時雨沢恵一「キノの旅」11巻3話「アジン(略)の国」のネタバレ解説

今回は各短編ごとのタイトルが過去最長です。
とても目次には収まりきらないので、途中で略されていますw

アジン・ダー及びイエル・ダー及びパツエ・ダー及びアゲエ・ダー及び
ゼクス・ダー及びゼゼー・ダー及びイクエ・ダー及びケーン・ダー及び
……(中略)の国、という感じで、5ページ半タイトルが続きますw

タイトルが終わり、師匠と荷物持ちさんは、
陸地と砂で繋がった緑の島にある国を訪れました。

こんな辺鄙なところに攻めに来る国なんてないので、
城壁は、砂州(さす)が繋がっている位置に、
車両進入防止用に岩が適当に置かれているだけでした。

城壁の前で師匠と荷物持ちさんは車を降り、
その国の住人に入国の許可をもらいました。

城壁の隙間をくぐりぬける時、荷物持ちさんは、
岩に彫ってある文字に気がつきました。
岩の端から端まで、この国の名前が、
数千に及ぶこの国独自の文字で書かれていました。

荷物持ちさんは、そんなに長い理由を聞きましたが、
私達も知りません、と国の人は笑顔で言いました。

別の小さな岩には“1004”と数字が彫ってあり、
それが、今のこの国の人口でした。
変動があると、新しい岩に新たな数を彫り込むのだそうです。

師匠と荷物持ちさんは“公民館”で盛大な歓待を受けました。

食事は豪華ではありませんでしたが、
貧しく質素な国では食糧事情がギリギリなので、
師匠と荷物持ちさんは丁寧に礼を言ってから頂戴しました。

食事の後、島を案内してもらいます。
島全体が山で、この国の一番高いところには、
綺麗な水をたたえる池がありました。
雨季に降った雨を半年間蓄えておくための人工の池でした。

師匠と荷物持ちさんは公民館に戻り、
荷物持ちさんは、この国の名前はとても長いですよね?
覚えるのが大変では? と聞きました。

しかし、案内人だった1人が、遠巻きに見ている住人の中から、
“白い魚大好きちゃん”という女の子を呼び、
この国の名前を言わせました。

非常に長い「アジン・ダー」から始まる国の名前を、
女の子は喋り、他の国民が一緒に口を動かし、
女の子と一緒に間違えずにずっと言い続けました。

女の子は、見事に全てを言い切り、荷物持ちさんは喝采しました。

先ほどの、“白い魚大好きちゃん”と呼ばれた女の子ですが、
あれはあだ名ですね? この国では本名を隠し、
あだ名を常に使うのですね、と師匠が聞き、
案内人はそうですと答えました。

そこにいる皆でああだこうだと言い合って、
短い滞在の間、旅人の2人を呼ぶあだ名を考えることにし、
師匠は“流れる黒髪さん”、荷物持ちさんは“荷物持ちさん”
と呼ばれることになりました。

ちなみに、このブログ「ネタバレ解説、しまうました」で、
師匠の相棒の、少し背の低いハンサムな男のことを、
“荷物持ちさん”と呼んでいるのは、このエピソードが由来です。

師匠と荷物持ちさんはお客用の家に泊まり、
昼を少し過ぎた頃に出国しました。

出国して間もない頃、
緑色のジャケットを着た20代中頃に見える男と出会いました。
波打ち際には、小型エンジンや燃料タンクなど、
小さな舟を燃やした跡がありました。
男は、ここまでやって来た乗り物を、自らの手で放棄してしまったわけです。

男は師匠と荷物持ちさんに、あの緑の島の国で、
住人を皆殺しにするのだと言いました。

あの国の山の頂上の溜池に毒を入れるのだそうです。

その理由を訊ねると、復讐のためだと男は言いました。

15年前、あの国は、人口が1500人以上いたのだそうです。
あの領土では、
1000人くらいの人間を養うのがやっとといったところなのに、
完全に許容限界を超えていました。

それ以前の40年間に異常気象があり、雨がやたらに多く、
魚がやけに獲れ、当時の指導者たちは調子に乗って
“人口は千人と十からは増やしてはいけない”
という、有史以来続く国の禁忌をあっさりと破りましたが、
自然が、漁獲量が元に戻ったらお終いでした。

この先恐ろしい渇水と飢餓が襲うだろうと気づいた時、
指導者は揃いも揃って自殺しました。

10人ほどの集団の旅人がやってきて、
1500人は助けてくれと窮状を訴えました。

リーダーは、私達が全てを解決する、と言い、
役場にあった住人の名前と年齢、性別を調べたうえで、
“どの500人を殺せば人口のバランスを保ち残せるか”
を完璧に把握し、また遺児や遺族が出ないように、
必ず家族単位で、たった一夜に500人近く殺害しました。

男は10歳だったその日の夜、父と母と姉と妹2人を殺されました。
そしてリーダーは男にパースエイダーを向けて、引き金を引きましたが、
なぜか弾が出ませんでした。
“お前、生きたいか?”とリーダーに聞かれ、
男は“生きたいから連れていけ”と言いました。

男はこっそり彼らの仲間になって、一緒に旅をしました。

ちなみに、そのリーダーが女性であることを、なぜか師匠は知っていました。

半年前、いろんな国を荒らし回るお尋ね者だった彼らが、
優秀な追跡者に見つかり、殺されてしまいました。
男だけは、“水を汲みに行っていた”という理由だけで生き残りました。

男は死のうと思い、そんな時に、死んだ500人近い人間のことなど忘れて、
のうのうと生きている同胞のことを聞いて、
あいつらを殺して俺も死ぬぞ、と思ってここまでやって来たのだそうです。

師匠は男に名前を聞き、男は“ミライ・ツー”と答えました。

師匠と荷物持ちさんは男を見逃しますが、師匠は、
入国の時に一つ気をつけてほしいことが、と言いました。

あの国は、国名が昔と変わっています、
入り口にある石碑の名前を一度読んでから入るといいでしょう、
と師匠は言いました。

その次の日のこと、その国は――「名前が少しだけ変わり、
人工が1人増えました。

今頃、石碑を必死になって彫り直しているところでしょうかね?
と師匠は言いました。


というあらすじなのですが、その国の異常に長い名前は、
犠牲になった500人近い人達の名前を忘れないために、
そんな名前になったのでした。

ミライ・ツーという名前は、タイトルの3ページ目の最後の方に書かれています。

ミライ・ツーは石碑を読んでそのことを知り、その国の住人になり、
国の名前が変わった、というオチですね。


しまうましたは、残酷で優しいこの話が凄く好きです。

時雨沢恵一「キノの旅」11巻2話「失望の国」のネタバレ解説

今回は会話だけで話が進みます。

キノが出国準備をしていると、その国の人に話しかけられました。

すてきな国でした、とキノは褒めましたが、
旅人さんが他の国に行って、この国のことを聞かれた時、
思い切り、悪いことを言ってもらえませんか?
とその人に頼まれました。

その国は、たくさん旅人や商人が訪れるので、
それなりに知られていますが、いい噂だけが広まったらしく、
国民はみんなに優しくて、
常に入国者を大歓迎してもてなしてくれる
すばらしい国だと思われていました。

でも、よそ者を快く思わない人達だっていて、
あえて避けたり、とことん嫌う人もいます。
すると、期待してやってきた旅人達が失望し、
本気で起り出す人もいるのだそうです。

その国の人達は当たり前の毎日を生きているだけで、
期待が大きすぎても困惑するので、
あえてキノ達に悪い噂を流してもらいたく思っているのだそうです。

キノはその頼みを丁重に断りました。

エルメスは、旅人に悪く思われたいのだったら、
わざと酷いことをすればよかったのに、
そうすれば、自然に酷い国だって噂が広まるよ、と言いました。

しかしその人は、「そんな失礼なことはできませんっ!
と言いました。

出国したキノは、さっきまで“なかなかすてきな国”だったけど、
“とてもすてきな国だった”に訂正する、と言いました。


というあらすじなのですが、しまうましたも、
この国はとてもすてきな国だと思います。

時雨沢恵一「キノの旅」11巻1話「つながっている国」のネタバレ解説

冬に、キノとエルメスは4年前に放棄された国の跡を訪れました。

ある時“旅の占い師”というおばさんがやって来て、
この国の建物や通りの位置は縁起が悪く、
国民はやがて不幸になり、地獄に行くだろうっ!
と言われ、国を造り直すより、引っ越した方が早いということで、
全員でいろいろな国に移住してしまったのだそうです。

科学技術は結構進んでいた国で、
誰かが住みたかったら、そのまま住めるように、
国を管理運営するためのシステムや機械は、
スイッチを切らずに残してきたため、小綺麗な国の跡でした。

キノは百貨店の倉庫のベッドを引っ張りだし、眠りました。

翌日、国を観光して、エルメスの燃料を入れ、
アパートの1階で眠りました。

翌朝、アパートの家捜しをして、泊まった部屋の隣部屋で、
干からびた首つり死体を見つけました。
部屋の内壁に、この国を離れるのは嫌だ、
地獄へ行くのも嫌だ、私は自ら望んで、1人で天国へと旅立つ、
と遺書が書かれていました。

その人は、折り畳み式の通信端末機を残していましたが、
使い方は分かりませんでした。

西側の城門へ向けて、キノはエルメスを走らせ、
低いドーム型のコンクリートの建物を発見しました。

鉄の扉の前で止まると、落ち着いた女性の自動音声が流れた後、
どうぞどうぞ! 灰ってください、ようこそ旅人さん!
と若い男の声が聞こえました。

エルメスと一緒にエレベーターに入ると、数十秒にわたって下降し、
人間が生活する空間がありました。

20代前半に見える男に歓迎され、話をします。

男がここで1人暮らしをしているのは、病気で、
みんなにうつしてしまう危険性があるから隔離中なのだそうです。

お日様の光をちょっとでも浴びると、
男の体がとんでもないことになってしまう病気で、
この国の人だけに感染するのだそうです。

昔々、御先祖が日照りで苦しんだとき、
時の首長は“一生太陽を見なくてもいいですから雨を降らせてください”
と祈り、雨は降ったけど首長と家族は太陽の光を浴びると
生きていけなくなった、という伝説があり、
この国には男のような人がたまに出るのだそうです。

