星新一「夢の男」のネタバレ解説

実業家のエヌ氏は、毎晩夢の中に無表情な男が現れ、
荒涼とした野原を引き回されることに悩んでいました。

医者の説明によると、その男は昼の間、
エヌ氏の支配下にあるすべてのものの象徴なのだそうです。
仕事から引退しない限り、
その男は夢に現れ続けるだろうと言われます。

そんなエヌ氏のところに、薬のセールスマンがやってきました。
その男は、毎晩エヌ氏の夢に現れる男にそっくりでした。

エヌ氏はその男の持ってきた睡眠薬を大量に購入します。

夜になり、いつもの夢に男が現れましたが、
男はなごやかな笑顔でした。
散歩する場所も美しい風景です。

男は「『きょうはこのくらいで』と言いましたが、
エヌ氏はこんな夢ならいつまでも見ていたいと言い、
男はその通りにします。

そして、次の朝、エヌ氏の世話係はエヌ氏の反応がないのを
不審に思いながらドアの外に立ち続けていた――


というところで、話は終わります。

この話のオチは「美しい場所は天国であり、
エヌ氏がいつまでもここにいたいと言ったため、
エヌ氏は死んでしまった、ということなのでしょう。

無表情な男の正体は死神だったのかもしれません。

そういう超常現象がない場合は、
薬のセールスマンはエヌ氏を恨んでいた人物であり、
睡眠薬と偽ってエヌ氏に毒薬を飲ませたのでしょう。

男が夢に現れたのは、エヌ氏がその男に恨まれていることを
心のどこかで意識していたからであり、
罪悪感からそんな夢を見ていたのではないでしょうか。


ところでこの話は、
シェイクスピアの『マクベス』が元ネタなのではないでしょうか。
『マクベス』には「眠りを殺した」という表現が登場します。

これは、王を暗殺したマクベスが、
眠り(安息の時間)を失ったという意味です。

鈴木光司「エス」のネタバレ解説

エス


この『エス』は、映画『貞子3D』の原作ということになっていますが、
内容は映画と全然違います。

映画は見ている途中で寝てしまったので、
どこがどう違うのか細かく言うことはできませんが、
まず冒頭の設定からして『エス』と『貞子3D』は全く違います。

どれくらい違うかと言うと、映画では呪いの動画を
見た人間は死ぬという設定になっていますが、
原作にはそのような設定はありません。


最後まで観ていないしまうましたが言うのも何ですが、
やっぱり映画は脚本と演出に問題があったなあ、と思います。

まあ、既に『ループ』以降のリングシリーズはホラーではないので、
ホラーではない小説を元ネタにホラー映画を作れ、
と無茶なことを言われた映画スタッフにも同情しますが。

ちなみに、『エス』はホラーではないけど面白い小説です。

また、『エス』は最低でも原作版『リング』『らせん』を読んでいないと、
内容をまともに理解することはできません。
と言うか、『リング』『らせん』のネタバレが大量にあるので、
そちらを先に読まないのはもったいないです。

『貞子3D』が原作とかけ離れたものになってしまったのも、
『らせん』がまともに映像化されていないせいでしょう。

……前置きはこのくらいにして、いつものようにあらすじを書きます。

(おそらく)2016年の5月。
少女4人を誘拐して殺害し、
遺体の一部を切除したということになっている死刑囚の柏田誠二は、
死刑執行当日に「S」という遺言を遺しました。
柏田は首にロープをかけられ奈落に落とされる際に、
監視カメラに対して「焦点を合わせ」てから死にました。

それから1ヶ月後。
24歳の女子高教諭の丸山茜は、
産婦人科の病院を訪れ、妊娠を告げられました。

その妊娠をきっかけに、茜は恋人の安藤孝則と結婚することになりました。
要するに、出来ちゃった結婚ですね。

映像プロダクション、スタジオ・オズの社員である孝則は、
社長の米田に呼び出され、USBメモリを渡されます。
米田の説明によると、1ヶ月前にある動画サイトにアップロードされた、
自殺の生中継の映像がUSBメモリに保存されているのだそうです。

その映像を夏の特番で使いたいと言われ、
孝則はそのUSBメモリを自宅に持ち帰ります。
自宅で映像を確認すると、
確かに男が首吊り自殺しているように見える映像が保存されていました。

スタジオ・オズに戻った孝則は、タロット占いをしていた米田から、
その映像を持ち込んだのが酒田清美という元女優であることを教えられます。

一方、職場である女子高に行った茜は何らかの理由で失神しますが、
その直前、自分が昔ある男に殺されかけたことがあるのを思い出しました。

2時間50分後、病院で目を覚ました茜は、21年前に死んだ母親の幻覚を見ます。

入院した茜のお見舞いに行った孝則は、
その帰りに乗った京浜急行の下りの電車の窓から見える青物横丁駅のアパートに
注意を寄せ付けられました。

自宅に戻った孝則は、例の映像に一瞬映っていた特徴から、
映像が撮影された部屋はこのアパートの303号室なのではないかと推理しました。

その2日後。
孝則はそのアパートへ行き、
303号室の住人の名前が新村裕之であることを確認していました。

孝則のマンションに引っ越すことにした茜は、
見知らぬ男に尾行されていることに気付きます。
さらに、自分の携帯電話のGPS機能によって自分の居場所が検索されていました。

その頃、自宅にいた孝則はパソコンに保存していた例の映像が
変化していることに気付きますが、そのとき茜から電話がかかってきました。
茜を迎えに行った孝則は、GPS追跡アプリは自分がインストールしたものだと
嘘をついて茜を安心させ、お風呂に入れさせました。

茜の回想があります。
3歳のときに未婚の母を亡くした茜は児童養護施設「ふれ愛」に入りました。
18歳になり施設を出るときのパーティで、茜は孝則と出会いました。
「ふれ愛」は孝則の父、安藤満男が作った施設だったのです。

回想が終わり、お風呂を出た茜は、例の映像を見てしまいます
(この辺の流れは『リング』のオマージュになっていますね)。
そして茜は、映像の中で首を吊った男に、
12歳のときに殺されかけたことを思い出し倒れました。

駆けつけて茜を抱き締めた孝則は、パソコンに保存された映像が、
さらに変化していることに気付きました。
そして茜の口から、映像の男が柏田であると教えられます。

柏田は、2003年6月から1年3ヶ月の間に、
4人の少女を誘拐して殺害した罪で死刑判決を受けていました。
柏田は5人目の少女を連れ回して殺す寸前で逮捕されましたが、
その5人目の被害者になりかけたのが茜だったのです。

柏田についてネットで検索した孝則は、
5月19日午前10時4分という、死刑が執行された日時に驚きました。
その時間に、孝則と茜は、茜が妊娠するきっかけとなった行為をしていたのです。

1ヶ月前、孝則と茜は、誤作動するカーナビに導かれ、貞子が死んだ箱根の井戸や、
柏田が殺したという少女の遺体の発見現場などを訪れていました。

数日後、婚姻届と戸籍謄本を受け取りに行った孝則は、
戸籍上、自分が3歳から5歳まで、死んでいたことになっているのに気付きました。

さらに数日後、孝則は、柏田の事件について本を出していたノンフィクション作家、
木原に会いに行くために高田馬場を訪れました。

連続少女誘拐殺人事件の犯人は本当に柏田なのか確信が揺らいでいるように見える、
と孝則が本の感想を述べると、木原は満足げに頷き、認めました。

動機が不明なことや、少女たちが被写体のようなポーズをしているのに、
柏田の家からは被害者を撮影した動画や写真が見つからなかったのがその理由です。

ちなみに、この会話の最中に、
茜が1992年6月生まれであることが判明します。
この小説は茜が24歳の6月の出来事を描いているので、
西暦は2016年か2015年であると分かります。

孝則はパソコンに保存されていた例の映像を木原に見せますが、
柏田は映像の中から姿を消していました。

その後、父の勤める病院へ行った安藤は、父の安藤満男に、
戸籍上自分が3歳から5歳まで死んでいたことに対する説明を求めます。
しかし、満男は到底信じられないような作り話をするだけでした。

孝則は幼い頃海に行ったときのことを思い出します。
『らせん』や『ループ』のラストシーンの出来事です。

茜は青物横丁駅で、以前自分を尾行していた男を発見し、
携帯電話の電源を切って、逆に男を尾行しました。
そして男は例のアパートの新村裕之の部屋に入っていったようでした。

再び木原の部屋を訪れた孝則は、例の映像に、
『リング』の主人公、浅川和行の兄が出した本の初版本が
17冊も映っていることを木原から教えられました。

書店を回ってその本、『リング』を入手した孝則は、その本を読みます。

さらにもう一度木原のところを訪れた孝則は、浅川とその妻子について尋ねますが、
3人とも死んでいました。

そして、『リング』の重要人物、高山竜司を解剖した執刀医が、
自分の父親であることを孝則は知りました。

孝則は満男から、リングウィルスについて説明を受けますが、
その説明には一部嘘がありました。

その後、孝則は、酒田清美の映画『スタジオ104』の記者会見に行きました。
そこで米田から、例のUSBメモリの映像は、
動画サイトにアップロードされたものとは別物であり、
酒田清美のメールアドレスに直接送られてきたものだと教えられました。

孝則はその記者会見でカマをかけ、
新村裕之は酒田清美が10代で産んだ子どもであると確信しました。

その後、孝則は木原から、安藤満男の元同僚の宮下教授が語った話を聞きます。

リング状のウィルスは心臓の冠動脈に肉腫を作ります。
しかし、話の切れたS状のウィルスにはある危険がありました。

ビデオテープの映像を見たときに排卵日にあたっていた女性は、
S状のウィルスの侵入を受けて妊娠し、
わずか1週間で山村貞子を産むことになったのです。

柏田が殺したという少女たち4人は、そうして生まれてきた山村貞子でした。

その後、さらに高山竜司や柏田について調べていた孝則は、
高山竜司と柏田が同一人物であることに気付きました。
そして高山竜司も死んだことになっている以上、何らかの方法で蘇ったのです。

