時雨沢恵一「キノの旅」9巻1話「記録の国」のネタバレ解説

キノとエルメスは花の草原の近くにある“いい国”に入国しました。

食事も燃料代もモトラドの整備も宿代も旅荷物の補充も、
全て無料という、キノにとっては天国のような場所でした。

2日目、レストランの人に、この国はなんでこんなに大盤振る舞いなんですか
と詳しく聞くと、とにかく豊かなのだそうです。
穀物も肉も魚も豊富で、技術や医療の進歩も人を幸せにする方向へ使われています。

そんな中で、人口が増えすぎないように厳しく調節しながら、
もう何百年も豊かで平和な生活を続けているのだそうです。

3日目にカフェでお茶を飲んでいると、
右隣のテーブルにとても疲れた顔をした男が座りました。

キノはその男の様子が気になったらしく、
珍しく自分から男に話しかけ、ここはとてもいい国でした、と言いました。

すると男は、私以外には、この国はいいところさ、と言いました。

“私以外には”について説明を求めると、
男は、私には、昔の記憶があるんだ、と言いました。

生まれる前に別の人間として生きた記憶があり、
その前の記憶も、その前の記憶もあり、
覚えているだけで、5人の人間だった記憶があるのだそうです。

4世代前に、当時20歳だった男も、頭の中にある別の人生の記憶を錯覚かと思い、
調べました。

すると、確かに「前世の自分」は存在していました。
4世代前の男が5歳の時に、事故で死んだ男でした。

その前の妻が生きていたので、会いに行き、
妻の趣味や口癖などを言い当てましたが、気味悪がられ、
二度と来るなと言われました。

その人生では50歳ほどで病気で死にましたが、
次は別の男として、やはり5歳くらいだった時の思い出からありました。

その人生も、30歳くらいの時、湖で溺れて終わりました。
その次は長生きして、その次が今の1つ前でした。

男は、師匠と荷物持ちさんにも会ったことがあり、その特徴を言い当てました。

男は、人の一生を生きて、色々な人のことを憶えていても、
次の人生では誰も分かってくれず、また最初から、やり直しになるのが嫌になり、
疲れ、今は何もしたくないと言いました。

新しい記憶を持つと、それが良い記憶であっても悪い記憶であっても、
重く、疲れるのだそうです。

男は地獄だと感じていて、思い出を作らず、毎日を忘れるようにしていました。
今日なんかまずくない? とエルメスが聞くと、
誰だい君は? と男はキノとエルメスに言い、去っていきました。

キノ達がその国を出国すると、白衣を着た6人の男達に呼び止められ、
カフェにいた前世の記憶がある男のことを聞かれました。

キノとエルメスが、素晴らしい国で、
なぜ彼のような精神を著しく病んだ人が現れたのか不思議です、
などと白衣の男達を挑発すると、再入国禁止を条件に、
男達は教えてくれました。

あの男が言ったことは、「全て真実なのだそうです。

昔白衣の男達の先祖は、死んだ直後にその人間の記憶を取り出し、
別の人に入れる実験に成功しました。

その人が死ぬことに変わりはありませんが、
別の誰かにとっては“私のことを覚えていてくれるあの人”が存在し続ける、
他者にとっての、“誰かが永遠に生き続ける”システムなのだそうです。

記憶を入れられちゃった人は、厳しい出産制限の中で、
そうなる可能性を納得した上でそうならない可能性にかけた親達の子供でした。

そんな子ども達の中から、被験者が死んだ時に5歳である子供に、
記憶は移されます。

開発した先祖は、このシステムはどう考えても使ってはいけないと結論づけ、
“このシステムは間違っている”ことを完全に証明するために、
被験者40人で始め、3世代ほどで記憶の蓄積に精神が耐えられなくなり、
39人までは発.狂しました。

カフェで会った男が最後の1人で、彼が発.狂すれば、
危険性は100パーセント証明され、このシステムは永遠に封印されます。
白衣の男達は、あの男が発.狂するその日まで、記録を取り続けるのでした。


