知念実希人「あなたのための誘拐」のネタバレ解説

あなたのための誘拐


平成23年、ゲームマスターと名乗る誘拐犯が
高輪台(たかなわだい)で女子中学生を誘拐し、
警察に通報するように女子中学生の家族に指示しました。

ゲームマスターは、
40歳の刑事の、上原真悟(うえはら・しんご)に身代金を持たせると、
制限時間を区切って東京中を走りまわらせました。
しかし、午前10時から午前0時まで、
14時間も走り続けた上原は体力の限界に達し、
代々木公園で12秒間に合いませんでした。

そして、翌日、人質だった中学生は荒川の河川敷で、遺体で発見されました。

遺体を見た真悟は自分のせいだと己を責め、
警察を退職して独自にゲームマスターを追いました。

事件が起こる半年ほど前から、
真悟は部下の加山楓(かやま・かえで)と不倫関係にありました。
しかし、事件のせいで楓との関係が悪くなり、事件から半年後に、
真悟は一方的に別れを告げました。

容疑者として浮上したのは、
荒川区に住んでいた桃井一太(ももい・いちた)という22歳の無職の男でした。

桃井一太は事件の1ヶ月ほど前、裏で流れているプリペイド携帯電話を
20個ほどまとめ買いしていました。

桃井一太は高校卒業後に警察の採用試験を受け続けましたが、
ことごとく不採用となりました。
夢に破れた桃井一太は親が所有するアパートの一室に籠もり、
インターネットの掲示板などに警察に対する逆恨みを
書き連ねる生活を送っていました。

真悟は桃井一太の部屋の向かい側のアパートを借り、
桃井一太の部屋を見張っていました。

それから2週間後、桃井一太は自室で首吊り自殺をしました。

真悟は生ける屍のような状態になり、半年後には妻と離婚しました。

誘拐事件から4年後の、平成27年10月31日、
警視庁本部庁舎6階にある、刑事部捜査一課特殊班係に、
高輪署管轄内で誘拐事件が発生したという電話がきました。

その電話を取った加山楓(かやま・かえで)は、
オペレーターから詳細を聞きます。

佐和奈々子(さわ・ななこ)という白金(しろかね)高輪に住む
17歳の高校3年生が誘拐されました。

マル被(犯人)から、娘を返してほしければ5000万円用意しろと
奈々子の母親に電話があったのだそうです。

マル被が通報を指示し、2時間以内にまた連絡する、
捜査員と家で連絡を待つように指示したのだそうです。

また、マル被は、自分は“ゲームマスター”だと名乗っていました。

加山は、我那覇(がなは)、若林という男性刑事と一緒に、
佐和奈々子の自宅へ行き被害者対策をすることになりました。

自宅に行くと、佐和奈々子の母親の真奈美はいましたが、
真奈美の夫は名古屋に出張中でこちらに戻っているところでした。

やがて犯人から電話があり、ゲームマスターの指示で楓は電話に出ました。

ゲームマスターは、君も僕を偽者だと思ってるでしょ? と言いました。

ゲームマスターは、僕こそがゲームマスターだと言い、
桃井一太はスケープゴートだと主張しました。

ゲームマスターは、4年前の事件のときも、
楓が被害者の家にいたということを知っていました。

ゲームマスターは最初の要求として、正午までに上原真悟を呼べと言いました。
真悟はもう警察を辞め、警備員をやっていましたが、
ゲームマスターはそのことも知っていました。

場面が変わり、上原真悟は大学2年生の娘の水田優衣(ゆい)と
表参道のカフェで会っていました。

苗字が違うのは、離婚して優衣が元妻に引き取られたからでした。

毎月1回、真悟は優衣と面会していて、今日がその日でした。
優衣は真悟のことを“お父さん”ではなく“真悟さん”
と呼ぶようになっていて、よそよそしい態度でした。

真悟は優衣に、ちょっと聞いてほしいことがあるんだ、と言いましたが、
そのとき、楓から電話があり、ゲームマスターが誘拐事件を起こしたと知らされ、
優衣に1万円札を渡して佐和奈々子の家に行きました。

奈々子の父親の佐和好嗣はもう帰宅していました。

真悟は奈々子の母親の真奈美に頼み、奈々子の部屋を見せてもらいます。

その際、最後に娘と会ったのはいつかと訊ねると、
昨日の夕方、午後5時ごろだと真奈美は答えました。
今日が創立記念日で、奈々子は友達の家に泊まって、
勉強すると言って出かけたのだそうです。

真奈美に出て行ってもらい、1人で奈々子の部屋を調べると、
“ユメキス”というロックバンドのポスターが貼ってありました。

ゲームマスターからボイスチェンジャーで声を変えた電話があり、
本物だという証拠を見せると言い、電話が切れました。

続いて、真悟のスマートフォンに非通知でゲームマスターから電話があり、
『ミッション・インコンプリート』という、
4年前にゲームマスターが最後に言った言葉を言われました。

報告書にも書かなかったので、それを知っているのは、
真悟とゲームマスターだけでした。

真悟は、いま話している相手がゲームマスターだと確信しました。

ゲームマスターは、14時までに池袋のジュンク堂書店に、
身代金をリュックに入れて真悟が持ってきて、と最初の指示を出しました。

しかし、指揮本部は、刑事を辞めた真悟に重要任務を任せられるわけがない、
と揉めていて、本部からの指示が遅れていました。

特殊班の担当管理官の近衛司(このえ・つかさ)警視は、
5年近く真悟と働いたことがあり、他の幕僚たちを説得し、
身代金の搬送を上原真悟に任せると結論を出させました。

池袋のジュンク堂書店で待っていると、ゲームマスターから電話があり、
ルール説明がありました。
真悟がゲームマスターの指示を最後までクリアーできたら、
真悟は一番欲しいものを手に入れるのだそうです。

最初のゲームの制限時間は、この通話を切ってから5分後です。

その書店の中を走らせると言い、ゲームマスターは、
私の靴は走るのには適していない、走ったら簡単に脱げちゃうかもしれないし、
それ以前にバラバラに砕けちゃうかも、
午前零時までに見つけてね、そうじゃないと、
あなたはもう私が私だって分からなくなってしまう、
零時までが魔法の時間、とヒントを出しました。

真悟はそのヒントが『シンデレラ』を意味していると判断し、
8階の児童書のコーナーに行きました。

電子音が聞こえていて、『シンデレラ』の本を引き抜くと、
携帯電話が鳴っていました。

その通話ボタンを押すと、ゲームマスターは、
ミッション・コンプリートだと言いました。

ゲームマスターは、2020年にはこの東京でオリンピックがあるね、
たのしみでしかたなくて、頭の中が未来にタイムスリップしちゃっているんだ、
と言った後、15時半までに、この東京で一番魚が集まるところに行ってもらおうかな、
と言いました。

真悟は築地に行きましたが、そのことをゲームマスターに伝えると、
カジキはサメに食べられちゃったからね、年寄りが一人で漁に出たりするからだよ、
もし少年が一人乗っていたら、大物を水揚げできたのにねぇ、
ゲームマスターはヒントを出しました。

さらに、カーンという音が聞こえ、質問は「誰の?」だよ、
「タメ」はひらながじゃなくて漢字だ、とゲームマスターは言いました。

そこに隠してある別の携帯電話に、15分後に連絡を入れる、と言いました。

東京オリンピックがある2020年には、築地の魚河岸は豊洲に移転しているはずで、
ゲームマスターが行けと指示していた場所は豊洲だと真悟は気付きました。

それを聞いた近衛はオートバイ追跡部隊の「トカゲ」に、
真悟を豊洲に運ぶよう指示しました。

また、カジキマグロはサメに食われて水揚げできなかった、
というのは「老人と海」という小説の内容だと近衛は真悟に伝えました。

「老人と海」の作者はアーネスト・ヘミングウェイで、
ヘミングウェイが書いた「誰がために鐘は鳴る」が、
ゲームマスターの指示した場所だと真悟は判断しました。

豊洲にある一番規模が大きい「ららぽーと豊洲」の3階にある紀伊国屋書店に向かいますが、
「タメ」が漢字だというゲームマスターの言葉を思い出し、
映画の「誰が為に鐘は鳴る」だと真悟は気付きました。

「誰が為に鐘は鳴る」を上映している映画館に行くと、
背もたれのそこで携帯電話が鳴っていました。

指示はそこに封筒が貼ってあるから、中の便箋を見て、とゲームマスターは言いました。

封筒の中には便箋が1枚と携帯電話の電池、
コインロッカーのものらしき小さな鍵が入っていました。

便箋には定規を使って書かれたカクカクとした文字で、
18時までに代々木八幡にある喫茶「ケイト」に水田優衣を呼べ、
という内容がカタカナで書かれていました。

場面が変わり、午後5時48分に、
真悟は代々木公園のそばにある“ケイト”という名の喫茶店で優衣と待ち合わせました。

優衣が来ると、ゲームマスターから電話があり、
真悟が娘に隠していることを10分以内に全部娘に告白すればゲームクリア―、
という内容を言われました。

真悟は優衣に、膵臓癌(すいぞうがん)が見つかったと告白しました。

去年の9月に、このまま治療を受けなければ余命は半年ほどだが、
化学療法を受ければさらに半年ほど延命が可能だと説明されていました。

抗癌剤を投与することで背中の疼痛が弱くなる可能性があると説明され、
真悟は化学療法を選択しました。

現在も週に1回は抗癌剤の点滴を受けに通院していますが、
癌は大きくなってきていて、残された時間は半年はないだろうと主治医は告げました。

しかし、ゲームマスターは、まだ隠していることがあると言います。

楓から、特殊班の刑事として、するべきことをしてください、
というメールが届き、真悟は楓と不倫していたことを優衣に告白しました。

誰と付き合っていたのよ! と優衣に言われ、ゲームマスターからも全部告白しろ、
と言われ、楓の名前を口にしました。

優衣は、14歳の誕生日に真悟がプレゼントした星型のペンダントを胸元から引き抜き、
真悟に投げつけ、さよなら、二度と会いたくない、もう連絡しないで、
と言い、気茶店から出て行きました。

ゲームマスターは最後の大勝負だと言い、東京のてっぺん、
日本史上最高の剣豪がいる場所に午後8時までに行ってね、と言いました。
封筒に入っていた鍵はそこの地下にあるコインロッカーの鍵なのだそうです。

