノが空を眺めながら言ったところで話は終わります。


この話は結局、差別差別と騒いでいた国の中の住人たちが、
実は一番差別をしている、という話でした。

この差別という言葉は非常に扱い方が難しい言葉です。
この国の住人のような使い方は論外ですが、
差別そのものは現実に存在します。

例えば黄色人種は様々な局面で白人たちに差別されていますし、
それどころか黒人にも差別されています。

いえ、これは言葉の綾ではなく、例えばアメリカとかアフリカとかに行くと、
『白人、黒人、黄色人種の順に偉い』なんて考えている黒人は結構います。
オーバーステイ(不法滞在)をしている某国人達のせいで
印象が悪くなっているということや、
日本が守銭奴な金持ちだと思われていることや、
単純にアメリカでは白人、黒人、黄色人種の順に人口が多く、
黄色人種の外見が目立つことも影響しています。

アメリカでは、アジア系の子どもは多人種の子どもに比べていじめられやすい、
という統計もあります。

ところで、アファーマティブ・アクション、
という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは日本語に訳すのが難しい単語なのですが、
「差別環境の是正措置」とか「積極的差別是正制度」などと
翻訳されることがあります。

アメリカでは、大学入試競争において、
ゴールラインが人種ごとに別々に引かれています。
白人をゼロとすると、1600満点のうち、黒人はプラス230点、
ラテン系はプラス185点、アジア系はマイナス50点、
点数が修正されてしまいます。

東洋系は他人種以上の努力が制度上義務付けられており、
逆に差別的な状況を生んでいます。
ひと口に東洋系と言っても、ベトナム系やフィリピン系、
そして大陸の奥地の貧しいアジアの国々出身の人にとっては、
アジア人差別そのものである制度です。
さすがにこれはまずいということで、最近カリフォルア州など一部の州では、
この制度は撤廃されました。

これは独断ですが、日本では大学入試センター試験の外国語などが、
実質的なアファーマティブ・アクションになっているように思えます。
例えば韓国語や中国語は毎年、英語よりも平均点が高くなっているため、
韓国系や中国系の在日外国人は、
英語がほぼ必修扱いの日本人よりも有利だからです。

また、女子大学はあるのに男子大学はないというのも、
アファーマティブ・アクションの1つなのではないでしょうか。
学費が安い国公立大学の中に、女子大学は4つもありますが、
男子大学は私立も含めて1つもありません。
その結果、男子よりも女子の方が大学に進学しやすくなっています。

日本では政府が2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも
30パーセントとなることを努力目標としていますが、
安易な数値目標は逆に採用や昇進における女性優遇を招くのではないか、
とも指摘されています。

仕事の能力が劣る人間が、
女性であるというだけで採用されたり昇進したりするというのは、
今まで男性であるというだけで採用されたり昇進したりしていた、
というのと逆になっただけです。
企業によっては、
体力や資格などの理由から男女比率が100対1くらいのところもあります。
そういう企業で女性の指導的地位が30パーセントに~なんてことをやったら、
文字通り、女性だというだけでポンポンと出世できるようになります。
本当にそれでいいのでしょうか。

このように、アファーマティブ・アクションには否定的な意見も多いです。
優遇対象グループと、非優遇対象グループとで軋轢を生んだり、
優遇対象側は努力をする必要がなくなって怠けたり、
非優遇対象側は努力しても仕方ない、と投げやりになったりします。
また、優遇対象グループの中で恵まれている人が、
非優遇対象グループの中で恵まれていない人を犠牲にしている側面もあります。

このように、差別を是正する過程において、特定の集団を優遇することにより、
優遇されない集団が差別されてしまうことを、逆差別と言います。

これにより、日本でも同和利権や在日特権などの利権が生まれてしまいました。
同和利権とか在日特権についてまで解説していると文字数が足りなくなるので
割愛させていただきますが、
こうやって「逆差別」という視点まで含めて考えたとき、
日本で一番差別されているマイノリティは、実は同性愛者なのではないか、
としまうましたは思いました。

日本は同性愛に寛容である、なんて言葉がまことしやかに囁かれています。
しかし、それは事実なのでしょうか?
日本が同性愛に寛容であるという根拠は何なのでしょうか?

その答えとして、日本では同性愛者であることを理由に殺される、
ヘイクライム(憎悪犯罪)などがない、という理由を挙げる人もいます。

しかし、それは単に日本の治安がいいことを証明するだけですし、
実は報道されないだけで、
同性愛者を狙った憎悪犯罪は日本でもいくつも起こっています。

別の理由として、同性愛を自称するタレントがたくさんテレビに出ているから、
と言う人もいますが、
いわゆる「オネエ」と呼ばれる人たちのことを指しているのだとすれば、
それはむしろ逆なのではないでしょうか?

