湊かなえ「花の鎖」のネタバレ解説

花の鎖 (文春文庫)


この小説は、それぞれ雪、月、花が名前に入った、3人の女性が主人公です。

全6章構成になっており、1つの章につきそれぞれ3人の話があるので、
合計18パート分のエピソードがあることになります。

が、同時進行であらすじを書いていくと読んでいて混乱すると思うので、
1章から4章までは1人ずつまとめて書きます。

まずは1章から4章までの、梨花(りか)という27歳の女性のエピソードです。
「あたし」という1人称で書かれています。

梨花は最近まで英会話スクール「JAVA」で講師をしていたのですが、
経営破綻して倒産してしまいました。
これはおそらく、2007年に経営破綻した株式会社ノヴァがモデルなのではないかと思います。

梨花はアカシア商店街で創業80年の老舗和菓子屋「梅香堂」できんつばを買い、
山本生花店で幼馴染の健太に花束を作ってもらい、入院中の祖母のお見舞いに来ます。

梨花の両親は既に交通事故で亡くなっており、
祖母は梨花にとって一番身近な存在の肉親でした。

が、そんな祖母が病気で亡くなろうとしているのに、梨花は失業中で、
手術費用を捻出することができません。

おまけに、祖母は自分の全財産をつぎ込み、
何かをオークションで競り落としてほしいと梨花に頼みます。
手術費用すら出せないのだと打ち明けることができず、
梨花は「K」という人物にお金を借りることにしました。

Kは、梨花が小さいころから、
10万円もする花束を毎年10月20日に家に送りつけていました。
幼い頃、梨花は母親に「Kって誰?」と訊いたこともあったのですが、
そのときは「くじ引きのKよ」と誤魔化されてしまい、詳しい事情は知りませんでした。
3年前に両親が事故死した際には、Kの秘書という人が訪れ、
梨花に援助をしたいと申し出てくれたこともあったのですが、
梨花は当時既に24歳だったため断っていました。

お金を貸してくださいとKに手紙を書きますが、梨花はKの本名も住所も電話番号も、
何もかも知りませんでした。
祖母は知っていると思うのですが、Kに連絡を取りたい理由を説明できないので、
祖母には話せません。

そこで、毎年送ってくれていた花束を手がかりにしようと、
山本生花店へ行き、Kについて健太に訊ねます。
すると、Kからの注文は別の
「フラワー・エンジェル(全国花屋協会みたいなもの)」の加盟店が受け、
送り先である梨花の家に一番近い山本生花店が引き継ぐシステムになっていました。
つまり、健太もKの素性については知らなかったのです。

健太はフラワー・エンジェルの本社に問い合わせてくれますが、個人情報保護を盾に断られました。

そこで、健太に詳しい事情を説明すると、Kに手紙を送るくらいならできるだろうと言われました。
手紙と一緒に花を送ればお客として扱ってもらえるので、
「フラワー・エンジェル」を経由してKに手紙を送ることもできるのです。

が、実はフラワー・エンジェルに加入する前は山本生花店が直接Kから注文を受けていたので、
数十年前には健太の父親は電話でKの声を聞いたことがありました。
Kは有名な画家か建築家らしい、という情報が手に入ります。
また、花束のイメージは「愛する人へ」だったのだそうです。

Kに手紙を送ってから5日目。
とうとうKから返事が来ました。

9月の下旬の日曜日、午前10時にHグランドホテル1階、喫茶ラウンジ「アカシア」で待っている、
とメッセージがありました。

手紙には祖母の病気のことも伝えたので、Kは祖母にお見舞いの花も送ってくれました。
それを利用して、梨花は祖母からKの素性を聞きだそうとするのですが、
おそらく知っているはずなのに知らないと言われてしまいます。

祖母に頼まれ、Kからの花束をナースステーションに預けて病室に戻ると、
祖母は寝ており、見知らぬ高齢の男性がお見舞いに来ていました。
また、お墓参りに行くと、既に誰かがお墓参りに来た形跡がありました。

そして、いよいよKと待ち合わせをした日がやってきます。
梅香堂できんつばを20個も箱に詰めてもらい、Hグランドホテルの喫茶店へ行くと、
K本人ではなく、その秘書が代理で来ていました。

100万円貸してもらいたいと頼むと、Kの秘書はあからさまに不機嫌そうな態度をとりました。

実は秘書と名乗ってはいましたが、秘書はKの息子でした。
しかも、秘書は、梨花の母親が自分の父親の昔の恋人だと思い込んでいました。
100万円はあげるが、それを手切れ金として縁を切りたいと言いました。

あまりにも失礼な態度に、梨花も怒り、お金はいらない、関係も断とうと言いました。

険悪な雰囲気になったところで、祖母のお見舞いに来ていた高齢の男性が現れました。
秘書はその男のことを「専務」と呼びます。

専務は秘書に、梨花に対して高圧的な態度を取るのは間違っている、
梨花の祖母と秘書の一家がどのような関係なのか知らないのかと言いましたが、
秘書は知らないと言いました。

専務は梨花に、喫茶店の壁にかけられていた絵を見せ、
一般の人とは全く違う解釈をしました。

Kは2年前に既に亡くなっていることを教えられ、別れると、
2日後に速達で手紙が届きました。
Kの別荘があると思われる清里という場所に来てほしいという内容でした。


次に、高野美雪という女性の1章から4章までのエピソードです。
この美雪の話は、1人称は「私」で、ですます調で書かれており、
他の2人と区別できるようになっています。

美雪は母方の伯父が役員をしている建設会社で事務員をしていたころ、
和弥という営業職の男と親しくなり、結婚しました。

和弥は元々、設計の仕事を希望していたのですが、
美雪の伯父が役員をしている会社では営業職に回されていました。

美雪の従兄の陽介が新しく立ち上げた会社では設計の仕事ができるということで、
陽介の会社へ再就職したのですが、そこでも営業職に回されてしまいます。
美雪はもともと陽介や、その両親(美雪から見て伯父伯母)や、
陽介の妻の夏美と折り合いが悪く――というか一方的に辛く当たられていて、
それもあって、陽介に騙された、と美雪は思っていました。

自分の親戚に和弥の人生が振り回されていることに罪悪感も覚えていました。

しかし、ある日和弥は、
今自分の持っているものすべてを賭けてもいいと思えるくらいの目標ができたんだ、
と美雪に打ち明けました。

それから数日後、陽介の妻の夏美が美雪の家を訪れます。
が、やはりと言うか何と言うか、夏美はいちいち美雪の癇に障ることを言います。

和弥は設計の仕事がしたいのだと、和弥が引いた図面を見せても、
これじゃダメだと言いコーヒーの染みをつけてしまいます。
最後まで偉そうな態度をとり、夏美は帰っていきました。

美雪がアカシア商店街で買い物をした帰り、
陽介の会社で事務員をしている森山清志の母親に声をかけられ、
その家で育てていたコスモスをもらいました。

その夜、和弥は、香西路夫の作品が展示される予定の、
県の美術館の設計コンペティションに参加するつもりだと美雪に打ち明けました。
美雪は心から和弥を応援し、少しでもヒントになるかと、
香西路夫の絵に、この町で描いたのかもしれないものがあると伝えました。

美雪は家事の合間に、香西路夫について色々と調べます。
やがて、香西路夫の絵に、「未明の月」というタイトルの、
この辺では雨降り渓谷と呼ばれている場所を描いた絵があることを知りました。

週末に、美雪と和弥は、香西路夫に関する場所を、森山清志に案内してもらいます。

その際、「未明の月」の話題になり、
香西路夫の時代には描きたいものをそのまま描くことが許されなかったので、
前期は歪ませて描いていたが、後期は自由に描けるので楽しんで描いていたのではないか、
と森山清志は独自の解釈を教えてくれました。
と言っても、それは森山清志の祖母の受け売りだったのですが。

和弥は毎日の仕事が終わってからこっそり美術館の図面を引いていたので大変でしたが、
森山清志に教えてもらった解釈のおかげか、和弥の引いた図面は順調に進んでいきました。

図面の完成が近づいたころ、美雪は午前3時に和弥に起こされ、
雨降り渓谷へ連れていかれました。
月の歌を歌いながら山登りをし、雨降り渓谷で日の出を見ます。
そして振り返ると、そこには香西路夫の「未明の月」と同じ景色が広がっていました。

