星新一「貴重な研究」のネタバレ解説

超大金持ちのエヌ氏は、相当な老人になり、
私財をつぎ込んで研究所を作り、
不老不死の薬の研究をさせていました。

ようやく試薬分として少量ができましたが、
まずは動物実験をして、人体実験をして、
効果がはっきりすれば、ただちにあなたに処方しましょう、
と研究所の所長は言いました。

しかし、待ちきれないエヌ氏は、動物実験をとばして、
すぐに人体実験を試みてはくれないか、と所長に言いました。

エヌ氏は忠実な召使いの老人を呼び、おまえはわしより、
2つほど年上だったはずだから、先に不老不死の薬を使わせてやろう、
などと調子のいいことを言い、召使いの老人は承知しました。

所長はは、服をぬがした召使いの老人を横たえ、
薬品を注射器に入れ、老人のからだに注入しました。

召使いの老人はゆっくりとからだを動かしながら、
口から白い糸を吐きはじめました。

所長は、ただの不老不死ではなく、
もういっぺん若くするための薬を作ったのでした。

カイコは幼虫時代の終りにマユを作り、つぎに新しい生活を始めます。
そのカイコのホルモンを、人間に合うようにして、
人間に変.態をおこさせようとしたのです
(この場合の変.態は、変身という意味です)。

老人は糸を吐きつづけ、やがて、
白い大きなマユのなかに入ってしまいました。

それから一週間ほどたった夜、所長は鋭いメスでマユに切れ目を入れ、
2つに割りました。

なかには幼い男の子が入っていました。
あの老人とは、とても思えないほどの変りようでした。

幼児食を食べさせようとしますが、男の子は食べません。

また、「背中に翼がありました。

幼虫がマユやサナギを出て、ガやチョウになる時には翼をそなえるので、
仕方のない副作用だと所長は言いました。

男の子はやがて表情を変え、ここは私の住む所ではない、といった様子で、
窓から飛び出し、高くあがり、どこへともなく飛び去っていきました。

それを見送りながら、エヌ氏は、これでは、いままでと少しも変らない、
天使となって天国へ行くのなら、薬を使わなくてもできる、
と言ったのでした。


というあらすじなのですが、「天国に行けそうもない悪人になら、
この薬も需要があるのではないかと思います。

しまうましたは、こんな薬、絶対に使いたくありませんけど。
人間をやめたくないので。

星新一「願望」のネタバレ解説

エス氏は寝床に入ったものの、なかなか眠りにつけず、
柵を想像し、1匹ずつ飛び越えさせて数えることにしました。

100匹近くになって、1匹の羊がひらりと飛びあがり、
空中でみごとに一回転をやってのけ、柵の上で逆立ちをしました。

こんな羊があるはずがない、とエス氏が夢心地でつぶやくと、
その羊はキツネに変りました。

エス氏は昼間、この近くにある稲荷神社に参拝していました。
その稲荷ができてから、エス氏はちょうど60万人目の参拝者でした。

キツネは10万人ごとに、
その人の願いを1つだけ叶えてあげることにしていて、
エス氏の夢枕に立ったのでした。

どんなことがいいか、望みのことをおっしゃって下さい、
とキツネは言いましたが、
ちょっと待ってくれ……、とエス氏は言って、考えました。

エス氏は参拝した時の願いをどうしても思い出せず、
いらいらしたキツネは足をばたつかせ、首を振り、
早くはっきりさせて下さい、と言いました。

エス氏もまた、いらいらして、何とか思い出さなくては、
思い出さしてくれ、ここで思い出せないと、一生後悔することになる……、
とつぶやきました。

そしてエス氏は、忘れっぽい性格をなおしたい、
という願いを思い出しました。
できる話だろうか、とエス氏が訊ねると、
できないことはございません、とキツネは答えます。

しかし、「キツネはすでに、思い出さしてくれ、
というエス氏の願いをかなえてしまったので、
これで終りです、と言いました。

なんとかならないのか、とエス氏はたのみますが、
どうしてもとおっしゃるのでしたら、
つぎの10万人目の参拝者におなりになって下さい、
とキツネは頭を下げ、夢のなかから消えていきました。


というあらすじです。

面白いオチですが、この話には瑕疵がありますね。

それは、「思い出さしてくれ、とエス氏が言うより前に、
ちょっと待ってくれ、とも言っていた点です。

その時点で、ちょっと待った、
という願いをキツネはかなえることもできたはずです。

まあ、エス氏がなかなか願いを思い出さないのにいらいらして、
思い出さしてくれ、というつぶやきを願いだということにして、
かなえてしまった、と考えた方が自然ですが。

星新一「すばらしい食事」のネタバレ解説

30過ぎの女と、40ぐらいの男が結婚しました。

どちらも再婚で、前の配偶者は死亡していました。

前の配偶者の保険金や財産を手に入れた妻と夫は、
それに味をしめ、今度の配偶者にも死んでもらおうとします。

ある日の朝、妻と夫は、やとっていた自家用車の運転手をくびにしました。
運転手が妻と夫の目を盗んでお金を持ち出そうとしたのを見つけたからでした。

その日の夜、妻は夫を殺そうとして、ステーキに毒薬の白い粉をふりかけました。

一方、夫は妻を殺そうとして、妻の飲むブランデーに毒薬の白い粉を入れました。

夕食の時間が始まる寸前、玄関でチャイムが鳴り、
商品見本が配達されてきました。

邪魔がいなくなった後、妻がブランデーのグラスを飲もうとしますが、
足音が聞こえたような気がすると言って、飲むのをやめました。

そこへ、脱獄してきた男がやってきて、妻と夫に拳銃を見せて、家に押し入ります。

お腹を空かせた脱獄囚は、ブランデーとステーキを飲み食いしようとしますが、
警察やマスコミに、どうやって脱獄囚に毒を飲ませるのに成功したのか、
と追及されると困ります。
また、今の配偶者に対しては、脱獄囚が毒を飲んで死んだ理由を説明できません。

