知念実希人「神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶」のネタバレ解説

神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶 (角川文庫)


神酒クリニックシリーズ、第2弾です。

午後11時40分ごろ。
茅場町ビジネスパレスの警備員の真鍋信二が、夜の当直をしていると、
電話がかかってきて、午前0時に爆発する爆弾を仕掛けた、
と言われました。

先輩警備員の猪原史郎にそのことを伝え、
真鍋信二と猪原史郎はビルの中を探し、
旅行代理店の給湯室で爆弾を発見しました。

1度はビルを脱出した真鍋信二と猪原史郎でしたが、
信二は警備員室で飼っていたインコが取り残されていることに気づき、
インコを逃がし、外に出ました。

その直後、本当に爆弾が爆発しました。

場面が変わり、主人公の九十九勝巳が、
患者の家から脱走した飼い猫の龍之介を捕まえる際に、
龍之介に引っかかれました。

その患者は現在ハワイに行っているため、
夜はビルの5階にある神酒章一郎と一之瀬真美の部屋で龍之介を飼い、
昼間は喫茶店に置いておくことになりました。

梅沢化粧品の社長の梅沢に呼び出され、
勝巳、神酒、真美、夕月ゆかり、天久翼、黒宮智人の6人は、
北区赤羽にある梅沢の豪邸に行きました。

そこには、30歳前後の女性がずぶ濡れで倒れており、
血を流していました。

女性を治療しながら事情を聞くと、妻には出張に行っていることにして、
愛人といちゃついているときに、
怪我を負った女性が庭に入ってきたのだそうです。
警察に通報すると、不倫を妻に知られてしまうかもしれないので、
神酒にこっそりと治療してほしい、と梅沢は頼んだのでした。

また、怪我をした女性本人も、意識を失う前に、
警察は嫌だと言ったのだそうです。

意識を取り戻した女性は、記憶喪失になっており、
翼は彼女に『赤羽』という仮の名前をつけました。

翼が診察すると、赤羽は、
暗い部屋の中で男たちに4つの爆弾を作らされていた、
という断片的な記憶を思い出しました。

午前零時を過ぎていると訊くと、私が作った爆弾が爆発する、
と赤羽は口走りました。
赤羽が冒頭のビルの爆破事件に関与している可能性が高くなりました。

その夜は翼がつきっきりで看病しました。
翌日の夜、赤羽の希望で、巽ビルの3階の病室で、
翼が赤羽に催眠をかけました。

赤羽は、窓から2棟のビルと川が見えるマンションにいる、
と思い出しましたが、家族というキーワードに反応し、
パニック状態になりました。

その翌日、マスコミ各社に、爆弾犯から犯行声明文が送られてきた、
というニュースが流れていました。

赤羽が思い出したマンションを探しに行くと、
そのマンションの前に10台を超える警察車両が停まっており、
警官が規制線を張っていました。

知らんふりをして通り過ぎようとしますが、
謎の男に尾行されていることに、黒宮が気づきました。

真美が運転するミニに乗って逃げようとしますが、
車で尾行されていることに気づき、真美はすさまじいスピードで運転し、
尾行を振り切りました。

クリニックに戻った赤羽は、尾行していた男は刑事ではなく、
赤羽を監禁していた男たちだと言いました。
他にも、土砂降りの夜、あの男から全力で逃げていたことや、
津田美鈴という自分の名前を思い出していました。

津田美鈴について調べ、31歳という年齢や、
関東電機大学の大学院卒業後、四葉電機に入社した、
優秀な技術者であることなどが分かりました。

刑事の桜井に、爆弾事件の情報を一部流し、見返りとして、
黒宮が暗記していた尾行の車のナンバーを調べてもらいました。

埼玉県に3ヶ所営業所があるレンタカーショップの車だと分かり、
その営業所の前で、勝巳たちが手分けして、
尾行の男が車を返しに来るのを張り込むことにしました。

勝巳とペアになった真美は、人の心を読めてしまう翼は、
記憶を読み取ることができない美鈴に惚れたのだろう、
という話をしました。

やがて、尾行していた男、2人がやってきて、勝巳は2人を尾行しました。

しかし、尾行に気づかれ、公民館の裏手に誘いこまれてしまいました。

ボクシングの経験がある角刈りの男と戦闘になりますが、
風邪気味だった勝巳はやられてしまいます。
角刈りの男の手下の男が、角刈りの男のことを「マサさん」と呼びました。

勝巳は誘拐されそうになりましたが、
ゆかりがパトカーのサイレンの声帯模写をして、男たちを追い払ってくれ、
助かりました。

クリニックに戻った勝巳は、黒宮に診断され、風邪ではなく、
猫の龍之介に引っかかれたことが原因の、猫ひっかき病だと言われました。

勝巳と戦闘になった男の特徴を伝えると、
神酒が黒宮に、プロボクサーについてリストアップしろと言いました。

その時、第二の爆発が起こったことが判明しました。

黒宮は、「マサさん」はタイガー雅次(まさつぐ)だと特定し、
2日後、神酒と勝巳はタイガー雅次が所属していたジムに行きました。

神酒はジムの会長に、ジム生の誰かとスパークリングをして勝ったら、
タイガー雅次の情報を教えてもらう、という条件を受け入れさせました。

神酒は、一番強い、80キロはあるジム生とスパークリングをし、
吹き飛ばして勝利しました。

約束通り、会長からタイガー雅次の情報を聞きます。

雅次は試合で網膜剥離になり、引退に追い込まれ、
荒れて傷害事件を起こしたが示談になり、警備会社に就職しました。
しかし、その警備会社が日本セキュリティ保障という大手警備会社に買収され、
リストラされ、ヤク.ザみたいな奴らの用心棒をやるようになり、
雅次は再び傷害事件を起こして逮捕され、会長は雅次と縁を切りました。

また、雅次の本名は成田雅次で、会長の一人息子でした。

勝巳と神酒が喫茶巽に戻ると、黒宮が、
「先々月、美鈴の夫と2歳の娘が、橋から河川敷に落下して、
車ごと炎上して死亡した」というニュースを見つけていました。

神酒は黒宮に、次に爆破が起こる場所と時間を予測してほしい、と言いました。

3日後、黒宮は、成田雅次の友人らしき人物の一人が、
恋人へ宛てたメッセージの中で、深夜、
東陽町に近づかないように警告するものがあった、という情報を掴みました。
その男は、深夜にそこで爆破事件が起こるって噂を、ネットで見た、
と恋人に言っていましたが、ネットにはそんな噂はありませんでした。

