万城目学「バベル九朔」のネタバレ解説

バベル九朔


万城目学さんは作家デビューする前、雑居ビルの管理人をしながら小説家を目指していたので、
ある意味ではこの「バベル九朔」は自伝的小説です。

また、もともとは短編だったのを長編に仕立て直したせいか、
序盤から中盤に移り変わるときに物語が大きく動いています。

前置きはこのくらいにして、いつものようにあらすじです。

「バベルの朝はカラスが連れてくる」
という1文から、この物語は始まります。

主人公は、作家志望の27歳の男性、九朔満大(きゅうさく・みつひろ)です。

3年前まではハウスメーカーの事務職をしていた満大は、ある日、
小説家になりたいと決意し、小説を書き始めます。

しかし、サラリーマンをやりながらだと、
まとまった執筆時間がとれないので、退職してしまいます。

そして、満大は母親の三津子が25年前に相続していた雑居ビル「バベル九朔」の
管理人となりました。

バベル九朔は、38年前に、三津子の父親の九朔満男(みつお)が建てたビルです。
満男は、画廊や部品工場や保険の代理店など、
多角的な経営で財をなした人物でした。
そんな満男のことを、満大は心の中で「大九朔(だいきゅうさく)」と呼んでいます。

バベル九朔が建てられてから13年後、満大が2歳のときに、
満男は脳卒中で亡くなってしまいました。

バベル九朔がある場所は、都心へアクセスがいいと書かれているので、
関東の郊外なのではないかと思います。

建てられた当時は周囲に高層ビルがなく、
「バベル」という大袈裟な名前に恥じない5階建てのビルだったのですが、
現在はただのボロい雑居ビルという感じです。

1つのフロアに1つのテナントしか入っておらず、
地下1階「SNACK ハンター」
1階「レコ一」
2階「清酒会議」
3階「ギャラリー蜜」
4階「ホーク・アイ・エージェンシー」
5階「管理人室(満大の自宅)」
という感じになっています。

6月の上旬、満大は「SNACK ハンター」のママから、
体長40センチもある大きなネズミ、「ミッキー」が出たと言われます。

その数日後、満大は電気メーターの点検中に、
全身黒づくめの服を着てサングラスをかけ、ヒールを履いた女と出会いました。
4階にある探偵事務所「ホーク・アイ・エージェンシー」に行ったのだろうな、
と満大は思い、そのときはあまり女のことを気にしませんでした。

その後、管理人室に戻ると、母親の三津子から電話がかかってきます。
三津子は満大に小説家になるという夢を諦めさせたく、いつもお説教をしています。

その2日後、満大は4階に事務所を構える探偵、四条(よじょう)に誘われ、
2階の居酒屋「清酒会議」でお酒を飲みます。

四条は、スキンヘッドで口髭を生やしている中年男です。
お酒のせいか、満大は小説を書いていることをペラペラと喋ってしまいます。

気が付くと、翌日の朝になっていました。
1階にあるレコード屋「レコ一」の店長がドアを叩く音で起こされます。
「レコ一」に泥棒が入ったのだそうです。

警察には「レコ一」の店長が通報してくれるそうなので、
ひとまず自分の部屋に戻ろうとします。
その途中、4階の「ホーク・アイ・エージェンシー」のドアに、
鍵をこじ開けられた痕跡を発見し、満大は探偵事務所のドアを開けました。

するとテーブルの上に、
最近満大が書いた小説「トーテムポール」の原稿のコピーがありました。
「トーテムポール」の傍には、満大の母の三津子の宛名が書かれた封筒もありました。

ちなみに、満大はパソコンではなく、原稿用紙に手書きで小説を書いており、
新人賞に送る際にはコピーの方を送り、原本は手元に残しています。
その原本を、満大が泥酔している隙に、四条がコピーしていたようでした。