そこで妻と夫は、脱獄囚が食事を始めるのを少しでも遅らせようと、
悪あがきをします。

だれかがやってきても不振に思われないように、と、脱獄囚にひげを剃り、
服を着替えさせました。

配偶者と脱獄囚を残して逃げようとしますが、脱獄囚に止められてしまいます。

脱獄囚が食事を始める直前、玄関のチャイムが鳴りました。

脱獄囚に、だれも入れるな、と言われ、妻が玄関のドアを開けます。

すると、3人の強盗の男達がなだれ込んできて、
妻と夫と脱獄囚をしばりあげてしまいました。

強盗達は、金目の物を探す前に、ステーキとブランデーを飲もうとします。

しかし、その瞬間、電話が鳴りました。
強盗の指揮者は、しばらくほっておけば、留守だと思ってあきらめるだろう、
と言いました。

電話のベルはしばらく鳴っていましたが、やがて鳴りやみました。

その頃、「警察では、警官の上役が、元運転手の男に、
くびになったからといって、雇い主夫妻を殺そうとたくらむなんて、
と言っていました。

元運転手の男は、時限装置で青酸ガス発生気を作り、
商品見本をよそおって、宅配便で送り、
電話以外にまにあわない時間になってから自首したのでした。

警官は雇い主夫妻の家に電話しましたが、電話に出なかったので、
留守だと思ったのでした。


というあらすじなのですが、妻も夫も脱獄囚も、3人の強盗達も、
全員、毒ガスで死んでしまったのでしょう。

悲惨なオチですが、妻も夫も脱獄囚も強盗達も、
全員がクズなので、後味の悪いオチではないですね。

妻や夫は、何がどうなっても、死ぬ運命だったのでしょう。

タイトルの『すばらしい食事』が、何とも皮肉なオチでした。

星新一「報酬」のネタバレ解説

お金持ちのエル氏は商売敵と話しているうちに、
ついかっとなって、果物ナイフで殺してしまい、
留置場のなかにほうりこまれてしまいました。

エル氏は無罪にしてもらうために、
すご腕の弁護士に頼みます。

弁護士は多額の報酬を要求しましたが、エル氏は承知しました。

目撃者の数が多すぎるため、
目撃者の頭がおかしかったことにするのは無理です。

エル氏本人が頭のおかしい人になる方法を弁護士は提案しますが、
診断書つきの患者にだってなりたくない、とエル氏は言います。

そこで、正当防衛を主張することにしました。

エル氏と被害者の会話をはっきり記録している者がいないので、
弁護士はその点を利用することにします。

エル氏は、しばらく前から肩を叩かれると、
ひきつけを起す病気にとりつかれていた、
その発作はしだいにひどくなり、
こんど発作が起きたら命にかかわると言われていたのに、
商売敵にそのことを言っても、信じてくれない、
むりに肩をたたこうとした、という嘘を、弁護士はでっちあげます。

診断書と、かつて発作を起した時の証人も手配します。

そしてエル氏本人も、そのような体質の持ち主だと思いこむようにと、
弁護士は言います。

留置所ぐらしの間、毎日毎日、エル氏は自分に言いきかせます。
自分は肩をたたかれ、すでに発作をくりかえしてきた、
こんどたたかれたら、助からない発作が起る、と。

毎日毎日、自己暗示をかけたおかげで、
検事が「肩をたたいて、たしかめてみたい」と発言した時のエル氏のようすは、
とても芝居とは思えず、裁判官の心証を動かし、判決は無罪となりました。

ありがとう、おかげで助かった、とエル氏は弁護士にかけよります。
うまいものでしょう、と弁護士はとくいげに答えながら、
勢いよくエル氏の肩を叩いたのでした。

というあらすじなのですが、弁護士はあれだけエル氏に、
自己暗示をかけるようにと言っていたのに、
弁護士本人が信じていなくて、ついうっかり肩を叩いてしまった、
というオチですね。

この後、エル氏は自己暗示のせいで、本当に死んでしまったのかもしれません。

仮に助かっても、エル氏を監視していた警察がエル氏と弁護士の嘘を見抜くので、
どっちみち詰んでますねw

時雨沢恵一「キノの旅」9巻9話「続・戦車の話」のネタバレ解説

今回は、6巻口絵3「戦車の話」の続編です。

キノとエルメスと別れた後、長い時間が過ぎ、
とうとう浮遊戦車は鬱蒼とした森の中で故障してしまい、
そこから動けなくなってしまいました。

しかし、それからさらに時間が経ち、
10歳くらいの男の子と女の子が、戦車を見つけ、
ぼく達が直してあげる、と言いました。

男の子と女の子は戦車の壊れた部品を取り替えます。
重い部品は、2人が乗ってきた小型トラックのクレーンまで使いました。

そして、本当に戦車はほとんど直り、再びふわりと浮きました。

男の子と女の子は、2人とも親方と呼ばれる立派な機械工の下で働いたので、
壊れた車両を直すのはお手のものなのだそうです。

戦車の中にあった戦車長の白骨死体については、
人間の方法で処理してください、と戦車は2人に頼みました。

2人は、親方の遺体が埋葬されている、草原のお墓の隣に、
戦車長の遺体と遺品を埋葬してくれました。

しかし戦車は、色が黒くて、砲台の右脇に三本の紅い縦線があって、
左側に獏の絵が描いてある戦車を絶対に確実に破壊しろ、
と戦車長が命令した戦車を見つけられないことで悩んでいました。

元気がない戦車の様子を見た男の子と女の子は、もう1台、
戦車に戦車の仲間を作ってあげることにしました。

張りぼてですが、浮遊戦車にそっくりな戦車を作り、
戦車に見せてあげました。

すると戦車は元気を出し、撃とうとしました。

しかし、「なぜか撃てませんでした。

張りぼて戦車のハッチが開き、そっくりにできたでしょう!
と2人は大きな鏡を取り出し、戦車に見せました。

戦車がその姿をはっきりと認識して、理解して、
目をそらすように放蕩を勢いよく回転させた時、
誌蹴っていた火薬にようやく点火して、轟音があたりを震わせました。

それを見て、男の子と女の子は、やったー! すごーい!
とはしゃぐ声を響かせました。


というあらすじなのですが、「戦車の話」も充分に鬱な話だったのに、
それを上回る鬱です。

でも、戦車がようやく、
戦車長に破壊しろと命令された戦車を「見つける」ことができたのは、
よかったのではないかと思います。

もちろんショックは受けますが、これで、
キノと出会ったエルメスのように、
戦車としての第2の人生を始められますからね。

それと、あのままだと恩人である男の子と女の子を撃ってしまうところだったので、
命令された戦車を撃てなかったのも、結果的にはよかったと思います。

時雨沢恵一「キノの旅」9巻8話「殺す国」のネタバレ解説

荷物持ちさんが激しい食あたりになってしまい、
ジャングルの中にある国に入国しようとしました。

すると、ライフルを構える若い兵士の一団に囲まれてしまいました。

荷物持ちさんを入院させた後、師匠は国長達から事情を聞きました。

12日前に、聞いたこともない遠い国から使者がやってきて、
“14日の後、日の出と共に攻め入るのでそのつもりで”
と一方的に宣戦布告をしたのだそうです。

戦争なんかしたことのない、この小さな国はてんてこまいで、
そんなところに師匠達がやってきたので怪しまれ、
兵士に囲まれたのでした。

しかし、誤解は解け、師匠は兵士300人の指揮をすることになりました。

翌日、師匠はより効果的に陣地を造り直させました。

豪語作に、あえて通り道を造らせ、それ以外の箇所は、
人が通れないように徹底的に高く厳重にし、溝を掘って、
棘やら罠も仕掛け、通路に敵兵が集中するようにしました。

さらに通路の中間地点をしぼり、
殺到する人間の流れがつまるように拵えました。

兵士には2人1組での行動を徹底させ、
師匠の発煙弾の色と戦法を全員にしっかりと覚えさせました。

翌朝、やってきた敵の人間の群れは、到底兵士とは呼べない、
普通の福を着た普通の人達でした。
年齢も性別もバラバラで、長い移動の名残で、全員服も顔も汚く汚れていて、
手にしているのはナイフやナタや棍棒やらの原始的な武器でした。

師匠は信号弾を撃ち、全滅させるよう兵士達に指示を出しました。

数百を越す敵の人間はどんどん死んでいき、死体の山ができます。
20人くらいの十代中ごろの女の子達が、手をしっかりと繋ぎ、
嬉しそうな笑顔で突っ込んできて、撃たれて死にました。