だから8年前からここで1人暮らしをしているのだそうです。

キノは、この国には――、
あなた以外もう誰もいないことを知っていますか?
と訊ねましたが、男は信じませんでした。
信じない理由は、テレビ放送が止まっていないことでしたが、
録画じゃないのとエルメスは言いました。

男は他の証拠として、キノが首つり死体のところで拾ったのと同じ、
折りたたみ式の端末を操作し、
この機械を介して、この国に住む全ての人と文字情報の
“やり取り”ができるのだそうです。

巨大掲示板があり、男が≪暇人大集合≫というジャンルで、
キノとエルメスのことを話すと、一斉にそれに対するレスがつきました。

キノが他の旅人と同じように“この国には、お前以外もう誰も残っていない”
という嘘をまた言ったことを書き込むと、
それを否定する返事がいくつもきました。

これだけたくさんの人間とつながっていて、まだ僕が騙されると思う?
と男が言い、キノは、いいえ、と答えました。

キノは、首つり死体のところで拾った端末を男に渡し、
キノにも使えるようにしてもらいました。

この機械では、この国の中にいる人としかやり取りができず、
このやり取りがこの国でできるようになったのは、
4年前だと男は言いました。

キノが西の城門の前で機械を起動させると、
製造年月日が下に書いてあって、読むと6年前に作られているんだよね、
とエルメスは言いました。
ということは、その時からそのやり取りはできていたはずでした。

キノは男の書き込みを見て、キーを叩き、
ボクもさっき、西の城門で旅人に会った、あなたが嘘に騙されなかったと、
とてもとても、悔しそうだった、と書き込みしました。

もう誰もいなくなった後、≪でしょう!≫と男が返事をしました。


というあらすじなのですが、科学技術が発展することと、
迷信を信じるかどうかは全く別の問題なのでしょうね。

小説の中でははっきりとは書かれていませんが、
男が端末で会話していた相手は、
おそらくAI(人工知能)だったのだろうと思います。

もともとその端末は、国の中の人と文字のやり取りができる機械だったけど、
国を放棄する時に、取り残される男のために、
AIと会話できるように改造して、男に渡したのでしょう。

迷信は悲劇を生みますね。

(キノの旅11巻 口絵1 口絵2 1話 2話 3話 4話 5話 6話 7話 プロローグ あとがき

西尾維新「忍物語 第一話 しのぶマスタード」のネタバレ解説

忍物語 (講談社BOX)


阿良々木くんが国立曲直瀬(まなせ)大学の1年生になった時のお話です。

タイトルには「第一話」とありますが、
短編集ではなく、この「しのぶマスタード」だけで、長編1冊分です。

新キャラの貼交帰依(はりまぜ・きえ)はこの春、
直江津高校に入学した1年生で、女子バスケットボール部に入部し、
とてつもなく後悔していました。

偏差値の高い高校に入学したことも、
スパルタ式の部に入部したことも後悔していました。

超高校級のスーパースター、神原駿河は引退したのに、
その名残で、ハードな練習だけが後進に受け継がれ、
強くもないのに練習のキツい運動部となっていました。

貼交帰依はバスケット部をやめたがっていましたが、
バスケット部は連帯感が強く、連帯責任も重いので、
なかなかやめることができませんでした。

中間考査は酷い結果で、
期末考査の順位は3ケタを記録しかねませんでした。

暴漢に襲われて怪我をして退部したい、
と貼交帰依は現実逃避をしながら下校していました。

暴漢じゃなくても、曲がり角でクルマに轢かれるのでもいいし、
ピンポイントで飛行機が墜落してくれるのでもいい……、
わたしを楽にしてくれるならなんでもいい、
そう、たとえば妖怪変化でも――、と考えていると、
真正面から声をかけられました。

俺様は、デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター、
決死にして必死にして万死の吸血鬼だ、と名乗られました。

スーサイドマスターは、業物語第零話(1)「あせろらボナペティ」に登場した、
金髪金眼の、忍を吸血鬼化した吸血鬼です。

場面が変わり、阿良々木くんの視点になります。

阿良々木くんは臥煙伊豆湖さんに直江津総合病院に呼び出されました。

臥煙さんは、木乃伊(ミイラ)になった『患者』を
阿良々木くんに見せました。

見た目は完全に木乃伊でしたが、阿良々木くんが脈を調べると生きていました。
心臓は動いているけれど、血液は流れていなくて、空気が流れているだけでした。

貼交帰依ちゃんというのが、その木乃伊の名前だ、
と臥煙さんは言います。
貼交帰依は吸血鬼化に失敗したのだそうです。

吸血鬼化に失敗するのはよくあることで、
傷物語の時の阿良々木くんのように成功する方が珍しいのだそうです。

また、本能(ほんのう)あぶり、という直江津高校の2年生の女子も、
木乃伊になり入院していました。

道路に横たわる貼交の木乃伊が、通行人に発見されたのは一昨日のことで、
自宅の布団で木乃伊化した本能が母親に発見されたのが、
昨夜のことなのだそうです。

臥煙さんは、怪異現象を解決するために、
南極で武者修行中だった影縫余弦さんを呼び戻そうとしていましたが、
影縫さんは呪いのせいで道を歩くことができないので、数日かかりそうでした。

臥煙さんの携帯電話に着信があり、3人目の被害者が発見された、
やはり直江津高校の女子生徒だ、と臥煙さんは言いました。
展開が早いです。

阿良々木くんは、親から贈られた新車のフォルクスワーゲンのニュービートルの
助手席に臥煙さんを乗せ、発見現場に行きます。
第3の被害者と目される『彼女』が発見されたのは、
通学路脇のガードレールの向こう側にある、掘っ立て小屋の中でした。

阿良々木くんは木乃伊に近付き、脈を調べようとしましたが、
『彼女』が跳ね上がり、爪で阿良々木を引き千切りにきました。

阿良々木くんは木乃伊の両手首をつかんで動きを封じます。
臥煙さんは掘っ立て小屋の窓にかかっていた、
布きれのようなカーテンを開放し、日差しで木乃伊を照らし、動きを封じました。

入院していた2体の木乃伊は、封じるための策があれこれ施されていたから、
動かなかったのでした。

臥煙さんは木乃伊の脇に転がっていた鞄を探って、生徒手帳や財布を物色し、
このこの名前は、口本教実(くちもと・きょうみ)ちゃんというらしいね、
直江津高校の1年生だ、と言いました。

口本が阿良々木くんを襲いかかる際、
その手に握り込んでいた単語帳を落としていました。

その単語帳の1番最初の1枚に、『B777Q』と書かれていました。
口本の鞄の中にはエラリー・クイーンの著作が入っていました。

ダイイング・メッセージというかリビング・メッセージを、
阿良々木くんには解読できる心当たりがあり、単語帳を預かることにしました。

臥煙さんは口本のスマートフォンに紐づけられた、
ストラップを担当すると言いました。
レタリングされたアルファベットの『K』をかたどったアクセサリーが、
ふたつぶら下がっていました。
口本教実のイニシャルで、本能あぶりも同じレタリングの『A・H』のストラップを、
スマートフォンに括りつけていました。

直江津高校の女子生徒だという以外にも、被害者には共通点があり、
そのミッシング・リンクを臥煙さんは特定することにしました。

阿良々木くんは曲直瀬大学の暗号学の教室へ行きます。
暗号学は休講でしたが、大学でできた新しい友人、
食飼命日子(はむかい・めいこ)は教室にいました。

暗号マニアの命日子に『B777Q』の暗号を見せると、
命日子は単語帳の裏に『231』と書かれているのを見て、
一瞬でリビング・メッセージを解いてしまいました。

直江津総合病院へと戻り、臥煙さんに暗号を説明します。

『B』と『Q』は、小文字で書けば『b』と『q』で、
アラビア数字の『6』と『9』と同じ形です。

『B777Q』は『67779』と表現することができ、
『67/7/79』と3つの素数に分解できます。

『67』は『2』から数えて19番目の素数で、
『7』は4番目の素数で、『79』は22番目の素数です。

19番目のアルファベットは、『A』から数えて、『S』です。
4番目のアルファベットは『D』で、
22番目のアルファベットは『V』です。

裏面の『231』の順番に並べ替えると、
『D/V/S』となります。
命日子が解読できたのはここまででしたが、
略語は略語でも、これはイニシャルだよ、こよみん、
と臥煙さんは言いました。

たとえば――『デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター』
のような名前のイニシャルだ、と臥煙さんは言いました。

また、臥煙さんは木乃伊になった3人が同じ部活動、
女子バスケットボール部に所属していたことを突き止めていました。

阿良々木くんは神原に頼み、全部員のリストを入手することになりました。

また、手荷物を物色した結果、
3人目の木乃伊である口本教実が被害にあったのは、
昨日の未明のようだと判明していました。

吸血鬼は一昨日の夜に貼交帰依を襲い、その夜が明けないうちに、
口本教実の血を吸い、日中は休憩して、また夜が訪れたら、
本能あぶりの首に噛みついたようでした。

臥煙さんは夜に備えて眠り、阿良々木くんは神原の家に行きました。

門扉の前で、花物語に登場した神原の友人の
日傘星雨(ひがさ・せいう)を神原に紹介されます。

日傘はバスケット部員の名簿を掲げ、
これって、女子高生百人分の個人情報なんですよね、
私が血みどろのリスクを冒してまで、
阿良々木先輩にこのマル秘の名簿をお貸しするのは、
直江津高校女子バスケットボール部の現状を、
あなたなら打破してくれるんじゃないかと期待したからです、
と言いました。

神原や日傘が引退したあと、雰囲気が悪くなり、
連帯感は失われ――連帯責任だけが残ったのだそうです。
また、名簿に掲載されている100人のメンバーのうち、
5名が行方不明になっていました。