また、次の爆破が起こるのは今日でした。

これまでの2回では、13階建てのビルの最上階に爆弾が仕掛けられていたので、
今回も東陽町にある13階建ての山田ビルが怪しい、という話になりました。

ゆかりと勝巳は山田ビルに行き、ゆかりが警備員の気を引いている隙に、
勝巳が警備員の制服のポケットから鍵をくすねました。

神酒が防犯カメラのレンズに黒いスプレーを吹きかけ、
勝巳や神酒やゆかりや翼や美鈴は、山田ビルに侵入しました。

午後11時18分に、勝巳は爆弾を発見しました。
神酒が爆弾を解体しようとしますが、解体は難しそうでした。

しかし、美鈴は爆弾の構造を思い出し、コードを引き抜いて爆弾を無効化しました。

警備員が巡回する気配を感じ、真美が待機している車に戻ります。

ところが、爆破予告がなく、犯人は爆弾を持ち去られたことに気づいていました。

美鈴が口元を押さえて苦しそうにしているのを見て、
ゆかりは何かに気づいた様子でした。

ゆかりのアドバイスもあり、勝巳が真美に、
美術館で開催される大印象派展に行かないかと誘うと、真美は嬉しそうにしました。

公園のトイレに行っていた美鈴が、目出し帽を被った男に拉致され、
バンに乗せられてしまいます。
そこへ、トイレに駆け込んだバイクの男がやってきたので、
真美はそのバイクを拝借し、勝巳は真美の後ろに乗り、バンを追いかけました。

真美は車に急接近してバンの運転手を驚かせ、スピンさせました。

勝巳が、バンから出てきた成田雅次と闘っている隙に、
真美がバイクで他の男を弾き飛ばして、美鈴を助け出しました。

バイクには2人しか乗れないので、真美に美鈴を乗せて出発してもらい、
勝巳は時間稼ぎに成田雅次との戦闘を続けます。
しかし、パトカーのサイレンが聞こえてきて、成田たちは逃げていきました。
その時、勝巳は、後部ドアの隙間から見えるバンの車内に、
古そうな大きな絵がいくつも積み込まれているのを目撃しました。

真美がキャンピングカーで戻ってきて、
勝巳がパトカーから逃げる手伝いをしてくれました。

午前零時過ぎ、勝巳たちはバー神酒に戻りました。
神酒は、C4爆薬を酒瓶の下に煉瓦のように並べ、隠しました。

真美もバンの中にあった絵を目撃していましたが、
その絵は駄作で、全く価値はないと言いました。

山田ビルの警備員が13階にやってきたのは、
見回りではなく爆弾のスイッチを入れるためだったのかもしれない、
という話になりました。

山田ビルと、1、2回目に爆破されたビルの警備を請け負っているのは、
全部同じ日本セキュリティ保障でした。

勝巳とゆかりと翼は、最初の爆破事件で警備をしていた、
真鍋信二が入院する病院に、その病院の医療関係者の恰好をして潜入しました。

翼が真鍋信二に催眠術をかけ、事件当時のことを思い出してもらいます。
怪しい動きをしていた先輩警備員の猪原史郎は、
日本セキュリティ保障に吸収されたユニバーサル警備に勤めていた、
と真鍋信二は言いました。

巽ビルに戻ると、黒宮が、ユニバーサル警備は10年前、
鴨志田(かもしだ)亮介と猿渡恒彦(さわたり・つねひこ)が開設した会社で、
5年前に日本セキュリティ保障に吸収された、と調べました。

翌日、美鈴が姿を消してしまい、津田美鈴を預かった、
という内容の脅迫状がカウンターに置かれていました。

場面が変わり、日本セキュリティ保障社長の東海盛定(もりさだ)は、
鴨志田と猿渡と一緒に、東京都羽村市にある営業所にいました。
その地下にある金庫に、『大印象派展』の美術品を搬入しました。

日本橋の本社と新宿支社にも金庫室はあったのですが、
それらの金庫室は13階建てのビルの最上階にあったので、
爆破事件を考慮して羽山市の営業所の金庫室に保管することになりました。

5年前、日本セキュリティ保障に吸収された後、
鴨志田は常務に就任し、そこから這い上がり牛耳るつもりだったのですが、
4年前に新社長に就任した東海は鴨志田を冷遇し、
反社会的組織との関係についても調べられていました。

美術品を搬入すると、爆弾を仕掛けたという脅迫電話がかかってきました。

鴨志田は美術品を避難させようと東海に言い、
金庫室へ戻ると、共犯者である子飼いの部下たちに指示を出しました。

東海が網膜スキャンと暗証番号で、金庫室の扉を開けると、
鴨志田は正体を現し、拳銃を東海に向けました。
隣では、猿渡がキュレーター(学芸員)たちに銃口を向けていました。

ダミーの美術品と一緒に、東海たちを爆弾で粉々にし、
鴨志田は他の国に行って、新しい名前で生活を始める、という作戦でした。

しかし、鴨志田が金庫室に入ると、中に作動した爆弾があり、
インターホンからは猿渡が裏切ったという声が聞こえてきました。

鴨志田が猿渡を説得して扉を開けさせると、
拘束された猿渡や警備員がいました。

猿渡の声は、ゆかりの声帯模写だったのです。
中にあった爆弾は、美鈴に頼んで作ってもらった偽物でした。

神酒は残りの警備員や鴨志田を倒し、拘束します。

勝巳はそこを抜け出し、外で成田雅次と決闘しました。
勝巳は成田雅次を倒すと、テンカウントをとり、
罪を償ったら、父親のジムでトレーナーでもやったらどうだ、と説得しました。

ゆかりから電話がかかってきて、翼と連絡がとれないと言われました。
また、成田は、美鈴を拉致などしていない、
美鈴は自分からすすんで装置を作ったのだと言いました。

美鈴は、飲酒運転の車に追突されて夫と娘を亡くしており、
その運転手である梅沢化粧品の社長に復讐しようとして、
鴨志田たちに近づいたのでした。

場面が変わり、梅沢の別荘で、美鈴は梅沢の膝の上に、
動いたら爆発する時限爆弾を載せていました。


しかし、「爆弾にはGPSを内蔵した龍之介の首輪が入っており、
その信号を辿って、翼が梅沢の別荘にやってきました。
まだ美鈴は部分的に記憶を失った状態であり、
自分が催眠術で残りの記憶を思い出させる、と翼は言いました。