狂ったような笑顔で突入してくる人がいなくなった後、
白い旗を振りながらやってきた、ちゃんとした軍服を着た軍使は、
“戦力がなくなったので負けを認めます”と便箋を渡し、
戻っていきました。

致命傷を負いながらまだ死んでいない人が相当数動いていましたが、
師匠は片端から頭を撃ち抜いて、彼らを楽にしていきました。

国のそばに大きな穴を掘って、可燃物を入れて、死体を荼毘に伏します。

その時、兵士が師匠に、もしあなたがこの国に行くことがあったら、
こんなにも人の命を無駄にする理由を聞いてほしい、と頼みました。

死体の片づけは、次の日の夕方にようやく終わり、
数えられた死体は、3000を超えました。

戦争から2日経って、報酬を受け取って出国した師匠と荷物持ちさんは、
敵国の、馬車に乗った50歳ほどの軍服の男と会い、
あれはどういう作戦だったのかと訊ねました。

すると軍人は、「あれは殺してもらうために突撃させたのだと言いました。

連中は自殺志願者の群れだったでした。

その国は豊かで平均寿命も長い恵まれたところなのですが、
毎年毎年自殺する人が多く、自殺を防止する策も全てダメで、
最終案として採用されたのが、
“そんなに死にたいのなら国が死に場所を授けましょう”計画でした。

“国営自殺センター”で“自殺者名簿”に登録しすれば、
半年に1度、自殺作戦に参加できるのです。

適当に離れた国に行って宣戦布告して、
攻めるフリをして城壁に向かって突撃し、
殺害から死体の片付けまで、よその国にやってもらうのです。

“ちゃんと殺してくれる”国を選ぶのが大変で、
戦争をふっかけた国がもう嫌だと降参したり、
“自殺したいだけ”と気づかれ、皆が捕虜になったりして、
失敗することもあるのだそうです。

軍人は、自分のことをしがない軍人だと卑下しましたが、
生きていく上で励みになる“生き甲斐”は持っていると言いました。
その生き甲斐とは、自殺者達の無様な殺されようを見ることでした。


というあらすじなのですが、うーん……。

今回は解説を放棄したいような内容でしたが、
そんなわけにもいかないので、少しだけコメントします。

自分達の国の問題を、よその国に丸投げしようとする、
その根性が気に食わないですね。

時雨沢恵一「キノの旅」9巻7話「商人の国」のネタバレ解説

冬の荒野を走っていたキノは、夕方、
大型のオフロードトラックとぶつかりそうになりましたが、
寸前でエルメスが気付いてくれたおかげで助かりました。

トラックに乗っていたのは、商人の一家で、
夕食をご馳走になります。

50歳ほどの商人の男は、キノが向かっていた、
ほとんど誰にも知られていない、荒野にある小さな国の出身でした。

男は20歳の頃、急に外の世界への憧れが湧いて、
親の説得も聞かず、そのまま国を飛び出しました。

いくつかの国を放浪して廻り、最後は北にあった国を気に入り、
国のあいだを行き交う商人として一生懸命働き、
結婚し、家庭を持ち、仕事も大成功を収めました。

それで、この年になってようやく、生まれ故郷に行く決心がつき、
妻と2人の息子と一緒に、その国に向かっている途中だったのでした。

翌朝、太陽が地平線の上に昇った頃、大きな地震が起こりました。

この地方では地震は非常に珍しく、商人達は誰も知りませんでした。

そして、商人の生まれ故郷の国は、瓦礫の山となっていました。
城壁も家も石造りで、ただ単に組んだだけで、
“耐震性”なんて言葉もなかったため、ほぼ100パーセント、
建物はみんな崩れてしまっていました。

早朝だし、全員下敷きだね、これだけ寒ければ、
下敷きの人も、数日後には全員凍死していると思う、
とエルメスは遠慮も容赦もなく言いました。

すると商人は、「キノがその国で売るつもりだったブローチ1ダースを、
エルメスの燃料と交換したいと言いました。
キノは、東の国にある、そのブローチを売っている店を教えて、
冷凍肉ももらいました。

キノは、瓦礫の山となった国を素通りして、旅を続けました。

一方、商人の妻は、そのブローチ、随分と珍しいわ、
燃料とお肉程度では、到底釣り合わないことを、
キノさんは知らなかったのね、とトラックの中で言いました。
教えなかったしね、と商人は言い、東へ向かって走りました。


というあらすじなのですが、結局、
キノも商人達も、その国には行かなかったのでした。

生き残っているかもしれない人を救助しよう、
なんてことは、キノも商人もこれっぽっちも考えていませんね。

でも、崩壊した国から火事場泥棒のようなことをしなかっただけ、
この商人はまだマシだったのではないかと思います。

阪神淡路大震災のときも、東日本大震災のときも、
悪い人が被災地に侵入して泥棒していった、
という話を聞いたときは強い怒りを覚えましたからね。

時雨沢恵一「キノの旅」9巻6話「自然保護の国」のネタバレ解説

師匠と荷物持ちさんは荒野を走り、
かつて見たこともないような、
信じられないほどの巨大樹がある国に着きました。

海のような湖の中に、平らな島があります。
島を取り囲む石組みの城壁があって、その中には町がありました。

迎えにきてくれた船でその国に渡り、
その日は城門近くのホテルに泊まって、
すぐに寝てしまいました。

翌日、案内人に連れられて、朝の通りを見学しながら歩きます。

この国には、巨大な樹以外の他に木が1本も生えていませんでした。
荒野であるこの地に育つのは、
どれだけ手間をかけても背の低い草がいいところで、
あのような巨大な樹が自然にそびえていること自体がありえないことです、
と案内人は言いました。

およそ100年前に、この国の人達は“自然保護法案”を作り法律で
樹を守り抜くことを決定しました。

しかし、超高層ビルかと思えるほどの太さがある巨大樹を間近で見ると、
幹のあちこちは腐り、黒い穴だらけでした。

数十年前から始まった幹の痛みは止まらず、
数年前には太い枝が折れて、通りを1つ押し潰して、
125人が亡くなったという事故も発生していました。

樹は毎年たくさんの種をつけるのですが、
固いこの大地には歯が立たず、落ちた種は全て死んでしまいます。

この樹がどうやって生えたのかは永遠の謎だということを、
案内人は言いました。

翌日、出国した師匠は荷物持ちさんに、
あの樹はそのうち倒れて風雨を受けて腐るけど、
そこが新芽にとって、柔らかく栄養のある、絶好の苗床となり、
倒れた樹から、次の芽が出るだろう、という意味のことを言いました。

