星新一「症状」のネタバレ解説

ケイ氏はビルの11階にある一室を訪れ、
精神分析の先生に夢のことについて相談しました。

眠りについてすぐ見る夢が、朝おきるところで、
服を着かえ、食事にかかります。
カバンを持って、会社に出勤し、事務をとりつづけ、
終ると家に帰り、寝床にはいります。

そこで夢が終り、目がさめるわけです。

一日の仕事だけでもうんざりなのに、夢のなかでまで、
それを繰り返すのは絶望だと先生に言いました。

しかし先生はいろいろな文献を調べた後、
どの本にも出ていません、お気の毒ですが……、と言いました。

それを聞いたケイ氏は、残された道はただひとつだと言い、
開いている窓から、身を投げました。

そして、「ケイ氏は久しぶりに、すがすがしい朝をむかえ、
うれしそうな声をあげました。
夢のなかの自分を消滅させることに成功したケイ氏は、
つぎの夜から、あのいまわしい夢を二度と見ることがありませんでした。


というあらすじなのですが、精神分析の先生に相談し、
窓から飛び降りたケイ氏の方が、
実は夢の中のケイ氏だった、というオチですね。
夢の中のケイ氏は、現実世界のケイ氏のことを夢だと認識していたのです。

しかし、たまたま夢の中のケイ氏の方が
飛び降り自殺したからよかったようなものの、
現実世界のケイ氏が発作的に自殺していたら、
どちらも死んでしまっていたので、
そう考えると怖いオチですね。

星新一「不運」のネタバレ解説

K氏は死ぬ覚悟で海の真ん中に身を投げました。

K氏はあらゆる勝負事が好きでしたが、
最後の一度にありとあらゆる財産をつぎこんでやった勝負に負けてしまいました。

なぜそんな大勝負に賭けるつもりになったかというと、
失恋してやけを起こしたからでした。
K氏は女性に対しては運のいいほうで、
失恋したことはなかったのですが、
心の底から愛した女性に対して失恋してしまったのでした。

その原因は、酒に悪酔いして不注意のため自動車にはねられ、
顔が醜く傷ついてしまったからでした。
K氏は酒が好きでしたが、悪酔いしたのはその一度だけでした。

K氏は生きがいを失い、死の決心を抱き、海に身を投げたのでした。

しかし、気がついてみると、K氏は豪華な遊覧船のベッドの上に横たわっていました。

船内のホールには無料のバーがありましたが、
K氏が死ぬつもりになった原因のひとつは酒だったので、ふりきりました。

ルーレット台もあり、お金は胴元に頼めば貸してくれるそうですが、
自分をこんな目に追い込んだ憎い勝負事に手を出す気はしませんでした。

デッキのほうに歩くと、若く美しい女に誘われましたが、
おれはもう、酒やルーレットや美人など、
見るのさえいやなんだと言い、K氏はまたも海に身を投げました。

気がつくと、「今度は小さな漁船の持ち主に助けられていました。

豪華な遊覧船のことを相手に伝えると、
船の灯りが水にうつっていなかったのでは……と言われ、
そのとおりでした。

それは幽霊船で、海の死者を拾いあげ、あの世の港に送りとどけるため、
途中で気が変らないように、至れりつくせりのサービスをしてくれるのだそうです。

K氏はもう一回飛びこみ、なんとかしてあれに乗ろう、と言いました。
しかし漁船の持ち主は、幽霊船から逃げ出すと、先客名簿から削られ、
死なない、死ねなくなってしまうのだと言いました。


というあらすじなのですが、これは本当に「不運」な話ですね……。

何をやってもうまくいかないときは、死ぬのさえうまくいかない、
ということなのでしょうか。

星新一「利益」のネタバレ解説

エヌ氏はそれまで女性に養ってもらっていましたが、
夫人の機嫌を損ね、彼女は土地と家を残して出ていってしまいました。

エヌ氏は金を稼ぐために、庭に釣り堀をつくることにして、
シャベルで地面を掘りかえしました。

しばらく夢中になって堀りつづけているうちに、
石の地蔵が出てきました。

通りかかった近所の老人が、持病の神経痛がなおるようにと地蔵に祈ると、
痛みが、すっかりなくなりました。
すごい、ご利益だ、と老人は言い、庭の片すみにお堂を建て、
石の地蔵をそのなかにまつりました。

