時雨沢恵一「キノの旅」7巻エピローグ&プロローグ「何かをするために」のネタバレ解説

いつもは短いエピローグが今回は短いです。

今回は、まだキノが旅に出る前、
師匠と森の中の家に住んでいた時の話です。

ある日の朝、キノは朝食を作ろうかと言いますが、
メシマズのキノの料理を食べたくない師匠は、
私がやりますよ、と言いましたw

キノは師匠に射撃を教えてもらいます。

師匠はエルメスに、キノのパースエイダーの撃ち方は、天才的です、
と言いました。
しかし、パースエイダーをうまく撃てるだけじゃ、
撃ち合いや殺し合いで生き残れないので、
師匠はそれを心配していました。

射撃訓練の後は、エルメスにモトラドの乗り方を教えてもらいます。

それが終わると、師匠は全自動連射式パースエイダーで、
200発以上の弾を撃って木を倒しました。

師匠はキノに「キノ」と呼びかけますが、
キノはまだそれを自分の名前として上手く認識できませんでした。
また、初代キノに倣って、
一人称を“私”から“ボク”に変えようとしていました。

ちなみにこのとき、キノが師匠のことを
“ししょう”という名前だと思い込んでいたことが発覚しましたwww

やがて、火薬屋の男が火薬と燃料を届けに来ました。

男はリンゴのお茶をご馳走になった後、
壁にかけられた茶色のコートを見て、
先日これとまったく同じコートを着た人を見ましたよ、と言いました。

彼の国では、旅に使えるような丈夫なコートはこれしかないから、
皆着て行くのだそうです。

それを聞いたキノは、その国にモトラドで行けますか、
と聞きました。
モトラドなら、1日で行けるかもしれない、と言われ、
キノはその国に行きたいと師匠に言いました。

師匠はキノに、モトラド用の黒いジャケットと、
黒いパンツをプレゼントし、
さらに何丁も持っているパースエイダーのうちのひとつを、
キノに貸しました。

翌日の朝、キノはエルメスに乗って出発し、
日が暮れる前にその国に到着しました。

キノは番兵に茶色いコートを見せます。
番兵はコートについていた住民番号を照合し、
コートの持ち主の名前は“キノ”だと言いました。

キノは涙を流しながら、その人の家族に会わせてください、
と頼みました。

親切な老人と中年の女性が、農作業用のトラックでやってきて、
キノを初代キノの家まで案内してくれました。

キノは、初代キノの母親の女性に、×××××という本当の名前を名乗り、
2人だけで話をします。

キノは涙を流しながら、事情を説明しました。
教えてくれて、ありがとう、と女性は言いました。

女性がいれてくれたお茶をキノが飲むと、
目の前の世界が、ゆらりと傾きました。
お茶にしびれ薬が入っていたのでした。

女性は、床に倒れたキノの首を絞め、
あなたさえいなければ、私の息子は死ななくてすんだのに、と言いました。

しかし、キノは、今は……、ボクがキノだ……、
二度も……、殺されて……、たまるか……、と言い、
パースエイダーのバレルを女性の口に入れ、撃ち殺しました。

次の日の朝、キノが目を覚ますと、
昨日キノを初代キノの家まで案内してくれた中年女性と老人の家でした。
初代キノの母親の葬式と埋葬は、昨日のうちに済んだと言われました。

キノの髪は血で染まってしまったので、短く切られていました。

この国では“正当防衛”は罪にならないし、
“自殺の幇助”の罰則は国外追放だと言われました。

キノが外に出ると、中年女性は茶色のコートをキノに渡しました。
キノが持ってきた、そのコートでした。
初代キノの母親が、キノに贈呈するようにと、メモを残していたのでした。


師匠が待つ森の中の家に帰ったキノは、
すべきことは、すみましたか?
と聞かれ、『はい』と答えました。

キノは師匠に、強くなりたいです、と言い、
師匠の旅の話を聞かせてもらいました。

というあらすじなのですが、初代キノの母親が、
茶色のコートをキノに譲る、というメモを残していたということは、
最初からキノに殺してもらうつもりで、
お茶にしびれ薬を入れて首を絞めたのでしょうね……。

