西尾維新「人類最強のときめき」2話「人類最強のよろめき」のネタバレ解説

ER3システムのニューヨーク支局支局長の因原(いんぱら)ガゼルと、
四神一鏡の一角である檻神家のエリート職員の長瀞とろみが、
哀川に仕事の依頼をしに来ました。

活字を滅ぼしてください、とふたりは言いました。

ER3システムの女性若手研究員、ドクター・コーヒーテーブルが、
人類を滅ぼしうる、たった1冊の本をプログラムに書かせました。

その本は、面白過ぎて、寝食を忘れて読みふけってしまうような傑作でした。

比喩ではなく、寝食を忘れて読みふけってしまうので、
衰弱して死んでしまいます。

既に数百人単位で死者が出ていました。

その小説は、一人一人の好みに合わせて、自動生成される小説です。

アプリの形で配布される電子書籍にイメージが近いです。

スマートフォンのカメラで定点撮影することによって、
生成プログラムは画面に表示された文章を読む読者の、
リアルタイムな反応を観察し、
次のページを即座に『執筆』することができます。

小説家プログラムの正式名称は『ライト・ライター』で、
生成される該当の小説は『パブリック・ブック』という名前です。

『ライト・ライター』は、古今東西の、
あらゆる『小説』を電子化し、所蔵していて、
統計学に基づいて小説を書くシステムです。

ドクター・コーヒーテーブルは、
『ライト・ライター』を一般社会へ無料配布しようとしていました。

そんなことになったら人類は本当に滅亡してしまいます。

ガゼルの権限で、一般社会へのぱっひょうをストップをかけようとしましたが、
それを察したドクター・コーヒーテーブルは、籠城してしまいました。

ER3システムでは個々の研究者の領分を侵すことはタブ.ーなので、
非公式ながら、哀川に頼るしかなくなったのでした。

そのプログラムは、文章の解析よりも、表情の解析のほうが、
ずっと手がかかります。

ドクター・コーヒーテーブルは、哀川潤の妹とも言うべきロボット、
由比ヶ浜(ゆいがはま)ぷに子のOSとして採用されていたプログラムを、
『ライト・ライター』の読心術に転用していました。
だから哀川に仕事の依頼がきたのでした。

哀川はアメリカのテキサス州の砂漠へ飛び、
そこに隠されているはずのドクター・コーヒーテーブルのラボラトリーを捜します。

しかし、砂漠に大穴が開いていたため、ラボラトリーはすぐに見つかりました。

地下におりていくと、
国会図書館レベルの蔵書量の紙の書籍が詰まった本棚がありました。

最下層では、髪が半分以上、白髪化し、
衰弱したドクター・コーヒーテーブルが待っていました。

ドクター・コーヒーテーブルは、仲間の研究者から、
哀川が来訪することを知らされ、
バッテリー残量がぎりぎりのデジタルデバイスで、
わざと『パブリック・ブック』を読み、衰弱していたのでした。

わざと衰弱することで、哀川が暴力的に解決するのを防いだのです。

ドクター・コーヒーテーブルは哀川に1冊の紙の書籍を渡します。

実はそれも『パブリック・ブック』で、白紙に文字が浮かび上がりました。

ページをめくる指から、バイたるチェックをおこない、
真っ黒な微生物によって文字が書かれました。

このままだと哀川も死ぬまで本を読み続けることになってしまいましたが、
そこで哀川は、「熱中のあまり、読んでる途中に力尽きて死んじゃうんじゃ、
誰もこの本を読了できないとしか言えないんじゃね?
と言いました。

完結していなければ、小説じゃありません。
『パブリック・ブック』は永遠に終わらない未完の大作なのでした。

すると、そんなことは全く考えていなかったドクター・コーヒーテーブルは、
無言で籠城をやめ、ラボラトリーを出ていきました。

哀川は心ばかりの供養だと思い、製本版『パブリック・ブック』を、
図書室の書棚へと差し込みました。


というあらすじなのですが、しまうましたは、
最初の長瀞とろみと因原ガゼルの概要説明があった時点で、
読んでいる途中で死ぬのなら誰も最後まで読めないんじゃね?
と気付いていました……。

というか、別に読んだ人を殺すのが目的じゃないんなら、
読み始めてから丸1日くらいが経過した頃に完結するように、
調整すればいいだけだと思うのですが。

最初は究極の小説を求めて研究を始めたのに、
途中で目的が読者を殺すことに変わってしまったのかもしれませんね。

西尾維新「人類最強のときめき」1話「人類最強のときめき」

人類最強のときめき (講談社ノベルス)