日本史上最強の剣豪と言えば、宮本武蔵で、
高さ634(ムサシ)メートルを誇る日本最大の建築物、
東京スカイツリーに行けという指示なのでした。

コインロッカーには『20時00分』と入場時間が記された
展望デッキの予約入場券が入っていました。

スカイツリーでは、ハロウィンナイトというイベントが開催中で、
仮想すれば展望台への入場料が無料になるとポスターに書かれていました。

時刻はまだ午後7時前でしたが、ゲームマスターから予定変更の電話があり、
4年前に女子中学生の遺体が発見された、荒川にかかる千住新橋に行って、
北千住側の欄干下に隠してあるスーツケースに5000万円を入れて、
午後9時ちょうどに橋の真ん中から荒川に落とせ、
という内容を言われました。

真悟はそれを指揮本部に伝えましたが、荒川はダミーであり、
スカイツリーから捜査員を減らすためだと言いました。
真悟は、スカイツリーにも捜査員を残してくれと頼みました。

8時になると、再びゲームマスターから電話があり、
ゲームマスターは荒川の指示はダミーだと認めました。

20分以内にスカイツリーの最上階、
450メートルフロアまで上がってきてくれるかな?
とゲームマスターは指示を出しました。

その通りにすると、午後8時25分までにソラカラポイントで記念写真を撮影し、
身代金の入ったリュックをカボチャの後ろに置いて、とメールが入りました。

ソラカラポイントというのは、スカイツリー展望台の最高点のことで、
ハロウィンらしく、ジャック・オー・ランタンの顔が彫られた
巨大なカボチャのオブジェが置かれていました。

指示通りにすると、僕を見つけて、真ん中にある五角形、その中に僕はいるよ、
僕を見つけられなかったら、人質は殺す、
僕を見つけられたら、一番欲しいものをあげる、とメールがきました。

そのとき、煙が上がりました。
その場所に行くと、窓際の見つかりにくい位置に発煙筒が何個も置かれていました。

多機能トイレから、警備員の制服を着た若い細身の男が出てきました。
そのトイレの隙間から、もうもうと煙が溢れはじめました。

その男を捕まえると、ネットで誰だかわからない奴から依頼され、
今日、午後8時半にここで発煙筒を10本以上焚けば、
金をくれると言われたのだと男は言いました。

カボチャの後ろからも煙が上がり、5000万円は奪われてしまいました。

真悟は五角形を探し、星型の形をした公式キャラクターの、
バンパイアの着ぐるみを見つけました。
その後頭部は緩やかな五角形に見えなくもなく、真悟は着ぐるみに声をかけました。

着ぐるみは逃げましたが、真悟は着ぐるみを捕まえ、チャックを開けました。

しかし、その男もネットで依頼されただけで、
警備員の制服を着て発煙筒を炊いた男の友達なのだと言いました。

ゲームマスターから電話があり、今日一日の行動を思い出してみなよ、
手がかりはそろっている、と言いました。

真悟はスカイツリーから東京の夜景を見下ろし、皇居だ! と叫びました。

池袋、豊洲、代々木、このスカイツリー、この四ヶ所の真ん中にして、
東京の中心にあるのが、五角形の皇居でした。

しかし、ゲームマスターはそれが正解なのか言わず、
なんの変哲もない白いワンボックスカーの写真と、
誘拐された子はこの車の中にいるよ、という文面のメールが送られてきました。

真悟はゲームマスターの指示で佐和奈々子の家に戻った後、
今日真悟がやった4つのゲーム、
シンデレラ、誰が為に鐘は鳴る、ケイト、バンパイア、
の最初の文字を入れ替えると「竹橋」になると気付きました。
竹橋は、皇居の堀にかかっている橋のことです。

その近くにある東京国立近代美術館の駐車場でバンが発見されましたが、
バンの中には首元を大きく切られて大量に出血し、
死亡した佐和奈々子の遺体がありました。

ゲームマスターから電話があり、上原さんは本当の答えを見つけられなかった、
これで前半戦はお終い、これから後半戦といこうじゃないか、
そのゲームに勝てば、君が本当に欲しかった僕が手に入る、
実は僕、上原さんと会ったことがあるんだよ、という内容を言われました。

それから13日後、真悟のことを昔から毛嫌いしている、
警視庁捜査一課殺人犯捜査第四係の刑事である重野竜三(しげの・りゅうぞう)が、
真悟が抗癌剤を投与しに来た病院へやってきました。

真悟は最後のゲームマスターの電話の内容を警察に教えていませんでしたが、
重野は真悟が何か隠していると考えていました。

重野がトイレへ行っている間に、重野に同行していた新人刑事の佐藤に話しかけ、
重野がいる四係のほかに六係が捜査をしていると情報を引き出しました。

真悟は、六係にいる刑事の阿久津和弘(あくつ・かずひろ)とバーで会い、
捜査本部の情報を流してもらう代わりに、
1ヶ月後、真悟が知っている情報を全部阿久津に渡す、と取引をしました。

佐和奈々子の死亡推定時刻は10月31日の午後7時から9時の間で、
バンは盗まれたもので、ナンバープレートが付け替えられていたため、
Nシステムにも引っかかっていませんでした。

また、事件前日の佐和奈々子の足取りがおかしく、
友達のところに泊まるというのは嘘で、渋谷に行っていました。
ゲームマスターは佐和奈々子の恋人でだったのかもしれない、
と本部は考えていました。

阿久津から情報提供を受けた3日後の昼下がり、
真悟は佐和奈々子が通っていたという品川の塾の応接室に行き、
堂本駿平(しゅんぺい)という若い男性の塾講師と話をしましたが、
あまり有力な情報は得られませんでした。

今度は、奈々子の友人の猪原(いのはら)美香に、路地で話しかけますが、
話をするのを拒否されました。
しかし、美香の鞄に5人組男性アイドルグループの写真がついたキーホルダーを見て、
翌日、そのアイドルグループのコンサートのチケットと引き換えに、
話を聞かせてもらうことにしました。

ちなみに、そのプラチナチケットは80万円も情報屋に払って手に入れました。
真悟は癌の診断によって3000万円の保険金を手に入れていたので、
お金には余裕がありました。

奈々子には恋人がいて、その恋人から洗脳されたせいで人が変わった、
と美香は言いました。

奈々子は“ユメキス”というバンドが好きで、
そのライブ会場で声をかけて、自分もあのバンドのファンだとか言えば、
奈々子と仲よくなるのは簡単だ、と美香は言いました。

インターネットカフェで調べ、
“ユメキス”は、現在は“MASK”と名乗っていると判明しました。
次のライブが3日後に渋谷であることを確認し、帰る途中、
真悟は男に尾行されているのに気付きました。

しかし、癌の疼痛が起きてしまい、男を逃がしてしまいます。

自宅に帰ると、『マダ ボクヲ ミツケラレナイノ?』という手紙がありました。

3日後、全員がマスクをして演奏する女性4人組バンド“MASK”のライブが終った後、
出演者控室に行き、“メイ”“スズ”“アカネ”“キッコ”たちに話しかけます。

1枚2000円のCDを300枚買い取り、佐和奈々子の話を聞きます。

今はマイナーなバンドの“MASK”ですが、
1年前まで“ユメキス”と名乗っていた頃は熱烈なファンがいっぱいいて、
佐和奈々子もその中の1人でした。

ファンはほとんどが若い女の子で、ライブに男が来たらかなり目立って、
覚えていますが、奈々子が男と一緒にいたことはなかったはずだ、
とメンバーたちは答えました。

家に帰ろうとすると、ゲームマスターから、
今夜午前2時に指定する場所に来て、と電話がありました。

東京湾野鳥公園の近くにある倉庫行くと、サングラスをかけた男に殴られ、
床に倒れてしまいました。

サングラスの男は、倉庫の奥にいる目出し帽の男に話しかけました。
腕ひしぎ十字固めでサングラスの男の肘を折ります。

サングラスの男に見覚えがあり、バーで真悟を監視していた男でした。

真悟が目出し帽の男の目出し帽を取ると、そこから現れたのは佐和好嗣でした。

サングラスの男は佐和好嗣に雇われた探偵で、
真悟のせいで奈々子が殺されたと考えた佐和好嗣は、
真悟を呼び出して2、3発殴ろうとしたのでした。

探偵が逃げた後、佐和好嗣は何度も真悟を殴りましたが、
真悟は何も言わず、謝罪しました。

慟哭する佐和好嗣に、真悟は、協力を仰ぎました。

佐和好嗣を自宅に招き、奈々子との親子関係について質問します。
1年前までは、奈々子は佐和好嗣を慕っていましたが、
いつの間にか、両親を憎むようになっていました。

3ヶ月前、奈々子が男とホテルに入るところを取った写真が送られてきて、
娘を問いつめましたが、奈々子は最後まで相手についてはなにも言いませんでした。

週に3回は塾に行かせ、他の日は門限を午後6時にし、
土日や休日などは、誰とどこに行くか説明させてから外出させ、
さっき逃げた探偵に尾行させていました。

しかし、事件当日は、奈々子が外出することを佐和好嗣は知らず、
尾行がついていませんでした。
夫がやり過ぎだと思っていた妻の真奈美は、
夫に知らせずに奈々子に外泊を許可しました。

誘拐事件の後、真奈美は責任を感じて、大量の睡眠薬を飲んで自殺未遂をし、
今も入院中でした。

奈々子の机の抽斗に、4年前の誘拐事件に関して記された本が何冊もあった、
と佐和好嗣は言いました。
本に混ざって、桃井一太の母親の家の写真も入っていました。

また、佐和好嗣は探偵に真悟を監視させ、
ボイスチェンジャーを使って呼び出させましたが、脅迫状は出していないと言いました。

家に帰ると、新しい脅迫状が入っていて、
10年以上君を見続けている、という内容が書かれていました。

翌日、真悟は桃井一太の母親の桃井初子に会いに行き、
偽名でジャーナリストを名乗り、息子さんは冤罪です!
と言って、初子から話を聞くことに成功しました。

初子に奈々子の写真を見せると、初子は破顔して、ナオコちゃん、と言いました。

奈々子は初子にナオコという偽名で大学生を名乗って、
桃井一太について調べていたのでした。

3ヶ月前までは、月に2回くらいは来ていたのだそうです。

桃井一太の無実を証明するためだと言い、
地下室にあった桃井一太の遺品を見せてもらいます。

警察について書かれたノートが大量にありましたが、
『特殊班捜査係』についてまとめられているノートだけが見つかりませんでした。

また、エメラルドグリーンの錠剤が入ったピルケースを発見しました。

桃井初子の家を出ると、重野に公務執行妨害で捕まりそうになります。

しかし、そのとき、真悟は吐血し、重野は救急車を呼びました。

もうすぐ死ぬと思った真悟は、桃井初子の家に隠されていたノートの存在や、
10年前に真悟が壊滅させた組織が売りさばいていた合成麻.薬、
『グリーングリーン』を見つけたことについて話しました。