和弥はそこで完成した図面を取り出し、美雪に見せました。
美雪は完成を喜びます。

それから1ヶ月が過ぎ、そろそろコンペティションの結果が出る時期になりました。
森山清志の母と出会った美雪は、例の図面がコンペティションの最終選考に残り、
事務所に連絡が行ったことを教えられました。

美雪はお祝いをしようといつもより豪華な食事を作りますが、
帰宅した和弥の表情は暗いものでした。
和弥が応募した図面は、知らないうちに名前が書き換えられていたのです。
最終選考に選ばれたのは、陽介の事務所名義で応募した作品ということになっており、
代表者は陽介でした。


最後に、ミス・アカシア(アカシア商店街のミスコン)に選ばれたこともある、
紗月という女性の1章から4章までのエピソードです。

紗月は短大時代、希美子に誘われて、同じ寮の倉田先輩が所属している、
W大学の山岳同好会に入りました。
紗月はそこで浩一という男性と知り合いますが、
初対面のときになぜか浩一のことを「お父さん」と呼んでしまったことから、
紗月は浩一と親しくなっていきます。

ちなみに、紗月の父親は紗月が生まれる前に亡くなっており、
母親が女手一つで紗月を育ててくれました。

浩一のことが好きだという希美子から、そのことについて嫌味を言われます。

同好会に入って1月も経たない頃、八ヶ岳縦走合宿の最中のことです。
他人に頼るのが苦手な紗月に、倉田先輩は、お互い、一日一頼みをしようと言います。
1日1回、お互いに何か頼みごとをするという提案に、希美子の乗り、
3人は毎日お互いに頼みごとをするようになりました。

また、浩一の「娘」と認定された紗月は、浩一に惹かれていきます。

その年の夏合宿が終わり、帰省する際、希美子も紗月の実家についてきました。
母親の手料理を食べ、翌日、希美子と紗月は雨降り渓谷へ行きます。

そこで希美子は、今までは紗月が母子家庭だからと遠慮していたけど、
もう、同情も遠慮もしない、倉田先輩と浩一のうち、
どちらかを希美子に譲れと言われました。

短大の寮に戻った紗月は、倉田先輩と国立美術館へ行き、
この美術館は浩一の父親が設計したものなのだと教えられました。
倉田先輩は体長が悪そうでしたが、香西路夫展を見ます。
母親から教えられた、香西路夫の絵に対する一般とは違う解釈を倉田先輩に教えると、
倉田先輩は感心していました。

そして、雨降り渓谷を描いた「未明の月」を見ているときに、倉田先輩は倒れました。
倉田先輩は急性骨髄性白血病を患っていたのです。
白血球の型が一致する骨髄液の移植をすれば助かるのですが、
倉田先輩の家族は誰も倉田先輩と型が一致しませんでした。

紗月と浩一は手分けして、山岳同好会のメンバーに適合者がいないか調べてもらいました。
が、倉田先輩の型と適合する人はいませんでした。

血液型がAB型で倉田先輩と一致する希美子は、倉田先輩に血液を提供していました。

浩一に勧められ、絵が上手いと評判だった紗月は鼻のスケッチを描き、
倉田先輩に贈りました。
しかし、倉田先輩は亡くなってしまいます。
倉田先輩が倒れたことをきっかけにして紗月と浩一の中は進展していましたが、
最初は怒った希美子もやがては許してくれました。

短大2年生の夏、紗月と希美子は倉田先輩のお墓を作るために八ヶ岳縦走をしました。

しかしその後、何か決定的な出来事が起こり、紗月は浩一と希美子の2人と絶縁してしまいます。

そして25歳になった紗月は梅香堂で店員のアルバイトをしながら、
公民館で「花の水彩画教室」を開いていました。
山本生花店から季節の花を届けてもらい、その絵を描くという講座の講師をしています。

紗月は、定食屋「竹野屋」で働いている母親と2人暮らしをしています。

ある日、Kと名乗る人物から手紙が届きます。
それは、短大時代、寮でルームメイトだった友人の希美子からの手紙でした。
手紙には、どうしても会って相談したいことがあると書かれていました。

手紙に返事を出すと希美子から電話があり、紗月の家の近くで会うことになりました。

そこで希美子は紗月に、浩一を助けて欲しいと言われますが、
希美子が宏一の子どもを産んだことを聞いた紗月は冷静ではいられなくなり、
逃げようとします。
が、希美子に腕を掴まれ、掴み合いの喧嘩になりかけたところで、
紗月が「花の水彩画教室」を開いている公民館で働いている、前田が通りかかり、
仲裁に入ってくれました。

希美子は、浩一は今、倉田先輩と同じことで苦しんでいると言いますが、紗月は、
「泣かないで! 
本気で頼みたいのなら、その涙を母さんとわたしに返してから、頼みなさいよ」
と突き放しました。

それから数日後、紗月がアルバイトをしている梅香堂に、前田が現れます。
前田は希美子から預かった伝言を紗月に伝えに来たのですが、紗月は拒絶しました。
が、その話を聞いていた梅香堂のおかみさんに言われ、渋々、
紗月は伝言を受け取りに公民館にいる前田に会いに行きました。

そこには「わたし以外の人が頼めば、さっちゃんなら、
二つ返事で引き受けてくれることなのに、わたしからしか頼めないので、
さっちゃんも引き受けることができないんです。
事実は何も変わりませんが、さっちゃんは倉田先輩を助けようとし、
倉田先輩が浩一さんを助けるのだと解釈してほしい」
と、禅問答のようなことが書かれていました。

その後、前田も学生時代に山岳部に入っていたことを知った紗月は、
倉田先輩は八ヶ岳のの硫黄岳の頂上付近にいっぱい咲いていた、
コマクサのような人だったと言い、
コマクサを見ることができたら希美子の頼みを受けられるかもしれないと言いました。

それを聞いた前田は、じゃあ八ヶ岳の赤岳にあるコマクサを見に行こうと提案します。
時期的にコマクサなど咲いているはずがないのですが、前田は自信たっぷりです。

家に帰った紗月は母親に、前田と食事したことを話すと冷やかされました。
そこで紗月は、今週末、八ヶ岳に希美子と登りに行くことにしたのだと、嘘をつきました。

そして、週末。
紗月は、香西久美子という人物から母親宛に届いた手紙を居間のテーブルの上に置き、
家を出ます。
そこへ「竹野屋」から母親が帰ってきて、からあげ弁当を紗月に渡しました。

翌朝、前田と一緒にからあげ弁当を食べた紗月は、いよいよ八ヶ岳縦走を開始します。

紗月は前田に、短大時代の出来事――倉田先輩や希美子や浩一のことについて話します。
そして、「わたし、浩一さんと同じ白血球の型をしているんです――」と打ち明けたところで、
第4章は終わります。


そして第5章に入るのですが、
港かなえさんはしっかりと伏線を張ってくれるタイプの作家さんなので、
少し勘の鋭い人ならこの章でもう大方のエピソードの真相が分かると思います。

「花」のパートでは、きんつばを買いに梅香堂へ行った梨花は、
梅香堂の奥さんから、梨花の母親が昔「梅香堂でアルバイトをしていたことがあり、
ミス・アカシアにも選ばれたことがある
」という話を聞きます。

また、森山のおばあちゃんという人物が時々、
梨花の家のお墓参りをしていることも教えられます。

森山の家へ行った梨花は、そこで突然、九十歳過ぎのおばあさんから、
「申し訳ございません、申し訳ございません……」
と謝罪されます。
どうやらおばあさんは、梨花のことを誰かと勘違いしているようでした。

おばあさんの娘さんは、「自分には兄がいて、兄は昔梨花の祖父にお世話になったのだと言いました。
梨花にとっては初耳です。

そして梨花は、おばあさんがKの秘書が専務と呼んでいた人物に似ていることに気付きました。
おばあさんの娘さんに確認すると、やはり同一人物でした。

山本生花店へ行って健太にそのことを話すと、健太は、
森山のおばあちゃんは梨花と梨花の祖父を見間違えたのではないかと指摘しました。

予約しておいたきんつばを取りに、健太と一緒に梅香堂へ行くと、
奥さんから、Kという人物の心当たりについて大将が『きみこ』と言っていたことを聞きました。



次は第5章の「雪」のパートです。
応募者の名前が和弥から陽介の事務所に書き換えられていたことを知った美雪は、
家を飛び出し、陽介に抗議しに行きます。
途中で出会った森山清志に自転車を借り、事務所へ飛ばします。

