星新一「宇宙通信」のネタバレ解説

地球の高い山の上に建設されたパラボラアンテナから、
宇宙のどこかにいるに違いない知的生物との交信を求めて、
電波を出し続けていました。

100年後、ようやく電波が返ってきて、
文明のある星の存在を知ってうれしい、と発信しました。

すると、長い年月をかけて、
その星の言葉らしき返事がきますが、内容はわかりませんでした。

1から10までの数字をくり返し送り、
地球では十進法が行われているということを知らせると、
長い年月ののち、二進法を使っているという返事がきました。

しかし、こんなに時間をかけていてはやりきれないということで、
思い切って、写真と絵とモールス符号をぎっしりと書き込んだ書類を、
銀色の小型宇宙船におさめて発射しました。

それと同時に、おくりものを送った、という電文も発信します。

書類をつんだ宇宙船は、ぶじに相手の星に届きました。

しかし、それを見たその星の住民は、「残酷きわまるやつらだ、
こんなやつらがのさぼりはじめたら、ひどい目にあう、
と言い合い、星じゅうの放射性物質を集め、超大型の核爆弾を作り、
地球へ向けて発射しました。

そして、ついに地球からの電波はとだえ、住民たちは喜びあいます

松の木から進化した植物性人間たちは、
『からだをこなごなに砕いて、薄くひきのばすなんて、
ひどい風習のある星だな』と、緑色の顔をみつめあいました。


というあらすじなのですが、この発想はありませんでした。。

人間にしてみると、「人間そっくりの生き物の皮膚で羊皮紙を作り、
そこにレーザーで文字を書かれたものが、宇宙人から送られてきた、
という感じなのでしょうか。

星新一「弱点」のネタバレ解説

数人の漁師が、謎の白い大きな玉を拾ったと言い、
研究所に持ち込みました。

その研究所の博士は、助手と一緒にX線で調べますが、
その物質はX線を通さず内部の透視はできませんでした。

博士は役所に予算の支出を求め、広い土地の中央で、
遠隔で白い玉にドリルで穴をあけようとしました。
しかし、穴はあきませんでした。

バーナーで炎を吹き付けても、白い玉は、
なんの変化も示しませんでした。

役人に予備費の支出の手続きを頼み、2ヶ月ばかりたった、
ある日、白い玉にひびが入りました。

白い玉は宇宙生物の卵だったのです。
その玉から出てきたのは、灰色と茶色がまざったような色で、
黄色い点々がある、動く土管のような生き物でした。

こんなものが人目にふれたら病気や自殺が激増するということで、
役所の予算で動く土管を殺すことになりました。

しかし、熱をあてても放射線を照射しても、
真空にして絶対零度ちかくまで冷やしても、
トラクターで両端をひっぱってみても、
大きなハンマーでたたきつぶしても、
あらゆる薬品を試しても、動く土管を殺すことはできませんでした。