真悟はその後、一命をとりとめましたが、吐血は鎮静剤の飲み過ぎが原因で、
今後は麻.薬によって痛みをコントロールすることを条件に、
退院が許可されました。

退院し、駅に向かう途中、“罰ゲーム”をした、
とゲームマスターから電話がありました。

真悟がグリーングリーンについて話すと、ゲームマスターは数十秒沈黙し、
回線を遮断させました。

自宅に帰る途中、阿久津から電話があり、今日発売の週刊誌に、
事件の責任は全部真悟にあるという論調で真悟のことが書かれている、
と言われました。

その直後、マスコミに囲まれましたが、フルフェイスヘルメットを被り、
バイクに乗った楓が助けに来てくれ、真悟たちはファミリーレストランに入りました。

楓は有給をとっていましたが、近衛から連絡があり、
真悟を助けに行ったのだと言いました。

奈々子は恋人に、駆け落ちして新しい人生を始めようとそそのかされ、
狂言誘拐をしようとしたのではないか、と楓は推理していました。

しかし、恋人は最初から奈々子を利用するつもりで、
ホテルに入る写真も恋人が送ったのだと、楓は考えていました。

その後、真悟は楓のマンションに行き、関係を再開しました。

翌朝、真悟がマンションから出て行った後、楓はシャワーを浴び、地図を見ました。

そして、なんでゲームマスターは真悟をスカイツリーから佐和奈々子の家に戻したのか、
と考え、地図を見つめました。

楓はゲームの本当の答えに気付き、スマートフォンで真悟に伝えようとしましたが、
そこへゲームマスターが現れ、「楓はナイフで刺されて殺されてしまいました。

一方、ビジネスホテルにいた真悟に、阿久津から電話があり、
重要参考人が浮かび上がったと言われました。

10年前、真悟はグリーングリーンの事件で服部(はっとり)駿平という
医学部の学生を逮捕していました。

服部駿平は母親の姓に苗字を変え、進学塾の英語講師となりました。

奈々子が通っていた塾の講師、堂本駿平と服部駿平は同一人物でした。

ちょっと会って話したい、と阿久津は言い、いつものバーで待ち合わせすることにしました。

しかし、バーに向かう途中、公衆電話から電話がありました。
電話の相手は近衛で、楓が遺体で発見されたことを告げました。

防犯カメラには、楓のマンションから出て行く真悟の姿が映っていたのだそうです。

通話を切ると、阿久津が現れましたが、阿久津は楓を殺した犯人が真悟だと考えていて、
真悟を重要参考人として署に連れて行こうとしました。

しかし、真悟は阿久津の仲間の刑事を倒し、逃げました。


その後、ゲームマスターから電話があり、真悟の宝物を預かっていると言いました。

電話から、助けて、という優衣の声が聞こえてきました。

ゲームマスターは優衣を預かっていると言い、
狛江市の住宅街から外れた場所にある4階建てのビルの廃墟に行くよう、
真悟に指示しました。

真悟がその廃墟に入ると、2階から4階までの床が半分ほど取り壊され、
吹き抜けになっていて、そこに猿轡を噛まされ、
後ろ手に縛られた優衣が椅子に座らされていました。

そこへ「堂本駿平が現れ、真悟が武器を隠していないことを確認した後、
4階まで上がらせました。

堂本駿平は真悟に恨み言を並べ、暗視ゴーグルを握ると、
光源のランタンを消しました。

真悟は闇の中で一方的に殴られます。
その間、俺は奈々子を愛していたんだ、それなのにお前のせいで奈々子は死んだんだ!
と、堂本駿平は正気ではないことを口にしました。

堂本駿平は再びランタンに光を灯すと、優衣の喉元にナイフを当て、立たせました。

優衣の猿轡を外すと、優衣は、
久しぶりに『真悟さん』ではなく『お父さん』と真悟のことを呼びました。

そのとき、無数のパトカーのサイレンが聞こえました。
廃墟に入る寸前、真悟は近衛にメールしていたのでした。

真悟は4階に上がる途中に靴下の中に隠していた、
鋭いガラス片を武器に、堂本を切りつけます。

致命傷ではありませんでしたが、優衣が堂本の背中を押し、バランスを崩します。

さらに、真悟が堂本の踵を思い切り払い、堂本は吹き抜けから落下し、
首を折って死亡しました。

優衣は真悟に抱きつき、お父さん、ありがとう、と何度も言いました。


それから2週間後、真悟は元妻の亜紀と電話で話していました。

2年半前、亜紀が真悟に離婚を切り出したのは、
あのときなら、優衣が真悟に失望していて、
優衣の親権を真悟に取られないと思ったからなのだそうです。

優衣にとって真悟はずっとヒーローだったのだと亜紀は言います。

優衣は中学生くらいからカリスマ的な存在で、歌も上手く、
女の子からもよくラブレターをもらっていた、という話を亜紀はしました。

真悟が刑事時代みたいにかっこよくなって、いまの優衣は本当に幸せそうだ、
と亜紀は言いました。

その後、近衛がやってきて、「堂本が真悟を切りつけたナイフが、
楓を刺した凶器だと証明された、と言いました。

しかし、4年前の女子中学生誘拐殺人事件のときには、
堂本はその頃に勤めていた塾の勉強合宿で北海道にいたという
完璧なアリバイがありました。

真悟は、刺された楓のそばには、地図があったという話や、
奈々子が誘拐された事件の最後に真悟が奈々子の家に戻された理由について
楓が気にしていたのを思い出し、地図を広げました。

赤いボールペンで、白金高輪から池袋、豊洲、代々木八幡、スカイツリー、
白金高輪、の順に線を引きました。

すると、五芒星が現れ、その中心にはきれいな五角形が浮かび上がりました。

また、“MASK”はバンドメンバーのメイ、アカネ、スズ、キッコの名前を、
ローマ字で記した際の頭文字を並べて、“MASK”と名乗っていたのだろう、
と推理しました。
1年ほど前に“ユメキス”からバンドの名前が変わり、人気が急に落ちたのは、
熱狂的なファンを惹きつけていたカリスマメンバーがバンドを脱退したからでした。

1年前に脱退したそのメンバーの名は“ユ”から始まるものでした。
そのメンバーは若い女性で、奈々子はそのメンバーに心酔していました。

真悟は、代々木八幡の喫茶店で優衣に突き返された、
五芒星のペンダントを取り出し、真ん中の五角形に埋め込まれた琥珀を外しました。

そこに小さく折り畳まれた紙片が入っていて、電話番号が書かれていました。

その番号に電話すると、ゲームマスターが出ました。

4年前の女子中学生誘拐殺人事件は桃井一太の単独犯でした。
しかし、ゲームマスターは真悟が金庫に隠していたノートを読み、
その詳細や、真悟とゲームマスターしか知らないはずの
『ミッション・インコンプリート』という言葉なども知ったのでした。

堂本もゲームマスターの駒で、
家庭教師のアルバイトをして堂本に近づいたゲームマスターは、
堂本をコントロールしていたのでした。

そして、堂本と奈々子を会わせて、お互いに運命の相手だと暗示をかけました。

事件当日、真悟にかかってきた電話の中には、奈々子が掛けていたものもありました。
どうしてもゲームマスターが電話を掛けられないときには、
奈々子が代わりにゲームマスター役を引き受けていたのです。

マスコミに情報を流したのは、楓の居場所を見つけるためでした。

真悟のスマートフォンは優衣に設定してもらったものでしたが、
その中には、真悟がどこにいるのか、誰と電話やメールをしたのか、
全部ゲームマスターのスマートフォンに情報が送ららてくる
スパイアプリが仕込まれていました。

楓を殺したのは、優衣から真悟を奪ったからでした。
桃井一太の家にグリーングリーンを置いたのもゲームマスターでした。

ゲームマスターは、刑事時代の自信に溢れて、輝いていた真悟に会いたかったから、
こんな事件を起こしたのだと言いました。

ゲームマスターこと優衣は、本当の“最後のゲーム”をしようよ、と言いました。
私を捕まえてよ、そうしたら、真悟さんが一番欲しいものをあげる、
と優衣は言った後、愛しているよ、……お父さん、と言って通話を切りました。


というあらすじなのですが、面白かったです。

ゲームマスターの正体に関しては、タイトルの「あなたのための誘拐」が大ヒント過ぎて、
中盤で気付いてしまいましたが。

タイトルでネタバレしちゃってますね。

でも、それを差し引いても、話がめまぐるしく動き、
終盤には怒涛の伏線回収があり、凄く面白かったです。

そんな理由で2人(実質3人)も殺すなよ、とは思いましたが。

知念実希人「神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶」のネタバレ解説

神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶 (角川文庫)


神酒クリニックシリーズ、第2弾です。

午後11時40分ごろ。
茅場町ビジネスパレスの警備員の真鍋信二が、夜の当直をしていると、
電話がかかってきて、午前0時に爆発する爆弾を仕掛けた、
と言われました。

先輩警備員の猪原史郎にそのことを伝え、
真鍋信二と猪原史郎はビルの中を探し、
旅行代理店の給湯室で爆弾を発見しました。

1度はビルを脱出した真鍋信二と猪原史郎でしたが、
信二は警備員室で飼っていたインコが取り残されていることに気づき、
インコを逃がし、外に出ました。

その直後、本当に爆弾が爆発しました。

場面が変わり、主人公の九十九勝巳が、
患者の家から脱走した飼い猫の龍之介を捕まえる際に、
龍之介に引っかかれました。

その患者は現在ハワイに行っているため、
夜はビルの5階にある神酒章一郎と一之瀬真美の部屋で龍之介を飼い、
昼間は喫茶店に置いておくことになりました。

梅沢化粧品の社長の梅沢に呼び出され、
勝巳、神酒、真美、夕月ゆかり、天久翼、黒宮智人の6人は、
北区赤羽にある梅沢の豪邸に行きました。

そこには、30歳前後の女性がずぶ濡れで倒れており、
血を流していました。

女性を治療しながら事情を聞くと、妻には出張に行っていることにして、
愛人といちゃついているときに、
怪我を負った女性が庭に入ってきたのだそうです。
警察に通報すると、不倫を妻に知られてしまうかもしれないので、
神酒にこっそりと治療してほしい、と梅沢は頼んだのでした。

