星新一「ネチラタ事件」のネタバレ解説

ある研究所に勤める五太郎という青年は、
テレビを見ていたら、
出演者が非常に乱暴な言葉遣いをしているのを聞いて驚きます。

どんな言葉遣いかと言うと、下品で口の悪い江戸っ子っぽい感じの、
罵詈雑言なのです。

出勤のために外に出ると、
町にいる誰もが同じような乱暴な喋り方をしていました。

職場の研究所に着いた五太郎は、博士から、
研究所で研究していたネチラタ菌が外部に漏れてしまったことを
教えられます。

ネチラタ菌に感染すると、言葉遣いが乱暴になるのです。

五太郎や博士は以前からこの菌をいじっていたので免疫ができており、
2人だけはまともな状態だったのでした。

ネチラタ菌と逆の症状を示すタラチネ菌というのをまけば、
皆は元に戻るのですが、
博士はその前に街へ出てネチラタ症状を調べてくれと大五郎に頼みます。

大五郎は生真面目に街の人の言葉遣いをメモしていましたが、
お腹が空いたのでレストランへ入りました。

そこで大五郎は「非常に丁寧な喋り方で注文をとったところ、
ウエイトレスも丁寧な喋り方で返答してくれました。

が、その表情は怒り狂っており、
他の客も大五郎に非難の視線を向けていました。

ネチラタ症状の人たちにとっては、
丁寧な喋り方は下品な悪口雑言に聞こえているため、
大五郎の言葉遣いを聞いたウエイトレスは怒っていたのでした。


というあらすじなのですが、
おいそこのくそつまんねえブログを運営している馬の骨、
「ネチラタ」がどういう意味なのか説明してみやがれ。

と思った人もいるのではないでしょうか。

タイトルにもなっている「ネチラタ」の意味ですが、
これは江戸落語の演目の一つである「垂乳根(たらちね)」が元ネタだと思います。

主人公の八五郎の妻の言葉遣いがあまりにも丁寧すぎるため相手に理解されず、
騒動が起こるというストーリーです。

だから「タラチネ」は非常に丁寧な言葉遣いという意味で、
「ネチラタ」は逆に非常に乱暴な言葉遣いという意味なのです。

それにしても、言葉遣いとか、
言葉の意味なんてものは刻一刻と変化し続けているものなんですよね。

「貴様」は漢字だけ見ればとてもいい意味に見えるのに、
現代だと相手を罵倒するときに使う表現だという感じで。

……ちょっと注意書きを書いておいた方がいいかもしれませんね。


1000年後にこのブログを閲覧している人へ。

2000年代初頭では、しまうましたの言葉遣いは丁寧なものです。
もしあなたを罵倒しているように聞こえても、
この文章を書いている当時はそのような意図はありませんでした。



これでよし、と。
今や、古い漫画や小説の多くに、
「今日からみれば差別表現ととられかねない部分がありますが~」
という感じの但し書きがついている時代ですからね。

「こち亀」の第1巻では「新潟で米でも作ってろ!」という両津の台詞が
「まったく!」というつまらない台詞に差し替えられていたり、
「パーマン」の「クルクルパーにされちゃって一生わけもわからずくらすんだ」
という台詞が「動物にされちゃって一生つらくすごすんだ」に差し替えられたり、
「ブラック・ジャック」では「カ〇ワ」という言葉を規制した結果、
もう手塚治虫さんの意図したのとはストーリーが改変されていたりします。

もしも将来、「しまうました」が侮蔑語になってしまったらと思うと、
怖くて夜も眠れません……。

星新一「効果」のネタバレ解説

70歳過ぎのエス氏と金目当てで結婚したエス夫人は、
毎日早く夫が死んでくれないかと考えてながら生活していました。

しかし、4年が過ぎてもエス氏は元気だったため、
夫人はエス氏の友人の医者が調合してくれ、
エス氏が毎日服用していたていた薬を、
偽物とすり替えることにしました。

ところが、薬を偽物にしても特に効果はなく、
2年後にエス氏は老衰で亡くなりました。

しばらくして、エス氏の友人の医者が夫人のところへやってきて、
驚くべきことを話します。
実はエス氏は「特殊な結核菌を持っており、
夫人に感染しないようにするために毎日友人の医者が調合した薬を
服用していたのです。

エス氏は夫人を愛しているが故に、
薬嫌いなのに薬を飲み続けていたのですが、
夫人が薬を偽物とすり替えたため夫人も感染してしまったのでした。

何とも皮肉な話です。
月並みな感想ですけど、
やっぱり財産目当てで結婚なんてするもんじゃないですね。

東野圭吾「疾風ロンド」のネタバレ解説

疾風ロンド (実業之日本社文庫)


この「疾風ロンド」は、同じく実業之日本社文庫から出ている
白銀ジャック」の続編です。

「疾風ロンド」だけでも十分に楽しめますが、
できれば「白銀ジャック」を読んでいた方がいいかもしれません。

さて、葛原克也がスキー場のコースから外れた場所に何かを埋め、
近くの木にテディ・ベアを吊るし、その様子をデジカメで撮影し、
どこかへメールするという場面から物語は始まります。

葛原が作業を終えると、
パトロール隊員からコース外に出たことを注意されますが、
葛原は謝ってやり過ごし、どこかへメールを送りました。

場面が変わり、先ほどのパトロール隊員、根津昇平は、
居酒屋へ行き瀬利千晶とお酒を飲みました。

根津は前作「白銀ジャック」の新月高原スキー場から、
この里沢温泉スキー場のパトロール隊員に転勤していました。

スノーボード選手をやっている千晶は、スランプに陥っており、
そのことを根津に相談しました。

場面が変わり、泰鵬(たいほう)大学医科学研究所に勤める栗林和幸は、
バイオセーフティレベル4の実験室へ行き、
『K-55』という名前の、新種の炭疽菌が盗まれたことを知りました。

『K-55』は非常に感染力が強く致死率の高いウイルスで、
なおかつワクチンがこの世に存在しないという危険な代物です。
この研究所にいた葛原克也が独自に生み出した生物兵器なのですが、
葛原は危険物を作り出したということで解雇されていました。

和幸が慌てて生物学部長の東郷雅臣のところへ行くと、
東郷のところへ脅迫状が届いていたのでした。

脅迫状によると、
『K-55』は摂氏十度以上になると破損するガラスケースの中に入っており、
どこかに埋められているのだそうです。
ヒントとして、物語冒頭で葛原が撮っていた写真が添付されていました。
テディ・ベアには発信器が入っており、それが目印になっているのだそうです。
ちなみに、発信器のバッテリーは一週間しかもちません。

犯人(というか葛原)は、写真の場所を明かし、受信機を渡す条件として、
三億円を要求していました。

が、東郷のところへ警察から電話がかかってきて、
葛原が関越自動車道(高速道路)で起きた事故に巻き込まれて、
亡くなったことを知らされました。

衝撃の展開ですw
『K-55』の場所を知る人は誰もいなくなったのに見つかるのか、
というのが今回のテーマです。

和幸と東郷は警察に呼び出された場所へ行き、研究所の備品だと嘘を吐いて、
葛原が所持していた荷物を持ち帰りました。
その中には発信器もありました。

葛原のデジカメの中に入っていた画像の中にリフトの鉄塔があり、
『K-55』はどこかのスキー場に埋められているのではないか、
と和幸は推測しました。

和幸は警察へ届けた方がいいと進言しましたが、
危険なウイルスを秘密裏に作っていたことがバレると世間から非難されるのは必至なので、
東郷は自分たちの手で『K-55』を見つけ出すと主張しました。

と言っても、実際には東郷は無能な上司の典型のような男なので、
和幸に何とかしろと丸投げしただけなのですが。

和幸は、中学二年生の息子の秀人が、
スノーボードが好きで何度も友達とスノボ旅行に行っていることを思い出し、
家に帰って秀人に問題の画像を見せ、どこのスキー場なのか分からないかと尋ねました。

スノーボードの道具を何でも買ってもらえると言われた秀人は、
スノボ関係の友人知人に画像を見せ、里沢温泉スキー場だと突き止めました。

ちなみに、この里沢温泉スキー場のモデルは長野県にある野沢温泉スキー場なのではないかと、
数ヶ月前に一部で話題になっていました。

和幸は平日だというのに秀人を誘って、車で里沢温泉スキー場へ行くことにしました。

その頃、東郷は、研究所内に厳重に保管されていた『K-55』を葛原が入手できたのは、
折口真奈美という研究員が手引きしたからだと突き止め、和幸に電話して教えました。

が、真奈美はその会話を、東郷の部屋に仕掛けてあった盗聴器で聞いていました。

周囲からは馬鹿女だと思われていた真奈美ですが、実はそれは演技で、
葛原が『K-55』を盗む手助けをしたのも善意からではなく、
上手く事が運べば漁夫の利を得られるかもしれないと考えていたからでした。