明らかに盗作なのですが、陽介は、自分の会社の従業員が個人名義で送ったものを、
選ばれた後でトラブルが生じないよう、会社の名義に書き直しただけだと開き直りました。
さらに陽介は、ただ名義を書き直しただけではなく、降雨量が多いことを考慮し、
地盤の緩さや土砂災害を考慮して図面を修正したのだと付け加えました。

さらに美雪が抗議していると、和弥が追いかけてきて美雪に「もういい」と言いました。

それから半月の間に、美雪はこのことを母親と伯母に手紙で知らせましたが、
伯母からの返事はなく、母親からは兄の反感を買うなと書かれていました。
とうとう最終選考が終わり、和弥が書いた図面が選ばれました。
美雪がおめでとうと言うと、和弥は名前にこだわる必要なんかないと言いました。

古い図面を整理していた和弥は、コーヒーの染みがついていることに気付きます。
それを見た美雪は、夏美がコーヒーの染みをつけたことを思い出しました。
和弥がコンペティションに応募したことを陽介が知ったのは、夏美が教えたからなのだと、
美雪は思い至り、絶望して吐いてしまいました。

翌日の午後5時。
昼寝をしていて、雨の音で目を覚ました美雪のところへ森山清志が訪ねてきて、
和弥が事故に遭ったことを伝えました。


そして第5章の「月」のパートです。
倉田先輩へ移植するために白血球の型を調べたところ、紗月と浩一の型は一致していました。
全くの赤の他人で型が一致する可能性は何万分の一なので、凄いことだと思ったのですが、
実は「紗月と浩一は血が繋がっていたのでした。

倉田先輩が死んでから1年後、紗月の母親の母親が亡くなった際に、
紗月はそれまで絶縁中だった親戚と初めて会いました。
そのとき判明したのですが、紗月と浩一は『はとこ』だったのです。

初めて出会ったときに浩一のことを『お父さん』と呼んでしまったのも、
無意識のうちに血の繋がりを感じていたからなのでした。

祖母の葬式から帰り、有名な建築家である浩一の父親といとこ同士だったんだね、
と母親に言うと、母親は『やめて!』と言いました。
そして、『――お父さんは、あの人(浩一の父親)に殺されたのよ』と衝撃の告白をしました。

結局、そのことがきっかけとなり、紗月と浩一は破局してしまいます。


――そして前田と登山をしていた紗月は、もうすぐ赤岳山頂に到着します。


最終章となる第6章の「雪」のパートです。
第5章までは「花→雪→月」の順だったのですが、
最終章では「雪→月→花」の順になっています。

和弥は陽介と森山清志の3人で雨降り渓谷へ行き、そこで和弥が岩から川へ転落し、
溺死してしまいました。
しかし、陽介は和弥が死んだのは自業自得だという意味のことを言い、
美雪は陽介に食ってかかります。
陽介の両親だけではなく、美雪の母親までもが陽介の味方になり、
美雪は孤立無援状態でした。

それから3日後、美雪は自殺するために雨降り渓谷へ行きます。
が、それを察知した森山清志に助けられ、美雪は一命を取り留めます。

そして美雪は医者から自分が和弥の子どもを身ごもっていることを知らされます。
いち早く美雪の妊娠に気付いていた和弥は、
女の子が生まれたら『雪月花』という繋がりのある名前をつけられるようにと、
いくつか名前の候補を考えたメモを遺していました。
その中には『紗月』という名前もありました。

美雪が1人で子どもを産んで育てる決意をしたところで、『雪』のパートは終わります。



次は第6章の「月」のパートです。
紗月と前田は「赤岳の山頂付近にある山小屋へ行きます。
その山小屋の天井には、コマクサの絵が飾られていました。

しかし実は、前田は知らなかったのですが、そのコマクサの絵を描いたのは紗月自身でした。

倉田先輩が死んだ後、紗月と希美子は倉田先輩のお墓を作るために八ヶ岳に登りました。
しかし途中で、山にお墓を作るのはよくないと思い直しました。
その代わり、山小屋に着くと、
希美子は一日一頼みを使い、倉田先輩の絵を描いてほしいと紗月に頼みました。

そのリクエストで紗月が書いたのが、コマクサの絵だったのです。
さらに、希美子や浩一など、山岳同好会のメンバーの絵を描いていきます。

描き上げた絵の束は、山小屋の主人に頼み、山小屋に置いてもらいました。
そして後日、雪山登山中に遭難して山小屋に運ばれた前田がその絵を見て感動し、
前田はずっとその絵のことを憶えていたのでした。

やがてその絵は登山客の間で話題となり、有名な作家の山岳小説の表紙にもなりました。

前田は、その絵を描いたのが紗月だとは知らずに紗月をここに連れてきたのですが、
紗月自身も、前田の言うコマクサが自分の絵だとは気付かずにここまで来たのでした。

念願のコマクサを見た紗月は、浩一のドナーになる決意をしました。



最後に、第6章の「花」のパートです。
Kの秘書と、専務と呼ばれる森山の2人に連れられて、
紗月はログハウスのような別荘へ連れて行かれます。

そこにいたのは、「秘書の母親である、北神希美子と、希美子の義母である夏美でした。
秘書の父親である浩一は白血病とは関係なく既に故人となっていました。

希美子は、梨花の母親である前田紗月(旧姓・高野紗月)が、
希美子の夫の浩一が白血病になったときドナーになってくれたという過去を梨花に教えました。

それに気付いた浩一は、毎年『K』と名乗り紗月に花を贈り続けることにしたのでした。

……ここでちょっと状況を整理すると、
まず、美雪と和弥の子どもが紗月で、紗月と前田の子どもが梨花です。

梨花のパートが始まった時点で、和弥と紗月と前田と浩一は既に亡くなっています。
陽介は認知症で施設に入っています。

――和弥のドナーになるか迷っている紗月が、前田と八ヶ岳に登っている間に、
陽介と夏美は、紗月の母親である高野美雪に、
紗月にドナーになってもらえるように頼みに行っていました。
そのとき、紗月と浩一がかつては恋仲であったことや、
紗月の描いた絵を作家の本の表紙に使ってもらうよう出版社に働きかけたことも、
陽介と夏美は美雪に話しました。

陽介は、香西路夫美術館は経歴から削除すると言いましたが、
美雪は、和弥の才能から逃げ出したいだけだろうと一蹴しました。

陽介と夏美は絶望的だと思いましたが、美雪は、
ドナーになるかどうかを決めるのは紗月自身だと言いました。

……ちょっと話が逸れますが、はとこである紗月が浩一のドナーになれるということは、
美雪も浩一と白血球の型が一致する可能性は比較的高いと思うのですが、どうしたんでしょうね。
本編では全く触れられてませんでしたが、誰もその可能性を思いつかなかったのでしょうか。

夏美と希美子の話を聞いた梨花は、祖父である和弥が亡くなったのは、
本当に事故だったのかと改めて聞きました。

すると専務――森山清志は、雨降り渓谷に行こうと言い出し、
渋る和弥を無理やり連れて行ったのは陽介であったことを告白しました。
森山清志は、和弥がコンペティションに参加していることを
陽介に告げ口したという負い目があったので、陽介の言いなりになっていました。

森山清志が陽介に告げ口した理由は、香西路夫の絵の解釈についてでした。
森山清志は、和弥と美雪に、自分の祖母の解釈を教えており、
それがインスピレーションとなり和弥は図面を完成させました。
森山清志は、コンペティションの応募者として和弥と連名にしてもらえるのではないか
と期待していたのですが、応募者には和弥の名前しかなく、
それで逆恨みして陽介に告げ口をしていたのでした。

……これまでいい人そうだった森山清志が、元凶の1人だったことが判明したわけです。
地味にショックです。
しかも、連日徹夜のような状態で図面を書き上げたのは和弥の力なのに、
絵の解釈を教えただけで名前を載せてもらえると思うのが凄く図々しいです。

すべてを知った梨花は、当然、美雪の手術費の援助や、自分の再就職の斡旋を辞退します。
が、希美子から一日一頼みをしてと言われ、美雪の願いを叶えて欲しいと言いました。

美雪がずっと欲しがっていたのは香西路夫の『未明の月』でした。
競売に出されていたのを北神建築事務所が買い取り、
『高野和弥氏の功績を称えて』と記して香西路夫美術館に寄贈したのでした。