また、怪我をした女性本人も、意識を失う前に、
警察は嫌だと言ったのだそうです。

意識を取り戻した女性は、記憶喪失になっており、
翼は彼女に『赤羽』という仮の名前をつけました。

翼が診察すると、赤羽は、
暗い部屋の中で男たちに4つの爆弾を作らされていた、
という断片的な記憶を思い出しました。

午前零時を過ぎていると訊くと、私が作った爆弾が爆発する、
と赤羽は口走りました。
赤羽が冒頭のビルの爆破事件に関与している可能性が高くなりました。

その夜は翼がつきっきりで看病しました。
翌日の夜、赤羽の希望で、巽ビルの3階の病室で、
翼が赤羽に催眠をかけました。

赤羽は、窓から2棟のビルと川が見えるマンションにいる、
と思い出しましたが、家族というキーワードに反応し、
パニック状態になりました。

その翌日、マスコミ各社に、爆弾犯から犯行声明文が送られてきた、
というニュースが流れていました。

赤羽が思い出したマンションを探しに行くと、
そのマンションの前に10台を超える警察車両が停まっており、
警官が規制線を張っていました。

知らんふりをして通り過ぎようとしますが、
謎の男に尾行されていることに、黒宮が気づきました。

真美が運転するミニに乗って逃げようとしますが、
車で尾行されていることに気づき、真美はすさまじいスピードで運転し、
尾行を振り切りました。

クリニックに戻った赤羽は、尾行していた男は刑事ではなく、
赤羽を監禁していた男たちだと言いました。
他にも、土砂降りの夜、あの男から全力で逃げていたことや、
津田美鈴という自分の名前を思い出していました。

津田美鈴について調べ、31歳という年齢や、
関東電機大学の大学院卒業後、四葉電機に入社した、
優秀な技術者であることなどが分かりました。

刑事の桜井に、爆弾事件の情報を一部流し、見返りとして、
黒宮が暗記していた尾行の車のナンバーを調べてもらいました。

埼玉県に3ヶ所営業所があるレンタカーショップの車だと分かり、
その営業所の前で、勝巳たちが手分けして、
尾行の男が車を返しに来るのを張り込むことにしました。

勝巳とペアになった真美は、人の心を読めてしまう翼は、
記憶を読み取ることができない美鈴に惚れたのだろう、
という話をしました。

やがて、尾行していた男、2人がやってきて、勝巳は2人を尾行しました。

しかし、尾行に気づかれ、公民館の裏手に誘いこまれてしまいました。

ボクシングの経験がある角刈りの男と戦闘になりますが、
風邪気味だった勝巳はやられてしまいます。
角刈りの男の手下の男が、角刈りの男のことを「マサさん」と呼びました。

勝巳は誘拐されそうになりましたが、
ゆかりがパトカーのサイレンの声帯模写をして、男たちを追い払ってくれ、
助かりました。

クリニックに戻った勝巳は、黒宮に診断され、風邪ではなく、
猫の龍之介に引っかかれたことが原因の、猫ひっかき病だと言われました。

勝巳と戦闘になった男の特徴を伝えると、
神酒が黒宮に、プロボクサーについてリストアップしろと言いました。

その時、第二の爆発が起こったことが判明しました。

黒宮は、「マサさん」はタイガー雅次(まさつぐ)だと特定し、
2日後、神酒と勝巳はタイガー雅次が所属していたジムに行きました。

神酒はジムの会長に、ジム生の誰かとスパークリングをして勝ったら、
タイガー雅次の情報を教えてもらう、という条件を受け入れさせました。

神酒は、一番強い、80キロはあるジム生とスパークリングをし、
吹き飛ばして勝利しました。

約束通り、会長からタイガー雅次の情報を聞きます。

雅次は試合で網膜剥離になり、引退に追い込まれ、
荒れて傷害事件を起こしたが示談になり、警備会社に就職しました。
しかし、その警備会社が日本セキュリティ保障という大手警備会社に買収され、
リストラされ、ヤク.ザみたいな奴らの用心棒をやるようになり、
雅次は再び傷害事件を起こして逮捕され、会長は雅次と縁を切りました。

また、雅次の本名は成田雅次で、会長の一人息子でした。

勝巳と神酒が喫茶巽に戻ると、黒宮が、
「先々月、美鈴の夫と2歳の娘が、橋から河川敷に落下して、
車ごと炎上して死亡した」というニュースを見つけていました。

神酒は黒宮に、次に爆破が起こる場所と時間を予測してほしい、と言いました。

3日後、黒宮は、成田雅次の友人らしき人物の一人が、
恋人へ宛てたメッセージの中で、深夜、
東陽町に近づかないように警告するものがあった、という情報を掴みました。
その男は、深夜にそこで爆破事件が起こるって噂を、ネットで見た、
と恋人に言っていましたが、ネットにはそんな噂はありませんでした。

また、次の爆破が起こるのは今日でした。

これまでの2回では、13階建てのビルの最上階に爆弾が仕掛けられていたので、
今回も東陽町にある13階建ての山田ビルが怪しい、という話になりました。

ゆかりと勝巳は山田ビルに行き、ゆかりが警備員の気を引いている隙に、
勝巳が警備員の制服のポケットから鍵をくすねました。

神酒が防犯カメラのレンズに黒いスプレーを吹きかけ、
勝巳や神酒やゆかりや翼や美鈴は、山田ビルに侵入しました。

午後11時18分に、勝巳は爆弾を発見しました。
神酒が爆弾を解体しようとしますが、解体は難しそうでした。

しかし、美鈴は爆弾の構造を思い出し、コードを引き抜いて爆弾を無効化しました。

警備員が巡回する気配を感じ、真美が待機している車に戻ります。

ところが、爆破予告がなく、犯人は爆弾を持ち去られたことに気づいていました。

美鈴が口元を押さえて苦しそうにしているのを見て、
ゆかりは何かに気づいた様子でした。

ゆかりのアドバイスもあり、勝巳が真美に、
美術館で開催される大印象派展に行かないかと誘うと、真美は嬉しそうにしました。

公園のトイレに行っていた美鈴が、目出し帽を被った男に拉致され、
バンに乗せられてしまいます。
そこへ、トイレに駆け込んだバイクの男がやってきたので、
真美はそのバイクを拝借し、勝巳は真美の後ろに乗り、バンを追いかけました。

真美は車に急接近してバンの運転手を驚かせ、スピンさせました。

勝巳が、バンから出てきた成田雅次と闘っている隙に、
真美がバイクで他の男を弾き飛ばして、美鈴を助け出しました。

バイクには2人しか乗れないので、真美に美鈴を乗せて出発してもらい、
勝巳は時間稼ぎに成田雅次との戦闘を続けます。
しかし、パトカーのサイレンが聞こえてきて、成田たちは逃げていきました。
その時、勝巳は、後部ドアの隙間から見えるバンの車内に、
古そうな大きな絵がいくつも積み込まれているのを目撃しました。

真美がキャンピングカーで戻ってきて、
勝巳がパトカーから逃げる手伝いをしてくれました。

午前零時過ぎ、勝巳たちはバー神酒に戻りました。
神酒は、C4爆薬を酒瓶の下に煉瓦のように並べ、隠しました。

真美もバンの中にあった絵を目撃していましたが、
その絵は駄作で、全く価値はないと言いました。

山田ビルの警備員が13階にやってきたのは、
見回りではなく爆弾のスイッチを入れるためだったのかもしれない、
という話になりました。

山田ビルと、1、2回目に爆破されたビルの警備を請け負っているのは、
全部同じ日本セキュリティ保障でした。

勝巳とゆかりと翼は、最初の爆破事件で警備をしていた、
真鍋信二が入院する病院に、その病院の医療関係者の恰好をして潜入しました。

翼が真鍋信二に催眠術をかけ、事件当時のことを思い出してもらいます。
怪しい動きをしていた先輩警備員の猪原史郎は、
日本セキュリティ保障に吸収されたユニバーサル警備に勤めていた、
と真鍋信二は言いました。

巽ビルに戻ると、黒宮が、ユニバーサル警備は10年前、
鴨志田(かもしだ)亮介と猿渡恒彦(さわたり・つねひこ)が開設した会社で、
5年前に日本セキュリティ保障に吸収された、と調べました。

翌日、美鈴が姿を消してしまい、津田美鈴を預かった、
という内容の脅迫状がカウンターに置かれていました。

場面が変わり、日本セキュリティ保障社長の東海盛定(もりさだ)は、
鴨志田と猿渡と一緒に、東京都羽村市にある営業所にいました。
その地下にある金庫に、『大印象派展』の美術品を搬入しました。

日本橋の本社と新宿支社にも金庫室はあったのですが、
それらの金庫室は13階建てのビルの最上階にあったので、
爆破事件を考慮して羽山市の営業所の金庫室に保管することになりました。

5年前、日本セキュリティ保障に吸収された後、
鴨志田は常務に就任し、そこから這い上がり牛耳るつもりだったのですが、
4年前に新社長に就任した東海は鴨志田を冷遇し、
反社会的組織との関係についても調べられていました。

美術品を搬入すると、爆弾を仕掛けたという脅迫電話がかかってきました。

鴨志田は美術品を避難させようと東海に言い、
金庫室へ戻ると、共犯者である子飼いの部下たちに指示を出しました。

東海が網膜スキャンと暗証番号で、金庫室の扉を開けると、
鴨志田は正体を現し、拳銃を東海に向けました。
隣では、猿渡がキュレーター(学芸員)たちに銃口を向けていました。

ダミーの美術品と一緒に、東海たちを爆弾で粉々にし、
鴨志田は他の国に行って、新しい名前で生活を始める、という作戦でした。

しかし、鴨志田が金庫室に入ると、中に作動した爆弾があり、
インターホンからは猿渡が裏切ったという声が聞こえてきました。

鴨志田が猿渡を説得して扉を開けさせると、
拘束された猿渡や警備員がいました。

猿渡の声は、ゆかりの声帯模写だったのです。
中にあった爆弾は、美鈴に頼んで作ってもらった偽物でした。

神酒は残りの警備員や鴨志田を倒し、拘束します。

勝巳はそこを抜け出し、外で成田雅次と決闘しました。
勝巳は成田雅次を倒すと、テンカウントをとり、
罪を償ったら、父親のジムでトレーナーでもやったらどうだ、と説得しました。