人類最強の請負人・哀川潤シリーズ第3弾です。

第二版以降はどうなるか不明ですが、初版本には、
哀川潤の真っ赤な名刺がオマケとして挟まれています。

それにしても、わざとやってるんでしょうけど、
「初恋」「純愛」「ときめき」と来ているので、
何も知らない人が本屋で哀川潤シリーズの表紙を見かけたら、
恋愛小説だと思ってしまうかもしれませんね。

さて、コンプレックスの強いエリートである、
四神一鏡(ししんいっきょう)の哀川潤係、
長瀞(ながとろ)とろみが哀川さんに仕事を依頼しにきました。

海底火山が噴火し、大海原に新しい島が生まれました。

しかし、その島は絶妙な海域に誕生してしまい、
四神一鏡やER3システムを含む12の大組織が、
所有権を主張していました。

潤さん、しばらくの間、その島に滞在してもらえませんか?
と長瀞とろみは頼みました。
世界的にアンタッチャブルな哀川がその島に住んでくれれば、
どんな組織もどんな権力も、その島には手が出せなくなるから、
という理由で。

そんなわけで哀川は、何もない、
生まれたての火山島へと移住することになりました。

今回は同伴者はいなくて、哀川1人です。

上空800メートルからその島に落下しましたが、何もない島なので、
到着5分で、暇で暇でしょうがなくなり、
哀川は火口に近づきました。

当面の食料やテントやらが入ったザックを背負い、
エベレストの半分くらい(4400メートルくらいです……。
富士山より高いです)の高さを登り、登頂しました。

そこで寝転がる時、その場所に小さな双葉があるのを見つけ、
面はゆい気持ちになり、ときめいてしまいました。
哀川はその双葉を潰さないように、数メートルずれて寝ました。

そして翌朝、哀川は蔦(つた)もしくは蔓(つる)に、
全身を締め付けられた状態で目を覚ましました。

哀川が寝ている8時間くらいの間に、あふれんばかりの緑に覆われ、
立錐の余地もないような樹木島になっていたのでした。

この島では、植物が異常な速度で成長し、しかも意思を持って、
哀川を襲っているのでした。

ザックはどこにも見当たりませんでした。

歩こうとすると、草同士が絡んで、もつれている場所に足を取られました。
さらに、落下してきた木の実が脳天を直撃しました。

そのごの移動経路も散々で、茂みが隠していた崖から落ちそうになったり、
巨大な食虫植物に食われそうになりました。

哀川は木登りをして、島全体が緑に覆われていることを知りました。

もうこの任務は『達成不可能』とジャッジして、
引き上げることにしましたが、
酸素濃度が異様に濃厚になっているせいで、
下山した頃には酸素中毒で体力を消耗していました。

哀川は花粉のせいで花粉症になり、
植物の枝に襲われ、死にそうになりました。

しかしその時、「ガス状生命体『ふれあい』のことを思い出し、
枝をそこらの木の幹へとこすりつけ、ねじ込むように回転させるという、
原始的な方法で火を点けました。

酸素供給過多で、花粉が蔓延していたこともあり、
粉塵爆発のようになり、島中が消し炭になってしまいました。

普通の人間なら死んでしまいますが、
哀川は人類最強の請負人なので、普通に生きていましたw

昨日の晩、哀川が発見した双葉は、
四神一鏡のヘリコプターが哀川と一緒に落としてしまった
外来種だったようでした。

しかし、植物は全滅してしまったわけではなく、
真っ黒な大地に、小さな双葉がまた生えていたのでした。


というあらすじなのですが、今回の敵はまさかの植物でしたね。

植物が敵というと、あまりピンチに感じられませんが、
毒のある植物は多く、毎年多くの人が植物のせいで亡くなっていますし、
日本は花粉症のせいで経済的な損失も多いですし、
侮ってはいけませんね。

というか、日本中の山で放置されているスギを、
いい加減何とかしてほしいです……。

花粉症のメカニズムが判明してから数十年が経つのに、
どうしてまだ根本的な解決ができないのでしょうか……。

時雨沢恵一「キノの旅」8巻1話「歴史のある国」のネタバレ解説

師匠と荷物持ちさんは、大きくはありませんが豊かそうな国を訪れました。
その国では悪徳警察が権力を牛耳ってのさぼっていました。

荷物持ちさんが手持ちの宝石を宝石屋に売ると、警官に囲まれました。
違法.薬物所持の疑いがあると言い、
警官は荷物持ちさんのポケットから小さな袋を取り出した素振りをして、
罪をでっち上げました。

