蘇部健一「赤い糸」第5話「ふたりは生まれたときから、運命の赤い糸で結ばれていた」のネタバレ解説

今回が最終話です。

24歳になる、主人公の「彼女」は、
運命の出会いを期待して、
両親が結ばれたきっかけとなった、
あまり可愛くない天使のブローチをつけて出かけました。

神保町の古本街へ行った「彼女」は、
そこで館野栄輝「堕ちた天使」というタイトルの本を購入し、
読み始めました。

その話が、第4話の「落ちこぼれの天使」でした。

つまり、第4話は作中作の話だったわけです。

そしてその話は、4年前、第3話で「彼女」が探していた、
池田良雄の「キューピッドの失敗」という話そのものでした。

さらに、その本には「縁結びの神様」という短編も収録されていたのですが、
それは第1話で「彼女」が経験した内容にそっくりでした。

編集者をしている「彼女」は、「堕ちた天使」の作者を捜しに、
「堕ちた天使」を出版した川野書房を訪れます。

そして館野栄輝はドアの向こうにいると川野書房の人から教えられたのですが、
実際にドアを開けると、そこにいたのは「第2話で『彼女』が模型教室で会った、
『綾瀬幸太郎』でした。

しかしよく話を聞いてみると、彼は実際には綾瀬孝太郎ではなく、
綾瀬孝太郎の親友であり担当編集者でもある土門でした。

第1話で綾瀬孝太郎と『彼女』を赤い糸で結びつけるイタズラをしたのも、
この土門という男でした。

第2話の模型教室にいたのも土門であり、
綾瀬孝太郎と土門は同じTシャツを持っていたため『彼女』は、
土門のことを綾瀬孝太郎だと勘違いしていたのでした。

ちなみに、このタイミングで『彼女』の名前が小梅果穂であることが判明します。

果穂は運命の相手である綾瀬孝太郎の連絡先を土門に尋ねますが、
綾瀬孝太郎は明日アメリカへ発つ予定になっており、
携帯電話も解約しアパートも引き払っており、
綾瀬孝太郎と会うのは絶望的でした。