あの人たちはあれが仕事であり、対価を受け取って、
テレビ局や視聴者が望むステレオタイプの同性愛者像を演じているに過ぎませんし、
しかも大部分がお笑い芸人に集中しています。

そもそも大部分の男性同性愛者は女装もしませんしオネエ言葉も使いませんし、
現実の同性愛者像とはかけ離れています。

今はテレビから消えましたがレイザーラモンHG(住谷正樹)なども、
異性愛者でありながらステレオタイプの同性愛者を演じて営利活動をしています。

また、時として「笑う」ということは非常に残酷です。
いじめの現場などで、いじめている側が笑っているのを見た人は多いでしょう。
例えばいじめには、いじめのターゲットを過剰にデフォルメして物真似をし、
からかうということがあります。
今の日本のテレビがやっているのは、そういうことなのです。

また、日本精神神経医学界や国際精神医学会やWHO(世界保健機関)は、
同性愛を「異常」「倒錯」「変態」とはみなさず、治療の対象から外しています。
が、いまだに日本のテレビはそういう扱いをしています。

他にも、何の脈絡もなくタレントが「ホモちゃうか」と言って笑いを取ろうとしたり、
その発言に笑いの効果音を被せたりすることがありますが、
これのホモの部分を黒人とか身体障害者とかを指す言葉に置き換えるとどうなるでしょうか?
ところでこの「ホモ」という言葉も英語圏では完全に侮蔑語なニュアンスのある言葉であり、
海外ではうっかり人の多い場所や公の場で使うと恐ろしいことになる場合もあります。

そして「ホモ」という言葉に侮蔑的なニュアンスがあるため、
新しく「ゲイ」という言葉を作ったにもかかわらず、
レイザーラモンHG(住谷正樹)などのせいで、
日本では再び侮蔑的なニュアンスが定着してしまいました。
日本のテレビ局は恐ろしいことに、差別を差別とすら認識していないのです。

そして、海外のテレビには、同性愛者であることを公言している、
俳優のジョン・バロウマンとか、同性と結婚したミュージシャンのエルトン・ジョンや、
ロシアの同性愛者に対する差別的な法律に抗議するためにゲイであることをカミング・アウトした
俳優のウェントワース・ミラーなど、
お笑い芸人ではない同性愛の芸能人がたくさんいますから、そもそも、
「日本には同性愛のタレントがたくさん出てるから~」というのは的外れだと分かります。
それに、そういう主張は女性の同性愛者の存在も完全に無視しています。

次に、ボーイズ・ラブや、百合系の漫画や小説やアニメがたくさんあるということを
挙げる人もいますが、結局、それはフィクションです。

そして、それらの大部分は異性愛者向けに作られたものであり、
フィクションの中の同性愛者は現実の異性愛者に消費されているだけです。

例えば、書店の片隅などに置いてある成人向けの漫画を指して、
「この漫画の中で女性が性の対象として扱われているから、日本は女性に寛容だ」
などと言う人がいたら「……え?」と思うのではないでしょうか
(別にそういった成人向けの漫画の存在を否定するつもりはありません。
フィクションはフィクションだから、現実とは分けて考える必要がある、
と言いたかっただけです)。

他に、日本は法律によって同性愛者を禁止していない、
ということが例として挙げられることがあります。

確かに世界には同性愛を法律で禁じている国があります。
しかし、それらは全て発展途上国です。
この地図の黄色や茶色やオレンジ色がついている部分が、
同性愛が違法となる国です。

一方、イスラム教徒の割合を示した地図が、こちらです。

こうやって地図で見ると、同性愛が違法となる国々は、
イスラム教の国に集中していることが分かります。
イスラム教の国々では、女性に対する暴力が酷いことで有名です。
少女の○器を切除する女子割.○という風習があったり、
被害者が女性である場合は殺人を犯しても罪に問われないことがあります。
未婚の女性がレ〇○された場合、
何と、被害者である女性の方が罪に問われることすら、よくあります。

同性愛が罪となるのは、こういう発展途上国が殆どなのです。

つまり、「世界の百何ヶ国中、何ヶ国で同性愛が違法であり、だから日本は同性愛に寛容~」
などというのは、一種のレトリックに過ぎません。

そんなことを言ったら、
主要先進国8ヶ国(日本、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、ロシア)のうち、
同性結婚またはそれに準ずる法律がない国は、日本とロシアの2ヶ国だけです。

先ほどの この地図の中の、青系の色がついている国が、
同性結婚やそれに準ずる法律を施行している国です。

発展途上国を除いた先進国に限っては、
日本は法的に同性愛者を差別しているグループの中に含まれているのです。
あの一時期は同性愛者差別の酷かったアメリカですら、
同性愛が違法となる州はなく、一部の州では同性結婚を認めています。

例えば日本で異性結婚をして、配偶者が亡くなった場合、
保険金を受け取ったり、遺留分を遺産を相続したり、
病院で配偶者の最期を看取ったり、葬儀の喪主を務めたり、
という権利が認められます。

ところが、同性結婚が認められていない日本の場合、パートナーが亡くなっても、
スムーズに保険金を受け取ることができなかったり、
遺留分などの関係で遺産を相続できなかったり、
葬儀の喪主を務めることすらできない、などの様々な不利益を被っています。

また、異性間の夫婦が税制上優遇される措置が、同性間の夫婦には認められていませんし、
同じ苗字を名乗ることも難しく、
病院で「身内以外は面会謝絶」などと言われて病室を追い出されたり、
手術の同意書に判子を押すこともできなかったりします。

これは法律上の差別です。
そして同性愛者には、先ほど例に挙げた女性や在日や同和や、
障害者枠の雇用や障害年金などのある障害者とは違い、
同性愛者を優遇するような法律は全くなく、
異性愛者が「逆差別」されていることもありません。

以上の点から、しまうましたは、
いま日本で一番差別されているマイノリティは同性愛者なのではないかと考えたわけです。

せめて法律くらいは、早急に他の先進国と同レベルにした方がいいのではないかと思います。


……というわけで、長くなりすぎて、
そもそも何の記事だったのか忘れそうになってしまいましたが、
時雨沢恵一さんの「キノの旅」3巻5話「差別を許さない国」のネタバレ解説でした。                  スポンサードリンク

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