翌日、和幸は秀人と一緒に里沢温泉スキー場の近くの宿に到着しました。
和幸は荷物を預け、秀人にアドバイスを貰いながらスキーをレンタルします。

もう20年以上もスキーをしていなかった和幸は、
スキーの道具やリフトなど、あらゆるものが進化しているのを見て、
新鮮な驚きを感じていました。

和幸は秀人と別れ、山頂へ行きます。
そこでブレーキをかけながら滑り落ちていたのですが、
ピンクのウェアを着た10歳くらいの女の子とぶつかりそうになりました。
すぐに両親がやってきて、女の子――ミハルに謝るように言い、
ミハルは素直に謝りました。

受信機の受信範囲は300メートルしかないので、
和幸はスキー板を外し、非圧雪のコース外に出ました。

が、雪に埋もれてしまい、和幸は動けなくなってしまいます。
それを見つけた人物から根津のところへSOSが来ました。
和幸はロープをかけられ、引っ張ってもらい、何とか雪から脱出しました。

和幸は根津に謝り誤魔化しました。

根津は納得していませんでしたが、他にも仕事はあるので立ち去りました。

一方、秀人は同年代くらいの可愛い女の子とぶつかりそうになっていました。
反射的に相手に言いがかりをつけたものの、自分の方が悪かったと思い、
女の子と同じリフトに乗って謝りました。

それをきっかけに、秀人は女の子、山崎育美と仲良くなります。
育美は秀人と同じ中学二年生で、
今日は地元の中学校のスキー大会に参加中なのだそうです。

秀人は育美に穴場の場所へ連れて行ってもらうことになりましたが、
途中で育美の同級生の川端健太と高野裕紀と出会い、
秘密の場所へ行かないかと誘われました。

が、育美はそのまま秀人と2人で滑ることにしました。

健太と裕紀は、圧雪されていない雪を求めてコース外に出て、
例のテディ・ベアを発見します。
健太は好きな女の子にプレゼントしようとテディ・ベアを持ち去ろうとしますが、
裕紀はそれを止めました。

その頃、先ほど雪に埋もれていた和幸を発見し、根津に通報した人物、
折口栄治は和幸に話しかけていました。

実はこの折口栄治は折口真奈美の弟であり、
和幸が『K-55』を見つけたら奪うようにと命令されていました。
折口には借金があり、真奈美の儲け話に乗ろうと和幸を尾行します。

一方、育美に穴場の場所を教えてもらった秀人は大満足で、
滑り疲れてゲレンデの下の『カッコウ』という店で休憩することにしました。

『カッコウ』は裕紀の家族が経営しているお店で、
カウンターには裕紀の兄がいました。
ジュースを飲み店を出たところで、育美は、
裕紀の妹が2ヶ月前に亡くなったのだという話をしました。

スマホのIDを交換し、秀人が宿に帰ると、和幸が伸びていました。

翌朝、運動不足だった和幸は足腰が痛くて、起きるのにも苦労しました。

食堂へ行くと、そこで昨日ぶつかりそうになったピンクのウェアの女の子ミハルと、
その両親と再会しました。
3人も同じ宿に泊まっていたのでした。

部屋に戻った和幸は受信器のスイッチを入れ、
微弱な反応があることに驚きました。
が、すぐに反応がなくなり、
受信機が壊れてしまったのではないかと疑いを持ち始めました。

ところで、今さらなんですけど、
受信機は発信器が発している周波数に反応しているだけなので、
その周波数さえ分かれば市販の受信機でも反応するでしょうし、
複数の受信機を使って効率良く探すこともできると思うんですけど……。

和幸とか東郷がそれについて全く思いつかないのが不自然な気がしました。

話を戻します。
和幸はリフトで同乗した折口から話しかけられますが、
折口は面倒臭く思いながら折口を振り切りました。

リフトを降りると、和幸は思い切って、スキー板をつけたままコース外に出ます。
が、未熟な腕前と、非圧雪には向かない初心者向けの板だったので、
当然のごとく横転してしまいます。

さらに厄介なことに、右足が動かず、動かそうとすると激痛が走ります。

そんな和幸を発見したのは、スノーボード選手の瀬利千晶でした。

千晶は根津に電話し、現場に来てもらいます。
根津は和幸をおんぶしてスノーモービルまで運び、救護室へ連れて行きました。

診断の結果、和幸は靭帯を痛めており、スキーを続けるのは難しそうでした。

根津は和幸の態度に不審なものを感じ取っており、警察に通報しようとしますが、
和幸はそれを止めました。

和幸は身分を明かし、研究室から新薬が盗まれてしまい、
その新薬がないと助からない患者がいるのだと説明しました。
新薬を盗んだ犯人から脅迫状が届いたが、その犯人が事故死してしまったのだと、
本当のことを交えつつ嘘を吐きます。

事情を聞いた根津と千晶は、発信器を貸してもらい、
スキーのできない和幸の代わりに「新薬」を探すと申し出ました。

一方、秀人は昨日に引き続き育美とのスノーボードを楽しみ、
また『カッコウ』で休憩をすることにしました。

ところが、店に行くと和幸がいて、育美を紹介せざるを得なくなります。

さらに、カウンターにいた裕紀の母親が、
インフルエンザは流行っていないかと育美に訊いた途端、
育美の様子がおかしくなりました。

『カッコウ』を出た育美は秀人を遠ざけて裕紀と話し込み、
戻ってきたときにはよそよそしい態度になっており、
別行動をとることになりました。
明日の予定も決まらないまま2人は別れてしまいます。

その頃、根津と千晶はコース外のブナ林が怪しいと睨み、
そのあたりを捜索していたのですが、
千晶は誰かに監視されていることに気付きました。

根津と千晶が深雪の陰に隠れていると、折口が現れました。
折口は根津と千晶の姿を見失い、どこかへ行ってしまいました。

その後、ゴンドラに乗っているときに受信機のスイッチを入れると、
初中級者向けの斜面で受信機が微弱な反応を示しました。

この時点で、誰かがテディ・ベアを持ち去ったのではないか、
と大半の読者には予想がつくんですけど、
それは川端健太がテディ・ベアを持ち去ろうとしているのを裕紀が止める、
というシーンを読んでいるからであり、
根津や千晶や和幸はなかなかそのことに気付きません。

『カッコウ』で待機している和幸のところへ戻った根津と千晶は、
受信機が混戦しているのではないか、という感じの話をしたり、
今後の方針について話し合ったりしました。

途方に暮れて宿に戻った和幸は、
このスキー場ではシーズンの締めくくりにゴミ集めのイベントがあり、
コース外のブナ林にも立ち入るのだそうです。
その頃には既に『K-55』の容器は破損しており、
ゴミ集めに参加した人達が感染することになるでしょう。

和幸は本当のことを話したいと東郷に電話しますが、東郷は許しませんでした。

一方、根津と千晶は地形に詳しい地元の人に画像を見せ、
アドバイスをもらっていました。
その後、千晶がスランプに陥ったのは、東日本大震災がきっかけだったのだと、
千晶は根津に打ち明けました。

東日本大震災の後は自粛ムードになりお客さんが激減し、
スポーツなんて所詮道楽なのだと千晶は思い知らされ、
無我夢中で滑ることができなくなってしまったのでした。

翌朝、朝食の席で、和幸は例のピンクのウェアのミハルたち親子が、
午後には名古屋に戻るところなのだと聞きました。

根津と千晶は昨日に引き続いてテディ・ベアの捜索を続けていましたが、
リフトの上から受信機のスイッチを入れてみたところ、
受信機はピンクのウェアの女の子、ミハルに強い反応を示しました。

リフトが着くと、根津と千晶はすぐにミハルを探しますが、
なかなか見つかりませんでした。

一方、秀人は『カッコウ』で育美と再会しました。
育美は秀人に、高野裕紀の妹が2ヶ月前に亡くなったときの事情について説明します。

当時、育美の学校でインフルエンザが大流行しており、
裕紀を経由して裕紀の妹にも感染し、彼女は亡くなってしまいました。
その後、裕紀の母親が、育美の中学の生徒たちを恨んでいるらしいという噂が流れ始めます。

育美は昨日、裕紀の母親から変な雰囲気を感じたため、
急に秀人に対してよそよそしい態度をとるようになってしまったのでした。

その頃、根津と千晶は引き続きミハルを探していましたが、
リフト乗り場で待っていてもミハルたち親子は現れません。
根津は和幸に電話し、ミハルたち親子が午後には車で名古屋に帰ると言っていた、
と伝えました。

宿にミハルたち親子の連絡先を問い合わせたり、監視カメラの映像を調べたり、
ミハルたちが昼食をとったお店へ聞き込みをしたり、
と調べているうちに、ミハルの両親が揃ってビールを飲んでいたことが判明しました。

根津はそこから、ミハルたちは高速バスで名古屋に帰るつもりなのだろうと推理し、
追いかけました。
バスは既に発車しており、捕まえるのは大変でしたが、何とか根津は追いつき、
ミハルが持っていたテディ・ベアをどこで手に入れたのか尋ねました。

すると、ミハルは「2日前に中学生くらいの男の子とぶつかりそうになり、
そのお詫びとしてテディ・ベアを貰ったのだ、と答えました。

平日なので、普通の中学生は滑っておらず、育美の中学の生徒である可能性が高い、
という話になります。
和幸は秀人に頼み、育美にテディ・ベアを拾った男の子を探してもらいます。