果穂は諦めて会社へ帰ることにしましたが、
その途中、男とぶつかりバッグの中身をぶちまけてしまいました。

すると男は、果穂の前にあまり可愛くない天使のブローチを差し出しました。

実は今日の午前中、果穂は道路の溝にヒールを挟み、転んでいたのですが、
そのときに落とした天使のブローチを届けようと、
男は果穂のことを探していたのでした。

そして、このときまで果穂も知らなかったのですが、
そのブローチの中には、赤い糸で結ばれた赤ちゃんが2人写っていました。

さらに、その写真を男も見たことがあると言い、
果穂に見せるところで物語は終わります。


というあらすじなのですが、ちょっと分かりにくい部分もあったので、
時系列を整理してみようかと思います。

まず、「果穂と幸太郎は同じ病院の産婦人科で1日違いで生まれました。

果穂の両親と幸太郎の両親は仲が良くなり、
親同士は将来2人を結婚させようとしていたくらいなので、
そのとき果穂と幸太郎が赤い糸で結ばれた写真を撮ったのでしょう。

果穂は憶えていませんでしたが、
小さい頃には2人で遊んだこともありました。

しかし幸太郎の父親は占い師の椿鞠絵の助言で、
京都へ引っ越し疎遠になってしまいます。

11歳になった果穂は、運命の相手の名前は綾瀬幸太郎である、
と占い師の椿鞠絵に占ってもらいます。

中学の修学旅行のとき、天使(?)の土門が、
幸太郎の赤い腹巻きの糸を解いて果穂の指に結び付け、
2人を知り合わせようとしましたが、それは失敗してしまいました。

20歳になった果穂は、幸太郎がいるはずの模型教室へ行きますが、
そこにいたのは土門で、果穂は土門のことを幸太郎と勘違いしてしまいます。

大学を卒業した果穂は、
幸太郎が池田良雄というペンネームで書いた『キューピッドの失敗』を読み、
池田良雄に会おうとします。

しかし、そのとき幸太郎は父親の会社が倒産したことをきっかけに、
大学を中退してしまっていたので果穂は幸太郎に会うことはできませんでした。

というか、このとき実は果穂の家のすぐ隣のアパートに
幸太郎が住んでいたんですけど、どちらも気付きませんでした。

で、24歳になった果穂は、
赤ちゃんのときに撮られた写真の入った天使のブローチを持って出かけ、
ヒールの踵を折ってしまいます。

そのとき、果穂が落とした天使のブローチの中の写真を見て、
幸太郎は果穂を捜します。

一方、果穂も『堕ちた天使(=キューピッドの失敗=落ちこぼれの天使)』の
作者である、幸太郎を捜していました。

そして、幸太郎と果穂は今度こそ会うことができたのでした。

それまで無関係と思われていた話がパズルのように嵌まり、
カタルシスを得ることができる話だったのではないかと思います。

蘇部健一「赤い糸」第4話「落ちこぼれの天使」のネタバレ解説

今回は恋のキューピッドというか、天使が登場します。

いえ、これは何かの比喩ではなく本当に天使なのです。

野辺寛太は体重100キロ超の天使ですが、
運命の赤い糸が見える以外は普通の人間と
変わらない生活を送っていました。

ある田舎の高校の2年B組に所属する、
名取順平と福本瑞樹の2人が運命の赤い糸で結ばれているのに気付いた野辺は、
順平と瑞樹を恋人同士にしようと画策し始めます。

ところが、この野辺という天使は何をやらせても失敗ばかりの駄目天使なのです。

ある日の放課後、
野辺は瑞樹の親友で、瑞樹と同じくバスケット部に入っている牧原奈緒美に会いに行き、
順平と瑞樹をくっつける手伝いをしてもらうことにしました。

が、その途中順平と会ったので、瑞樹は順平のことが好きらしいと吹き込みます。
すると、順平は怒り、瑞樹を見ると逃げて行ってしまいました。

野辺が奈緒美に話しかけると、気をきかせた瑞樹が席を外し、
2人きりになることができ、協力してもらう約束をしました。

それから2週間後の日曜日、野辺は順平を誘って、
瑞樹の出場するバスケットの試合を見に行きました。

ところが、瑞樹がシュートをしようとした瞬間、
野辺が順平の上に熱いコーヒーをこぼしてしまい、
順平は「あちッ!!」と叫んでしまいます。
そして――瑞樹はシュートを外し、試合に負けてしまいました。

その後、順平が瑞樹に謝りに行くと、瑞樹は着替え中だったため、
覗きをしていたような感じになってしまいました。

野辺は順平に、瑞樹の綺麗なフィギュアを作ってプレゼントしたらどうかと助言します。

で、順平は見事なフィギュアを完成させます。
すると野辺は、まず奈緒美から瑞樹に宝探しのような地図を渡してもらい、
ゴール地点にフィギュアを置いておき感動させる、という作戦をとることにしました。

ところが……瑞樹が宝探しのルートを辿る途中の道にある、
「肥溜め注意!」の看板を野辺が抜いてしまったせいで瑞樹は肥溜めに落ちてしまいました。

で、後日野辺と順平は事情を瑞樹に説明して、
すべてを水に流すための鍋パーティーを開くことにしました。

しかし、ここでも野辺は余計なことをします。

鍋パーティーをしに行く途中、「順平と瑞樹をエレベーターの中に閉じ込めてしまったのです。

順平は瑞樹に謝りますが、これまでの出来事に責任を感じて、
自分は疫病神だから近づかない方がいいかもしれないと言いました。

おまけに野辺はエレベーターを止めたまま居眠りしてしまいます。

やがて瑞樹はトイレに行きたがったので、瑞樹一人に恥をかかせまいと、
順平はズボンとパンツを下ろします。

そしてその最悪のタイミングでレスキュー隊がドアを開け、大騒ぎになってしまいました。

瑞樹の証言で順平が瑞樹に痴漢しようとしたという誤解は解けたものの、
順平は今度こそ瑞樹と関わらないと決めました。

が、瑞樹は、バスケットの試合で順平が『あちッ!!』と叫んだ時には、
既に瑞樹の手からボールは離れていたことを説明し、
2人は告白しあって、やっと付き合うことができました。

しかし実は、野辺が奈緒美に相談しに行ったあの日、
順平は瑞樹にラブレターを渡そうとしていたので、
野辺が余計なことをしなければ普通に付き合っていたんですよねー。

おまけに、エレベーターを止めたことで警察から怒られた野辺は、
帰りに空き缶を蹴飛ばします。

そしてその空き缶は、キスをしかけていた順平と瑞樹のところへ飛んで行ってしまいました……。


というあらすじなのですが、野辺は最後まで駄目駄目な恋のキューピッドでしたね。

一生懸命なのは分かるんですけど、一生懸命なだけじゃ駄目なんですよね……。

蘇部健一「赤い糸」第3話「出逢わなかったふたり」のネタバレ解説

今回は、もしも運命の2人が出会わなかったらどうなるか、
というテーマの話です。
出版社に勤める女性編集者の小梅(こうめ)は、
まだ他の出版社が目をつけていない才能の持ち主を探すために、
同人誌に掲載された小説を読み漁っていました。