阿良々木くんは直江津総合病院に戻り、
既に活動中だった臥煙さんにそのことを報告します。

木乃伊化して発見された3人以外に行方不明になっているのは、
官宮鶚(かんぐう・みさご)と木石総和(きせき・そうわ)で、
共に2年生でした。

臥煙さんは阿良々木くんに、忍ちゃんを一晩、
押さえつけていて欲しい、とお願いしました。

家に帰った阿良々木くんは、
忍の好きなミスタードーナツをたくさん用意していましたが、
それが逆効果になり、お前様儂になんか隠しとらんか?
と怪しまれてしまいます。

阿良々木くんは、あの春休みに阿良々木くんが吸血鬼化に失敗していたら、
いったいどうなっていたんだ? と忍に訊ねました。

結論から言うと、
傾物語のときに見たゾンビのようになっていたのだそうです。

忍、お前を吸血鬼にした吸血鬼、
僕にとっては大本となる吸血鬼について、
そう言えば、まだ聞いたことがなかったな、
と阿良々木くんは言いました。

ついにそれを語るべきときが来たか、
決死にして必死にして万死の吸血鬼――
かつての儂の生みの親にして名付け親、
デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターについて
語るべきときが、と忍は言い、
阿良々木くんは臥煙さんの意図に気付きました。

スーサイドマスターはグルメな吸血鬼で、
いったんメニューをこれと決めたら、
もうそれ以外の食材は口にしないというような頑固さの持ち主じゃった、
と忍は言いました。

ドアをノックする音が聞こえ、ドアを開けても廊下は無人でした。
窓から斧乃木余接が登場し、帰宅しましたが、
どうやってドアをノックしたのか、という謎が残ってしまいましたw

余接はお土産と言い、北白蛇神社のおみくじを阿良々木くんに渡します。

おみくじには、
待人――自分カラ会イニイキマショウ!
と書かれていて、阿良々木くんはそれを、
八九寺からの呼び出しだと解釈し、
助手席のチャイルドシートに忍を乗せ、北白蛇神社に行きました。

登頂すると、八九寺が白装束で滝に打たれ修練を積んでいました。
この神社には滝なんかなかったのですが、神の力を乱用したみたいですw

実は阿良々木さんに、紹介したい幼.女がいるんです、
と八九寺は言い、本殿の引き戸を開けます。

そこに服を着ていないスーサイドマスターの木乃伊がありました。
スーサイドマスターは幼.女の姿になっていましたが、
忍はそれがスーサイドマスターだと気付きました。

忍によると、それは乾眠(かんみん)なのだそうです。

八九寺は、このかたを回復させるためのお薬を調達していただきたいのですよ、
と言いました。
終物語5話「まよいヘル」のときのように、
地獄に落ちて、血の池地獄で調達してきてほしいのだそうです。

チャイルドシートに座らされた復讐をしようと、
忍はノリノリで、妖刀『心渡』を取り出し、
一の奥義・『鏡花水月』
二の奥義・『花鳥風月』
三の奥義・『百花繚乱』
四の奥義・『柳緑花紅』
五の奥義・『飛花落葉』
六の奥義・『錦上添花』
七の奥義・『落花狼藉』、
そして7つの奥義を同時に繰り出す、生死流の最終奥義、
『七花八裂』で、阿良々木くんを八つ裂きにしました。

しかし阿良々木くんは、地獄ではなく天国に昇ってしまいました。

そこで、鬼のお面を被ったハ○カの美女に話しかけられます。

その美女は、「うつくし姫」に登場した、
人間だった頃の忍野忍、アセロラ姫でした。
阿良々木くんは続・終物語で、アセロラ姫に謁見したことがありました。

「まよいヘル」で阿良々木くんが吸血鬼性から分離されて地獄に落ちたように、
アセロラ姫は、600年前、
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと化したとき、
そのとき『死んだ』美しい魂が、分離されて天国に昇ったのでした。

周囲の風景はアセロラ姫の故郷を模しているのだそうです。

アセロラ姫は、死んでおくべきでした、スーサイドマスターと出会う前に、
と言いました。
そのせいで、わたくしはスーサイドマスターに、
重い重い業を背負わせてしまいました、
とアセロラ姫は、血を吸わせたことを後悔していました。

阿良々木くんが地獄に落ちずに昇天してしまったのは、
アセロラ姫がスーサイドマスターを救うために引き上げたからでした。

血の池地獄で飲み薬を掬ってきても、あのかたはそれを口にしないでしょう、
とアセロラ姫は主張します。
スーサイドマスターはグルメで、自分で殺した命しか食べないからです。

阿良々木くんはアセロラ姫にキスをされ、
口移しでアセロラ姫の唾液を口のなかに溜め込み、生き返りました。

忍と八九寺は泣きわめき、阿良々木くんに抱きつきました。

阿良々木くんが蘇生しないので、忍と八九寺は余接に助けを求め、
余接が臥煙さんに連絡し、臥煙さんも駆けつけて、
妖刀『夢渡』で阿良々木くんを生き返らせてくれたのだそうです。

封印されている立場である忍では自身と阿良々木くんの間にある
ペアリングを切れなかったから、
中途半端な臨死体験をしてしまったのだそうです。

阿良々木くんはスーサイドマスターに口づけして、
アセロラ姫の唾液を口移ししました。

……大学編、ヤバいですね。
高校編より変○度が増しています……。

木乃伊がみるみる、復元し、からからだった骨と皮が、
瑞々しく潤った、肌へと戻っていき、6歳くらいの見た目になりました。

水分が脳に行き渡るまでには、丸一日はかからないくらいでした。

臥煙さんは余接からアプローチを受けるまでに、
第4の女子高生の木乃伊を発見していました。

発見されたのは官宮鶚で、発見場所は貯水湖の底でした。
水底に重りをつけて沈められていました。

官宮鶚の防水の携帯電話には『820/280/610/160』
と暗号が残されていました。

その後、八九寺がスーサイドマスターと出会ったときの状況を説明します。

今から1週間前、町を保護する結界を通過する怪異を、
八九寺は気取りました。

この結界は、かつて忍野扇が、
忍野メメや影縫をはじき出すために張っていた結界の、再利用です。

6歳児の見た目のスーサイドマスターは境内に着地するにあたって、
八九寺を避けたせいで着地に失敗し、木っ端微塵の粉々になりましたが、
吸血鬼なので、すぐに復活しました。

スーサイドマスターは、
かつての友であるキスショットを訪ねてきたのだそうです。

八九寺は道を教え、忍の現状にはあえて触れず、
スーサイドマスターを送り出しました。

そして昨日、無残にもこの山に埋められていた、
木乃伊化したスーサイドマスターを、八九寺は発見しました。

女子高生連続木乃伊化事件の犯人は、
スーサイドマスターに罪をなすりつけようとしているようでした。

こやつが犯人なわけがないんじゃ、今のこやつは、
儂という食材以外は、食べられないんじゃから、と忍は言いました。
スーサイドマスターは、おいしい食材しか食べられません。

スーサイドマスターの元々の姿は、壮絶で妖.艶な熟.女でしたが、
アセロラ姫を食べようとして食べられず、幾度となく餓死し、
みるみる弱体化――幼女化していったのだそうです。

もしも明朝に至っても、一連の事件が解決を見ていなければ、
影縫が間に合ってしまいます。

もしも有名なスーサイドマスターが関わっていると事前にわかっていたら、
私はあんな生きた爆弾を呼び戻したりはしなかったよ、
と臥煙さんは嘆きました。

暗号解読のために阿良々木くんと曲直瀬大学に向かう途中、
忍は阿良々木くんに、こう言いました。
スーサイドマスターに事情聴取する際、
600年ぶりに再会する昔のツレに対して見栄を張りたいから、
今夜だけは儂がお前様の奴.隷なんじゃなくって、
お前様が儂の奴.隷って設定にしておいてくれんかの? と。

怪異の王の『城砦』として、神原の屋敷を貸してもらうことにしました。
神原の祖父と祖母は旅行中です。

阿良々木くんは言語学の講義の教室に行き、命日子に暗号を見せます。
解読すると、今回は『F/C』になりました。

直江津総合病院に行った阿良々木くんは、臥煙さんにそのことを報告します。

『820/280/610/160』の『0』を、
『度』を表す『°』と解釈すると、
『82°/28°/61°/16°』となります。
昨日の最高気温と最低気温を、摂氏と華氏、両方の表記で記したものでした。

しかし、バスケット部には『F/C』のイニシャルの女子はいませんでした。

臥煙さんは官宮鶚の携帯電話の中身を調べ、
どろどろした人間関係を見せられましたが、
大した成果もなく、心が折れそうになっていました。
ちなみに、官宮鶚も『M・K』のストラップをつけていました。

影縫にはスーサイドマスターとちょっとした縁があり、
私怨で動きかねない、ということを臥煙さんは心配していました。

阿良々木くんは、FCはファンクラブではないか、と考え、
神原駿河の非公式ファンクラブがあったのを思い出しました。
阿良々木くんに絡んできたので解散に追い込みましたが。

阿良々木くんは夜に備えて寝るために家に帰ります。
余接に、影縫が帰ってくることを伝えようとしますが、
余接はいませんでした。

火憐に、ファンクラブが活動を再開したのか訊ねると、
そういうのはないと思うぜ、と言われました。

場面が変わり、阿良々木くんは、
目隠しと手枷足枷をされたスーサイドマスターを
チャイルドシートに縛り付け、八九寺を後部座席に乗せて、
神原の家に向かいます。

阿良々木くんの携帯電話に臥煙さんから着信があり、
八九寺が出ました。
バスケット部の残るメンバー全員の無事が確認されたのだそうです。
無事ということは、無罪という意味でもあり、
バスケット部の中に吸血鬼なんていないということがはっきりしました。

