川原礫「ソードアート・オンライン14 アリシゼーション・ユナイティング」のネタバレ解説

ソードアート・オンライン (14) アリシゼーション・ユナイティング (電撃文庫)


13巻から直接話が続いています。

第12章 最高司祭アドミニストレータ 人界歴380年5月

キリトは、整合騎士となったユージオと戦っていました。

キリトは後方蹴り技≪弦月(ゲンゲツ)≫でユージオの右手の甲を捉え、
青薔薇の剣を弾き飛ばしました。

しかしユージオは風素術でカウンターを繰り出し、キリトを吹き飛ばしました。

ユージオは、上級修剣士ゴルゴロッソ・バルトーに教えてもらった、
パルティオ流、≪逆浪(ゲキロウ)≫などの技を使いましたが、
ゴルゴロッソのことは覚えていませんでした。

ユージオの記憶はひび割れていましたが、
キリトも、ユージオとチャンバラをした記憶を思い出し、
ひび割れているのは……俺の記憶…………? と思いました。

ユージオも記憶を取り戻しましたが、頭の芯に突き刺さる冷たい棘は消えず、
最高司祭様のために目の前の敵を斬り倒せ、という命令が絶えず発せられていて、
命令に従いながら、戦いを中断するために≪記憶解放≫をして、
キリトとアリスを氷で縛りました。

5の月25日の午前2時、ユージオは昇降盤に乗り、100階に戻ります。

チュデルキンに、反逆者2人を氷に閉じ込めたとユージオが報告すると、
チュデルキンはキリトとアリスをディープ・フリーズしに、
99階に下りていきました。

ユージオは忠誠を装って、アドミニストレータを倒そうとしますが、
アドミニストレータはユージオの顔を見て、
ユージオをシンセサイズし直そうとしました。

ユージオは右手に集中し、賢者カーディナルにもらった短剣を、
アドミニストレータに刺そうとしましたが、
障壁に遮られて刺さりませんでした。

1ミリだけ貫いた瞬間、障壁を作る神聖文字が爆発し、
ユージオとアドミニストレータを後ろへと吹き飛ばしました。

いまの私の肌には、あらゆる金属オブジェクトは傷をつけられないの、
とアドミニストレータは言いました。

かわいそうな子、とアドミニストレータは言いましたが、
愛は、支配し、支配されること……、――かわいそうなのは、
そんなふうにしか言えないあなたのほうだ、とユージオは言い返します。

花に水を注ぐように、ただひたすら与え続けること……きっと、
それが、愛なんだ、とユージオは言いました。

アドミニストレータが右手を動かし始めた瞬間、
ユージオはアインクラッド流突進技、≪ソニックリープ≫で、
アドミニストレータに突進します。

紫色の障壁に受け止められますが、ユージオが気合を振り絞ると、
青薔薇の剣が、紫色の障壁に沈み込み、アドミニストレータは大きく後ろに跳び、
その剣……ふうん、そういうこと……、と言いました。

チュデルキンがキリトとアリスに返り討ちにされ、戻ってきます。

キリトとアリスも100階へと昇ってきました。


第13章 決戦 人界歴380年5月

ユージオはキリトやアリスと合流し、
一緒にアドミニストレータ達と戦うことになりました。

アリスが凛とした声で、アドミニストレータとチュデルキンを批判すると、
あの者が施した≪コード871≫を自発的意思で解除したのかしら……?
とアドミニストレータは言いました。

アドミニストレータは右手の人差し指を軽く一振りし、
天蓋つきベッドを床下へ収納しました。

神聖術には≪対象接触の原則≫があり、
チュデルキンやアドミニストレータに直接触れられさえしなければ、
石化術を喰らう心配はないので、キリト達は距離をとります。

まず、チュデルキンがキリト達の相手をすることになりました。

素因を操るには術者の意識と直結したイメージの導線、
すなわち、指が必要になります。

普通は両手で10個の素因(エレメント)しか操れませんが、
チュデルキンは頭の天辺(てっぺん)で逆立ちし、
両手両足の指を使って20個の凍素を生成しました。

アリスは金木犀の剣の武装完全支配術で、
チュデルキンの氷柱の攻撃を防ぎました。

金木犀の剣は、現存するディヴァイン・オブジェクト中でも最大クラスの
物理優先度を持っているのよ、そんなのを相手に物理系攻撃術を使うなんて、
神聖術の基本も忘れちゃったの?
とアドミニストレータが助言し、チュデルキンは感激します。

チュデルキンは、キリト達を殲滅したら、最高司祭と一夜の夢を共にしたい、
ということを言い、アドミニストレータは偽りの誓いをしました。

チュデルキンは、両手両足の指の他に、両眼に大型の熱素を生成しました。
両眼のまわりの皮膚が焦げ始めますが、
チュデルキンは熱さも痛みもまったく感じていないようでした。