というあらすじなのですが、恐ろしい話ですね……。

本当に狂っているのは、白衣の男達の方なのではないかと思います。

被験者40人中39人が発.狂したのなら、
発.狂率97・5パーセントなのだから、
それでもう危険性を証明できたようなものじゃないですか。

というか、そもそも、最初に“このシステムは間違っている”と思った時点で、
議論を尽くして、実験なんか始めなきゃよかったでしょう。

国が豊かすぎると、こういう変なことに
膨大な時間を費やすようになってしまうのかもしれませんね……。

時雨沢恵一「キノの旅」9巻口絵2「城壁の話」のネタバレ解説

キノとエルメスは近道として教わった草原を走っていました。

すると、最寄りの国まで3日はかかるはずだったのに、
広い草原に丸い城壁があるのが見えました。

門を探して城壁に沿って走ります。

途中、赤い、小さな、汚れていない、きれいな靴が落ちていました。

キノとエルメスは、なんだろう?
と言葉を交わしましたが、答えは分かりませんでした。

さらに走ると、小さな石が1つ、上から落ちてきて、
エルメスのタンクに当たりました。

キノがエルメスを止めて、見上げても、高い城壁があるだけでした。

一周しても門は見つかりませんでしたが、
何人かの楽しそうな笑い声が聞こえました。
しかし、しばらくそこに留まっても二度と声は聞こえませんでした。

高い高い高い城壁を背後にして、走り、
小さな丘を2つほど超えてキノが振り返ると、
夕日に染められた城壁が静かに静かにそびえていました。

キノのゴーグルの下の瞳がそれを見て、キノは何も言わずに向き直り、
草原の道を走っていきました。

というあらすじなのですが、
今回は答えが書いてない謎々みたいな話ですね。

結局、あの城壁は何だったのか?
という明確な答えが書かれていませんが、ある程度想像することはできます。

まず、謎というかヒントは5つです。

1つめは、キノに草原の近道を教えてくれた人も、
そこに城壁があるのを言っていなかったこと。
2つめは、赤いきれいな靴が落ちていたこと。
3つめは、上から小さな石が落ちてきたこと。
4つめは、一周した段階でどこかから笑い声が聞こえてきたこと。
5つめは、キノが丘を2つ超えて振り返り、意味ありげに城壁を見ていたこと。

5つめのヒントから考えて、
高い場所から城壁を見下ろせば答えが一目瞭然なのではないかと思います。

赤いきれいな靴が落ちていたのは、小石と同じように上から落ちてきたのでしょう。
笑い声も上から聞こえてきたと推測できます。

これらのことから、門はないけど城壁の中に人が住んでいる、
ただし、キノに草原の近道を教えてくれた人はそれを国だと思っていなかった、
と考えられます。

おそらく、それは城壁というよりも、
巨大な建造物の土台みたいなものだったのでしょう。

高い高い高い土台の上に、国があって、
そこに他国と交流したがらない排他的な人達が住んでいるのでしょう。
出入口は巧妙に隠されているか、そもそも存在しないか、
空でも飛んで出入りするのではないでしょうか。

赤い小さな靴は最近偶発的に落ちてしまったもので、
小石はキノとエルメスをからかうために落としたもので、
最後の笑い声は入口を見つけられなかったキノ達を笑っていたのでしょう。

時雨沢恵一「キノの旅」9巻口絵1「なってないひとたち」のネタバレ解説

キノの旅〈9〉the Beautiful World (電撃文庫)


とある国でキノとエルメスが、レストランで隣の男から旅の様子を聞かれ、
答えました。

すると男は、君は、ただあてもなくふらふらと流れているだけなのかい?
なってない、まったくもってなってないね、と言われました。

また、師匠と荷物持ちさんもとある国で旅の様子を聞かれ、
答えると、ただ欲望のままに金儲けをしているだけなのかい?
なってない、と言われました。

シズとティーと陸は、貴方は、
ただ定住地を探してさまよっているだけなのかい?
なってない、と言われました。

ところで、あなたの旅はどんなでした?
と訊ねられた男は、いつだって同じ答えを返します。
まだだよ、これからやるんだ」と。

というあらすじなのですが、
しまうましたもブログをやっていると、
「お前のブログは全然なってない」
という趣旨のコメントを頂くことが多々あります。

そういう人に限って、本人は何もブログをやってないんですよね……。

まあ、しまうましたもプロの作家が一所懸命に書いた小説にケチをつける
ブログをやっているので、こういうことを言うと完全にブーメランなのですが。

時雨沢恵一「キノの旅」8巻「あとがき」のネタバレ解説

今回のあとがきは、巻末の時雨沢恵一著作リスト、奥付、
広告などに偽装して書かれていますw

よくこんなこと思いつくよなあ、と感心してしまいます。

広告部分の「アリソン」が「アニソン」になっていたり、
「キノの旅」が「キノの足袋」「キノの語尾」「キノの帯」
「キノの錆」「キノの荼毘」「キノの海老」「キノのホビー」
「キノの不備」「キノの日々」に変わっていたりします。