神原の家に着くと、神原は、
今夜は日傘の家で、パジャマパーティを開催することにしたよ、
と言い、出かけていきました。

太陽が半分くらい沈んだタイミングで、
臥煙さんはスーサイドマスターに御神酒を浴びせかけ、
呪文を詠唱しました。

スーサイドマスターが目覚め、封印が解け、
忍を見て「は! はは! ははは! はははは!(以下略)」
と高らかに笑いました。

忍は見栄を張るのをやめ、
異国の言葉でスーサイドマスターと和気藹々と話し始めました。

忍とスーサイドマスターを八九寺に見ていてもらい、
阿良々木くんは臥煙さんに神原の部屋に連れて行かれます。

臥煙さんは、悪いニュースがふたつある、
目下行方不明の女子バスケットボール部員の最後のひとり、
木石総和ちゃんの、所持品が発見された、と言いました。

発見されたのは、女子更衣室のロッカーの中から、
制服とユニフォームが発見されたのだそうです。

木石ちゃんに限って隠蔽工作をした理由を推察すると、
結構嫌な結論に辿り着いちゃうんだよ、
木乃伊の所持品から個人を特定しているという捜査情報が、
相手にバレたということだから、と臥煙さんは言いました。

また、4体の木乃伊のDNAを分析し、
同一の吸血鬼の眷属だと判明し、また、
その吸血鬼遺伝子がスーサイドマスターの遺伝子と、
ほぼほぼ一致したのだそうです。

その後、忍が、スーサイドマスターが、お前様と話がしたいそうじゃ、
と阿良々木くんを呼びに来ました。

俺様の出国を手伝ってくれねえか?
とスーサイドマスターは言いました。

千年生きたこの俺様も、
あんな死に方をしたのは覚えている限り初めてだったな、
食中毒だぜ、変なもん食った、ええと、日本語では、
女子高生って言うんだっけ、あの食材?
とスーサイドマスターは言いました。

1週間前にこの町にやってきたスーサイドマスターは、
結界がスーサイドマスターを脅威と見なさず、
まるっきり反応しなかったことに愕然としました。

また、幼い神様である八九寺よりも、自分の方が押さないと自覚し、
600年ぶりに再会する忍に見栄を張りたくなったのだそうです。

だから、現地の食材に手を出したのだそうです。

ドレスアップのためとは言え、選別するような真似をしたら、
その食材が『うつくし姫』に並んでしまうことになるので、
選別せずに『これは食べたうちに入らないから』なんていうノリで、
女子高生に食らいつき、罰が当たって女子高生の毒にあたって、
死んでしまったのだそうです。

スーサイドマスターは吸血に失敗して木乃伊になったが、
女子高生は吸血鬼化に成功し、
吸血鬼が途中から入れ替わっていたのだと、
臥煙さんは解説しました。

そうなると、行方不明の木石総和が吸血鬼化に成功し、
夜の闇にまぎれて、人間だった頃の仲間に復讐しているのかも、
と阿良々木くんは考えました。

実際に被害にあった時系列は、
第ゼロの被害者――木石総和、
第0・5の被害者――スーサイドマスター
第1の被害者――貼交帰依
第2の被害者――口本教実、
第3の被害者――本能あぶり
第4の被害者――官宮鶚
ということになります。

阿良々木くんは、やばいでやんす、臥煙さん!
神原が今夜、日傘ちゃんの家で同級生を集めて、
パジャマパーティを開催しています!
と言いました。

神原は現在の部活動のありかたの元凶ともいうべき黄金時代、
格好の獲物であり――メインディッシュです。

八九寺とスーサイドマスターを神原の家に残し、
阿良々木くんは日傘の家に急行しました。
臥煙さんは阿良々木くんのニュービードルを拝借して、
別角度からのアプローチを探ってみます。

日傘の家に行くと、神原も日傘も無事で、
阿良々木くんは女子高生達から大人気でした。
神原がみんなに自慢していたせいですw

日傘の家は母子家庭で、今も日傘の母親は仕事に出てくれていました。
パジャマパーティのドレスコードは守っていただかないと、
と日傘に言われ、
阿良々木くんは誰のものかもわからないシルクのパジャマを着せられ、
17歳の春休みから伸ばしっぱなしだった髪を、
ツインテイルに結われました。

神原と日傘以外のメンバー、樟脳水戸乃(しょうのうみとの)、
真横礼香(まよこれいか)、海川(うみかわ)にかわ、
シルビア・シビア、大城誠子(おおきせいこ)を紹介してもらいます。

今回、一気に新キャラが増えましたが、
果たして彼女たちは今後も登場するのでしょうか……。

木石総和のパーソナリティを訊ねると、自分に厳しい子で、
仮想敵がいるとやる気を出すタイプだと言われました。

貼交帰依、本能あぶり、口本教実、官宮鶚、木石総和、
この5人の共通点を訊ねると、共通点というのはなく、
一緒の試合に出たこともないと言われました。

木石はまだしも、貼交や口本は運動が苦手で、
試合に出られるレベルじゃなかったのだそうです。

共通点、仲間外れ、間違い探しと阿良々木くんは考え、
僕達の捜査情報はそうやって漏れたのか――と考えました。

日傘の自転車を借り、阿良々木くんは神原の家に戻ります。

その頃、「犯人は神原の家でスーサイドマスターと話をしていました。

犯人がスーサイドマスターを埋めたのは、埋葬のつもりだったのだそうです。

実は、スーサイドマスターは犯人に道を訊こうとしただけでしたが、
犯人はスーサイドマスターにひれ伏して、
『ワタシを吸血鬼にしてください』と懇願したのでした。

阿良々木くんは、食の問題について、ぐだぐだ考えていましたが、
阿良々木くんの想定には、食われる側が、
食われることを望んでいるケースが、抜け落ちている、
という意味のことをスーサイドマスターは言いました。

犯人は懇願して吸血鬼になったものの、そのことに失望、絶望していました。

スーサイドマスターは、貴様がもしも人間に戻りたいと願うのであれば、
吸血主である俺の血をごくごく吸えば、今ならばまだ、
人間に戻れる、と言いました。
逆に、血を吸うだけでなく、むしゃくしゃ食らい尽くせば、
あるじ殺しの吸血鬼として、今以上のパワーを獲得することができます。

このままだと、何をしようと、何をされまいと、
スーサイドマスターは拒食症で死にます。

だから、俺様が自殺したいと思う前に、殺して欲しいんだぜ、
とスーサイドマスターは言いました。

犯人はスーサイドマスターを殺すことにし、名前を名乗ろうとします。


その瞬間、阿良々木くんが「貼交帰依、と犯人の名前を背後から呼びました。
犯人は木石総和ではなく、貼交帰依だったのでした。

木乃伊化した人間は、からからに干からびて、
人相も風体も一様になります。
物語冒頭で、阿良々木くんが直江津総合病院で見た第1の木乃伊は、
貼交が自分の制服や鞄や携帯電話を握らせた木石の木乃伊だったのでした。

阿良々木くんは、最初に発見された『貼交の木乃伊』の携帯電話だけ、
ストラップをつけていなかったことから、
携帯電話のアプリで音や映像を飛ばし、
木石の携帯電話で受信して、捜査の内部情報を知ったのではないか、
と推理していました。

『D/V/S』の暗号を残した時点で、アプリを仕掛けていないとできないので、
入れ替えられた木乃伊が貼交帰依のものだということは、ほぼ特定されました。

しかし、それなら犯人は神原が日傘の家でパジャマパーティを開いていることを
知らないはずなので、神原を狙う犯人は、
日傘の家ではなく神原の家に現れると予想し、戻ったのでした。

貼交は阿良々木くんに、わたし達が、きゃっきゃと青春しているように見えますか?
悩みなんて何もない、女子高生に見えますか?
青春の青は、思っているよりも濃いんですよ、
暗闇みたいなダークブルーなんです、と言いました。

濃かろうと薄かろうと、青春なんて、もうまっぴら――わたしは、
赤い闇を選んだのだから、わたしが間違っていたわ、
だから――もっと間違えましょう、
今度こそ――主役を食ってやるわ!
と貼交は言い、阿良々木くんに襲いかかろうとしました。

しかし、真上からミサイルのように影縫余弦が降ってきて、
膝で、吸血鬼の頭を踏み潰しました。
余接が『例外の方が多い規則』で影縫を飛ばしたのでした。

影縫はスーサイドマスターが幼女化しているのを見て、
今日のところは、見逃したるしかなさそうやな、と言いました。


後日談です。
阿良々木くんは「大学のカフェテリアで、戦場ヶ原さんに今回の事件を話します。

貼交はその後、病院送りにした4人を復調させるために、特赦されました。
貼交を吸血鬼から人間に戻さないと、その4人が、永遠に吸血鬼のままだからです。

傷物語の頃は、吸血鬼になったら、人間に戻るためには、
親殺しをしないといけなかったのですが、
『地獄に落ちて生き返る』という方法で、貼交を人間に戻しました。
それは高校時代の阿良々木くんの功績、怪我の功名と言えました。

スーサイドマスターは国外追放、強制送還というところに落ち着き、
臥煙さんが直々に送りました。

スーサイドマスターを木乃伊から戻すときに、『お前にとって、人間って何だ?』
と阿良々木くんは忍に問いかけていましたが、忍は、
モンスターじゃろ、と遅い返答をしました。

こよみんは将来、刑事とか向いてるんじゃないかしら?
と戦場ヶ原さんは言いましたが、
刑事なんてまっぴら御免だぜ、と阿良々木くんは答えました。
しかし、結物語に登場した阿良々木くんは、刑事になっていました。

ところで、貼交だけがストラップをつけていなかったのではないか、
という阿良々木くんの仮説は、完全に的外れで、
個人ロッカーから発見された木石の携帯電話にも、
イニシャルのストラップはついていなかったのだそうです。