孝則は、柏田が連続少女誘拐殺人事件の犯人でなかった場合、
誰が犯人なのかと考えて、新村裕之に辿り着きました。

孝則は同僚の水上に頼み、新村のパソコンにハッキングしてもらいました。
そして、『S』というキーワードで検索し、
殺された少女たちの遺体の画像を発見しました。
さらに、茜を被写体とした写真も大量にありました。

これで、新村が真犯人であることは確定しました。

その後、孝則はパソコンの画面の中に高山竜司の姿を発見しました。
現在、竜司は二次元の世界にいるのだそうです。

呪いのビデオテープを見た高野舞が産んだ、山村貞子の遺伝子を引き継いだ女、
丸山真砂子こそが茜の母親でした。

25年前、リングウィルスが蔓延しかけました。
放っておけば爆発的に山村貞子が増殖し人類は滅亡していたでしょうが、
復活した竜司がそれを食い止めたのだそうです。

しかし、回収した『リング』の初版本には取りこぼしがあり、
この世に4人の山村貞子が生まれてしまいました。
その4人の情報を、竜司が家庭教師を務めていた新村裕之に持ち逃げされ、
4人の少女は誘拐され殺されてしまったのでした。

裕之が5人目の茜に手を出そうとしたところで、竜司は茜を救ったのですが、
茜には竜司が犯人であると勘違いされてしまいました。

竜司からそんな説明を受けていたところに、茜が帰宅します。
孝則は、茜と竜司を引き合わせました。

竜司は、自分と真砂子が愛し合って生まれたのが茜であると告げました。

翌日の朝になり、昨日、品川駅で新村裕之が電車に轢かれて死んでいたことを、
孝則は知りました。
さらに、そのとき茜は品川駅で携帯電話の電源を切っていたことから、
茜が裕之に幻覚を見せてホームから落としたのではないか、
と孝則は疑惑を覚えました。

が、そのことを茜には話しませんでした。

そして、9月になり、登校した茜が、
女子生徒たちが『S』という画像について話しているのを聞くという、
どこか不穏な気配の漂うエピソードがあり、話は終わります。


……というあらすじなのですが、
この作品は『ループ』や『バースデイ』と話が繋がっていないように見えるんですよね。

その原因は、「本作に登場する柏田誠二の人格が、
『リング』の高山竜司なのか、それとも『ループ』の二見馨なのか、
いまいちはっきりしない点や、
柏田誠二の死に様が『バースデイ』と矛盾している点です。

この作品は『リング』『らせん』の続編ではあっても、
『ループ』『バースデイ』の続編ではないように見えます。
ですから、これはおそらく、
『ループ界』の中でのパラレルワールドなのではないでしょうか。

個人的には、『らせん』のラストで復活した高山竜司の人格が、
二見馨ではなくオリジナルの高山竜司である世界が、
この『エス』なのではないかと思います。

真砂子と二見馨が愛し合って生まれた子どもが茜というのは、
『ループ』の内容を考えるとあり得ませんからね。

ただ、個人的には、茜の父親は安藤満男の可能性もあると思うんですけどね。
その場合、孝則と茜は異母兄妹ということになるので、
高山竜司はそれを隠すために嘘をついたという可能性も……やっぱりないか


それと、結局、茜のGPSアプリは、茜が序盤で失神しているときに、
ストーカーしていた新村裕之がインストールしたのでしょうか?
序盤の無意味な失神はその伏線だったのでしょうが、
ちゃんと回収してほしかったです。

いや、それ以前に、ストーカーされてるのに気付いた時点で、
さっさとアンインストールするかケータイを機種変更しろよ、
と突っ込みたくなりますが。

道尾秀介「カラスの親指」のネタバレ解説

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)


46歳の武沢竹夫は、共和銀行品川支店の前で、
43歳の筑紫(ちくし)章介に話しかけ、自分は銀行検査官だと名乗りました。

武沢は、筑紫が窓口で受け取った現金が
偽札の可能性があるので調べさせて欲しいと頼みます。
そこへ、共和銀行品川支店の支店長補佐の石霞英吾という
ネームプレートをつけた男が現れます。

武沢のことを胡散臭く思っていた筑紫は、
石霞に事情を話し、納得して現金を渡しました。

――が、実は武沢竹夫と、石霞(偽名)はグルの詐欺師であり、
筑紫から現金を騙し取っていたのでした。
ちなみに、石霞と名乗っていたイルカみたいな口の男のことを、
武沢はテツさんと呼んでいます。

話は3ヶ月前に遡ります。回想です。
武沢はアパートの自室の鍵穴がおかしいことに気付きます。
郵便受けを覗いたところ、鍵屋のチラシが入っていたので呼ぶと、
鍵屋は錠を交換しました。

そして武沢は、実は錠を接着剤で塞いでいたのが
鍵屋の仕業であるという推理を披露します。
イルカみたいな口の鍵屋――入川鉄巳(いるかわてつみ)は観念し、
武沢とコンビを組んで詐欺をやるようになったのでした。

回想終わりです。
筑紫を騙した後、武沢とテツさんは「豚々亭」という中華料理屋へ行きました。

そこでテツさんは、死んだ妻、絵里の話をします。
絵里は一度テツさんを捨てて浮気相手の男と出ていき、
戻ってきたときには覚.醒剤中毒になっていました。
さらに、覚.醒剤を買うために消費者金融やヤミ金に手を出し、
500万もの借金を作っていました。

やがて、絵里は自殺し、その生命保険金で借金を返すことになりました。

豚々亭を出るとき、店主が、
以前、妙な男が武沢について探りを入れていたことを話しました。

そしてアパートに戻ると、武沢の部屋が燃えていました。
テツさんが燃えさかる部屋から自分の荷物をとってくると、
2人はその場から逃げ出しました。

雨が降って来たので、公園にある白鳥型の滑り台の下に隠れます。

そこで武沢は、自分自身の過去を回想します。
武沢は12年前に妻を亡くし、娘の沙代と2人暮らしを始めます。

そんなとき、武沢は会社の同僚に誘われ賭場へ行きます。
そこで莫大な借金を作ってしまい、同僚も行方をくらましました。
消費者金融とか紹介屋とかヤミ金に騙され、借金はどんどん膨らみます。
返せないんので、嫌がらせをされます。
警察に相談しに行きますが何もしてくれません。

やがて、ヒグチという男に使われ、借金の取り立てをするようになります。
しかし、取り立てをしていた母子家庭の母親を自殺に追い込んだところで、
目が覚めました。

ヒグチの事務所から問題のある書類を持ち出し、警察に行きました。
そして――武沢の家が放火され、中にいた沙代は焼け死にました。

それから武沢は詐欺師として生活するようになり、
7年後にテツさんと出会ったのでした。

アパートを焼け出された武沢とテツさんは、不動産屋を回り、
小さな借家を借りることにしました。
引っ越してから4日後、前のアパートの大家から電話がかかってきて、
ヒグチと名乗る男から大家のところへ電話があった、と教えられました。

その後、2人は上野へ行きました。
そこで新しい携帯電話を購入し、骨董品詐欺をします。

駅に戻る途中、少女がスリを働くのを目撃し、2人はその少女を助けました。
そして、その18歳の少女――河合まひろが、
7年前に武沢が母親を自殺に追い込んだ母子家庭の娘だと、武沢は気付きます。

まひろがアパートを追い出されそうだという話を聞き、
武沢はまひろを自分たちの借家に住まわせることにしました。

翌日の夜、借家に子猫が迷い込んできて、
まひろが飼いたがったので飼うことにしました。
ペットショップへ行き、武沢とテツさんが注意を逸らしている間に、
まひろがトイレの砂や餌、首輪などを万引きしました。

そして、まひろが先に家に帰り、武沢とテツさんが帰宅すると、
どうやらまひろが男を連れ込んでいる様子でした。
が、それは勘違いで、男――売れないマジシャンの石屋貫太郎を
連れ込んでいたのは、まひろの姉の河合やひろでした。

貫太郎とやひろも、まひろと同じアパートに住んでいたため行くあてがなく、
武沢は2人も住まわせることにしました。
布団を買ったり一緒に食事をしたりして、6人は打ち解けます。

しかし、ある日、テツさんはまひろの持ってきたボストンバッグの中に、
2、300万円くらいの大金があったという話をします。
実はそれは武沢が7年間、まひろ達姉妹に送り続けていたお金だったのですが、
アパートを追い出されるほどお金に困っていながら、
2人はそれに全く手をつけていなかったのでした。

テツさんに言われて武沢がバッグの中を確認すると、
そこにはまひろ達の父親と思しき人物からの手紙も入っていました。
武沢はその手紙の筆跡に見覚えがありましたが、
気のせいだと片づけてしまいます。

その後、武沢はテツさんに、
まひろ達姉妹の母親を自殺に追い込んだことについて告白します。

翌日の夕方、家の台所の裏に火が放たれるのですが、
5人全員で協力し、何とか火を止めることができました。
そのとき家の近くに停まっていたセダンに乗っていた男が、
火事が多くて大変ですねと声をかけた後、武沢さん、と付け加えました。

そしてその男は、テツさんを昔騙した債務整理屋だと、テツさんは言いました。

武沢とテツさん、まひろとやひろは全員、同じ組織に恨みがあった、
ということが判明します。
とりあえず5人は借家を出ることにします。
夜になり、飼っていた猫の死体と思われるものを発見しました。

