西澤保彦「ファンタズム」のネタバレ解説

ファンタズム (講談社文庫)


西澤保彦さんの「ファンタズム」のネタバレ解説ですが、
もしも「人格転移の殺人」とか「瞬間移動死体」のようなSFミステリーを
期待しているのなら、この本は読まない方がいいでしょう。
まだそれらを読んでいない人は、
「ファンタズム」より先にそちらを読むことをお勧めします。

1990年8月10日。
有銘継哉という男がリサという女性を彼女の自宅前で殺した、
というシーンから物語は始まります。
リサ――谷萩里沙子は、継哉の職場である「いなみのマート」
というスーパーの同僚でした。
また、里沙子の口の中には「坤徳樹里」と印刷されたメモが
入っていました。
司辻刑事と柘本刑事はこの事件の捜査をしますが、
継哉に辿り着くことはできませんでした。

そして少し時間が遡り、山の中にあるビアガーデンで、
「いなみのマート」の従業員たちが慰労会をやっている
シーンが始まります。
里沙子は上司の加唐善信から嫌がらせをされていますが、
継哉はあまり気に留めていませんでした。
しかし、「リサちゃん」というニックネームを聞いたときに、
何かが心に引っかかりました。

その後、エメラルド色に輝く風車を見た継哉は、
リサを殺す決意をしました。
何とも脈絡がありませんが、
まあ、単に継哉が異常なだけだと思っておけばいいです。

そして1990年12月20日、
今度は里沙子が殺されたのと同じ印南市で、
古波蔵恵美、という女性が殺されました。
この事件には恵美の口の中に里沙子の事件を報じた新聞記事が
入れられていた、という謎と、
犯人の足跡が途中で消えているという謎があります。

被害者の恵美は「えみ」ではなく「めぐみ」と読み、
女性は彼女のことをグミちゃん、
男性は彼女のことをメグちゃん、と呼んでいました。

実は継哉は彼女が通っていた大学のLL教室に
短期間勤めていたことがあり、そこで彼女を知っていました。

さらに1991年8月10日、「ホテル・イナミノ」で、
継哉の同窓生の本浪直美という女性が密室の中で殺されました。

1991年12月20日には、
有銘真理という女性が銃殺されるのですが、
何とこの有銘真理は、「有銘継哉の実の妹でした。

そしてようやく、1992年6月に、司辻刑事と柘本刑事は、
被害者と有銘継哉が顔見知りであったという
ミッシング・リンクに気付きました。

ところが、有銘継哉のアパートを訪れた司辻たちは、
それまでの4件の殺人事件の当時、継哉がアメリカにいた、
という思いがけない鉄壁のアリバイを突きつけられました。

そしてFBIにアリバイを調べてもらうよう頼んだところ、
事件は急展開を見せました。
FBI捜査官のエルヴィラとダグラスは、
アメリカでも日本と同日に
殺人事件が発生していることを説明します。
しかも被害者の名前がリサ、メグ、ナオミ、マリィであり、
彼女たちは皆、継哉がアメリカに留学していたときの
知り合いだったのです。

つまり、これまでの継哉の視点から殺害シーンの被害者たちは、
実は谷萩里沙子や古波蔵恵美たちではなく、
外国人の女性だったわけです。
――というふうに話が進めば、多少のご都合主義はありつつも、
普通のミステリーだったんですけどねえ……。

坤徳樹里に警護をつけつつ、
有銘継哉の指紋を採取した司辻たちはアメリカに指紋を送ります。
そして米国側の殺人事件に残されていた指紋と一致したのですが、
継哉はFBIに拘束された後、逃げ出し、
ジュリィという女性の自宅にタンクローリーで突っ込み、
彼女を殺害しました。
そして、日本でも坤徳樹里の勤めるピザ屋に
大型トラックが突っ込んできて、殺されてしまいます。

さらに――何と、日本側の殺人事件に残されていた指紋も、
有銘継哉のものと一致してしまいました。

そして、継哉は、谷萩里沙子の息子である谷萩絋介に
殺されてしまいます。
実は絋介のところに手紙が届けられており、
その手紙に操られた絋介は母親の仇を討ったのでした。
普通に考えれば、この手紙は継哉が渡したものなのでしょう。


と、ここまでがあらすじです。
さて、結局継哉は何者だったのか、という話ですが……。

物語の冒頭に、リサの殺害について、こんな文があります。
『彼にとって生涯、初めての殺人だった。
いや、そのはずだが、どうも継哉自身、はっきりしない。
ふたり目だったような気もしないではない。』
と。

つまり、結局リサやメグの殺害シーンは、
日本のものなのかアメリカのものなのか
分からなくなってしまっています。

しかし、どちらにせよ、日本の殺人もアメリカの殺人も、
継哉が犯人だったのでしょう。

はあ? どうやって? という感じですが、
継哉には煙のように消えて移動する超能力があったのです。
そう信じるしかありません。
ただ、信じることはできても納得はしにくいですが。

結局この話は、
『ミステリーだと思わせておいて、実はホラー(SF)だった!』
というのがやりたかったのでしょう。

『ホラー(SF)だと思わせておいて、実はミステリーだった!』
という話は山のようにありますから、
その逆をやってみたのではないかと思います。
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