他にも、電撃大賞二次選考突破者ばかりが連続して殺される
「電撃大賞殺人事件」や、
本編2ページ、あとがき200ページ以上の、
あとがきって何だっけ?
と思ってしまう「ザ・あとがき」などの危険な本も広告されています。

無茶苦茶ですが、時雨沢恵一さんの著書のあとがきを全部集めれば、
それだけで1冊分の分量になりそうなくらいあとがきがあるので、
「ザ・あとがき」も夢じゃないですね。

早めの絶版が予想されますが、
しまうましたは「ザ・あとがき」を書店で予約して購入しますので、
よろしくお願いします。

時雨沢恵一「キノの旅」8巻エピローグ&プロローグ「船の国」「渚にて」のネタバレ解説

今巻はエピローグが「船の国」、プロローグが「渚にて」と、
タイトルが違っていますが、内容的には繋がっています。

エピローグが凄く長くて、
プロローグと合わせて120ページくらいあります。

あとがきを合わせても全部で230ページくらいなので、
全体の半分以上を「船の国」が占めていることになります。

さて、シズと陸は、シズの故郷がある大陸から、
西の大陸に渡るために、“船の国”と呼ばれる浮島に乗ることにしました。

200年以上前から“船の国”と取引をしている商人達に頼み、
輸送船に乗っていた黒ずくめの“指導者”を紹介してもらいます。

国の中で指導者が決めたルールに従うことを約束させられ、
シズと陸は輸送船に乗せてもらいます。

“船の国”は5日ほどこの大陸に沿って北上し、
その後海峡を5日ほどで渡り、
さらに5日後には西の大陸の商人達との接触があるのだそうです。

シズ達は輸送船の狭い一室に入り、直径3メートル程度の細長い長方形をした、
“船の国”に乗せてもらいました。

バギーを倉庫に停め、国中心部にある塔のエレベーターに乗り、
“船長”から話を聞きます。
この国は600年以上前から存在し、
彼ら指導者は『塔の一族』は“王族”としてこの国を長年に亘り支配していました。
被支配階級である一般国民は3000人、黒ずくめは50人ほどいるのだそうです。

旅人は大抵、塔の一族の指揮下で警察か用心棒の仕事をするそうですが、
シズは民衆との生活と肉体労働、同じ生活を希望しました。

塔の1階へと降り、そのさらに下層に住んでいる一般国民に会うために、
シズと陸は甲板を西の方向に歩き、階段を下りました。

そこで出会った一般国民に事情を説明し、
動く狭くて複雑な道を歩き、長老の住む部屋に案内されました。

長老は80歳ほどに見えましたが55歳でした。
案内人の男は50代に見えましたが実際は35歳でした。

案内人の男に、2段ベッドのある客用の部屋に案内されましたが、
そこも凄く狭いものでした。

灯りが消えると本当に真っ暗になりました。

2日目の朝、広間で蒸し上がった魚がまるまる1匹だけの朝食をもらいます。
長老の話ではほとんど全ての食事が魚でした。

長老は“ティー”という12歳くらいの女の子を、
滞在中いろいろ聞く案内人として紹介しました。

ティーは髪の毛が白く、瞳の色はエメラルドグリーンでした。

ティファナというのが本名ですが、ティーとお呼びください、
と長老は言いました。

ティーは仏頂面をしていて、話しかけても全く喋らない少女でした。

ティーは肯定の返事の時は頷き、否定では首を振るので、
シズが質問をしてイエス・ノーで答えてもらうことでコミュニケーションをとります。

シズは仕事を希望していましたが、旅人ができる仕事はないらしく、
ただ“船の国”の中をティーに案内してもらうだけの生活が続きました。

5日目の朝、輸送船で商人達との取引があり、
大陸から1人の旅人が入国したことを、仕事に出た男達からの伝聞で知りました。

その旅人は黒ずくめ連中の手下役を引き受け、
眺めのいい“一等客船”に収まったのだそうです。

その夜、灯りが消えてもティーがシズの部屋に残っていたので、
シズはティーに2段ベッドの上を使わせてあげました。

6日目になると、“船の国”は海流に乗って移動するようになり、
揺れが出てきました。

そして、鈍い悲鳴に似た、とても耳につく嫌な音がしました。

ティーによると、海流に乗って移動する場合にはよく聞こえるのだそうです。

その嫌な音は、シズが以前崩落したビルにいた時に聞いた音にそっくりでした。
悲鳴に似た音は、鉄骨が軋んで擦れて出す音だったのでした。

ティーに、構造物が潰れたり壊れたりしている場所に案内してもらうと、
崩れてからかなり経つようでした。
また、浸水している区画もありました。

この国の昔の構造図がある部屋に案内してもらい、その構造図を見ると、
大昔は甲板の上に大地と建物がたくさんあったことがわかりました。
甲板の下は本当に薄く、シズは驚きの声を出しました。
今の居住区はかつての整備用の通路や、水道や電気の通り道でした。