エヌ氏はその前に賽銭箱をすえましたが、
つぎつぎと訪れる善男善女が、箱に賽銭を投げこんで帰っていったのに、
賽銭箱をあけてみると、ぜんぜん金が入っていませんでした。

エヌ氏は対策をねり、金庫屋に頼んで、
鍵のかかるスチール製の賽銭箱を作らせましたが、
あけてみると、またも金がなくなってみました。

その原因を確かめるために、徹夜で見張ってみると、
そこで、なにをしている、と地蔵の声が頭のなかに響いてきました。

賽銭が消えていたのは、地蔵が持ち去っていたからなのでした。

地蔵は、ちゃんとご利益を与えているから、
報酬を受け取る権利がある、と言いました。

エヌ氏は面白くない顔つきで、二、三日は家の中にとじこもり、
参拝する人波を見つめていましたが、
ある夜、エヌ氏は「堂をとりこわし、
石の地蔵を床下に運んで埋めてしまいました。

はじめの計画どおり、庭を釣り堀にすることにしました。

エヌ氏にとって必要なのは、ご利益(ごりやく)ではなく、
利益(りえき)なのでした。


というあらすじですが、まさかのダジャレオチですw

地蔵はエヌ氏に掘り起こしてもらい、
庭の土地を使わせてもらっている恩があるんだから、
地蔵もエヌ氏に分け前を与えていれば、
こんなことにならなかったのに、と思いました。

もしかしたら、地蔵が地面の下に埋まっていたのは、
前の持ち主もエヌ氏とまったく同じように考えて、
埋めたからなのかもしれませんね。

乾くるみ「物件探偵」3話「浅草橋5分ワンルームの謎」のネタバレ解説

2012年3月、ニューシップ浅草橋の9階に住む
会社員の谷俊弥(たに・としや)は、
真上の10階の部屋が980万円で売りに出されているのを
インターネットで発見しました。

谷は、斉藤善実(よしみ)という男性の同僚から、
9階の部屋を2年前に購入しましたが、
10階の部屋の持ち主の足音がうるさく、悩まされていました。
管理会社を通して苦情を言っても、騒音は改善されませんでした。

回想です。
一週間前の2月25日、谷のケータイに、
塚本という老人から電話がかかってきました。

谷は12年前に元妻の亜津子と離婚していました。
亜津子は当時9歳の銀河という一人息子を連れて、実家へ帰り、
塚本哲哉という男と再婚していました。

しかし、1ヵ月以上前に火事があり、
亜津子と哲哉は亡くなってしまいました。
出火原因は隣家の漏電でした。

塚本にとっては血の繋がっていない銀河を谷に引き取って欲しい、
という電話でした。

谷は、塚本に会いに行きましたが、
銀河が受け取るはうだった亜津子と哲哉の生命保険金、
3000万円を塚本が着服しようとしていたことが発覚しました。

塚本は知りませんでしたが、亜津子から谷のところへ、
定期的に報告書が届いていて、そのことが書かれていたのでした。

銀河はコミュニケーションに難があり、引き籠り状態になっていましたが、
塚本家は銀河のそうした弱点を利用して、
彼が受け取るはずだった3000万円をうまいこと掠め取ったうえで、
銀河を谷に引き取らせようと画策していたのでした。

谷は銀河を引き取り自宅に帰りましたが、
プライバシーの問題があるので、
谷は銀河に独り暮らしをしてほしいと思っていました。
しかし、銀河は独り暮らしはしたくないと言っていました。