みんなで話し合った結果、逃げるのはやめ、組織に復讐することにしました。
武沢がまひろ達に送りつけていたお金も使うことにします。

作戦初日。
見張りをしていて、借屋が荒らされるのを目撃した貫太郎は、
武沢とテツさんに知らせ、武沢たちは例のセダンをタクシーで尾行し、
組織の事務所があるマンションを発見します。

翌日、武沢はアメ横へ行き、外国人たちから携帯電話を11台購入します。
そして盗聴専門の探偵事務所に依頼し、携帯電話に盗聴器を仕込みました。

11台のうち10台の携帯電話を、1台1000円という値段でチラシに載せ、
組織の事務所の郵便受けに入れておきます。

そして、残った1台の携帯電話に、組織から電話がかかってきて、
送ることになりました。

さらに、そのマンションの空き部屋になっていた902号室の錠を、
元鍵屋のテツさんが開け、そこで盗聴の電波を拾うことにします。
武沢たちはそれを録音しつつ、債権の回収に使用している振込口座を探ります。
会話の中に、武沢の名前も出てきます。

振込口座が凍結されるという偽の手紙を出し、口座の現金を引き上げさせます。
組織の人たちは、そのお金を事務所の金庫に仕舞うことにしました。

組織の事務所は1001号室なのですが、
その隣に住むホステスが水曜と金曜はお店に出ていることを、まひろが調べました。

翌日、ヒグチが不在のときを狙い、5人は作戦の本番を決行することにしました。
武沢、テツさん、貫太郎、やひろは『盗聴バスターズ』のつなぎを着て、
事務所を訪れ、事務所の中から盗聴の電波が出ていると言いました。

事務所の中に入った4人は、例の携帯電話の中から盗聴電波が出ていると教えます。
盗聴の中継器があると言い、金庫の中を調べます。

やがて貫太郎は金庫の中から中継器を発見したふりをします。
その後で貫太郎が銃を出し、金庫から出した現金を寄越せと脅迫します。
もちろん、簡単にお金を渡すわけにはいきませんが、
まひろがこっちにお金の入った袋を渡すようにと言うと、
組織の人間はまひろに渡しました。

そして、まひろは事務所を飛び出しました。
何かが落ちるような音がして、外廊下の下を見ると、
隣の2階建のビルの屋上に、女が墜落しているように見えました。

しかし実は、「まひろはテツさんが予め開錠しておいた隣室に隠れており、
ビルの屋上にいたのはまひろと後ろ姿がそっくりな、やひろだったのでした。

上手くいった――と思ったのも束の間、5人は組織の人間に掴まってしまいました。

実はヒグチは、部下が異常なほど安い携帯電話を購入したという話を聞いた時点で、
怪しいと思い携帯電話を分解し、盗聴器を発見していたのでした。

今日の一連の作戦も、ヒグチは盗聴しながら観劇していたわけです。

そんな話を聞いた後、武沢はヒグチに向かって、
あんたはいったい誰なんだと尋ねます。

ヒグチは、武沢を恨んでいたのは自分の兄だったのだと答えました。
本物のヒグチは刑務所に服役し、出てきたところを刺されて殺されたのだそうです。

アパートや借家に火をつけたのは、ただのお遊びで、
猫を殺してしまったのは弾みだったのだと言います。

ヒグチは今日の件は見逃してくれることになりましたが、最後に、
まひろとやひろの母親を自殺させたのが武沢だったことをバラしてしまいます。

しかしまひろは、借家の中で武沢がテツさんに語った過去を話しているのを聞いていたため、
既にそのことは知っていたのでした。
まひろは考えて考えて、
恨むのは武沢に命令して残酷なことをやらせていた上の連中だと結論を出していました。

そして、貫太郎の提案で、5人は二階建てのビルの屋上に戻り、
そこに残されていた白い紙袋に入れておいた、
武沢がまひろとやひろに送り続けていたお金の残りを5人で山分けしました。
そこで5人は別れて、それぞれの道を歩くことにしました。

それから1ヶ月後。
武沢は、まひろ、やひろ、貫太郎からの葉書を受け取りました。
まひろとやひろは働き始め、貫太郎も就職が決まりそうだと書かれていました。
また、死んだ子猫の生まれ変わりのような子猫がアパートに現れ、飼い始めたのだそうです。

……ここに来て、何もかもがよくできすぎている、と武沢は疑念を覚え、
豚々亭の店主に電話しました。
店主から、以前住んでいたアパートの火事は悪戯で、
ただのタイマー仕掛けの煙幕だったのだと言われます。

さらに、まひろとやひろの父親の苗字を確認します。
2人の父親の名前は、河合光輝――カワイミツテル。
テツさんが名乗っていた入川鉄巳――イルカワテツミは、そのアナグラムでした。
また、妻の名前もアナグラムになっていました。

まひろ達の父親の手紙の筆跡に見覚えがあったのは、
テツさんが書いた字と似ていたからです。

つまり、テツさんは、まひろとやひろの生き別れの父親だったのです。

ヒグチやその部下、前のアパートの大家を騙っていたのは、テツさんが雇った劇団員でした。
その劇団を訪れた武沢は、テツさんと再会します。

テツさんは詐欺師であることを理由に妻と別れました。
が、今から1年前にガンを患い、先が長くないと言われたのをきっかけに、
妻と2人の娘の消息を調べました。
そこで初めて、妻が自殺しており、娘たちの生活苦や、
妻を自殺に追い込んだ武沢のことを知ったのでした。

そして、娘たちと武沢が過去を乗り越えて生きていけるように、
あんな大がかりなお芝居を仕掛けたのです。
あの猫の遺体は偽物で、後日まひろ達のアパートに現れたのが本物の猫でした。
作戦の舞台となったマンションも、
取り壊し予定の無人のマンションだったのです。

さらに、武沢がテツさんと組んでやった仕事で得たお金は、
実は全部テツさんが懐から出していたものでした。

そして、それらのお芝居にかかった費用は、本物のヒグチを詐欺で騙して得たお金でした。

それから月日が流れ、武沢はテツさんを看取りました。

というあらすじなのですが、
結局武沢は全部、テツさんの手の平の上で踊らされていたわけですよね……。
空しいような哀しいような、変な気分になります。

ところでタイトルの由来ですが、カラスはプロの詐欺師のことで、
親指はお父さん指、5人の中で父親的存在のテツさんのことを示していました。

西尾維新「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言使い」のネタバレ解説

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)


この「クビキリサイクル 戯言使いと青色サヴァン」は、
戯言シリーズの記念すべき1冊目です。

まず、初めに説明しておくと、
このシリーズの物語の主人公であり、語り部である「ぼく」は、
本名が登場していません。

「戯言使い」とか「いーちゃん」とか「いの字」とか、
色んな愛称で呼ばれていますが、
この記事では、いーちゃんと呼ぶことにします。

いーちゃんはアメリカのER3システムを中退し、
京都の鹿鳴館大学に籍を置いている19歳の少年です。

そして、一人称が「僕様ちゃん」であり、
青い瞳と青い髪を持つ、サヴァン症候群の、
工学分野の天才にして、財閥「玖渚機関」直系の令嬢であり、
ハッカー集団「チーム」の元リーダーであるという、
設定だけでお腹がいっぱいになりそうな19歳の美少女、
玖渚友(くなぎさ・とも)。

この2人は、天才ばかりが集められるという島、
鴉の濡れ羽島を訪れていました。
ちなみに、天才扱いされているのはあくまでも玖渚友であり、
いーちゃんはその付添いに過ぎません。

ところで全然関係ないですが、しまうましたは「玖渚」を最初、
「くさなぎ」だと思って読んでいました。
「くなぎさ」が正解なのですが、目が滑ってしまったようです。
シリーズの全体の中盤くらいまで勘違いに気付きませんでした……。

さて。
物語が始まった時点で、既に島に到着してから3日目です。

いーちゃんは、ワークステーションをいじっていた玖渚と会話をした後、
外を散歩中に逆木深夜(さかき・しんや)と出会います。
深夜は、車椅子に乗っている天才画家・伊吹(いぶき)かなみの介添人です。

深夜はいーちゃんの意向を無視し、かなみの絵のモデルになるように、
かなみに頼みます。
いーちゃんはかなみから、午後にアトリエに来るようにと言われました。

いーちゃんは一度玖渚に声をかけた後、朝食を食べに食堂へ行きます。
そこで、メイドの千賀(ちが)ひかりと会います。

ひかりは3つ子の中の1人であり、あかり、てる子という姉妹がいます。
3人ともこの島でメイドをやっています。

朝食が運ばれてくるのを待つ間、
いーちゃんは「七愚人」の中の1人である園山赤音(そのやま・あかね)と話をします。
七愚人というのは、いーちゃんが中退したER3システムという研究室の、
七人の天才のことです。

ひかりが佐代野弥生(さしろの・やよい)という天才料理人が作った料理を運んできて、
赤音と会話をしながら朝食を食べ終えます。
そこへ、姫菜真姫(ひめな・まき)が現れました。

真姫は次々といーちゃんの言動を当てて、
それに対して駄目出しをしていきます。
真姫は予知能力者なのですが、本人は占い師を自称しています。
天才占術師です。

天才技術屋の玖渚友、天才占術師の姫菜真姫、七愚人の園山赤音、
天才画家の伊吹かなみ、天才料理人の佐代野弥生。

この5人の天才の女性たちは、
この島の主人である赤神(あかがみ)イリアによって集められていたのでした。

玖渚やひかりと話をしているうちに、昼になります。
昼食を食べてから、弥生と少しだけ話をします。
その際、弥生はいーちゃんの手の甲を舐めただけで、
血液型がAB型のRhマイナスであることを見抜きました。