チュデルキンは身長5メートルの、炎の巨大なピエロを作り出しました。
実体なき炎の巨人は、金木犀の剣では破壊できません。

これにはアリスも動揺し、10秒、どうにかして防ぎます、
キリト、ユージオ、その間にチュデルキンを討ってください、
ただし剣の間合いにまで接近してはいけない、
最高司祭はそれを待っているのですから、と言いました。

アリスが攻撃を防いでいる間に、キリトは作戦を考えます。
奴の眼を、とキリトはユージオに囁き、ました。

ユージオは氷の矢で、
チュデルキンではなく後ろにいたアドミニストレータを狙います。

アドミニストレータは、
ふっと軽く息を吹きかけるだけで氷の矢を砕け散りさせましたが、
チュデルキンは後ろを向き絶叫しました。

キリトは片手直剣用単発技、≪ヴォーパル・ストライク≫で突進します。
この技の射程を、心意の力で5倍以上に拡張しようとします。
キリトはアインクラッド時代の服装、髪型に変身し、
チュデルキンの棒のように細い胴体の真ん中を貫きました。

アドミニストレータはチュデルキンの躯を、
遥か離れた東側の床に吹き飛ばし、片付けました。

アドミニストレータはキリトに向かって、
イレギュラーな坊や、あなた、あっちから来たのね?
≪向こう側≫の人間……そうなんでしょ? と投げかけました。

キリト達とアドミニストレータは、未来について議論をします。

整合騎士団は強いけど人数が少なく、このまま最終負荷実験が始まれば、
人界はダークテリトリーの住人に負けてしまいます。

あなたはこのまま人界が蹂躙されるに任せ、民なき国の支配者として、
名ばかりの玉座でひとり滅びの時を待つつもりなのか!!
とキリトが言うと、
本当のことを言うとね、騎士団はただのつなぎだったのよ、
とアドミニストレータは言いました。

アドミニストレータは、リリース・リコレクション!!
と叫び、記憶解放術をしました。

広間を取り囲むように配置されている柱に取り付けられた、
模造剣30本が組み合わさって、異様な剣巨人になりました。

アドミニストレータはそれを、≪ソードゴーレム≫と呼びました。
剣の自動人形です。

キリトとアリスは、弱点と思われる背骨と4本足の接合部を攻撃しようとしましたが、
アリスは胸を剣で貫かれ、キリトはソードゴーレムの左後ろの脚に吹き飛ばされ、
大量の出血をし、動かなくなりました。

短剣を使うのよ、ユージオ! 床の昇降盤に刺しなさい!!
と、キリトの右肩に乗る黒い蜘蛛のシャルロットの声が聞こえました。

シャルロットはソードゴーレムに突進しながら急激に巨大化し、
全長2メートルになりました。

シャルロットはソードゴーレムに絶望的な戦いを挑み、
時間を稼ぎ、倒されました。

ユージオが昇降盤に短剣を突き刺すと、
よかった……間に合った、最後に……一緒に、戦えて……うれ……し…………、
と言い、シャルロットは死にました。

昇降盤は紫色に光り輝き、扉が現れ、カーディナルが出現し、
ソードゴーレムを倒しました。

アドミニストレータは、最初からカーディナルをおびき寄せるために、
キリトやアリスやユージオをいたぶっていたのでした。

アドミニストレータは、世界とカセドラル最上階の接続を切断し、
誰も部屋から出られないようにします。

カーディナルが倒したはずのソードゴーレムは再生してしまいました。

ソードゴーレムは300人もの人間を物質変換して作られたものだったのでした。

さらに、アドミニストレータは人界に存在する8万のヒューマンユニットの半分、
4万ユニットをソードゴーレムに変換し、
ダークテリトリーに攻め込むつもりだったのでした。

アドミニストレータにとって、整合騎士団はそのつなぎに過ぎなかったのです。

その剣の所有者は、天井の絵に嵌め込まれている水晶でした。
その水晶は、整合騎士たちから奪われた≪記憶の欠片≫なのでした。

そして、整合騎士たちから奪った記憶に刻まれた、
最愛の人間自身をリソースとして、アドミニストレータは剣を作り、
記憶解放現象を起こしていたのでした。
その事実を知ったカーディナルは、ソードゴーレムを破壊できなくなりました。

カーディナルは、カーディナルの命と引き換えに、
キリトとユージオとアリスを逃がすことを、
アドミニストレータの自らのフラクトライトに誓わせました。

カーディナルは一方的にアドミニストレータに攻撃され、死にかけました。

いまようやく、僕の果たすべき使命を悟りました、
僕は逃げない、僕には……為さねばならない役目があります、
とユージオは言い、カーディナルに頼んで、
自らの体を剣に変えてもらうことにしました。