今のあの樹もそうして芽生えたのでしょう。

という話を、老婆になった師匠がキノに話すと、
キノは、それ、見てみたいです! 新しく芽吹いた木が伸びているところを!
と言いました。

それからさらに月日が流れ、エルメスと旅に出たキノは、
その国に到着しました。

しかし、樹があったはずの島の中央部には、大きな石のドームがありました。

2日目に、そのドームの中を見学させてもらうと、「樹が倒れていて、
葉の緑は見えませんでした。
そこにあったのは、乾燥し干からび灰色になった幹と枝だけでした。

案内人は、数十年前に倒れた樹をドームで覆ったのだと言いました。
強烈な陽射しや雨風から樹を守るために。

3日目に出国したキノは、その国で売るつもりだった、
水の中で生えて、浮かびながら咲く花の種を、湖に投げました。
しかし、魚の群れが種を全部食べてしまいました。


というあらすじなのですが、
この話は故事成語の「助長」が元ネタではないかと思います。

苗を早く生長させようとして苗を引っ張ったら、引き抜いてしまい、
枯らしてしまった、という故事成語です。

援助しようとしても、それが逆効果になり、
害を与えることがあるので、注意しないといけませんね。

それは植物だけではなく、人間でも同じです。

恩田陸「蜜蜂と遠雷」のネタバレ解説

蜜蜂と遠雷


最初に説明しておくと、この小説はバリエーション豊かな比喩表現や、
キャラクターの細かい心情描写が凄い話なので、
あらすじではその面白さが伝わらないと思います。

しかし、それを承知の上で、いつものようにあらすじです。

芳ヶ江(よしがえ)という町で、3年に1度、
国際ピアノコンクールが開かれています。
時期は、10月か11月くらいです。

第6回の今回、風間塵(かざま・じん)という16歳の少年は、
パリでのオーディションに参加しようとしていました。

このオーディションは、書類選考落選者を対象にしたものです。

しかし、ヨーロッパで養蜂家をやっている父親を持つ風間塵は、
父親の仕事を手伝っていたせいで遅刻し、
ラストの順番に回されました。

審査委員の嵯峨三枝子(さが・みえこ)は、
風間塵の書類の「師事した人」の項目に、
「ユウジ・フォン=ホフマンに五歳より師事」
と書かれているのを見て動揺しました。

ユウジ・フォン=ホフマンは今年2月に亡くなった高齢のピアニストで、
世界中の音楽家や音楽愛好家に愛されていた人物でした。

風間塵の演奏は他のコンテスタントとは音が違っていて、
悪魔のようだ、恐ろしい、おぞましい、と三枝子は思いました。

風間塵が帰って行くと、許せない、あんなの、
ホフマン先生に対する冒涜だわ、と三枝子は怒りに震えました。

しかし、数ヶ月前にこの世を去ったホフマンはそれを予想して、
次のような推薦状を遺していました。

「皆さんに、カザマ・ジンをお贈りする。
文字通り、彼は『ギフト』である。
(中略)
中には彼を嫌悪し、憎悪し、拒絶する者もいるだろう。
しかし、それもまた彼の真実であり、彼を『体験』する者の中にある真実なのだ。
彼を本物の『ギフト』とするか、それとも『災厄』にしてしまうのかは、
皆さん、いや、我々にかかっている。」
という内容でした。

他の選考委員のシモンとスミノフにその推薦状を見せられ、
三枝子は恥ずかしくなりました。
また、シモンとスミノフは風間塵の演奏に、
三枝子のような生理的な拒絶感は抱いていなくて、
むしろゾクゾクして多幸感があったと言いました。

「権威派」「良識派」である他の選考委員に風間塵の演奏を聴かせて、
顰蹙を買わせるのは、それはそれで楽しそうだろう?
と説得され、三枝子は風間塵を合格させることを承知してしまいました。

場面が変わり、他のコンテスタントである、
栄伝亜夜(えいでん・あや)の視点になります。

亜夜は、内外のジュニアコンクールを制覇し、
CDデビューも果たしていました。

しかし、亜夜の最初の指導者であった母が、
13歳の時に急死してしまいました。

母の死後、最初のコンサートが始まる直前に、亜夜は、
あたしは独りきりになったんだ、もうお母さんはいない、
と理解してしまいました。

ステージのグランドピアノがまるで墓標のように見え、
亜夜はくるりと踵を返し、走って、屋外に飛び出し、演奏しませんでした。

コンサートをドタキャンした亜夜は、かくて、「消えた天才少女」となりました。

しかし、大学進学を考える時期に、母と音大で同期だった浜崎という男が訪ねてきて、
お母さんの命日も近いし、彼女が好きだった亜夜ちゃんのピアノを聴かせてくれないか、
と頼みました。

亜夜は、ショスタコーヴィチのソナタを弾きました。
それを聞いた浜崎は、ぜひうちの大学を受けてもらえないでしょうか?
と言いました。
実は、浜崎は日本で3本の指に入る名門私立音大の学長だったのでした

20歳になった亜夜は、
浜崎の意向で、現在の指導教官から第6回芳ヶ江国際ピアノコンクール出場を勧められ、
学長への恩返しのつもりで亜夜は出場することにしましたが、
あまり乗り気ではありませんでした。

また場面が変わり、
他のコンテスタントの高島明石(たかしま・あかし)の描写があります。

明石は28歳で、結婚して、明人という幼稚園児の息子もいます。

28歳というのは、芳ヶ江国際ピアノコンクールの出場者では最高齢であり、
応募ぎりぎりの年齢でした。

明石の家はごく平均的なサラリーマン家庭、妻は幼馴染で高校の物理の先生、
明石自身は大きな楽器店の店員です。

高校時代の同級生、仁科雅美は、TVのドキュメンタリーを撮りたいと言い、
明石に密着取材していました。

TV出演を決めたのは、明人が大人になった時のために、
パパは「本当に」音楽家を目指していたのだという証拠を残しておくためだと、
周囲には説明していました。

しかし、本当は、孤高の音楽家だけが正しいのか?
音楽のみに生きる者だけが尊敬に値するのか?
生活者の音楽は、音楽だけを生業にする者より劣るのだろうか、
と怒りと疑問を持っていたからでした。

明石が中三の時に他界した祖母が買ってくれたピアノを、明石は弾きます。

そのピアノは、養蚕をしていた祖母が蚕を育てていた蔵の中にありました。

明石はこの蔵にこもって、コンクールの準備の仕上げをすることにしました。

そして、いよいよ、2週間に亘る、
芳ヶ江国際ピアノコンクールのオープニングナイトが始まりました。
一次予選は明日からです。

作曲家の菱沼忠明(ひしぬま・ただあき)が、三枝子に、
『蜜蜂王子』の風間塵についての話をします。

めったに弟子をとらないことで有名だったユウジ・フォン=ホフマンは、
ホフマンの方から出かけていって風間塵にピアノを教えていた、
と菱沼は言いました。

菱沼はそのことを、ホフマンの妻から電話で聞いていました。

そこへ、審査委員のナサニエル・シルヴァーバーグがやってきます。
ナサニエルは、三枝子の元夫であり、
ホフマンの数少ない、弟子の1人でもありました。

ナサニエルは週に一度、飛行機でホフマンの家に通って教えを請うた、
それでも推薦状など書いてもらったことがない弟子だったので、
風間塵を合格させた三枝子に対して怒っているようでした。

ナサニエルは三枝子に、ナサニエルの弟子である、
マサル・カルロス・レヴィ・アナトールという19歳の少年を紹介します。

マサルは母親がペルーの日系三世でしたが、
その顔はどちらかと言えばラテン系で、既に日本人の面影は見えませんでした。

その頃、亜夜は浜崎学長の娘であり、2年先輩の奏(かなで)から借りる、
ステージ衣装のドレスを選んでいました。
ヴァイオリニストである奏は、亜夜が入学してから何かと世話を焼いていました。