阿良々木暦はいまだ、モラトリアムの真っ最中だった、
という締めの文で、この物語は終わります。


というあらすじなのですが、面白かったです。

大学生になっても、阿良々木くんはやっぱり阿良々木くんで、安心しました。

星新一「初雪」のネタバレ解説

30歳くらいの男は、
妻に、あなた、朝よ、起きてみなさい、と起こされました。

男は美しい外見でしたが、妻は男より10ぐらい年上で、
倍ぐらいふとり、あまり美人とは呼びようがありませんでした。

男は昔、デパートの地階倉庫の係で、
宿直だった晩に現在の妻を誘い、
あげくに結婚することになってしまいました。

男が組み立てたプラスチック製の組立住宅のなかに住んでいます。

俺と結婚できたことに感謝しているんだろうな、
と男が言うと、
それは感謝しているわよ、あなたはいい人だし、
浮気はしないし……、と妻は言いました。

雪がつもっていると妻に言われ、男は飛び起き、
窓越しに外を眺めました。

男は、雪はいいなあ、とつぶやきました。

妻は、きょうは部屋の整理でもしましょうよ、と言いました。

そのいまいましいカラーテレビなんか捨ててしまったらどうだ、
と男が言うと、妻は反対し、
壁の銃は捨てちゃうわよ、もう必要ないじゃないの、
と言いました。

男は雪景色に気をうばわれていました。
しかし、陽は高くのぼり、日光が強くなってきて、
雪はとけていきました。

とけないでくれ、とけないでくれ……と男はつぶやきましたが、
昼ちかくになると、白さはどこからも消えてしまい、
数カ月まえに突発した核戦争によって、
なにもかもがなぎ倒されてしまった、
みにくい大地だけになってしまいました。

ビルの破片、灰、骨のかけら。
あしたになったら、彼はまたその上を歩いて、
生き残った自分たち2人のために、
食料や品物を取りに行かなければなりません。
かつてのなつかしい勤め先、デパートの地階の倉庫のなかに……。


というあらすじなのですが、男が現在の妻を誘って、
デパートの地階の倉庫の宿直をしていた夜に、
核戦争が起きて男と妻だけが生き残った、
というオチですね。

何も映らないからカラーテレビはいらないし、
誰もいないから銃も必要ないのでした。

ただ、デパートの地階にいた程度のことで助かったのなら、
探せばまだ他の生き残りもいそうな気がしますけどね。

星新一「タバコ」のネタバレ解説

大晦日の夜、ケイ氏は元日からは禁煙をしようと決心しました。
妻にその決心を表明し、必ず禁煙してみせる、
あしたからは吸わない、と言い、眠りました

翌日の元旦の朝。
ケイ氏は決心が少しぐらつき、禁煙するかしないかは、
もう1本吸いながら改めて検討することにしよう、
と考えました。

しかし、枕もとをさぐりますが、眠る前にあったはずの灰皿、
タバコの箱、ライターがなくなっていました。

ケイ氏は妻が隠したのだと思い、食事の後、
タバコを吸わせてくれと頼みます。

しかし妻は、タバコですって……なによ、それ、
とふしぎな顔をしました。

ケイ氏が煙草の説明をしても、妻は首を傾げ、
聞いたこともないわ、と言いました。

ケイ氏は時どき庭に捨てていた吸殻をさがしますが、
それも見つかりませんでした。

タバコを買いに出かけますが、
いつも買うタバコ屋がなくなっていました。
店そのものはなくなっていませんでしたが、
タバコ屋を示す看板が消えていました。

もう1軒のタバコ屋も店じまいしていて、
駅の売店にもタバコの箱が並べられていませんでした。

あたりを見まわしても、タバコを吸っている者は1人もいません。
通路におかれている、大きい灰皿もなくなっていました。

タバコを買えずに家に戻ったケイ氏は、
エンピツをかみ、足ぶみをし、机をたたき、
歯ぎしりをし、涙のために目がかすんできました。

手の甲で涙をぬぐうと、「机のはじにタバコの箱とマッチが
あらわれました。
タバコを吸ったケイ氏は、
床の上に見なれない薬びんがころがっているのに気がつきました。

薬びんには、普通の人が飲むと煙草に関する記憶を消し、
ニコチン中毒者に対してはタバコに関する近くを12時間麻痺させる
薬だと書かれていました。
つぎつぎと服用して、禁煙を達成するための薬です。

ケイ氏はこの薬を昨夜妻と1錠ずつ飲んだのでした。

おい、タバコがあったぞ、と妻に声をかけると、
なによ、そんなことで大声をあげたりして、と妻は言いました。


というあらすじなのですが、これは「役に立たない薬ですね……。

ニコチン依存症の人は、ニコチンが切れるとストレスが溜まり、
イライラします。
タバコを吸ってニコチンを摂取すると、そのイライラが解消されるので、
タバコはストレス解消の役に立つと思っています。

しかし、それは誤解で、タバコを吸うことで解消できるストレスは、
「タバコを吸えないストレス」だけです。

タバコを吸っても、
人間関係や仕事や勉強などで溜まったストレスを解消することはできません。

その一方で、タバコを吸うことで身体に悪影響を及ぼし、
それが原因でさらにストレスを溜めることになるので、
まさに百害あって一利なしです。

1度ニコチン依存症になると、タバコの奴.隷になってしまい、
やめるのが非常に難しいので、
「人生で最初の1本」を吸わないようにするのが大事ですね。

余談ですが、星新一さんも喫煙者だったそうです。

星新一「贈り主」のネタバレ解説

しずかな海のそばの無電研究所のアンテナが、
天国からの声とも、
地獄からの通信とも思える電波をとらえました。

発信地は不明でした。

所長が応答をこころみると、相手は、
動物園から凶暴な動物、猛獣が逃げたのだと言いました。
その猛獣は凶暴であるばかりでなく、少しばかり知能があり、
正視できないほど、姿が醜いのだそうです。

すぐにつかまえましたが、こんな事件が二度と起こらないように、
猛獣をひとまとめにして、研究所の近くの海岸に送るということを、
相手は言いました。

警察と軍隊が収集され、付近の海岸一帯を調べます。

海浜にいた数人の男女は、うつろな目をして、
波うちぎわを指さしました。
そこには、見なれない大きな金属製の箱がありました。

警官たちは箱に接近しましたが、箱のふたはすでに開き、
なかはからっぽでした。

海浜にいた人たちを記憶を失っていましたが、
収容して手当てをしました。

やがて、収容された連中の記憶は、いくらか回復し、
みなは口をそろえて、「わたしたちが気がついた時は、
あの箱のなかで、出てみると、海岸でした、と言いました。

通信の相手が送りつけてきた醜い怪物とは、
人間のことだったのでした。

収容された連中の1人は、わたしたちは、
檻のなかで生活させられていたような気がします、と言いました。
過去へ送られてきたようです。
そう結論を下せるのは、
こんなふうにあつかわれていた記憶があるからなのだそうです。

1万年ほどむかしに栄えた古代生物、
かつて、心ない者の手で狩りたてられ、
いまや絶滅寸前にある……、とその人は言いました。


というあらすじなのですが、「1万年後の未来では、
人類は絶滅寸前で、別の生き物が地球を支配していて、
その生き物が人類を過去に送った
」というオチですね。

今となっては漫画や映画で使い古されてしまいましたが、
このショート・ショートが発表された1960年代当時は、
非常に斬新で画期的なオチだったのだろうと思います。

星新一「運の悪い男」のネタバレ解説

42歳のK氏は野心家で、同情心があり、良心的で、
正義感にも富んでいましたが、
新しい事業に手を出して失敗し、友人の保証人になり、
借金で首が回らなくなってしまいました。

K氏はそれを、運の悪いせいだと思っていました。

妻は借金の山にはがまんできないと実家に帰ってしまい、
夕ぐれ近いころ、
K氏は小さな家のなかでぼんやりとしていました。

そこへ強盗を名乗る男がやってきて、
ポケットから拳銃を出しました

K氏は思わず「ばかばかしい」と笑い声をあげましたが、
強盗はオモチャの拳銃でK氏の頭をなぐり、
K氏は気を失いました。

強盗は小さな郵便局でお金をおどし取り、
一時的なかくれ家としてここの家にねらいをつけたのでした。

強盗はK氏と顔が似ていたので、
K氏の服を着て、K氏になりすますことにします。

酒屋の集金がやってくると、
強盗はK氏になりすましてお金をはらいました。

しかし、こんどは借金取りの体格のいい男がやってきて、
きょう、お金を返済していただけるお約束でした、と言われます。

借用証書の金額は、
郵便局強盗をして奪ってきた金でたりるかどうかでした。

K氏が用意していた返済のためのお金をさがしますが、
きょう払うというのは出まかせの言いわけだったので、
お金は見つかりませんでした。

こんどは、目つきの鋭い2人の男が家にやってきます。
私服の刑事にちがいない、と強盗は思いました。

Kさんは、例の事件の大切な証人でしたね、と言われ、
ありのままに証言するつもりです、と強盗は答えました。

しかし、2人の男は密輸事件の犯罪者の仲間で、
K氏に証言をされると困る立場の人間でした。
2人の男は強盗を、「用意してきた麻酔薬をしませた布で眠らせ、
自動車につみこみました。

しかし、強盗が起こした郵便局強盗事件の捜査で警戒網が張られていたので、
2人の男は警戒網にひかかってしまいました。

あけ方ちかくなり、K氏は押入れのなかで意識をとりもどし、
ひどい目にあったものだ、おれはなんという、
不運な男だろう、と言ったのでした。


というあらすじなのですが、タイトルの「運の悪い男」は、
K氏ではなく強盗だった」というオチですね。

東野圭吾「危険なビーナス」のネタバレ解説

危険なビーナス


主人公の手島伯郎(てしま・はくろう)は、38歳前後の獣医です。

伯郎が院長代理をしている池田動物病院に、
矢神楓(やがみ・かえで)と名乗る女性から電話がありました。

楓は、伯郎の弟である明人(あきと)の妻だと言いましたが、
伯郎は明人が結婚していたことすら知りませんでした。
楓は、明人が行方不明で、もう何日も帰らないと言いました。