帰ってこない息子を待ち続けるのに疲れていた、
というのもあったのでしょうが、自分の命を使って、
キノに人を殺す経験をさせようとしたのかもしれませんね。

時雨沢恵一「キノの旅」7巻6話「嘘つき達の国」のネタバレ解説

キノとエルメスは、旅人が使える城門が1つしかない国に入国しました。

すると、森の中から30歳ほどの男が走ってきて、
どこかで僕の恋人に会わなかったかい? と聞かれました。
男の恋人は5年前にこの国から旅に出ていて、
男は恋人が帰ってくるのを待っているのだそうです。

その間に、エプロン姿の家政婦の女性が小走りにやってきて、
男に上着をかけてあげました。

森の中には一軒の家があり、男と家政婦はそこに住んでいました
(ちなみにこのシーン、しまうましたの持っている初版本では、
「一見の家」になっているという誤字があります)。

次の日の朝、町の中にあるレストランで、
城門脇の森で暮らしている男の人のことをエルメスが聞くと、
10年以上前から彼の友人である30歳ほどの男が事情を説明しました。

この国には5年前まで横暴な王様がいて、革命がありました。

当時、森に住んでいる男も、その友人も、警察官で、
革命の主要メンバーでした。

男には国はずれに住む農家の娘の恋人がいましたが、
革命の決行の直前に、男は恋人に嘘をつき、別れを告げました。

男や友人は宮殿に突入し、逃げようとしていた王一家の車を襲い、
爆弾を投げ込んで車を吹き飛ばしました。
そして、車の中にあった王一家の死体のうち、
ドレスを着た王女は、男の恋人でした。

王女はお忍びで町に来ていて、男と恋仲になっていたのでした。

男は頭がおかしくなり、医者が、あなたの恋人は旅に出てしまいましたが、
必ず帰ってくるから待っているように言っていましたよ、
と嘘をついたのを信じ、森の中に住み始めました。

新政府は、3年前に行き倒れになっていた国外からやってきた旅人の女性を、
家政婦として雇い、男の身の回りの世話をさせることにしました。

次の日、キノとエルメスは出国しようと城門に向けて出発しました。

そこで、家政婦に呼び止められ、ログハウスでお茶を出されました。
キノは、なんていうお茶ですか?
と用心深く聞きましたが、キノに出す分を男が横から取って飲み、
おいしいよ、とキノに笑顔で言うと、ようやくキノも飲みました。

エンジンの音が聞こえたような気がする、と家政婦が言うと、
男は家を出て行きました。

家政婦は、「自分が5年前まで王女だったことをキノに教えるために、
男を一時的に追い出したのでした。

民衆に紛れたスパイからの報告で、家政婦は一人の田舎娘として、
男に接触して恋仲になり、男を本当に愛してしまいました。
しかし、男が理由を言わずに別れを告げたことで、
すぐに革命が起こると知り、元王女は父に伝えました。

王一家は身代わりを残して国を去りましたが、
隣国にいた王女は、スパイから、男が“王女”を殺してしまい、
病んでしまったこと、彼を世話する人が必要とされていることを知り、
旅人になって入国し、家政婦として雇われるようにしむけてもらいました。

家政婦はまだ男を愛していて、男は恋人を待っていて、
そばにいられるのだから、幸せです、という意味のことを家政婦は言いました。

男が戻ってきて、キノとエルメスは城門を出ました。

そこへ、男が追いかけてきて、私は幸せだ、と言いました。
王家のスパイだった友人の生き方も、
男を利用しただけではなかった愛する人との生活も、今は何も壊すことはない、
と男は言いました
それを聞いたエルメスは、ここの国の人はみんな嘘つきだ、と言いました。