コンクールに乗り気でない亜夜に、
奏は、あなたのファンだったんだよ、と打ち明け、やる気を出させようとしました。

ピアノに触れようと、亜夜が大学の練習室に行くと、
そこに不法侵入してピアノを弾いていた風間塵と出会いました。
しかし、風間塵は素早く逃げてしまいました。

ここでマサルの回想です。

マサルは5歳から7歳までの3年間、日本に住んでいたことがありました。
母親の意向でマサルは公立の小学校に入学しましたが、
日本の小学校の「世間」から拒絶され、
再びフランスに戻るまでの10ヶ月、
マサルはインターナショナルスクールに転校せざるを得なくなりました。

しかし、近所のピアノ教室の家の前を通りがかり、
1歳か2歳年上の、ト音記号の刺繍の付いたカバンを提げた女の子に、
いつもピアノ弾いてるの、きみ?
と話しかけました。

絶対音感を持つマサルの耳がいいことに気付いた少女は、
マサルをピアノ教室の先生に紹介し、一緒にピアノを弾くようになりました。

マサルがフランスに戻ることになった時、
ピアノ弾いてね、約束だよ、と少女は言い、
ト音記号の付いた楽譜入れのカバンをマサルにくれました。

フランスに戻ったマサルはピアノを習うようになり、
2年もすると振動としてその名を知られるようになりました。
その後、渡米し、アメリカ出身のコンテスタントとして、
マサルは芳ヶ江国際ピアノコンクールに出場しました。

回想終わりです。

コンクール初日。

高島明石は、スニーカーの靴紐が結べなくなっていることに気付き、
「上がってる」ことを自覚し、動揺していました。

一次予選では、90人近くいるコンテスタントは、くじ引きで決めた演奏順に、
1人20分以内で演奏します。

初日の目玉は、優勝候補の1人と目される中国系アメリカ人の少女、
ジェニファ・チャンですが、栄伝亜夜と浜崎奏は予定した新幹線に間に合わず、
ジェニファ・チャンの演奏を聞き逃してしまいました。

その頃、風間塵は、ピアノ、欲しいなあ、と考えていました。
コンクールに入賞したら、
養蜂家の父親にピアノを買ってもらうという約束をしていたのでした。

風間塵の家にはピアノがありませんでしたが、そのことがいかに異常なことかも、
風間塵の念頭にはなかったのでした。

1日目の最終演奏者は、22番の高島明石です。
明石はバッハの「平均律クラヴィーア曲集 第一巻第六番ニ単調」、
ベートーヴェンのソナタ、第三番、第一楽章、
ショパンのバラード二番を弾きました。

明石の妻の満智子はその演奏を聴き、
あたしの夫は、音楽家なんだ、と思いながら拍手をしました。

睡眠時間を削って練習時間を捻出した明石の演奏は、
審査委員にも好評でした。

一次予選2日目には、
「ジュリアードの王子様」と呼ばれるマサルの演奏を聴きに、
若い女性が客席を埋めていました。

マサルを見て、亜夜は音楽を愛することを教えてくれた綿貫先生を思い出しました。
亜夜は綿貫のレッスンが大好きでしたが、綿貫は亜夜が11歳の時に病死しました。

マサルが演奏する、バッハの平均律クラヴィーアを聞いた亜夜は、
音楽がおっきい、と思いました。
マサルの演奏が終わると、こりゃ凄い、ほんとに優勝しちゃうかもねー、
と亜夜は奏に言いました。

2日目の一次予選が終わった後、亜夜はトイレに行きましたが、
そこで若い女の子2人が自分の噂をしているのを聞いてしまいました。

2人は、見ものだよね、栄伝亜夜、一次で落ちちゃったら笑えるよね、
怖くないのかな、あたしだったら、怖くて出られない、
またドタキャンしちゃったりして、などと話していました。

亜夜は、出るのをやめてしまおうか、と思いましたが、
浜崎学長や奏のことを考え、棄権することもできない、と思い直しました。

一次予選最終日。
風間塵の演奏の順番がやってきました。

風間塵は事前に、調律師の浅野に、
ステージの奥に置かれている3台のグランドピアノのうち、
右端のものを30センチ動かしてほしい、と頼んでいました。

しかし、ステージマネージャーの田久保寛は、
客の入りが多く、立ち見もいっぱいで、
壁の前に立っているお客さんが相当音を吸うと思う、
だから普段よりもパッキリ弾いたほうがいい、という内容をアドバイスしました。

それを聞いた風間塵は、こないだお願いしたピアノの位置を元に戻して、
今度は逆の方向に30センチずらしてください、と浅野に伝えてもらいました。

風間塵が演奏を始めると、ナサニエルは、
どうしてこんな、天から音が降ってくるような印象を受けるんだ?
と思いました。

マサルも、いったいどうやってピアノを鳴らしているんだ、
と舌を巻いていました。

マサルが演奏を終えて引き揚げると、
観客たちの拍手と歓声、悲鳴と怒号、熱狂がホールを揺らしました。

風間塵の演奏は、審査員に恐慌をもたらしました。
アンビリーバブル、ファンタスティック、奇跡的だ、
下品だ、いたずらに煽〇的だ、サーカスだ、
と、反応はまっぷたつに割れていました。

風間塵の演奏は、しばらく忘れていた、心の奥の柔らかい部分、
生々しい部分に触れてくるのだ、と三枝子は分析していました。
それは、誰もが持っている、胸の奥の小部屋、
「本当に」好きな音楽のイメージなのですが、
プロになると自分で自分に満足できる演奏などできないことが痛いほど分かってきて、
胸の小部屋はますます神聖な場所となります。

風間塵の演奏は、本人も忘れていたその小部屋を突然訪れ、
いきなり乱暴に開け放つため、扉を開け放ってくれたことに感謝する熱狂か、
いきなりプライベートルームの戸を開けやがって失礼なという拒絶かという、
極端な反応になって顕れるのでした。

栄伝亜夜は風間塵の演奏を聴き、この子は、音楽の神様に愛されてるんだ、
と思いました。

弾きたい、風間塵のように、弾きたい、かつてのあたしのように、
と思い、亜夜は演奏をしました。

かつて亜夜のファンだった明石は、やはり彼女はアイドルだった、昔も、今も、
と思いました。

ナサニエルは、マサルの強敵になるのは、カザマ・ジンではなくこの子のほうだ、
と思いました。

奏は、お帰り、亜夜ちゃん、やっと、やっとステージに帰ってきてくれたんだね、
と思いました。

演奏終了後、大ホールの廊下の隅のエレベーター前に行った亜夜は、
「――アーちゃん?」
とマサルに話しかけられました。
それを聞いた亜夜は、「マーくん?」と言いました。

マサルが子供の頃、日本からフランスに戻るときにト音記号のカバンをくれた女の子が、
亜夜だったのでした。

お互いに再会を喜び合い、亜夜は、マーくんって、ほんとに天才だったんだね、
と言いました。
綿貫先生が亡くなったことを伝えると、マサルはお墓参りしたいと言い、
一緒に行く約束をしました。

プレスらしき男女に取材を申し込まれましたが、マサルは亜夜の手を握り、
取材を断ってホールに入りました。

コンテスタント全員の一次予選が終わると、
審査委員長の70歳近いロシア美女、オリガ・スルツカヤが、
二次予選に進む24人のコンテスタントを発表します。

不利だと言われているトップバッターの、1番、アレクセイ・ザカーエフ、
12番、ジェニファ・チャン、22番、高島明石、
30番、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、
81番、風間塵、88番、栄伝亜夜などが残りました。