回想終わりです。

谷が住んでいる部屋の真上の10階の部屋を購入すれば、
足音の問題は解決します。
銀河も、すぐ近くに谷がいれば、安心して独り暮らしができます。

不動産屋へ行き、購入希望書を提出しましたが、
その頃から問題が発生しました。

バルコニーに鳩の死骸が落ちていることが相次ぎ、
誰かに嫌がらせをされているようでした。

3月30日の金曜日、
10階に住んでいた新山という30代の半ばの青年が、
引っ越すという挨拶に来ましたが、
新山は16年前に事故に遭い、両脚とも義足でした。
これからは田舎で、自然に囲まれた生活をしていきます、
と言い、新山は引っ越していきました。

翌日、銀河は10階に引越しましたが、そこへ不動尊子がやってきて、
「とても気持ちのいい部屋ですね」と言いました。

バルコニーに鳩の死骸が落とされている嫌がらせが何度もあった、
ということを不動に相談すると、
これだけ爽やかな部屋の声を残して行かれた方です、
新山さんに疑いの目を向けるのは、おそらく間違っています、
と言われました。

自分の部屋に戻った谷は、「銀河がドスドスドスという歩き方をしていて、
うるさいことに気付きました。

3月の間は、階下の8階に住んでいる人が、
このドスドスドスを聞かされていたと、谷は気付きました。

8階に住んでいる瀬戸という管理組合の理事夫妻は、保健所の職員で、
鳩の死骸を持ち帰り、8階から9階のバルコニーに、
鳩の死骸を投げ入れていたのでした。

ここは地獄でしかない、と思った谷は、
中古マンションの物件情報を検索し始めていました。


というあらすじなのですが、今回は不動尊子が何もしていませんでしたね。
推理をしなかったら、不動尊子はただのアブない人です……。

でも、意外な真相で面白かったです。

乾くるみ「物件探偵」2話「小岩20分一棟売りアパートの謎」のネタバレ解説

2月3日、27歳の独身教師の寺川万記子(まきこ)は、
インターネットで≪物件所在地=江戸川区≫という条件で検索し、
東京都江戸川区にある木造2階建のアパート1棟が、
4040万円で売りに出されているのを発見しました。

そしてそのアパートは、万記子が現在205号室に住んでいるアパート、
≪北西コーポ≫でした。

しかし、ネットでは空き室が1部屋あることになっていましたが、
万記子には覚えがありませんでした。

万記子はそのウインドウをプリントアウトし、、
ベッドの脇のコルクボードにピン留めしておきました。

翌土曜日の午前10時過ぎ、万記子は買物のために部屋を出ましたが、
外から見ても空室らしき部屋はありませんでした。

2月6日、月曜日の夜、窓のカーテンに小さな隙間があり、
午後2時17分から19分の2分間だけ、
なぜか予約録画されていたことが判明しました。

2月9日、木曜日の午後6時に帰宅した万記子は、
ダイニングキッチンの床に、
生きているダンゴムシが3匹転がっているのを発見しました。

2月12日には、集合ポストにウミウシ興産不動産事業部が扱っている、
4万円から5万円の家賃の賃貸物件のチラシが入っていました。
≪北西コーポ≫を管理しているのもウミウシ興産不動産なので、
おかしな話でした。

また、このチラシが入れられているのは万記子のポストだけでした。

2月15日には、エアコンの暖房が効かなくなっていて、
ウミウシ興産不動産に電話すると、担当の西本は、
エアコンを買い換えると万記子の負担が非常に大きくなり、損だ、
という意味のことを言いました。

万記子は、このアパートに新しく入居した人物が、
万記子の生活音を不快に感じ、
彼女に嫌がらせを行っている犯人ではないかと思っていました。

しかし、2月17日から二泊三日で、
高校2年生の社会見学旅行があり、
万記子は他の先生たちと一緒に引率の役を果たさなければならなくなり、
アパートを留守にしました。

2月19日は同僚の家に泊めさせてもらい、
2月20日に帰宅しました。

すると、本棚の本や、香辛料の瓶など、部屋の中の物が、
すべて微妙に動かされた痕跡がありました。

万記子が外に出ると、不動尊子がいて、
「このアパートは、悲鳴を上げています」と言いました。

万記子が尊子に事情を説明すると、
不動は角の駄菓子屋の店番をしていたおばちゃんに、
土日に≪北西コーポ≫に引越しのトラックが停まっていたのを
見掛けませんでした? と聞きました。