ラストは、『未明の月』を観に香西路夫美術館を訪れた梨花と美雪が、
そこで結婚式を挙げていたカップルに花を渡そうとする場面で終わります。


というあらすじなのですが……、正直、あらすじを書くのが非常に大変でした。
伏線だらけの複雑な構成の小説なので、普通の長編小説の3倍は疲れました。

実際、「白ゆき姫殺人事件」と比較すると、4倍近い文字数になっていますwww

途中で何度も挫折しそうになりがらも、
他の小説と同時進行で2ヶ月以上かけてコツコツとあらすじを書いたのですが、
そのせいで解説待ちの本がとうとう30冊を超えてしまい、予定が狂いまくりですwww

感想としては、「美雪の出番が凄く多いなあ、という感じです。
紗月と梨花は自分のパートにしか登場していませんが、
美雪は紗月の母親として、梨花の祖母として、全部のパートに登場していますからね。

後、紗月のパートはさほど違和感がありませんが、
やっぱり美雪のパートは現代から見てざっと半世紀以上前の話なので、
かなり時代がかっている感じでしたね。

例えば、美雪と和弥が家でテレビを見ているシーンとか、
電話をしているシーンというのがないんですよね。
美雪の時代にはまだ、テレビも電話も一般家庭にはあまり普及していませんでしたからね。

それでも、アカシア商店街とか山本生花店とか梅香堂のきんつばとか登山とか香西路夫とか、
紗月や梨花と共通したワードを出すことで上手に違和感を薄めているのですが。

他に気になる点としては、美雪はなぜ、
紗月や梨花に、陽介一家との確執を話しておかなかったのか、という点ですね。
誰かを恨みながら生きて欲しくないとか、そういう理由だったのかもしれませんが、
美雪が最初から和弥のことを話しておけば、紗月が浩一と恋仲になって別れて傷ついたり、
梨花が『K』にお金を貸してもらおうなんて考えたりしなかったのに……と思ってしまいます。

特に、もし紗月がまだ小さいうちに美雪が不慮の事故等で亡くなってしまったら、
紗月は美雪の両親に引き取られることになり、そこであることないこと吹き込まれて、
真実を知ることすらできなくなってしまっていたでしょう。

西尾維新「しのぶサイエンス」のネタバレ解説

2013年10月26日の讀賣新聞に掲載された掌編、
「しのぶサイエンス」のネタバレ解説です。

今回は当たり前のように忍が語り部を務めています。
地の文に忍の考えが表れるのは、何とこれが初めてです。

「じゃのう」と時代がかった言葉遣いをしている忍ですが、
実はあれはそういうキャラ作りをしているだけであって、
地の文では普通に現代っ子っぽい口調で思考をしている可能性もあったのですが、
これでその可能性はなくなりましたね。

忍のお相手は斧乃木余接で、阿良々木くんは登場していないので、
おそらく憑物語以降の時系列の話でしょう。

今回のお題となる海外古典名作小説は、アイザック・アシモフの短編集
『わたしはロボット」に収録されている『迷子の小さなロボット』です。

アイザック・アシモフと言えば小説界隈ではロボット三原則を考えたことで有名な人なのですが、
忍は、自分よりも劣っている者に眷属しなければならない存在としてロボットを見ています。

「人間との主従関係」がテーマなので、忍の相手が余接になったのでしょうね。

優れた存在は、支配する側よりも支配される側に回りがち、
という余接の発言に忍は共感を覚えます。

自分で作った文明を使いこなくなり、人類は滅んで文明だけ残った、
という光景を想像した忍はぞっとして、
きっと自分は「――ぱないの」と言うだろう、と考えたところでこの話は終わります。

既に傾物語で一度人類を滅ぼした自分を目撃し、
鬼物語で自分と関わった人間が次々と消えていくのを目撃している
」忍にとっては、
それは簡単に想像できる未来だったのでしょうね。

ちなみに、「恋物語篇」は11月23に掲載されました。

西尾維新「終物語 上 第三話 そだちロスト」のネタバレ解説

この「そだちロスト」も、2話の「そだちリドル」から直接話が繋がっています。

冒頭から「そだちリドル」のネタバレ全開なのでご注意ください。

老倉が阿良々木くんの「両親の職業が警察官であることを知っていた理由は、
小学生の頃、老倉が阿良々木くんの家に保護されていたからなのでした。
しかし、ある日老倉は自分から、虐待されている両親のところに戻ってしまい、
何も言わずに阿良々木くんの前から姿を消してしまいましたが。

――つまり、短期間とはいえ同じ家で生活していたのですから、
阿良々木くんと老倉は幼馴染と言ってもいい間柄だったわけです。

そんなこと忘れるか……?
と思いますが、子どもの頃の記憶っていうのは結構あてになりませんからね。

とはいえ、中学一年生の夏休みの時点でも、老倉のことを忘れていて、
高校一年生になり同じクラスになったときにも、また老倉のことを忘れていて……
と2回も老倉のことを忘れてしまっているのは、さすがに怖いです。

本文中に『信頼できない語り手』という言葉が出てきたような気がしますが、
阿良々木くんがあまりにも色々と忘れすぎているので、
何らかの記憶障害があるのではないかと不安になります。

でも、そりゃあ老倉が怒るのも無理はないですよね。
しかも、中学一年生のときにはSOSのサインを出していたのに、
阿良々木くんにスルーされてしまったわけですから。

ちなみに、あんなに回りくどい方法をとったのは、
せっかく、既に一度阿良々木くんの両親に保護されていたのに、
自分から劣悪な環境の生家に戻ってしまったという負い目があったので、
阿良々木くんが自発的に両親に老倉のことを伝えて欲しかったからなのでした。


さて、老倉と戦場ヶ原さんが殴り合い、2日が経過しました。
2人とも不登校になってしまったのですが、戦場ヶ原さんは出席日数がヤバく、
推薦を取り消されるかもしれない、と羽川さんは言いました。
そこで放課後、阿良々木くんが老倉の家に、
羽川さんが戦場ヶ原さんの家にお見舞いに行き、登校を促すことにしました。

しかし放課後、阿良々木くんが学校を出ようとすると、忍野扇が待っていました。
老倉は現在1人暮らしをしているので、1人暮らしの女子の家に、
男子である阿良々木くんが1人で行くのはまずい、
と扇は主張し、自分も一緒に行くと言い張りました。

が、そこへ羽川さんが全力で割り込んできて、
扇ではなく自分が阿良々木くんと一緒に行くと主張します。
羽川さんと扇はお互いに挑発し合い、一触即発の雰囲気です。
最終的にどちらと行くかという判断は阿良々木くんに委ねられたのですが、
先に誘ったのは扇の方だからと、阿良々木くんの気持ちは扇に傾きます。

が、そこで羽川さんは、自分の胸を触ってもいいというとんでもない条件を出して、
阿良々木くんと一緒に老倉の家に行く権利を勝ち取りました。

まあ、阿良々木くんはチキンなので、傷物語のときと同じく、
実際には触れることなんてできないのですが。
八九寺とかにはセクハラしまくりの阿良々木くんですが、
羽川さんに対しては口だけ番長の紳士なんですよね。

老倉が一人暮らしをしている444号室へ行くと、老倉はパジャマで出迎えました。
羽川さんにフォローされつつ、阿良々木くんは老倉と話をします。
途中で隙をついて、戦場ヶ原さんがグーで殴った老倉の頬に、
阿良々木くんは自分の吸血鬼体質の血をつけて、治療します。

その後、老倉が熱い紅茶を投げつけようとして、
それを羽川さんが空中でキャッチするというハプニングなどがありながら、
老倉は自分の絶望的な人生について語ります。

老倉は、子どもの頃から日常的に、父親(老倉は「男親」という言葉を使いましたが)は
家庭内暴力をふるっていました。
それだけではなく、父親から殴られた母親からも、老倉は殴られていました。
一度は阿良々木くんの両親に保護されたものの、自分から生家に舞い戻ってしまいます。

それをきっかけに父親が改心するということもなく、虐待は続きます。
そして中学一年生のときに両親は離婚し、老倉は母親と引っ越します。
おそらくこのときに苗字が「老倉」に変わったのでしょう。

離婚した母親は、自室に引きこもるようになってしまいました。
部屋には鍵をかけ、窓には板を打ちつけるほどの重度の引きこもりっぷりです。

ゴミ屋敷状態の家の中で、老倉は母親の面倒を看ることになってしまいます。
それが2年も続いたのですが、ある日、老倉が帰宅すると母親の姿が消えていました。
それ以来、老倉は母親とは会っていません。