やがて、川端健太が拾っていたことが明らかになり、
健太は『カッコウ』へ向かいますが、『カッコウ』の前にいた折口に声をかけられ、
騙されてテディ・ベアを拾った場所へ案内させられることになりました。

健太が来ないため、和幸たちも異変に気付き、
裕紀は自分もテディ・ベアがあった場所を知っていると名乗り出ます。
根津と裕紀がスノーモービルで先回りして『K-55』を回収することにしました。

が、先回りしたものの目印であるテディ・ベアがなくなったため、
裕紀はこの辺りだと思うとは言ったもののはっきりとは憶えていない様子でした。

仕方なく、近くの木の根元を手当たり次第に掘り起こしていると、
やがて裕紀はこの木だと思うと、釘の刺さっている木を指さしました。

根元を掘り起こし、根津は『新薬』を発見しました。
が、遅れてやってきた折口は健太を人質にとり、『新薬』の容器を渡せと言います。

根津と裕紀は仕方なく言われた通りに容器を雪の上に置き、
さらにスキーも外して遠ざかれと命令されたのでその通りにしました。

20メートルほど進んだところで健太は解放されましたが、
折口はスキーで滑走し、追いつくのは絶望的でした。

が、そこへ千晶がやってきて、折口を追いかけます。
千晶は折口に追いつきますが、やがて斜度がなくなり、
千晶はスノーボードを外さないと進めなくなってしまいます。

一方、折口はスキーなので横歩きで移動することができ、千晶を引き離します。

と思いきや、根津が追いつき、折口から容器の入ったリュックを奪い返します。
折口は逃げていきましたが、とりあえず容器は戻ったので、
根津たちは和幸の待つ『カッコウ』へ移動しました。
ただし、裕紀と健太はスキー旅行の集合場所へ行きました。


ところが、「収納容器の留め金が外れ、ガラス容器が落下して割れてしまいます。

和幸は息を止めて逃げろ、これは生物兵器だと半狂乱になります。
が、秀人は冷静に、これはコショウだと指摘しました。
誰かにすり替えられていたのです。

先ほど生物兵器だと口走ったせいで言い逃れできなくなり、
和幸はとうとう本当のことを根津たちに話しました。

すると、裕紀の兄の誠也が割れたガラス容器を拾い上げ、
父親が飲んでいるビタミン剤の容器だと言いました。

裕紀は和幸が東郷に電話しているのを盗み聞きし、
根津が探しているのが病原菌だと知った上で、
根津の目を盗んですり替えていたのでした。

誠也は、同級生を恨む母親を納得させるために
病原菌を盗んだのだろうと言いました。

おそらく裕紀は同級生が食べる豚汁に『K-55』を混入させ、
食中毒にさせるつもりだろうという話になり、そこへ駆けつけます。

誠也は裕紀に、店に戻って母親の話を聞くようにと説得します。
裕紀は『K-55』の容器を落としてしまいますが、
地面に着く前に根津がキャッチしました。

『カッコウ』へ戻り、今度こそ間違いないということで、
和幸は秀人に頼んで容器をクーラーボックスへ入れてもらいました。

裕紀の母親は息子に、中学の子達のことは恨んでいない、
娘のように死ななくてよかったと思っていると言いました。
自分に不幸があったとき、他の人も不幸になればいいと思うのは人間失格だ、
むしろ他の人には幸福になってもらって気の毒な人にも幸福が回るようにしてほしい、
という感じのことを裕紀の母親は言いました。

裕紀は謝罪しますが、
育美は3日連続『カッコウ』へ来ていたのは誠也のことが好きだからだと言いました。

その後、根津は『K-55』の存在を世間に公表するべきだと言いましたが、
そこへ折口真奈美がやってきたので、
和幸は容器を真奈美に渡して東京まで運んでもらうことにしました。

和幸と秀人は宿に戻りましたが、秀人は、
父親が間違ったことをするのを見逃すわけにはいかないと言い、
世間に公表するように説得し始めました。

その頃、根津と千晶は食事をしていました。
千晶は裕紀の母親の言葉に励まされ、どこかで不幸に見舞われた人がいるからといって、
幸せを追及するのをやめちゃいけないと考えるようになり、
スノーボードを続ける決意を固めました。

そして、実は根津と千晶は、秀人がすり替えておいた『K-55』を預かっていました。

偽造パスポートを使って別人になりすまして国外脱出しようとしていた真奈美が捕まり、、
怪しげな金属容器の中から解凍が進んだ冷凍フランクフルトが発見された、
という笑えるオチがついて、この物語は終わります。


というあらすじですが、面白かったです。

ただ、真奈美は頭が良いという設定なんですけど、
正直、最後まであまり頭が良さそうには見えませんでしたねw
探偵の才能がある根津の方が何倍も頭が良さそうに見えました。

この話は「雪煙チェイス」に続きます。

赤川次郎「花嫁は墓地に住む」第2話「花嫁は墓地に住む」のネタバレ解説

スーパーでパートをしている19歳の須田朱美が、
スーパーの店長の河本昭男と真夜中の墓地で不倫している、
というシーンから物語は始まります。

何でよりによってそんな場所で、という感じですが、
東京とはいえ郊外の小さな町なので安心して会える場所がないから、
なのだそうです。

が、朱美と昭男がイチャイチャしているところへ、
花嫁姿の幽霊が現れ、2人は逃げ出しました。

場面が変わり、温泉旅館「紅葉旅館」へ来ていた朱美は、
神田聡子から声をかけられました。

聡子は亜由美に、朱美は親戚の子なのだと紹介します。

亜由美の方は、両親プラス聡子と家族旅行に来ているだけだったのですが、
実は朱美は、スーパーの慰安旅行で温泉にやってくる昭男と
不倫するために来ていたので、気まずい思いをしました。

女湯に行った朱美は、そこで高校生のとき担任だった正倉昭代と再会します。
正倉昭代はまだ40歳なのですが教師を辞め、
1人で温泉に来ているのだそうです。

その頃、まだ24歳で仲居頭になった久保田唯は、
河本たちスーパーの団体客を出迎えていました。
朱美や河本の視線から、唯は2人が不倫していることに感づき、
数ヶ月前の出来事を回想しました。

7月に東京へ旅行に行った唯は、
夜中に公園で30歳くらいの白いスーツの男がヤクザを射殺するところを目撃し、
さらにその男からレ〇〇されてしまいます。

回想終わりです。
その男が林田という名前を名乗り、旅館にやって来たのを見て、
唯は血の気が引く思いでした。

その頃、河本昭男の妻の河本由起と、朱美の母親の須田敬子は、
紅葉旅館へ向かう途中で知り合い、意気投合しました。

由起と敬子が紅葉旅館やってくると直前になって河本と朱美の携帯に電話があり、
2人はパニックになります。

そこで朱美は、聡子に頼んで一緒に温泉旅行をしていることにしました。

一段落し、敬子と2人きりになった朱美は、
実家が借金の抵当に入りなくなってしまったことを知りました。
敬子はしばらく朱美が一人暮らしをしているアパートに泊めてもらおうと、
紅葉旅館までやってきたのでした。
敬子はバーのホステスをしているのですが、休みをもらったのだそうです。

亜由美一家と聡子と朱美が食堂で食事をとることになり、
そのときに朱美は、墓地で不倫中に花嫁姿の幽霊を見たという話をしました。

そこへ、亜由美の母の清美が呼んだ殿永もやってきて、幽霊について考えます。
殿永は、誰かが朱美と河本を追い出そうとして幽霊に成りすましていたのではないか、
と推理しました。

一方、正倉昭代は大浴場に浸かりながら、
高校教師を辞めることになった事件について回想していました。
ある夜、受け持ちのクラスの野々山悟という男子生徒が昭代のマンションへやってきました。

昭代が悟を部屋へ連れて行くと、悟は、父親が不倫していることについて昭代に相談しました。
その途中、紅茶を飲んだ昭代は眩暈を感じ、そのまま意識を失ってしまいました。

目が醒めると、悟の母親がやってきて、悟をもてあそんだのだろうと昭代を責め立てました。
少し遅れて、悟の死体がマンションの駐車場から発見されました。
どうやら悟はマンションから転落死したみたいでした。

その事件で、昭代は身に覚えがないのに生徒に手を出した女教師扱いされ、
教師を辞めざるを得なくなったのでした。

回想終わりです。
大浴場にいた昭代は、昔受け持っていた生徒の母親である世良則子から話しかけられ、
昭代が父母会の準備金一億円を使い込んだという噂が流れていることを教えられました。

……世良が紅葉旅館へやって来たのは偶然なんですけど、さっきから偶然が多すぎですね。

世良則子の発言を聞いていた仲居が言いふらし、
あっという間に昭代が一億円を持って逃亡しているという噂が広まってしまいました。

それからしばらくして、唯は林田に部屋へ呼び出されました。
林田は、東京での7月のことを思い出したと言い、
昭代が持っている1億円を盗むのに協力しろと言いました。
しかし、唯が妊娠しており、1億円は「3人」で山分けにしようと言うと、
林田は冗談だと言いました。