弥生は絶対味覚(絶対音感のようなもの)の持ち主であり、
汗を舐めただけで血液型が分かるくらい優れた味覚の持ち主なのだそうです。

その後、いーちゃんはかなみのアトリエに行きました。
かなみが描いた桜の絵に対して感想を求められ「綺麗な絵」と言ったところ、
かなみは2000万ドルほどの価値になるであろう、
その桜の絵を破ってしまいました……。

いーちゃんはかなみの薀蓄を聞きながら絵を描いてもらい、
完成後には絵をもらう約束をします。

夕食の時間になり、全員が食堂に集まりました。
イリアは、哀川潤という一週間後に島を訪れる予定の人物について話をします。

その後、かなみと赤音が言い争いをします。
この2人は仲が悪く、口喧嘩ばかりしているのでした。
それを玖渚が止めます。

しかし今度は、真姫がいーちゃんに突っかかってきました。
いーちゃんは真姫に怒ろうとしますが、またしても玖渚に止められました。

夜10時過ぎ。
いーちゃんと玖渚がリビングに行くと、
そこにはひかりと真姫と深夜がいました。

やがて、地震が起きます。
深夜は内線でかなみの部屋に電話します。
深夜の話によると、かなみはアトリエにいて、
ペンキの缶が倒れたけど本人は無事なのだそうです。

そして滞在4日目。
朝食のときにかなみが現れず、深夜が様子を見に行きました。
そして戻ってきた深夜は、かなみが死んでいる、と告げました。

いーちゃん達はかなみのアトリエで、首なし死体を発見します。
ペンキが倒れて「川」ができており、
その向こうにかなみの首なし死体があったのです。

イリアが警察を呼びたがっていないため、魔女裁判が始まります。

イリアが犯行予想時刻の皆のアリバイを確認しましたが、
赤音にだけアリバイがありませんでした。

かなみは地震でペンキが倒れる前に殺されたはずだ、
とイリアは考えたのですが、実際にはその後で深夜が電話をし、
かなみの無事を確認していました。

しかしそれをイリアは「幻聴」だと片づけます。
いーちゃんの提案もあり、赤音を倉庫に保護(監禁)することにしました。
6日後にやってくる予定の哀川潤(あいかわ・じゅん)ならば解決できるから、
それまでの間、という条件付きで。

その後、いーちゃんと玖渚は探偵まがいの活動を始めます。
いーちゃんは、かなみが描いた自分がモデルの絵を見て、違和感を覚え、
玖渚にデジカメで写真を撮ってもらいます。

そして、深夜に頼まれ、
いーちゃんは深夜と一緒に、寝袋に入ったかなみの遺体を埋葬しました。

昼食後、いーちゃんはイリアの部屋に行きました。
そこにはイリアと、メイド長の班田玲(はんだ・れい)がいました。

……紹介が遅れました。
現在鴉の濡れ羽島にいる人物で紹介していなかったのは、班田玲で最後です。

この島に住んでいるのは、赤神イリア、班田玲、千賀あかり、千賀ひかり、
千賀てる子の5人。

招待客は、伊吹かなみ、佐代野弥生、園山赤音、姫菜真姫、玖渚友の5人。

招待客の付添いは、いーちゃんと逆木深夜の2人。

これから島を訪れる予定の人物は、哀川潤。

登場人物は全部で13人です。

さて、話を戻しますが、
いーちゃんは警察を呼ばない理由についてイリアに尋ねます。
玲の話によると、どうやらイリアは単純に警察嫌いなだけではなく、
請負人(探偵)である哀川潤に、
この殺人事件を「プレゼント」するつもりのようでした。

夕食が終わり、午後9時過ぎ。
玖渚の部屋にいたいーちゃんは自分がモデルの絵の違和感の正体に気付きますが、
その内容は読者にはまだ明かされません。

そこへひかりがやってきたので、いーちゃんは玖渚のことをひかりに任せ、
監禁されている赤音に会いに行きます。
赤音は、いーちゃんに対し、玖渚のことが好きなのかと尋ねますが、
そんなことはないと答えます。

玖渚の部屋に戻ったいーちゃんは、ひかりから、
本当は密室トリックはもう分かっているのだろうと尋ねられます。
ペンキが倒れて川ができたのは地震のせいではなく、
犯行があったのが地震前だと思わせるための犯人の偽装工作である、
という可能性について、玖渚といーちゃんは説明します。

……まあ、正直、ミステリーを読み慣れている大部分の人は気付いていた
可能性なんですけどね。

翌日、滞在5日目。
いーちゃんはあかりに激しい勢いで起こされました。
赤音が監禁されていた物置の中で、赤音の首なし死体が発見されたのです。
換気用の、内側からしか開けられない窓は、開いていましたが、
位置が高いため手が届きそうにありません。

イリアは、アリバイがなく鍵を持っていたひかりを犯人扱いしますが、
いーちゃんは同じ過ちを繰り返さないためにイリアを説得し、
グループに分けて行動することにしました。

いーちゃんと玖渚とひかりがAチーム、
イリアと玲とあかりとてる子がBチーム、
真姫と深夜と弥生がCチームです。

いーちゃん達Aチームの人間が玖渚の部屋に戻ると、
玖渚のコンピューター3台、パソコン2台、ワークステーション1台が、
物理的に破壊されていました。

玖渚は昨日、かなみの遺体をデジカメで撮影していたため、
狙われたのでしょう。
そして、容疑者たちは先ほどまでずっと一緒にいたので、
こんなことをする時間はなかったはずだということに、ひかりが気付きます。

いーちゃんたちは赤音の死体を埋葬しました後、
島の外側から問題の物置小屋の密室の窓を覗きます。
赤音を殺すためには内側にいる赤音自身に鍵を開けてもらう必要があり、
おまけに梯子を入れるほどの隙間はなく、
ロープを引っかけることができそうな木もありませんでした。

何か都合のいい展開だなあと思いますが、
ミステリーというのはこんなものです。

いーちゃんは1人で再度、イリアに、本当に警察を呼ばないのか確認しに行き、
てる子に部屋まで送ってもらいます。
その際、てる子はいーちゃんに「あなたは一度死んだ方がいい」と言いました。

さらにてる子は、イリアの左腕には無数の自傷の跡があるという話をします。
しかし、てる子と別れた後で、昨日イリアの着替えを見たときには手首には
傷などなかったということを思い出しました。

部屋に戻ったいーちゃんは、例の絵に覚えていた違和感の正体は、
時計であると玖渚に告げました。
実は絵のモデル時には、腕時計を玖渚に修理してもらっていたのですが、
キャンバスの中のいーちゃんの腕には時計が巻かれていたのです。

その後、3人は2つの殺人事件について話し合います。
そこへ、弥生さんがやってきて重要なことを話しました。

2日前、かなみの事件でアリバイの検証をした際、
弥生とイリアは話をしていたのですが、
本当はその場にいなかった玲がいたことにしていたのです。

さらに弥生は、自分は天才たちの脳みそを使った料理を作らされるのではないか、
という恐怖について語ります。
その会話の中でいーちゃんは事件の真相に関するヒントを得たのでした。

その日の夕食会で、いーちゃんは「弥生に頼んで演技をしてもらい、
夕食を抜け出しました。
弥生の部屋のドアを開けると、そこには犯人がいました。

いーちゃんは犯人に殺されそうになりますが、
そこをてる子に助けられました。
てる子は3つ子のメイドの中でボディーガードの役割を担っていたため、
格闘の心得があったのです。

しかし、助かったと思った瞬間、てる子が背後から犯人に撃たれました。
万事休すと思いきや、そこに玖渚が現れます。

いーちゃんは、玖渚のことが好きだからやめてくれ、と犯人に頼み、
犯人――園山赤音は降参しました。
ちなみに、深夜も共犯でした。

そして食堂に戻ったいーちゃんはイリア達に説明します。
実は、4日目に発見した、赤音だと思われていた遺体は、
赤音の服を着たかなみの遺体だったのです。

首を切ったのは、入れ替わるためと、肩のところを平らにして、
踏み台として利用し、窓から脱出するためでした。

タイトルの『クビキリサイクル』は、
首を切るサイクル(周期)と、首を切ってリサイクル(再利用)する、
というダブル・ミーニングになっているのでしょう。

そして島を離れる際、真姫は、自分は2年後に死ぬ運命であると話します。

また、実はイリアと玲が入れ替わっていたことをいーちゃんが指摘します。
ちなみに、玲(本物のイリア)の左腕にも傷はありませんでした。


それから1週間後。
大学を早退したいーちゃんは、赤色がトレードマークの、
人類最強の請負人の哀川潤という高身長の女性と遭遇し、
オープンカーに乗せられます。

そして哀川は、いーちゃんが見抜けなかった事件の真相について説明します。
まず、「いーちゃんがモデルの絵に腕時計が嵌められていた理由は、
かなみではなく赤音が描いたものだったからでした。

実は、島を訪れる前に、かなみと赤音は入れ替わっていたのです。
髪を染めたりカラーコンタクトを嵌めたりして、
外見的特徴を変えていました。
かなみの車椅子は、足が何ともないのに乗っていただけでした。


以上であらすじは終わりなのですが、
入れ替わりについて少し説明(言い訳)させてください。
この本は、地の文がいーちゃんの一人称で書かれています。

地の文が一人称で書かれている場合は、
主人公の視点を通して物語を見ることになります。
そのため、ミステリーの世界では、一人称の小説の場合、
その時点で人物Aを人物Bと誤認していたら、
地の文でも「人物Bが〇〇した」と書くことが許されます。

でも、ブログの記事の場合は、
『いーちゃんは』と三人称で書くしかないので、
ちょっと問題が生じてしまいます……。

何とかして誤魔化せないか考えたのですが、
やっぱり4人も入れ替わってると無理なので、
本文の表記のままにしておきました。悪しからず。
 」

それにしても、真姫の予知能力とか、厨二病っぽいキャラとか、
色々と突っ込みどころは多いものの、
1巻は普通のミステリーっぽい内容でしたね。
後々、人外バトルものへとシフトしていくとは思えません……。