そんな状態の中で、老倉は私立の直江津高校に進学するのですが、
そこであの「おうぎフォーミュラ」の事件があり、不登校になってしまいます。

タイトルの「終物語」の「終」ってそういう意味だったのか、
と思ってしまうほど悲惨な人生です。

しばらく黙って老倉の話を聞いていた羽川さんでしたが、
窓には板が打ち付けてあり、ドアには鍵がかかっていたのに、
老倉の母親はどうやって家を出たのか――と疑問を呈しました。

最初は普通に母親がドアから外に出て鍵をかけたのだろうと思いましたが、
母親の精神状態を考えるとわざわざ鍵をかけて外出するのは確かに不自然でした。

個人的にはそんなことより、同じく家庭環境がヤバい者同士として、
羽川さんが老倉のことをどう思っているのか、の方が知りたかったんですけどね……。

失踪した母親を見つけてくれたら、また登校してもいい、と老倉は交換条件を出します。

老倉が役所の人と話をしている間、阿良々木くんと羽川さんは外で作戦会議をします。

そこへ、扇が登場します。
羽川さんの胸に負けたことを根に持っていた扇は、
その程度の真相も見抜けないのかと、これでもかというくらい羽川さんを挑発します。
羽川さんが10秒待ってほしいと言うと、扇はさっそくカウントし始めます。
その間に、羽川さんは公園の水飲み場の水を頭から浴びて頭を冷やし、
真相に辿り着きました。

阿良々木くんも、扇と羽川さんから交互に50もヒントをもらい、
引きこもっていた老倉の母親は、食事をしなくなり餓死してしまった。
それから2年間老倉は、母親の死体の面倒を看てきた。
が、2年が過ぎ死体が融けてしまうと、老倉はそれを母親がいなくなった、と認識した。
死体が発見されなかったのはゴミ屋敷がカモフラージュになっていたから

という絶望的なまでに終わっている真相に気付きました。

阿良々木くんはそのことを老倉に伝えに行くのですが、
これは珍しく扇の想定外だったようで、扇は驚いていました。

老倉はその真相を意外と冷静に受け止めた後、実は1人暮らしの補助が少なくなったため、
また転校と引っ越しをすることになったのだと阿良々木くんに打ち明けました。

翌日、戦場ヶ原さんからは老倉を殴ったときに本当に指を骨折していたので病院へ行く、
という暗号っぽいメールが届き、
羽川さんからは、高校を休学して世界旅行のロケハンをしに行くことを教えられました。

羽川さんがロケハンをしようと決意したきっかけの1つには、
忍野メメを捜して扇のことを問い質そうという動機もあるのでしょうが、
阿良々木くんは気付いていない様子でした。

そして、自分の教室の机に行った阿良々木くんは、
そこに老倉からの手紙があることに気付きます。

手紙に何と書かれていたのかは読者には明かされないままなのですが、
阿良々木くんのリアクションを見た限りでは、
それなりのところで和解できたのではないかと思います。


というあらすじなんですけど、やっぱり扇の前だと阿良々木くんの様子が変ですね。
特に、崇拝している羽川さんよりも扇の味方をしそうになる場面が何ヶ所かあり、
扇が何らかの能力(催眠術みたいなの?)を使っているのではないでしょうか。

後、水飲み場で髪を濡らした羽川さんが放置されているのも気になりました。
10月の下旬の夕方って言ったら結構寒いですし、
そのまま帰ると風邪引いちゃうんじゃないかと思うのですが……。

それと、暦物語から2巻続けてミステリー的な内容になっていますが、
戯言使いシリーズがミステリーから人外バトルものへシフトしたのとは対照的ですね。

老倉がその後どうなったかは、「そだちフィアスコ」で語られています。

西尾維新「終物語 上 第二話 そだちリドル」のネタバレ解説

この「そだちリドル」は1話の「おうぎフォーミュラ」から直接話が続いています。

2年以上も不登校を続けていた、
オイラーと呼ばれたがっている老倉育(おいくら・そだち)が登校してきました。

登校してきた理由の1つには「鉄条径が産休に入ったことがあります。
つまり、老倉も後で鉄条が『犯人』だということに気付いたわけですね。


老倉は阿良々木くんの席に座っていました。
既にクラスメートから阿良々木くんに関する情報を仕入れていた老倉は、
何度も阿良々木くんのことが嫌いだと言い、逆上します。

その途中、老倉は、
「それともお前は覚えているって言うの? 中学一年生のときの下駄箱の中身を」
と気になる発言をします。

クラスメートの目を気にした阿良々木くんが老倉の肩に手を置くと、
老倉はその手をペンで突き刺しました。

阿良々木くんは老倉が怪我をしないようにわざと避けなかったのですが、
吸血鬼体質で怪我がすぐに治るのがバレるとまずいことになるので、
手の怪我を隠そうとします。

そこへ、タイミング悪く戦場ヶ原さんがやってきました。
阿良々木くんを文房具で攻撃している――という、
初期の頃の自分とキャラが被っているのを見た戦場ヶ原さんも一気に頭に血が昇ります。
老倉が先にパーで戦場ヶ原さんを殴ると、戦場ヶ原さんはグーで殴り返しました。

すると、老倉は気絶してしまいます。
やべっ、と思った戦場ヶ原さんも気絶したふりをします。
羽川さんが後処理に追われることになりましたが、
女子生徒2人が殴り合って気絶したという事件の前に、
阿良々木くんの手の怪我の問題は霞んでしまいました。

その日の放課後、老倉の発言が気になった阿良々木くんは、
忍野扇と一緒に、母校である中学校へ行きます。
千石撫子も通っている中学校なのですが、扇はそのことを気にしている様子でした。
時系列的には囮物語の数日前の話なので、かなり意味深ですよね。

中学1年生のときに使っていた下駄箱を開けると、
そこにはaからcまでの3通の封筒が入っていました。
aの封筒を開けると、「『b』は外れだよ。選択を『c』の封筒に変更する?」
と書かれていました。

これは「モンティ・ホール問題」のパロディです。
貴志祐介さんの「悪の教典」にも、このモンティ・ホール問題のエピソードが出てきましたが、
流行っているんでしょうか。
そのうち、「シュレディンガーの猫」とか「百匹目の猿現象」並に、
大勢の作家に弄り倒される問題になるのかもしれませんね。

さて、cの封筒には、地図が入っていました。
その地図の場所へ行くと、廃墟がありました。
5年前に阿良々木くんはここで謎の少女と数学の勉強会をしていました。
それがきっかけで、阿良々木くんは数学だけは「面白い」と感じるようになり、
挫折し始めていたところから復活できたのでした。

それは夏休み中続いたのですが、ある日突然終わってしまいます。
少女は阿良々木くんの通っていた中学校の制服を着ていたので、
全校生徒を見て回りますが、問題の少女はいませんでした。

それを知った阿良々木くんは、その中学1年生の夏休みの出来事を、忘れてしまいました。
少女のことも夏休みのことも忘れてしまいしたが、
数学だけは好きだという気持ちだけは残りました。

その話を聞いた老倉は、謎の少女が老倉だと確認した上で、次のような推理をします。
まず、その廃墟は「本当は廃墟ではなく、当時の老倉の自宅でした。
廃墟だと思い込んでいたのは、家庭内暴力により破壊されていたからなのでした。

虐待されていた老倉は、両親が警察官をやっている阿良々木くんが、
老倉が虐待されていることを両親に伝えてくれ、助けてくれるのではないかと思い、
数学の勉強会などという非常に回りくどい方法で阿良々木くんに助けを求めていたのでした。

が、結局阿良々木くんは老倉のSOSに気付くこともなく、夏休みの間に家庭が崩壊し、
転校してしまったため、阿良々木くんが新学期になってから学校中の女子生徒を見て回っても、
老倉の姿はなかったのでした。


という扇の推理を、翌日羽川さんに話したところ、羽川さんは、
阿良々木くんは両親が警察官だということを隠していたのに、
どうして老倉は知っていたのかと疑問を呈しました。

確かに、阿良々木くんの両親が警察官だということは、
かなり巻数が進むまで読者にも明かされませんでしたからね。
阿良々木くんとはクラスも違った老倉が知っているのは不自然です。