ティーに、“立ち入れない場所”、“浸水している場所”を、
順に指さしてもらうと、143カ所もありました。

この“船”は600年間まったく整備されることなく動いているため、
あと10日で沈むとは思わないが、この先どこかから崩壊して、
長くない、とシズと陸は判断しました。

昼食の時間に間に合わないため、ティーに携帯食料をあげると、
旅人には不評極まりない味の携帯食料を、
ティーはとても美味しそうに食べました。

7日目と8日目は、崩れている場所や浸水している場所に行き、
どれほどの破損か調べました。
40メートルほど“船底”がちぎれていて、
毎年2メートルくらいずつ亀裂が広がっている浸水場所もありました。

9日目、シズはこの国の綻びについて長老と話しましたが、
長老は塔の一族に任せっきりで、何も考えていませんでした。

生まれた赤ん坊の生存率や、平均寿命は、
かつて見たことも聞いたこともないほど、相当過酷なものでした。
劣悪な環境と極端な食生活が原因なのですが、
外の世界を知らない長老達は“船の国”を楽園だと信じていました。

ティーに頼み、気分転換として城壁の上に案内してもらい、夕日を見ました。
ティーが景色に見入って動かないせいで夕食を逃し、携帯食料を食べました。
カリカリと美味しそうに食べるティーを見て、
陸はこれが目的だったんじゃないかと思いました。

10日目、シズは戦闘の準備をし、塔へ近づきました。
塔の入り口まで10メートルほどを残した場所で、
スピーカーから声が指導者の聞こえ、
シズはこの国の未来について話があると言いました。

この国の欠陥について思うところをシズは伝えましたが、指導者たちは、
そういった運命なのだと言い、一般国民と一緒に滅びるつもりでした。

シズが塔を占拠してこの国の行き先を変えると言うと、
塔入口のドアから黒づくめの人間が出てきて、戦闘が始まりました。

黒ずくめはパースエイダーを撃ちましたが、シズは避けます。
しかし、黒ずくめはそのパースエイダーを投げ、
シズがそれに驚いている隙に別のハンド・パースエイダーを抜きました。
シズが相手との距離を詰めると、黒ずくめはベールを掻き上げました。

そこにいたのは、キノでした。
5日前に入国し、シズ達と同じように西の大陸に渡ろうとしている旅人が、
キノだったのでした。
キノは渡し賃として指導者達のために働いていました。