四条を問いつめると、三津子に頼まれて、
満大が本当に小説を書いているのか確かめていたのだと分かりました。
その報酬は、四条が滞納していた2ヶ月分の家賃でした。

三津子に電話すると喧嘩になりました。
三津子は、満大が本当に小説を書いているのか心配で、そんなことをしたのだそうです。

そこへ警察が来たので、電話を切ります。

刑事は、満大に、多国籍窃盗団「カラス」の幹部の写真を見せました。
盗みをする前にはいつも下見をしており、そのときに撮られた写真なのだそうです。

その写真に写っていたのは、3日前にすれ違った、
黒づくめの服を着てサングラスをかけた女でした。

窃盗の被害は、結局、四条の部屋の手提げ金庫に入っていた20万円くらいでした。

6月30日。
給水タンクの点検から管理人室に戻ると、
三津子の姉の初恵が勝手に上がり込んでいました。

初恵は工場を経営している65歳の女社長で、
押しが強く口やかましい性格です。

ただ、「防火管理者」の資格を持っているので、
バベル九朔が消防点検をする際にはいつも立ち会っているのでした。

初恵は、満大が書いた小説を勝手に読んでしまいます。

それは、6月30日、つまり今日締め切りの新人賞に応募する予定の、
1600枚の超大作の原稿でした。
満大にとっては、3年かかって、初めて完成した長編でした。
ただし、まだタイトルが決まっていません。

初恵は世間話として、
このバベル九朔に入るテナントはパッとしないものが多く、
すぐに潰れてしまうため入れ替わりが激しかった、という話をします。

特に3階の蜜村という老人は、
しょっちゅう違う店を潰したり始めたりしていたのだそうです。

蜜村は、満男と同じ東北の地方出身で、
奥さんが金持ちだからテナントがうまくいかなくても平気だ、
ということも、初恵に教えてもらいます。

初恵が帰った後、屋上に行くと、
そこに黒づくめの服を着てサングラスをかけた女がいました。
女は、「扉は、どこ?」と訊いた後、サングラスを外します。
すると、そこにあったのは人間の目ではなく、カラスの目でした。

満大は悲鳴を上げて自分の部屋に行き、閉じこもります。
それから4日間、怖くて外に出れず、
1600枚の長編を郵便局に持っていくこともできませんでした。

7月3日になり、満男は四条の部屋に行き、四条と一緒に屋上に行きました。
当然ですが、カラス女(黒づくめの服を着てサングラスをかけた女)は、
もういませんでした。
代わりに数羽のカラスがいました。

部屋に戻ると、三津子から電話がかかってきます。
蜜村の父親が亡くなり、家業の神社を継ぐためにテナントを引き払いたい、
という知らせでした。

それから刑事に連絡すると、カラス女がバベル九朔の屋上にいたのは、
隣のビルの様子を見るためだろうと言われました。

その後、四条から、この間送った「トーテムポール」の結果が載っている
文芸誌を手渡されました。
一次選考も通過していませんでした。

実を言うと、満大はこれまで、1回も一次選考を通過したことがなかったのです。

落胆していると、水道業者がやってきて、
このビルで水漏れをしているのではないかと言いました。
しかし、落選のショックが尾を引いていて、満大は上の空の対応をしました。

その翌日、満大は3階にある「ギャラリー蜜」に行きました。
蜜村から、額に入った小さな油絵を渡されます。
満男に言われてずっと飾っていた絵なのだそうです。

蜜村は、生前の満男に、「お前はいつまでもここでやれ」
「うまくいかなくたっていい、お前はそれで世界の役に立っているんだぞ」
と励まされていたのだそうです。

満大は、初恵から聞いていた満男の故郷の名前を口にし、
そこに戻っても、元気でがんばってください、と蜜村を励ましました。

ところが、蜜村は、今まで自分の地元は誰にも話したことがないのに、
どうして知っているのかと顔色を変えました。

蜜村は昔、人に言えない不義理をして、こっちに逃げてきたのだそうです。
そして、働きながら許しをもらって故郷に帰るのに20年もかかったため、
バベル九朔を建ててから13年で亡くなった満男も、
誰にも教えていないはずだと言いました。

部屋に戻り、メモしてきた3階の水道のメーターの数字を確認すると、
20年分のバベル全体の使用量を、
3階だけでひと月にも満たない間に消費していることになっていました。