その答えは、次話の『そだちロスト』で明らかになります。

時雨沢恵一「キノの旅」17巻9話「料理の国」のネタバレ解説

この「料理の国」から12話の「旅の終わり」まで、
また新聞に掲載された話が続きます。

さて、とある国では、さすらいの料理人の噂が広がっていました。
その国で食材を探し、絶品料理を作ってから去る、という料理人です。

レストランのオーナーたちは、その料理人がもうすぐやってくるらしいので、
強引に、この国自慢の鶏を使った料理を作ってもらうことにしました。
そしてそのさすらいの料理人は、茶色いコートを着ているのだそうです。

さて、茶色いコートを着たキノと、相棒のエルメスは、その国にやってきました。

入国2日目、キノの前に若い女性が現れ、自分は料理の学校に通っているのだが、
キノの料理に興味があるので料理を作ってほしいと頼みました。
食材はすべて相手が用意してくれ、キノも食べていいということだったので、
キノは了承しますが、エルメスは心配していました。

というのも、キノは超高校級のメシマズなんですよね。
これまでにも何度も、キノのメシマズっぷりをネタにしたエピソードがありました。

翌日、入国3日目、キノは貸切にされたレストランへ招待されました。
そこには昨日の女性だけではなく、20人ほどの見学者がいました。

キノは鶏を処理すると、手頃な大きさに切り分けました。
さらに、タマネギを炒め、鶏肉を鍋に入れます。
ここまでは問題なかったのですが、キノはそこへ、大量のお酢と唐辛子、
胡椒と山椒と山葵を投入しました。

それを食べて、キノは満足して出国しました。

その翌日、レストランのオーナーたちは、キノの食べた料理について会合を開きました。
誰もが不味いと思っていたのに、キノを天才料理人だと思い込んでいるオーナーたちは、
それを再現しようと努力します。

そして季節が変わり、夏になり、本物の天才料理人がやってきました。
夏なので茶色いコートは着ていません。

料理人の男がこの国の名物料理を注文すると、例のキノの料理を再現したものが現れました。
その名も「鶏肉のキノ焼き」です。

苦労して鶏肉のキノ焼きを食べ、料理人は疲れた様子でホテルに帰りました。
しかし、そこでも鶏肉のキノ焼きを勧められると、「料理人はキリッと表情を変え、
鶏肉のキノ焼きを注文すると、調理器具を借り、食材屋の場所を教えてもらったのでした。

そして、その料理人は色々と工夫し、
辛味を抑え食べやすくアレンジした鶏肉のキノ焼きのレシピを残して出国していきました。

レストランのオーナーたちはまた会合を開き、
『鶏肉のキノ焼き・オリジナル』と『鶏肉のキノ焼き・マイルド』という2つの名物料理として
共存していくことにしたのでした。

何というか……貪欲な人達ですねwww


というあらすじなのですが、この鶏肉のキノ焼きには元ネタがあるみたいですね。
しまうましたは食べたことはないのですが、四川風鶏の唐揚げという料理は、
鶏肉と唐辛子、ネギや山椒を使った料理で、マイルドの方と似ています。

ただし、この四川風鶏の唐揚げにはお酢は使わないのですが、それは唐揚げに合う甘酢あんという形で、
酢豚ならぬ酢鶏みたいな感じで使うんじゃないかなあ、と思います。

時雨沢恵一「キノの旅」17巻8話「恋愛禁止の国」のネタバレ解説

キノとエルメスは、最近までは鎖国していた国へやってきました。

入国2日目、国内のほとんどを見終わってしまったキノは、
芝生の端の木陰で昼寝をすることにしました。

そして小一時間ほど経って目を覚ますと、
12歳くらいの女の子がキノを見下ろしていました。
しばらくして両親が女の子を迎えに来ます。

女の子は両親に
「あの人かっこいい。ずっと見ていても飽きなかった。ドキドキした」
と言い、キノを見て、
「ねえ――、私――、あなたが――、特別――」
と言いました。

その直後、女の子は両親に何かの液体を染み込ませたハンカチを口に押し当てられ、
気を失い、両親に連れ去られました。

翌日、「責任者」の男がキノとエルメスの滞在しているホテルを訪れました。
そして、この国では恋愛が禁止されていることを説明します。

人間の恋愛はたった4年しかもたない、
恋愛時には脳内麻.薬が分泌されるがそれが人間の理性を狂わせる、という学説に基づき、
恋愛は現代の人間社会の実情に合っていないので恋愛禁止令を出したのでした。

ただし、禁止するだけでは効果がないので、
恋愛時に発生する脳内麻.薬に打ち勝つ薬を定期的に投与することにより、
脳内麻.薬を抑えることになりました。

この国では配偶者は国が決めることになっているので、
恋愛感情が発生しなくても問題ないのでした。

キノは、恋愛感情を抑える薬と、
その製造方法が書かれた冊子の入った木箱を受け取り、出国しました。
出国時には例の昨日の女の子がやってきて、
もうなんとも思ってないと無表情に言いました。

そして最後に、
『ねえキノ、結局燃料と携帯食料以外何も買わなかったけど――、どうするの?
鞄に入れた木箱、誰かに、売る?』
とエルメスが尋ねたのですが、キノがそれに答える前に物語は終わってしまいます。

あえて答えを明示せずに、読者にキノの答えを考えさせるという手法ですね。
これまでの16巻分の積み重ねがあるからできることです。

……なので、こんなブログで解答を推測しちゃうのは
野暮だっていうのは百も承知なんですけど、推測しちゃいます。

まず、キノが自分でその薬を飲むという可能性はないと思います。
『大人の国』では自分の脳をいじられるのを拒否して、
その結果初恋の相手(?)を死なせてしまい、
逃亡生活を送ることになったキノですからね。
薬とはいえ、今さら精神に影響を与えるものは飲みたがらないでしょう。

次に、薬を廃棄するという可能性ですが、これも可能性は少ないと思います。
捨てるくらいなら旅の邪魔になるので最初から受け取らないでしょうし、
恋愛禁止の国では、自分たちの素晴らしい価値観を他国に広めたくて、
キノに木箱を渡したのですから、また別の旅人が来たら木箱を渡すでしょうし。

そうなると……やっぱり、キノは木箱を他国に売るのかなあ、と思います。

この薬、結構需要は高い気がするんですよね。
例えば、王様を操り人形にしたい側近とか、子どもを政略結婚させたい親とか、
性犯罪者へ定期的に投与することで安全を確保したい国とか……。

時雨沢恵一「キノの旅」17巻7話「楽園の話」のネタバレ解説

シショーと呼ばれる老婆が、「楽園」について少女に昔話をしている、
という場面から物語は始まります。

楽園の入り口にある「最初の池」に、
師匠が仰向けに浮かんでいるのが数人の女性たちに発見されました。

発見した40歳代の女性は、ここは楽園だと言い、
自分はそこの頭(かしら)なのだと名乗りました。

師匠が発見された池を遡ると、そこは厳しい渓流があり、
師匠はそこから流されてきたのでした。

今いる場所は、断崖絶壁に挟まれた谷の底です。

上流へ行けば行くほど厳しくなる渓流、
そして左右の何百メートルあるのかも分からない絶壁が続いており、
上流の方から脱出するのは不可能でした。

では、下流の方はと言うと、大地が突然終わってしまっており、
その先には巨大な滝と海があるのでした。

つまり、この谷――楽園は、脱出不可能な天然の牢獄なのでした。

楽園にやってきた人たちは、谷の底に村を作っていました。
大人の男性は10人、大人の女性は39人、子どもたちは17人もいました。

川を流されてきて生き残るのは女性の方が多く、
女性たちは男性を「共有」していました。
そんなわけで、ここで生まれた子どもたちは父親が誰かも分からず、
みんなで協力して育てている、という感じでした。

頭はこの村で一番長く住んでいる人物で、
もう20年も楽園に閉じ込められていました。

そういった事情を聞いた師匠は、ある国で宝物庫から盗み出したという、
宝石をふんだんに使った豪華で美しいブローチを出しました。
これは皆の物として、誰かのお祝いの席にでもつけることにしました。

そして師匠はブローチをジャケットの内ポケットにしまうと、
突然「ああああああああ――っ!」と叫び、砂浜へ仰向けに倒れ、
手足をジタバタと動かしました。

突然の奇行ですが、この楽園へ流れ着いた人たちは最初、
もっと取り乱すのが普通なので、誰も止めませんでした。

奇行を止めると、師匠はいつも通りの師匠に戻っていました。

翌日、師匠は楽園の住人達にせがまれて、それまでの旅の様子を語りました。

そして一番新しい話として、とある国では先王が落馬で突然死んで以来、
酷い権力争いが続いており、王の兄弟やその子どもや従兄弟同士が、
王座を狙って殺し合っていたのです。