その頃、殿永は亜由美に、昭代の勤めていた高校から消えた一億円は、
朱美と河本が不倫していた墓地に隠してあり、
墓地に人を近づけないようにするために幽霊の作り物を見せたのではないか、
という推理を話しました。

殿永はわざと、その推理が他の客にも聞こえるように話し、
何人もの客がその墓地へ向かいました。

殿永や亜由美たちもその墓地へ駆けつけます。
人海戦術で墓地を探し回り、やがて「大きな金属の缶が出てきました。
ところが、中に入っていたのは帳簿で、お金はありませんでした。

学校の偉い方が敬子の勤めるバーの常連で、
敬子はお金の使い込みがバレそうだからと相談に乗ってあげたのだと、
敬子は告白しました。
裏切り者が出ないように帳簿は墓地に隠すことになり、
敬子は花嫁姿の幽霊のメイクをしたのだそうです。

由起は朱美に話しかけ、不倫しているのを知っていたことを告げ、
この町を出ていくように優しく勧めました。

殿永は、林田に近づきます。
殿永は例の殺人の容疑者としてずっと林田を追っていたみたいでした。

林田は、何日かだけでも唯と夫婦の真似事がしたいと言い、
唯にキスをしました。


というあらすじなんですけど、「昭代が高校教師を辞めることになった、
悟の自殺(?)事件が解決していないのが宙ぶらりんで気持ち悪いですね。

わざわざ回想までしているんだから、
ちゃんと作中で何らかの決着をつけてほしかったです。

たぶん連載中にページ数が足りなくなったんでしょうけど、
それはそれとしてノベルス化するときに伏線を回収するべきだったと思います。

それと、唯をレ〇〇した林田が唯のことを愛しているような台詞を吐いて、
ハッピーエンドっぽく終わるのが本当に気持ち悪いです。

昔の赤川作品だったら、それを理由に唯が林田を殺害してもおかしくないのに、
いったいどうしてこんなふうになってしまったのでしょうか。

赤川次郎「花嫁は墓地に住む」第1話「花嫁は名剣士」のネタバレ解説

花嫁は墓地に住む (ジョイ・ノベルス)


〈K化学〉に勤める吉永という男が帰宅途中、
見知らぬ男たちに襲われるところから物語は始まります。

吉永は〈K化学〉を内部告発しようとしていたのですが、
会社が雇った男たちに告発を取り下げるよう命令されました。

吉永は言う通りにすると言いますが、男たちは吉永を痛めつけようとします。
ところが、謎の女が現れ、仕込み杖で男たちを倒して吉永を救ってくれました。

場面が変わり、主人公の塚川亜由美は、
親友の神田聡子と一緒にアルバイトをしていました。

ボロいビルの中で、ある会社の会議が終わるまで、
何も起こらないように用心するという変なアルバイトでした。

約束の時間は午後8時までなのに午後10時になっても会議は終わらず、
うんざりしているところへ、
ラーメンの出前持ちがやってきて、岡持ちを置いていってしまいました。

しかし、会議をしているのは30人くらいなのに
ラーメンは10個程度しか入っていないように見え、
不審に思った亜由美は岡持ちを開けてみました。

すると、中には目覚まし時計のついた爆弾が入っていました。

亜由美は会議室へ行き、中にいた男たちを避難させましたが、
久保というステッキをついた老人が逃げ遅れていました。
厚木という男も残っていたのですが、厚木は腰を痛めており、
久保を背負うことができませんでした。

仕方なく、亜由美は久保を背負ってビルから脱出します。
その途端、爆弾が爆発しました。

午前3時ごろ、殿永部長刑事が現場にやってきました。
殿長から食事してもいいという許可を貰った亜由美と聡子は、
ご馳走すると言う厚木と久保に誘われて焼肉屋へ行きました。

そこで〈M重工〉の工作部にいる笹田という男の写真を見せられ、
ラーメンの岡持ちはこの笹田という男だったと警察に証言してくれ、
と厚木は亜由美と聡子に頼みます。
体格が違うので亜由美は断りますが、厚木は食い下がります。

亜由美はきっぱりと断り、
殿永に頼み、焼肉屋の代金を一時的に立て替えてもらいました。

数日後、38歳の笹田鉱治は亜由美の通う大学の、谷山先生の部屋を訪れました。

谷山は亜由美の恋人なのですが、久しぶりの出番ですね。
全然本編に登場しないので大丈夫かと不安になっていたのですが、
谷山と入れ違いにやってきた亜由美は谷山のことを「ダーリン」と呼んでおり、
一安心しました。

笹田を呼んだのは亜由美だったのですが、
亜由美は笹田が告発しようとしている内容を聞きます。

〈M重工〉は秘密裏に兵器の輸出を行なっており、
笹田はそれを止めようとしていたのでした。

爆破事件の話をしているときに、
笹田の携帯電話に〈M重工〉の社長秘書の浜本ゆかりから電話がかかってきて、
笹田が追い出し部屋である〈準備室〉へ異動になったことを教えられました。

その後、ようやく本題に入り、
亜由美は笹田を谷山ゼミに招待して内部告発の話をしてほしいと頼みました。

一方、笹田の妻の笹田治子はスーパーへ買い物に行ったときに、
昔憧れていた先輩の、唐沢という男と偶然再会します。
治子は唐沢に家まで送ってもらい、別れ際にキスをされてしまいますが、
治子は受け入れました。

数日後、〈M重工〉の社長の真田雄一は、
〈準備室〉送りにした笹田が値を上げていないことに腹を立て、
専務の河辺に、チンピラを雇って笹田を襲わせるようにと命令しました。

それを知らない笹田は夜帰るときに3人の男たちに襲われそうになるのですが、
誰かが男たちを倒して笹田を救ってくれました。

翌日、出社した真田は笹田がピンピンしているのを見て、また腹を立てます。
そこへチンピラから電話があり、3人分3000万円を用意しろと言われました。

続けて、ドン・ファンを連れた亜由美と殿永が社長室へやってきて、
笹田の件について問い質します。

数日後、亜由美と殿永は、真田から会員制クラブへ招待されました。
と言っても、亜由美と殿永は自分の分は自分で払いましたが。

真田は、笹田が襲われた件は河辺が勝手にやったことだとトカゲの尻尾切りをします。
真田によると、河辺は現在行方不明なのだそうです。

その会員制クラブには笹田もいたのですが、
真田の鶴の一声で笹田は元のポストへ戻ることになりました。

そこへ、殿永の携帯電話に電話が入り、
横浜港で海に突っ込んだ車の中から「河辺の身分証を持った男が見つかった、
という知らせを受けました。

河辺のお通夜では、真田が河辺の妻の礼子と会話をした直後に礼子が倒れましたが、
真田は知らんぷりをして去っていきました。

後日、真田は新聞で礼子の死を知りましたが、
『これでうるさい奴が一人減った』と言っただけでした。

一方、笹田治子は唐沢と本格的に不倫をするようになっていました。
が、休憩していたホテルへ亜由美がやってきて、笹田は何もかも知っていると言いました。

真田は唐沢とグルになり、治子の浮気写真をバラまくと言って笹田を脅し、
第二の河辺として使っているのでした。

亜由美は、真田と唐沢に後悔させてやろうと治子に言いました。

その頃、笹田は最初の方に登場した久保老人に呼び出されて、
作りかけの爆弾を見せられ、それを完成させるのを手伝えと言われていました。

数日後、唐沢はホテルのベッドで目を醒まし、隣に女の子が寝ていて、
床にはセーラー服が散らばっているのを発見して青ざめました。

唐沢は逃げ帰りますが、
唐沢と女の子が一緒にベッドにいる写真メールが唐沢の携帯電話に届き、
それを妻に見つかって怒られました。

その後、〈M重工〉の社長室へ行った唐沢は、亜由美を殺せと真田に命令されます。
唐沢が家へ帰ると、妻は息子と一緒に実家へ帰り、さらに家具もすべてなくなっていました。

お金もないので、唐沢は治子に頼みお金を貸してもらいます。

そして、唐沢は亜由美を殺そうとしますが、ドン・ファンに噛みつかれ、
さらに社長秘書の浜本ゆかりが登場し、唐沢の右腕を切り付けました。

吉永や笹田をチンピラから救った謎の女の正体は浜本ゆかりだったのです。

……と言っても、他に該当しそうな女性がいないので、バレバレだったんですけどねw

治子が現れると、唐沢の怪我の応急処置をしてあげ、病院には殿永が付き添いました。

一方、笹田は吉永も含めた他の会社で内部告発をした人たちを貸会議室に集めていました。
そこへ久保の『君らには天罰が下る!』という声がスピーカーから聞こえて、
爆発音が聞こえました。
天井のスピーカーから。
おそらく、久保が爆弾のスイッチを入れたら久保のいる場所が爆発するようになっていたのでしょう。