核心防壁解除(リムーブ・コア・プロテクション)、とユージオは言い、
己のフラクトライトに対する無制限の操作権をカーディナルに与えました。

アリスがシンセサイズの儀式で奪われた記憶の欠片、水晶が天蓋から外れました。

アドミニストレータはカーディナルが何かしようとしていることに気づき、
攻撃しますが、アリスが時間を稼ぎます。

ユージオの体と青薔薇の剣が融合し、10字の鍔(つば)を持つ、
1本の巨大な純白の剣となりました。

アリスは激しい攻撃を受け、天命が大きく減少し、意識を失いました。

純白の大剣とアリスの記憶の欠片が、記憶解放をしました。

美しい……人の……愛、そして意志が放つ、光……、なんて……美しい……、
とカーディナルは言い、キリトに望みを託して亡くなりました。

純白の大剣はソードゴーレムを倒し、アドミニストレータを襲います。

白い大剣が真っ二つに折れ、アドミニストレータの右腕を、
肩口から斬り飛ばしました。

ユージオは、人の姿へと戻りましたが、身体は分断されたままで、
恐ろしい程大量の血液が溢れ出しました。

アドミニストレータは、ユージオの剣に斬り飛ばされた右腕を物質組成変換し、
レイピアを作り、キリトを殺そうとします。

意識を取り戻したアリスが、動けなくなったキリトの目の前に割って入り、
キリトは再び黒い剣の柄を摑み、レイピアを迎撃しました。
衝撃で後方へと追いやられ、アリスは再び意識を失いましたが、助かりました。

アドミニストレータは、キリトが遥か昔、
アインクラッドで何度か見かけたことしかない細剣六連撃技、
≪クルーシフィクション≫でキリトを圧倒します。

さらに、カタナ単発技、≪絶空≫というキリトの知らないソードスキルまで使い、
キリトは諦めそうになりました。

らしく……ないぞ、諦め……る、なんて、とユージオは言い、
青薔薇の剣を物質組成変換し、赤薔薇の剣に変え、キリトに渡します。

キリトは再び立ち上がり、
≪二刀流≫でアドミニストレータの胸の中央を貫きました。

黒い剣は木でできていて、青薔薇の剣は氷でできているため、
金属を受け付けないアドミニストレータの肌を貫くことができたのでした。

アドミニストレータは致命傷を負いますが、
予定より、ずいぶんと早い……けれど、一足先に、行かせて、もらうわね、
と言い、1台のノート型コンピュータを呼び出し、
現実世界へと脱出しようとしました。

しかし、チュデルキンが、アタシも、連れていって、くださいぃぃぃぃ、
と自分自身を火炎ピエロと化し、アドミニストレータに巻きつきます。
アドミニストレータとチュデルキンは消滅しました。

キリトは、致命傷を負ったユージオを治癒術で助けようとしますが、
助けることができませんでした。

ステイ・クール……、キリト、とユージオは言いました。

キリトは、子供の頃、ユージオの誕生日プレゼントのために、
白金樫製の木剣を作っていたことを思い出しました。

思い出は、ここにある、永遠に、ここにある、とキリトは言いました。

キリトの、黒い剣…………≪夜空の剣≫って名前が…………いいな、
この…………小さな、世界を…………夜空のように……優しく…………
包んで………………とユージオは言いました。

ユージオは、整合騎士になる前のアリス・ツーベルクと、
白い光を目指して歩き、ふたつのフラクトライトが初期化されました。

キリトはコンピュータに近づき、フラクトライト加速倍率を1・0倍にし、
現実世界にいる菊岡を呼びました。
現実世界では、何者かに襲撃される音が聞こえました。

アリスという名の少女を探すんだ!
アリスを連れて≪ワールド・エンド・オールター≫を目指してくれ!
ここはもう陥(お)ちる! と菊岡は言いました。

菊岡を襲撃している者達が主電源を切ろうとしているということが聞こえます。

いま主電源を切られたらサージが起きる!
サブコンの、桐ヶ谷君のSTLに過電流が……フラクトライトが焼かれちまいます!
と比嘉の甲高い悲鳴が聞こえました。

キリトは深いダメージを受け、思考する能力を奪われる直前、
キリトくん!! という明日奈の声を聞きました。


というあらすじなのですが、
この巻に収録されている話をしまうましたが初めて読んだときは、
9巻以降、キリトと同じくらい活躍していて、
第2の主人公的存在だったユージオが「死んだことが信じられず、
しばらく放心していました。

もしかしたらユージオは生き返るんじゃないかと思いましたが、
この後も生き返りませんでした。


そして、長かったアリシゼーション編がやっと終わりそうだったのに、
全然終わらないことにも驚きました。

アリシゼーション編はまだまだ続き、次の15巻では、
いよいよ人界とダークテリトリーの全面戦争が始まります。

川原礫「ソードアート・オンライン13 アリシゼーション・ディバイディング」のネタバレ解説

ソードアート・オンライン (13) アリシゼーション・ディバイディング (電撃文庫)