あり得ないと思いながら3階に行きますが、水漏れしている様子はありません。
そのとき、屋上の方から物音が聞こえ、満大は屋上に向かいました。

その途中、体長40センチの巨大ネズミ「ミッキー」の死体を発見します。
何かに頭蓋骨を砕かれていました。

屋上に行くと、例のカラス女がいて、「このバベルは壊れかけている」とか
「あるべき境界が消えようとしている」とか、訳の分からないことを言います。

扉はどこだと、再度訊かれ、満大は思い出しました。
5日前に初恵が来ていたとき、小説の扉ができていない、と口にしたことを。

この場合の「扉」というのは、原稿の一番上に載せる小説の表紙のことであり、
小説のタイトルが決まっていないという意味で満大は言ったのですが、
カラス女はそれを勘違いしたようでした。

満大は、カラス女から逃げ、自分の部屋に行きます。
すると、部屋の黒電話が鳴り、「逃げろ」と言われました。
しかし、その直後に天井からカラス女の黒い脚が伸びてきて、
電話を壊されてしまいました。

管理人室を飛び出し、階下に行くと、
5日前に消防点検でやってきた業者の男がいて、「扉はどこだ」と言われました。

満大は3階の「ギャラリー蜜」に入り、ドアを閉めます。
が、すぐ外にはカラス女が迫り、カラスの鳴き声を発しています。

満大がスタッフルームに逃げ込むと、そこに、
さっき蜜村から渡された絵が飾ってありました。
その絵には、さっきはなかったはずの黒い扉が描かれていました。

その絵に指先で触れた瞬間、満大は見知らぬ湖の真ん中にワープしていました。

混乱しながら岸に上がると、なぜか椅子とラジオがありました。
満大は、湖に浮いている船に手を振って声をかけますが、
全く反応がありませんでした。

ひとまず、道路を見つけ、走っている車を呼び止めようと決意したところで、
見知らぬ10歳くらいの少女に「そこで、何してるの?」と声をかけられました。

謎の犯罪集団によって眠らされ、どこかの湖に運ばれた、
と認識している満大は、この湖の名前と今日の日付を訊きます。

が、少女は、この湖に名前はなく、日付もない、ここはバベルだから、と言いました。

そして、突然、少女は走り出しました。

満大が少女を追いかけて道路を走るうちに、道路はトンネルに吸い込まれました。

トンネルを抜けると、
「観晴台」という看板がある二階建てのドライブインのような建物がありました。

外階段を上って屋上に行くと、湖が見えました。
その風景は、「ギャラリー蜜」で蜜村に渡された絵にそっくりでした。

湖岸では、少女が手招きをしています。

道をさらに進むと、ずっと上り坂だったはずなのに、
下に見えていた湖に到着しました。
空間がねじ曲がって接続されているのです。

少女は、この世界を一周させることで、満大にそのことを理解させようとしたのでした。

少女は近くにあった車に乗り込むと、椅子の上にある鍵を持って、
もういっぺん塔にいらっしゃい、と言いました。

鍵は見つかりましたが、塔の意味が分かりません。
しかし、「御晴台」の向こうに、唐突に塔が立っているのが見えました。

湖からドライブインのような建物に戻り、鍵を使って建物の中に入り、
奥にあった階段を上ります。

しかし、2階に行くだけのつもりだったのに、なかなか2階が見つかりません。

しばらくして、バベル九朔の管理人室を見つけました。
それを見た満大は、ああ、部屋に着いた、と思ってしまいました。

いつもと変わらない管理人室の様子に、
疲れていた満大はそのまま布団で寝てしまいました。

目を覚まし、電波時計を見ると、六月二十八日と表示されていました。

長い夢を見ていたのだ、と思いますが、異変に気付きます。
静かすぎるのです。
繁華街にあるバベル九朔はもっと騒がしいはずなので、静かなのはおかしいのです。

窓の外には森が広がっていました。

黒電話が鳴り、出ると、少女の声がしました。
待っている人がいるから、そのまま塔を上に向かってほしいと言われます。

満大は風呂に入った後、窓の外に三羽のカラスを発見します。

やがて1羽のカラスが、例の黒づくめのカラス女に変身しました。

部屋を出た満大は30階分くらい階段を上り、
「古美術とカレー 仁平」という店に辿り着きました。
それは、バベル九朔の2階にある「清酒会議」が入る前に入っていた店でした。