そこで、無人宇宙船に推しこんで、はるかかなたへ捨ててしまおう、
という「ドラえもん」の「バイバイン」のようなことを考えます。

しかし、動く土管を卵を10個も生んでしまいます。
宇宙船の建造には1年はかかるので、その勢いでふえはじめたら、
宇宙船の建造は永久に間に合いません。

3ヶ月後、10個の卵がかえり、育ち、それぞれ10個の卵を産み、
計100個の卵が並んだ夜、「博士は一匹の動く土管の口に飛び込み、
自殺してしまいました。

すると、博士を食べた動く土管も死んでしまいました。
動く土管は、生きた人間を食わせると、中毒を起こして死ぬのでした。


というあらすじですが、せっかく弱点は分かっても、
人道的な理由から怪物を絶滅させるのは難しそうですね。

世界中に怪物の存在を公表して生贄を募るとか、
死刑囚を犠牲にするとか、そんな方法しかなさそうです。

星新一「雨」のネタバレ解説

紀元3000年ごろから氷河期が始まり、
紀元4000年には見わたす限り青白い氷河におおわれ、
主人公もその妻も餓えていました。

庶民の主人公たちが食べられるものは、
人工太陽で細々と作ったクロレラや深海魚ばかりです。

クロレラというのは淡水性単細胞緑藻類のことで、
真水で育てることができる藻のことです。

今は健康食品として食べている人もいますが、
主食にはしたくないですね。

そこで主人公は、タイムマシンを作って、
過去に食料を取りに行くことにしました。

これで1億5000年前にタイムスリップすることができます。
行ける時代はそれで固定されており、微調整は難しいです。

主人公と妻はタイムマシンに乗り、
オリでつののある恐竜を捕まえました。

しかし、再び紀元4000年に戻る途中、
「恐竜がオリの中でお○っこをしてしまいます。
主人公は床の排水装置で機外に捨ててしまいました。

一方、紀元2000年ごろに、レストランから出てきた男女が、
雲もないのに雨が降っているのを見て、
虹が出てロマンチックだと言い、寄り添いながら歩きはじめました。

というあらすじなのですが、「紀元2000年ごろの男女は、
恐竜のお○っこを見てロマンチックだと言っていた、というオチです。


シンプルなタイトルと、2000年後の未来と、
1億5000年前の時代、という壮大な組み合わせからの、
このしょうもないオチですw

くだらないですねwww

ところで、冒頭の設定を見て、
「何で氷河期の未来設定?」と思った人もいるのではないでしょうか。

今でこそ、「地球温暖化でこれからどんどん暑くなる」
と言われ続けていますが、実は、
1940年代から1970年代の前半くらいまでは、逆に、
「地球寒冷化でこれからどんどん寒くなる」と言われていたのです。
このショート・ショートもその時期に書かれたので、
未来予想図は氷河期だったのでしょう。

それが180度方向転換して1980年代からは
地球温暖化を叫ぶようになり、今はまたさらに180度方向転換して、
「やっぱり地球は寒冷化している」と主張する人が増えてきています。

もう滅茶苦茶ですねw

星新一「デラックスな拳銃」のネタバレ解説

主人公の男は、中年をすぎてから、デラックスな拳銃を作るのに夢中になり、
妻も家も会社も失ってしまいました。

しかし、アパートの家賃をこれ以上払えなくなって追い出されても、
デラックスな拳銃さえあれば、ほかになにもいらないと思っていました。

その拳銃には温度計やラジオの他に、
万能カギが出てくるボタンなどもついています。

万能カギで公衆電話の料金箱を開け、その小銭で、
もぐりで馬券の取次ぎをやっているやつの事務所に電話します。

電話で留守なのを確認してから、そいつの事務所に行き、
万能カギでドアをあけ、拳銃についているライトで金庫を探し当てます。

拳銃のドリルで金庫に穴をあけ、中野札束をポケットに詰め込みます。

しかし、子分が帰ってきてしまい、主人公は拳銃を撃ち、
殺してしまいました。
レーダーがついているので、負けることはありません。
拳銃についているオルゴールで葬送行進曲を鳴らし、
目を閉じて冥福を祈ります。

ところが、そこへ別の子分がやってきて、
背中にナイフをつきつけられてしまいました。

ポケットの札束も拳銃も取り上げられてしまいます。
しかし、「拳銃を渡す前に、引き金を引かれたら拳銃が爆発し、
拳銃を持っている人を吹き飛ばすしかけがあったので、
わざと逃げて引き金を引かせることで、子分を倒しました。


というあらすじなのですが、
拳銃って何だっけwww
と思ってしまう、余計な機能が多すぎますねw

でも、よく考えてみたら、現代の携帯電話とかスマートフォンも、
電話って何だっけwww
と思ってしまう、余計な機能がたくさんありますよね。

携帯電話やスマートフォンも「デラックスな電話」だと思えば、
この主人公の気持ちも少しは理解できるかもしれません。

時雨沢恵一「キノの旅」20巻「あとがき」のネタバレ解説

今回のあとがきは、本のあらゆるところをチェックしないと、
読むことができません。

まず、カバー裏で、フォトとティーが、
「表のカバーイラスト内に潜んでいる"20"という数字を先頭に、
今巻の中に散らばったキーワードを番号順に辿っていくと……!」
と、ヒントをくれています。

ちなみに「20」という数字は、カバーイラスト右下の、
新聞紙の中に書かれています。

というわけで、キーワードを番号を探し、
番号順に並べ替えると、下のようになります。

↓自分で探したい! という人は、このネタバレは見ないでください。
「  「20」(表のカバーイラスト)
 2「巻の」(45ページ)
 3「本当」(254ページ)
 4「のあ」(83ページ)
 5「とが」(217ページ)
 6「きは」(カバー裏)
 7「実は」(198ページ)
 8「これ」(14ページ)
 9「です!」(73ページ)
10「皆さ」(253ページ)
11「ん見」(164ページ)
12「つけ」(218ページ)
13「てく」(カバー裏)
14「ださ」(219ページ)
15「って」(48ページ)
16「あり」(200ページ)
17「がと」(72ページ)
18「うご」(262ページ)
19「ざい」(81ページ)
20「ます!」(164ページ)