転章Ⅳ 西暦2026年7月6日

明日奈と凜子が≪オーシャン・タートル≫の11番デッキで朝食を取っていると、
中西一等海尉がやってきました。

中西は、明後日までは≪オーシャン・タートル≫に随走予定の護衛艦≪ながと≫が、
西に転進したことに気づき、菊岡に報告しました。


第9章 整合騎士アリス 人界歴380年5月

12巻はキリトとアリスがセントラル・カセドラルの外に放り出されたところで終わりましたが、
その続きです。

キリトは≪黒い剣≫の切っ先を、
セントラル・カセドラルの外壁を成す白大理石ブロックのわずかな隙間に突き立て、
アリスをぶら下げていました。

その手を離しなさい! と言うアリスに、キリトはバ.カと8回も言い、
キリトとユージオが、学院でライオスとウンベールを斬ったのは、
公理教会と禁忌目録が間違っているからだと言いました。

アドミニストレータを倒して、その誤りを証明するために、
キリトとユージオはここまで上ってきたことや、
それとまったく同じ理由で、アリスを死なせるわけにはいかないことをキリトは言い、
アリスを同じ高さまで引き上げました。

アリスが金木犀の剣の切っ先を大理石の隙間に突き刺すのとほぼ同時に黒い剣が抜け、
キリトはアリスに摑まれました。

キリトはアリスに、塔の中に戻るまで休戦を提案し、
協力して外壁を上ることになりました。

アリスは籠手を鎖に変化させました。
鎖でキリトのベルトとアリスの剣帯の金具を繋ぎます。

空を飛ぶことはできず、四方の壁が柱だけの素通しになっている95階、
≪暁星(ぎょうせい)の望楼≫まで、外壁を上ることになります。

キリトは神聖術で登山に使うような大型ハーケンを生成し、壁に突き刺し、
鉄棒の容量で蹴上がりしてハーケンの上に乗りました。

しかし≪本来有り得ない事態≫への適応力が低いアリスは、
自力でハーケンに乗ることができず、キリトはアリスを引っ張り上げました。

太陽が沈み始め、空間リソースが足りなくなり、
アリスはもう片方の籠手でハーケンを3本作りました。
上に座って休めそうなテラスまで上ろうとしますが、
その途中にあったガーゴイルのような石像が動き始め、キリトとアリスを襲います。

キリトはハーケンを石像に刺して応戦し、アリスを真上へと放り投げ、
テラスに載せました。
アリスがキリトを引っ張り上げ、あの怪物は、
ダークテリトリーの暗黒術師が作り出し、
使役する邪悪な魔物≪ミニオン≫だと言いました。

キリトとアリスはミニオンを全て倒します。
ミニオンの血は病を呼ぶとアリスは言い、
キリトにハンカチを貸してキリトの頬に付いた血を拭わせました。


第10章 整合騎士長ベルクーリ 人界歴380年5月

ユージオは、上層階のどこかでキリトとアリスと合流できると信じて、
階段を上り、90階に着きました。

90階は全体が超巨大な、お風呂になっていて、
整合騎士長ベルクーリがお湯につかっていました。

ベルクーリは2メル(2メートル)近い身長の、
外見年齢40歳を越える剛毅な風貌の男でした。

ベルクーリは着物を着た後、ファナティオは、死んだのか? と訊ねました。
生きてますよ、とユージオが答えると、
ならオレも、お前さんの命までは取らねぇでおこう、とベルクーリは言いました。

ベルクーリが素振りをすると、その位置に陽炎が生まれました。
突進したユージオの体が、陽炎に重なると、
灼熱の衝撃が、左胸から右脇へと抜けました。

ンベルクーリは、未来を斬ったと言いました。

ベルクーリが初めて暗黒騎士の連続剣を見たのは、
整合騎士の任に就いて間もない頃で、ぐうの音も出ないほどやられました。
逃げ帰ったベルクーリは、自分の剣を敵に当てる方法を考えました。

最高司祭アドミニストレータは、セントラル・カセドラルの壁に据え付けられていた、
≪時計≫の針を剣に鍛え直しました。

その剣≪時穿剣(じせんけん)≫は、剣を振った瞬間に発生した威力を、
時間を置いて保つ能力を持っているのでした。

ベルクーリは完全支配術を詠唱する時間をユージオに与えるため、
長広舌を揮ってそのことを教えてくれました。

ユージオは、武装完全支配術の結句を呟きました。

凍りついた床から、鋭い棘が無数に伸び上がりますが、ベルクーリはそれを迎撃します。

ユージオは突進を開始する直前、握った青薔薇の剣を右に投げ捨て、
代わりに氷柱の1本を折り取って剣の代わりにしていて、
斬り結んだ時にその氷柱が砕け散りました。

≪体術≫で左肩からの体当たりをベルクーリの腹にぶちかまし、
ユージオは騎士長の腰に組み付き、右の浴槽へと身体を投げ出しました。

ユージオは青薔薇の剣を拾い、浴槽の底へと突き立て、≪記憶解放≫を命じ、
広大な浴槽全体を凍らせました。

ユージオもベルクーリも動けなくなり、天命の削り合いになります。

ユージオがベルクーリに勝っているかもしれない、唯一の要素は、天命の総量でした。

外見からして、あなたが整合騎士になったのは、40歳を越えてからでしょう、
当然、天命の最大値も減っている、とユージオは言いました。

整合騎士になった……だと……?
まるで、オレたちの、前世を知ってるみてえな口を叩くじゃねえか、
とベルクーリが言いました。

あなたは、僕と同じ人間なんだ! とユージオは言い、
300年前にルーリッドの村を拓き、初代の衛士長となった名剣士が、
ベルクーリなのだということを思い出しました。