おばちゃんは、土曜日の午前中には荷物を運び出し、
日曜日の午後には荷物を運び込んでいた、と証言しました。

その部屋は、「万記子が住む205号室でした。

不動は、万記子の隣の部屋に住む淡口という女性に賃貸借契約書を見せてもらい、
北西コーポのオーナーはウミウシ興産不動産ではなく、
熊本に住む≪真栄田重雄≫となっていました。

しかし、万記子の賃貸借契約書では、
口座名義欄は≪西本和夫≫となっていました。

ウミウシ興産不動産の西本は、本来なら熊本のオーナーの手に渡るべきだった、
万記子が払っていた家賃を、着服していたのでした。

万記子の部屋はオーナーにとっては空室だったので、
ネットの物件情報にはそう書かれていたのです。

このアパートが売りに出されると、家賃を着服していたのが発覚してしまうので、
西本は万記子を追い出そうと嫌がらせを繰り返し、
万記子が引率で留守にしている間に買主に内覧させたのでした。

こんな素敵な部屋を、そんな酷い犯罪に利用していたなんて、
と不動は言い、左の目から一粒の涙を流したのでした。


というあらすじなのですが、文句なしに面白かったです。

このシリーズは、探偵役の不動尊子があくまでも善意で推理し、
事件を解決するのがいいですね。

乾くるみ「物件探偵」1話「田町9分1DKの謎」のネタバレ解説

物件探偵


2011年11月。
静岡県に住む42歳の中山繁行(しげゆき)は、
東京都港区にある中古マンション、
ロイヤルコージー田町の1DKの部屋を購入することにしました。

その部屋は1200万円で、
表面利回りが13.2%とお買い得な部屋でした。

利回りというのは、家賃収入の、
マンション購入金額に対する割合のことです。

管理費と修繕積立金という月々の出費を考慮して、
実質利回りを計算しても、12.0%と高い数字でした。

マナティホーム株式会社という不動産会社で契約し、
前のオーナーの桑野武彦に購入代金を一括で支払いました。

中山は良い買物をしたと思っていましたが、
翌年の2月25日に事態は急変しました。
マナティホームの福本から電話があり、
中山繁行が買ったマンションに賃貸で住んでいた、
62歳の浮島博子という字営業の女性が、
3月末までに退去すると言われました。

中山は上京し、福本と退去の状況の確認に行きました。

初めて見た部屋は、思っていたよりも狭く、みすぼらしい状態でした。

この部屋が購入価格で1200万円、1ヵ月の家賃が13万2000円、
その価値があるだろうか、と中山は思いました。

福本は、クロスを貼り替え、エアコンを交換し、
8万5000円くらいまでなら借り手がつく、
という意味のことを言いました。

福本が帰り、中山が部屋のドアを開けると、
30歳手前くらいの、グレイのスーツに身を包んだ女性が立っていました。
身長150センチ程度でストレートロングの黒髪の女性は、
「部屋が泣いています」と言った後、
名刺を出し、不動尊子(ふどう・たかこ)と名乗りました。

不動さんと呼ばれていた不動尊子は、
15歳のときに宅地建物取引主任者の資格をとり、
不動産の、物件の気持ちが分かるようになったと言いました。

中山が利回りを重要視してこのマンションを買ったことや、
浮島博子にも、前のオーナーの桑野武彦にも会っていないことを知ると、
不動尊子は、今から浮島博子に会いに行こうと言いました。