キノはシズの名前は忘れているけど陸の名前は覚えているという、
心理的攻撃をし、戦闘再開です。

キノはリヴォルバーの狙いを、陸とティーの方に向け、発砲しました。
弾丸はティーの頭の、かなり上を通過しました。

シズがそちらに気を取られている間に、キノは塔の中に入りました。

シズは閃光手榴弾、スタングレネードを廊下に転がし、爆発させました。

通風口か排水溝のような穴に逃げ込んだキノを追い、
シズと陸とティーも穴に身を滑らせました。

シズはタンクを刀で切って、キノをびしょ濡れにしました。

キノはまた隠れていましたが、水滴を追いかけます。

キノは黒いコートだけを落としたり、フェイクの足音を出したりして、
シズを翻弄させ、天井から頭を下にして現れ、シズに発砲しました。

しかし、その弾丸は硬質ゴムだったので、シズは生きていました。

シズは負けを認めますが、場所が悪くてキノの返答が聞こえないせいで、
塔の一族達はキノがシズに負けてしまったと思い込んでいました。

この国は大洋へと戻り、陸には行かぬ、シズ殿は、
この後死ぬまで民衆と暮らすといい、という声が聞こえました。

キノはシズに勝ちましたが、仕方なくシズの手伝いをすることになりました。

格納庫で閃光手榴弾などの武器を調達し、塔に侵入し、
“船長”のいる制御室へ行きます。

この国の、王にでもなるつもりか? という“船長”の問いに、
シズは、必要なら、と答えました。

「いいだろう。――お前が次だ。――そして一緒に生きろ」
と“船長”は言い、床に崩れ落ちました。

その“船長”の帽子を取ると、そこには中綿を入れた布の塊がありました。
黒いコートの袖をめくると、そこに見えた腕も、
芯が入っているだけのぬいぐるみでした。

シズは西の大陸の砂浜に“船の国”を乗り上げさせ、
“船内放送”で、国中の人間に、国が陸についたことを知らせ、
外に出て確かめるように言いました。

キノは先に出国の準備をして船を降りました。

シズ達は倉庫に行き、バギーで外に出ました。

シズは、指導者達は全員、別の船に乗って別の国に逃げ、もうこの国にはいない、
と嘘も混ぜながら、4つの部族に分かれた一般国民達に事情を説明しました。

これからは陸での新しい生活を選ぶことができるとシズは言いましたが、
子供が母親に戻ろうと言いました。

ここ、全然揺れないよ、足元が柔らかいよ、壁も屋根もない、気持ち悪いよ、
と子供が言うと、人々は戻りたがりました。

この国はやがて海に沈む、これからは陸の上で生きないと、
あなた達に未来はないんだ、とシズは真実を告げますが、
そんなことがあるはずはない! と長老が言い、
彼らは自分たちの部族が先に塔を占拠しようと、
“船の国”の中に戻っていきました。

シズはティーに、私は失敗した、ティー、戻るといいよ、と言いました。

しかしティーは、「格納庫から持ち出していたナイフでシズを切りつけました。

するとエルメスは、その女の子が“ティファナ”だね? と言いました。

エルメスは倉庫にしまわれていた時に、同じ人間じゃないよしみで、
黒ずくめからいろいろな話を聞いていたのだそうです。

600年以上前に、既に前の住民によって完全に放棄されていた浮遊都市国家に、
“ティファナ号”という一隻の漂流船がたどり着きました。
その大きな船には、その時数百人の、3歳以下の子供達が乗っていました。
それより年上の人間はみんな、新種の疫病で死んでいました。

船を一括管理するための機械は、子供達に食事を与えながら大海原を漂流しました。
その子供達の子孫が一般国民で、機械が黒服の王族一族となりました。

機械は子供達を“船の国”で生活させることにし、
人間の形が子供の世話に必要だから黒ずくめの“ぬいぐるみ”を作りました。

子供達が成長すると、彼らを纏めるものがいないせいで問題が起き、
機械は“偉い存在”として王族一族を作ったのでした。


“船長”の“次はお前だ”という言葉は、
文字どおりその後のこの国の未来をシズに任せるとのことだったのでした。

ティーは、「“渡し”に使った旅人の子供でした。

ティーの両親は13年前、1年以上“船の国”に滞在し、
当時は別の名前だった赤ん坊を置き去りにして出国してしまいました。

機械は、民衆が快く受け入れるとは思えず、
新たにティファナという名前をつけて育てました。
交易で得た食べ物は、主にティーの健康維持のために使われ、
ティーは民衆のスパイのようなこともしていました。

“そして一緒に生きろ”という“船長”の言葉はティーに向けられたものでした。
黒ずくめはいなくなり、あの国にティーの居場所はありません。
シズと一緒にいないと、のたれ死には確実です。

そんなティーに『戻るがいいよ』のシズの一言は、死刑宣告に等しいものでした。

ティーは、わたしにもどるところなんてない!
と言い、ナイフの刃をバネ仕掛けで飛ばしました。
刃はシズの腹部に深々と当たり、危険な傷でした。

キノは、どっちの人間が死ぬ方を選択すればいいかという意味のことを、
陸に訊ねましたが、シズは、どっちでもない! と言いました。

シズはティーに謝り、俺は、君を見捨てない、これから、一緒に助け合っていこう、
と言ってティーを抱きしめました。しかし、シズは倒れてしまいます。

ティーは、おいていかないで! と何度も叫び、手榴弾でシズと心中しようとしました。
しかし、キノはパースエイダーで手榴弾をティーの手からはじき飛ばしました。
手榴弾は誰もいない波打ち際に落ちて爆発しました。


船の国は海に去っていき、それから何日か経過して、
プロローグの「渚にて」の場面になります。

キノは金目の物を3分の1いただき、黙って立ち去ろうとしていました。
シズが起き、別れの挨拶をしました。

ボクが旅を続けていれば、あなたがいつか住む場所にたどり着くと思います、
とキノは言いました。
シズは、私がそこに落ち着いていることを願う、そして心から歓迎する、
と言いました。

というあらすじなのですが、ティーはこの後、
レギュラー・キャラクターとして、毎巻登場することになります。

今回、今までいた東の大陸から西の大陸に移動しましたが、
キノの旅の内容は今までと殆ど変わりません。

ちなみに、17巻のエピローグ「渡す国」でティーとフォトが共演しているので、
3巻のエピローグ「雲の中で」は、大陸移動後の話であることが確定しています。
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