三上延「ビブリア古書堂の事件手帖(2)栞子さんと謎めく日常」第1話「アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)」のネタバレ解説

ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)


1巻の終わりで病院を退院した栞子さんが、ビブリア古書堂の店主として戻ってきました。
やっぱり足は不自由で杖をついているものの、思ったよりも元気そうで安心しました。

小菅奈緒が大輔に相談しにやって来ます。
奈緒の妹の結衣が書いた、
『時計仕掛けのオレンジ』に対する読者感想文のことで親が教師から注意され、
親は結衣たちの読む本を検閲しようとしており、奈緒は反発しているのだそうです。

その後、志田もやってきて、他人の家庭に口を突っ込むなと言いました。

読者感想文を読んだ栞子さんは、文香を経由して奈緒から問題の本を借りてきてもらいます。
そして、結衣と栞子さんと大輔の3人で話し合いをしました。

実は『時計仕掛けのオレンジ』には完全版と不完全版があり、
結衣が読んだのは完全版のはずなのに、感想文の内容は不完全版でした。
また、本にはスリップが付いたままだったので、
結衣がこの本を読んでいないことは明らかでした。

つまり、あの読者感想文は誰かのものを書き写したものだったのです。
盗作を認めた結衣に対し、栞子さんは奈緒に相談するようにと言って帰しました。

そしてこの話には、実は元ネタの読者感想文を書いたのは栞子さんだったというオチがつきました。
志田や大輔が読者感想文についての感想を話していたため言いにくかったのだそうです。


というあらすじなのですが、栞子さんが奈緒の顔を立てたのは、
自分にも妹がいるからなんじゃないかなあ、としまうましたは思いました。

また、今回は元ネタとなった本、『時計仕掛けのオレンジ』に対するネタバレががっつりとありますね。
もし、いつか『時計仕掛けのオレンジ』を読もうと思っている人がいたら注意した方がいいです。

しまうましたは手塚治虫さんの漫画作品、
『時計仕掛けのりんご』なら小学生のときに読んだことがあるのですが、
この短編でネタバレされている『オレンジ』の内容と全然違っていました。
ちょっと調べてみたところ、実は手塚さんは『オレンジ』を読まずに『りんご』を書いたらしくて、
関係ない内容になっていたらしいです……。

読まずにパロディを書くというのも凄いですよね。

それはともかく、完全版を書いたのに不完全版の方が有名になってしまっているというのは、
作者としてどんな気持ちなんでしょうね。
原作レ○プされた映画やドラマの方が有名になってしまうような感覚なのでしょうか。

湊かなえ「望郷」第6話「光の航路」のネタバレ解説

教師である主人公の航は、受け持ちのクラスでいじめがあることで悩んでいました。
いじめの首謀者の母親は自分の娘が加害者であることを認めようとせず、問題はこじれていました。
そんな中、航は火事に巻き込まれて病院で目を覚ましました。

航が十歳のときに亡くなった中学教師だった父親の教え子の畑野が見舞いにやってきます。
航は子どもの頃、父親が自分や母親ではなく、たった1人の教え子と一緒に、
白綱島の造船所で作られた最後の船の進水式に行ったことで、
わだかまりを感じているという話を畑野にしました。

実は「畑野こそが父親と進水式に行った生徒であり、
当時いじめられていた畑野を励ますために進水式に連れていったのだと明らかになります。
最後に、実は航が入院することになった火事は航がいじめの問題と関わりたくなくて、
逃げるために火をつけたのだと読者に明かされ、
航が真っ向からいじめを解決するために立ち上がったところで話は終わります。


というあらすじなのですが、いじめと体罰というタイムリーな題材を扱っている話ですね。

教師にしてみれば、自分のクラスでいじめがあるかどうかは、やっぱり運じゃないかと思います。
それを外部に隠したくなるのは、
「受け持ちのクラスでいじめがある」とマイナス評価を下されることに問題があるのではないかと、
しまうましたは思います。

「いじめがある」のが問題なのではなく、「いじめを解決できない」ことが問題なのです。
いじめを解決するためには、クラスメート全員や保護者など大勢の人と話し合う必要があるのに、
いじめがあると担任としての評価が下がるから公にできない、
というふうに、今の日本の学校は悪循環に嵌まっているように思います。