時雨沢恵一「キノの旅」20巻「キノの旅・宇宙編」45話「旅には休憩や、振り返る時間も必要さ」のネタバレ解説

目次にも載っていない、おまけ小説です。

19巻のあとがき短編とは違い、今回はあとがき扱いではありません。
あとがきはあとがきで別にあります。

どうやら今回は、
4巻のラストでキノが宇宙へ旅立った後のエピソードのようです。

周囲の盛り上がりとノリに騙されて、
宇宙旅行を始めたキノとエルメスは、退屈していました。

ヒマ潰しのために、これまでに訪れた星の話を、
ダラダラと喋り続けているだけの話です。

流離いの遺跡ハンターの「シン」さんの元ネタは、
「男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、
年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 」

シリーズ作中作の「ヴァイス・ヴァーサ」に登場する
「シン」なのではないか、と思います。

が、キノがピロシキの匂いと一緒に思い出した、
「ユルビバ」という高校1年生の女の子の元ネタは、
残念ながら分かりませんでした。
誰か情報提供してください。

最後に「宇宙編・次巻に続く?」と書かれていますが、
この悪ふざけが本当に続くのかどうかは、
21巻が発売されてみないと分かりません。

もしかしたら学園キノみたいに分離したシリーズになる可能性もあります。

時雨沢恵一「キノの旅」20巻エピローグ&プロローグ「旅の途中」のネタバレ解説

あるところに、高く分厚い城壁がそびえる国がありました。

その国では、1000年以上前から、国民全員、
城壁の中だけしか人間はいないと思っていました。

この国で、城壁の外にも人の世界があると知っているのは、
国家指導部の政治家達と、軍人兼入国審査官の一族だけです。

位置情報を発信し言動を記録する機械をつけ、
監視員が一緒に行動することを条件に、入国が許可されました。

この国の国土は恐ろしく広く、3日間で回ることは不可能だったので、
回れる範囲で美味しい食べ物を食べて、食料と燃料を補給しました。

2日目の夕方、監視員に綺麗な景色を見られる場所を訊くと、
山の上にある展望所を教えてくれました。

そこでは、何度も「世界周遊」をしたことがあると信じている国民が、
キノに話しかけてきました。

みんながいなくり、帰る途中、エルメスは、
キノも、またあの場所に戻ってくるといいよ、と言いました。

その時は、キノも「ボクも、世界を一周してきた」と堂々と答えることにします。

というあらすじなのですが、キノが再びこの国に来た時は、
この国の人たちと違って、本当に世界一周した時なんですよね。

その時キノは何歳になっているんでしょうか。
寿命で時間が足りるといいんですけどね。

時雨沢恵一「キノの旅」20巻8話「羊たちの草原」のネタバレ解説

キノとエルメスは、よく晴れた春の草原を走っていました。
しばらくして、数百頭の羊の群れが、
キノとエルメスの方へ全速力で走ってくるのが見えました。

キノはエルメスを加速させて、羊の群れを振り切ろうとしますが、
前方の窪地にも羊の群れがいるのを見て、道を外れて走りました。

1発だけ『カノン』を撃って、その音で驚かせようとしますが、
羊たちはキノを追いかけてきます。

しばらく走ると、幅5メートルほどに渡って、
草原に亀裂が入っているのがわかり、停まりました。
振り向くと、羊の群れが残り200メートルほどに迫っています。

キノはエルメスを倒して置いていき、
自分は深さ10メートルほどの溝の中に降りました。

底から見上げると、大地のふちにずらりと並ぶ羊たちの顔があり、
キノを一斉に睨んでいました。

キノは休憩をとりながら、水の流れてくる方に向かって歩きます。
羊たちも上からついてきました。

夜になったので眠り、朝になると、羊たちはいなくなっていました。
溝から出て、『フルート』のスコープで草原を調べると、
東の方角で太陽の光を浴びて何かが光っていました。