その頃、真田も、亜由美を唐沢に殺させようとした罪で殿永から事情聴取されていました。
浜本ゆかりが社長室に盗聴マイクを仕掛けており、それが決め手となります。

ゆかりの婚約者は真田の汚職の罪を被って逮捕され、自殺していました。
ゆかりはその敵(かたき)を討とうと、社長秘書になったのでした。

それでも真田は罪を認めませんが、死んだことにして警察に匿われていた河辺が現れ、
さらに妻の礼子も生きていることを知ると、さすがに反論する気力を失いました。

ゆかりが人を傷つけた件に関しては殿永がある程度庇い、
笹田も治子と一週間家族旅行に行きよく話し合うことにし、大団円で終わります。


というあらすじなのですが、ちょっと気になる部分もあります。

作中では伏線が回収されていないんですけど、
結局、「唐沢がホテルで寝ていた女の子は行きずりの相手ではなく、
亜由美(次点として聡子)の変装だったのでしょうか?
もちろん、実際には寝ていなくて演技だったとして。

話の流れ的に、たぶんそうだろうとは思うんですけど、
はっきりとは伏線が回収されていないのでモヤモヤします……。

東野圭吾「夢幻花」のネタバレ解説

夢幻花(むげんばな)


1962年。
真一という男が通り魔に襲われ殺されてしまいます。
真一の妻を和子も、まだ1歳の娘を庇って殺されてしまいました。

それからガラリと場面が変わります。
3人いる主人公の1人である、14歳で中学二年生の蒲生蒼太は、
毎年七夕の日に家族揃って朝顔市に連れて行かれるのが不満でした。

朝顔市というのはその名の通り、
様々な朝顔を展示、販売している場所のことです。

朝顔に興味のない蒼太は退屈で仕方がなく、
靴擦れができたのを両親に訴え、朝顔市を離脱し休んでました。

と、その隣に蒼太と同級生の、見知らぬ可愛い女の子が座りました。

蒼太と女の子の前を通った男が財布を落とし、
それを2人で協力して届けたのをきっかけにして、
2人は世間話をすることになりました。

女の子は伊庭孝美という名前で、上野に住んでいるのだそうです。

蒼太は思い切って孝美から携帯電話のメールアドレスと電話番号を聞き出しました。

蒼太は携帯電話を持っていないので、自分のパソコンからメールを出し、
仲良くなっていきます。

それから2ヶ月くらい毎週末デートをしていたのですが、
蒼太のパソコンの中身をチェックした警察官の父親の蒲生真嗣から、
孝美と会うなと説教されてしまいます。

すると孝美からも電話があり、
もう蒼太と会ったり電話したりするのはやめようと思うと言われました。

そして、それから10年が経過し、現代。

3人の主人公の中の2人目である20歳の秋山梨乃は、
1歳年上の従兄の鳥井尚人が自宅のマンションから飛び降りて自殺した、
という知らせを受けました。

尚人はプロを目指してアマチュアバンド『ペンデュラム』の活動をしており、
充実していたはずで、尚人の弟の知基に訊いても、尚人の自殺の原因は不明でした。

梨乃は葬儀のときに祖父の秋山周治と会話をします。

秋山周治は、梨乃と尚人と知基にとって共通の祖父です。

梨乃は1年前までオリンピック選手を目指して水泳に打ち込んでいたのですが、
今は水泳をやめており、そのことを心配した周治は、
梨乃に家へ遊びに来るようにと言いました。

尚人は生前、バンドのメンバーと『福万軒』という高級な洋食屋へ行きたがっており、
それを知っていた秋山周治は『福万軒』の食事券を持ってきて、
尚人の柩の中へ入れました。

やがて、尚人のバンドでボーカルとギターを担当していた大杉雅哉、
ベースのテツ、ドラムのカズといった、バンドのメンバー3人が葬儀に訪れます。
ちなみに尚人の生前の担当はキーボードでした。

それから4日後、梨乃は祖父の秋山周治の家を訪れました。

秋山周治は一戸建ての木造住宅で一人暮らしをしており、
その庭には様々な花が植えられていました。

梨乃は親切心から、専用のブログを作り、
周治が育てている花の写真をアップロードすることにしました。

それから2ヶ月後。
いつものように周治の家を訪れた梨乃は、
周治が謎の黄色い花を育てていることを知りました。
残念ながらそのとき既に花は萎れてしまっていたのですが、
梨乃は周治が撮っていた謎の黄色い花の写真をUSBメモリーにコピーしました。

その謎の黄色い花はとても貴重なものであり、
ブログにも載せないでくれと周治は梨乃に頼みました。

それから3週間後の、7月9日。
大学3年生の梨乃は大学の講義を受ける前に、
今日周治の家へ行くと周治に電話しました。

講義が終わり、お土産のワッフルを買って周治の家へ行くと、
家の中の様子が変でした。
居間へ入ると、卓袱台には湯呑み茶碗とペットボトルが並んでいました。
座布団を踏むと、その座布団が濡れていることに気付きました。

卓袱台の向こうに寝ている周治に声をかけ、
梨乃は周治が既に亡くなっていることに気付きました。

梨乃は警察に通報し、3人目の主人公の最後の1人である早瀬亮介刑事がやってきました。

所轄の刑事である早瀬は、通報を受ける前から秋山周治のことを知っていました。

早瀬は自身の不倫が原因で、4年前から妻と息子と別居していました。
それ以来2年以上も息子の裕太とは没交渉になっていた早瀬でしたが、
ある日、裕太が万引きの疑いで家電量販店の店員に捕まったという知らせがありました。

店へ駆けつけてみると、裕太への疑いを晴らすのは難しそうで、
早瀬は困り果てました。
しかし、そこへ警察から電話がかかってきます。

高校生2人組が裕太のバッグへ商品を入れるところを目撃した老人がいて、
それを注意した老人が高校生2人組に殴られるという傷害事件が発生していたのです。

こうして、裕太への万引きの疑いは晴れました。
そして、その老人というのが秋山周治でした。

――家の中が荒らされていたことから強盗殺人の線も考慮して捜査が始まりますが、
捜査はたちまち暗礁に乗り上げてしまいます。

秋山周治が6年前まで籍を置いていた「久遠食品研究開発センター」へ行き、
「分子生物学研究室」の福澤から周治の話を聞きましたが、
福澤は周治とは親しくなく、思わしい反応はありませんでした。
そこで、周治が在籍していた頃、共同で研究をしていたという日野和郎を紹介してもらい、
彼から話を聞きました。

日野和郎によると、周治と最後に会ったのは5年前で、
それ以降は数回、電話でのやり取りをしただけだったのだそうです。
一応事件があった7月9日の正午から午後3時までのアリバイを訊いておくと、
その時間は会議があり、アリバイは成立しました。

早瀬は、周治が在籍していた頃に書いていたというレポートや論文の束を貸してもらいました。

その後、裕太から電話がありました。
裕太は周治が殺されたことをネットのニュースで知り、
早瀬がその捜査をしているのではないかと考え電話してきたのでした。

裕太にとって周治は恩人なので、裕太は早瀬に、犯人を絶対に捕まえてほしいと頼みました。

周治の葬儀の日、梨乃は日野和郎に話しかけられました。
周治は生前、梨乃のプレッシャーにならないようにと、
梨乃がオリンピック選手を目指して水泳をしていたことには殆ど触れませんでしたが、
実は周治も梨乃の水泳について日野和郎と話をしていたのだそうです。

梨乃が周治の仕事の内容について尋ねると、
バイオテクノロジーで新種の花、特に青い薔薇を作る研究をしていたのだそうです。
残念ながらその研究は酒造メーカーに先を越されてしまったのだそうですが。

その後、梨乃は自殺した尚人の弟の知基に話しかけられます。
尚人は死ぬ直前にコーラを飲んでいたのだそうです。
また、尚人の代わりのキーボード担当が見つかり、
バンド『ペンデュラム』の活動が再開するのだそうです。

知基に誘われ、梨乃も『ペンデュラム』のライブに行くことにしました。

その後、周治の家へ行った梨乃は、
例の謎の黄色い花の鉢植えがなくなっていることに気付きました。

それを警察に通報したのですが、やってきた警官は煮え切らない対応で、
強盗殺人とは無関係だろうと言われてしまいます。

しかし梨乃は無関係だとは思えず、
思い切って謎の黄色い花の画像をブログにアップロードし、祖父が亡くなったことを告げ、
黄色い花について知っている人がいたら教えて欲しいと頼みました。

すると思いがけないことに翌日の昼には「蒲生要介」と名乗る人物からメールが届きました。
蒲生要介は梨乃と実際に会いたいと言い、さらに黄色い花の画像は削除し、
ブログも閉鎖した方がいいとメールに書いていました。

気持ち悪くなった梨乃はブログを閉鎖し、
翌日、人通りの多い表参道のオープンカフェで要介と会うことにしました。

翌日の午後、蒲生要介は「ボタニカ・エンタープライズ」という会社の代表だと名乗り、
偽名ではないことを証明するために免許証を梨乃に見せました。
免許証によると、要介は37歳でした。