一次予選を突破した明石は、
ホールのロビーに貼られた自分の写真に、ピンクのリボンの花が付けられたを見て、
携帯電話でその写真を撮りました。
自分と一緒に映るように自撮りしようとして、試行錯誤していると、
雅美に見つかって笑われ、写真を撮ってもらいました。

翌日の午前中から3日間に亘る二次予選が始まります。

演奏時間は一次予選の倍の40分以内です。
有名作曲家の曲から合計3曲以上のほかに、
芳ヶ江国際ピアノコンクールのための委嘱作品、
菱沼忠明の「春と修羅」がありました。

唯一の新曲で現代曲である「春と修羅」は、宮澤賢治の誌をモチーフにしたもので、
長さは約9分です。

また、「自由に、宇宙を感じて」と指示された即興の箇所、カデンツァがあり、
コンテスタントたちを悩ませていました。

「春と修羅」の部分がどうしても浮いてしまうので、
普通のコンテスタントは最初か最後に持ってきていましたが、
亜夜と風間塵は、あえて「春と修羅」をプログラムの真ん中に持ってきていました。

マサルと亜夜は2人でジェニファ・チャンの演奏を聴きました。
しかし、亜夜は、ダイナミックなのに単調、アトラクションだと感じました。

マサルと亜夜は「春と修羅」の話をします。
カデンツァの部分は、普通のコンテスタントは事前に譜面を起こすものであり、
マサルもそうしていましたが、亜夜は本当に即興で弾くつもりだと言い、
マサルを驚かせました。

明石の演奏順がやってきます。

明石は、1曲目に「春と修羅」を弾きます。

文学作品の解釈こそ、歳を経た者のほうが深いはずだ、
と明石は考え、練習時間のない中、1人で曲と向き合っていました。
改めて通勤時間などに賢治の誌や小説を読み返し、
ほぼ日帰りという強行軍で岩手に行き、
作品の舞台となったと言われる場所を見て回りました。

カデンツァには「あめゆじゅとてちてけんじゃ。」をメロディに乗せて演奏しました。

「春と修羅」以外のショパンのエチュード、リストの練習曲、
ストラヴィンスキー、ペトルーシュカからの三楽章も、調子よく弾きました。

明石の演奏を聴いた風間塵は、音符たちを「外へ」連れ出してやる、
という、ホフマンが亡くなる直前に交わした約束を思い出していました。

その日の夜、三枝子とナサニエルは、
風間塵について聞くために菱沼を会食に誘いました。

実は風間塵は、限りなく他人に近い、ユウジの遠い親戚でした。

風間塵の父親は養蜂家で常に移動生活で、自宅にピアノを持っていませんが、
行く先々でピアノのあるところを知っていて、
そこで弾かせてもらうのだそうだ、という内容を菱沼は言いました。

楽譜も持っていないから、聴いた曲は一度で覚えるか、
その場その場で即興で弾いていたのだそうです。

おまえさんたちに、あの子が採点できるのかい?
と菱沼は苦笑しました。

審査員は審査するほうでありながら、審査されています。
審査することによって、その人の音楽性や音楽に対する姿勢を露呈してしまいます。

それは、小説の新人賞、文学賞とかも同じですね。
どうしてこの人の作品を落として、この作品を受賞させたんだろう?
と思うような選考委員はいくらでもいます。

二次予選2日目のトップバッターはマサルです。

「春と修羅」のカデンツァを、
ジェニファ・チャンなどは師匠に頼んで作曲してもらっていましたが、
マサルは自分で書いていました。

マサルの弾いた「春と修羅」を聴いた亜夜は、
先生、やっぱりマーくんは凄かったですよ、
と綿貫に心の中で報告しました。

「春と修羅」に続いて、ラフマニノフの練習曲、「音の絵」、
ドビュッシーの練習曲「オクターヴのための」、
ブラームスの変奏曲を演奏します。

演奏を終えたマサルがロビーに行くと、ジェニファ・チャンに話しかけられました。

同じジュリアードのピアノ科学生、チャンは、
マサルに強烈なライバル心を抱いていて、
学校内でも2人はライバルとみなされていましたが、
マサルのほうではチャンをライバルだと思ったことはありませんでした。

チャンはマサルに少なからぬ恋心も抱いていて、
どうしてマサルが亜夜と一緒にいるのかと訊ねました。

幼馴染だと伝えると、チャンは亜夜のことを燃え尽き症候群だと言い、
いったんケチのついたアンラックな子と一緒にいると、
マサルの運まで吸い取られるわよ、と言いました。

マサルは、話して通じる相手じゃない、と内心、溜息をついて、
話を切り上げました。

ただ、チャンと話をしたせいか、亜夜に恋愛感情を抱いているのを自覚し、
しばらくのあいだ他のコンテスタントの演奏に集中できませんでした。

マサルのカデンツァを聴いた亜夜は、弾いてみたくて居ても立ってもいられなくなり、
亜夜の担当教授の友人で芳ヶ江でピアノ教室を開いている、
平田先生の自宅兼レッスン場に行きました。

しかし、そんな亜夜のことを風間塵が尾行していて、窓を叩き、
一緒にここでピアノ弾いてもいい? と訊ねました。

亜夜は塵と一緒にピアノを弾き、いつのまにか局が変わり、
フライ・トゥ・ザ・ムーンや、ベートーヴェンの「月光」の第二楽章、
第三楽章や、「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」を弾きました。

飛べる、どこまでも飛べる、と思った亜夜は、
いつしか天井を見上げ、更にそこを突き抜けて高い空に浮かぶ月を見ていました。

亜夜は、そこで「春と修羅」のヒントを摑みました。

二次予選3日目。
奏とマサルは、亜夜を見て、なんだか今日は感じが違う、と言いました。
オトナっぽくなったと言われた亜夜は、
新曲とか、コンクールとか、こうしてみんなでここに集まってピアノ弾いてることって、
すごく面白いことなんだなって思ったの、そのせいかもしれない、と言いました。

風間塵の演奏が始まります。
塵のドビュッシーの練習曲、第一曲を聴いた奏は、
この子の演奏は、どの曲も、今このステージで、
彼自身が即興で紡ぎ出したフレーズのように聞こえる、と考えていました。

二曲目はバルトークの「ミクロコスモス」で、
ジャズっぽい気まぐれなメロディが塵によく似合っていました。

しかし、三曲目の、風間塵の紡ぎ出した「春と修羅」のカデンツァは、
すこぶる不条理なまでに残虐で、凶暴性を帯びていました。

明石は、「修羅」なのだ、風間塵は、「修羅」をカデンツァで示した、
と考え、自分の甘さを思い知らされたような気がしました。

四曲目はリスト、「二つの伝説」の第一曲、
「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」です。

本当に、鳥と話している、と三枝子は考えた後、
皆が譜面を再現し、譜面の中に埋もれているものを弾こうとしているのに、彼は違う、
むしろ、譜面を消し去ろうとしているかのような――と考えました。