さらに、梅沢の秘書に聞いて、神酒や勝巳や真美や黒宮やゆかりも、
別荘に駆けつけてきました。

美鈴は逃げ出しましたが、翼が追いかけました。
美鈴は現在妊娠しており、だから復讐の計画を途中で中止しようとしたのだ、
と翼は言いました。

美鈴は翼の催眠術で妊娠の記憶を取り戻してもらうと、
爆弾のコードの番号は、娘の誕生日の12月8日にちなんだ、
1、2、8だと告白しました。

美鈴は桜井に伴われて自首しましたが、最後に、
翼に自分の顔を見てもらいました。
顔を見ただけで心が読める翼は、
どうやら美鈴が出所するのを待つみたいでした。


というあらすじなのですが、詰め込み過ぎじゃないかと思うくらい、
次から次へと事件が起こり、相変わらず面白かったです。

ただ、翼と黒宮が同性愛的な関係にあるのではないか、
と、ゆかりが翼をからかうシーンが何度も何度も出てくるのは、
LGBTの人達に対してとても失礼なことであり、
差別的な行為なので、良くないと思います。

先に翼がゆかりに対して失礼なことを言っているという前提はありますが、
黒宮はゆかりに対して何もしていないのに、一方的にセクハラされています。

セクシャル・ハラスメントを肯定するような描写は、
読んでいて不愉快でした。

知念実希人「神酒クリニックで乾杯を」のネタバレ解説

神酒クリニックで乾杯を (角川文庫)


主人公の若手医師、九十九勝巳(つくも・かつみ)は、
勝俣病院で当直中に意識を失い、
覚.醒剤依存症で自殺未遂を繰り返していた患者を死なせてしまいました。

前日に深夜まで酒を飲んでいたのは確かですが、
当直は夕方だったので酒は抜けていたはずだったのですが、
勝巳は当直中に泥酔して医療事故を起こした、と報道されました。

病院を退職した後も、週刊誌等で名前が報道されたため、
違う病院に再就職することができませんでした。

勝巳は、学生時代に所属した同好会の先輩である新庄雪子に相談します。

新庄雪子にアドバイスされ、
卒業時に万年筆を送ってくれた恩師の三森教授に頼み、
神酒(みき)クリニックを紹介してもらいます。

そのクリニックの面接は、青山一丁目駅の近くにある、
巽ビルという5階建てのビルの地下1階にあるバーでおこなわれました。

院長の神酒章一郎という40前後の背の高い男と、
どう見ても少年にしか見えない30歳の精神科医、
天久翼(あめく・つばさ)に色々と質問されます。

ちなみに、この天久翼という男は、
天久鷹央(たかお)シリーズの天久鷹央の兄という設定です。

翼は、相手の表情を見ることで、妖怪のサトリのように、
その人が考えていることを見抜く能力を持っていました。

ナースの一之瀬真美がコーヒーを出してくれましたが、
勝巳は真美に一目惚れしてしまいました。

絶対に患者の秘密を漏らさないと誓った後、
喫茶店の奥にあるエレベーターで4階に上がります。

看板は出ていませんが、このビルがクリニックなのでした。

手術室に行き、お水のにおいをぷんぷんさせている産婦人科医兼、
小児科医の、夕月(ゆうづき)ゆかりと、
暗い性格の麻酔科医の黒宮智人(くろみや・ともひと)を
紹介してもらいます。

患者は、外務大臣の榊原一郎でした。

このクリニックは、治療を受けたことを
絶対に知られたくない患者の治療を行っており、
だから看板も出していないのでした。

勝巳は真美と一緒に、神酒の手術を手伝いますが、
神酒も真美もスピードが早く、置いていかれそうになりました。

勝巳は試験に合格し、このクリニックで働き始めました。

3週間近くが経過した頃、スタッフ全員で、
キャンピングカーに乗って出かけました。
この車は、中が手術室に改造されていました。

大手ゼネコンの小笠原建設の創始者である、老人の小笠原雄一郎を、
翼と黒宮が1年ほど前から往診して診ていました。
小笠原雄一郎は末期の膵臓癌なので、緩和医療をおこなっていました。

その小笠原から、神酒に相談したいことがあると言われ、
スタッフ全員で小笠原雄一郎の邸宅に行きました。

小笠原は、二十数年前に愛人を作っており、その愛人が妊娠しました。

小笠原が堕ろすように脅迫すると、その愛人は姿を消しました。

小笠原は、自分に残された時間が少ないことに気づいたとき、
罪悪感を感じて、愛人とその息子を探しました。

愛人は5年以上前に亡くなっており、
息子は川奈雄太だという名前だと判明しました。

数ヶ月前に足立区の公園で切断された腕が見つかった事件があり、
先週、警察がその被害者の名前が川奈雄太だと発表しました。

小笠原は、警察より早く川奈雄太を殺した犯人を見つけ、
罰を受けさせて欲しい、と神酒に頼み、神酒は引き受けました。

こうして、バラバラ殺人の捜査をすることになり、
神酒はクリニックの地下にあるバーに、
中年刑事の桜井を呼び出しました。

この桜井という刑事は、天久翼シリーズにも登場しています。

神酒は桜井の情報屋ですが、桜井も神酒に情報を教えてくれる、
持ちつ持たれつの関係にありました。

川奈雄太がヤミ.金から金を借りていたことや、
井出明男という男が川奈雄太とつるんでいたことを、
桜井は教えてくれました。

井出明男が通っているバーに、勝巳たちは潜入します。
変装した夕月ゆかりが井出明男を誘惑し、
ホテルのベッドルームに連れ込みました。

しかし、そこには神酒たちが待機しており、
井出明男を尋問しました。
と言っても、翼は他人の心を読む能力があるので、
あっという間に、川奈雄太を殺した犯人らしき人物が、
藤原という男だと聞き出しました。

さらに、黒宮は、藤原について知っていることを全部話さないと、
警察に藤原のことを伝え、井出明男が密告したという噂が、
藤原の耳に入る、と脅しました。

藤原は違法カジノのオーナーで、川奈雄太はそのカジノでかなり負け、
でかい借金を背負ってしまいました。

川奈雄太はその後、姿を消しましたが、その直前に、
でかい勝負をして、借金を全部返し、裏の世界から足を洗う、
と井出明男に言っていたのだそうです。

神酒の作戦で、勝巳たちは井出明男から聞き出した、
港にあるカジノに行きました。

心が読める翼はポーカーでディーラーに勝ちまくり、
記憶力が良い黒宮はブラックジャックでカードカウンティングという
テクニックを使い、3000万円以上勝ちました。

カジノを出た後、神酒は、
カジノスタッフたちが金を取り返しに来るのを待ち、
返り討ちにしました。

神酒は異常なほど格闘が強く、勝巳も総合格闘技をやっているため、
神酒と勝巳はリーダーらしき小太りの男を捕らえ、
真美が運転するキャンピングカーに乗せることができました。