体罰に関しては……しまうましたは反対派です。
時には、体罰が劇的な効果を上げる場合もあります。
しかし、教師の裁量や機嫌によって、殴られることもあれば、
説教だけで済まされることもあるというのは、生徒にしてみれば納得できません。
いま話題になっている桜宮高校の場合だと、試合に負けたから殴られるとか、もう意味不明です。
また、冤罪の問題もあります。

個人的にはもう、いじめとかが起こったら、警察とか外部の人間を入れて徹底的に調査したり、
補導したりした方がいいと思います。

湊かなえ「望郷」第5話「石の十字架」のネタバレ解説

主人公と小学生の娘の志穂が2人で暮らしている白綱島を、巨大な台風が襲いました。
やがて、大量の泥水が家の中に浸入してきますが、玄関が開かず閉じ込められてしまいました。
主人公は石鹸で小さな十字架を作りながら、
昔自分が小学生のときに白綱島に引っ越してきたばかりの頃のことを話して、
娘を励ますことにしました。

父親がうつ病(?)で自殺してしまった主人公は白綱島にある祖母の家に引き取られましたが、
学校で孤立してしまいます。

そんな主人公に唯一話しかけてきたのが、同じくクラスで孤立していた吉本めぐみでした。
夏休みになると、主人公はめぐみと白綱山に登りました。
おそらく主人公のためではなく、めぐみのために祖母が作ってくれた巻き寿司を食べながら、
かつてこの場所が隠れキリシタンの隠れ家だったことをめぐみが話します。

2人は十字架探しをして、やっとの思いで見つけた十字架にお祈りをしました。

主人公はめぐみと親友になりたいと祈ります。
めぐみは徒競走で1位になりたいと言っていました。
しかし、めぐみが徒競走で1位になった後、いじめっ子からめぐみを庇った主人公は、
めぐみの消しゴムに十字架が彫られているのを見つけてしまいます。

主人公はどうしてもめぐみの本当の願いを知りたくなり、
自分の事情をめぐみに打ち明け、「めぐみが母親から虐待されている(?)ことを教えてもらいました。

主人公はめぐみのために努力しますが、やがてまた引っ越してしまいました。
年月が過ぎて、結婚して娘を産んだ主人公は、
いじめが原因で不登校になった志穂のために、
たった2年間しか住んでいなかった白綱島に再び戻ってきたのでした。
そして話は冒頭の台風で家に閉じ込められているところに戻ります。
めぐみが役所に通報してくれたおかげで主人公と志穂は助かりました。


これはいい話だと思います。
思いますが、でも……。
正直、いじめが原因で不登校になった娘を、
昔自分や親友がいじめられていた学校に転校してまで通わせるというのは、
ちょっと理解できません……。

特に、子どもの親世代には主人公の両親に関する噂を覚えている人が大勢いるでしょうし、
それが原因でからかわれたりしたら志穂は傷つくと思います。

湊かなえ「望郷」第4話「雲の糸」のネタバレ解説

歌手として成功した磯貝宏高は、大嫌いだった同級生の的場裕也に圧力をかけられて、
帰りたくなかった故郷の白綱島に帰ってきました。

磯貝宏高が1歳のときに母親が父親を殺害しました。
そのため、宏高は子ども時代に非常に辛い思いをしており、
島の外に出たいと強く願っていました。
的場裕也も宏高のことをいじめていたのですが、調子よくおだてつつ、
白綱島に残っている宏高の母親と姉を人質に取り、利用します。

宏高はやっとの思いで、蜘蛛の糸ならぬ雲の糸を掴んで島の外に出たのに、
また引き戻されてしまったのです。

島に戻ると、かつては人殺しの息子として宏高に辛く当たっていた連中が、
手の平を返したようにすり寄ってきます。
その内容が異常なほど高い筆力で細部まで書き込まれており、リアルに吐き気がしました。
こういう嫌な人っているよなあ、というのを書くのが本当に上手いのです。

やがて、「母親が自殺しようとしていたことを知った宏高は、
自分が有名になったせいで母親を追い詰めたと感じ、
海に飛び込んで自殺しようとしてしまいます。

やがて病院で目を覚ますと、かつて母親が父親を殺害したことは全国に知れ渡っていました。
宏高はさらに絶望しますが、殺害した理由は父親が宏高を殺そうとしていたからだと姉に教えられ、
励まされ、苦しみながらも何とか立ち直ったのでした。