浮島古書店という、浮島博子の店に行った不動尊子は、
≪オグジン神田≫の件で少しお話を伺いに来ました、と言いました。

桑野武彦の方が先に売れてしまったが、
桑野に約束通り≪オグジン≫を毎月13万2000円で借りてもらっている、
と浮島博子は言いました。

中山さんは詐欺に遭われたということです、と不動は言いました。

ロイヤルコージー田町の実際の物件評価額は800万円でした。

浮島も桑野も800万円が相場の通子マンションを持っていて、
それをお互いに13万2000円という高額の家賃で借り合っていました。

こうすることで、表面利回りを釣り上げ、
800万円のマンションを1200万円で売ろうとしたのでした。
同じく表面利回りの良い≪オグジン神田≫の物件広告を見た不動は、
そのことを見抜いたのでした。
『交換殺人』ならぬ『交換賃貸』だったわけです。

観念した浮島博子は、差額の400万円を中山に渡し、
これで勘弁してくれろ、と言いました。
中山は心を入れ替え、不動の助言で、
そのお金の一部を使ってあの部屋をリフォームすることにしました。

それを聞いた不動は左の目から一粒の涙を流しました。


というあらすじなのですが、実際に中古物件を自分の目で見ずに、
書類上の数字だけを見て1000万円以上の買い物をする人、
というのが世の中には実在するんですよね……。

しまうましたには信じられないです。

自分が住むために買うならそんなことはしないのでしょうが、
投資のつもりで買おうとすると、目が曇ってしまうみたいです。

時雨沢恵一「キノの旅」7巻エピローグ&プロローグ「何かをするために」のネタバレ解説

いつもは短いエピローグが今回は短いです。

今回は、まだキノが旅に出る前、
師匠と森の中の家に住んでいた時の話です。

ある日の朝、キノは朝食を作ろうかと言いますが、
メシマズのキノの料理を食べたくない師匠は、
私がやりますよ、と言いましたw

キノは師匠に射撃を教えてもらいます。

師匠はエルメスに、キノのパースエイダーの撃ち方は、天才的です、
と言いました。
しかし、パースエイダーをうまく撃てるだけじゃ、
撃ち合いや殺し合いで生き残れないので、
師匠はそれを心配していました。

射撃訓練の後は、エルメスにモトラドの乗り方を教えてもらいます。

それが終わると、師匠は全自動連射式パースエイダーで、
200発以上の弾を撃って木を倒しました。

師匠はキノに「キノ」と呼びかけますが、
キノはまだそれを自分の名前として上手く認識できませんでした。
また、初代キノに倣って、
一人称を“私”から“ボク”に変えようとしていました。

ちなみにこのとき、キノが師匠のことを
“ししょう”という名前だと思い込んでいたことが発覚しましたwww

やがて、火薬屋の男が火薬と燃料を届けに来ました。

男はリンゴのお茶をご馳走になった後、
壁にかけられた茶色のコートを見て、
先日これとまったく同じコートを着た人を見ましたよ、と言いました。

彼の国では、旅に使えるような丈夫なコートはこれしかないから、
皆着て行くのだそうです。

それを聞いたキノは、その国にモトラドで行けますか、
と聞きました。
モトラドなら、1日で行けるかもしれない、と言われ、
キノはその国に行きたいと師匠に言いました。

師匠はキノに、モトラド用の黒いジャケットと、
黒いパンツをプレゼントし、
さらに何丁も持っているパースエイダーのうちのひとつを、
キノに貸しました。

翌日の朝、キノはエルメスに乗って出発し、
日が暮れる前にその国に到着しました。

キノは番兵に茶色いコートを見せます。
番兵はコートについていた住民番号を照合し、
コートの持ち主の名前は“キノ”だと言いました。

キノは涙を流しながら、その人の家族に会わせてください、
と頼みました。

親切な老人と中年の女性が、農作業用のトラックでやってきて、
キノを初代キノの家まで案内してくれました。

キノは、初代キノの母親の女性に、×××××という本当の名前を名乗り、
2人だけで話をします。

キノは涙を流しながら、事情を説明しました。
教えてくれて、ありがとう、と女性は言いました。

女性がいれてくれたお茶をキノが飲むと、
目の前の世界が、ゆらりと傾きました。
お茶にしびれ薬が入っていたのでした。

女性は、床に倒れたキノの首を絞め、
あなたさえいなければ、私の息子は死ななくてすんだのに、と言いました。

しかし、キノは、今は……、ボクがキノだ……、
二度も……、殺されて……、たまるか……、と言い、
パースエイダーのバレルを女性の口に入れ、撃ち殺しました。

次の日の朝、キノが目を覚ますと、
昨日キノを初代キノの家まで案内してくれた中年女性と老人の家でした。
初代キノの母親の葬式と埋葬は、昨日のうちに済んだと言われました。