この話は2巻の「クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識」に続きます。

望月守宮「無貌伝 ~探偵の証~」のネタバレ解説

無貌伝 ~探偵の証~ (講談社ノベルス)


望月守宮さんの無貌伝シリーズの第5作、
「無貌伝~探偵の証~」のネタバレ解説です。

シリーズ第1作から4作までのネタバレもあるのでご注意ください。

前巻「無貌伝~奇譚会の惨劇~」で、
無貌に反旗を翻した魔縁・蜘蛛「=御堂八雲」が、
冒頭からいきなり、無貌の協力者である富豪20人を殺害します。

無貌たちはその件について会合を開きますが、
その中にはヒトデナシの結針を使い、
魔縁・羊と入れ替わっていた蜘蛛が混じっていました。

羊は壁をすり抜けることができるヒトデナシを持っており、
蜘蛛はあっさりと逃亡しました。

一方、榎木芹(魔縁・猫)と手錠で繋いだ状態の古村望は、
藤京駅を目指して2人で歩いていました。
しかしやがて、2人は八木沼が雇った男たちに捕まってしまいます。

ところが実は、この八木沼は魔縁・犬が化けていたものでした。
芹は、犬に殺されるかもしれないと怯えていたのですが、
意外にも犬は芹のことを無邪気に仲間だと思っていました。
望と芹は、既に重傷を負っていた犬から逃亡します。

芹は、匂色が暴走して見せた未来の記憶――
望が芹を銃殺するという未来について思いを馳せ、
「私を殺すのは、あなたなんですよ」
と、寝ている望に向かって語りかけました。

既に蜘蛛はヒトデナシ・縣操津によって眩雲塔を占拠していたのですが、
望と芹が藤京の警察署へ行くと何とそこには、御堂八雲がいました。

望と芹は、ヒトデナシ・露草に壁を食べさせて逃亡するのですが、
御堂八雲の誘導もあり、警察は2人を魔縁扱いしてしまいます。

秋津探偵事務所も警察の見張りがついていたため、
望は今野純に頼んで事務所の中を見てきてもらいますが、
中にあったのは白紙が一枚だけでした。

しかし、純の家には宛先不明で戻ってきた、
秋津からのメッセージが届いていました。
そのメッセージは暗号になっているらしく、微妙に意味不明です。

望と芹は、純の紹介で、
純が通っている学校に潜伏させてもらうことにします。
さらに、大野健太までやってきますが、
警察は健太に尾行をつけていたらしく、警察と八木沼と羊によって、
学校は包囲されてしまっていました。

望は投降したふりをして、御堂八雲の正体を校内放送をでバラします。
八木沼は逃亡しますが、羊は本気で望を殺そうとします。
しかし、そこにやってきた近松独善のおかげで望は命拾いしました。
羊は近松に殺されますが、そのヒトデナシは八雲が回収しました。

縣操津の通った後に、ヒトデナシ・踏果を流すことによって、
眩雲塔は陸の孤島と化していました。
しかし、秋津の暗号を解読した望と、芹、純、健太の4人は、
地下道を通って潜入し、露草に地面を食べさせて穴を開け、
踏果を無効化することに成功します。

ところが、そこに現れたのは化物と化した八雲でした。

望たちが踏果を無効化したところへ、飛行船に乗った秋津が現れるのですが、
実は、ここまでの出来事はすべて八雲の筋書き通りだったのでした。

八雲は建設途中の自動車専用道路の高架にも踏果を流していたため、
飛行船は途中で止まり墜落してしまいます。
さらに、そこに毒ガスを流すという念の入れようでした。

そして八雲は「結針を使って純と入れ替わり、健太を撃ち、
芹を攫ってしまいました。

その後、八雲は長靴友の会本部に現れ、
そこで八雲を待っていた近松を言いくるめ、
地下にある本のヒトデナシの中に入ります。
しかしそれは近松を殺すための八雲の罠だったのでした。

意識を取り戻した秋津と話をした望は、やはり探偵になるという決意をし、
やってきた犬と共に長靴友の会の本部へ乗り込みます。
望はそこで近松を発見し、3人で手を組むことにしました。

犬が芹に化け、芹が脱出したというニュースを流させ、
無貌が来ないかもしれないという可能性を生み出します。

望はエレベーターの中で八雲と2人きりになってしまいましたが、
エレベーターごと近松が取り囲み、八雲が脱出できないようにします。

そんな中、八雲は結針を使い、無貌のところに戻っていた芹と入れ替わります。
さらに、無貌にキスをして、予め読み込んでおいた、
警官や長靴友の会の調査官たちの死の記憶を大量に無貌に見せました。
これこそが、八雲が無貌を殺すための手段だったのです。

同じ頃、望は芹の意識が入り込んでいて無防備になっていた八雲を、
とうとう殺してしまいます。
これが、望に殺されるという、芹が以前に見た未来の映像だったわけです。

まあ、正直に言うと、この巻で八雲が結針を使いすぎたため、
芹の死の映像は八雲と入れ替わったときのものなんだろうなあ、
というのは、勘のいい読者なら気付いていたことでしょう。
しまうましたも途中で気付きました。

しかし、さすがにその後の展開は予想できませんでした。

八雲は予め爆弾をセットしておいたのですが、望は死にかけます。
それを発見した秋津は、何と、望の顔を無貌に奪わせてしまったのでした。

…………。

えええええええええっ、という感じです。
秋津、お前、何やっとんじゃあ、と思いました。
望が死んでしまった、というショックより、
そっちのショックの方が大きかったです。

望は死に、無貌に顔を奪われてしまったわけですが、

いったい次巻はどうなるのでしょうか……。
今回は無貌の空気っぷりが凄かったので、
大活躍するのではないかと予想しますが。

次巻が最終巻になる予定らしいですが、
このシリーズ大好きなので、終わってほしくないです。
せめて、完結後もスピンオフとかやってくれないかなあ……。

って、今からそんなこと考えていても仕方がありませんが。

時雨沢恵一「キノの旅」16巻「あとがき」のネタバレ解説

こんかいのあとがきは、なんと、
ぜんぶんひらがなの、さくぶんふう」です!

てんさくもこっていて、1つぶで2どおいしいです。
さいごに「あなたの、ゆめは、なんですか?
とつけくわえることによって、
なんかちょっといいはなしっぽくしているのも
むかつきますぽいんとがたかいです。

さて。
ああ、こんかいはそうきたか……というかんじですね。
すでにこのぶろぐでは
あとがきにたいするりあくしょんがねたぎれして、
なかみがすっかすかになっているというのに、
しぐさわさんはどうしてねたぎれしないのでしょうか。
うらやましいです。

ところで、ぜんぜんかんけいないですが、
「しまうました」はなまえがひらがな6もじなので、
ときどき、きじになまえをだすと、
よみにくくなってしまい、こまっているのですが、
なんとかならないでしょうか……(←自業自得です)。

時雨沢恵一「キノの旅」16巻 フォトの日々「残されたもの」のネタバレ解説

雪景色を撮りに行くために、フォトはトラックを購入し、
ソウを載せて北へ出発します。

そしてフォトは、ポプラ通りから車で丸1日以上も走った先にある、
峠にある雪の村へやってきました。
村へ行くと、大歓迎され、
フィルムが尽きるまで写真を撮り続けました。

これから村は閉ざされるので、春になったら写真を持って行こうと、
フォトとソウは盛り上がっていたのですが、
冬が終わる少し前に、あの村が大雪崩に襲われ、
村人の2割が命を落としてしまいました。

ソウの指示でちゃんと依頼されていた分の仕事を終えてから、
フォトは村へ行きました。
村の男に反発されながらも、記録を残すために、
雪崩で破壊された村を撮ります。

ひととおりの写真を撮った後、ソウの指示でフォトは中央に戻り、
それらの写真を報道機関に持ち込みました。
その結果、村の惨状を知った人達からの義援金が届いたり、
兵士の復興作業が始まったのでした。


シビアだけど、いい話ですね。

災害の映像を記録し、世間と後世に伝えるのは大切なことです。

しかしその一方で、1991年6月3日に雲仙岳で発生した、
大規模な火砕流災害では、マスコミのせいで多数の死者が出ました。
取材合戦が白熱していた当時、報道関係者が避難区域の中に勝手に入り込み、
民家から盗電しながら居座り続けていたせいで、
警戒していた地元の消防団員や警察官が火砕流に巻き込まれ殉職しました。

このように、行き過ぎた報道活動は、民間人や警察官を巻き込み、
多数の被害を出すことがあります。

2011年にも、ニュージーランドで発生したカンタベリー地震では、
日本人記者2人が立ち入り禁止となっていた現地の病院に侵入して逮捕されたり、
5人の日本人テレビリポーターが非常線を破って一時拘束されたりしているので、
現在もマスコミの姿勢は当時と変わっていないように思います。

フォトとソウは、日本のマスゴミのようにはならず、
いつまでも初心を忘れずにいてほしいです。

時雨沢恵一「キノの旅」16巻 フォトの日々「見えない真実」のネタバレ解説

写真屋のフォトと、ソウの物語です。
フォトは好きなキャラクターなのでレギュラー化するのは嬉しいのですが、
その分他のキャラクターの登場シーンが減ってしまうのは痛し痒しです。

もうちょっと刊行ペースが上がってくれたら問題ないのですが、
贅沢は言えませんね。
好きなシリーズがいくつも完結してしまったので、
定期的に新作が読めるだけでも有難いと思っておきます。