ゆかりから電話がかかってきて、翼と連絡がとれないと言われました。
また、成田は、美鈴を拉致などしていない、
美鈴は自分からすすんで装置を作ったのだと言いました。

美鈴は、飲酒運転の車に追突されて夫と娘を亡くしており、
その運転手である梅沢化粧品の社長に復讐しようとして、
鴨志田たちに近づいたのでした。

場面が変わり、梅沢の別荘で、美鈴は梅沢の膝の上に、
動いたら爆発する時限爆弾を載せていました。


しかし、「爆弾にはGPSを内蔵した龍之介の首輪が入っており、
その信号を辿って、翼が梅沢の別荘にやってきました。
まだ美鈴は部分的に記憶を失った状態であり、
自分が催眠術で残りの記憶を思い出させる、と翼は言いました。

さらに、梅沢の秘書に聞いて、神酒や勝巳や真美や黒宮やゆかりも、
別荘に駆けつけてきました。

美鈴は逃げ出しましたが、翼が追いかけました。
美鈴は現在妊娠しており、だから復讐の計画を途中で中止しようとしたのだ、
と翼は言いました。

美鈴は翼の催眠術で妊娠の記憶を取り戻してもらうと、
爆弾のコードの番号は、娘の誕生日の12月8日にちなんだ、
1、2、8だと告白しました。

美鈴は桜井に伴われて自首しましたが、最後に、
翼に自分の顔を見てもらいました。
顔を見ただけで心が読める翼は、
どうやら美鈴が出所するのを待つみたいでした。


というあらすじなのですが、詰め込み過ぎじゃないかと思うくらい、
次から次へと事件が起こり、相変わらず面白かったです。

ただ、翼と黒宮が同性愛的な関係にあるのではないか、
と、ゆかりが翼をからかうシーンが何度も何度も出てくるのは、
LGBTの人達に対してとても失礼なことであり、
差別的な行為なので、良くないと思います。

先に翼がゆかりに対して失礼なことを言っているという前提はありますが、
黒宮はゆかりに対して何もしていないのに、一方的にセクハラされています。

セクシャル・ハラスメントを肯定するような描写は、
読んでいて不愉快でした。

知念実希人「神酒クリニックで乾杯を」のネタバレ解説

神酒クリニックで乾杯を (角川文庫)


主人公の若手医師、九十九勝巳(つくも・かつみ)は、
勝俣病院で当直中に意識を失い、
覚.醒剤依存症で自殺未遂を繰り返していた患者を死なせてしまいました。

前日に深夜まで酒を飲んでいたのは確かですが、
当直は夕方だったので酒は抜けていたはずだったのですが、
勝巳は当直中に泥酔して医療事故を起こした、と報道されました。

病院を退職した後も、週刊誌等で名前が報道されたため、
違う病院に再就職することができませんでした。

勝巳は、学生時代に所属した同好会の先輩である新庄雪子に相談します。

新庄雪子にアドバイスされ、
卒業時に万年筆を送ってくれた恩師の三森教授に頼み、
神酒(みき)クリニックを紹介してもらいます。

そのクリニックの面接は、青山一丁目駅の近くにある、
巽ビルという5階建てのビルの地下1階にあるバーでおこなわれました。

院長の神酒章一郎という40前後の背の高い男と、
どう見ても少年にしか見えない30歳の精神科医、
天久翼(あめく・つばさ)に色々と質問されます。

ちなみに、この天久翼という男は、
天久鷹央(たかお)シリーズの天久鷹央の兄という設定です。

翼は、相手の表情を見ることで、妖怪のサトリのように、
その人が考えていることを見抜く能力を持っていました。

ナースの一之瀬真美がコーヒーを出してくれましたが、
勝巳は真美に一目惚れしてしまいました。

絶対に患者の秘密を漏らさないと誓った後、
喫茶店の奥にあるエレベーターで4階に上がります。

看板は出ていませんが、このビルがクリニックなのでした。

手術室に行き、お水のにおいをぷんぷんさせている産婦人科医兼、
小児科医の、夕月(ゆうづき)ゆかりと、
暗い性格の麻酔科医の黒宮智人(くろみや・ともひと)を
紹介してもらいます。

患者は、外務大臣の榊原一郎でした。

このクリニックは、治療を受けたことを
絶対に知られたくない患者の治療を行っており、
だから看板も出していないのでした。

勝巳は真美と一緒に、神酒の手術を手伝いますが、
神酒も真美もスピードが早く、置いていかれそうになりました。

勝巳は試験に合格し、このクリニックで働き始めました。

3週間近くが経過した頃、スタッフ全員で、
キャンピングカーに乗って出かけました。
この車は、中が手術室に改造されていました。

大手ゼネコンの小笠原建設の創始者である、老人の小笠原雄一郎を、
翼と黒宮が1年ほど前から往診して診ていました。
小笠原雄一郎は末期の膵臓癌なので、緩和医療をおこなっていました。

その小笠原から、神酒に相談したいことがあると言われ、
スタッフ全員で小笠原雄一郎の邸宅に行きました。

小笠原は、二十数年前に愛人を作っており、その愛人が妊娠しました。

小笠原が堕ろすように脅迫すると、その愛人は姿を消しました。

小笠原は、自分に残された時間が少ないことに気づいたとき、
罪悪感を感じて、愛人とその息子を探しました。

愛人は5年以上前に亡くなっており、
息子は川奈雄太だという名前だと判明しました。

数ヶ月前に足立区の公園で切断された腕が見つかった事件があり、
先週、警察がその被害者の名前が川奈雄太だと発表しました。

小笠原は、警察より早く川奈雄太を殺した犯人を見つけ、
罰を受けさせて欲しい、と神酒に頼み、神酒は引き受けました。

こうして、バラバラ殺人の捜査をすることになり、
神酒はクリニックの地下にあるバーに、
中年刑事の桜井を呼び出しました。

この桜井という刑事は、天久翼シリーズにも登場しています。

神酒は桜井の情報屋ですが、桜井も神酒に情報を教えてくれる、
持ちつ持たれつの関係にありました。

川奈雄太がヤミ.金から金を借りていたことや、
井出明男という男が川奈雄太とつるんでいたことを、
桜井は教えてくれました。

井出明男が通っているバーに、勝巳たちは潜入します。
変装した夕月ゆかりが井出明男を誘惑し、
ホテルのベッドルームに連れ込みました。

しかし、そこには神酒たちが待機しており、
井出明男を尋問しました。
と言っても、翼は他人の心を読む能力があるので、
あっという間に、川奈雄太を殺した犯人らしき人物が、
藤原という男だと聞き出しました。

さらに、黒宮は、藤原について知っていることを全部話さないと、
警察に藤原のことを伝え、井出明男が密告したという噂が、
藤原の耳に入る、と脅しました。

藤原は違法カジノのオーナーで、川奈雄太はそのカジノでかなり負け、
でかい借金を背負ってしまいました。

川奈雄太はその後、姿を消しましたが、その直前に、
でかい勝負をして、借金を全部返し、裏の世界から足を洗う、
と井出明男に言っていたのだそうです。

神酒の作戦で、勝巳たちは井出明男から聞き出した、
港にあるカジノに行きました。

心が読める翼はポーカーでディーラーに勝ちまくり、
記憶力が良い黒宮はブラックジャックでカードカウンティングという
テクニックを使い、3000万円以上勝ちました。

カジノを出た後、神酒は、
カジノスタッフたちが金を取り返しに来るのを待ち、
返り討ちにしました。

神酒は異常なほど格闘が強く、勝巳も総合格闘技をやっているため、
神酒と勝巳はリーダーらしき小太りの男を捕らえ、
真美が運転するキャンピングカーに乗せることができました。

翼が小太りの男から藤原についての情報を聞き出すと、
カジノで稼いだ金を返し、小太りの男を解放しました。

勝巳たちは、藤原が住んでいる江東区の高級マンションに行きます。

キャンピングカーにはゆかりが残り、神酒、黒宮、翼が、
マンションに潜入を試みている間、
勝巳と真美は、真美の愛車の真っ赤なミニの中で待機していました。

やがて、エレベーターから、マスクとサングラスで顔を隠した3人の男と、
顔が腫れ上がり頭から血を流した金髪の男が降りてきました。

顔を隠している男が、金髪の男の腹に蹴りを入れると、
真美が金髪の男を助けようとし、男たちの前に出ました。

男たちは勝巳たちに拳銃を向けて威嚇射撃し、
ミニバンに乗ってマンションの敷地から出て行きました。

真美と勝巳は、改造したミニでバンを追いかけます。
運転する真美はスピード狂で、ハンドルを握ると性格が変わっていました。

バンに乗った男が拳銃を向けると、真美はミニでバンに体当たりしました。

すると、バンに乗った男たちは、
金髪の男をバンから道路に蹴り落としました。

バンは走り去りましたが、真美はミニを停め、
勝巳と一緒に、金髪の男を救命しようとします。

金髪の男は藤原だと名乗りました。

すぐに、神酒たちの乗ったキャンピングカーが駆け付けてきて、
藤原をキャンピングカーに乗せ、
クリニックに向かいながらオペをしました。

それから一週間ほど経過し、勝巳は、
学生時代の同好会の先輩の新庄雪子と食事をしました。

その2ヶ月前には、勝巳は雪子と一夜を共にしましたが、
勝巳が正式に付き合って欲しいと言うと、雪子は勝巳を振った、
ということがありました。

雪子は、勝巳に神酒クリニックを紹介してくれた三森教授に、
暴力.団と付き合いがあるという悪い噂が広まっている、
と教えてくれました。

その翌日、勝巳はクリニックのメンバーと、
藤原が入院している青山第一病院に行きました。
この一週間、黒宮がつきっきりで藤原を管理していました。

その途中、黒宮は大学4年生までは天才児でイケメンだった、
という話を翼がします。
しかし、本物の天才である、翼の妹の天久鷹央に打ちのめされ、
自信を喪失し、卑屈になってしまったのだそうです。