ここで回想です。

伯郎の父親は手島一清(かずきよ)という売れない画家で、
手島家の生活を支えていたのは看護師だった母親の禎子(ていこ)でした。

小さな借家の2階で一清が不思議な絵を描いていた記憶がありましたが、
その絵が完成することはありませんでした。
一清は伯郎が2歳の頃に脳腫瘍を発症し、伯郎が5歳の冬に亡くなりました。
一清はそれまで静物画を得意としていたはずなのに、
脳腫瘍を発症してから2年ほどが経った頃に、
伯郎の記憶にある抽象画を描き始めました。

禎子が働いている間、伯郎は近所に住む禎子の妹、順子の家に預けられました。
順子の夫である健三は大学の数学の教授でした。

一清が亡くなってから3年後、
伯郎は禎子の交際相手である矢神康治(やすはる)と食事をしました。
まだ30代半ばだった禎子は康治と結婚してもいいかという意味のことを言い、
伯郎は、いいよ、と答えました。

それからしばらくして、伯郎は康治の家である豪邸に連れて行かれました。

禎子が康治の両親に挨拶してくる間、伯郎は別室で待たされます。
その部屋に、勇磨という伯郎より2、3歳上の少年がやってきて、
やっぱり貧乏人だな、無理して一張羅を着てきたんだろ、
そういうのがだせえんだよ、貧乏人は、と言われました。
伯郎は、この日初めて、矢神家が大金持ちであることを知りました。

康治が戻ってくると、勇磨は部屋から出て行きました。

康治に別の部屋に連れて行かれ、康治の両親と引き合わされました。

それから2ヶ月後、伯郎は康治が買ったマンションに引っ越すことになり、
転校し、学校帰りに叔母の順子の家に寄ることができなくなりました。

それから3ヶ月後、禎子は来年、伯郎に弟か妹ができると言いました。

伯郎が9歳の時、異父弟の明人が生まれました。

康治の父親である康之介は、明人を可愛がり、
早い時期から高い教育を受けさせ、跡継ぎとして育てました。

ある日、禎子から中学受験をしてほしいと言われましたが、
伯郎は断り、公立中学校に進学しました。
それから数ヶ月後、養子縁組をして正式に矢神家の人間になる気はないか、
と禎子は言いました。

回想終わりです。

伯郎は、明人の妻の楓と待ち合わせをしました。
楓は茶色のカーリーヘアの美人でした。

明人は今、IT関係の仕事をしていて、半年ぐらい前から先月まで、
楓と明人はシアトルにいたのだそうです。

明人は4日前、帰国して2日目に行方不明になったのだそうです。
急に帰国したのは、明人の父、つまり康治がもう保たないから、
父親の死に目に会いたいなら帰ってこいと言われたからなのだそうです。

帰国してお見舞いに行こうと思ったその日に、
『ちょっとしたミッションがあるので出かけます。
もしかするとしばらく戻らないかもしれない。でも心配しなくていいです。
その場合、申し訳ないけど父の見舞いは君一人で行ってください』
と書き置きを残して、明人は姿を消したのだそうです。
携帯電話も繋がらず、メールを書いても応答なしでした。

2日間待ったが、明人からの連絡はなく、楓は地元の警察に届け出ましたが、
書き置きがあるというだけで事件性はないと判断されたのだそうです。

楓は、「お義兄さま」にも一緒にお見舞いに行ってほしいと言いました。
伯郎は嫌がりましたが、お見舞いに行っていないことを楓に責められ、
大学まで進めたのだって、獣医さんになれたのだって、
お義父様のおかげのはずです、恩返しって言葉、知らないんですか?
と言い、伯郎は承諾しました。

翌日の午後、楓は動物病院に来ました。

楓は、明人と会う前はJALのCAをしていて、
ステイ先だったバンクーバーにあるお寿司屋さんで、
カウンターで隣同士になり、出会ったのだそうです。
明人から、仕事の補佐をしてくれないかと頼まれ、
去年の3月にCAの仕事を辞めたのだそうです。

伯郎の車で、矢神総合病院に向かう途中、康治とは10年ほど会ってないと伯郎は言いました。
伯郎は康治の籍には入っていなくて、20歳になって間もなく、
本当の父親である手島姓を選んだ、という話をしました。

母親の禎子は16年前に亡くなりました。
10年前に康治と会ったのは、禎子の7回忌があったからでした。

再び回想です。
9つ下の異父弟、明人は極めて高い知能を備えていました。
この子は天才だね、と誰もが言いました。
ただ康治は、天才なんかじゃないよ、明人はせいぜい秀才だろう、
それでいいんだ、天才なんか、幸せになれないからな、と言いました。

公立高校に通っていた伯郎は焦りに似た感情を感じ、獣医になりたいと禎子に言いました。
神奈川県の大学に進学し、学生専用のアパートに引っ越しました。

4年生になり、解剖などの実践的な講義が始まった頃、康治から電話があり、
禎子が亡くなったと教えられました。
禎子の実家がある小泉の家の風呂場で頭を打ち、
そのまま気を失って湯船に……という事故だったのだそうです。

禎子は昨日、ちょっと荷物の整理をしてくる、
遅くなったら泊まってくると言って小泉の家に行きましたが、
今日になっても連絡がつかないので順子に様子を見に行ってもらったところ、
風呂場で禎子を発見したのだそうです。

警察の説明では、湯船の中で足を滑らせ、後頭部を強打して気を失い、
そのまま水に沈んだ可能性が高いのだそうです。
玄関の鍵はかかっていて、窓もすべて内側から施錠されていました。

中学1年生の明人と禎子が安置されている部屋で2人になると、
玄関の鍵なんて作ればいいんだ、合い鍵なんて、簡単に作れる、と明人は言いました。

回想終わりです。

伯郎と楓は矢神総合病院に行き、康治の妹の波恵(なみえ)と会いました。

楓は、明人が失踪していることは伏せ、新しいビジネスを開発中で、
どうしてもシアトルを離れられないと嘘をつきました。
去年の暮れにアメリカで結婚式を挙げたが、入籍はしていないという話をします。

康治は病気のせいで殆ど動くことができず、まともに話をすることもできませんでした。
しかし、伯郎が康治の顔に耳を近づけると、
「明人に、背負わなくていいと……」と言い、寝てしまいました。

矢神家の親戚が集まる親睦会で、遺産相続についても話し合われることになり、
明人の代理として伯郎にも出席してほしい、と楓と波恵の両方から頼まれます。
伯郎は嫌がりましたが、遺産の中には、禎子の遺品も含まれていると言われ、
出席することにしました。

見舞いの後、伯郎は港区にある明人のマンションに案内してもらいます。
非常に豪華な部屋で、後で分かりますが、家賃は120万円でした。

明人の部屋で小泉の家の写真を見つけ、写真立てを手に取ると、中に小泉の家の鍵がありました。

また、神経科医だった康治の元患者のサヴァン症候群の人が作った曲を聴きました。

明人によれば、一清の描いた絵を見た康治は、
これを描いた画家はサヴァン症候群ではないかと思い、画家のことを調べ、
画家の未亡人である禎子と出会ったのだそうです。

場面が変わり、また動物病院に楓がやってきます。
電車で移動中に、楓は友達が飼っていたミニブタが可愛かったから
自分も飼いたいという話をしました。
しかし伯郎は、その友達の家の広さがワンルームで、
最後にミニブタを見たのが2年くらい前で、最近、
その友達からミニブタの話を聞いていないと知ると、捨てたんだろう、と言いました。
ミニブタは1年で80キロぐらいになり、100キロを超えるものもあるのだそうです。

目的地である、伯郎の叔母の兼岩順子と憲三の家に到着します。
小学生だった明人は憲三の部屋で数学関連の資料や本を読み、
数学を勉強していた、という話を憲三はしました。

順子は、伯郎が見たがると思い、10畳ほどの和室に一清の絵をずらりと並べておきました。
しかし、伯郎が最後に描いていた、幾何学模様のような絵はありませんでした。
憲三は大学の数学教授を退職した後、リーマン予想について研究を続けているのだそうです。

楓は、今月7日に、明人が順子と憲三の家に電話したが留守だったみたいだ、という話をしました。

午後9時に兼岩家を辞去した後、今月7日といえば明人が行方をくらました日じゃないか、
あれはアリバイ確認だ、と伯郎は楓を責めました。

場面が変わり、伯郎が午後1時に池田動物病院でシマリスの診察をしているところに、
波恵から電話がかかってきます。
明日、親睦会があるので正午に来て欲しいという内容でした。

電話の後、院長の池田幸義(ゆきよし)老人がやってきて、
例の話をしたい、考えてくれたかね、と言いました。

池田は伯郎に、自分の養子になって池田動物病院を継いで欲しいと話をしていましたが、
伯郎はまだ結論が出ていませんでした。

通称として手島を使ったらどうだとか、
病院の名前を手島動物病院と変えてもいいと池田は言いますが、
無関係な名称に変更するのは筋が通りません、と伯郎は断りました。

動物看護師の蔭山元美(かげやま・もとみ)は、
私、どちらでもいいですよ、池田動物病院でも、手島動物病院でも、と言いました。

翌日、伯郎は明人のマンションに楓を迎えに行きました。
矢神邸に向かう途中、明人の失踪については隠しておくことや、
相続についての明人の以降を確認した、ということを打ち合わせしておきました。

矢神邸に着くと、波恵以外に6人の男女が待っていました。

まず、康治の次妹の支倉祥子(はせくら・しょうこ)、
その夫の支倉隆司(たかし)、その娘の支倉百合華です。
祥子は康之助の2番目の妻の子供で、康治や波恵とは母親が違います。
支倉夫妻は有料老人ホームを6箇所経営しています。
百合華はブックデザイナーです。

祥子と母親が同じ、祥子の弟の矢神牧雄(まきお)は50代半ばの不気味な人です。
牧雄は泰鵬(たいほう)大学医学部神経生理学科の研究者で、脳の研究をしていました。

後の2人は養子の、矢神佐代(さよ)と矢神勇磨でした。
佐代は銀座のクラブのオーナーママです。
居酒屋やダイニングバーのチェーン店を経営している勇磨は、
美人の楓を気に入り、口説き始めました。