そちらに進むと、幅1メートルの溝に両前輪がスッポリとはまった、
車高の高い車両がありました。
車の周囲には成人男性の白骨が散らばっていました。

残されていた手記によると、旅の途中、
溝にはまった車から脱出したところを、羊たちに体当たりされ、
骨折して歩くこともできず、最後は自殺したようでした。

車の屋根の上には、砂場や泥濘地、雪の上などでタイヤが空転した時に使う、
サンドラダーという板が2枚ありました。
キノはそのサンドラダーをタイヤの下に敷き、溝から脱出すると、
車にあったシャベルで穴を掘り、白骨を集めて埋め、黙祷しました。

キノは車を運転し、押し寄せてきた羊たちを跳ね飛ばし、
何十頭もの羊たちを轢き殺しながら進み、エルメスのところに戻りました。

エルメスの燃料が洩れてなくて、どこも壊されていないことを確認すると、
キノは後部の荷台に繋がっているロープを引きました。
ロープは、燃料のドラム缶の開閉コックに繋がっており、
燃料がダイチの上にこぼれ落ちていきます。

エルメスを囲むように半円を描くと、『フルート』で撃ち、発火させました。

屋根に登り、炎の柵の中にいる羊たちを皆殺しにすると、
エルメスのところへ走り、サンドラダーでジャンプ台を作り、
エルメスに乗って溝を飛び越えました。

その日の夕方、近くにあった国に入国したキノは、
入国審査官から、「あの羊は元々、闘羊として品種改良され、
飼われていた羊だったと教えられました。

しかし、動物愛護の観点から、
動物をわざと闘わせるのはどうかということになり、
10年ほど前に国民投票で廃止が決まり、
その時にいた数百頭を草原に放したのだそうです。

元気でいてくれて嬉しい、国民の全員に、
グッドニュースだって伝えなくちゃ、とニコニコ言う入国審査官に、
エルメスは『どうするキノ? 伝える?』と訊いたのでした。

というあらすじなのですが、迷うまでもなく、伝えてほしいですね。


日本でも、ペットとして輸入されたものの、
飼い主が捨てて野生化し、生態系を破壊するようになった、
特定外来生物が問題になっていますが、それよりひどい話でした。

恩田陸「七月に流れる花」のネタバレ解説

七月に流れる花 (ミステリーランド)


主人公の大木ミチルは、中学1年生の女の子です。
ミチルは、6月初めというはんぱな季節に転校してきました。

ある日、美術の授業で先生から「夏の人」を描きましょう、と言われます。
夏の人の意味が分からないミチルは、
ひまわり畑の中に麦わら帽子を被った子供がいる絵を描きました。
ところが、他のクラスメートたちは全員、
手足も含めて全身が緑色の人間を描いていました。

先生がミチルの絵を見て立ち止まると、
学級委員の佐藤蘇芳(すおう)という、
何もしなくてもみんなの目を惹きつけてしまうタイプの女の子が、
ミチルは先週転校してきたばかりなのだと助け船を出してくれました。

美術の時間の後、隣の席の子に、みんなが描いていた絵は何なのかと訊くと、
隣の席の子は「みどりお――」と言いかけた後、
この辺りの「夏の人」なの、みんな知ってる、と答えにならないことを言い、
美術室から出て行ってしまいました。

一学期の終業式が終わっても、ミチルは友達を作ることができず、
1人で帰っていました。
和菓子屋の中の鏡を覗くと、そこに全身が緑色の人間が映っていました。

ミチルは、隣の席の子が言いかけていたのは「みどりおとこ」だったのだと、
直感的に悟りました。

和菓子屋の戸を引こうとしますが、和菓子屋は留守でした。

ミチルは、ぴょんぴょん飛び跳ねるように追いかけてくる
「みどりおとこ」から逃げながら、「みどりおとこ」の容姿を観察します。
髪も緑色で、顔立ちは西洋人かと思うほど額と頬骨が高いです。
背は高くがっちりとしていて、
ヨーロッパの童話に出てくる王子様みたいな奇妙な服を着ています。
しかし、性別は男なのか女なのか分かりませんでした。