窓を開けて外を見ると、いつものバベル九朔の外の風景が広がっていました。
ただし、異様なほどの高さであり、
どんなに声を上げても道行く人は気付いてくれません。

少女によると、何かを落としても湖に落ちるだけなのだそうです。
少女自身も以前、窓から飛び降りて、湖に落ちたことがあるのだそうです。

しばらくして、さっきカラス女を目撃したことを話すと、少女が慌てました。
部屋を出ようとすると、カラス女が立っていました。

少女とカラス女は対立しているらしく、カラス女は少女の首を掴み、
窓の外に放り投げてしまいました。

カラス女は、階段の先で九朔満男が待っていると言い、
満大を脅かして階段を上らせました。

しばらくして、「タイ式マッサージ 蜜」という、
蜜村が「ギャラリー蜜」を開く前にやっていた店を発見します。
しかし、蜜村の姿はありませんでした。

窓から下を覗くと、人がただの点としか認識できないくらい地面が遠く見えました。
しかし、カラス女によると、窓から見えるものはまやかしで、
セットのようなものなのだそうです。

カラス女によると、この「バベル」は崩壊しつつあり、
完全に崩壊する前に「清算」しないと、大変なことになるのだそうです。
そして、カラス女が目的を果たしたら、さっきの少女も満大もカラス女自身も、
みんな消えてしまうのだそうです。

そのとき、電話が鳴りました。
相手は、25年前に死んだはずの満男でした。

満男は、満大しか知らないはずのことを話し、
自分が死んでいることを自覚していました。

元の世界に戻るためには、「はっぱ、ろくじゅうし」というお店に行き、
青色の段ボール箱をカラス女に渡して「去れ」と言えばいい、
と満男は言いました。

満男は適当に誤魔化しながら、
カラス女を上の階にある「8×8」というお店に誘導しました。
「8×8」の下には「eight by eight」という読み方が書かれた、
服飾雑貨を販売するお洒落なセレクトショップという感じでした。
「ホーク・アイ・エージェンシー」の前に入っていたお店です。

そこで青い段ボール箱を見つけ、カラス女に渡すと、
満大は「去れ」と呟きました。

すると、カラス女は満大の首を掴んで店の奥に飛ばしました。
次の瞬間、カラス女が爆発し、その周辺の壁が吹き飛び、
満大はビルの外に投げ出されそうになりました。

しかし、そこへ四条が現れ、満大の手を掴んで助けてくれました。

四条は、気が付くと、この塔の上の方の階にいて、
ずっと階段を下ってきたのだそうです。

その途中、満男と出会い、
ここはみんなの願いが叶う場所だと教えられたのだそうです。

四条は、子供の頃は将棋の天才で、中学までは神童とまで呼ばれていました。
しかし、バイクにハマり、暴走族に入って将棋はやめてしまいました。

その後は将棋とは縁のない人生を送ってきたものの、
ずっと、あのまま将棋を続けていたらどうなったのか、と考えていました。

この塔の中にある、将棋クラブでそのことを考えていたら、プロ棋士になり、
名人戦で挑戦者として名人に勝ったところが見えたのだそうです。

満大と四条は階段を上り続け、小さな無人の本屋に辿り着きました。

そこで満大は、あの3年かけて書いた1600枚の長編を
新人賞に応募していたらどうなっていたのか、それを知りたいと願いました。

すると、あの長編で新人賞を受賞してデビューし、
書店でサイン会を開いている自分の姿が見えました。
そして、そちらの方が本当の人生のように思えてきました。

しばらくして、行列が進むと四条がやってきました。
「ぼくは、ここにいる」と言いさえすれば、
この世界は満大のものになるのだそうです。

しかし、満大は何となく躊躇い、四条に、
「ホーク・アイ・エージェンシー」の前に入っていたテナントの名前を訊きました。
四条は「はっぱ、ろくじゅうし」と答えました。
それは満男が電話で使っていた呼び方だったので、満大は変だと思いました。