食事後、一旦解散となり、勇磨が楓に、僕が邸内を案内しようか、と言い、
勇磨と楓は部屋を出ていきました。

伯郎は百合華に話しかけられました。
おかしいなあ、あんな軽い女に引っ掛かるようなタイプじゃなかったのに、
アキ君は、と百合華は言いました。
百合華は明人のことが好きだったのでした。

また、勇磨は康之助の子供だが、愛人に生ませた子供だ、という話を百合華はしました。
また、佐代は勇磨の母親なのだそうです。

話し合いの準備が整い、再び全員が集合します。

今から20年前に康之助が亡くなり、康之助の個人資産はすべて矢神明人に譲る、
という遺言状があったのだそうです。
しかし、当時の明人はまだ小学生で、
法定相続人には遺留分という最低限受け取れる額が決められています。
子供は、実子と養子合わせて6人ですから、
それぞれの遺留分は全財産の12分の1ということになります。

康之助は医療法人『康親会』の理事長で、矢神総合病院や老人保健施設『矢神園』など、
6つの事業を行っていました。
しかし、いずれも極めて深刻な経営不振に陥っていて、
銀行から融資を受けられた矢神総合病院と、支倉夫妻が引き継いだ『矢神園』を除いて、
4つの事業は閉鎖されました。
その過程で、康之助の資産は、100億円近くから10分の1以下にまで目減りしました。
しかもその半分近くが、この屋敷を含めた不動産だったので、
屋敷などは将来明人に譲るという前提で、現金だけを子供たちで分けることになりました。

康治が亡くなれば、当然明人が遺産を引き継ぎますが、
その前に康之助の遺産を整理しておく必要があります。
波恵は、掛け軸や壷、絵画といった品々がずらりと並んだ財産目録を皆に配りました。

2階の書庫に行き、その品々を全員で見ます。

牧雄は、康治のものである絵を気にしていました。
もしかすると、サヴァン症候群患者が描いたものでは?
と伯郎が訊ねると、牧雄は認めました。

かつて康治の共同研究者だったという牧雄は、
『資料・ファイル類』と記された段ボール箱も調べようとしていました。
動物実験も手伝ったんですか? と伯郎が訊くと、
科学の発展のためには何かを犠牲にしなければならないこともある、と牧雄は言いました。

康治の所持品に混じっていた禎子の荷物を調べると、家族のアルバムや、
一清の作品集を撮影した写真のアルバムもありました。
しかし、最後のページには何も貼られていませんでしたが、写真が剥がされた形跡がありました。
一清が死ぬ間際まで描き、とうとう完成しなかった絵です。
写真はありませんでしたが、書き込みがあり、絵のタイトルが『寛恕の網』だと判明しました。

佐代が近寄ってきて、気をつけたほうがいいですよ、その箱の中に、
禎子さんの遺産のすべてが入っているとはかぎらないということです、と言いました。

今後の方針を決めることになり、支倉隆司と勇磨がそれぞれ鑑定士を連れてくることになりました。

また、楓は明人の意向として、喜んで、亡き祖父の意志を継ぎたい、その際、
20年前に支払われた法定相続人への遺留分についても改めて精査を行い、
不正が判明した場合には、直ちに返還を要求する、と皆に伝えました。

車に戻ると、その明人の意向は楓のオリジナルだと楓は言いました。
また、勇磨から楓のスマートフォンに電話がかかってきて、ディナーに誘われ、楓は承諾しました。

伯郎と楓は明人のマンションに行き、禎子のアルバムを確認します。

その時伯郎は、康治を自分の父親だとは思えなかったという話をしました。

禎子と康治が結婚して、まだ何か月も経っていない頃、
泊まりがけで仕事をしている康治に禎子が着替えを届けに行くことになり、
8歳の伯郎も一緒に行きました。

泰鵬大学に着くと、康治は実験中で、若者に応接室に案内されました。
禎子がトイレに行き、伯郎はテレビとビデオデッキのスイッチを押しました。
すると画面に変化が起き、猫が映りました。
頭蓋骨に穴を開けられ、脳を露出させられ、脳に電流を流されていた猫でした。
禎子が戻ってきて、伯郎はテレビを消しました。
その後、伯郎は若者に案内され、ケージにいた5匹の猫を見せられました。
生気のない目を見て、伯郎は嘔吐しました。

それがトラウマになり、伯郎は康治を父親と思えなくなり、獣医になったのでした。

そのことを楓に打ち明けると、その時のお義兄様が……8歳の伯郎少年が今ここにいたのなら、
この手で抱きしめてあげるのに、と言われました。

場面が変わり、伯郎は禎子のアクセサリーやアルバムを、順子と憲三に見せに行きました。
伯郎は、スマートフォンで撮影していたサヴァン症候群患者の絵を憲三に見せました。
憲三は、これはフラクタル図形の一種だ、と言いました。
その後、勇磨と会っている楓が気になり電話すると、
今、明人のマンションにいると教えられ、伯郎はそこに駆けつけました。
正面玄関の前で勇磨と会い、嫌みを言われました。

あいつをたらしこんで、情報を引き出そうってわけか、と伯郎が言うと、
明人君の居場所を突き止めるためなら、あたしは何でもやります、と楓は言いました。

明人は生きてると思うのか、と伯郎が言うと、
楓は伯郎を引っぱたき、今夜は帰ってください、と言いました。

翌日、伯郎は喫茶店で楓と待ち合わせをし、小泉の家について話をしました。
あの家は禎子の名義になっていたので、康治だけではなく、伯郎や明人にも相続権があるはずでした。

いっそのこと、これから行っちゃいません?
と楓に言われ、車で1時間かけて、伯郎と楓は小泉の家に行きました。
その途中、昨晩、明人の消息について、無神経なことをいった、と伯郎は謝りました。

小泉の家は更地になっていたはずで、伯郎は更地になった写真も見ていましたが、
小泉の家は現存していました。
その写真は加工された画像だったのだと楓は言いました。

楓は明人の部屋に飾ってあった小泉の家の写真立ても持ってきていたので、
その写真立ての中の鍵を使い、家に入りました。

ブレーカーを上げると天井の明かりが点きました。
中は綺麗で、靴を脱いで上がります。

日本間に入り、子供の頃に祖母にプレゼントしてもらった空気銃で
襖や障子を穴だらけにしてしまったことを思い出しました。

母親のアルバムを楓と一緒に見ていると、老人が家に入ってきました。

老人はこの家の裏に住んでいるイモトで、伯郎も子供の頃に会ったことがありました。
イモトは康治に頼まれ、この家の管理や掃除をしていたのでした。

明人もここに来たことがあり、禎子が亡くなった風呂場を見ていたのだそうです。

老人が帰った後、伯郎と楓はこの家を見て回りましたが、何も見つかりませんでした。
明人は禎子の死に疑問を持っていたので、
この家を殺人事件の証拠物件として残す必要があると思ったんじゃないだろうか、
という結論になりました。

小泉の町を出た後、明人と楓の行きつけの店だというワインバーに行きました。
楓は、明人とこの店に来た時には、まず生牡蠣のセットを注文するのだそうです。

伯郎は、楓が佐代から貰っていた、佐代の名刺を見せてもらいました。

また、楓はサヴァン症候群の患者でフラクタル図形を描けるようになった人が
ほかにいもいるかどうかスマートフォンで調べ、
康治が所有していたのと同じ絵をブログにアップしていた主婦を発見しました。
その絵を描いたのは、その主婦の父親だったのだそうです。
伯郎はその主婦と連絡を取ることにしました。

伯郎1人で佐代の店に行くことになり、楓と別れると、
伯郎は小学生の頃の明人が牡蠣が嫌いだったのを思い出しました。

銀座8丁目にある佐代の店『クラブ CURIOUS』に行くと、
VIP席に案内されました。

佐代は、矢神総合病院はすでに経営が破綻していて、銀行の支配下にあり、
矢神邸も今後の状況次第ではどうなるかわからない、という話をしました。

伯郎は1度店を辞去してから、唐突に閃いたことがあり、店に戻って、
アルバムから剥がした写真を出し、説明を求めました。

向かいのビルの地下にあるバーで待ち合わせをし、佐代と再び話をします。

実家のアルバムに、禎子と佐代が一緒に映った写真があったのでした。
佐代は禎子と高校3年生の時、同じクラスで、同窓会で再会したのだそうです。

禎子の夫の一清は脳腫瘍の影響で、しばしば錯乱状態になっていて、
そのことを知った佐代は、康之助に何気なく話しました。
すると康之助は、康治に任せてはどうかと提案したのだそうです。
当時康治は、脳に電気を流すことで痛みを和らげたり、
精神的な疾患を改善するという研究をしていたのだそうです。

康治の治療で一清が錯乱することはなくなりましたが、
見た目には快方に向かっているようでありながら、
じつは急速に脳腫瘍は悪化していて、やがて亡くなりました。

康治は、自分が施した治療が原因ではないかと考え、
2度と同じ過ちは犯したくないといっていたのだそうです。
また、禎子は佐代に、自分はすでに貴重すぎて手に余るほどのものを康治から貰っている、
と言っていたのだそうです。

場面が変わり、池田動物病院に百合華がやってきて、
百合華と明人の共通の友達は明人が結婚したことを誰も知らず、
明人に電話しても繋がらない、と言いました。
しかし蔭山元美が口裏を合わせてくれて、百合華は帰っていきました。

その後、楓と矢神総合病院に向かう途中、百合華から聞いた話を楓に話すと、
明人が誰にも知らせていなかったことは楓も知らなかったようでした。
その理由は、サプライズ狙いかな、帰国した時、みんなを驚かせたかったとか、
と楓は説明しました。