荷物持ちさんが警察の車に乗せられると、
宝石屋の店主が警官にお金を渡されているのが見えました。

場面が変わり、荷物持ちさんが逮捕されたと、中年警官が師匠に告げました。

師匠は中年警官に金貨を渡し、荷物持ちさんと面会させてもらいます。

荷物持ちさんは、自分の鞄に入っている、銀貨434枚で手に入れたものを、
次の国で売ってくださいと師匠に言いました。

ホテルの部屋に戻った師匠は、荷物持ちさんの荷物を開け、
その底に入っていたプラスチックのケースの脇の番号鍵を、
434に合わせてケースを開けました。

ケースには、暗視装置セット、暗殺用サイレンサー、
金属探知機に反応しない暗殺用プラスチックナイフ、
暗殺用ワイヤー、暗殺用毒物カプセル、
カプセルを仕込める暗殺用刺殺ペンなど、
いろいろな暗殺用グッズが入っていました。

師匠は買い物をし、出国しました

夜になり、師匠はリヴォルバーで鉄製の鉤爪を撃ち、
城壁のてっぺんに引っかけました。
鉤爪にはワイヤーが結ばれていて、それを使って師匠は城壁を登り、
国の中に侵入しました。

師匠は警官を襲って制服を追い剥ぎし、
国中のゴミ箱を燃やして混乱させ、その隙に留置場に侵入しました。

師匠は見張りの警官を気絶させ、
荷物持ちさんが入れられていた檻の鍵を開けました。

その後、師匠と荷物持ちさんは3階にある武器庫と食料庫へ行き、
武器と爆薬と食料を奪い、時計塔の屋上に行きました。
一機しかないエレベーターは、
ケーブルを爆薬で切って地上まで落としました。

夜が明けると、師匠と荷物持ちさんは、「塔の上から狙撃ライフルを使って、
片っ端から警官の足を撃っていきました。

それから3日3晩立てこもり、警官の足を撃ち続け、士気を下げさせました。

これ以上事態を長引かせて負傷者を増やすよりも、
“国外退去処分”という名目を通す方が結果的に被害は少ないと、
その国も理解しました。
師匠と荷物持ちさんは、政府から金を巻き上げて、
さらにそれを持ってきた警察の長官を人質にして、
警察の車で城門まで送ってもらいました。
めでたしめでたしです。


それから数十年が経ち、キノとエルメスはその国を訪れました。

その国の時計塔の入り口脇に石碑がありました。

通りがかった、4、5歳くらいの孫娘を連れた老人が、
キノとエルメスに解説してくれます。

老人が若かった頃、この国には政治腐敗が横行していて、
癒着した警察も悪行を働く有様でした。

そんなある時、「入国した2人の正義感溢れる旅人が、
民衆に代わり立ち上がり、この政府の建物に陳情に訪れ、
熱弁を振るったのだそうです。
そして2人の熱意に打たれた政治家や警察高官は、
それまでの行動をいたく恥じ、以降悪いことをしなくなったのでした。

しかし、キノが、その足はどうされたんですか?
この国のご老人、特に男性は、杖をついている方が多く見受けられますが、
と訊ねると、老人は孫娘を連れて逃げていきました。


というあらすじなのですが、師匠と荷物持ちさんのおかげで、
悪徳警察は力を失い、民衆が革命を起こし、
この国は平和になったのでしょうね。

この国の警察は、敵に回してはいけない相手を敵に回してしまったのでしたw

時雨沢恵一「キノの旅」8巻口絵2「悪いことはできない国」のネタバレ解説

キノとエルメスは、国民全員が、
眼鏡のような機械で看視されている国を訪れました。

一見ごく普通の眼鏡でしたが、レンズのあるカメラ本体と、
記録装置と電源がありました。

キノもその眼鏡をかけるように審査官に言われます。
そのカメラが、キノが見たものを記録し、
警察が令状を取得すると、被疑者の記録を見ることができ、
犯罪行為は確実にばれます。