しばらく走ると、佐藤蘇芳を見つけ、蘇芳に助けを求めました。
しかし、振り返ると「みどりおとこ」はいなくなっていました。

蘇芳と2人で歩くと、「冬のお城」の城跡を発見します。
そのお城は元々あった窓を全部潰しちゃった、という話を蘇芳はしました。

蘇芳は、ミチルが持っていた美術の時間に描いた、丸めた絵の中に、
緑色の封筒が入っていることに気づきました。

蘇芳はそれを見て、ミチルは「夏の城」に呼ばれたのだと呟きました。
夏のお城はもっと離れた場所にあり、そこに呼ばれたら、
必ず行かないといけないのだそうです。

封筒の中には、ミチルが「夏流城(かなしろ)」
での林間学校に参加しなければなりません、と書かれていました。

ミチルの母はその封筒を見ると、あちこちに電話をかけた後、
「仕方ないわね」と言いました。

封筒を受け取って3日後に、ミチルは夏の城に向かう列車に乗りました。
しばらくして、列車は駅のない田圃のど真ん中で停まり、扉を開けます。

外を見ると、小さな旗を持った「みどりおとこ」がいました。

蘇芳を含む5人の女の子たちが列車から飛び降り、ミチルも列車から降りました。
すると、列車は再び走り出しました。

「みどりおとこ」に案内されて田圃を歩き、
雑木林の向こうの川で、ボートに乗ります。

やがて、緑色のツタに覆われた、石造りの古い建物に到着しました。
蘇芳によると、それが夏のお城なのだそうです。
山の斜面にへばりつくように、箱の形をした建物が連なっており、
小さな中庭や池、細い噴水がそこここにあります。

「みどりおとこ」は大きな扉の鍵を5回も開け、夏のお城の中に入りました。

そこで、ミチルと蘇芳の他に4人の少女たちとの共同生活が始まります。
鐘が1回鳴ったら食堂に集合する、とか、
鐘が3回鳴ったらお地蔵様にお祈りしないといけない、とか、奇妙なルールがあります。
そのお地蔵様はお城の隅っこにあり、後ろに大きな鏡がありました。

他にも、水路に花が流れてきたら、
その色と数を掲示板にあるノートに書かないといけない、というルールもあります。
蘇芳によると、流れてくる花の色は白と赤なのだそうです。

ミチルや蘇芳は、迎えが来るのを待つだけで、
それまではここから出られないのだそうです。

ミチルと蘇芳以外の女の子の名前は、斉木加奈、稲垣孝子、塚田憲子(のりこ)、
辰巳亜季代(たつみ・あきよ)です。
斉木加奈と稲垣孝子は、ミチルとは別の中学で1歳上の中学2年生です。
塚田憲子も中学2年生ですが、加奈や孝子とはまた別の中学校でした。

辰巳亜季代は、ひとりだけ市立のミッション系の中学校から来た、
おっとりとしたいいところお嬢さんという感じの子でした。
亜季代が1番年上で中学3年生で、お姉さんという雰囲気なのに、
みんなが世話を焼きたくなるようなところがありました。
亜季代はいつもニコニコと笑って、セーターを編んでいました。

ミチルは加奈や蘇芳に、どうして自分たちは夏流城に呼ばれたのかと訊きますが、
答えをはぐらかされてしまいました。

ある日、ミチルたちは亜季代が持ってきた線香花火をしました。

林間学校が始まって1週間目、ミチルは水路を花が流れていくのを目撃しました。
ミチルは食堂のノートにそのことを書いた後、
あの花がどこから流れてくるのか気になり、水路を遡りました。
土塀の下の小さなトンネルから花が流れてくるのを見ます。

土塀の向こうに人の気配を感じ、ミチルは「だれ?」と訊きました。

すると、「――なあんだ、蘇芳か」という男の子の声が聞こえました。
男の子はミチルのことを蘇芳と勘違いしたまま、
「計画はちゃんと進んでる?」とか、「あいつ絶対に何か企んでる」と話しかけます。
ミチルが困っていると、鐘が1回鳴りました。

鐘が1回鳴ったら食堂に集合というルールは男の子も知っているらしく、
男の子は去っていきました。

ミチルが食堂に戻ると、蘇芳、加奈、孝子、憲子が同時にミチルを見ました。

しかし、亜季代はいませんでした。

何で鐘を鳴らしたのかと訊くと、蘇芳は、ちょっとおかしなことがあったのだと言い、
加奈の部屋の前にあったひまわりが残らずなぎ倒され、
折られて積み重なっているのを見せました。

他にも、池が空っぽになり、周囲はびしょびしょの水浸しになっていました。
まるで誰かが飛び込んだみたいでした。
しかも、飛び込んだ誰かが出て行った足跡はありませんでした。