さて。
ある日、フォトは妙に字の大きい手紙で依頼を受けました。
割と近くだったこともあり、依頼を引き受けることにします。

依頼主は、小さな商店を経営する夫婦の息子でした。
さぞかし両親は感動するのかと思いきや、
写真を撮りたくないと言います。

フォトが依頼主の少年を外に呼び出すと、
ソウはその少年が極度の弱視であることに気付きました。
少年は3日後に盲学校に出発するのですが、
その前に両親と写真を撮り、両親の顔を見てみたいというのが願いでした。

フォトはその2日後、少年に、店の前に両親を呼び出してもらい、
このために新しく購入した望遠レンズで撮影しました。

早速、フィルムを現像に出し、その日の夕方には写真が届けられました。

しかし、それを見たソウは、「少年と両親の見た目が全く似ておらず、
血が繋がっていないであろうことを説明します。
おそらく少年はその真実を知らないであろうことも。

翌朝、少年が盲学校に出発する前に、フォトは店に行きました。
そして、両親に、写真を少年に見せることを告げます。

いよいよ、少年は写真を見るのですが――、
少年は生まれて初めて両親の笑顔を見ることができて幸せだと言いました。

実は、少年は既に、
間近で写真を見ても分からないくらいに視力が悪化していたのでした。

というあらすじなのですが、いやあ、後味悪いですねえ。

両親は少年に血が繋がっていないことを隠しており、
少年も自分の目が全く見えないことを両親に隠しています。
どちらも相手のことを想い、
『見えない真実』を知った相手を傷つけないように嘘をついているのですが、
その結果こんなに後味の悪い話ができあがるというのは驚きです。

また、純真無垢すぎて物事の裏を見抜けないというフォトのキャラクターが、
さらに後味の悪さに拍車をかけています。

目が悪いせいで(おかげで)両親と血が繋がっていないことに気付いていない、
というのは、実は小説の世界では古典的なテーマなのですが、
そこにカメラマンのフォトを絡めてくるのは上手いなあと思いました。

貴志祐介「悪の教典」のネタバレ解説・後編

悪の教典 下 (文春文庫)


貴志祐介さんの「悪の教典」のネタバレ解説の後編です。
前編はこちら

第7章で、早水圭介はわざと、期末テストで再び集団カンニング事件が起きる、
という噂を広めます。
それに食いついた蓮実が盗聴の電波を出すのを期待していたのです。

終業式の日、圭介は田浦潤子教諭に頼み、
保健室のベッドの下に潜み、誰もいなくなるのを待ちます。
そして盗聴器を捜して夜の学校内を探索するうちに、
屋上から盗聴の電波が出ていることに気付きます。

しかし、そこに待ち受けていたのは蓮実でした。
蓮実はカンニングの噂の裏を見抜き、
わざと盗聴の電波を出して圭介をおびき寄せたのでした。

蓮実は圭介を改造したスタンガンで気絶させ、
化学準備室で圭介を尋問します。
しかし、女子生徒を脅迫し乱暴しようとしていた柴原が通りかかったせいで、
圭介が大声を出そうとし、蓮実は圭介を殺してしまいました。

そこで、一時的にタイムカプセルを入れるためのスペースに
圭介の遺体を隠します。

しかし数日後、生き物(の死体)が大好きな生物教師、
猫山崇がその近くを探っていました。
彼は死体に集まる習性のある虫を見つけていたのです。
蓮実は圭介の死体を移動し、
代わりにアパートの大家の犬の死体を近くに埋めてやり過ごしました。

第8章では、夏休みになった途端に圭介と連絡がとれなくなったことに、
怜花と雄一郎が疑問を抱いています。

圭介から心配するなというメールが届くのですが、
その内容が不自然なものであったことから、
これは蓮実が偽装したメールなのではないか、と怜花は疑います。
蓮実の前任校の事件で、唯一蓮実を疑っていた刑事に相談しますが、
彼は何もしてくれそうにありませんでした。

一方、ハスミンはメールを送るためにわざわざ渋谷まで行っていました。
そして、そこで美彌に尾行されていたことに気付きます。

何とか誤魔化し、
最近美彌が子猫を飼い始めた久米教諭のマンションに行きます。
しかし、シャワーを浴びている隙に、
美彌が圭介の携帯電話をいじってしまっていました。

勝手に恋人の携帯電話をいじるとか最低な行為ですが、
それ以上にハスミンが最低なおかげで、どうでもいい感じです。

今は何とか言いくるめることができましたが、
夏休みが明け、圭介が失踪したことを知れば、
美彌はハスミンに疑いの眼差しを向けるでしょう。

そうなる前に、蓮実は美彌を自殺に見せかけて始末することにしました。

ここでまた、蓮実の回想があり、
蓮実がアメリカにいた頃のエピソードがあります。

ハーバード大学時代には、シリアル・キラーのクレイ・チェンバースに
自分の罪をなすりつけようとしたり、
アメリカの投資銀行時代には同僚を殺して横領の罪をなすりつけようとしたりと、
今と大して変わらないことをやっていました。
が、投資銀行の最高経営責任者、ジミー・モルゲンシュタインに追い詰められ、
蓮実は2度とアメリカに渡ることができなくなってしまいます。

失意の状態で日本に戻り、従妹の紹介で、
前任の都立高校で英語教師として働くことになったのでした。


第8章から11章までは、長い1日が続きます。
この日、蓮実の受け持つ2年4組の生徒たちは、
文化祭の準備のために学校に泊まり、お化け屋敷を作ることになっていました。

ただし、松井翼、泉哲也、芹沢里沙子など3人は、
音楽室でバンドの練習をしていました。
実は彼ら3人は蓼沼将太を学校に呼び、文化祭に出演するようにと交渉します。

その際、蓼沼は学校を退学になった事件で蓮実に嵌められたことを確信します。
さらに恋人の高橋柚香と再会し、ミュージシャンになるという夢を見ます。
……前島雅彦や坪内匠など、何人もの生徒を不登校になるまでいじめておきながら、
全く反省せずにミュージシャンとしてのメジャー・デビューを夢見るとか、
こいつはこいつで最低と言うか人生舐めている感じがします。

その頃、蓮実は美彌を屋上に呼び出し、首吊り自殺に見せかけるために、
ブラックジャック(袋に砂を詰めた凶器)で美彌を殴りますが、
殴るときに躊躇してしまったため美彌は頭から血を流してしまいます。

これでは首吊り自殺に見せかけられないので、
屋上から投身自殺したことにします。
これでよし――そう思った蓮実でしたが、
永井あゆみが屋上からの階段を駆け下りるのを目撃します。

蓮実は慌てて追いかけ、教室に入りますが、
既に永井あゆみはハスミンと美彌が屋上にいたことを
クラスメートたちに言いかけてしまっていました。

その後、蓮実はあゆみを監視し、あゆみが教室を出るのを待ってから捜しました。
屋上へ向かう扉の前であゆみを発見し、誤魔化そうとしますが、
あゆみが女の直感で真相を見抜いたため、あゆみの首を捻って殺しました。

あゆみの遺体を掃除用具入れに隠し、
クラスの雰囲気を調べるために教室の様子を盗聴します。
そのとき、蓮実は雄一郎と怜花が蓮実への疑惑について話しているのを
聞いてしまいました。

そして蓮実は、美彌とあゆみの死の真相を隠し、
蓮実へ疑惑を向けている雄一郎と怜花を始末するために、

クラスメート全員を殺害することにしました。

……えええええっ、という感じの結論ですが、
ハスミンにとっては自然な結論なのでしょう。

蓮実はスケープゴートにするために久米を呼び出し、
自分は猟銃を取りに行くなどの準備をしました。

久米をブラックジャックで昏倒させ、声を出せないようにタオルを口に詰め、
防水シート越しにテープでぐるぐる巻きにし、拘束しました。

うーん、貧弱そうな久米教諭を犯人に仕立て上げるというのは、
無理そうな気がするんですけどね……。
現時点でも既に、あゆみの首を捻って殺しているわけですし、
そんな殺し方が美術教諭の久米に可能なのか、と思います。
個人的には柴原あたりの方がスケープゴートには相応しかったように思います。

――蓮実はカンニング事件のときに使った妨害電波を出し、電話線を切断し、
校舎を陸の孤島状態にします。

蓮実はまず音楽室へ行き、そこでバンドの練習をしていた芹沢里沙子、
松井翼、泉哲也などを銃殺しました。

その後、蓮実は宿直の園田教諭と出会い、戦闘になります。
この学校で唯一、戦闘能力的に蓮実を殺害できそうなのは園田教諭だけです。
しかし、蓮実に大怪我をさせたものの、園田教諭も殺されてしまいました。

その頃、蓼沼が音楽室の松井翼たちの遺体を発見し、
復讐に燃えつつも、恋人の柚香を救おうと決意しました。
そして彼がとった行動は――陸上部の部室から槍をとってくる、というものでした。

……はあ?