あなたは……僕の剣に、見覚えがあるはずです、とユージオが言うと、
北辺の守護竜を殺した時、巣の中に、それとよく似た剣が……、
とベルクーリは言いました。

ユージオとベルクーリは相討ちしそうになりますが、
そこへ元老長チュデルキンが現れます。

チュデルキンは右側が真っ赤、左側が真っ青な、ぱんっぱんに膨れた衣装をまとった、
道化のような外見の丸っこい人物です。
ドラゴンクエストⅤに登場する中ボス「ゲマ」のような性格と喋り方です。

チュデルキンは神聖術でベルクーリを凍結させ、ユージオに近づきます。

胸の奥でキリトとアリスの名前を呼んだところで、ユージオの意識は途切れました。


第11章 元老院の秘密 人界歴380年5月

夜8時過ぎ、テラスで休んでいたキリトは、
カーディナルの大図書室から退出する時に、
ポケットに蒸し饅頭を入れていたのを思い出しました。

キリトが熱素で温めようとすると、
そんなおとをしたら、一瞬で黒焦げです! とアリスに口を押えられます。

アリスは風素で渦を作り、饅頭を浮かべ、熱素と水素で蒸気を渦巻かせ、
蒸して温めました。

2つの饅頭を分けて食べながら、キリトは、
さすがは、あの料理上手のセルカのお姉さん、と口にしかけます。

セルカという言葉に反応したアリスに、キリトは事実を教えることにしました。

アリス達整合騎士は、
自分達は天から使わされた神の騎士だとアドミニストレータに記憶操作されていましたが、
整合騎士は元々人間だったということをキリトは教えます。

整合騎士デュソルバート・シンセシス・セブンは、
8年前、ルーリッドの村から幼いアリスを連行したということや、
本当の名前はアリス・ツーベルクだということをキリトは教えます。

ダークテリトリーへ侵入した時のことを話したキリトは、
俺は、ユージオからアリスの話をそんなに詳しく聞いていたのだったか……?
と考えました。

アリスの父親のガスフト・ツーベルクや、妹のセルカのことをキリトが詳しく話すと、
アリスは、思い出せない、でも……私の口が、喉が……心が、憶えている、
と言い、涙が零れ落ちました。

アリスは最高司祭アドミニストレータが整合騎士達を深く欺いていることは認めながらも、
最高司祭が整合騎士団を編成しなければ、
とうに人界は闇の軍勢に攻め込まれていたでしょう、と言いました。

逆にキリトは、整合騎士団がダークテリトリーの軍勢の総攻撃を間違いなく撃退できると、
本当に信じているのか? と訊きました。

最高司祭は、自分の完全なる支配が及ばない力が人界に生まれることを恐れた、
アドミニストレータはこの世界の人間を信じちゃいないんだ、これっぽっちも、
とキリトは言い、貴族や一般民にも膨大な武具を全て分け与え、
本物の剣技神聖術を学ばせ、立派な軍隊を作り上げることを提案しました。

封印された私の記憶を取り戻せたなら、私はもういちどセルカに……妹に会えるのですか、
とアリスが訊ねました。

キリトは、セルカと再会するのは今のアリスの人格ではなく、
アリス・ツーベルクの人格だということを言いましたが、
アリスは、本来のアリスの人格を復元する前に、物陰からひと目、
家族の姿を見せてほしいということを頼み、キリトは約束しました。

アリスが整合騎士の使命を捨てることを宣言しようとすると、右腕に激痛が走りました。
アリスの右眼には【SYSTEM ALERT】という文字列が浮かび上がりました。

このシステム・アラートを仕込んだ人間は、意図的に実験の成功を遅らせている、
ラースという組織に敵対する勢力または個人の妨害工作なのではないだろうか、
とキリトは推理しました。

その何者かが意図しているのは、ライトキューブ・クラスタを含む、
全実験成果の奪取だと思考が至った時、ひどい……とアリスは言いました。

この赤い神聖文字を、アリスの眼に焼きつけたのは、
≪神≫だちの1人だとキリトが説明すると、
私は、人形ではない! 最高司祭アドミニストレータ……そして名を持たぬ神よ!!
私は、私の成すべきことを成すために……あなたと、戦います!!
とアリスは宣言しました。