というあらすじなのですが、結局、何で宏高の母親は服役後に白綱島に戻って来たんでしょうね?
本文中の説明だけじゃ納得できません。
宏高も思っていましたが、子どものことを考えたら、普通は、
自分たちのことを誰も知らない新しい土地でやり直すと思うんですけど……。
もしかしたら自分に罰を与えているつもりだったのかもしれませんが、
宏高や姉がいじめられると予想できなかったのでしょうか?

その点がどうしても納得できなかったので、ラストの方にはあまり共感できませんでした。

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち」第4話「太宰治『晩年』(砂子屋書房)』&エピローグのネタバレ解説

ビブリア古書堂シリーズの1巻4話とエピローグのネタバレ解説です。

3話で、栞子さんが入院する原因となった怪我は、
何者かに石段から突き落とされたことだと判明しましたが、その詳細が語られます。

栞子さんに言われて、大輔が病室の金庫を開けると、
中から太宰治の『晩年』が出てきました。
たったの500部しか刷られなかった初版本です。
数ページずつ袋綴じのような状態になっている、アンカット本と呼ばれるものでした。
ちなみにしまうましたは、アンカット本というものの存在を初めて知りましたが、
ページが袋綴じになっているまま現存しているというのが奇跡的であることは、
ちょっと考えただけでも分かりますよね。

ページがアンカットのままで、太宰治の署名入りの美本は、
栞子さんの所有するものしか残っていないかもしれないという、非常に貴重な本です。

ある日、栞子さんのところへ、大庭葉蔵と名乗る人物から、
その『晩年』を購入したいというメールが届きました。
ちなみに大庭葉蔵という名前は、
『晩年』に収録されている『道化の華』という短編の主人公の名前でした。
つまり、偽名です。

『晩年』は栞子さんにとって思い入れの強い本なので、
売るつもりはないと断っても、何度もメールが届きます。

そして、2ヶ月前、サングラスとマスクで顔を隠した大庭葉蔵本人が現れ、
400万円で買いたいと言いました。
が、やはり栞子さんは『晩年』を手放すつもりはないと答えます。

栞子さんが大庭葉蔵に石段から突き落とされたのは、その日の夕方でした。
『晩年』は安全なところに隠してあると栞子さんが嘘をつくと、
大庭は、このことを警察に話したら店に火をつけると脅迫し、去っていきました。

そして、現在。
栞子さんは、大庭をおびき寄せて対決するために、
『晩年』のレプリカを店のガラスケースの中に飾り、
お店のホームページでも350万円で売ると告知を出すことにしました。

ちなみに、栞子さんの怪我は想像以上に深刻で、
退院後も長く後遺症が残り、一生不自由なままかもしれないのだそうです……。
この時点で、しまうましたは栞子さんのことが好きになっていたので、
これはショックでした……。

大輔が『晩年』のレプリカを飾ると、2話に登場した小菅奈緒がやってきて、
西野(金髪の少年)に関する悪い噂(と言うか事実)が学校で広まっていて、
西野が孤立しているという話をしました。
また、奈緒はレインコートの怪しい人影を目撃します。

翌日には、3話に登場した坂口夫妻もやってきます。
坂口しのぶがレインコートの怪しい男を目撃し、大輔が追いかけますが逃げられてしまいます。

そのことを電話で栞子さんに報告していると、お店の看板に火がつけられました。
レインコートの男は逃げ出しますが、ちょうど、せどり屋の志田と笠井が現れたため、
大輔はレインコートの男を捕まえることができました。

その男の正体は、「西野でした。
西野は、学校で孤立したことで大輔のことを逆恨みしており、こんなことをしたのだそうです。

西野を警察に引き渡した後、志田は、お店に飾られているのがレプリカであることを見抜きました。
その際、大輔は、本物の『晩年』は栞子さんの病室の金庫にあると、口を滑らせてしまいます。

その後、笠井に電話がかかってきて席を外しているときに、志田は、
笠井菊哉というのは梶山季之の『せどり男爵数奇譚』の主人公の名前だと大輔に教えます。
また、志田が笠井と知り合ったのは、たったの2ヶ月前だったのだそうです。