というあらすじなのですが、いくつもの嘘が重なって成立している幸せですね。

でも、「王一家の身代わりで殺されてしまった人達が可哀相な気がします……。

時雨沢恵一「キノの旅」7巻5話「森の中のお茶会の話」のネタバレ解説

ある森の中の橋で釣りをしている老人がいました。

師匠と荷物持ちさんがそこに通りかかり、
老人に誘われて、森の中に一軒だけある老人の家に行きました。

老人の妻である老婆がお茶を入れ、
師匠と荷物持ちさんはお茶を飲みました。

そして、師匠と荷物持ちさんは突然、家の中を破壊し始めました。

老人が箒の柄を持って荷物持ちさんに振りかぶると、
師匠は老人をパースエイダーで撃って射殺しました。

老婆は長い悲鳴を上げた後、すっと立ち上がり、
箒を手にしました。
師匠は2発目を放ち、老婆を殺しました。

いくらなんでも、撃つのが早すぎでは?
と荷物持ちさんが言うと、師匠は、
箒を拾わずに、先端をよく見なさい、と言いました。
箒の柄の先には小さな穴があり、
師匠の指示で荷物持ちさんが箒を振り下ろすと、
猛毒が塗ってある大きな針が飛び出し、壁に刺さりました。

お茶にも毒が入っていましたが、
師匠と荷物持ちさんは予め毒消しを飲んでいたので平気でした。

師匠と荷物持ちさんはお宝を探し、
人間の死体を使って作られた家具や壁紙を発見しました。
老人と老婆が旅人を殺し、その死体で作ったのでした。

師匠と荷物持ちさんは、旅人が持っていた貴金属を探します。

しばらくして、『ありがとう』『ありがとう』という声が立て続けに聞こえました。

荷物持ちさんが、今まで殺された旅人達の幽霊の声だと言うと、
師匠は突然、出発です、と言って車に乗り込みました。

今俺の背中に憑いてきたヤツはどうしましょう?
と荷物持ちさんが聞くと、師匠は荷物持ちさんの背後の空間へ発砲し、
車の後部ガラスが一瞬で砕け散りました。
師匠はギアを入れると、車を急発進させました。

師匠が撃った弾丸は植木鉢に当たり、茶色い破片と黒い土の中に、
きらきらと光るきれいな宝石がたくさん転がっていました。


というあらすじなのですが、「幽霊が怖いのに、
絶対にそれを認めない師匠が可愛かったですwww

時雨沢恵一「キノの旅」7巻4話「冬の話」のネタバレ解説

ベッドに横たわっている初老の女性の周囲に、
キノを含めて5人の人間がいました。

キノ以外の4人は初老の女性に話しかけ、
ただ息をしているだけだった初老の女性が、
ゆっくりと、かすかに口元に笑みを浮かべました。

その時、キノがハンド・パースエイダーで初老の女性の胸を3発撃ち、
殺しました。

4人はキノのことを異教徒と呼び、ここから立ち去れと言い、
キノは素直に部屋を出ました。
そのキノの背中に、4人のうちの1人が、「ほんとにありがとうね」
と声をかけました。

城門に行くと、番兵から、
“同胞を殺めし異教徒よ! 今すぐこの国から立ち去れ!”
と言われますが、キノがパースエイダーの入った袋を番兵の足下に置き、
城門から出ると、番兵は親しげな口調で、いつもと同じです、
と言いました。

キノは回廊を歩き、森の中にある大きな建物に入り、
建物の中にいたエルメスに挨拶をしました。

次の日の朝、ディスという40歳ほどの男が建物を訪ねてきました。

ディスは旅人で、この国の事情を知らずにやってきたのだそうです。

キノはディスに、この国には、独自の宗教上の理由から、
“治療”という行為が存在しなかった、と説明します。
けがも病気も、一切多いんんは手を出さず、自分だけで治します。

そのため、重傷や、重病になった場合、
ほとんどの人は、苦しみ抜いた末に“自然に”死んでしまいます。

この国の人達の中に、どう見ても絶対に助からない人を、
これ以上苦しめないように安楽死させる要望が生まれました。

しかし同胞を殺すことはできず、それは地獄への道でした。
自然死以外に天国へ昇れる手段が、一つだけあり、
異教徒に殺された者は、問答無用で天国に行けることになっていました。

国で旅人の滞在場所を“国外”に作り、病人を殺すことを依頼し、
報酬の食料などを約束して、実行後は退去処分にします。
永住を防ぐために、1人最長で90日です。
キノは30日を過ごし、これから雪が減り走れるまで滞在する予定でした。