すると、少女が現れ、永遠に元の世界には戻れなくなるから、
「ぼくは、ここにいる」と言ってはいけないと止めました。

カラス女も現れ、四条の首をへし折ってしまいました。

少女に言われ、満大が「戻る」と言うと、最初に見た無人の本屋に戻っていました。

カラス女によれば、さっきのは、満大が望めばそれが満大にとっての現実になる、
罠だったのだそうです。

そしてさっきの四条は本物の四条ではなく、満男が四条の姿を借りていたのだそうです。

また、今回現れたカラス女は、さっき爆発したカラス女ではなく、
2羽目の別のカラス女でした。

そして、少女は自分の名前は九朔初恵だと言います。
現実世界では65歳になっていた、満大の母親の姉の名前でした。

さらに上にある流しそうめん屋に行き、そうめんを食べながら話をします。

ここはすべて作られた世界であり、
少女も満男によってつくられた存在なのだ、とカラス女は言いました。
少女はお腹も空かないし、年もとりません。
しかし、10歳までの初恵の記憶を持っていました。

満大は、自分のことを正直に話すことができず、ただの雑居ビルの管理人だと言いました。
少女が新しいそうめんを取りに店の奥に引っ込むと、
再び四条の姿をした満男が現れ、カラス女の胸に竹を突き刺して殺してしまいました。

カラス女は死ぬ間際に、サングラスを窓の外に捨ててほしいと満大に言いました。

満男は、カラス女こそがこの世界をつくらせた連中であり、
初恵の「影」である少女を人質にしていたのだと言いました。

そして、今の満男も、死んだ満男の「影」であり、
死ぬ間際にこちらの世界に己の影を引き込んだのだと言いました。
そのとき実体がなくなってしまったので、誰かの姿を借りないといけないのだそうです。

そして、今の満大もまた、「影」であり、
現実世界では本当の満大が何事もなく暮らしている、と満男は言いました。

そのとき、不意に部屋が暗くなりました。
外の空が暗くなったのです。
再び明るくなる瞬間、少女が四条を窓の外に突き落とすのが見えました。

また、窓の外の景色は現実世界の景色ではなく、湖がある景色に変わっていました。
少女によると、満男が死んだから偽りの景色が消えたのだそうです。

少女は、満男の道具になるのが嫌だった、と言いました。

満大は、カラス女のサングラスを窓から捨てた後、
少女に誘導されて、ずっと上の方の階に行きました。

そこにあったのは、1枚の真っ白なキャンバスでした。
この絵に向かって好きなことを望めば、何でも実現させることができる、
と少女は言います。

満大が、自分は影なのかと訊くと、少女は認めました。

満大はいつの間にか、新人賞の授賞式の会場にいました。
スピーチを終えた後、先輩作家の大先生は、
「ぼくは、ここにいる」と満大に言わせようとします。

しかし、受賞したはずの1600枚の長編小説のタイトルが思い出せず、
そこからこの世界に綻びが生まれました。

カラス女が現れ、大先生の首をへし折りました。
少女も現れ、少女に誘導されて満大は「戻る」と言いました。

気が付くと、また真っ白なキャンバスの前に立っていました。

さっき、真っ白なキャンバスの前まで誘導した少女は、
満男が少女に化けていた姿だったのだそうです。

そして、満大は空腹を感じ、疲れるから、影ではなくただの人間なのだそうです。

カラス女は、満大は自分でこの世界に来たのだと言いました。

カラス女によると、満男にバベルの作り方を教えたのはカラス女たちでした。
しかし、バベルがこれほど巨大になるとは予想していなかったのです。

九朔満男はもともと「力」を持つ一族に生まれました。
それは、故郷の湖から得られる「力」でした。

故郷の湖は干拓事業で埋め立てられ、消えてしまいましたが、
満男はこの世界に湖そのものを移したから「力」を失わずに済みました。

そして、満大にもその血が流れているため、
こうして絵の中に入ることができたのだそうです。

(この「湖から力を得る一族」の話は、
万城目学さんの「偉大なる、しゅららぼん」にて語られています。)