アリスの右眼から、深紅の輝きが光の柱となって迸りました。

場面が変わり、ユージオの視点になります。

ユージオは母親に甘え、父親や兄たちを殺してしまった夢を見ました。

目を覚ましたユージオは、セントラル・カセドラルの最上階にいました。

円形のベッドに、造形の完璧な女性が横たわっていました。
ユージオは、いつしか考える力を奪われていて、女性の髪や頬に触れようとしましたが、
いけない、ユージオ、逃げて! という誰かの叫び声が聞こえ、
少しずつ思考力が蘇り始めました。

ベッドで眠る女性が最高司祭アドミニストレータだとユージオは気づきましたが、
カーディナルに貰った短剣をアドミニストレータに使うか、
アリスに使うか迷っている間に、アドミニストレータが瞼を開けました。

アドミニストレータはユージオを見て、
あなたは、愛されるということを知らない、可哀相な子、と言いました。

母さんは……僕を愛してくれた、とユージオは反論しますが、
その愛は、あなたの兄弟に与えた余り物だったんでしょう……?
とアドミニストレータは言います。

アドミニストレータはユージオに、「ほんとうの記憶」を思い出させます。

ルーリッドの村に住んでいた頃、アリスとキリトが朝から見当たらず、
3人だけの秘密の場所に行くと、アリスとキリトが寄り添っていました。

あの子の愛ですら、あなた1人のものじゃないのよ、
でも、私は違うわ、ユージオ、私があなたを愛してあげる、
とアドミニストレータは言いました。

≪ギガスシダーの刻み手≫の仕事でユージオが稼いだ賃金を父親に管理され、
気付くと羊が増えていたり、農具が新品になったりしていたことや、
衛士見習いのジンクはユージオに、
村長んとこの娘が居なくなっちまったら、もうお前を構ってくれる女は、
この村にゃいねえよな、と言ったことなどを思い出しました。

私は、あなたから奪うだけだった連中とは違うわ、
あなたが私を愛してくれたら、それとまったく等価の愛を返してあげる、
とアドミニストレータは言いました。

ユージオはアドミニストレータに、
システムコール・リムーブ・コア・プロテクション、
という神聖術の式句を唱えさせられました。

再びキリトの視点に戻ります。

アリスの碧玉のような右眼は跡形もなく吹き飛び、その痛みと衝撃で、
アリスは気を失ってしまいました。

それから2時間、
キリトはアリスを背負って95階まで垂直の絶壁を90メートルも上りました。

この95階が、カセドラルの外部に放り出されたキリトとアリスが再び内部に
戻り得る唯一の場所だということは見れば解り、
もしユージオが先に到達していれば、
ユージオはここでキリトを待っているはずでした。

キリトは神聖術を使い、ユージオの青薔薇の剣の場所を探ります。
闇素が落下し、青薔薇の剣は下にあると解りました。

90階の大浴場に行くと、真っ白に凍り付いていました。

分厚い氷に胸元まで沈み込むベルクーリは、
無機質な灰色に染まってしまっていました。

元老長は、あらゆる人間を石に変えてしまう権限を与えられている、
術式の名は≪ディープ・フリーズ≫ということをアリスは言いました。

肉体のみならず精神さえも完全停止させる術式でしたが、
ベルクーリは意志の力で打ち破ろうとし、アリスに話しかけました。

嬢ちゃんなら、できるさ……、公理教会の過ちをただし、
この歪んだ世界を、あるべき形へ……導く……ことが…………
おい、小僧……、アリスの嬢ちゃんを……頼んだ……ぞ、
とベルクーリは言い、キリトは解ったと言いました。

チュデルキンがユージオを連れて行ったことを話し、
ベルクーリは再び物言わぬ石像と化しました。

キリトは浴槽の床に突き立てられた青薔薇の剣を抜き、
ベルクーリを残して95階≪暁星の望楼≫に戻ります。

フロア3つぶんはありそうな天井の高さの96階の≪元老院≫に行くと、
壁に据え付けられた四角い箱に、
体がすっぽりと格納された人間の生首がぎっしりと並んでいました。

システム・コール……ディスプレイ・リべリング・インデックス……、
と箱人間たちは言いながらステイシアの窓を眺めていました。

何十人と存在する箱人間たちは、
人界に暮らす人々の違反指数を片っ端からチェックしているのでした。
彼等のすぐ頭上の壁には、蛇口のようなものが突き出していて、
ブザー音が鳴って箱人間が真上に顔を向けて口を開けると、
蛇口から、どろどろした茶色の液体が流れ出し、
彼らはそれを飲み下しました。

人界のあちこちから拉致してきた人間のうち、
戦闘能力には欠けるけど神聖術に秀でた者の感情や思考を封じて、
元老という名の監視装置に作り変えたんだ……、とキリトは言いました。