という感じです。
そんなことをやっている暇があるなら、
近くの民家に駆け込んで110番通報しろよ、と思います。

この夜、学校にいた人物の中で一番馬鹿なのは、間違いなく蓼沼だと思います。
他の生徒たちが必死に学校から脱出したり助けを求めたりしようとしている中、
犯人が銃を所持していることを知っており、唯一安全圏にいたにもかかわらず、
外部に助けを求めなかったわけですからね。

蓼沼の頭がもう少し良いか慎重な性格だったら、
きっと柚香も助かっていたことでしょう。

――その頃、蓮実は校内放送をし、校内に不審者が侵入している、
できるだけ上の階へ移動し、屋上へ避難しろと呼びかけます。

もちろん生徒たちも気付きましたが、
不審者だって聞いているはずの校内放送で屋上に避難しろと指示するなんて、
正気の沙汰とは思えません。

そして教室内では携帯電話が通じないことにパニックになりつつ、
有馬透が非常ベルを鳴らします。
しかし、その非常ベルも蓮実によって止められてしまいました。

蓮実は校内放送を聞いてやってきた柴原教諭を撃ちます。
柴原は3階にある2年4組の教室へ逃げますが、集団リンチされてしまいます。
そして自分が性的な虐待をしていた吉田桃子に助けを求めますが、
桃子は柴原こそが不審者に違いないと断言します。まあ、当然ですね。

柴原はさらに教室から逃げ出し、男子トイレの中に隠れました。

さて、ここで生徒たちは3つのグループに分かれることになりました。
1つは、蓮実の言うことを聞いて屋上へ避難しようとしてた、
三田彩音、阿部美咲や清田梨奈たちのいる17人のグループ。

片桐怜花や夏越雄一郎、頭角を現してきた渡会健吾がいる、
3階にバリケードを作って立て籠もろうとしている14人のグループ。

そして、1階に下りて助けを呼びに行った山口卓馬たち4人のグループ。

この3つです。

屋上への避難組は、屋上のドアが開かないことに気付き、
そこで立ち往生しつつ、ドアの鍵穴のガムを取り除きます。

屋上への避難組は殆どが女子生徒でしたが、
その中に混じっていた男子生徒の中の1人、
田尻幸夫は稲田耀子というB級アイドルの歌を心の中で唱えていました。
ちなみに、この稲田耀子というキャラクターは、
貴志祐介作品の「ダーク・ゾーン」に登場しています。

一方、3階の立て籠もりグループでは、防火シャッターを降ろしたり
監視カメラを潰したりと、着々と準備を進めますが、
渡会健吾が仕切っていることにムカついた吉田桃子が離脱し、屋上組と合流します。

1階へ下りて助けを呼びに行った山口卓馬たちは、
鳴瀬修平が蓮実に撃たれて怪我をしました。
そこで、保健室に侵入し、AEDを使って鳴瀬修平を蘇生させようとします。
しかし、そこへ蓮実が現れ、4人とも殺されてしまいました。

そこへ、蓼沼がやってきて槍で蓮実を狙いますが、外れてしまいました。
蓼沼は蓮実の銃身を掴み、しばらく硬直状態になりましたが、
蓮実は蓼沼の首を捻って殺してしまいました。

3階に立て籠もっていたメンバーは、ブレーカーを落として灯りを消します。
その後、白井さとみと塩見大輔が渡会健吾の口車に載せられ、
窓から垂らしたカーテンを伝って地上に降りるという作戦をとりました。

しかし、校舎の冷暖房を管理するシステムのおかげで3階の窓が開いていることに
気付いた蓮実によって、2人とも銃殺されてしまいました。

その頃、時間が経ち過ぎたせいで屋上組はバラけてしまっていました。
蓮実は4階で出会った三田彩音に、
屋上の鍵だと偽って、事務室の鍵を渡して時間稼ぎをします。

そして4階に隠れていた清田梨奈を殺しました。

小野寺楓子、柏原亜里、塚原悠希、有馬透、坪内匠、脇村肇など6人が、
階段を下りて逃げようとしますが、蓮実に殺されてしまいました。

さらに蓮実は4階に隠れていた柚香を殺します。
窓の外にへばりついていた鈴木章、林美穂も殺します。
柚香が殺された現場の近くで死んだふりをしていた田尻幸夫は、
いいところまで行ったのですが、蓮実がちゃんと人数をカウントしていたため、
取りこぼしがあることに気付かれ、殺されてしまいました。

そして屋上のドアの前に固まっていた三田彩音や阿部美咲たち、
5人の少女を撃ち殺しました。

残るは、3階に立て籠もっている11人と、柴原教諭だけです。
雄一郎は怜花に告白しますが、怜花は死亡フラグを立てるなと言い、
死亡フラグを打ち消すようなことを言っていました。

中村尚志はエレキギターを利用した罠を仕掛けるために、
ブレーカーを上げ、廊下のスイッチを消しに行きますが、
そのとき蓮実に撃たれてしまいました。

蓮実は3階の生徒を燻り出すために発煙筒の煙を流しました。
さらに蓮実が襲撃してきたため、反対側のシャッターを開け、
怜花、雄一郎、渡会健吾、伊佐田直樹、木下聡、松本弘の6人は廊下に出ました。

怜花と雄一郎は階段を上がり、渡会健吾たち4人は階段を下りていきます。
普通の場合だったら、逃げ場のない上の階へ移動するのは死亡フラグです。

しかし、今回は階段の下の方に油を流しておき、
その下に脚を上向きにした椅子を並べておくという、
ホーム・アローンのような罠を蓮実が仕掛けていたため、
渡会健吾たちは殺されてしまいました。

一方、4階に逃げた怜花と雄一郎は、
窓際に設置されている垂直降下式の避難袋で逃げることを思いつきました。
しかし、2階から3階に移動しようとしていた蓮実は、
その袋が降りてきていることに気付きます。

そして、「避難袋から降りてきた2人を狙い撃ちました。
地面に落ちてきた後、まだ動いているように見えたため、
2つの遺体をさらに1発ずつ撃ちました。

3階に残っているのは、前島雅彦たち4人と、柴原教諭だけです。
蓮実は柴原を男子トイレで発見します。
弓道の心得がある高木翔を警戒していた蓮実は、柴原を囮にし、
3組に潜んでいた高木翔の放った弓矢の的にさせました。

1度しかないチャンスを失った高木翔も銃殺されてしまいます。

4組に入った蓮実は、エレクトリック・ギターに触れます。
実は、そのギターは中村尚志が仕掛けた、500Vもの電流が流れる罠でした。
それに触れた蓮実は一瞬気絶し、目が覚めたときには、
前島雅彦と、散弾銃を持った久保田菜々に見下ろされていました。

……いや、そんなことやってる暇があるなら、銃を窓から投げ捨てて、
さっさと外に逃げ出せよ!

と思いますが、雅彦や菜々が最後の方まで生き残っていたのは、
2人とも、事件が起こってからずっと移動せず、教室に残っていたからです。
そう考えると、今まで全く逃げることができなかった2人が、
このタイミングで逃げ出すというのは性格的に無理なんでしょうね、きっと。

目が覚めた蓮実は、久米教諭に罪をなすりつけつつ、
雅彦と久米の関係を菜々に暴露します。

雅彦は必死に、久米は犯人ではないと菜々を説得しますが、
菜々は蓮実に銃を渡そうとしてしまいます。
土壇場で、雅彦は蓮実が手袋を嵌めている不自然さを指摘しますが、
一瞬遅く、蓮実が銃口を掴みました。

剣道二段の菜々は銃を竹刀のように扱いますが、
蓮実に引き金を引かれ、撃たれて死んでしまいました。

最後に雅彦は、久米先生が犯人だなんて嘘だよね、と確認し、
目を閉じて殺されるのを待ちました。

その後、4組の教室を捜し回ったところ、
星田亜衣が自殺しているのを発見しました。

1階に戻った蓮実は、久米を猟銃自殺に見せかけて殺し、
証拠の品々を中庭で燃やしました。

そして、警察がやってきたところで、10章は終わります。

そして11章では、蓮実は警察に取り調べられていました。
その中には、前任校の事件で蓮実を疑っていた下鶴刑事もいました。

下鶴刑事は蓮実が犯人だと確信していましたが、決定的な証拠がなく、
言い逃れされそうになります。

しかし、「そこに現れたのは怜花と雄一郎でした。
2人は避難袋の中に、小野寺楓子と有馬透の遺体を落とし、
自分たちが死んだように偽装していたのでした。

これで蓮実も一巻の終わり――かと思いきや、
蓮実はさらに言い逃れをします。
勝てない……と意気消沈した怜花と雄一郎でしたが、
そんなとき、下鶴刑事が鑑識課員に言われ、AEDを持ってきました。

これは上巻の避難訓練のときにも書かれていましたが、
AEDには録音機能があります。
そこには、山口卓馬たちを殺した際の蓮実の声が録音されていました。

さすがにこれはどうしようもなく、罪を認めた蓮実でしたが、
全部、神の意志だった――などと言い放ちます。
これは責任能力がないと裁判で主張するための布石です。

最終章では、怜花と雄一郎が、喫茶店で真田教諭と会っていました。
さらに、実は屋上から落とされた安原美彌が生きており、
怜花が美彌に頼まれて、マンションに閉じ込められていた子猫を
助けに行っていたことも明らかになりました。

これから、蓮実が死刑になるのかならないのか、
死刑にならなかった場合、蓮実は必ず自分たちを殺しに来るだろう、
という話をしたところで、物語は終わります。


というあらすじなのですが、この本は発売当初、
終盤の展開がバトル・ロワイアルだと言われていました。

しかし、生徒同士の殺し合いを描いていたバトル・ロワイアルとは違い、
この本は蓮実が一方的に生徒を虐殺しているだけなので、
バトル・ロワイアルとは根本的に違うのではないかと思います。

(この注意書きから数行にわたり、高見広春さんの「バトル・ロワイアル」の
結末に関するネタバレがあります。ご注意ください)

個人的にバトル・ロワイアルと似ていると感じたのは、
最終的に2人の男女が死んだふりをして生還する、という部分ですね。
怜花と雄一郎の2人が生き残ったくだりは、
首輪を外して政府に死んだと思わせていた七原秋也と中川典子に
似ているように感じました。