大輔は笠井に『大庭さん』と話しかけますが、笠井はとぼけます。
しかし、反応したこと自体がおかしいと大輔が指摘すると、
笠井(=大庭)は、自転車で病院へ駆け出します。

大輔は志田に店番を頼み、栞子さんにメールで警告しながらスクーターで大庭を追いかけました。

栞子さんは屋上へ逃げていたのですが、大輔が駆けつけたときには、
『晩年』を抱えた栞子さんの顔に大庭が鋏をつきつけているところでした。

栞子さんは『晩年』に火をつけ、フェンスの向こうへ投げてしまいました。
大庭はそれを追いかけて屋上から飛び降りようとしますが、大輔が止めます。

そのとき、大庭のポケットから免許証が飛び出し、
大庭の本名が田中敏雄であることが明らかになりました。
1話で出てきた『田中嘉雄』と名前が酷似しています。
田中敏雄(=大庭)は、田中嘉雄は自分の祖父だと認めました。

つまり、大輔と田中敏雄は、はとこの関係にあることになります。

それから数日後、大輔は留置場へ行き、田中敏雄の口から、
田中嘉雄は既に亡くなっていることを教えられました。

そして、栞子さんのところへ行った大輔は、
病院の屋上で燃やした『晩年』もレプリカだったのだろうと指摘しました。
栞子さんの目的は、『晩年』を燃やすところを大庭に見せることだったのですが、
大輔までも騙していたのです。
傷ついた大輔は、ビブリア古書堂を退職すると言い、病室を出ました。


4話はここで終わりです。
話は直接エピローグに続きます。

2週間後。文香から、栞子さんが退院することを聞いた大輔は、病院へ行きます。
そこで栞子さんから信頼の証として『晩年』を渡されようとしますが、
大輔は断りました。
その代わりに、『晩年』の話をしてもらう、というところで1巻は終わります。


というあらすじなのですが、この4話は物語の密度が非常に濃いです。
連作短編の最後に持ってくるのに相応しい話だったと思います。

栞子さんと大輔の距離もぐっと縮まりましたし、大満足です。

ふたつだけ文句をつけるとしたら、
栞子さんが燃やした『晩年』がレプリカである可能性を、
田中敏雄は本当に思いつかなかったのだろうか、という疑問が残ります。
あまり言いたくありませんが、ミステリーではよくある話ですからね。
でも、田中敏雄が好きなのは古い本だから、
比較的新しいジャンルであるミステリーはあまり読んだことがなかったのだろうと、
脳内補完しておきます。

また、例えレプリカとはいえ本を燃やしちゃうなんて、栞子さんらしくない気もします。
だって、レプリカとはいえ『本』であることに変わりはありませんからね。

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち」第3話「ヴィノグラードフ クジミン『論理学入門』(青木文庫)」のネタバレ解説

ビブリア古書堂シリーズ1巻3話のネタバレ解説です。

9月の初め。
坂口昌志というサングラスの男が現れ、
『論理学入門』を売りたいと言い本を置いていきました。
しかしその直後、坂口の妻の「しのぶ」から電話がかかってきて、
本を買い取らないでほしいと言われます。

栞子さんの病室へその本を持っていき調べたところ、
坂口が刑務所に服役していたときに持っていた本だと分かりました。

ネットで検索すると、
坂口が若いときに銀行強盗事件を起こしていたことが明らかになりました。

そこへ、しのぶが病室まで押しかけてきて、本を返してくれと言いますが、
栞子は断り、坂口夫妻について質問しました。
すると、おしゃべりなしのぶはベラベラと色んなことを喋ります。
どうやらしのぶは、坂口の前科を知らないらしく、大輔は対応に困りました。

その後、さらに坂口までやってきました。
栞子は、「坂口の目が悪くなっており、だから本を売るのだろうという推理を話しました。

坂口は認め、失明のおそれがあると言いました。
すると、しのぶは、自分が本を朗読すればいいから、本を売る必要はないと言いました。
坂口は本を返してもらった後、前科について告白しますが、
しのぶはそんなこと分かっていたと優しい嘘をついたのでした。