翼が小太りの男から藤原についての情報を聞き出すと、
カジノで稼いだ金を返し、小太りの男を解放しました。

勝巳たちは、藤原が住んでいる江東区の高級マンションに行きます。

キャンピングカーにはゆかりが残り、神酒、黒宮、翼が、
マンションに潜入を試みている間、
勝巳と真美は、真美の愛車の真っ赤なミニの中で待機していました。

やがて、エレベーターから、マスクとサングラスで顔を隠した3人の男と、
顔が腫れ上がり頭から血を流した金髪の男が降りてきました。

顔を隠している男が、金髪の男の腹に蹴りを入れると、
真美が金髪の男を助けようとし、男たちの前に出ました。

男たちは勝巳たちに拳銃を向けて威嚇射撃し、
ミニバンに乗ってマンションの敷地から出て行きました。

真美と勝巳は、改造したミニでバンを追いかけます。
運転する真美はスピード狂で、ハンドルを握ると性格が変わっていました。

バンに乗った男が拳銃を向けると、真美はミニでバンに体当たりしました。

すると、バンに乗った男たちは、
金髪の男をバンから道路に蹴り落としました。

バンは走り去りましたが、真美はミニを停め、
勝巳と一緒に、金髪の男を救命しようとします。

金髪の男は藤原だと名乗りました。

すぐに、神酒たちの乗ったキャンピングカーが駆け付けてきて、
藤原をキャンピングカーに乗せ、
クリニックに向かいながらオペをしました。

それから一週間ほど経過し、勝巳は、
学生時代の同好会の先輩の新庄雪子と食事をしました。

その2ヶ月前には、勝巳は雪子と一夜を共にしましたが、
勝巳が正式に付き合って欲しいと言うと、雪子は勝巳を振った、
ということがありました。

雪子は、勝巳に神酒クリニックを紹介してくれた三森教授に、
暴力.団と付き合いがあるという悪い噂が広まっている、
と教えてくれました。

その翌日、勝巳はクリニックのメンバーと、
藤原が入院している青山第一病院に行きました。
この一週間、黒宮がつきっきりで藤原を管理していました。

その途中、黒宮は大学4年生までは天才児でイケメンだった、
という話を翼がします。
しかし、本物の天才である、翼の妹の天久鷹央に打ちのめされ、
自信を喪失し、卑屈になってしまったのだそうです。

病院に着くと、翼が藤原を尋問します。
藤原は、川奈雄太は去年の12月くらいに、
借金を返したのだそうです。
さらに、局所麻酔や抗不整脈薬として使われるキシロカイン、
という薬を手に入れてほしい、と川奈雄太に頼まれたのだそうです。

藤原を襲った男たちからは、「荷物はどこだ?」と訊かれ、
拷問されましたが、藤原には心当たりがありませんでした。

また、違法カジノについては神酒が警察に通報しました。

クリニックのビルの喫茶店に戻り、刑事の桜井と情報交換します。

この前、藤原を襲った男たちが落としていった拳銃は、
覚醒.剤や危険ド.ラッグの密輸ルートを通じて、
国内に入ってきたものなのだそうです。

また、川奈雄太は失踪する前後、数日間タイに行っていたのだそうです。

川奈雄太が、子連れの年上の女と付き合っていた、
ということも教えてくれました。

勝巳、ゆかり、翼、黒宮の4人は、
川奈雄太の恋人、芹沢久美子の住む団地に行きました。
しかし、借金取りがドアに落書きしており、
芹沢久美子は逃げ出していました。

黒宮がドアの鍵を開け、不法侵入します。
デスクトップパソコンのパスワードを、黒宮と翼が解き明かし、
パソコンを調べると、2ヶ月前から川崎のマンスリーマンションの
ホームページを閲覧していたことが分かりました。

そのマンションに行く途中、
ゆかりは声帯模写の特技があることを勝巳に教えました。

産婦人科医のゆかりは、芹沢久美子を見て、
川奈雄太の子供を妊娠していると見抜きました。

芹沢久美子が妊娠を川奈雄太に伝えると、
川奈雄太は思いつめていましたが、
姿を消す直前に明るくなったのだと言っていました。

勝巳たちは芹沢久美子の部屋を出ましたが、
しばらく歩いてから、藤原を襲った男たちが、
芹沢久美子のマンションにやってきたことに気づき、戻りました。

2人の男たちが、芹沢久美子と悟を拷問していました。

勝巳は2人を倒し、さらに、ゆかりがパトカーのサイレンの声帯模写をし、
警察が来たと思わせて、男たちを退散させました。

勝巳は、男たちから奪った、
「バニー倶楽部」というお店のマッチを神酒に見せました。

その2日後、勝巳と神酒と黒宮が、バニー倶楽部に潜入して、
男たちの正体を探ることになりました。
翼が黒宮に暗示をかけ、昔の黒宮に戻したおかげで、
黒宮はホステスたちからモテモテでした。

黒宮が男の似顔絵を描いてホステスに見せると、
後藤田貿易の常務取締役、鍋島一太(いちた)と
名乗っていたことが判明しました。

後藤田貿易という会社は、
元暴力.団員の後藤田道貞(みちさだ)という男が作ったものでした。

「バニー倶楽部」を訪れてから2日後、
再び鍋島が店に現れたと、ホステスから黒宮に連絡が来ました。

勝巳と真美が車に乗り、店の前で、鍋島が出てくるのを待ちます。
その時に、勝巳は真美に告白っぽいことを言い、
真美もまんざらではない様子でした。

鍋島がタクシーに乗り、真美はそのタクシーを追いかけました。

鍋島は、カフェに入り、勝巳を神酒クリニックに紹介してくれた恩師の、
三森大樹と会って話していました。

勝巳は雪子に頼み、三森について調べてもらいました。
4日後の土曜日に自由が丘駅の近くの喫茶店で会い、
三森が暴力.団の依頼で非合法の手術をしているらしい、とか、
海外の銀行から1億円以上のお金が三森の口座に振り込まれていた、
ということを教えてくれました。

喫茶店を出たところで、勝巳は男とぶつかりました。
その男は、勝巳のポケットに、
「思い出せ」と書かれた証明写真を入れました。
その写真には、川奈雄太が映っていました。

しかし、勝巳は、自分が知らなかったはずの川奈雄太の顔に、
見覚えがあることに気づきました。

翼が勝巳に催眠術をかけ、川奈雄太の写真を見た時のことを思い出させます。

勝巳は、勝俣病院で医療事故を起こした時のことと思い出しました。
また、そのとき勝巳は自分の腕に点滴をしていたのですが、
看護師が点滴ラインになにかの薬を注射していたのを目撃していました。

また、勝巳が死なせてしまった患者が、川奈雄太であることも思い出しました。

しかし、勝巳が死なせてしまったことになっていた患者は別人で、
すり替えられていたのでした。

川奈雄太は腹腔内に麻.薬を入れて密輸しており、
それを自分に麻酔をかけて取り出して大もうけそしようとしたが、
大きな血管を傷つけてしまい、
もともと開腹手術をするはずだった勝俣病院に行った、
と神酒は推理しました。