満男が満大に「ぼくは、ここにいる」と言わせ、夢を見させたかったのは、
満男にはもう力が残っていなかったから、満大の力が欲しかったのだそうです。

少女(初恵)の影を呼んだのは、単なる力試しのつもりで、
満男は最初から少女を元の世界に返すつもりはなかったのだそうです。

力を失いつつあった満男は追い詰められていました。
カラス女たちから逃れ、清算を免れても、バベルは崩壊してしまうからです。
そこで満大がこの世界に来るように仕組んだのですが、
満大は夢の世界を拒絶したため、満男の思い通りにはいかなかった、
ということです。

このバベルは、無駄(な夢)を見ている現実世界の人間によって、
ここまで伸びてきました。

満大も、一次選考すら通らない小説を書くことで、
このバベルを伸ばしてきました。

が、1600枚の長編が締め切りに間に合わなかったのをきっかけに、
満大が書くことをやめ、バベルの伸長も停止しました。

その説明を聞いたとき、空が明滅しました。

さらに、波の音も聞こえてきて、音を探してスタッフルームに行くと、
満大がこの世界にやってきた「扉」のある絵がありました。

満大は、少女の手をその「扉」に触れさせ、現実世界へ返しました。

が、それだけで絵は力を失い、「扉」も消えてしまいました。

部屋の外に出ると、そこは「現実世界のバベル九朔でした。

しかも、死んだはずの40センチの巨大ネズミ『ミッキー』が現れ、
カラス女が踏み潰して殺してしまいます。

時間が巻き戻っていたのでした。

『清算』を始めようとしたカラス女を、満大は止めました。

『俺は、ここにいる』と満大は宣言し、バベルの管理人となりました。

その後、1日前の『満大』が屋上に現れ、カラス女から逃げて管理人室に行きます。
満大は管理人室に電話をかけ、『逃げろ』と言いました。

さらに、姿を変えて1日前の『満大』を『ギャラリー蜜』に誘導し、
絵に飛び込ませます。

その後、満大は管理人室に行き、1600枚の長編に『バベル九朔』と
タイトルを付けた後、屋上から原稿をばら撒きました。

バベルは無駄(な夢)を食べて伸長するので、その小説を餌にしたというわけです。

その長編小説は、『バベルの朝はカラスが連れてくる』という文から始まり、
この『バベル九朔』の冒頭シーンと一致していました。

つまり、この小説『バベル九朔』そのものが
満大の書いた1600枚の長編小説に呑み込まれていたわけです。

満大が捧げた1600枚の長編のおかげで、さっき絵に吸い込まれた過去の満大が
管理人として戻ってくる分くらいの時間は稼ぐことができました。


という感じのあらすじなのですが、現実世界に戻る前に物語が終わってしまうため、
結局、満大が現実世界に戻ることができたのかどうかは、いまいち判然としません。

ただし、満大は「影」ではなく実体を持った人間ですし、
生きているバベルの管理人は、バベルと現実世界を自由に行き来できるはずなので、
新たな管理人になった満大はこの後、現実世界に戻ることができたんじゃないかと思います。

あと、少女を絵に触れさせたら時間が戻ったのは、
湖から力を得る一族の能力の一つに、そういうのがあったからだと思います。
この辺りは「偉大なる、しゅららぼん」で説明されています。

また、序盤のシーンで、蜜村が満男と同郷だという、
蜜村が誰にも教えていないことを初恵が知っているという伏線があったので、
少女も初恵と融合する形で現実に戻ってこれたんじゃないかと思います。

そういえば、序盤、「ギャラリー蜜」の水道メーターが跳ね上がっていましたが、
それはバベルが崩壊寸前だったため、
現実世界の水道の水がバベルの湖に流れ込んでいたせいだと思います。
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