伯郎1人で康治の病室に行き、
楓がナースセンターに電話して波恵を呼び出して時間を稼いでいる間に、
伯郎は康治に大きな声で話しかけます。

お袋に……禎子に何かあげましたよね、貴重な何かを、それって何ですか?
と伯郎が訊くと、康治は、「明人、恨むな……」と言いました。

その後、伯郎と楓は、例のブログの主婦、仁村香奈子(にむら・かなこ)と
東白楽駅の近くにある喫茶店で会いました。

香奈子の父親は銀行マンでしたが、居眠り運転で電柱に激突し、脳に重度の損傷を受け、
ある時期から急に奇妙な絵を描くようになりました。
ふつうのサヴァン症候群とは違う、後天性サヴァン症候群の研究のために、
康治が訊ねてきて、脳の状態を細かく調べる代わり、
香奈子の父の看護はすべて引き受けることになりました。

康治は、後天性サヴァン症候群の発症、つまり、
人為的に天才脳を作りだす研究をしていましたが、康治はそれを発表せず、
研究自体をやめてしまった感じでした。

その後、伯郎は1人で動物病院に戻りました。
楓が勇磨とこれから会うとメールで知り、電話しましたが、
話の途中で切られてしまい、その夜は眠れませんでした。

翌日の夕方、楓は勇磨を連れて動物病院にやってきました。

勇磨は、明人がシアトルにいるのか、海外の伝手を使って調べてもらい、
楓と2任で日本に帰ったと知ったのだそうです。
楓は事情を全部勇磨に話してしまいました。

勇磨は、明人が失踪しているのを隠しておく見返りとして、
後天性サヴァン症候群に1枚噛ませてもらうことにしたのだそうです。

勇磨の提案で、伯郎と楓と勇磨は牧雄の住むアパートに行きました。

伯郎達が説得し、牧雄は後天性サヴァン症候群の研究について話しました。
康治は、一清の脳腫瘍が急速に悪化したのは電気刺激治療にあるのではないかと疑い、
人体への施術は一切見合わせることにし、動物実験が主になりました。
しかし猫は絵を描かないし、楽器も演奏しないし、
天才脳を獲得したかどうかを確認する術がありませんでした。

康治は、事故あるいは病気によって脳を損傷したしたせいで、
それまではなかった特殊な才能を発揮した例があるはずだと考え、
仁村香奈子の父親などのデータを集め、仮説の正しさを証明しつつありましたが、
ある日突然、康治は後天性サヴァン症候群の研究から一切手を引きました。
また、その研究データも行方不明でした。

牧雄の部屋を後にした伯郎達は、その研究データは小泉の家にあると考え、
明日、家捜しすることにしました。

勇磨が楓を明人のマンションに送っていき、伯郎は順子と憲三の家に行き、
小泉の家で見つけたアルバムを順子に見せました。
憲三はもう寝ていました。

どこにあったの? と訊かれ、
伯郎が禎子から預かっていたのをクロゼットの奥にしまいこんでいて、
たまたま見つけたのだと説明しました。

伯郎は、小泉の家に書類なんかを隠せるところがあったのを
知らないかと訊きましたが、順子は知らないと言いました。

もう午前1時でしたが、伯郎は、これから小泉の家に行って家捜ししようと思い、
明人のマンションに行きました。
コインパーキングに勇磨の車が駐まっているのを見つけ、部屋に押しかけました。

楓は、明人が撮影したと思われる小泉の家の写真を勇磨に見せていたのだと説明しました。

楓は伯郎の車に乗り、勇磨は自分の車で、小泉の家に向かいます。

伯郎は、明人が戻らないと楓が諦める日が来たら、
楓の力になりたいと思う、という意味のことを言いました。
その勢いで告白しようとしますが、今夜は、そこまでにしておいていただけませんか、
その続きを聞くのは今ではないと思いますので、と楓は言いました。

小泉の家に到着し、手分けして家捜しをすると、
勇磨は天井裏で『後天性サヴァン症候群の研究』というレポートを発見したと言いました。
しかし、天井裏は前回この家に来た時に伯郎が調べたはずの場所で、伯郎は釈然としませんでした。

午前4時に解散し、勇磨は帰っていきました。
伯郎も楓と帰ろうとしましたが、突然閃き、急ブレーキを踏みました。

伯郎と楓は夜道を歩き、小泉の家に引き返します。

家の中に誰かがいて、照明をつけました。

伯郎はインターホンを鳴らして家に入ります。

居間に「順子の夫の兼岩憲三がいました。
憲三は、伯郎と順子の話を立ち聞きして、伯郎が古いアルバムを持っていたことに驚き、
この家が今も残っていたことを初めて知ったのでした。

もし康治の報告書を見つけられなかったら、朝まで伯郎達は家捜しをしていたので、
それを終了させるために、先回りして天井裏に報告書を置いたのでした。

16年前、憲三は一清が描いた『憤怒の網』を探しにこの家に来たことを話しました。

『憤怒の網』は、素数の分布に法則性があることを示す『ウラムの螺旋』の表現方法を変えたものでした。
康治の『明人、恨むな……』は本当は『明人、ウラムの……』と言っていたのでした。

しかし、一清はその絵を描くのをやめました。
一清がこの世を去った後、『憤怒の網』が消えていたのを憲三は知りました。
一清が処分したと憲三は思っていましたが、
明人が禎子のアルバムから剥がしてきた『憤怒の網』の写真を見て、動揺しました。
その日付は、一清が亡くなった時より、ずっと後だったからでした。

憲三は順子の鍵を使い、小泉の家に忍び込み、絵を探しました。
しかし禎子は、イモト老人から、時々電気がついていることを教えられ、
憲三を待ち伏せしていました。

禎子は、順子に電話をかけて教え、絵を燃やすと言いました。
憲三は電話を取り上げようとし、揉み合いになり、折り重なるように倒れ、禎子は脳震盪を起こしました。
憲三は禎子を風呂場まで運び、事故に偽装して殺したことを告白しました。

明人を監禁したのも憲三でしたが、間もなく解放されると憲三は言いました。
憲三は、この家はないと思っていたから、『憤怒の網』は康治の元にあると思い込んでいました。
康治が死んで遺品が出揃うまでの間、明人を監禁すれば、
伯郎を通して兼岩家に『憤怒の網』も来るだろうと予想し、明人を監禁したのでした。

罪を告白した憲三は、灯油をまいて火を放ちました。
しかし、楓が憲三を抱え上げて家の外に出ました。

伯郎は燃える家を見ながら、子供の頃、空気銃で襖を穴だらけにしたのを思い出し、
家に飛び込みました。
襖にスコップを突き立てると、『憤怒の網』が見えましたが、焼けた天井が落ちてきて、
『憤怒の網』が隠された襖にも燃え移ろうとしていました。

伯郎は襖に近寄ろうとしましたが、明人に腕を掴まれ、
絵なんか、どうでもいいじゃないか、たかが絵だ、逃げよう、と言われ、家を出ました。

伯郎は小さな警察署に連れていかれ、応接室のような部屋で眠ってしまいました。
午前7時に目覚めると、明人から事情を説明してもらえました。

明人がシアトルから帰国すると、成田空港で警視庁の人間が待ち受けていたのだそうです。
警視庁のサイバー犯罪対策課は、インターネットを通して、
明人の拉致、監禁を実行してくれる人間を募っている者がいるのを知り、
警察は明人を待ち伏せしていたのでした。
警察は、明人を実際に監禁したように見せかけ、相手の出方をうかがう作戦を考えました。
明人は、犯人が親戚の人間にいると考え、警察に協力するから、
禎子の死を再調査してほしいと頼みました。

明人がそこまで話したところで、女性警察官の制服に身を包んだ楓が入ってきました。
楓は潜入捜査官で、明人は独身だったのでした。

2日後、康治が死んだ、と明人から連絡が入りました。
憲三が逮捕されたことを知り、順子は倒れ、入院していました。

通夜の焼香の後、明人は、例の後天性サヴァン症候群の研究報告書をビジネスに使うのはやめ、
明人が保管しておくと話しました。
報告書の最後のページには、
『天才が幸せをもたらすとはかぎらない。不幸な天才を生むより、幸せな凡人を増やす努力をしたい』
と書かれていたのだそうです。

明人は勇磨と2人でこのおちぶれかけている一族を建て直すことにしたのだそうです。
また、明人は百合華と付き合うことになったようでした。

後日、伯郎は池田老人の養子になり、池田動物病院を引き継ぐことを決めました。
また、ミニブタを飼うことにしたので、アドバイスをいただこうと、楓が動物病院にやってきました。
楓は伯郎のことを『伯ちゃん』と呼び、ミニブタって病気しがちらしくて、
これからながーい付き合いになると思います、よろしくね、伯ちゃん、と言ったのでした。


というあらすじなのですが、凄く面白かったです。

ただ、勇磨に対してヘイトが溜まったので、
一度くらいは勇磨にぎゃふんと言わせてやりたかったですが。

時雨沢恵一「キノの旅」11巻口絵2「お花畑の国」のネタバレ解説

ある春の日、キノは城門の外から国内のあちこちで
殺し合っているのを見ていました。

ホヴィー(浮遊車両)の群が国へと向かい、
1台がキノ達の脇に降りてきました。

そこから降り立ったのは、中年の女性の軍人でした。

女性軍人によると、あの国はもともと3つの異なった民族が集まって
一緒に暮らしていた国だったが、最近急に仲が悪くなり、
三つ巴の殺し合いをしているのだそうです。

隣国からやってきたホヴィーの列はたくさんの爆弾を落とし、
たくさんの弾丸の雨を降らせました。

皆殺しを終えたホヴィーが帰還のために空中で列を作り、
それとは別の数台が、国の上に花の種を振りおろしました。

春が終わって夏がきて、それも終わりそうな頃、
シズと陸とティーがやって来て、まん丸のお花畑を見下ろして、
その光景にいたく感動しました。

シズは、これほどすばらしいものを作ったのはいったいどんな人なのだろうね、
と呟きました。

というあらすじなのですが、この話は色んな風に解釈できますね。

すばらしいものを作った人が、
必ずしもすばらしい人とは限らないという話なのではないかと、
しまうましたは解釈しました。
プロフィール
Author:しまうました
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個人の趣味でやっているブログなので、解説してほしい本のリクエストは受け付けていません。
重要なネタバレ箇所は白字にしてあるので、反転してお読みください。
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