病院に着くと、翼が藤原を尋問します。
藤原は、川奈雄太は去年の12月くらいに、
借金を返したのだそうです。
さらに、局所麻酔や抗不整脈薬として使われるキシロカイン、
という薬を手に入れてほしい、と川奈雄太に頼まれたのだそうです。

藤原を襲った男たちからは、「荷物はどこだ?」と訊かれ、
拷問されましたが、藤原には心当たりがありませんでした。

また、違法カジノについては神酒が警察に通報しました。

クリニックのビルの喫茶店に戻り、刑事の桜井と情報交換します。

この前、藤原を襲った男たちが落としていった拳銃は、
覚醒.剤や危険ド.ラッグの密輸ルートを通じて、
国内に入ってきたものなのだそうです。

また、川奈雄太は失踪する前後、数日間タイに行っていたのだそうです。

川奈雄太が、子連れの年上の女と付き合っていた、
ということも教えてくれました。

勝巳、ゆかり、翼、黒宮の4人は、
川奈雄太の恋人、芹沢久美子の住む団地に行きました。
しかし、借金取りがドアに落書きしており、
芹沢久美子は逃げ出していました。

黒宮がドアの鍵を開け、不法侵入します。
デスクトップパソコンのパスワードを、黒宮と翼が解き明かし、
パソコンを調べると、2ヶ月前から川崎のマンスリーマンションの
ホームページを閲覧していたことが分かりました。

そのマンションに行く途中、
ゆかりは声帯模写の特技があることを勝巳に教えました。

産婦人科医のゆかりは、芹沢久美子を見て、
川奈雄太の子供を妊娠していると見抜きました。

芹沢久美子が妊娠を川奈雄太に伝えると、
川奈雄太は思いつめていましたが、
姿を消す直前に明るくなったのだと言っていました。

勝巳たちは芹沢久美子の部屋を出ましたが、
しばらく歩いてから、藤原を襲った男たちが、
芹沢久美子のマンションにやってきたことに気づき、戻りました。

2人の男たちが、芹沢久美子と悟を拷問していました。

勝巳は2人を倒し、さらに、ゆかりがパトカーのサイレンの声帯模写をし、
警察が来たと思わせて、男たちを退散させました。

勝巳は、男たちから奪った、
「バニー倶楽部」というお店のマッチを神酒に見せました。

その2日後、勝巳と神酒と黒宮が、バニー倶楽部に潜入して、
男たちの正体を探ることになりました。
翼が黒宮に暗示をかけ、昔の黒宮に戻したおかげで、
黒宮はホステスたちからモテモテでした。

黒宮が男の似顔絵を描いてホステスに見せると、
後藤田貿易の常務取締役、鍋島一太(いちた)と
名乗っていたことが判明しました。

後藤田貿易という会社は、
元暴力.団員の後藤田道貞(みちさだ)という男が作ったものでした。

「バニー倶楽部」を訪れてから2日後、
再び鍋島が店に現れたと、ホステスから黒宮に連絡が来ました。

勝巳と真美が車に乗り、店の前で、鍋島が出てくるのを待ちます。
その時に、勝巳は真美に告白っぽいことを言い、
真美もまんざらではない様子でした。

鍋島がタクシーに乗り、真美はそのタクシーを追いかけました。

鍋島は、カフェに入り、勝巳を神酒クリニックに紹介してくれた恩師の、
三森大樹と会って話していました。

勝巳は雪子に頼み、三森について調べてもらいました。
4日後の土曜日に自由が丘駅の近くの喫茶店で会い、
三森が暴力.団の依頼で非合法の手術をしているらしい、とか、
海外の銀行から1億円以上のお金が三森の口座に振り込まれていた、
ということを教えてくれました。

喫茶店を出たところで、勝巳は男とぶつかりました。
その男は、勝巳のポケットに、
「思い出せ」と書かれた証明写真を入れました。
その写真には、川奈雄太が映っていました。

しかし、勝巳は、自分が知らなかったはずの川奈雄太の顔に、
見覚えがあることに気づきました。

翼が勝巳に催眠術をかけ、川奈雄太の写真を見た時のことを思い出させます。

勝巳は、勝俣病院で医療事故を起こした時のことと思い出しました。
また、そのとき勝巳は自分の腕に点滴をしていたのですが、
看護師が点滴ラインになにかの薬を注射していたのを目撃していました。

また、勝巳が死なせてしまった患者が、川奈雄太であることも思い出しました。

しかし、勝巳が死なせてしまったことになっていた患者は別人で、
すり替えられていたのでした。

川奈雄太は腹腔内に麻.薬を入れて密輸しており、
それを自分に麻酔をかけて取り出して大もうけそしようとしたが、
大きな血管を傷つけてしまい、
もともと開腹手術をするはずだった勝俣病院に行った、
と神酒は推理しました。

勝巳は川奈雄太を治療しようとしますが、
全ての事情を知っていたナースは院長からの指示を受け、
勝巳を昏睡させたのでした。

勝巳は昏睡している間に、アルコールと睡眠薬のフルニトラゼパムを投与され、
前向性健忘症を起こしてしまい、川奈雄太のことを忘れてしまったのでした。

川奈雄太の死体は、密輸をしていた後藤田貿易に処理してもらいます。

後藤田貿易の男達は、川奈雄太の遺体を切断して、
麻.薬を取り出そうとしましたが、見つからず、
全身をバラバラにして埋めたのでした。

川奈雄太の開腹手術をすることになっていたのは三森だ、
と神酒は考え、俺が三森から話を聞くと言いました。
しかし、三森は失踪してしまっていました。

その3日後、勝巳のスマートフォンに非通知の電話があり、
通話ボタンを押すと三森の声が聞こえました。

三森は、今から言う住所に1人で来てほしいと言いました。

勝巳がその住所のマンションに行くと、
首を絞められて殺された鍋島一太の死体がありました。
さらに、パトカーがやってきて、勝巳は自分がはめられたと気づき、
逃げました。

ファミレスで夜を明かし、勝巳は神酒クリニックの喫茶巽に行きました。
マスターにカウンターの下に匿われると、
桜井の声が聞こえてきました。

桜井がいなくなると、地下1階のバーに連れていかれ、
スタッフ全員に囲まれました。

神酒は、勝巳がスパイとして後藤田貿易に情報を流していたと言い、
ヒステリックにまくし立て、
芹沢久美子が川奈雄太からある物をあずかっていた、という話をしました。

長野の山奥にある神酒の別荘で、芹沢久美子は出産することになっており、
その見返りとして、川奈雄太からあずかった物を渡してもらう、
と神酒は言いました。

神酒はその別荘の住所を言った後、リボルバー式の拳銃を勝巳に向け、
発砲しました。

場面が変わり、後藤田貿易に勤める田所次義(つぐよし)が、
勝巳がいつも持ち歩いていた万年筆の中に、盗聴器が仕込まれており、
その盗聴器から得た情報で、
神酒たちの動きを探っていたのだと回想していました。

田所次義とその仲間は、神酒の別荘に侵入し、
芹沢久美子とその小学5年生の息子の悟を脅します。
川奈雄太は、『双子の涙』と呼ばれる、
数十億円の価値がある特大のブルーダイヤとピンクダイヤを持ち去った、
と田所次義は言い、宝石の在処を聞き出そうとします。

芹沢久美子は、去年の暮れ、川奈雄太が電話で、
自分が死んだら胃の中を調べろと言っていた、と言いました。

川奈雄太は『双子の涙』を食べていたと田所次義は気づきました。
川奈雄太の身体をバラバラにした時、腹の中は調べましたが、
胃や腸の仲間では調べていませんでした。

田所次義は仲間に、後藤田に連絡させた後、
芹沢久美子と悟を殺そうとしました。
しかし、「その芹沢久美子と悟は、ゆかりと翼の変装でした。

地下へと続く隠し階段に隠れていた神酒が、
田所次義の仲間を昏倒させます。

田所次義は別荘から逃げ出しますが、
真美が運転するミニに止められました。

田所次義は神酒に拳銃を向けますが、逆に神酒に倒されてしまいました。


場面が変わり、後藤田は川奈雄太の首と胴体を埋めた、
青梅市の山奥に行きました。

しかし、「死体を掘り返すと、刑事の桜井を含む警察に囲まれていました。
取り押さえられた後藤田は、自分のポケットに、
勝巳の万年筆が入っていたのに気づきました。

勝巳は、実は生きており、神酒が拳銃を発砲するのと同時に妨害電波を出し、
盗聴器の仕込まれた万年筆を回収したのでした。

神酒やゆかりや勝巳が、『双子の涙』は芹沢久美子の部屋の、
川奈雄太の荷物の中にある可能性が高い、という話をしているのを、
後藤田に指示を出していた雪子が、イヤホンで聞いていました。

雪子は、芹沢久美子の部屋に行きますが、
そこには勝巳が先回りしていました。
雪子が聞いていた声は、ゆかりの声帯模写だったのです。

雪子は大学時代に、勝巳と同じ奇術同好会に所属しており、
自由が丘駅の喫茶店を出た後、男がぶつかった時に、
勝巳のポケットに証明写真を入れていたのでした。
また、勝巳が『バニー倶楽部』のマッチを手に入れたのも、
鍋島一太のポケットを探ったからなのでした。

三森の悪い噂も、三森をスケープゴートにするために雪子が作った話で、
勝巳のスマートフォンにも盗聴のスパイアプリが仕込まれていました。

雪子は昔から他人に対して同情も共感も感じたことがないので、
裏の世界で仕事をすることに躊躇しませんでした。
雪子は後藤田から『双子の涙』をかすめ取ろうとして、勝巳を操っていました。

雪子は、青酸カリ入りのカプセルだと言って、
カプセルを口の中に放り込み、勝巳が逃がしてくれないなら死ぬ、
と言って、勝巳の頬に唇を当てました。
その時、雪子は、勝巳が医療事故を起こしていないことや、
鍋島一太を殺していないことを証明する音声が入ったICレコーダーを、
勝巳のポケットに入れ、逃げていきました。


それから1週間後、芹沢久美子は娘を出産しました。
さらに2週間後、神酒は芹沢久美子に、
川奈雄太は久美子の住んでいた団地でお腹の宝石を取り出そうとしたと言い、
悟のランドセルについていたネコのぬいぐるみの目が、
『双子の涙』であると言いました。

『双子の涙』は神酒が当局に渡すが、報奨金が久美子に払われるように、
全力を尽くすと言いました。

その後、小笠原雄一郎が、久美子とその娘と少し会話をしました。
小笠原雄一郎は久美子たちと別れた後、孫にできる限りのものを遺すため、
遺言を書き換えると言いました。