最後の曲はショパン、スケルツォ第三番、嬰ハ短調で、
目覚めるような幕切れがあり、アンコールがありました。

塵の次に演奏する亜夜の一曲目は、「音の絵」、
二曲目はリストの「超絶技巧練習曲集」のひとつ、「鬼火」、
その次が「春と修羅」でした。

亜夜は「春と修羅」を弾きながら、後ろに母親がいるのを感じ、
頬に温かいものが伝いました。

カデンツァでは、母なる大地を表現します。

亜夜は、あの凄まじい「修羅」に満ちた風間塵のカデンツァを聴いて、
それに応えたのでした。
自然が繰り返す殺戮や暴力に対して、
それらをも受け止め飲み込んでしまう大地を描きました。

その後、ラヴェルのソナチネ、メンデルスゾーンの「厳格なる変奏曲」を弾きました。

二次予選が終わり、すぐに結果発表です。

二次予選に残った24人から、三次予選に残るのは12人です。

1番、アレクセイ・ザカーエフ、
30番、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、
81番、風間塵、88番、栄伝亜夜などが三次予選に残りました。

しかし、ジェニファ・チャンと、明石は落ちてしまいました。

終わった、俺のコンクールは終わったのだ、
となぜかさっぱりとした心理で思いながら、明石は妻に電話しました。

一方、ジェニファ・チャンは審査委員長のオリガのところにやってきて、
真正面から意議を唱えました。

しかし、ナサニエルはチャンに、君のテクニックは素晴らしい、
音楽性を否定するわけではない、しかし、1人や二人ではない少なからぬ数の審査員が、
君が三次予選に進めないと考えたのは事実である、
その理由を理解できないところに、
君が今回三次予選に進めなかった要因があるとは思わないか、と説明し、
チャンはやがて顔を歪めてワッと泣き出してしまいました。

チャンが会場を辞去した後、マサルは師のナサニエルに、
亜夜を紹介しました。

おまえ、競争相手のコンテスタントに惚れてどうする、
しかも、相手はこのコンクールでおまえの最大級のライバルとなる相手ではないか、
とナサニエルは心の中で叫んだようでしたが、
ナサニエルもマサルより少しばかり年上の時期、三枝子に夢中だったため、
雷を落とすのを我慢しました。

翌日はスタッフのための休みで、亜夜、マサル、奏、塵の4人は、
11月の浜辺を散歩していました。

海を離れ、商店街の中に、三味線の店をいくつか見つけました。
三味線を見ている亜夜、マサル、塵の写真を奏が携帯電話のカメラで撮ると、
他の3人も写真を撮りたがりました。

翌日から、2日間の第三次予選が始まります。

演奏時間は60分を限度とし、
事前に提出したプログラムを自由に弾いていいことになっています。

12人中6人が本選に進むことができ、本選に進めば入賞確定です。

1番のアレクセイ・ザカーエフは、これまで、
コンクールでは不利な1番という数字を引き当てたせいで、
半ば開き直って演奏していました。
期待せず、意識せずマイペースにしたことが、
本来のアレクセイ・ザカーエフの闊達かつおおらかな演奏を引き出していました。

しかし、入賞を意識してしまったせいで、欲が出て、動揺し、
つんのめるような速さで演奏してしまいました。
それでも、最後には何とか立て直して演奏を終えました。

マサルの演奏の番になります。
一曲目はバルトークのソナタで、ピアノを打楽器として演奏しました。

二曲目は、シベリウス、「五つのロマンティックな小品」でした。
三曲目の、フランツ・リストの大曲、ピアノ・ソナタロ短調を、
マサルは19世紀グランドロマンをイメージして弾きました。

三次予選1日目が終わると、風間塵は、
芳ヶ江にいる間にホームステイさせてもらっている、
父の友人である大きな花屋の党首、富樫に頼み、活け花を教えてもらっていました。

富樫の「野活け」を見て、塵は、活け花って音楽と似てますね、と言いました。

塵は、ホフマンと約束した、
狭いところに閉じ込められている音楽を広いところに連れ出す、
という約束について富樫に話し、
富樫さんが活けると、枝も花も活きてるんだよなあ、
まるで、自分が殺されたことにぜんぜん気が付いていないみたいに、と言いました。

第三次予選最終日。
亜夜はコンクールを満喫していましたが、それがお客さんとしての満喫であり、
コンテスタントとしてのコンクールに興味を失っていることに気付き、
愕然としていました。

一方、ホフマンとの約束の「外へ」を考えていた風間塵は、
実際に外に出て雨の中を歩き、空を見上げていました。
遠いところで、低く雷が鳴っていました。

自分の番になり、舞台袖に戻ると、調律師の浅野に、
天まで届くような音で、ホフマン先生に聞こえるようにしてください、
ぱっきりとは全然逆で、お願いします、と頼みました。

亜夜は、お願い、あたしを引き戻して、その、とてつもなくつらく、
とてつもなく素晴らしい世界に戻る理由をちょうだい、
と心の中で塵に頼んでいました。

塵の一曲目はエリック・サティの「あなたがほしい」です。
二曲目はメンデルスゾーンの「無言歌集」から、有名な「春の歌」、
三曲目はブラームスの「カプリッチョ ロ短調」を演奏します。

しかし、四曲目に移る前に、再び「あなたがほしい」を弾き始めました。

提出したプログラムと異なる演奏をして、規定違反ということになりはしまいか、
とマサルは不安を覚えました。

二度目の「あなたがほしい」がリタルダンドし、
ドビュッシー「版画」の「塔」、「グラナダの夕べ」、「雨の庭」を弾きました。
すぐにラヴェルの「鏡」を弾き、三たび「あなたがほしい」を演奏します。

亜夜はそれを聴きながら、舞台の上の風間塵と一体化しているように感じ、
会話している幻想を見ました。

幻想の中で、塵は、世界中にたった一人しかいなくても、
野原にピアノが転がっていたら、いつまでも弾き続けていたいくらい好きだなあ、
と言いました。
誰も聴く人がいなくても、鳥は世界に一羽だけだとしても歌うでしょう、
それと同じじゃない?
おねえさんだって、世界にたった一人きりでもピアノの前に座ると思う、
と、幻想の中で風間塵は言いました。

それを聞いた亜夜は泣き、ありがとう、とステージに向かって心の中で呟きました。

塵の最後の曲は、サン=サーンスの「アフリカ幻想曲」ですが、
編曲をしたのは風間塵本人でした。

独創的なアレンジで、極彩色のアフリカの地を飛んでいるような演奏でした。

三枝子は、足元からうねるグルーヴ感を感じ、
ナサニエルは、ドライヴ感としか言いようのない、
内臓がじわりと温められて、全身の血が逆行する感じを感じていました。

演奏が終わっても、観客の中ではまだ音が鳴っていて、
30秒ばかり経って風間塵がよろりと立ち上がり、お辞儀をすると、
狂乱としか言いようのない悲鳴と拍手が、
嵐のように5分以上もホールを揺らし続けました。
なかなかアンコールが止まなかったため、
亜夜の演奏は、予定よりも10分遅れることになりました。

亜夜は、自分が馬.鹿だったと痛感しましたが、
ステージマネージャーの田久保が「では、栄伝さん、時間です」と言うと、
晴れ晴れをとした笑みを浮かべてステージに出ました。