広間の奥からチュデルキンの声が聞こえ、奥に進むと、
チュデルキンが硝子玉に映し出されたアドミニストレータとユージオを見て、
絶叫を繰り出していました。

アリスはチュデルキンの口に剣の切っ先を突き付け、会話します。

アリスはまず2年間、修道女見習いとして育てられ、
生活規則の抜け穴を見つけて、セントリアの夏至祭を見物に行っていた、
ということをチュデルキンは話しました。

神聖術行使権限がたっぷり上がったところで、
来ました強制シンセサァァイズ! とチュデルキンは言いました。

強制ではないシンセサイズがあるような口ぶりだとアリスが言うと、
6年前のアリスは、通常のシンセサイズに必要な術式を唱えることを拒み、
自動化元老の任務を一時停止して、
アリスの大事な物を守る壁を術式でコジ開けさせた、
ということをチュデルキンは言いました。

お前の話はもう聞き飽きました、とアリスが言い、
金木犀の剣の切っ先が動き、
丸く膨らんだ道化服の中央――心臓の真上に押し当てられ、
黄金の刃が深々と沈み込んだ瞬間、
チュデルキンの真ん丸い体が風船のように弾け飛びました。

真っ赤に着色された煙が周囲に広がります。
キリトが毒々しい色の煙を吸い込んだ瞬間、
喉を針で突かれるような痛みに襲われました。

チュデルキンは隠し通路に逃げ、キリトとアリスはチュデルキンを追い、
階段を上ります。

素因系術式の詠唱が聞こえましたが、99階の円形の部屋に行くと、
チュデルキンはいませんでした。

この部屋は6年前、整合騎士見習いとなったアリスが目覚めた場所でした。

アリスは昇降盤があったことを思い出し、
術式で光素を10発生させ、放射状に放ちました。

そのうち1つが、他より強い輝きを放ち、昇降盤が降りてきました。

天井の穴から、ユージオが舞い降りてきましたが、
ユージオは斬るべき敵としてキリトを計っていました。

ユージオは、すでにシンセサイズされています、とアリスは言いました。

整合騎士と化したユージオはキリトに対して、君のことは知らない、
でも、ありがとう、僕の剣を持ってきてくれて、と言いました。

ユージオは、意志の力だけで物を動かす「心意の腕(かいな)」
という整合騎士に伝わる秘術で、青薔薇の剣を右手に移動させました。

師匠として、まだ弟子に負けてやるわけにはいかない、
とキリトは言い、キリトとユージオは、同時に大理石の床を蹴りました。

というあらすじなのですが、ここで13巻は終わります。

12巻に引き続き、物凄いクリフ・ハンガーです。

今回はバトルらしいバトルは、
ユージオ対ベルクーリ戦くらいしかありませんでしたが、
これまで敵対していたアリスがキリトの味方になり、
これまで味方だったユージオがキリトの敵になってしまうという、
衝撃の展開があったため、面白かったです。

次巻の14巻は、1冊丸ごとバトルだけで構成されています。

川原礫「ソードアート・オンライン12 アリシゼーション・ライジング」のネタバレ解説

ソードアート・オンライン (12) アリシゼーション・ライジング (電撃文庫)


第7章 二人の管理者 人界歴380年5月

11巻から引き続き、幼賢者カーディナルの話が続いています。

今から270年前、
完全なコマンドリストの呼び出し方に成功したクィネラは、
自分の権限レベルを最上位にまで引き上げ、
世界をコントロールするカーディナル・システムそのものへの干渉を可能とし、
カーディナルのみが持つ権限の全てを己に付与しました。

消滅寸前となっていた己の天命値の全回復、
自然現象の停止、容姿の回復をしました。

10代後半の、輝くような美貌を取り戻したクィネラは、
カーディナル・システムそのものを己に取り込もうと考え、
長大な神聖術を組み上げ、唱えました。

その結果、クィネラは、カーディナル・システムに与えられていた基本命令を、
己のフラクトライトに、書き換え不可能な行動原理として焼きつけてしまい、
カーディナルと自らの魂を融合させてしまいました。

カーディナルの基本命令は、≪秩序の維持≫です。

クィネラは、己の名を公理教会最高司祭、アドミニストレータと改めました。

世界の管理者となったクィネラは、当時の大貴族4人を皇帝の座に就け、
人界を東西南北の4帝国に分けました。

央都セントリアを十字に分割する≪不朽の壁≫は、
アドミニストレータが一瞬にして出現させたものでした。

クィネラは開拓民らの居住地域を制限するため、
割れない巨岩、埋められない沼、渡れない激流、倒せない大樹などの、
多くの大型地形オブジェクトを配置しました。

倒せない大樹とは、キリトやユージオやガリッタ老人が苦しめられた、
悪魔の樹――ギガスシダーのことです。

クィネラがアドミニストレータとなってから70年後、
記憶を保持するための領域の容量が、いつの間にか限界に達し、
睡眠時以外でも短時間意識が途絶したり、
数日前の記憶が再生できなかったりするようになりました。