キノの髪は血で染まってしまったので、短く切られていました。

この国では“正当防衛”は罪にならないし、
“自殺の幇助”の罰則は国外追放だと言われました。

キノが外に出ると、中年女性は茶色のコートをキノに渡しました。
キノが持ってきた、そのコートでした。
初代キノの母親が、キノに贈呈するようにと、メモを残していたのでした。


師匠が待つ森の中の家に帰ったキノは、
すべきことは、すみましたか?
と聞かれ、『はい』と答えました。

キノは師匠に、強くなりたいです、と言い、
師匠の旅の話を聞かせてもらいました。

というあらすじなのですが、初代キノの母親が、
茶色のコートをキノに譲る、というメモを残していたということは、
最初からキノに殺してもらうつもりで、
お茶にしびれ薬を入れて首を絞めたのでしょうね……。

帰ってこない息子を待ち続けるのに疲れていた、
というのもあったのでしょうが、自分の命を使って、
キノに人を殺す経験をさせようとしたのかもしれませんね。

時雨沢恵一「キノの旅」7巻6話「嘘つき達の国」のネタバレ解説

キノとエルメスは、旅人が使える城門が1つしかない国に入国しました。

すると、森の中から30歳ほどの男が走ってきて、
どこかで僕の恋人に会わなかったかい? と聞かれました。
男の恋人は5年前にこの国から旅に出ていて、
男は恋人が帰ってくるのを待っているのだそうです。

その間に、エプロン姿の家政婦の女性が小走りにやってきて、
男に上着をかけてあげました。

森の中には一軒の家があり、男と家政婦はそこに住んでいました
(ちなみにこのシーン、しまうましたの持っている初版本では、
「一見の家」になっているという誤字があります)。

次の日の朝、町の中にあるレストランで、
城門脇の森で暮らしている男の人のことをエルメスが聞くと、
10年以上前から彼の友人である30歳ほどの男が事情を説明しました。

この国には5年前まで横暴な王様がいて、革命がありました。

当時、森に住んでいる男も、その友人も、警察官で、
革命の主要メンバーでした。

男には国はずれに住む農家の娘の恋人がいましたが、
革命の決行の直前に、男は恋人に嘘をつき、別れを告げました。

男や友人は宮殿に突入し、逃げようとしていた王一家の車を襲い、
爆弾を投げ込んで車を吹き飛ばしました。
そして、車の中にあった王一家の死体のうち、
ドレスを着た王女は、男の恋人でした。

王女はお忍びで町に来ていて、男と恋仲になっていたのでした。

男は頭がおかしくなり、医者が、あなたの恋人は旅に出てしまいましたが、
必ず帰ってくるから待っているように言っていましたよ、
と嘘をついたのを信じ、森の中に住み始めました。

新政府は、3年前に行き倒れになっていた国外からやってきた旅人の女性を、
家政婦として雇い、男の身の回りの世話をさせることにしました。

次の日、キノとエルメスは出国しようと城門に向けて出発しました。

そこで、家政婦に呼び止められ、ログハウスでお茶を出されました。
キノは、なんていうお茶ですか?
と用心深く聞きましたが、キノに出す分を男が横から取って飲み、
おいしいよ、とキノに笑顔で言うと、ようやくキノも飲みました。

エンジンの音が聞こえたような気がする、と家政婦が言うと、
男は家を出て行きました。

家政婦は、「自分が5年前まで王女だったことをキノに教えるために、
男を一時的に追い出したのでした。

民衆に紛れたスパイからの報告で、家政婦は一人の田舎娘として、
男に接触して恋仲になり、男を本当に愛してしまいました。
しかし、男が理由を言わずに別れを告げたことで、
すぐに革命が起こると知り、元王女は父に伝えました。