勝巳は川奈雄太を治療しようとしますが、
全ての事情を知っていたナースは院長からの指示を受け、
勝巳を昏睡させたのでした。

勝巳は昏睡している間に、アルコールと睡眠薬のフルニトラゼパムを投与され、
前向性健忘症を起こしてしまい、川奈雄太のことを忘れてしまったのでした。

川奈雄太の死体は、密輸をしていた後藤田貿易に処理してもらいます。

後藤田貿易の男達は、川奈雄太の遺体を切断して、
麻.薬を取り出そうとしましたが、見つからず、
全身をバラバラにして埋めたのでした。

川奈雄太の開腹手術をすることになっていたのは三森だ、
と神酒は考え、俺が三森から話を聞くと言いました。
しかし、三森は失踪してしまっていました。

その3日後、勝巳のスマートフォンに非通知の電話があり、
通話ボタンを押すと三森の声が聞こえました。

三森は、今から言う住所に1人で来てほしいと言いました。

勝巳がその住所のマンションに行くと、
首を絞められて殺された鍋島一太の死体がありました。
さらに、パトカーがやってきて、勝巳は自分がはめられたと気づき、
逃げました。

ファミレスで夜を明かし、勝巳は神酒クリニックの喫茶巽に行きました。
マスターにカウンターの下に匿われると、
桜井の声が聞こえてきました。

桜井がいなくなると、地下1階のバーに連れていかれ、
スタッフ全員に囲まれました。

神酒は、勝巳がスパイとして後藤田貿易に情報を流していたと言い、
ヒステリックにまくし立て、
芹沢久美子が川奈雄太からある物をあずかっていた、という話をしました。

長野の山奥にある神酒の別荘で、芹沢久美子は出産することになっており、
その見返りとして、川奈雄太からあずかった物を渡してもらう、
と神酒は言いました。

神酒はその別荘の住所を言った後、リボルバー式の拳銃を勝巳に向け、
発砲しました。

場面が変わり、後藤田貿易に勤める田所次義(つぐよし)が、
勝巳がいつも持ち歩いていた万年筆の中に、盗聴器が仕込まれており、
その盗聴器から得た情報で、
神酒たちの動きを探っていたのだと回想していました。

田所次義とその仲間は、神酒の別荘に侵入し、
芹沢久美子とその小学5年生の息子の悟を脅します。
川奈雄太は、『双子の涙』と呼ばれる、
数十億円の価値がある特大のブルーダイヤとピンクダイヤを持ち去った、
と田所次義は言い、宝石の在処を聞き出そうとします。

芹沢久美子は、去年の暮れ、川奈雄太が電話で、
自分が死んだら胃の中を調べろと言っていた、と言いました。

川奈雄太は『双子の涙』を食べていたと田所次義は気づきました。
川奈雄太の身体をバラバラにした時、腹の中は調べましたが、
胃や腸の仲間では調べていませんでした。

田所次義は仲間に、後藤田に連絡させた後、
芹沢久美子と悟を殺そうとしました。
しかし、「その芹沢久美子と悟は、ゆかりと翼の変装でした。

地下へと続く隠し階段に隠れていた神酒が、
田所次義の仲間を昏倒させます。

田所次義は別荘から逃げ出しますが、
真美が運転するミニに止められました。

田所次義は神酒に拳銃を向けますが、逆に神酒に倒されてしまいました。


場面が変わり、後藤田は川奈雄太の首と胴体を埋めた、
青梅市の山奥に行きました。

しかし、「死体を掘り返すと、刑事の桜井を含む警察に囲まれていました。
取り押さえられた後藤田は、自分のポケットに、
勝巳の万年筆が入っていたのに気づきました。

勝巳は、実は生きており、神酒が拳銃を発砲するのと同時に妨害電波を出し、
盗聴器の仕込まれた万年筆を回収したのでした。

神酒やゆかりや勝巳が、『双子の涙』は芹沢久美子の部屋の、
川奈雄太の荷物の中にある可能性が高い、という話をしているのを、
後藤田に指示を出していた雪子が、イヤホンで聞いていました。

雪子は、芹沢久美子の部屋に行きますが、
そこには勝巳が先回りしていました。
雪子が聞いていた声は、ゆかりの声帯模写だったのです。

雪子は大学時代に、勝巳と同じ奇術同好会に所属しており、
自由が丘駅の喫茶店を出た後、男がぶつかった時に、
勝巳のポケットに証明写真を入れていたのでした。
また、勝巳が『バニー倶楽部』のマッチを手に入れたのも、
鍋島一太のポケットを探ったからなのでした。

三森の悪い噂も、三森をスケープゴートにするために雪子が作った話で、
勝巳のスマートフォンにも盗聴のスパイアプリが仕込まれていました。

雪子は昔から他人に対して同情も共感も感じたことがないので、
裏の世界で仕事をすることに躊躇しませんでした。
雪子は後藤田から『双子の涙』をかすめ取ろうとして、勝巳を操っていました。

雪子は、青酸カリ入りのカプセルだと言って、
カプセルを口の中に放り込み、勝巳が逃がしてくれないなら死ぬ、
と言って、勝巳の頬に唇を当てました。
その時、雪子は、勝巳が医療事故を起こしていないことや、
鍋島一太を殺していないことを証明する音声が入ったICレコーダーを、
勝巳のポケットに入れ、逃げていきました。


それから1週間後、芹沢久美子は娘を出産しました。
さらに2週間後、神酒は芹沢久美子に、
川奈雄太は久美子の住んでいた団地でお腹の宝石を取り出そうとしたと言い、
悟のランドセルについていたネコのぬいぐるみの目が、
『双子の涙』であると言いました。

『双子の涙』は神酒が当局に渡すが、報奨金が久美子に払われるように、
全力を尽くすと言いました。

その後、小笠原雄一郎が、久美子とその娘と少し会話をしました。
小笠原雄一郎は久美子たちと別れた後、孫にできる限りのものを遺すため、
遺言を書き換えると言いました。

その後、濡れ衣を晴らした勝巳は、クリニックの地下のバーで、
お祝いをしてもらいます。
真美と神酒が実は兄妹で、離婚した両親に別々に引き取られたから、
真美は神酒のことを『章一郎さん』と呼んでいたことも判明しました。

(ちなみにこのシーン、「ゆかりの言葉を聞いて勝巳は絶句する」は、
「真美の言葉を聞いて勝巳は絶句する」の間違いではないかと思います。)

勝巳は濡れ衣が晴れた後も、神酒クリニックで働き続けることにし、
スタッフ達は乾杯しました。


というあらすじなのですが、展開がスピーディーで面白かったです。

知念実希人「幻影の手術室 天久鷹央の推理カルテ」のネタバレ解説

幻影の手術室: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫nex)


ナンバリングはありませんが、天久鷹央シリーズの6冊目です。
どうやら、短編集はナンバリングをつけて、
長編はナンバリングを外しているみたいです。

清和総合病院手術部、第八手術室で虫垂炎の手術が終了しました。

麻酔科部長の辻野咲江、執刀医の戸隠一平(とがくれ・いっぺい)、
看護師の秋津野乃花(あきつ・ののか)が手術室から出て行きました。

手術室の中には、麻酔科医の湯浅春哉(ゆあさ・はるや)と
患者の2人だけが残されました。

場面が変わり、麻酔科医控室で、看護師長、辻野咲江、戸隠一平、
外科医の八巻(やまき)、麻酔科医の水無月たちがモニターを見ていました。

第七手術室では、第一外科部長の黒部昭雄が記録を書いており、
早く退室してほしいと辻野咲江が文句を言いました。

やがて、水無月が第八手術室の異変に気付きます。

監視カメラの中で、湯浅春哉が誰かにおそわれているような動きをしていました。
さらに、床に赤い飛沫が飛びます。

戸隠や辻野たちが第八手術室に駆けつけると、そこは血の海でした。

辻野は廊下の十字路近くに置かれている救急カートを引っ張り、
近くにいた野乃花を連れて第八手術室に戻ります。

戸隠は心臓マッサージをし、辻野は点滴ラインを確保し、
アドレナリンや生理食塩水を流しました。

その途中、辻野は、湯浅が患者に筋弛緩薬の『ベクロニウム』を
投与しかけていたことに気付きました。

そんな中、目を覚ました患者は手に鋭利なメスを持っていました。
その患者のリストバンドには、鴻ノ池舞と書かれていました。

場面が変わり、4月の最初の金曜日の午後六時過ぎ、
小鳥遊優は天医会病院の救急部への出向から統括診断部に戻りました。

今年度の後半に4ヶ月間、研修医の鴻ノ池舞が自ら望んで統括診断部へ研修に来る、
と鷹央は言いました。
鴻ノ池を嫌っている小鳥遊は反対しますが、既に決定事項として決まっており、
どうしようもありませんでした。

小鳥遊のスマートフォンに、田無署刑事課の成瀬から電話がかかってきました。
被害者が透明人間に襲われたような状況だと成瀬は言います。
警察は、小鳥遊達の知り合いの鴻ノ池を有力な容疑者として見ていました。
成瀬は鷹央のことを嫌っているおり、
知り合いが容疑者だからと言って事件に首を突っ込まないように
と釘を刺すために電話したのでした。

しかし、鷹央には逆効果で、鷹央は小鳥遊を引き連れて清和総合病院に駆けつけました。
警備や看護師に止められますが、鷹央は清和総合病院の院長と知り合いであり、
天医会病院の副院長という肩書きも最大限に利用し、舞の病室に行きました。

しかし、病室の前には成瀬がいて、主治医の権限で面会謝絶になっていると言いました。
というか、警察が主治医に圧力をかけて面会謝絶にしたのですが。

今回の事件を担当予定の管理官は今までと違い、鷹央のことを物凄く毛嫌いしており、
名指しで鷹央が事件に関わらないようにと指示していました。
この病院の医療関係者以外は、この部屋に入れない、と成瀬は鷹央を追い返します。

そこへ、好々爺といった雰囲気の院長がやってきて、
鷹央と小鳥遊を院長室に連れていきました。
院長は鷹央に被害者の情報を流します。

殺された麻酔科医、湯浅春哉は30歳で、大学院を途中でやめ、陵光医大からの派遣で、
去年の4月から清和総合病院で働いているのだそうです。

院長から外科医が足りないという話を聞いた鷹央は、
小鳥遊をスパイとして清和総合病院にレンタルすることにしました。

その3日後には、小鳥遊は派遣の外科医として清和総合病院に潜り込み、
第一外科部長の黒部昭雄、副部長の戸隠一平、
卒後4年目でヒグマのような体型の男性医師の八巻を紹介してもらいました。

小鳥遊が殺人事件について水を向けると、八巻が、
うちの病院の手術部には去年から幽霊が出る、という噂を教えてくれました。

小鳥遊は鴻ノ池のカルテを読んだ後、病室に行きます。
鴻ノ池にかかった容疑を解くために潜入したと教えると、
鴻ノ池は目に涙を浮かべました。

鴻ノ池は事件前後のことを小鳥遊に教えます。
まず、天医会ではなくこの病院を選んだのは、最初に痛かったのが下腹部だったから、
婦人科疾患を知りあいに診察してもらいたくないと思い、
大学の先輩であり元カレだった湯浅に連絡をとったのがきっかけでした。

手術で麻酔から目覚めた後は、
湯浅が見えない何かと取っ組み合っているように見えたのだそうです。
血に濡れたメスを持っていたことについてはなにも覚えていない、と鴻ノ池は言いますが、
起きあがろうとしたときに偶然掴んだだけだと小鳥遊は説得しました。

しばらくして成瀬と、コンビを組んでいる迫という刑事がやってきます。
成瀬は小鳥遊を連れ出して問いつめますが、
小鳥遊は正式にこの病院の外科医になったのだと開き直りました。

赴任してから3日目、小鳥遊と黒部と八巻と野乃花はある患者の手術をしました。

手術が終わり際、黒部は野乃花に露骨なセクハラをします。
そのとき、八巻は、第八手術室に出る幽霊は去年術中死した患者だ、と言い出しました。

去年の11月に、単独のバイク事故を起こした17歳の少年が運ばれてきて、
第八手術室で術中死したのです。
そのときの執刀医は黒部で、麻酔をしたのは湯浅春哉でした。
少年の状態を聞いた小鳥遊は、救命は困難だったはずだと言いましたが、
幽霊が出るようになったのはその頃からなのだそうです。

去年の12月の深夜には、湯浅と辻野咲江は、カートがひとりでに動き、
透明な影が襲いかかってくるのを見たのだそうです。

八巻がその話をしてから半日後の深夜、
小鳥遊は黒部が八巻に対してパワハラをしているのを目撃しました。

手術室の廊下に出た八巻は、カートが勝手に動いたのを見たと言い、
第八手術室の方に行きます。
小鳥遊と黒部が八巻を追うと、カートが勝手に動き、
フットスイッチを使わないと開かないはずの第八手術室の扉が開くのを、
小鳥遊も目撃しました。