2人が帰っていった後、栞子は大輔に、
自分が入院するきっかけとなった転落事故は実は事故ではなく、
ある人物に石段から突き落とされたのだと告白しました。


というあらすじなのですが、最後の告白の詳細については4話で明らかになります。

それはともかく、いい話ですよね。
凸凹な感じのカップルなのですが、
坂口夫妻が本当に愛し合っているのが伝わってきて、涙ぐんでしまいました。

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち」第2話 「小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)」のネタバレ解説

大輔がビブリア古書堂で働くようになってから3日が経過しました。

店の入り口で坊主頭の男が老婦人とトラブルになっていたので何かと思うと、
老婦人が万引きしたのを坊主頭の男が止めたのでした。
老婦人が逃げ出した後、坊主頭の男――志田は本題に入ります。

志田は橋の下で暮らすホームレスでありながら、
「せどり」をやっている常連客でした。
この場合のせどりというのは、他の古書店の店頭に並んでいる本を買い取り、
それよりも高い金額で別の人に売り、利ざやを稼ぐことです。

大輔は、志田が持ってきた本を入院中の栞子のところへ行き、
「盗まれた本を捜してほしい」という志田の頼みを伝えました。

ここから回想です。
志田と同業の男、笠井菊哉と寺の前で待ち合わせていた志田はトイレに行きたくなり、
荷物を自転車に載せたまま山道を歩きました。
途中で音がして振り返ると、高校生くらいの女の子が自転車にぶつかって倒れていました。
女の子は自分の荷物を確かめた後、文庫本を拾い上げ立ち去りました。
そして、志田がトイレから戻ると『落穂拾ひ・アンデルセン』が盗まれていたのでした。

その話を聞いた栞子は、女の子は壊れてしまった自分の荷物を直すために
文庫本を盗んだのではないかと推理します。

さらに詳しい情報を得るために、大輔は、
志田と待ち合わせていた笠井菊哉という男からも話を聞きます。
笠井は志田から「男爵」と呼ばれている、背の高い美青年でした。

笠井の話によると、女の子は保冷剤を持っており、笠井からハサミを借りたのだそうです。
また、女の子は、金髪のギターを持った男の子が待つバス停には行ったけど、
バスには乗らなかったのだそうです。

そこへ、栞子から電話がかかってきます。
大輔の話を聞いた栞子は、
女の子はお菓子を金髪の男の子にプレゼントしたのだろうと推理しました。
ちょうどそのとき、大輔の前に金髪の少年が現れ、大輔は彼から、
文庫本を盗んだ女の子の名前と携帯電話の番号とメールアドレスをゲットしました。

ちなみに、金髪の男の子は、文庫本を盗んだ女の子、
小菅奈緒のプレゼントを受け取らずに振ったのだそうです。

栞子さんは午後7時に小菅奈緒を呼び出し、「お菓子のラッピングを直すために、
文庫本に付いていた紐の栞を利用したのだろうという推理を話しました。
さらに、奈緒が今、あの本を読んでいることまで言い当てます。

最初はふてくされていた奈緒も、心を開き、志田に直接会って謝罪しました。
奈緒は志田に、爪切りと耳掻きという『落穂拾ひ』の少女と同じプレゼントを志田に送ります。

それ以降、奈緒は志田のことを「先生」と慕い、たびたび会うようになったのでした。


というあらすじなんですけど、
やっぱりホームレスの男と女子高生が定期的に会うというのは、
何となく犯罪の臭いがしますよねw
ただ、この世界観なら許される、という空気を作っているのは凄いと思います。

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち」第1話「夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)」のネタバレ解説

ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)

ビブリア古書堂シリーズの1巻1話目のネタバレ解説です。

いやあ、それにしてもタイトル長いですねえw
記事のタイトルもブログを初めて以来、過去最長になってしまいましたwwww

さて。
語り部の「俺」こと五浦大輔は、背が高く力持ちな、無職の23歳です。

大輔は幼いころに祖母の部屋へ行き、祖母の本を漁っていたところを祖母に見つかり、
2度も殴られた上に激しく怒られました。
それがトラウマとなり、大輔は本を読めない体質となってしまいます。