王一家は身代わりを残して国を去りましたが、
隣国にいた王女は、スパイから、男が“王女”を殺してしまい、
病んでしまったこと、彼を世話する人が必要とされていることを知り、
旅人になって入国し、家政婦として雇われるようにしむけてもらいました。

家政婦はまだ男を愛していて、男は恋人を待っていて、
そばにいられるのだから、幸せです、という意味のことを家政婦は言いました。

男が戻ってきて、キノとエルメスは城門を出ました。

そこへ、男が追いかけてきて、私は幸せだ、と言いました。
王家のスパイだった友人の生き方も、
男を利用しただけではなかった愛する人との生活も、今は何も壊すことはない、
と男は言いました
それを聞いたエルメスは、ここの国の人はみんな嘘つきだ、と言いました。


というあらすじなのですが、いくつもの嘘が重なって成立している幸せですね。

でも、「王一家の身代わりで殺されてしまった人達が可哀相な気がします……。

時雨沢恵一「キノの旅」7巻5話「森の中のお茶会の話」のネタバレ解説

ある森の中の橋で釣りをしている老人がいました。

師匠と荷物持ちさんがそこに通りかかり、
老人に誘われて、森の中に一軒だけある老人の家に行きました。

老人の妻である老婆がお茶を入れ、
師匠と荷物持ちさんはお茶を飲みました。

そして、師匠と荷物持ちさんは突然、家の中を破壊し始めました。

老人が箒の柄を持って荷物持ちさんに振りかぶると、
師匠は老人をパースエイダーで撃って射殺しました。

老婆は長い悲鳴を上げた後、すっと立ち上がり、
箒を手にしました。
師匠は2発目を放ち、老婆を殺しました。

いくらなんでも、撃つのが早すぎでは?
と荷物持ちさんが言うと、師匠は、
箒を拾わずに、先端をよく見なさい、と言いました。
箒の柄の先には小さな穴があり、
師匠の指示で荷物持ちさんが箒を振り下ろすと、
猛毒が塗ってある大きな針が飛び出し、壁に刺さりました。

お茶にも毒が入っていましたが、
師匠と荷物持ちさんは予め毒消しを飲んでいたので平気でした。

師匠と荷物持ちさんはお宝を探し、
人間の死体を使って作られた家具や壁紙を発見しました。
老人と老婆が旅人を殺し、その死体で作ったのでした。

師匠と荷物持ちさんは、旅人が持っていた貴金属を探します。

しばらくして、『ありがとう』『ありがとう』という声が立て続けに聞こえました。

荷物持ちさんが、今まで殺された旅人達の幽霊の声だと言うと、
師匠は突然、出発です、と言って車に乗り込みました。

今俺の背中に憑いてきたヤツはどうしましょう?
と荷物持ちさんが聞くと、師匠は荷物持ちさんの背後の空間へ発砲し、
車の後部ガラスが一瞬で砕け散りました。
師匠はギアを入れると、車を急発進させました。

師匠が撃った弾丸は植木鉢に当たり、茶色い破片と黒い土の中に、
きらきらと光るきれいな宝石がたくさん転がっていました。


というあらすじなのですが、「幽霊が怖いのに、
絶対にそれを認めない師匠が可愛かったですwww

時雨沢恵一「キノの旅」7巻4話「冬の話」のネタバレ解説

ベッドに横たわっている初老の女性の周囲に、
キノを含めて5人の人間がいました。

キノ以外の4人は初老の女性に話しかけ、
ただ息をしているだけだった初老の女性が、
ゆっくりと、かすかに口元に笑みを浮かべました。

その時、キノがハンド・パースエイダーで初老の女性の胸を3発撃ち、
殺しました。

4人はキノのことを異教徒と呼び、ここから立ち去れと言い、
キノは素直に部屋を出ました。
そのキノの背中に、4人のうちの1人が、「ほんとにありがとうね」
と声をかけました。