ミチルは、夏の人はここには入らないのかと訊きますが、
憲子は、あの人は、ここの中には入らないのよ、ときっぱりと言いました。
食料が補充されているのは、2日にいっぺん、
外からの差し入れ口に入れておいてくれるのだそうです。

ミチルたちは亜季代を探しますが、見つからず、その日以来、
亜季代は本当にぷつりと姿を消してしまいました。

その後、みんなはそれまで通りの生活を続けていましたが、
図書室で孝子から「あたしだって怖いの」と打ち明けられます。

しかし、鳩の声が聞こえ、孝子は怯えた目で窓の外を見ると、
食堂へ行ってしまいました。

ミチルも遅れて食堂の前へ行くと、孝子と蘇芳が、何かが危険だと話していました。
しかし、ミチルが食堂に入ると、2人は話すのをやめてしまいました。

夜になり、外で懐中電灯の光が見えるのに気づいて外に出ると、
蘇芳と孝子が何かを毒で処分すると話していました。

数日後、憲子や加奈と、天気が悪くなりそうだという話をしていると、
鐘が3回鳴りました。

ミチル、蘇芳、孝子、憲子、加奈はお地蔵様のところへ行き、
手を合わせました。
大粒の雨が降り、雷鳴があっても、蘇芳は手を合わせ続けていました。

夕食後、ミチルはトランプをしようと言い出し、
トランプの入っていた古い戸棚を開けました。

しかし、そこから、ビニールに包まれた鳩の死骸が落ちてきました。

そのタイミングで、再び鐘が3回鳴りました。
ミチルは自分が亜季代や鳩のように、みんなから処分されるのではないか、
殺されるのではないか、とパニックになりました。

しかし、みんなに引きずられてお地蔵様のところまで連れて行かれます。
ミチルが「あたし帰る」と駄々をこねていると、蘇芳に平手打ちを食らいました。
憲子がミチルに、お地蔵様に手を合わせるようにと言います。

加奈は、ミチルをお地蔵様の正面に立たせ、「大木ミチルちゃんです、
とミチルを紹介しました。
さらに、ミチルに、鏡の向こうのお父さんに、
ちゃんと顔を見せてあげてと言いました。

お地蔵様の後ろに『556』という電光掲示板の数字があり、
それがミチルの父親の番号なのだと加奈は言いました。

ミチルの父親は、ミチルが小さい頃に離婚し、長いこと海外生活をしているうちに、
緑色感冒(りょくしょくかんぼう)という病気になりました。

緑色感冒は、今世紀の初めに世界で猛威を振るった恐ろしい病気でした。
高熱を発して全身が緑色になり、次第に重い肺炎を起こし、
呼吸困難で死んでしまう病気です。
感染率も致死率も高く、世界中をパニックに陥れました。

しかし、身体が緑色にならないうちは他人への感染率はそんなに高くなく、
身体が緑色になる前に適切な治療を施せば感知する死、
身体が緑色になった時点で隔離すれば感染が防げると分かりました。

ただ、身体が緑色になるほどに症状が進むとまず助からないし、
この時期の他人への感染力は非常に高く、しかも感染した相手も必ず重篤化します。


ここ夏流(かなし)は、
最大の『シェルター』と呼ばれる専門施設を併設した病院があるため、
あちこちから患者とその家族が移り住んでくるようになりました。

町の中にある冬のお城は、まだ流行が続いていた時に、
感染を避けるためにみんなが立てこもったのだそうです。

ミチルの父親は、緑色感冒の症状が進み、この『シェルター』に入ることになり、
ミチルの母親に、ミチルに合わせてほしいと頼んだのそうです。

『シェルター』と病院はこのお城の地下にあり、地下の隔離された施設で、
みんな治療を受けているのだそうです。
林間学校にやってくるのは、夏休み中、いつ亡くなっても不思議ではないほど、
重い病状の親がいる子供だけで、お地蔵様の後ろにあるマジックミラー越しに、
面会していたのだそうです。

蘇芳は一昨年に父親が亡くなった時にもここに来たことがありました。
今年は母親で、両親は2人とも緑色感冒の治療方法を研究していたのだそうです。
さっきの1回目の鐘は、蘇芳の母親が亡くなったときのものでした。

ミチルの母親は、父親のことをミチルに内緒にしてほしい、
と蘇芳たちに頼んでいたため、ミチルだけ何も教えられていなかったのでした。

小動物や鳥を媒介にした感染を避けるため、壁から音波を出して、
小動物が入ってこないようにしていました。
ところが、穴が開いていて、そこから鳩が入ってきたため、
毒の入った餌を食べさせ、次に『夏の人』が来るまで、
食堂の戸棚に隠していたのだそうです。