まあ、こういうデス・ゲームはどんなに頑張っても
どこかしらは既出作品に似てしまうので仕方ありませんが。

そのせいもあって、初読のときも、しまうましたは、
怜花と雄一郎は生き残っているんだろうな、と勘づいてしまっていました。


それよりも、最終的に大量殺人に話を持っていくための
伏線の張り方が凄いと思います。

妨害電波を出してカンニングを阻止するというエピソードや、
避難訓練のときのエピソードなど、
上手く話に組み込んでいるなあ、と感心してしまいました。

「悪の教典」のハードカバー版の話はこれで終わりですが、
ノベルス版、文庫版には「秘密」「アクノキョウテン」
というショート・ショートが収録されています。

貴志祐介「悪の教典」のネタバレ解説・前編

悪の教典 上 (文春文庫)


貴志祐介さんの「悪の教典」のネタバレ解説の前編です。
後編はこちらです。

映画版ではなく原作の小説について解説していきます。

主人公の蓮実聖司は、
東京都町田市にある私立高校の英語教師です。
蓮実はイケメンで頭がよく、ハスミンというニックネームで慕われており、
学校で一番女子生徒から人気があります。

この本は、そんな蓮実聖司が、高校で起こる様々な問題を解決していく
というストーリーです(嘘はついてませんよ、嘘は)。

第1章は簡単に説明すると、
主要登場人物の紹介のために書かれた短編のような作りになっています。
キャラクターの数は多いですが、全員キャラが立っており、
この章は一貫してハスミンの視点で描かれていることもあり、
「新世界より」に比べたら非常に読みやすいです。

第1章では蓮実が大きく分けて3つの問題を解決します。

まず、受け持ちの生徒の片桐怜花から、
気の強い安原美彌(みや)が体育教師の柴原にセクハラされている、
という相談を受けます。
蓮実が美彌に訊ねたところ、万引きをネタに柴原に脅迫されていたので、
蓮実は美彌と一緒にお店に行って謝罪してきました。
さらに、柴原にも釘を刺しておきます。

次に、体育教師の園田が、鳴瀬修平を殴って怪我をさせたのですが、
鳴瀬の親が弁護士であり、おまけに園田も意地になっている面があり、
問題がこじれていました。
ちなみに、同じ体育教師でも、柴原がチンピラのような奴なのに対し、
園田は自分にも他人にも厳しい戦国武将のような人物です。

蓮実は園田に「体罰をしたことについて」謝罪させるのではなく、
「怪我をさせたことについて」謝罪させることで解決しました。
一休さんみたいですね。

最後に、蓮実はここしばらくの間、
早朝のカラスの鳴き声に悩まされていたのですが、
カラスをT字型の特殊な電線で焼き殺す」という方法で解決しました。
ちなみにその描写がやけに細かいのですが、たぶん、
作者は実際に装置を作っているのでしょうね。

1つめと2つめの問題までは、
よくある青春小説の主人公っぽかったのですが、
最後に、「あ、こいつまともじゃないな」と分かる仕掛けになっています。

第2章から3章にかけては、並行して3つの問題を解決します。

まず、1つめの問題はカンニング事件です。

片桐怜花の友人には、クラスメートの夏越雄一郎と、
別のクラスの早水圭介がいます。
そのうちの圭介が、頭がいいのにひねくれており、
保健室の田浦潤子教諭と性的な関係にあり、
麻薬の常習犯であるという問題児です。

圭介は自分が解答したテストの答えを携帯電話で「会員」に教えるという、
カンニング幇助をしていたのですが、
蓮実が校内では携帯電話を使えないように妨害電波を出し、
カンニングは失敗しました。

2つめの問題は、クラス内でのいじめ事件です。
前島雅彦という生徒が、不良の蓼沼将太が率いるグループにいじめられ、
恐喝されていました。

蓮実はこのいじめには裏があるのではないかと考え、
スクールカウンセラーの水落聡子のところへ行きました。
そして聡子を誘導尋問し、心理テストなどの結果から、
前島が同性愛者なのではないかと確認するのですが、
正直、この部分は……。

情報が古いというか偏見に満ちているというか……
結論ありきの調査をしているような感じです。
こんなインチキくさい心理テストをどこまで本気で信じているのでしょうか。

また、「性的指向」と「性的嗜好」は厳密には違うものなのですが、
作者はそれを混同している節が見られます。
発音は同じなので口頭ならば構いませんが、
小説の文章で「性的な嗜好」とか書いてしまうのは問題があると思います。
そこだけ見ても、この辺の調査がおざなりであることが分かります。

まあ、それはさておき、蓮実は、
前島が金持ちな美術教諭の久米と付き合っていることを突き止めます。
久米が前島の代わりに、蓼沼にお金を渡していることを蓮実は知ります。

そして、蓮実は蓼沼を排除し、代わりに自分が久米を脅迫することにしました。

蓮実は蓼沼をネット上のいじめのターゲットに仕立て上げ、
クラスメート全員が蓼沼を敵対視していると思い込ませます
(まあ、思い込ませるも何も、
実際に蓼沼はクラスメートの殆どから嫌われていたんですけど、
それを露骨な形で自覚させたのですね。
自覚がないのが凄いですが、いじめっ子なんていうのはそんなものです)。

そして避難訓練の日がやってきます。
救助袋やAED(自動体外式除細動器)の使い方に関する説明があります。

その後、教師だけで学校に不審者が侵入してきた際の訓練をしていたのですが、
そのとき教室では蓼沼が大暴れしていました。
駆け付けた蓮実を蓼沼はカッターナイフで切り付けますが、
蓮実は如才なく防刃チョッキを用意していたので助かりました。

この事件のせいでとうとう蓼沼は退学になります。

数日後、蓮実は久米のポルシェやマンションを借り、
安原美彌とのデートに使いました。
ちなみに泊まりであり、「露骨な描写があります。
愛撫だけで3時間とか、ハスミンマジパねぇッス!


久米が未成年と付き合っていることをネタにして脅迫しておきながら、
久米のポルシェやマンションを未成年とのデートに使うという
ハスミンの鬼畜っぷりが凄いです。

それにしても、蓮実と美彌、久米と前島、潤子と圭介、という風に、
教師と生徒という組み合わせのカップルが既に3組もいるのですが、
この学校はいったいどうなっているのでしょうか。
乱れきっています。

3つめの問題は、モンスター・ペアレント問題です。
清田梨奈という受け持ちの生徒の父親がモンスター・ペアレントであり、
娘はいじめられている、
と蓮実に難癖をつけることを生きがいにしていたのですが、
相手が悪かったですね。
蓮実は何と、「清田梨奈の家に放火をし、父親を殺害してしまいました。
とうとう人を殺したか……という感じですが、こんなのは序の口です。


第4章では、
安原美彌がある教師と交際しているという噂について、
真田俊平教諭が蓮実に相談してしまいます。
あーあ、死亡フラグ立てちゃったなあ……という感じです。

蓮実は真田を泥酔させて真田の車に乗せ、
自分が車を運転して学校まで行き、
そこにいた堂島智津子教諭を轢きました。
堂島は以前から蓮実とトラブルを起こしていたので、
ついでに始末されてしまったのでした。

今回は2人とも命は助かりましたが、真田は逮捕され、
堂島は蓮実を陥れるためのビラを作っていたことが明らかになり、
学校を退職しました。

第5章では修学旅行で京都に行きます。
例の3組の教師と生徒のカップルは、
旅行先のホテルでもやってくれてました。

第4章から第5章にかけて、ちょくちょく回想シーンが挟まり、
蓮実聖司の過去が読者に明かされます。

蓮実聖司は理想的な両親に育てられましたが、
ハスミンが同級生の女子に猥褻な行為をしたことを知った教師を殺したり、
自分より人気のある男子生徒を殺したりするという、
絶望的な子どもに育ってしまっていました。

蓮実聖司は生まれながらのサイコパスだったわけです。

蓮実聖司は、自分の正体を知った実の両親を殺害し、
自分も殺人鬼に襲われたように見せかけました。
このとき、蓮実聖司は中学2年生でした……。

ハスミンは転校先で、ある女子と友人になります。
その女子に乱暴して自殺に追い込んだ男に復讐したところだけは
唯一人間らしいエピソードに見えますが、
単に靭帯実験をしたかっただけのようにも見えます。
 (↑人体実験の誤変換なのですが、偶然にも内容と一致しており、
  せっかくなのでこのままにしておきますw)

第5章の終わりに、蓮実の前任の高校の同僚が話しかけてきたため、
それを聞いていた釣井正信という老教諭と、
片桐怜花、早水圭介、夏越雄一郎たちがそれぞれ、
蓮実の前任の高校について調べます。

すると、その高校では、
4件もの自殺連鎖が起こっていることが明らかになりました。
その件について
「うちだったら、絶対、大騒ぎだぜ」
と雄一郎が言っているのですが、
現時点で既にお前らの高校の方がよっぽど酷いだろ!
と突っ込みたくなります。

自殺したことになっている4人は、皆、
快活な人気教師の蓮実に疑いの眼差しを向けていたのだそうです。

カンニング事件のときに、
学校で蓮実に盗聴されているのではないかと疑っていた圭介は、
さらに深入りしようとします。
うわあ……完全に死亡フラグ立っちゃってるよこれ、という感じです。

一方、釣井教諭は、生徒から軽んじられている駄目教師なのですが、
なぜか怜花だけは彼のことを怖がっていました。

実は、釣井は「10年前に、妻が灘森校長と不倫していることを知り、
校長の目の前で妻を殺害した上で、
校長にその死体を埋めさせていたという過去があったのでした。
そのため、校長は釣井に逆らうことができなかったわけです。

釣井は蓮実の前任の高校に出向くのですが、それを蓮実に知られます。
蓮実は釣井を終電の中で首吊り自殺に偽装して殺害しました。

釣井は第1章からずっと、ラスボスっぽい雰囲気を醸し出していましたが、
怪物の相手をするには力不足でした……。

釣井から解放された灘森校長が、全校生徒の前で熱弁を振るい、
拍手喝采されたところで、
」前編は終わります。

この記事は後編に続きます。
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