その祖母が死んでから1年が過ぎたころ、大輔は母親から、
祖母の遺品である夏目漱石全集について相談を持ちかけられました。
前週の8巻『それから』には夏目漱石が書いたと思われるサインがあるのですが、
もしサインが本物だったら値打ちものかもしれないから、
そういうのに詳しい人はいないか、と母親に訊かれました。

『それから』にはビブリア古書堂の値札がありました。
そこで大輔は、昔、北鎌倉駅で見かけた、ビブリア古書堂の美人店員と話すチャンスだと考え、
ビブリア古書堂を訪れました。
そこにいた女子高生の店員、篠川文香(あやか)から、店主は現在足を怪我して入院中だから、
直接店主のところへ持って行ってほしいと言われます。

店主というのが、文香の姉である店主の篠川栞子(しおりこ)です。
黒髪ロングストレートで胸が大きめの、眼鏡をかけた内気な美人でした。

やがて、栞子さんは、本の話ならベラベラと喋ることができるのですが、
それ以外だとコミュ障になってしまうという、残念な美人であることが判明します。

問題の本を見た栞子さんは、まず、
『それから』に書いてある「夏目漱石 田中嘉雄様へ」というサインは偽物だと言いました。

しかし、値札に「書き込みあり」と書かれていないことから、
本を購入した後で誰かがサインをしたと思われるのですが、
祖母はもちろん、家族の誰もそんなことをしそうにありませんでした。

また、全集の中で『それから』にだけ蔵書印がないことから、
大輔の祖母は古書店でこの本を買ったと思わせるために偽装工作をしたのだろう、
と栞子さんは推理しました。

田中嘉雄から署名入りの本をプレゼントされた祖母は、それを夏目漱石のサインに見せかけたのです。
栞子さんは、大輔に命名したのは祖母であることを確認した後、祖母が結婚した年を尋ねました。
この本が出た次の年だと答えると、栞子さんは一瞬、顔をこわばらせました。

大輔が家に帰り、結果を報告すると、母親は店主に迷惑なことをしたと怒りました。
翌日、お詫びのお菓子を買いに行くと、大輔はそこで伯母と出会いました。

伯母は、祖父母の話をした後、『それから』は、
主人公の男がよその奥さんを取っちゃう話だとネタバレしました。

ネタバレの内容と、『それから』の主人公『代助』の名前も、五浦大輔の名前も『だいすけ』であること、
祖母がビブリア古書堂で全集の他の巻を買ったのが結婚から10年後であること、
大輔とその母親だけが一族の中で背が高いことなどを考えると……
祖母は田中嘉雄と不倫をし、その結果生まれたのが大輔の母親ということになりそうでした。

たった1冊の本の書き込みから、こんなに後味の悪い結論に辿り着くとは、驚きです。


その後、大輔は栞子に誘われ、ビブリア古書堂で働くことになりました。

こうして、本に興味があるけど本を読むことができない大輔と、
本の話がしたいけど聞いてくれる人がいなくて困っていた栞子さんの、
奇妙な共存関係が始まったのでした。

というあらすじなのですが、個人的には、「ちょっと祖母の行動には疑問を覚えます。

不倫に関してではなく、家族にも本に触らせなかった、という部分についてです。

あの有名な『盗まれた手紙』という短編小説ではありませんが、
家族にも本に触らせないようにしたら、むしろ、
ここに何か秘密が隠されていますよ、と宣伝しているようなものじゃないですか。

逆に、堂々と家族にも、本を自由に読んでいい、
と言っておいた方が疑いを持たれなかったように思います。


(ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~ 1話 2話 3話 4話
ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~ 1話 2話 3話 4話
ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと見えない絆~ 1話 2話 3話 エピローグ
ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと2つの顔~
ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~ プロローグ 1話 断章Ⅰ 2話 断章Ⅱ 3話 断章Ⅲ エピローグ

湊かなえ「望郷」3話「夢の国」のネタバレ解説

3話「夢の国」
主人公の田山(旧姓)夢都子は、夫と小学生の娘と一緒に、
東京ドリームランドという、ディズニーランドがモデルだと思われる遊園地を訪れました。

親子3人でドリームランドを満喫している現在のパートと、回想のパートが交互にあります。

夢都子の生まれ育った家では祖母が独裁者であり、
彼女は白綱島で息が詰まりそうな生活をしていました。

夢都子は小さい頃からドリームランドに憧れていたのですが、
祖母が許すわけがないからとドリームランドに行くことはできませんでした。
福引きでドリームランドのチケットが当たったのに母親は返してしまい、
高校の修学旅行の行き先も夢都子の年からドリームランドからスキー旅行に変更されてしまいます。