“悪事は絶対にばれる”ことがはっきりしているので、
このシステムが導入されて以来数十年、治安は劇的に改善されました。

装置を充電するときには、
持ち主の姿がカメラに映るようにしないといけません。

キノは、交通事故などがあった場合、
エルメスにも眼鏡がついていると便利かもしれない、と言い、
入国審査官はエルメス用のをすぐに1つ作りました。

3日間滞在したキノは、出国する城門の審査官に、
よければ、この眼鏡をそのままいただけないか、と頼みました。
次の国についたとき、
この国ではこんな素晴らしいものがあると紹介したいのだと言いました。

審査官は、そういったことでしたら差し上げましょう、と言いました。

出国したキノは、その国の城壁が完全に見えなくなってから眼鏡を外し、
小さなピンで「装置の作動を止め、キノ達の記録も消去しました。

次の国では、この眼鏡を売って大儲けする計画だったのでした。


というあらすじなのですが、今までいた国では、
その眼鏡は監視装置として働いていましたが、
別の国に行けば「盗.撮カメラとして使えますからね……。

大金を出しても欲しがる人はいるでしょう。


ところで、この話には貴重な眼鏡っ娘キノの挿絵が掲載されていますが、
眼鏡も悪くないな、と思いました。

時雨沢恵一「キノの旅」8巻口絵1「道の国」のネタバレ解説

キノの旅VIII the Beautiful World (電撃文庫)


キノとエルメスは、とても素晴らしい道路がある国を走りながら、
気怠そうに会話をしていました。

この国の人が皆死んでしまっていましたが、
その理由は不明でした。

そして、とても素晴らしい道路は終わりが見えませんでした。

一昨日からずっと走っているのに、
出国する予定の西の城門が見えませんでした。

今日中に辿り着けないと、1つの国には3日間しか滞在しない、
というルール違反

というあらすじなのですが、国に生きている人間が誰もいないせいで、
国を横断するとどれくらい時間がかかるか聞けなかった、
というのがこの話のポイントですね。

ただ、最初の1日半を走った時点で、入国した城門に引き返せば、
3日ルールは守れたのではないかと思います。

しかし、そうなると3日間が丸々無駄になってしまうので、
本末転倒ですがw

時雨沢恵一「キノの旅」7巻「あとがき」のネタバレ解説

今回のあとがきは、何とカラーです。

普段なら黒星紅白さんによるカラーの挿絵があるページに、
「カラーなあとがき」があります。


しかし、せっかくカラーなのに、カラフルなのは最初のタイトルだけで、
本文は青色一色なのですが……。


内容は、アニメ化されて嬉しいということと、
キノの旅のひな形、1巻「平和な国」の館長の最後の台詞

ええ。キノさん。あなたがあなたの子供を宿して、
その子のぬくもりを自分の中に感じた時にきっと

を思いついたのは、今から10年前で、
学生だった頃だということなどが書かれています。


そのころ、10年後の自分への質問として
“夢は、叶えたか?”
と日記に書いていたそうです。

本当に狭き門をくぐりぬけてライトノベル作家になり、
夢を叶えたのだから、凄いですよね。


せっかくなので、
しまうましたも10年後の自分へ向けて質問を書いておこうと思います。


“ブログが書籍化されて作家デビューするという夢は叶ったか?”
と。

星新一「乾燥時代」のネタバレ解説

禁酒法が成立した未来の世界の話です。

ビルの80階に住む80歳の老人は、
機械に世話されながら、ぼんやりと暮らしていました。

むかしの老人たちは、どんな余生をすごしていたのだろう、
と思い、図書館に調べに行ってみたことがありましたが、
現在の社会に合わない風俗の記録はすべて抹消されていました。

夜になり、老人はビルから出ました。

自然が全くない「死の谷」の通りを歩き、
老人は2ブロック離れたビルの地下にある、
秘密のクラブに入りました。

もとは学者だった男が1人で経営している小さなクラブは、
ひそかに酒を飲むことのできる店でした。
もちろん非.合法なので、
店を出るときには酔いが覚める薬を飲まないといけませんでした。