その後、濡れ衣を晴らした勝巳は、クリニックの地下のバーで、
お祝いをしてもらいます。
真美と神酒が実は兄妹で、離婚した両親に別々に引き取られたから、
真美は神酒のことを『章一郎さん』と呼んでいたことも判明しました。

(ちなみにこのシーン、「ゆかりの言葉を聞いて勝巳は絶句する」は、
「真美の言葉を聞いて勝巳は絶句する」の間違いではないかと思います。)

勝巳は濡れ衣が晴れた後も、神酒クリニックで働き続けることにし、
スタッフ達は乾杯しました。


というあらすじなのですが、展開がスピーディーで面白かったです。

知念実希人「幻影の手術室 天久鷹央の推理カルテ」のネタバレ解説

幻影の手術室: 天久鷹央の事件カルテ (新潮文庫nex)


ナンバリングはありませんが、天久鷹央シリーズの6冊目です。
どうやら、短編集はナンバリングをつけて、
長編はナンバリングを外しているみたいです。

清和総合病院手術部、第八手術室で虫垂炎の手術が終了しました。

麻酔科部長の辻野咲江、執刀医の戸隠一平(とがくれ・いっぺい)、
看護師の秋津野乃花(あきつ・ののか)が手術室から出て行きました。

手術室の中には、麻酔科医の湯浅春哉(ゆあさ・はるや)と
患者の2人だけが残されました。

場面が変わり、麻酔科医控室で、看護師長、辻野咲江、戸隠一平、
外科医の八巻(やまき)、麻酔科医の水無月たちがモニターを見ていました。

第七手術室では、第一外科部長の黒部昭雄が記録を書いており、
早く退室してほしいと辻野咲江が文句を言いました。

やがて、水無月が第八手術室の異変に気付きます。

監視カメラの中で、湯浅春哉が誰かにおそわれているような動きをしていました。
さらに、床に赤い飛沫が飛びます。

戸隠や辻野たちが第八手術室に駆けつけると、そこは血の海でした。

辻野は廊下の十字路近くに置かれている救急カートを引っ張り、
近くにいた野乃花を連れて第八手術室に戻ります。

戸隠は心臓マッサージをし、辻野は点滴ラインを確保し、
アドレナリンや生理食塩水を流しました。

その途中、辻野は、湯浅が患者に筋弛緩薬の『ベクロニウム』を
投与しかけていたことに気付きました。

そんな中、目を覚ました患者は手に鋭利なメスを持っていました。
その患者のリストバンドには、鴻ノ池舞と書かれていました。

場面が変わり、4月の最初の金曜日の午後六時過ぎ、
小鳥遊優は天医会病院の救急部への出向から統括診断部に戻りました。

今年度の後半に4ヶ月間、研修医の鴻ノ池舞が自ら望んで統括診断部へ研修に来る、
と鷹央は言いました。
鴻ノ池を嫌っている小鳥遊は反対しますが、既に決定事項として決まっており、
どうしようもありませんでした。

小鳥遊のスマートフォンに、田無署刑事課の成瀬から電話がかかってきました。
被害者が透明人間に襲われたような状況だと成瀬は言います。
警察は、小鳥遊達の知り合いの鴻ノ池を有力な容疑者として見ていました。
成瀬は鷹央のことを嫌っているおり、
知り合いが容疑者だからと言って事件に首を突っ込まないように
と釘を刺すために電話したのでした。

しかし、鷹央には逆効果で、鷹央は小鳥遊を引き連れて清和総合病院に駆けつけました。
警備や看護師に止められますが、鷹央は清和総合病院の院長と知り合いであり、
天医会病院の副院長という肩書きも最大限に利用し、舞の病室に行きました。

しかし、病室の前には成瀬がいて、主治医の権限で面会謝絶になっていると言いました。
というか、警察が主治医に圧力をかけて面会謝絶にしたのですが。

今回の事件を担当予定の管理官は今までと違い、鷹央のことを物凄く毛嫌いしており、
名指しで鷹央が事件に関わらないようにと指示していました。
この病院の医療関係者以外は、この部屋に入れない、と成瀬は鷹央を追い返します。

そこへ、好々爺といった雰囲気の院長がやってきて、
鷹央と小鳥遊を院長室に連れていきました。
院長は鷹央に被害者の情報を流します。

殺された麻酔科医、湯浅春哉は30歳で、大学院を途中でやめ、陵光医大からの派遣で、
去年の4月から清和総合病院で働いているのだそうです。

院長から外科医が足りないという話を聞いた鷹央は、
小鳥遊をスパイとして清和総合病院にレンタルすることにしました。

その3日後には、小鳥遊は派遣の外科医として清和総合病院に潜り込み、
第一外科部長の黒部昭雄、副部長の戸隠一平、
卒後4年目でヒグマのような体型の男性医師の八巻を紹介してもらいました。

小鳥遊が殺人事件について水を向けると、八巻が、
うちの病院の手術部には去年から幽霊が出る、という噂を教えてくれました。

小鳥遊は鴻ノ池のカルテを読んだ後、病室に行きます。
鴻ノ池にかかった容疑を解くために潜入したと教えると、
鴻ノ池は目に涙を浮かべました。

鴻ノ池は事件前後のことを小鳥遊に教えます。
まず、天医会ではなくこの病院を選んだのは、最初に痛かったのが下腹部だったから、
婦人科疾患を知りあいに診察してもらいたくないと思い、
大学の先輩であり元カレだった湯浅に連絡をとったのがきっかけでした。

手術で麻酔から目覚めた後は、
湯浅が見えない何かと取っ組み合っているように見えたのだそうです。
血に濡れたメスを持っていたことについてはなにも覚えていない、と鴻ノ池は言いますが、
起きあがろうとしたときに偶然掴んだだけだと小鳥遊は説得しました。

しばらくして成瀬と、コンビを組んでいる迫という刑事がやってきます。
成瀬は小鳥遊を連れ出して問いつめますが、
小鳥遊は正式にこの病院の外科医になったのだと開き直りました。

赴任してから3日目、小鳥遊と黒部と八巻と野乃花はある患者の手術をしました。

手術が終わり際、黒部は野乃花に露骨なセクハラをします。
そのとき、八巻は、第八手術室に出る幽霊は去年術中死した患者だ、と言い出しました。

去年の11月に、単独のバイク事故を起こした17歳の少年が運ばれてきて、
第八手術室で術中死したのです。
そのときの執刀医は黒部で、麻酔をしたのは湯浅春哉でした。
少年の状態を聞いた小鳥遊は、救命は困難だったはずだと言いましたが、
幽霊が出るようになったのはその頃からなのだそうです。

去年の12月の深夜には、湯浅と辻野咲江は、カートがひとりでに動き、
透明な影が襲いかかってくるのを見たのだそうです。

八巻がその話をしてから半日後の深夜、
小鳥遊は黒部が八巻に対してパワハラをしているのを目撃しました。

手術室の廊下に出た八巻は、カートが勝手に動いたのを見たと言い、
第八手術室の方に行きます。
小鳥遊と黒部が八巻を追うと、カートが勝手に動き、
フットスイッチを使わないと開かないはずの第八手術室の扉が開くのを、
小鳥遊も目撃しました。

八巻が第八手術室に入り、少し遅れて小鳥遊と黒部も中に入りますが、
部屋の中には誰もいませんでした。

第七手術室の方から妙な音が聞こえ、小鳥遊と黒部は第七手術室に入りますが、
そこも無人でした。

という話を、小鳥遊は鷹央が住む天医会病院の屋上の“家”で報告しました。

そこへ鷹央の姉の真鶴がやってきて、
院長を務める叔父が鴻ノ池を解雇したがっている、と相談しました。
鷹央は真鶴に対して、
小鳥遊が痔の手術のために休んでいるということにしていましたが、
それを知った小鳥遊は怒り、真鶴に本当のことを言うようにと言いました。

鷹央はそれを承知した後、「透明人間」を脅迫すると言って、小鳥遊に、
ある人物に脅迫状を渡させました。

その翌日の夜9時、鷹央と小鳥遊は、
脅迫相手が来るのを統括診断部の外来で待っていました。

やってきたのは、「八巻と野乃花でした。
昨日の未明に小鳥遊が目撃した怪現象の犯人は、八巻と野乃花だったのです。

あらかじめ第八手術室の中に潜んでいた野乃花は、
細い糸を引っ張ってカートを動かし、
部屋の中からフットスイッチで扉を開けたのでした。
そして、野乃花は、小鳥遊や黒部より一足早く第八手術室の中に入った八巻の
白衣の下に隠れていたのです。
八巻が第七手術室の境界の壁を叩いて小鳥遊と黒部を第七手術室に移動させ、
その隙に野乃花は非常口から脱出しました。

八巻と野乃花は2年前から付き合っていましたが、八巻は黒部にパワハラされ、
野乃花は黒部にセクハラされていました。

先週湯浅が殺された件で、黒部は幽霊を怖がっており、
故郷の病因に来ないかと誘われているという話もしていたので、
黒部を怖がらせることができれば病因から追い出すことができる、
と八巻と野乃花は思い、怪現象を起こしたのでした。

しかし鷹央は、黒部が八巻と野乃花を標的にしたのは、
理不尽なことがあっても八巻と野乃花が戦わず、耐えるからだと言います。
怪現象を起こすような小細工でその場を乗り切ろうとしても、
根本は解決しないと言い、戦えとアドバイスしました。

さらに、八巻と野乃花がやったことを報告しない代わりに、
湯浅の事件について協力してもらいます。

翌日、土曜日の昼過ぎに小鳥遊が鴻ノ池の様子を見に行くと、
刑事から何度も問いつめられた鴻ノ池は気弱になり、
本当に自分が犯人かもしれないと思い始めていました。

鴻ノ池には、弟2人と妹が1人いて、高校生のときに父親がクモ膜下出血で亡くなり、
家計が苦しいのに母親が医学部に行かせてくれた、という身の上話をします。

刑事は、心神喪失で罪に問われないと言って、自白を引き出そうとしていました。

しかし小鳥遊は、そんなことをしたら、
全国ニュースになって家族のところにマスコミが押しかけ、
天医会病因を解雇される、と告げました。

湯浅が鴻ノ池の点滴ラインの側管にシリンジを接続し、
筋弛緩剤を投与して殺そうとしていた、と鴻ノ池は刑事から聞かされ
、ショックを受けていたのでした。

小鳥遊は鴻ノ池を励まし、病室を出ました。

秋津野乃花から事件当時の監視カメラの映像を
USBメモリーにコピーしてもらったものを受け取ります。
そこへ黒部がやってきていつものようにセクハラしますが、
野乃花が毅然と立ち向かい、コンプランス委員会に訴えたり民事で告訴したりする、
というと態度を変えました。