師匠と荷物持ちさんは混乱続く王宮に侵入し、宝物庫からお宝を奪い、
国民たちの目のつくところにばら撒きました。

師匠と荷物持ちさんはその後出国したのですが、
王家の追手がかかり、何日も逃走を続け、増水した川を小さな車で渡ろうとして、
川に流され、この楽園に辿り着いたのでした。

という話をした夕方のことです。
師匠は無言で川のすぐそばの砂丘の上で仰向けになり手足を動かしていました。

薄暗くなってきた頃、師匠のところへ20歳代後半くらいの女性、
ルイーゼがやってきました。
ブローチを見たがるルイーゼにブローチを見せ、今夜だけ預けようかと言うと、
ルイーゼは否定して逃げていきました。

翌朝。
今日も師匠が仰向けになって手足をバタバタと動かしていると、
頭(かしら)とルイーゼがやってきました。

半年前に楽園にやってきたのに、いまだに引っ込み思案なルイーゼのことを心配した頭は、
「アタシは、どれだけ時間をかけても、アンタに“嫌です”って言わせてみせるよ!」
と満面の笑みで言ったのですが、
あっ、ヤバい、この台詞は何か死亡フラグっぽいぞ、
と初めて読んだときは不安になりましたwww

お昼になり、みんなは昼寝をしていました。
師匠はそんなルイーゼのところへ行くと、腹に強烈なパンチを送り込み、
肩に背負うと、下流近くの砂浜へ行きました。

住人達に気付かれ、師匠とルイーゼを取り囲みますが、
師匠は自分は魔女であり、雷の魔法で皆の足元に穴を開けると宣言します。
そして師匠が手を動かすと、本当にその先の砂が噴水のように噴き出し、
穴が開きました。

住人達は驚きましたが、頭だけは冷静でした。

まず、頭は、師匠がわざとこの楽園にやってきたことを指摘します。
師匠はウェットスーツを着て、ヘルメットなどの防具を装着して、
足から長されて滝に飛び込んだのでした。

次に、頭は、先ほどの雷の魔法というのは、崖の上の仲間が、
師匠が指示した場所をパースエイダ―で撃っただけだと指摘しました。

実際その通りで、砂浜の上で仰向けになり手足をバタバタさせていたのは、
崖の上の方にいる荷物持ちさんへの合図だったのです。

そこまでして楽園へやってきた師匠の目的は「ルイーゼでした。

師匠はルイーゼに例のブローチを渡し、ルイーゼのことを陛下と呼び、
国に戻るようにと言いました。
もう誰も残っていないのです、と告げるとルイーゼは絶叫しました。

ブローチを手に入れた王国では、醜い殺し合いがずっと続き、王宮が大火災に見舞われ、
王家の血を引く者は全滅してしまったのでした。
ただ1人、争いを嫌って旅に出て、悲しみのあまり川へ入水自殺を図った王女、
ルイーゼを除いて。

師匠と荷物持ちさんは、国民たちに頼まれてルイーゼを連れ戻しに来たのでした。

師匠が荷物持ちさんに合図を送り、パラシュート付きのリュックサックが落下してきました。

師匠はリュックサックを拾い、パラグライダーを広げると、
空を飛んで脱出することにしました。

17巻口絵2の『遊んでいる国』がこの伏線だったわけです。

頭はルイーゼに、
『行きなさい! そして、もう戻ってくるんじゃないよ! この村のことは!
アタシ達のことは! 一切忘れるんだよ! いいね!』
と叫んだのですが、宙を飛んだルイーゼは、
『嫌ですっ!』
と叫びました。
あの台詞の伏線もちゃんと回収しています。さすがです。

そして冒頭のシショーという老婆と、その孫娘の会話に戻りますが、
ルイーゼはその後、国民と師匠に命じて楽園の住人全員を助け、自分の国に迎え入れ、
2度とあの村に人が流れ着かないように頑丈な橋を作ったのでした。

そして老婆――元頭は、なくした名前の代わりにシショーの名前をもらったのでした。


というあらすじなのですが、これまで短い話が連続していたこともあり、
とても満足感のある話でした。

あと、手足をジタバタさせたり、魔女を名乗ったりする師匠が可愛いですね。

個人的には、「ルイーゼの国は、もう血縁主義の王族にこだわらず、
民主主義でリーダーを選べばいいのになあ、とか思っちゃいましたけど、
まあ、それはその国に住んでいる人たちの自由ですからね……。

赤川次郎「とっておきの幽霊 怪異名所巡り7」第3話「無邪気の園」のネタバレ解説

町田藍は、友人の間(はざま)百合恵の家に遊びに来ていました。

百合恵には卓郎という生後8ヶ月の一人息子がいるのですが、
1歳になったら保育園に入れて仕事を探すつもりでした。

藍が帰るときに、仕事の途中に寄ったと言って一時帰宅した、
百合恵の夫の間有介と入れ違いになりました。

百合恵の家から5分ほどのところにある、
新しくできる予定の保育園、「太陽の子ども園」の前を通りかかると、
阿木しずかという爽やかな感じの若い女性の保育士に話しかけられました。

阿木しずかはいい人そうだったのですが、
久保田要という園長は50歳くらいの冷たそうな女性でした。

太陽の子ども園を離れてすぐに、大工の桂木に話しかけられ、
藍は桂木と一緒に甘味所で甘いものを食べながら話を聞くことにしました。

桂木は太陽の子ども園の建築をした大工で、
山野辺という男に頼まれて仕事をしていたのですが、
地下室の施工途中に突然もう仕事は終わりだと言われてしまったのだそうです。

その夜、百合恵は夫の有介から、太陽の子ども園に卓郎を入園させるよう、
強く勧められました。
1歳になるまで待つと言ったのですが、百合恵が寝たふりをしていると、
有介は山野辺という男に電話し、
どんなことでも山野辺の言う通りにすると言っていました。

数日後、有介の様子に不安を感じた百合恵が藍に相談すると、
藍は百合恵に、有介の会社に電話してみるようにと言いました。
すると、有介は工場の事務に回されており、
残業などないはずなのに毎晩残業だと嘘をついていたことが判明しました。

藍は百合恵に、しばらく実家に帰っていた方がいいとアドバイスした後、
太陽の子ども園の入園説明会に出席することにしました。

藍は説明会を途中で抜け出し、桂木に教えてもらった地下室の場所を捜しますが、
そこには赤ん坊を抱いた母親の彫刻がありました。
その彫刻は山野辺が作った物なのだそうです。

藍は、帰り道に柄の悪そうな男に尾行されていることに気付きましたが、
女子トイレで変装をして尾行をまきました。

後日改めて、すずめバスのバスガイドとして太陽の子ども園を訪れた藍は、
入園希望者を集めたバスツアーを開催したいと山野辺と久保田に申し出ました。

まだ保育士の人数が足りないと保育士の阿木しずかは反対していましたが、
久保田は翌日からもう園児を受け入れるつもりでした。

バスツアーの前日に、藍は阿木しずかとパーラーで待ち合わせていたのですが、
阿木しずかは「信号無視の車に轢かれて亡くなってしまいました。

病院の霊安室へ行った藍は、しずかのハンドバッグの中の白い錠剤が気になり、
その錠剤を失敬しました。

翌日、遠藤真由美などいつもの常連客をバスに乗せて太陽の子ども園にやってきた藍は、
そこで有介と出くわします。
さらに百合恵もやってきて、卓郎を連れ去った有介を糾弾します。

そのとき、藍は冷気を感じました。
すると、母子の彫刻がゆっくりと回転し、地下室への入り口が見つかりました。

さらに、子どもたちは阿木しずかの幽霊を見て、そこに集まっていきました。

地下室へ行くと、そこには薬で眠らされた卓郎がいました。

阿木しずかのハンドバッグに入っていた白い錠剤は麻酔薬の一種で、
子どもたちがおとなしくなり、生気を失っていく作用があるのです。
山野辺たちは、小さいうちから薬で従順な『いい子』を作ることにし、
そのために保育園まで作っていたのでした。