他の客がいない店内で、老人は酒を飲み、店の主人に、
どこで酒を造っているのか聞きました。

蛇口をひねると、いつも酒が出てきますが、
そのパイプのもう一方のはじは、過去につながっているのだそうです。

かつては学者だった主人は、タイムマシンを作り、
遠い昔に行き、自動的に酒を造る装置を置いたのだそうです。

しかし、その話をしている途中で、酒の流れがふいに止まってしまいました。

パイプがこわれたので修理に行くという主人に頼み、
老人は一緒にタイムマシンに乗って過去に連れて行ってもらいました。

老人は過去の光景に見とれました。
季節は夏で、緑の葉をいっぱいにつけた林、そのあいだを舞う白いチョウ、
草いきれ、水の流れる音がありました。

その時、老人は、
ふしぎそうな顔をして、川の水をくんでいる若者を見つけました。

主人と若者のあとをつけると、「若者はワラぶきの家に入りました。

若者は父親に向かって、お父さんの好きなお酒を手に入れたい、
そう考えながら歩いていると、いいにおいがしてきて、
滝のそばの水をくんでみると、お酒だった、
という意味のことを言いました。

あれぐらいなら、大丈夫だろう、
と主人は言い、装置を直し、老人と未来の世界に帰りました。

老人の眼には、過去の美しい風景が焼きついていました。

老人は酔いをさます薬を飲み、酔いはさめていきましたが、
頭に残った光景は消えませんでした。
水の流れていないビルの谷間をひとりで歩き、
機械と装置の林のなか、テープの鳴き声の待つ部屋に帰りました。


というあらすじなのですが、これはアメリカの禁酒法時代と、
「養老の滝」の「考子伝説」が元ネタですね。

孝子伝説というのは、以下のような話です。

美濃の国に、源丞内(げんじょうない)という貧しい若者がいました。
丞内には、目が不自由で日々酒だけが楽しみの老父がいました。
ある日、丞内は山の中で香り高い酒が湧き出る泉を見つけました。
丞内は喜んで、老父にその酒を与えました。
すると老父の目が見えるようになりました。

という感じの話です。

星新一「むだな時間」のネタバレ解説

80歳のエル博士は、郊外の静かな林にかこまれた別荘で、
ひとり余生を送っていました。

そこへ、大きな広告会社を経営している50歳の息子が訪れました。

エル博士は一日じゅうテレビを眺めている生活をしていましたが、
番組のあいだに入る、あのコマーシャルは、
まったく目ざわりな存在じゃな、と言いました。

広告業の自分の仕事に誇りを持っている息子は、
みなが面白い番組を眺められるのは、
多くの会社がスポンサーとなって、
お金を出してくれているからです、とCMの弁護をはじめました。

しかし、息子が何と言おうとエル博士はCMが嫌いで、
あるテレビを発明しました。

そのテレビは、コマーシャル消し器がついていました。
息子がテレビを見ていると、番組が終ったかと思うと、
すぐにつぎの番組がはじまり、そのあいだに入れるべく、
息子の会社で苦心して製作したCMが現れなかったのでした。

コマーシャルが始まると、テレビが自動的に反応し、
人体に無害の睡眠電波が視聴者にあてられるのです。

番組に戻ると、その電波はとまり、目がさめるというしかけでした。

エル博士は、コマーシャルは番組のほぼ1割の時間を占めている、
と言いました。
コマーシャルを見る愚にもつかない行為から解放され、
休養にむけられる、人びとのためになる装置だとエル博士は主張しました。

しかし、今の順調な広告会社の仕事を失いたくない息子は、
コマーシャルのあいだ眠るのなら、立っていた人は倒れる、
発作が起ってもすぐ薬が飲めない、
熱いコーヒーを飲みかけていた者はやけどをする、
などとこの装置の欠点を教えてあげました。

息子の助言で、エル博士はこの装置の改良をするのをやめ、
コマーシャルを見ない特権を味わいながら、
テレビを楽しんで余生を送ることにしました。

その後、年月が流れ、エル博士に、天寿を全うする日が訪れました。

毎日飲んで抵抗力をつけられる老人薬がテレビで大きく宣伝されていましたが、
コマーシャルを見ないエル博士はその薬の存在を知らず、飲んでいませんでした。

その薬には、「あなたの老後を1割のばせる、
という息子が作ったキャッチフレーズがついていましたが、
それを聞いたエル博士は、それなら、なにも残念がることはない、と言いました。

1割はコマーシャルの時間と同じで、それを見なおすなら、
そのぶんだけ長生きさせてやると言われても、断わるよ、
という意味のことをエル博士は言い、にっこり笑い、静かに目を閉じました。