一曲目はショパンのバラード、二曲目はシューマンのノヴェレッタンを弾きます。

ノヴェレッタンを聴きながら、
マサルは子供の頃の亜夜と自分の姿を繰り返し目に浮かび、泣いていました。
周りの観客も皆涙をこらえていました。

三曲目はブラームス、ピアノ・ソナタ三番です。
ナサニエルは、そこに亜夜の人生を見ていました。

最後の、ドビュッシーの「喜びの島」を聴きながら、
三枝子は、同時にホフマンの声を聞いていました。

皆さんに、カザマ・ジンをお贈りする、というホフマンの推薦状を思い出し、
今あたしが目にしているものが、その答えなのだ、と三枝子は考えました。

爆発的な歓喜を体現しているコンテスタント、
コンクール中に進化を遂げ、花開いていく者たち、
風間塵の才能が起爆剤となって、他の才能を秘めた天才たちを弾けさせているのだ、
というようなことを、三枝子は考えました。

三枝子たちは既にたくさんの「ギフト」を受け取っていて、
塵は「災厄」なんかではなかったのでした。

亜夜の演奏が終わると、ロビーで雅美が明石に話しかけました。

亜夜の演奏を聴いた雅美は、演奏聴いて、どういうわけか、
子供の頃のこととか、小さい時の両親の顔とか、
家族のこととか、次々に浮かんできちゃってさー、ほんと、
なんだか泣きそうになっちゃった、と明石に言いました。

それを聞いて、クラシックを聴きつけていない普通の人である雅美が、
明石と同じ感動を感じていたという事実が、
どうしようもなく明石を感激させました。
やはり、音楽は素晴らしい、コンクールを目指してきてよかった、
という感慨がいっぺんに込み上げてきて、
とめどなく涙が溢れてきました。

明石は、ロビーにやってきた亜夜に話しかけ、
素晴らしい演奏をありがとう――帰ってきてくれて、ありがとう、と言いました。

亜夜はハッとしたような表情になり、亜夜も泣いてしまいました。
明石と亜夜が抱き合って泣いていると、マサルと奏がやってきて、
2人を見て呆然としていました。

明石と亜夜も、だんだんこの状況がおかしく感じてきて、やがて噴き出し、
笑いながら謝りました。

明石が自己紹介をしようとすると、亜夜は遮って、高島明石さんでしょう、
あたし、あなたのピアノ好きです、次の演奏も聴きに行きたいです、と言いm最多。

悪寒いも似た身震いが、全身を貫き、このコンクールは始まりだ、
今ようやく、俺は、自分の音楽を、音楽家としての演奏を始めたところなのだ、
と思いました。

その後、審査結果発表時間になっても、結果が出ませんでした。

誰かが失格になったという噂が広まり、
プログラム通りではなく、繰り返しエリック・サティの「あなたがほしい」を弾いた、
風間塵が失格になったのではないか、という既定事実が広まりました。

そこへ、富樫がお花を活けるのを見に行っていた風間塵が帰ってきて、
自分が失格になったという噂を聞いてショックを受けました。

やがて、審査委員長のオリガが現れ、
予期せぬ事態でコンテスタントの1人が失格になったと告げました。

そのコンテスタントとは、「第三次予選のあと体調を崩して急遽帰国した人でした。
もうこれ以降演奏ができないのか確認に時間を要しましたが、
虫唾炎で緊急手術をして今も入院中で、本選には出られなかったのでした。

風間塵、亜夜、マサルの3人は全員本選に出場が決まりました。

また、明石のところにもコンクール事務局から電話がかかってきて、
明石に奨励賞と菱沼賞が贈られることになったと言われました。

菱沼賞は、菱沼が今大会で『春と修羅』を演奏したコンテスタントの中から、
いちばんよい演奏だったということで選ばれた賞でした。

奨励賞は、入賞は逃しましたが、印象に残る、
将来性のあるコンテスタントに贈られる賞でした。


翌日と翌々日は本選のリハーサルで、4日後には表彰がありました。

本選は、オーケストラとの協奏曲です。

風間塵は、まずオーケストラだけで演奏してもらい、
楽団員の位置を移動させました。

チューバ担当が不満そうな声を漏らすと、
そこは床がひずんでいて、密度が違うので、そこの真上に立つと、
音が綺麗に伸びていかないのだという意味のことを言いました。

塵はオーケストラとの共演が初めてとは思えないくらい大きな音で弾き、
コンサートマスターたちを驚かせました。

本選2日目、風間塵は演奏をしながら、幻想の中で亜夜と会話をします。
塵は、音楽を、世界に連れ出す、というホフマンとの約束について話し、
亜夜にも、音楽にお礼をするという約束をさせました。

塵の演奏が終わると、亜夜は、
13歳のときにドタキャンしたコンサートで弾くはずだった、
プロコフィエフの2番を弾きました。

コンクール終了後、ナサニエルは元妻の三枝子とよりを戻したいと言いました。

審査結果は、第1位がマサル、2位が亜夜、3位が塵で、
聴衆賞はマサル、奨励賞はジェニファ・チャンと明石、
菱沼賞は明石が受賞しました。


というあらすじなのですが、最後の方で、
高島明石の努力が報われたところで泣いてしまいました。

やっぱり、風間塵、栄伝亜夜、マサルの3人は、
しまうましたと違って「天才」だから、
どうしても感情移入しにくい部分があるんですよね。

その分、天才ではなく、親が富裕層でもないことが強調されていて、
働きながらコンクールに挑戦した明石に感情移入してしまったので、
努力が報われた時は本当に嬉しかったです。

星新一「組織」のネタバレ解説

主人公の「私」は、過去のちょっとした行為をもとに、
限りない恐喝をつづけてくる男に悩まされていました。

ホテルのバーで飲んでいるときに、
自分は推理小説を書くのが仕事だと言い、
バーテンに、こうすれば完全犯罪になるはずだ、
といった意見はないか聞きました。

バーテンは、重要なのはアリバイでしょう、
アリバイを作る組織に頼めばいい、というようなことを言いました。

バーテンは、主人公が小説家ではなく、
これから殺人をしようとしていることも見抜いていて、
その「組織」がこのホテルだと打ち明けました。

ホテルの支配人を紹介してもらい、
ホテルの印の押してある宿泊の証明書をもらい、
つぎに従業員たちから証言の内容を書かせた書類を取り、
署名させ、拇印を押させました。

支配人に対して、あまり支払い能力がないことを力説すると、
彼はちょっと顔をしかめましたが、すぐににこにこした表情に戻りました。

一応、泊まっていることにする4階の部屋に案内してもらい、
あちこちに指紋をつけました。

夜のふけるのを待ち、主人公は自分を恐喝していた男を殺しました。

2日後、主人公は警察に呼び出され、
2日前の夜には、どこにおいででしたか、と刑事に訊ねられました。

主人公は、ホテルにとまっていました、
ホテルの従業員たちに聞いてみて下さい、
あの夜、わたしが四階の一室から一歩も出なかったと、証言してくれるでしょう、
と刑事に言いました。

すると刑事は、「主人公の次の晩にあの部屋にとまった客が、
ベッドの下から死後20時間、
つまり主人公がとまっているあいだに絞殺されたと認められる死体を、
発見したのだということを言いました。


というあらすじなのですが、主人公は支払いをケチったせいで、
金払いのいい別の客のスケープゴートにされてしまったのでしょうね。

ただ、どうせ殺人の罪で逮捕されるならと、
主人公がホテル側の犯罪を暴露する可能性があるので、
ホテルのやり方もあまり賢くないな、と思いました。
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Author:しまうました
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