小鳥遊は鷹央の家に行き、USBメモリーを渡します。鷹央は映像を確認しますが、
事件が起こり八巻と水無月と辻野が第八手術室の中に入ったところで
映像が途切れていました。

鷹央は自殺の可能性を疑いますが、
「見えない何か」に襲われていたことの説明がつきませんでした。

次に、遠隔殺人や秘密の出入り口、隠れ場所があったのではないか、と考えました。

犯人は事件が起こる前から密室の中にいて、湯浅を殺し、
八巻や水無月や辻野が駆けつけてきたときは隠れ場所に身を潜め、
スタットコールで集まってきた医師たちに紛れた、という可能性を検討するため、
小鳥遊と鷹央は深夜の清和総合病院の第八手術室に不法侵入しました。

小鳥遊が鷹央を肩車して空調システムの給気口を調べます。
直径が30センチもなく、鷹央ですら出入りするのは無理でしたが、
事件当時黒部がいた第七手術室にダクトが繋がっていることに気付きました。

不法侵入しているところを辻野に見つかってしまいましたが、
辻野は鷹央に好意的で、話を聞かせてくれました。
辻野にとって、湯浅は大学の後輩だったのだそうです。

去年の12月に辻野と湯浅が目撃した怪現象のことも教えてくれます。
第八手術室の前だけ「影」が濃くなり、急用カートがすごい勢いで走り、
回転したのだそうです。
「影」は第八手術室に入っていきましたが、
辻野の悲鳴を聞きつけて駆けつけてきた警備員が調べても、
異常は見つからなかったのだそうです。

2、3ヶ月前から、湯浅と黒部に剃刀の刃が入った脅迫状が届いていた、
ということも教えてくれました。

事件から2週間くらいが経ち、小鳥遊が鴻ノ池の診察をしたとき、
鴻ノ池が気になる話をしました。

去年の3月ごろ、湯浅から鴻ノ池に連絡があり、
どうしても手放さないといけない理由ができたので、
ペットを飼ってくれないかと頼まれたのだそうです。
鴻ノ池は断りましたが、美味しそうな名前の動物だったのだそうです。
また、湯浅が大学院を途中で辞めた理由は、
鴻ノ池にも教えてくれなかったのだそうです。

ナースステーションに戻ると、休養することになった黒部の代わりに、
部長代理となった外科副部長の戸隠から、
鴻ノ池を退院させようと思っている、と言われました。

ナースステーションから少し歩いたところで、成瀬とすれ違います。
そのとき成瀬は、今晩零時ごろ、鷹央の家に行く、と耳打ちしました。

小鳥遊が鷹央の家に行くと、
鷹央は湯浅について調べたことを教えてくれました。
湯浅は大学院にいたときに「麻.薬による幻覚作用と脳内物質についての考察」
という論文を書いており、癌性疼痛で麻.薬を使っときの
脳内ホルモンの状態などについて、マウスを使った実験をしていたみたいでした。

鷹央の家にやってきた成瀬は、鴻ノ池が今週末あたりに逮捕される、
と教えてくれました。
鴻ノ池は過去の交際のいざこざから、湯浅に恨みを抱いており、
麻酔で朦朧状態だった鴻ノ池は無意識のうちにメスで湯浅の首を切り裂き、
湯浅は反撃をと思って鴻ノ池に筋弛緩剤を投与しようとしたが、
途中で力尽きてしまった、というストーリーを警察は考えていました。

しかし、湯浅の首に、男性の指で首を強く絞められたような内出血があること。
昨年末に病院に、手術に使っている麻酔の一部が盗まれている、
と匿名の報告があったこと。
湯浅が知り合いに、麻.薬依存者の更生施設を探して欲しい、と頼んでいたこと。
湯浅が大学院を辞めた去年の3月ごろから湯浅の行動がおかしかった、
と多くの人が証言していること。

これらのことから、成瀬は捜査本部の見解に疑いを持っており、
こっそりと鷹央に相談しにきたのでした。

また、貴重品が入っていない湯浅のロッカーが荒らされていたことなどを、
成瀬は教えてくれました。

さらに、帰り際に、事件前後の映像が入ったUSBメモリーを
「落し物」していきました。

その映像を見た鷹央は、鴻ノ池舞の身に危険が迫っている、と言いました。

それから1日半が経った木曜の昼、鴻ノ池の容体が悪くなりました。

体の中で強い炎症が起こり、多臓器不全を起こしかけているようでした。
鴻ノ池本人も、朝から体がだるくて吐き気がひどく、寒気とめまいがすると言います。

しかし、CTやエコーで調べても異常を発見することができませんでした。

犯人が毒を盛ったのかもしれないと思い、鷹央に電話して指示を仰ぎます。
すると鷹央は、辻野に頼み込んでICUに入れろと言いました。

しかし、その数時間後に鴻ノ池が急変したと秋津野乃花が叫びました。

脈がなく、蘇生処置をしますが、「30分後、小鳥遊は死亡確認をしました。

その後、辻野は、棚にある分厚い辞書に隠していたアンプルを
自分の腕に注射しました。

それを、院長の許可をとって設置した隠しカメラで見ていた
鷹央と成瀬と迫刑事は部屋に入ります。
鷹央は辻野が『透明人間』の正体であり、湯浅を殺した犯人だと言いました。

辻野が注射した液体を迫が調べ、麻.薬で陽性反応が出たと言いました。

鷹央はまず、去年の12月に辻野が目撃した『透明人間』は、
辻野の麻.薬による幻覚であり、湯浅は辻野を庇っていただけだと説明します。
その後、湯浅は辻野を社会的ダメージなく麻.薬依存症から更正させようと、
更正施設を探していたのでした。

しかし辻野は、湯浅が手術用の麻.薬を盗んでいるかのように記録の改竄をします。
それに気づいた湯浅が辻野を告発しようとし、口封じに殺されたのでした。

また、湯浅が殺されたとき、鷹央は辻野のおかしな行動に気づいていました。

それは、手術室の中に全身麻酔用のカートがあったにもかかわらず、
わざわざ廊下を走って救急カートを取りに行ったことでした。

鷹央は辻野のマグカップに印刷された、デグーという、
リスのようなげっ歯類を指さします。
それは辻野のペットをマグカップにプリントしてもらったものでした。
そしてそのデグーの元の飼い主は湯浅であり、
湯浅は大学院でマウスを使った実験をしていました。

湯浅は去年の3月に、デグーに噛まれてアナフィラキシーを起こしました。
げっ歯類の唾液に含まれるリポカリンは、
人間に対して強烈なアレルギーを起こすことがあるのです。
これでは、マウスを使った研究を続けることは困難です。

湯浅は治療した医師に忠告され、大学院を辞めたのでした。

辻野はそのアレルギーを利用して湯浅を口封じすることにし、
まず剃刀入りの脅迫状で指を傷つけさせました。
さらに、ペットショップで売られている冷凍マウスからリポカリンを抽出し、
手術で使う手袋の指先に塗ります。
湯浅は鴻ノ池の手術を終えた後、一旦手袋を脱いだので、
その手袋とすり替えました。

鴻ノ池の呼吸状態を確認していたあたりで、湯浅はアナフィラキシーを起こし、
声帯が腫れあがり、声門が閉塞して窒息してしまいました。
湯浅は自分で自分の首を押さえ、
『透明人間』と取っ組み合っているように暴れました。


しかし、医師である湯浅は「自分がアナフィラキシーを起こしていることに気づき、
アドレナリンを注射しようと全身麻酔用カートに飛びつきますが、
辻野が予め抜き取っていたため、アドレナリンはありませんでした。

湯浅は最後の手段として、メスで首の皮膚ごと切開し、
その部分にチューブを差し込むことで強引に気道を確保しようとしました。

しかし、間違って血管を切ってしまい、亡くなってしまったのでした。

辻野の予定では湯浅はアナフィラキシーのショックで
『病死』する予定だったのに、
誰がどう見ようと『殺人』になってしまいました。

そこで辻野は蘇生に参加するふりをして、
廊下にあった救急カートを手術室まで運び、
手術室内のカートからアドレナリンのアンプルを抜いたことを誤魔化しました。

凶器であるリポカリンを仕込んだ手袋も回収し、
アドレナリンを投与することでアレルギー症状を強力に抑え込みました。

証拠はないと言った辻野の前に、生きた鴻ノ池が現れました。

辻野の犯行を暴くために、鴻ノ池の血液を敗血症患者のものとすり替えたり、
鴻ノ池に体調不良の演技をしてもらったりして、ICUに移動させ、
辻野が鴻ノ池を殺害しやすい環境を作っていたのでした。

小鳥遊は嘘をつくとすぐに顔に出てしまうため、
鴻ノ池をICUに移すまで種明かししてもらっていませんでした。

辻野が鴻ノ池を殺そうとしたのは、被疑者死亡という形で書類送検させ、
事件の捜査を打ち切らせるためでした。

心電図や、辻野がリドカイン溶解液を投与した点滴ラインにも細工がしてあり、
鴻ノ池は本当に死んだと辻野に思い込ませ、
安心させて麻.薬を使ったところを現行犯逮捕する、
というのが今回の作戦だったわけです。

辻野が成瀬と迫に逮捕されて出ていくと、
なんで湯浅は鴻ノ池を殺そうとしたのか、と鴻ノ池は訊きました。

それは、密室に2人きりという状態で死亡したら、
鴻ノ池に殺人容疑がかかってしまうと湯浅は考えたからです。
鴻ノ池に筋弛緩剤を投与すれば、動けなくなりますし、
湯浅は優秀な麻酔科医なので、呼吸はできるぎりぎりの量なら、
鴻ノ池が死ぬ危険もほとんどありませんでした。

こうして見事に事件を解決し、
小鳥遊と鴻ノ池は天医会病院に戻ることができました。


というあらすじなのですが、これまでは嫌な女だなー、
という印象しかなかった鴻ノ池の評価が上がった話だったと思います。
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