その薬は暴力団から仕入れていたため、警察がやってきました。
阿木しずかの霊の周りを子どもたちが回っているのを、
藍と真由美が眺めているところで物語は幕を閉じます。


というあらすじなのですが、子どもはやっぱり元気な方がいいですよね。
もちろん、おとなしい子がいても、
それはその子の個性なので元気を出すのを無理強いさせることはないと思いますけど。

……ただ、何事も過ぎたるは猶及ばざるがごとしと言いますが、
躾のなっていない糞ガキにはうんざりするのも事実です。
その場合、どちらかと言うと子どもに対して腹が立つのではなく、
それを放置している保護者の方に腹が立つのですが。
保護者がその子の年齢に合わせてちゃんと叱っていれば、
子どもが多少悪さをしても大目に見る、という人が殆どなのではないかと思います。

しかし、やっぱり子育ても大変だと思うので、
例えば混雑する電車には子ども優先車両なんてものを設けて、
子どもと保護者を隔離するとか、もっと保育園や幼稚園を増やすとか、
1日単位で子どもを預かってくれる施設を全国に作るとか、
子育てしやすい環境を作るのも大事だと思います。

赤川次郎「とっておきの幽霊 怪異名所巡り7」第2話「永遠の帰宅」のネタバレ解説

60歳の新井呈一は、56歳の妻の照子と一緒にヨーロッパ旅行へ行き、
日本に帰国しました。
久しぶりに家に帰り羽を休めていると、娘の本間秋代から電話がかかってきます。
その電話に応えている間に、照子は失踪してしまいました。

それから2ヶ月が過ぎ、秋代は友人の町田藍に相談します。
新井と照子が帰宅したところを近所の人は見ておらず、
警察は新井が照子を殺したのではないかという疑いすらかけていました。

藍が秋代の夫の本間成人からも話を伺うと、秋代が席を立っている間に、
本間は次のようなことを藍に言いました。
ヨーロッパ旅行へ行く前に、新井が本間に、
1000万円担保なしで借りたいと相談に来たのだそうです。
定年になった会社で部下だった女性と愛人関係にあり、
その女性から手切れ金を要求されていた――ということを本間が藍に話します。

藍が新井の家を訪ね、1人で調べていると、
背後から誰かに殴られて藍は気絶してしまいました。
が、新井が早い段階で気付いてくれたおかげで藍は助かりました。

藍は、新井の部下だった戸山あゆ子に話を聞きに行きます。
あゆ子は新井に恋していましたが、それを表に出したことはありませんでした。

藍は、あゆ子の飲んでいたコーヒーカップを手に取ると、
何か出まかせを言っているのなら汗をかいて湿っているはずだが、
湿っていないからと、あゆ子を信じることにしました。

正直、この部分は納得がいかないんですけどね。

世の中には治癒が難しい多汗症という病気に苦しんでいる人もいて、
社会的苦痛を感じる場合も多いです。

手に汗をかいている人は、嘘を吐いたり出まかせを言ったりしている人だ、
なんて迷信がまかり通ってしまうと、余計に多汗症の人は苦しむことになるでしょう。

……話が脱線してしまいましたが、元に戻します。
すずめバスの企画で、夜中に新井照子を捜すツアーが始まりました。
バスには新井と秋代が乗車していましたが、本間は仕事があるからと欠席していました。

新井が初めて照子と出会った駅や、初めてのデートの場所である公園、
最初に住んでいたアパートなどを巡ります。
アパートへ行った藍は、昔新井と照子が住んでいた部屋に妙な熱を感じました。

そして場面が変わり、「新井が倒れて亡くなったという知らせを
本間は秋代から受けました。
すると、本間は急に本性を現し、大喜びで借金を返すとどこかに電話しました。

が、それを藍と秋代がすぐ近くで聞いていました。
新井が亡くなったというのも本間を嵌めるための嘘でした。

本間は照子に借金の相談をしていたのですが、
ヨーロッパ旅行から帰ってきた照子に、どうにもできないと言われ、
本間は照子をさらって川へ投げ込んだのでした。

しかし、照子は記憶喪失になりながらも生きており、
最初に住んだアパートで暮らしていたのでした。

負けを悟った本間は階段から身を躍らせ、首の骨を折って亡くなったのでした。


というあらすじなんですけど、今回は殆ど超常現象が起きておらず、
普通のミステリーとしても通用しそうな感じの話でしたね。

赤川次郎「とっておきの幽霊 怪異名所巡り7」第1話「活字は生きている」のネタバレ解説

とっておきの幽霊 怪異名所巡り7


テレビ局に勤める加東は今、ドラマのプロデューサーをしていました。
しかし、脚本家の天知輝夫が、
原作者の倉田伸介の小説「朝焼けのレクイエム」のセリフを無視して、
好き勝手な脚本を書いてしまうことに、加東は頭を痛めていました。

加東は、天知の元妻であるプロデューサー補の佐々木亜矢子に頼み、
ビジネスホテルに缶詰めにして脚本の直しをさせていました。
が、天知はそのホテルで女優の朝香マリと寝ていました。

図々しい話ですが、亜矢子は怒りもせず、皮肉を言う程度にとどめておきました。

一方、すずめバスは、常連客の遠藤真由美の父親が「朝焼けのレクイエム」の
メインスポンサーの取締役を務めており、
そのコネでドラマのツアーをすることになりました。

バスガイドの町田藍と客たちは、亜矢子に案内してもらいながらドラマの見学をします。
が、藍はそのスタジオで霊的な冷気を感じていました。

藍は、役者をしているという老婦人に話しかけられますが、その老婦人は幽霊でした。

やがて問題が発生し、天知が加東に直せと言われたところは直したものの、
他の部分を書き直していたことが発覚し、口論になっていました。
さらに、シナリオに口を出すことで有名な倉田伸介も撮影現場に来ており、
一触即発かと思われましたが、主役の坂口公一とヒロインの朝香マリの台詞は、
天知が書き直したものではなく原作通りの台詞でした。
つまり、脚本の中身がいつの間にか入れ替わっていたのです。

天知はからかわれたのだと思って激怒しますが、
恋人の朝香マリに褒められたので怒りを収めました。

藍は亜矢子に、このスタジオで亡くなった年配の女性はいるかと訊ね、
松永由子という女性のことではないかと言われます。
写真を見せてもらうと、松永由子は、あの老婦人の幽霊でした。

リハーサルが終わり、本番が始まりますが、朝香マリの様子が変でした。
何度撮り直しをしても、特定のシーンで
「これが正しいセリフです」
と、脚本にない台詞を口にしてしまうのです。

と、突然スタジオが真っ暗になりました。
藍は、これは3年前にこのスタジオで首を吊って亡くなった70歳の女優、
松永由子の例の仕業だと言いました。

加東は、3年前の松永由子の自殺の真相を告白します。
主役のアイドルのスケジュールが詰まっており、
ドラマのスタジオ収録が2時間しかできませんでした。

アイドルは台詞を忘れて勝手に喋ってしまいます。
当然、松永由子がアイドルの台詞に合わせないと
辻褄が合わなくなってしまいますが、
松永由子は『これが正しいセリフです』と言いました。

アイドルは次の仕事に行ってしまい、加東は、
松永由子演じるアイドルの祖母はドラマの中で突然死んだことにしてしまいました。

松永由子が自殺したのは、ドラマで遺影の写真を撮った翌日でした。

加東の告白が終わると、冷気が消え、天知の書いた脚本が元に戻りました。
天知が意地になって原作のセリフを使うまいとしていたと反省していると、
倉田伸介も原作のままにする必要はないと歩み寄りを見せました。


というあらすじなんですけど、これは要するに原作レイ〇の話ですね。
赤川さんの原作のドラマや映画は、高確率で原作〇イプされてきたので、
それを考えると何か辛いですね……。

うろ覚えなんですけど、一度、赤川さんの何かのエッセイで、
役者がこの〇〇という役を作ってくれた赤川さんに感謝しますと言ったのですが、
その役はドラマまたは映画のオリジナルキャラだったというエピソードを読んだ記憶があります。
要するに、その役者は原作の小説を読んでおらず、
原作レイ〇に加担しているという自覚すらなかったわけですね。

というか、何で原作通りにやっちゃ駄目なんだろう、と思うことが多々あります。
原作を改悪するくらいなら、最初から原作付のドラマとか映画なんかやらなきゃいいのに……。

(怪異名所巡り7 とっておきの幽霊 1話 2話 3話 4話 5話 6話
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