城門に行くと、番兵から、
“同胞を殺めし異教徒よ! 今すぐこの国から立ち去れ!”
と言われますが、キノがパースエイダーの入った袋を番兵の足下に置き、
城門から出ると、番兵は親しげな口調で、いつもと同じです、
と言いました。

キノは回廊を歩き、森の中にある大きな建物に入り、
建物の中にいたエルメスに挨拶をしました。

次の日の朝、ディスという40歳ほどの男が建物を訪ねてきました。

ディスは旅人で、この国の事情を知らずにやってきたのだそうです。

キノはディスに、この国には、独自の宗教上の理由から、
“治療”という行為が存在しなかった、と説明します。
けがも病気も、一切多いんんは手を出さず、自分だけで治します。

そのため、重傷や、重病になった場合、
ほとんどの人は、苦しみ抜いた末に“自然に”死んでしまいます。

この国の人達の中に、どう見ても絶対に助からない人を、
これ以上苦しめないように安楽死させる要望が生まれました。

しかし同胞を殺すことはできず、それは地獄への道でした。
自然死以外に天国へ昇れる手段が、一つだけあり、
異教徒に殺された者は、問答無用で天国に行けることになっていました。

国で旅人の滞在場所を“国外”に作り、病人を殺すことを依頼し、
報酬の食料などを約束して、実行後は退去処分にします。
永住を防ぐために、1人最長で90日です。
キノは30日を過ごし、これから雪が減り走れるまで滞在する予定でした。

翌朝、“異教徒が攻めてくる”ことを国民に知らせる鐘の音が聞こえました。

キノがフライパンに作った料理をディスは食べ、
今日は俺が行く、と言いました。

実は、ディスは医者で、故郷では“どうしても救うことができない患者”を、
安楽死させ、その結果、故郷を国外永久追放されていました。

ディスは昨日一晩考え、治療することにしました。

建物を出るとき、ディスは大声で、さっきの料理、とても美味かったよ!
と言いました。

夕方になり、番兵が建物を訪ねてきて、「ディスが国の人に
“危害”を加えましたが、幸いなことにたいしたことはなく、
その人は本来持っている自然治癒力を発揮して快方に向かっている、
という意味のことを言いました。
ディスは拘束され、罰として今現在病気やけがと戦っている同胞へ
謝罪することになりましたが、同じ行為を繰り返すようであれば、
この罰は永遠に続く、と言いました。

ディスは、食料の半分を外にいる異教徒、つまりキノに届けてほしい、
と言ったのだそうです。
番兵が置いた木箱には、いつもどおりの食材が入っていました。

キノはディスに、あんなモノを食べさせてすいません、
笑顔で美味いと言ってくれたのはあなたが初めてです、
と伝えてもらうよう、番兵に頼みました。

実は、キノはメシマズだったのでした……。


というあらすじなのですが、やっぱり宗教ってクソだな、と思いました。

現実世界にも、輸血を禁止している宗教があり、
その信者は輸血を拒み、本来なら助かるはずの人が助からなかったりしています。

アメリカでは、宗教上の理由で妊.娠中.絶を禁止する州がたくさんありましたが、
最近になってようやく、殆どの州で合法化されたみたいです。
合法化される前は、危険な闇手術のせいで命を落とす女性が何人もいました。

でも、やっぱり医学にも限界があり、どうしても助からない人は一定数いて、
安楽死や尊厳死が合法化されている国と、
現在の日本のように違法の国があります。
そのせいで、末期の病気の人が苦しい自殺を強いられている場合があります。

他にも、○○ちゃんを救うため、と言って、
アメリカで手術するための莫大な費用を募金で集めている団体がありますが、
そうしないといけない最大の理由は、
日本では「心理的な問題で」亡くなった子供の臓器を他の子供に提供してもいい、
という親が少ないせいです。

無神論者が多いと言われる日本にも、
本人が自覚していない「宗教上の理由」のせいで、
他の国に生まれていれば助かるはずなのに助からない人がいるのです。

だから、しまうましたには、
この「冬の話」に登場した国の人達を馬.鹿にすることはできません。
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