そして、ついにW大学の同人誌に載っていた、
池田良雄という作者の「キューピッドの失敗」という作品に目をつけました。
ところが、池田良雄は既にW大学をやめてしまっており、
連絡先を知るのも困難な状態でした。

そこへ、小梅の母親が病気になり、
しばらく看病のために実家に帰らなければならなくなりました。
さらにショックなことに、
小梅は上司の命令で編集部から営業へ転属させられることになりました。

翌朝、高熱を出した小梅は会社を休むことにし、病院へ行きました。
内科へ行くには、床の赤いラインを辿って行けばいいと言われ、その通りにします。

今回の「赤い糸」は、この床の赤いラインです。
この本は「赤い糸」がテーマの連作短編集ですが、
やっぱり3作目ともなると大分苦しくなってきていますねw

その頃、池田良雄も病院に来ていて、反対側から赤いラインを辿っていました。
そのまま小梅が歩いていれば池田良雄とぶつかるはずだったのですが、
小梅が迷子犬の写真に目を止めて立ち止まってしまったせいで、
結局2人は出会わないまま終わってしまいます。

何じゃそりゃ、という感じの話ですけど、
一応、最終話ではこの話の伏線が回収されます。

蘇部健一「赤い糸」第2話「運命の人、綾瀬幸太郎」のネタバレ解説

11歳の果穂には、会社の社長をしている父親、静男がいます。
静男は「顧問占い師」である椿鞠絵という女性に、
会社の経営について占ってもらい、アドバイスをもらっていました。

それを聞いた果穂は、椿鞠絵に、
自分の運命の相手について占ってもらうことにしました。

占いに必要な果穂の情報については、
静男が事前に椿鞠絵に渡しておいてくれました。
本当は静男と2人で行く予定だったのですが、
静男に急に仕事が入ったということで、
果穂は1人で吉祥寺にある椿鞠絵の邸宅へ行きました。

すると椿鞠絵は、2通の封筒を果穂に渡します。
1通は家に帰ってからすぐに開け、
もう1通は20歳の誕生日に開けるようにと言われました。

また、帰り際に、家族旅行の行き先を変えた方がいいと言われます。

家に帰って、最初に渡された方の封筒を開けると、
そこには「綾瀬孝太郎」と書かれていました。

家族旅行の行き先の途中の高速道路で大きな事故があったことを知った果穂は、
椿鞠絵のことをすっかり信じてしまい、
言われたとおりにもう1通の封筒は20歳の誕生日になるまで開けないことにしました。

そして――9年後。
20歳になった果穂が封筒を開けると、
美術館か図書館のような建物の絵が描かれていました。

その数日後、母親に頼まれたケーキを買いに行く途中で、果穂はその建物を見つけます。
そこは美術館で、「フィギュア・ジオラマ展」を開催していました。

美術館の中を見て回ると、「『運命』綾瀬孝太郎」というタイトルの作品がありました。
パンダのTシャツを着た青年が、森の中で赤い糸を辿っているという構図でした。

果穂が美沙子という親友に相談すると、
美沙子はそのジオラマの作者である綾瀬孝太郎についてネットで調べてくれました。
綾瀬孝太郎は毎週土曜日の午後、秋葉原で開かれている模型教室に通っているのだそうです。

果穂には野島という彼氏がいたのですが、
綾瀬幸太郎と会うのに彼氏持ちの状態でいるわけにはいかないと、
野島に別れを告げてしまいます。

そして、問題の模型教室へ向かう途中、
果穂は「椿鞠絵が詐欺の容疑で逮捕されたことを知りました。

ショックを受けた果穂は、模型教室には行かずに家に帰りました。

静男によると、椿鞠絵は本物の能力を持った占い師だったのですが、
70歳になった数年前を境に能力を失ってしまったのだそうです。
椿鞠絵は顧客にそのことをちゃんと説明し、静男は既に手を引いていました。
しかし中には、それでも椿鞠絵の占いにすがりたがる者がいて、
その人達が損をした結果、今回詐欺の容疑で逮捕されてしまったのだそうです。