翌朝、“異教徒が攻めてくる”ことを国民に知らせる鐘の音が聞こえました。

キノがフライパンに作った料理をディスは食べ、
今日は俺が行く、と言いました。

実は、ディスは医者で、故郷では“どうしても救うことができない患者”を、
安楽死させ、その結果、故郷を国外永久追放されていました。

ディスは昨日一晩考え、治療することにしました。

建物を出るとき、ディスは大声で、さっきの料理、とても美味かったよ!
と言いました。

夕方になり、番兵が建物を訪ねてきて、「ディスが国の人に
“危害”を加えましたが、幸いなことにたいしたことはなく、
その人は本来持っている自然治癒力を発揮して快方に向かっている、
という意味のことを言いました。
ディスは拘束され、罰として今現在病気やけがと戦っている同胞へ
謝罪することになりましたが、同じ行為を繰り返すようであれば、
この罰は永遠に続く、と言いました。

ディスは、食料の半分を外にいる異教徒、つまりキノに届けてほしい、
と言ったのだそうです。
番兵が置いた木箱には、いつもどおりの食材が入っていました。

キノはディスに、あんなモノを食べさせてすいません、
笑顔で美味いと言ってくれたのはあなたが初めてです、
と伝えてもらうよう、番兵に頼みました。

実は、キノはメシマズだったのでした……。


というあらすじなのですが、やっぱり宗教ってクソだな、と思いました。

現実世界にも、輸血を禁止している宗教があり、
その信者は輸血を拒み、本来なら助かるはずの人が助からなかったりしています。

アメリカでは、宗教上の理由で妊.娠中.絶を禁止する州がたくさんありましたが、
最近になってようやく、殆どの州で合法化されたみたいです。
合法化される前は、危険な闇手術のせいで命を落とす女性が何人もいました。

でも、やっぱり医学にも限界があり、どうしても助からない人は一定数いて、
安楽死や尊厳死が合法化されている国と、
現在の日本のように違法の国があります。
そのせいで、末期の病気の人が苦しい自殺を強いられている場合があります。

他にも、○○ちゃんを救うため、と言って、
アメリカで手術するための莫大な費用を募金で集めている団体がありますが、
そうしないといけない最大の理由は、
日本では「心理的な問題で」亡くなった子供の臓器を他の子供に提供してもいい、
という親が少ないせいです。

無神論者が多いと言われる日本にも、
本人が自覚していない「宗教上の理由」のせいで、
他の国に生まれていれば助かるはずなのに助からない人がいるのです。

だから、しまうましたには、
この「冬の話」に登場した国の人達を馬.鹿にすることはできません。

時雨沢恵一「キノの旅」7巻3話「川原にて」のネタバレ解説

シズは春の川で珍しくバギーを洗車していました。

陸は、シズがどこでそのバギーを手に入れたのか、訊ねます。

陸に会う以前、シズは次の国まで歩いて移動する途中、
どこかの戦場跡に辿り着いたのだそうです。
シズはそこで何か金目の物を探し、このバギーを見つけました。

シズはバギーの上から死体をどかし、
他の車両から燃料や燃料缶をかき集め、
それ以来このバギーを“足”として使っているのだそうです。

バギーを洗車するのは今回がほとんど初めてでした。

シズは車体の隙間に、バギーと同じ色の、
折り畳まれた薄い鉄板が差し込まれていたのを発見しました。

その鉄板には、我々の愛馬よ――貴様は我々と共に戦い、そして死ね、
貴様は、我々全員の屍(しかばね)を抱(いだ)き朽ち果てよ、
などと書いていました。

つまり、兵士達からこのバギーへの手紙でした。

シズは、こいつも死ぬべきところで死ねなかったやつか、
という意味のことを言いました。

シズは「祝福のつもり」の国でバギーを整備したことを思い出し、
バギーで走り出しました。

というあらすじなのですが、バギーを整備した整備士は、
鉄板に気づかなかったのかな、と思いました。

もしもこのバギーがエルメスのように喋ることができたら、
シズや陸と旅できて嬉しい、と言うような気がしました。

ところで、シズがバギーを拾った戦場跡というのは、
もしかしたら6巻口絵3「戦車の話」に登場した浮遊戦車が
戦車長を亡くした場所だったんじゃないか、と思いました。

バギーに挟まれていた鉄板に書かれた文章と、
戦車長が戦車に命令した内容が一致するので、
そう考えると辻褄が合うような気がします。

(それと、「戦車」と「洗車」をかけているダジャレの可能性も……)
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