要介は、「MM事件」について周治が何か言っていなかったか、
と尋ねますが、梨乃には全く心当たりがありませんでした。

周治が殺されたことを話すと、要介の顔色が変わります。

要介によると、例の黄色い花は自然界には存在しない植物であり、
バイオテクノロジーによって生み出された花なのだそうです。

鉢植えが盗まれたことも話し、梨乃は自分の名前も明かしました。

が、要介は梨乃に、あの花に関わるな、全部自分に任せろ、
という感じのことを言い、納得できない梨乃はオープン・カフェを後にしました。

場面がガラリと変わり、大学院生になった蒲生蒼太が登場します。

蒲生は実家の東京を離れ、大阪の大学で原子力の勉強をしていたのですが、
東日本大震災の原発事故の影響から原子力の研究に未来を感じられなくなっており、
進路を決めかねていました。

父の真嗣は2年前に癌で亡くなっており、その3周忌に帰ってこい、
と母の志摩子から催促の電話がありました。

蒼太には要介という兄がいるのですが、
蒼太はずっと前から、真嗣と要介に対して壁のようなものを感じていました。

要介は真嗣の最初の妻の子供であり、蒼太は後妻である志摩子の子供でした。

つまり、蒼太と要介は異母兄弟です。
長男の要介が跡継ぎということになっているのも影響しているのか、
蒼太は昔から父や兄との折り合いが悪く、
わざわざ大阪の大学へ進学したのも父や兄と離れるためでした。

志摩子に説得され、渋々実家に帰った蒼太でしたが、
兄の要介は当分泊まりで仕事があり、3周忌にも欠席するのだそうです。

納得がいかない蒼太でしたが、父の妹である叔母から、
跡継ぎではない兄弟が跡継ぎとなる兄弟に隠し事をされているように感じるのは当然だが、
そこに触れてはいけないと忠告されました。

三周忌が終わり、家に帰った蒼太は、家の前にいた若い女性に声をかけました。

女性は「ボタニカ・エンタープライズ」の要介に会いに来たのだそうですが、
蒼太はそんな名前の会社は初耳でした。

女性が水泳選手の秋山梨乃であることに蒼太が気付くと、
梨乃は逃げ出そうとしますが蒼太は止めます。

兄の要介は会社員ではなく、警察庁に勤務している役人だということを話し、
コーヒーショップに移動しました。

蒼太は有名人である梨乃に水泳の話を振りましたが、
梨乃は水泳の話は嫌がっていました。

要介と梨乃のやりとりを聞いた蒼太は謎の黄色い花の画像を見せてもらい、
それがアサガオであることに気付きました。

実は黄色いアサガオは江戸時代の頃までは存在していたのですが、
現在は絶滅しており、自然界には存在しないはずの花だったのです。

一方、早瀬亮介のいる警察署へ、警察庁の生活安全局の、
「犯罪抑止対策室 室長」の要介がやってきました。
要介は周治が殺された事件について早瀬に質問しましたが、妙な雰囲気でした。

梨乃は、要介が「MM事件」について知っているか、
と訊ねていたことを思い出し、もう一度蒼太と会ってそのことを伝えました。

蒼太は蒼太で、黄色いアサガオについて調べたり、
要介に電話したりしたのですが、あまり収穫はありませんでした。

蒼太は梨乃に誘われ、『ペンデュラム』のライブへ行きました。
すると、新しいキーボード担当として登場したのが、
物語冒頭に出てきた伊庭孝美でした。

10年ぶりの再会だったのですが、蒼太が孝美に話しかけても孝美は人違いだと言い、
さっさと帰ってしまいました。
梨乃の従弟の知基に訊いても、キーボードの女性の名前は白石景子だという返事が返ってきます。

一方、借りていた資料を返しに「久遠食品研究開発センター」へ行った早瀬は、
そこで要介の姿を発見しました。
「分子生物学研究室」の福澤に要介を見かけたことを話すと、
要介は周治の研究内容について質問したのですが、
ここへ来たことは捜査員には伏せるように頼んでいたのだ、と福澤は言いました。

早瀬は梨乃に会いに行き、黄色い鉢植えが盗まれた件について話を聞きました。
早瀬は、警察庁の人間が会いに来ただろうとカマをかけますが、
梨乃はそれに感づき、要介との会話の内容は早瀬には秘密にしました。

梨乃が自宅へ帰ると、知基から電話があり、白石景子が姿を消したことを伝えられました。

一旦大阪へ戻っていた蒼太でしたが、黄色いアサガオの件が気にかかり、
再び東京へトンボ返りすることにしました。

蒼太は梨乃と会い、白石景子が失踪した件について相談しました。
白石景子の正体はやはり伊庭孝美ではないかと蒼太は考えており、
梨乃は伊庭孝美について知り合いにあたって調べてあげると言いました。

翌日、蒼太と梨乃は、黄色いアサガオについて尋ねに、
日野和郎のところへ行きました。
その途中、蒼太の初恋の相手が伊庭孝美であることについて、梨乃はからかいました。

日野和郎に黄色いアサガオの写真を見せましたが、
日野は黄色いアサガオの存在には懐疑的でした。

日野から田原というアサガオの育種家を紹介してもらいますが、
田原はバイオテクノロジーで黄色いアサガオを生み出すことについて否定的で、
黄色いアサガオの写真も光の加減で黄色く見えるだけではないかと言いました。

しかし、田原の叔父が田原に、
「黄色いアサガオだけは追いかけるな」「あれは夢幻花だから」
と言っていたことだけは有益な情報でした。

また、田原のコレクションの写真を見せた貰うと、
物語冒頭に出てきた「朝顔市」の写真の中に伊庭孝美が映り込んでいるのを発見しました。

一方、要介と会った早瀬は、要介に取引を持ちかけますが、
要介は取引がしたいならそれなりのカードを用意してもらいたい、
と軽くあしらいました。

――蒼太と梨乃は、知基を誘い、『KUDO’s land』というお店へ行き、
そこで『ペンデュラム』の雅哉、カズ、テツと会いました。

このお店のオーナーは工藤アキラという往年の有名歌手なのですが、
白石景子はこの店の常連で、
雅哉たちは工藤アキラを通して白石景子を紹介してもらっていたのでした。

しかし、工藤アキラも白石景子の素性については何も知りませんでした。

テツやカズによると、白石景子はバンドの練習の合間に、
尚人の自殺について色々と質問していたのだそうです。
カズは、尚人がバンドのみんなと『福万軒』へ行きたがっていたことも
白石景子に話していたのだそうです。

蒼太は、白石景子は、尚人の祖父の周治に近づくのが目的で、
『ペンデュラム』に入ったのではないかと推理しました。

その後、1人になった梨乃は早瀬からの電話を受け、周治の家へ行きました。

早瀬によると、座布団に染み込んでいた液体はただの水だったのだそうです。
早瀬は、周治がペットボトルからお茶を飲んでいたのなら、
どうしてガラスのコップではなく湯呑み茶碗を使っていたのだろう、
と疑問に感じていました。

やがて、伊庭孝美が10年前に住んでいた場所が分かりました。
伊庭孝美は、伊庭医院の院長の孫だったのですが、
既に伊庭医院は閉鎖されていました。

が、伊庭孝美は慶明大学薬学部生理学研究所にいることが判明し、
蒼太と梨乃はその大学の学生に成りすまして潜入しました。

研究所へ行くと、今度はテレビ局のスタッフに成りすまし、
伊庭孝美を探しているのだと説明しました。

伊庭孝美の机を探ると、去年の10月のカレンダーに勝浦と書かれているのを発見しました。
勝浦は、工藤アキラの別荘がある場所でした。

一方、早瀬は後輩刑事から、周治が一ヶ月半ほど前に母校の帝都大学へ行き、
謎の種のDNA鑑定を頼んでいたという話を聞きました。
鑑定の結果、それはアサガオの一種だったのだと判明したのだそうです。

そこへ裕太から電話がかかってきて、捜査の進展状況を聞かれました。
裕太が周治へ礼状を書いていたことを知った早瀬は、
周治から届いた手紙を見せて欲しいと頼みました。

裕太は父親が別居していることについて周治に相談していたのですが、
周治は手紙の中で早瀬のことを庇っていました。

さらに、周治の妻が生前、周治の研究が上手くいくようにと茶断ちをしており、
妻が亡くなった後は周治も茶断ちをしていたと書いてありました。

しかし、現場にあった湯呑み茶碗にはお茶が入っていました。

その頃、蒼太と梨乃は勝浦へ来ていました。
工藤アキラの別荘を捜します。

その途中、梨乃は水泳を辞めた理由について蒼太に話しました。
梨乃は水泳をしていると心因性の眩暈に襲われるようになり、夢を諦めたのでした。

その後、苦労して工藤アキラの別荘を見つけた蒼太と梨乃は、
近くの家に住んでいた老婆から話を聞くことにしました。

工藤アキラがその家を買う前はどんな人が住んでいたのかと尋ねると、
田中という夫婦が住んでいたのだと言われました。
50年くらい前にその夫婦の息子が外国の女優に夢中だったのですが、
その女優が死んだのをきっかけに東京で事件を起こし、
夫婦は逃げるようにここへ引っ越してきたのだそうです。