八巻が第八手術室に入り、少し遅れて小鳥遊と黒部も中に入りますが、
部屋の中には誰もいませんでした。

第七手術室の方から妙な音が聞こえ、小鳥遊と黒部は第七手術室に入りますが、
そこも無人でした。

という話を、小鳥遊は鷹央が住む天医会病院の屋上の“家”で報告しました。

そこへ鷹央の姉の真鶴がやってきて、
院長を務める叔父が鴻ノ池を解雇したがっている、と相談しました。
鷹央は真鶴に対して、
小鳥遊が痔の手術のために休んでいるということにしていましたが、
それを知った小鳥遊は怒り、真鶴に本当のことを言うようにと言いました。

鷹央はそれを承知した後、「透明人間」を脅迫すると言って、小鳥遊に、
ある人物に脅迫状を渡させました。

その翌日の夜9時、鷹央と小鳥遊は、
脅迫相手が来るのを統括診断部の外来で待っていました。

やってきたのは、「八巻と野乃花でした。
昨日の未明に小鳥遊が目撃した怪現象の犯人は、八巻と野乃花だったのです。

あらかじめ第八手術室の中に潜んでいた野乃花は、
細い糸を引っ張ってカートを動かし、
部屋の中からフットスイッチで扉を開けたのでした。
そして、野乃花は、小鳥遊や黒部より一足早く第八手術室の中に入った八巻の
白衣の下に隠れていたのです。
八巻が第七手術室の境界の壁を叩いて小鳥遊と黒部を第七手術室に移動させ、
その隙に野乃花は非常口から脱出しました。

八巻と野乃花は2年前から付き合っていましたが、八巻は黒部にパワハラされ、
野乃花は黒部にセクハラされていました。

先週湯浅が殺された件で、黒部は幽霊を怖がっており、
故郷の病因に来ないかと誘われているという話もしていたので、
黒部を怖がらせることができれば病因から追い出すことができる、
と八巻と野乃花は思い、怪現象を起こしたのでした。

しかし鷹央は、黒部が八巻と野乃花を標的にしたのは、
理不尽なことがあっても八巻と野乃花が戦わず、耐えるからだと言います。
怪現象を起こすような小細工でその場を乗り切ろうとしても、
根本は解決しないと言い、戦えとアドバイスしました。

さらに、八巻と野乃花がやったことを報告しない代わりに、
湯浅の事件について協力してもらいます。

翌日、土曜日の昼過ぎに小鳥遊が鴻ノ池の様子を見に行くと、
刑事から何度も問いつめられた鴻ノ池は気弱になり、
本当に自分が犯人かもしれないと思い始めていました。

鴻ノ池には、弟2人と妹が1人いて、高校生のときに父親がクモ膜下出血で亡くなり、
家計が苦しいのに母親が医学部に行かせてくれた、という身の上話をします。

刑事は、心神喪失で罪に問われないと言って、自白を引き出そうとしていました。

しかし小鳥遊は、そんなことをしたら、
全国ニュースになって家族のところにマスコミが押しかけ、
天医会病因を解雇される、と告げました。

湯浅が鴻ノ池の点滴ラインの側管にシリンジを接続し、
筋弛緩剤を投与して殺そうとしていた、と鴻ノ池は刑事から聞かされ
、ショックを受けていたのでした。

小鳥遊は鴻ノ池を励まし、病室を出ました。

秋津野乃花から事件当時の監視カメラの映像を
USBメモリーにコピーしてもらったものを受け取ります。
そこへ黒部がやってきていつものようにセクハラしますが、
野乃花が毅然と立ち向かい、コンプランス委員会に訴えたり民事で告訴したりする、
というと態度を変えました。

小鳥遊は鷹央の家に行き、USBメモリーを渡します。鷹央は映像を確認しますが、
事件が起こり八巻と水無月と辻野が第八手術室の中に入ったところで
映像が途切れていました。

鷹央は自殺の可能性を疑いますが、
「見えない何か」に襲われていたことの説明がつきませんでした。

次に、遠隔殺人や秘密の出入り口、隠れ場所があったのではないか、と考えました。

犯人は事件が起こる前から密室の中にいて、湯浅を殺し、
八巻や水無月や辻野が駆けつけてきたときは隠れ場所に身を潜め、
スタットコールで集まってきた医師たちに紛れた、という可能性を検討するため、
小鳥遊と鷹央は深夜の清和総合病院の第八手術室に不法侵入しました。

小鳥遊が鷹央を肩車して空調システムの給気口を調べます。
直径が30センチもなく、鷹央ですら出入りするのは無理でしたが、
事件当時黒部がいた第七手術室にダクトが繋がっていることに気付きました。

不法侵入しているところを辻野に見つかってしまいましたが、
辻野は鷹央に好意的で、話を聞かせてくれました。
辻野にとって、湯浅は大学の後輩だったのだそうです。

去年の12月に辻野と湯浅が目撃した怪現象のことも教えてくれます。
第八手術室の前だけ「影」が濃くなり、急用カートがすごい勢いで走り、
回転したのだそうです。
「影」は第八手術室に入っていきましたが、
辻野の悲鳴を聞きつけて駆けつけてきた警備員が調べても、
異常は見つからなかったのだそうです。

2、3ヶ月前から、湯浅と黒部に剃刀の刃が入った脅迫状が届いていた、
ということも教えてくれました。

事件から2週間くらいが経ち、小鳥遊が鴻ノ池の診察をしたとき、
鴻ノ池が気になる話をしました。

去年の3月ごろ、湯浅から鴻ノ池に連絡があり、
どうしても手放さないといけない理由ができたので、
ペットを飼ってくれないかと頼まれたのだそうです。
鴻ノ池は断りましたが、美味しそうな名前の動物だったのだそうです。
また、湯浅が大学院を途中で辞めた理由は、
鴻ノ池にも教えてくれなかったのだそうです。

ナースステーションに戻ると、休養することになった黒部の代わりに、
部長代理となった外科副部長の戸隠から、
鴻ノ池を退院させようと思っている、と言われました。

ナースステーションから少し歩いたところで、成瀬とすれ違います。
そのとき成瀬は、今晩零時ごろ、鷹央の家に行く、と耳打ちしました。

小鳥遊が鷹央の家に行くと、
鷹央は湯浅について調べたことを教えてくれました。
湯浅は大学院にいたときに「麻.薬による幻覚作用と脳内物質についての考察」
という論文を書いており、癌性疼痛で麻.薬を使っときの
脳内ホルモンの状態などについて、マウスを使った実験をしていたみたいでした。

鷹央の家にやってきた成瀬は、鴻ノ池が今週末あたりに逮捕される、
と教えてくれました。
鴻ノ池は過去の交際のいざこざから、湯浅に恨みを抱いており、
麻酔で朦朧状態だった鴻ノ池は無意識のうちにメスで湯浅の首を切り裂き、
湯浅は反撃をと思って鴻ノ池に筋弛緩剤を投与しようとしたが、
途中で力尽きてしまった、というストーリーを警察は考えていました。