亜季代の母親も鏡の向こう側にいましたが、
亜季代本人も脳腫瘍で手遅れになっており、
いなくなった日に脳の中で大出血し、加奈の部屋の前のひまわりをなぎ倒し、
行けに飛び込んで頭を打ちつけ気絶してしまいました。
加奈は鐘を鳴らしてみんなを集め、亜季代を毛布に包んで運び出しました。


しかし、そのときミチルだけ遅れて食堂にやってきたため、
口裏を合わせて不思議な事件ということにしたのでした。

亜季代はすぐに集中治療室に入りましたが、死んでしまいました。

蘇芳の母とミチルの父が亡くなってから2日後に加奈の父が、
その翌日に憲子の母が亡くなりました。

『夏の人』は唯一、緑色感冒の完璧な免疫を持っているため、
『シェルター』と外を行き来することができるのだそうです。
『夏の人』がお城にやってきて、月曜日の朝10時に迎えが来る、と言いました。

帰り際、ミチルは水路を花が流れていくのを目撃します。
国内で緑色感冒で亡くなった人がいたら、
男なら白、女なら赤の花を流しているのだ、と憲子が教えてくれました。


というあらすじなのですが、主人公だけが、
何が起こっているのか分からず、怖がっていましたが、
ちゃんとその理由が明かされるのがよかったですね。

土塀の向こうの男の子の話は、続編の「八月は冷たい城」で語られます。

星新一「最後の地球人」のネタバレ解説

世界の人口は限りない増加をつづけ、百億を越え、二百億を越えました。

食料は人工的に合成されるようになり、植物も動物も昆虫も一掃され、
世界は、ひとつの都会となりました。
人類は、完全に地上にみちあふれます。

もうたくさんだ、助けてくれ……と、全人類がはじめて、
同じ反省と祈りを持ちました。

そして、増加は止まり、減りはじめました。

1組の夫婦から1人しか子供が生まれなくなっていたのです。

1人っ子同士が結婚するので、順番に両親から財産をうけつぎ、
何代かたつと、だれもが裕福になりました。

宇宙に出かけていた移民も地球に戻ってきます。

人類は滅亡しかけていましたが、すべての生産を停止しても、
食料や電力は滅亡までには充分にあり、
だれもが遊んで暮らすようになりました。

そして、長い年月が過ぎ、地球上でいちばんいい地方に、
たった1軒だけ残った家の、すばらしい部屋に、
若い夫婦が住んでいました。

その夫婦が、地球の王と王妃です。
もう人目を憚る必要はないので、2人とも服を着ていませんでした。

やがて、妻は子供を宿しました。

妻は、人類最後の1人の誕生のために残されていた、
分娩にも使える自動式の万能医療装置を使います。

生まれた赤ん坊はプラスチック製の保育器のなかへと
自動的に運ばれていきました。

しかし、妻はすっかり弱っており、
子供のことを夫に頼んで亡くなってしまいました。

夫は泣きつづけ、疲れて眠ってしまいました。
そのあいだに、医療装置が自動的に妻の死体を分解してしまいました。
夫が目を覚ますと、妻のとがった骨が1本残されているだけでした。

人口のふえすぎた時代に、墓地に使う地面を節約するために、
そんな機能がついていたのでした。

夫は骨を抱き、ふらふらと外に歩み出て、「転んでしまいました。
とがった骨が胸に深くつきささり、死んでしまいます。

赤ん坊は保育器の中で静かに成長をつづけていきます。

意識を持った赤ん坊は、保育器の中が薄暗いと感じ、
『光あれ』と言いました。

保育器はこわれ、そこからはい出し、ひろい空間があることを知りました。

その空間に向かって、なにかをしなくてはいけないな、と思い、
それが必ずできるという自信もありました。


というあらすじなのですが、「『光あれ』というのは、
聖書の創世記に出てくる神の言葉ですね。

妻が骨1本になってしまい、それが胸に刺さって夫が亡くなったというのは、
噛みが最初の人類の男であるアダムの肋骨から、妻のイブを作った、
というエピソードのパロディなのでしょう。

創世記のエピソードを逆回しにしたのが、このショート・ショートであり、
赤ん坊は神になった、ということなのではないかと思います。
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