ドリームランドに憧れているのに、とことん縁のない夢都子でした。

大学への進学も、家から通える女子大に、勝手に進路を決められます。
教師になることにした夢都子は、高校時代のクラスメートであり、
ドリームランドに行けなかったことを一緒に悔しがった平川と、教育実習で再会します。

やがて、平川に家まで送ってもらった主人公は、平川とホテルへ行きました。
実はそのとき、「夢都子は祖母が死にかけているのを発見していましたが、
知らないふりをしていたのでした。

やがて、在学中に平川の子どもを身籠った夢都子は、平川と結婚します。
が、結局そこでも、姑に監視されているような、
息の詰まりそうな生活が待っていたのでした。
娘をドリームランドに連れていくことができただけ、昔よりはマシなのでしょうが。


というあらすじなのですが、やっぱり、田山家の本当の癌は祖母ではなく、
祖母に反抗しようとしなかった夢都子の両親だったんじゃないかなあ、と思います。

夢都子の祖母は、自分が若いときに苦労ばかりしていたからという理由で、
自分の息子や嫁や孫を束縛していたのですが、
実は夢都子の母親も同じことをしていたんですよね……。

個人的には、不幸な人に合わせていたら全員が不幸になってしまうので、
どこかで区切りをつけないといけないな、と思います。

また、何となくですけど、「平川の母親が死にかけたときには、
夢都子は祖母のときのように、見殺しにするような気がします。

よく、嫁いびりをしておきながら、
老後は嫁に介護をしてもらおうとか虫のいいことを考えている人がいますけど、
ああいう人ってどういう頭の構造をしているのかなあ、と不思議に思います。

湊かなえ「望郷」2話「海の星」のネタバレ解説

2話「海の星」の主人公、浜崎洋平は、
妻と小学校低学年の息子と、東京で3人で暮らしていました。

ある日、真野美咲という同級生から、
上京するから久しぶりに会いたいというハガキが届きました。

洋平の父親は、彼が小学6年生の秋に失踪しました。
それから洋平は父親が生きていることを信じ、母親と2人で、
白綱島で生活していました。

洋平が夕食にするために魚を釣っていたところ、真野という男に話しかけられ、
真野が釣った魚や、真野の娘の作ったクッキーなどをもらうようになりました。
洋平は、真野は母親に好意を寄せているのだな、と思いました。

そして、父親の死から3年後、真野は背広を着て、白いユリの花束を持って現れました。
いよいよプロポーズをするつもりか、と洋平は察します。
しかしその日、真野は、浜崎の父親は死んでいるという禁句を口にしてしまい、
家から追い出されました。

その夕暮れ、浜崎は真野に「海の星」を見せてもらいます。
その光は洋平にとって忘れられないものとなりました。

高校に進学した洋平は、そこで美咲と出会い、
ある程度仲良くなったところで彼女が真野の娘であることに気付きます。
が、ボランティアで浜崎の家に通っていたという言葉が気にいらず、
2人は口論になり、それっきりでした。

そして、現在。
美咲と再会した洋平は思いがけない話を聞かされます。

実は「漁師である真野は、洋平の父親の遺体を引き上げていたのですが、
父親の外見がヤクザっぽかったため、
関わり合いになりたくなくて遺体を海に戻していたのでした。

あの日、真野が背広を着て花束を持って現れたのは、プロポーズのためではなく、
海に『お墓参り』に行くためだったのでした。


というあらすじなのですが、「警察に疑われるのが嫌で、
遺体を引き上げても海に戻してしまう猟師が多い、
という美咲の言葉が、妙にリアリティがありました。
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個人の趣味でやっているブログなので、解説してほしい本のリクエストは受け付けていません。
重要なネタバレ箇所は白字にしてあるので、反転してお読みください。
現在、荒らしをした人物のコメントを拒否しており、巻き添え規制される場合があります。詳細はこちらに書いてあります。
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