しかし、湯浅の首に、男性の指で首を強く絞められたような内出血があること。
昨年末に病院に、手術に使っている麻酔の一部が盗まれている、
と匿名の報告があったこと。
湯浅が知り合いに、麻.薬依存者の更生施設を探して欲しい、と頼んでいたこと。
湯浅が大学院を辞めた去年の3月ごろから湯浅の行動がおかしかった、
と多くの人が証言していること。

これらのことから、成瀬は捜査本部の見解に疑いを持っており、
こっそりと鷹央に相談しにきたのでした。

また、貴重品が入っていない湯浅のロッカーが荒らされていたことなどを、
成瀬は教えてくれました。

さらに、帰り際に、事件前後の映像が入ったUSBメモリーを
「落し物」していきました。

その映像を見た鷹央は、鴻ノ池舞の身に危険が迫っている、と言いました。

それから1日半が経った木曜の昼、鴻ノ池の容体が悪くなりました。

体の中で強い炎症が起こり、多臓器不全を起こしかけているようでした。
鴻ノ池本人も、朝から体がだるくて吐き気がひどく、寒気とめまいがすると言います。

しかし、CTやエコーで調べても異常を発見することができませんでした。

犯人が毒を盛ったのかもしれないと思い、鷹央に電話して指示を仰ぎます。
すると鷹央は、辻野に頼み込んでICUに入れろと言いました。

しかし、その数時間後に鴻ノ池が急変したと秋津野乃花が叫びました。

脈がなく、蘇生処置をしますが、「30分後、小鳥遊は死亡確認をしました。

その後、辻野は、棚にある分厚い辞書に隠していたアンプルを
自分の腕に注射しました。

それを、院長の許可をとって設置した隠しカメラで見ていた
鷹央と成瀬と迫刑事は部屋に入ります。
鷹央は辻野が『透明人間』の正体であり、湯浅を殺した犯人だと言いました。

辻野が注射した液体を迫が調べ、麻.薬で陽性反応が出たと言いました。

鷹央はまず、去年の12月に辻野が目撃した『透明人間』は、
辻野の麻.薬による幻覚であり、湯浅は辻野を庇っていただけだと説明します。
その後、湯浅は辻野を社会的ダメージなく麻.薬依存症から更正させようと、
更正施設を探していたのでした。

しかし辻野は、湯浅が手術用の麻.薬を盗んでいるかのように記録の改竄をします。
それに気づいた湯浅が辻野を告発しようとし、口封じに殺されたのでした。

また、湯浅が殺されたとき、鷹央は辻野のおかしな行動に気づいていました。

それは、手術室の中に全身麻酔用のカートがあったにもかかわらず、
わざわざ廊下を走って救急カートを取りに行ったことでした。

鷹央は辻野のマグカップに印刷された、デグーという、
リスのようなげっ歯類を指さします。
それは辻野のペットをマグカップにプリントしてもらったものでした。
そしてそのデグーの元の飼い主は湯浅であり、
湯浅は大学院でマウスを使った実験をしていました。

湯浅は去年の3月に、デグーに噛まれてアナフィラキシーを起こしました。
げっ歯類の唾液に含まれるリポカリンは、
人間に対して強烈なアレルギーを起こすことがあるのです。
これでは、マウスを使った研究を続けることは困難です。

湯浅は治療した医師に忠告され、大学院を辞めたのでした。

辻野はそのアレルギーを利用して湯浅を口封じすることにし、
まず剃刀入りの脅迫状で指を傷つけさせました。
さらに、ペットショップで売られている冷凍マウスからリポカリンを抽出し、
手術で使う手袋の指先に塗ります。
湯浅は鴻ノ池の手術を終えた後、一旦手袋を脱いだので、
その手袋とすり替えました。

鴻ノ池の呼吸状態を確認していたあたりで、湯浅はアナフィラキシーを起こし、
声帯が腫れあがり、声門が閉塞して窒息してしまいました。
湯浅は自分で自分の首を押さえ、
『透明人間』と取っ組み合っているように暴れました。


しかし、医師である湯浅は「自分がアナフィラキシーを起こしていることに気づき、
アドレナリンを注射しようと全身麻酔用カートに飛びつきますが、
辻野が予め抜き取っていたため、アドレナリンはありませんでした。

湯浅は最後の手段として、メスで首の皮膚ごと切開し、
その部分にチューブを差し込むことで強引に気道を確保しようとしました。

しかし、間違って血管を切ってしまい、亡くなってしまったのでした。

辻野の予定では湯浅はアナフィラキシーのショックで
『病死』する予定だったのに、
誰がどう見ようと『殺人』になってしまいました。

そこで辻野は蘇生に参加するふりをして、
廊下にあった救急カートを手術室まで運び、
手術室内のカートからアドレナリンのアンプルを抜いたことを誤魔化しました。

凶器であるリポカリンを仕込んだ手袋も回収し、
アドレナリンを投与することでアレルギー症状を強力に抑え込みました。

証拠はないと言った辻野の前に、生きた鴻ノ池が現れました。

辻野の犯行を暴くために、鴻ノ池の血液を敗血症患者のものとすり替えたり、
鴻ノ池に体調不良の演技をしてもらったりして、ICUに移動させ、
辻野が鴻ノ池を殺害しやすい環境を作っていたのでした。

小鳥遊は嘘をつくとすぐに顔に出てしまうため、
鴻ノ池をICUに移すまで種明かししてもらっていませんでした。

辻野が鴻ノ池を殺そうとしたのは、被疑者死亡という形で書類送検させ、
事件の捜査を打ち切らせるためでした。

心電図や、辻野がリドカイン溶解液を投与した点滴ラインにも細工がしてあり、
鴻ノ池は本当に死んだと辻野に思い込ませ、
安心させて麻.薬を使ったところを現行犯逮捕する、
というのが今回の作戦だったわけです。

辻野が成瀬と迫に逮捕されて出ていくと、
なんで湯浅は鴻ノ池を殺そうとしたのか、と鴻ノ池は訊きました。

それは、密室に2人きりという状態で死亡したら、
鴻ノ池に殺人容疑がかかってしまうと湯浅は考えたからです。
鴻ノ池に筋弛緩剤を投与すれば、動けなくなりますし、
湯浅は優秀な麻酔科医なので、呼吸はできるぎりぎりの量なら、
鴻ノ池が死ぬ危険もほとんどありませんでした。

こうして見事に事件を解決し、
小鳥遊と鴻ノ池は天医会病院に戻ることができました。


というあらすじなのですが、これまでは嫌な女だなー、
という印象しかなかった鴻ノ池の評価が上がった話だったと思います。
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