というあらすじなのですが、
これはまだテレビ番組を録画することができなかった時代に書かれた話ですね。

今は予め録画しておけば、CMを飛ばせるようになったので、
時代がこのショート・ショートに追いついてしまいましたね。

ところで、コマーシャル消し器の部分はともかく、
その睡眠電波が出る装置を不眠症の人に売りつければ、
大儲けできたんじゃないかなと、しまうましたは思いました。

星新一「健康の販売員」のネタバレ解説

主人公は、かつてはSF作家を志していましたが、
諦めて薬売りに転向しました。

訪問先の家の前で肩のロボット・キツツキが
「ギャラクシー製薬からまいりました」
と、わめきたて、この家の主婦が応対に出ました。

キツツキが肩から飛び下りて、
主婦の息子のおし.りにくちばしを筋肉深くつきさしました。

くちばしは精巧な電気メスになっているので、
血も出なければ、もちろん痛くもありません。

おし.りの筋肉内から小さなカプセルが取り出され、
キツツキが測定をしました。

このカプセルのなかには濃度の高い栄養剤がつめこまれていて、
これを筋肉内に埋めておけば、人体は必要に応じて、
そこから不足した栄養を取り出し、消費します。

主人公は定期的に各家庭を訪問し、その消費されたぶんを補給し、
代金を集めてまわるのが主な仕事でした。

キツツキは補給し終えたカプセルを子供のおし.りに埋め、
主婦にも同じようにしました。

腕時計用注射装置の記録装置を調べ、
時どきは検査にお出しにならないと、と主人公は言いました。

健康と生活の薬のほかに、趣味の薬のカタログを主婦に見せます。

あらゆる感覚と、判断力をいっせいに敏感にする、
テレパシー剤に主婦は興味を持ちました。
夫の浮気を疑っている主婦に、主人公はその薬を勧め、購入させました。

主人公はその家を出ると、「主婦の夫の勤め先に連絡し、
すぐさまテレパシー防止薬を売りつけました。


というあらすじなのですが、主人公は商売が上手いですね。

ところで、SF作家を志していたのに薬売りになった、
という主人公のプロフィールは、
製薬会社の社長をやめてSF作家になった星新一さんとは、真逆ですね。
興味深いです。

星新一「友を失った夜」のネタバレ解説

春の夜、祖母と孫の坊やはテレビを見ていました。

「ターザンの秘宝」という昔の映画が放映されていましたが、
映画は中断され、臨時ニュースが始まりました。

最後の一頭となってしまった、
人類のよき友であったゾウが亡くなりそうだ、
とアナウンサーは告げていました。

ゾウはなぜ、いなくなっちゃうの、と坊やが聞くと、
この地球の上には、ゾウの好きな場所が、
もうなくなっちゃったからだろうね、と祖母は答えました。

再会した映画の中では、いま死にかけているゾウの先祖たちが、
元気に、何頭も山を越え、川をわたっていました。

またも映画が中断し、ゾウは死んでしまいました、
ついに絶滅してしまったのです……とアナウンサーは言いました。

坊やは、今夜はゾウのぬいぐるみといっしょに寝ることにしました。

いま死んだゾウはこの夜、世界じゅうの子供たちの夢にあらわれ、
別れを告げてまわるのでした。

というあらすじなのですが、今回はオチらしいオチはありませんね。

ただ、現実にはゾウは個体数を大幅に減らしているものの、
まだ絶滅していないので、
これは未来の出来事を予言している話ですね。

このショート・ショートには書かれていませんでしたが、
ゾウの個体数が減少傾向にある最大の原因は、
象牙を手に入れることが目的の、人間による乱獲です。

象牙は古来より宝石や工芸材料として珍重されてきて、
日本でも最高級のハンコや麻雀牌の材料として根強い人気があります。

ハンコや麻雀牌の材料となるために、武装グループによって野生のゾウが密猟され、
日本に密輸されていると言われています。

ゾウには人に知られていない、定まった死に場所があり、
死期の迫ったゾウはそこで死ぬという「ゾウの墓場」伝説がありますが、
この伝説は嘘です。

自然死したゾウの死体から入手した象牙だから合法ですよ、と言う人もいますが、
それは象牙の密猟者が犯行を隠すためにでっち上げた伝説であり、
現在日本で出回っている象牙の大部分は、違法に密猟・密輸されたものです。

象牙の売買をしたり、象牙を材料にしたハンコや麻雀牌を製造・購入するのは、
ゾウを絶滅させることに繋がるので、やめましょう。
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