昼食をとる間、蒼太と梨乃はその事件について調べ、
マリリン・モンローが1962年に死んでいることを知りました。
マリリン・モンローのイニシャルはMMであり、
それが要介の言っていた「MM事件」と繋がっていそうでした。

一方、その頃早瀬は、カラオケボックスで「日野和郎と話をしていました。

事件の起こった7月9日の午後三時以降のアリバイについて、
早瀬は日野に訊きましたが、日野にはアリバイがありませんでした。

周治は茶断ちをしていたため、事件当日、お茶ではなく白湯を飲んでいたのでした。
ペットボトルのお茶は来客用のものでした。

周治は来客にペットボトルのお茶とガラスのコップを出し、
自分は湯呑み茶碗で白湯を飲んでいたのです。

来客は犯行後にガラスのコップを片付けましたが、
ペットボトルのお茶と湯呑み茶碗はそのまま残して行きました。

その後、日野が周治の家を訪れ、湯呑み茶碗を倒してしまいました。
そのとき、座布団に水が染み込んでしまったのです。

しかし、湯呑み茶碗の中身が白湯(というか水)だったことを知らない日野は、
湯呑み茶碗にお茶を注いでおいたのでした。

周治の家の近くのコインパーキングの防犯カメラの映像から、
日野が周治の家へ行ったことを早瀬は突き止め、
こうして日野を問い詰めているのでした。

早瀬は、日野が黄色いアサガオの鉢植えを盗んだのだろうと言いましたが、
日野は盗んだのではなく預かったのだと言いました。


一方、梨乃と蒼太は東京へ戻り、図書館で新聞の縮小記事を閲覧することにしました。

マリリン・モンローが死んだ日以降の新聞を調べ、
1962年の9月5日に、東京で路上殺人が発生していたという記事を見つけました。

それが物語冒頭の通り魔事件だったわけです。

犯人の名前は田中和道で、老婆の話とも内容が一致していました。
また、その事件はMM事件と呼ばれるようになったのだそうです。

その被害者の名前を見ていた蒼太は、「被害者である真一と和子の娘の名前が、
志摩子であることに気付きました。

蒼太の母親の名前も志摩子です。

蒼太が志摩子に電話し、母方の祖父母の名前を確認すると、やはり真一と和子でした。

蒼太は家に帰りますが、志摩子は書き置きを残して失踪してしまっていました。

その頃、早瀬は要介と喫茶店で会い、日野和郎の自供を聞かせました。

日野は黄色いアサガオの鉢植え以外に、卓袱台の上の封筒も持ち去っていたのですが、
その封筒には黄色いアサガオの写真と、『福万軒』の食事券が3枚入っていました。

場面が変わり、『ペンデュラム』のライブを見に来ていた梨乃は、
ライブ直後に大杉雅哉が早瀬達警察に連行されるのを見て愕然とします。

要介の計らいで、早瀬は大杉雅哉の取り調べに参加することができました。

食事券は周治が雅哉に渡そうと用意していたものであり、
それがきっかけで雅哉が疑われることになりました。
食器棚に戻してあったガラスのコップは洗われていましたが、
コップを拭いた布巾から雅哉の皮脂が発見され、それが決め手となりました。

雅哉はプロを目指して尚人とバンドを結成して活動を続けていましたが、
壁を感じていました。

それについて工藤アキラに相談すると、
工藤アキラは謎の種を尚人と雅哉に渡しました。
その種には幻覚作用があり、
トリップしている間に尚人と雅哉は素晴らしい曲を作ることができました。

しかし、種が残り少なくなり、尚人は植物の研究をしていた周治に種を渡し、
種を増やしてもらうよう頼みました。

ところがその後、コーラで種を飲んだ尚人は、
トリップ中にマンションの窓から飛び降りて死んでしまいます。

そして事件当日、雅哉は周治の家を訪れ、種はできたかと尋ねました。
が、周治は尚人と雅哉が種を幻覚剤代わりに使用していることに感づいており、
警察に通報しようとした周治を、雅哉は衝動的に殺してしまったのでした。

――蒼太は、要介が泊まっていたホテルへ招待されました

蒼太と要介の祖父がMM事件の捜査の指揮をとっていたのですが、
彼は犯人の田中和道の自宅から黄色いアサガオを発見します。
それについて調べていたところ、
植物については関与するなと上層部から圧力がかかりました。

元々黄色いアサガオは幻覚剤として江戸時代の頃に普及し始めていたのですが、
幕府はそれが広まらないように秘密裏に取り締まっていました。

その一方で黄色いアサガオの研究は続けられており、
幕府が倒れた後の新政府も研究を引き継いでいました。

が、厳重に保管されていたはずの黄色いアサガオの種が外部に流出し、
MM事件が発生したのでした。

蒼太と要介の祖父はそれについて悔やんでおり、
黄色いアサガオを見つけて処分することは真嗣へ、
真嗣が死んだ後は要介へ引き継がれていました。

蒼太が除け者にされていたのは、母親の志摩子がMM事件の被害者だったからでした。

志摩子もMM事件の真相は知っていたのですが、
真嗣と相談し、蒼太はこのことに巻き込まないことにしていたのです。

要介には伊庭孝美という協力者がいて、今回も伊庭孝美は裏で活躍していました。

伊庭孝美がホテルの最上階のバーにいると聞き、
蒼太は彼女に会いに行きます。

10年前、孝美は両親から黄色いアサガオやMM事件のことを知らされ、
蒼太とは会わないことにしたのでした。

孝美は、田中和道の両親が住んでいた民家を別荘として購入した工藤アキラに目をつけ、
黄色いアサガオを追って調べていたのでした。

孝美は『負の遺産』として黄色いアサガオを監視する役を担っていたのです。

一方、梨乃と知基は雅哉と面会し、謝罪されました。

尚人は水泳の才能がある梨乃のことを羨ましがっており、
少しでも梨乃みたいな天才に近づこうと黄色いアサガオの種に手を出していた、
という話を雅哉はしました。

それを聞いた梨乃は、もう一度水泳を始める決意を固めました。

一方、『負の遺産』の話を聞いた蒼太も、
原発と向き合っていく覚悟を固めました。

ちなみに、蒼太と梨乃はデートをするような仲になっており、
蒼太は孝美ではなく梨乃の方を選んだのでした。


というあらすじなのですが、伏線の張り方が巧妙で面白い話でした。

ただ、難癖をつけるとすれば、「MM事件の直後は仕方がないにしろ、
しばらく時間を置いてから田中和道の両親の家に
黄色いアサガオの種がないか調べておくべきだったんじゃないか、
と突っ込みたくなりましたね。

半世紀も黄色いアサガオを追っていると言う割には、
肝心のことをしてないじゃないか、と思いました。

例えば、田中和道の両親が2人とも亡くなった段階で、
要介が誰も住んでいない勝浦の民家を調べておけば、
民家を別荘として購入した工藤アキラが黄色いアサガオの種を発見し、
工藤アキラを通じて尚人や雅哉や周治の手に渡ることもなく、
尚人が自殺したり周治が雅哉に殺されたりすることもなかったのに……、
と思ってしまいます。

まあ、もちろんそれは結果論なんですけど、
田中和道が黄色いアサガオを所有していたのなら、
その両親が遺品として種を引き継いでいることは簡単に想像できますし、
やっぱりちょっと納得がいかないですね。

赤川次郎「天使にかける橋 天使と悪魔」第4話「天使は一人で食事する」のネタバレ解説

ある日の夜、お腹を空かせたマリは知らない屋敷の敷地内に入り込んでしまいます。

そこは老人ばかりの施設であり、
国崎という70歳くらいの老人がマリに食事を食べさせてくれました。

が、部屋へ案内されるなりマリは眠り込んでしまい、
目が醒めると身体が縮んでいた――って、これは名探偵コナンでした。
失礼。
目が醒めるとそこは知らない女の子の部屋で、
マリ自身もアニメのキャラクターのパジャマを着ていました。

角田しのぶという「母親」は、マリのことを亜由子と呼んでいました。

角田亜由子は今日からS女子高へ編入することになっており、
マリは仕方なく角田亜由子になりきることにしました。

学校へ行くと、そこにいたのは国崎でした。
しかし国崎は校長の富山だと名乗ります。

担任の八尾百合に連れられて、マリは2年B組の教室へ行きました。

戸山アヤという子の隣の席になり、
戸山アヤは、お昼休みには一緒にお弁当を食べようと誘ってくれました。

そのグループには三橋久美という子もいたのですが、
三橋久美は父親が文部科学大臣なのをいいことに少し校則違反をしていました。

やがてポチが学校へ入り込んできて、マリは慌ててポチに会いに行きます。
ポチによると、やはりマリは眠っている間に
あの老人ホームから運び出されたのだそうです。

マリはポチを逃がしますが、その後、戸山アヤは、
「心配しないで。あのことは誰にも言わないから」
と気になることを言いました。

放課後、マリは角田しのぶに連れられて、
英財閥の「おじいさま」のところへ行きます。

真弓という中年の女性が、車椅子に乗り、
黒いサングラスをかけた老人を連れてきました。
老人と「角田亜由子」が会うのはこれが初めてなので、
老人はマリが亜由子なのだと疑っていませんでした。