その話を聞いた果穂は、思い切って、綾瀬孝太郎とは誰なのかと尋ねました。
静男と果穂の母親がグルになって綾瀬孝太郎と会わせようとしたのだろうと問い詰めます。

すると静男は、綾瀬孝太郎というのは果穂と1日違いで生まれた男の子のだと説明しました。
果穂の一家と、綾瀬孝太郎の一家は、かつては家族ぐるみの付き合いをしていました。
しかし静男と同じく椿鞠絵の顧客だった綾瀬孝太郎はの父親は、
京都へ行けば成功するという占いの結果を受けて京都へ行き、
家族ぐるみの付き合いは終わりました。

しかし果穂と幸太郎の両親は2人を結婚させたがっており、
椿鞠絵にそのように占ってもらっていたのです。
20歳になってから開ける方の封筒は、少し前に中身をすり替えていたのでした。
そして美術館でジオラマ展を開き、母親の誘導で果穂にそこへ行かせたのでした。

しかし、孝太郎の父親は、能力を失った椿鞠絵とまだ付き合いを続けており、
そのせいで幸太郎の父親の会社は倒産してしまったのだそうです。
『いずれ、この埋め合わせはさせてもらうつもりだ。
おまえに最高の花婿を見つけてやるという形でな』
と静男は言いましたが、
『おとうさんなんて、大っきらいッ!』
と果穂は静男にバッグを投げつけました。

……そりゃあショックですよね。
というか、最っっ低の父親ですね。
しまうましたは、読んでいて静男に殺意が湧きました。
この本のジャンルがミステリーだったら、
これを理由に果穂が静男を殺していてもおかしくないと思います。

しかし、諦めきれなかった果穂は、それでも次の土曜日に模型教室へ行きました。

すると、そこにいたのは、体重120キロくらいの、
パンダのTシャツを着た太った男でした。
それを見た果穂は、『ごめんなさい、まちがえました』とつぶやき、逃げ出したのでした。


というあらすじなのですが……1話に続いて、2話も酷い(褒めています)オチですね。
それでも。
それでも、最終話までは読んでほしいです。

蘇部健一「赤い糸」第1話「赤い糸を辿って」のネタバレ解説

赤い糸 (徳間文庫)


中学2年生の女子の主人公は、修学旅行の宿泊先のホテルで寝ていたところ、
左手の小指が引っ張られたような気がして目を醒ましました。

すると、左手の小指に赤い糸が結び付けられており、
その糸は部屋の外へ続いていました。
主人公は隣の布団で寝ていた親友の樹里を起こし、相談します。

すると、樹里は赤い糸は男子の誰かと繋がっているのではないかと考え、
赤い糸を辿ってみることにしました。

赤い糸は屋上へ続いており、隣の建物の屋上のドアに続いていました。
樹里は安全を期して連絡通路を通って隣の屋上へ行き、
主人公は屋上の手摺りに乗り、1メートルほど離れた屋上へ移りました。

赤い糸は「楓の間」に続いていました。
「楓の間」は、修学旅行に来ている男子校の中学生たちが泊まっている部屋です。
赤い糸は、可愛い顔をした男の子の「腹巻きに繋がっていました。
赤い腹巻きの糸がほつれていて、それが主人公の左手の小指と繋がっていたのです。

すると目を醒ましたその男の子は泣き出してしまいました。
その腹巻きは、亡くなった男の子の母親が最後に編んでくれた形見だったのです。

それを知らず、土門という男子生徒が腹巻きの糸を解いた主人公と結び付けていたのでした。

居たたまれなくなった主人公は、自分が悪いわけでもないのに『ごめんなさい……』と呟き、
逃げ出したのでした。


というあらすじなのですが、「いい意味で酷いオチの話ですね。
オチの直前までは素敵な恋愛が始まりそうな雰囲気だったのに、
最後の最後にこれですからね。

蘇部健一さんはこういう作風の作家さんなのですが、それを知らず、
タイトルと表紙に騙されて恋愛小説だと思って購入してしまった人は
困惑したのではないでしょうか。

しばらくこんな話が続きますけど、
最終話まで読めば『素敵な恋愛小説を読めた!』という
読後感になるのではないかと思うので、最終話まで頑張って読んでみてください。


(赤い糸 1話 2話 3話 4話 5話
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