しかし、泊まる部屋へ真弓に案内してもらうと、
真弓はマリのことを偽物だと糾弾し、拳銃をつきつけました。

が、車の上に寝そべってついてきていたポチが真弓に体当たりし、
真弓は気絶してしまいました。

真弓の持っていた拳銃は本物でしたが弾丸が入っておらず、
マリは目を醒ました真弓から事情を聞きました。

しのぶは昔、普通のサラリーマンと駆け落ちしたのですが、
1年前に車の事故で夫と娘を亡くしてしまいました。
しかししのぶはその現実を受け入れることができず、
本気でマリのことを亜由子だと信じているのでした。

そこへ、夫と娘が事故で亡くなったという「悪夢」を見たしのぶがやってきます。

夜になり、マリは喉が渇いて目を醒ましました。
台所へ行き、居間を覗くとしのぶがソファで寝ていたのですが、
しのぶを揺さぶっても起きる気配がありません。

マリは救急車を呼ぼうとしたところで、「国崎(富山)に腕を掴まれました。

国崎はしのぶを自殺に見せかけて殺そうと睡眠薬を飲ませていたのです。
真弓のことも事故死に見せかけて殺し、
マリに英財閥の全ての財産を相続させる計画でした。

国崎は本当にS女子校の校長で、富山というのが本名なのですが、
ラスベガスのカジノで億単位の借金を作ってしまい、
こんなことをしているのでした。

富山は体育の教師を連れて、二台の車で人気のない川辺へ行きます。

しのぶを乗せた車をもう一台の車で押して川の中へ落とそうとしますが、
富山の運転する車の後部座席に隠れていたポチが富山に飛びかかり、
何とか殺人を阻止することができました。

目を醒ましたしのぶは正気に返り、
夫と娘は亡くなったのだという現実を受け入れていました。

一度学校へ戻ったマリは、そこで戸山アヤから、『あのこと』というのは
マリが以前公園でホームレスを目撃していたことだったのだと教えられました。

マリは戸山アヤに別れを告げ、ブレザーの制服のまま旅を続けることになったのでした。


というあらすじなのですが、外見は女子高校生に見えるマリですが、
今まで学校に通うことはなかったので、新鮮な感じでしたね。

ただ、せっかく戸山アヤと友達になったのに別れないといけないのが可哀相でした。

タイトルの「天使は一人で食事する」というのも孤独な感じです……。

西尾維新「キミとなでっこ!」のネタバレ解説

アニメ<物語>シリーズヒロイン本 其ノ肆 千石撫子 (講談社BOXピース)


この本に収録されている「キミとなでっこ!」は、
千石撫子が描いた漫画という設定である、
という点以外に物語シリーズ本編との関わりはありません。

この漫画の主人公の名前も「千石撫子」なのですが、
分かりにくいので「」をつけることにします。

私立⑮学園に通う「千石撫子」は、
登校途中、遅刻しそうになりながら食パンを咥えつつ走っている、
というテンプレ通りの登場の仕方をします。

ところで作者の撫子は公立中学に通っているのですが、
公立中学に通っている生徒って私立に対して憧れを持っているんですよねー。
しまうましたもそうだったので分かります。

その後、テンプレ通り、
「撫子」は謎の金髪美少年とぶつかりパンを落としてしまいます。

何とか遅刻せずに済んだものの、「撫子」は朝食を食べ損ねてしまいます。

このとき、明らかに月火がモデルと思われる女の子が登場するのですが、
その子は教室の中でパンを食べているのに「撫子」に分けてあげる、
という発想はないみたいですw

そして、先ほどぶつかった謎の金髪美少年が転校生として登場します。

謎の金髪美少年は北極星速(ほっきょくせい・ラン)という名前で、
北極星財閥の御曹司なのだそうです。

北極星はなぜかいきなり「撫子」に求愛します。
しかも、撫子が落としていったパン越しに間接キスをします
どうしよう……こいつ変態だ……)。

が、そこへ「撫子」の幼馴染の粋(すい)が、
「撫子」は自分のものだと北極星に食ってかかります。

さらに、担任の城下先生まで「撫子」争奪戦に加わり、
三つ巴の展開になったところで、「つづく」の文字が出て終わります。

……一応突っ込んでおくと、絶対に続かないと思いますが。

っていうか、11ページしかないのに続かせるなよ! と思います。

それと、暦お兄ちゃんが「撫子」争奪戦に加わってない!
というのがちょっとショックでした。
うん、まあ、阿良々木くんって少女漫画にはふさわしくないキャラですしね。

こんな感じで内容の方は突っ込みどころ満載でしたが、
貝木も言っていた通り、撫子って絵は上手いですね。
まあ、実際にはプロの漫画家が描いているんだから当たり前ですけど。

渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」3巻②「やはり戸塚彩加との青春ラブコメはまちがっていない。」のネタバレ解説

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
のアニメはダイジェスト版だと揶揄されていますが、
それでも2巻までは比較的しっかりと描写されていました。

が、この話から5巻くらいまではアニメでは大幅にカットされており、
まさにダイジェスト版となっていました。

この話もアニメではカットされていたエピソードです。

から20分後、比企谷は駐輪場で途方に暮れていました。
すると、そこへ戸塚が話しかけてきます。

戸塚はテニススクールに通っているのですが、
夜まで時間があるから少し遊びに行かないかと比企谷を誘いました。

とりあえず二人で駅まで歩き、「ムー大」のゲームセンターへ行きました。

が、そこで対戦格闘ゲームをしている材木座を発見してしまいます。
比企谷はスルーしようとしますが、材木座の方から話しかけてきました。

それまで材木座は一緒に格闘ゲームをしていた人たちと話していたのですが、
彼らは友達なのかと尋ねると、「あるかな勢」だという答えが返ってきました。

格ゲー仲間という意味であり、友達とは違うのだそうです。

材木座によれば、材木座と比企谷は体育ペア勢にカテゴライズされるのだそうです。

それを聞いた戸塚は、自分も比企谷と体育ペア勢だねと言い、
友達じゃなかったのかと比企谷はショックを受けます。

材木座はラノベ作家の夢を諦め、ゲームシナリオライターになると言い出します。
うーん、むしろラノベ作家よりシナリオライターの方が
狭き門のような気がするんですけどね。

その後、プリクラを撮ることになります。
店員は材木座のことは止めますが、戸塚のことは女の子だと思い、
戸塚とカップル扱いされた比企谷もプリクラコーナーに入ることができました。

が、材木座もいつの間にかこっそりと背後にいて、プリクラに映ります。

戸塚は「体育ペア勢」「なかよし」と落書きしました。
そのプリクラは材木座にも分けてあげたのですが、
実は戸塚はもう1種類落書きしており、
そちらには「はちまん さいか」と書かれていました。

さらに実は戸塚は、
落ち込んでいる比企谷を元気づけるために遊びに誘ったことも判明します。

ヤバいです。戸塚本当に可愛いです。もう戸塚がメインヒロインでいいです。

渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」3巻①「こうして平塚静は新たな戦端の口火を切る。」のネタバレ解説

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。3 (ガガガ文庫)


6月。
前話から1週間くらい経過しています。

比企谷は材木座から渡された設定資料集に「ゴミ」と赤入れします。

比企谷は前話での由比ヶ浜さんとの決別により元気がないのですが、
その原因を作ったお馬鹿な妹である小町はそのことに気付いておらず、
「お、お兄ちゃんが、変だ……」とか他人事のように言っています。

その後、学校へ行き、昇降口で由比ヶ浜さんと出くわすのですが、
前話以降、微妙な空気が続いており、
軽い挨拶を交わしただけで会話は続きませんでした。

放課後、葉山や優美子や戸部はどこへ遊びに行くかで盛り上がっていましたが、
その中で由比ヶ浜さんだけが浮かない顔をしていました。
それでも、優美子に名前を呼ばれると、由比ヶ浜さんはついていきました。

奉仕部の部室へ行くと、雪ノ下が珍しく文庫本ではなくファッション誌を読んでいました。

雪ノ下によると、由比ヶ浜さんは用事があると言い訳して、
毎日部室に顔を出していないのだそうです。

雪ノ下は、由比ヶ浜はもう来ないつもりなのかと溜め息をつきました。
雪ノ下がそう訊いてしまうと、由比ヶ浜さんは無理して部室に来るので、
訊くに訊けないのです。

と、そこへ平塚先生がやってきました。
平塚先生は、バトルロワイアルルールを採用するのだと言い、
新入部員を獲得して共闘とか協力しろ、という感じのことを言います。

雪ノ下が平塚先生に、人員補充をすればいいんですね、と訊くと、
平塚先生は肯定して去っていきました。

すると雪ノ下は、「由比ヶ浜さんがもう1度戻ってくればいいと考え、さらに、
『……つい最近気づいたのだけれど、私はこの二か月間をそれなりに気に入っているのよ』
とデレた発言をしました。

デレる対象が比企谷ではなく由比ヶ浜さんなんですけどねw
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