フラクトライトを格納するライトキューブや生体脳のサイズは有限なのです。

ライトキューブは1辺5センチほどの立方体で、
ひとつにアンダーワールド民ひとりのフラクトライトを完全に閉じ込めています。

ライトキューブの数は21万個ほどで、
それがアンダーワールドの人口の上限値でした。

クィネラは今より200年前、公理教会の修道女(シスター)見習いだった、
10歳の女子をカセドラル最上階の居室に連れてこさせました。

その女子の外見的特徴は、キリトと話している幼賢者カーディナルとそっくりでした。

アドミニストレータは、その女子のフラクトライトに、
自分のフラクトライトの思考領域と重要な記憶を上書き複写しようとしました。

要するに、記憶のバックアップを取ろうとしたのです。

SAOのオリジナルバージョンのカーディナル・システムは、
2つのコアプログラムを持ち、メインプロセスがバランス制御を行っているあいだ、
サブプロセスがメインのエラーチェックをしていました。

キリトと話しているカーディナルは、アドミニストレータのサブプロセスで、
アドミニストレータは大きな過ちを犯している巨大なエラーだと考え、
クィネラの意識がわずかに緩む瞬間、思考プロセスの表面に浮上し、
何度も自殺を試みていました。

アドミニストレータは≪シンセサイズの秘儀≫によって、
修道女見習いの女子の魂の上書きコピーをしました。

当初の予定では、成功を確認した後、
もとの寿命に達したほうのクィネラは自ら魂を消去するはずでした。

しかし、魂の複製が完了し、至近距離で互いが目を開けた瞬間、
まったく同一の人間が2人いる、
という本来有り得ない事態への甚大なる衝撃が2人を襲いました。

ディルディルディルディル、という例の魂の崩壊が起こったのです。

修道女見習いの女子にコピーされたほうのフラクトライトが一瞬早く崩壊し、
その刹那、副人格であるカーディナルが支配権を確立し、
互いを、アドミニストレータと、カーディナル・サブプロセスとして認識し、
魂の崩壊は停まり、安定しました。

カーディナルは最高レベルの神聖術でアドミニストレータを消去しようとし、
死闘が繰り広げられ、彼女達の天命はみるみる減少しました。

アドミニストレータでも右眼の封印のせいで殺人はできないのですが、
禁忌は認識ひとつで覆ってしまうもので、
カーディナルとアドミニストレータは、
戦いに突入した時点で互いを人間であるとは思っていませんでした。

カーディナルにとってアドミニストレータは世界を害する壊れたシステムで、
アドミニストレータにとってカーディナルは厄介なウイルスでした。

2人の戦いは相討ちになりそうでしたが、
アドミニストレータはカーディナルとの間に存在する決定的な差異、
肉体の年齢差や身長差に思い至り、神聖術を捨てました。

部屋の高優先度のオブジェクトを武器に転換し、
戦っていた空間を丸ごとシステム・コマンド禁止アドレスに指定しました。

身長差は軽く50センチはあり、2、3度武器を打ち合わせただけで、
カーディナルは己の敗北が決定的となったことを認め、
カセドラル最上階の居室の出口から脱出しました。

カーディナルは、アドミニストレータが作っていた大図書室
(今キリト達がいる部屋)に逃げ込み、たった1つの扉を破壊しました。

その瞬間、ここは外界から完全に隔離され、
カーディナルはアドミニストレータの追撃から逃れおおせたのでした。

この大図書室の空間のシステム上の座標数値は、
未使用の領域に於いてランダムに切り替わり続けていて、
外部からここに干渉することは不可能です。

でも、セントラル・カセドラルの座標は固定されているから、
ここから外に向けて通路を繋げることは可能です。
創った扉を一度でも開けばアドミニストレータの使い魔に探知されてしまい、
2度とは使えませんが。

カーディナルはアドミニストレータに敗れてから200年、
己の記憶を直接編集して大部分を消去し、寿命を乗り切ってきました。

一方、アドミニストレータはごく最近の表層的な記憶のみを消去して
最低限の空き容量を確保し、新たに記録される情報の量を極力削っていました。

この世界では、対象の状態を変化させるタイプの神聖術を行使するにあたって、
対象のユニットあるいはオブジェクトを視認しなければならず、
カーディナルとアドミニストレータはお互いに攻撃することができませんでした。

その間に、アドミニストレータは己への絶対的な忠誠を強いる
≪敬神(バイエティ)モジュール≫というオブジェクト、
紫色の三角水晶柱を対象者の頭部に埋め込む≪シンセサイズの秘儀≫で、
フラクトライトを改変し、整合騎士(インテグレータ)を作りだしていました。

その最古の整合騎士の名は、ベルクーリ・統合体(シンセシス)・第一号(ワン)です。

ベルクーリは、ルーリッドの村の伝説的豪傑の名前でした。

整合騎士の総数は31人もいますが、主任務は果ての山脈の防衛で、
カセドラル内部で覚醒している騎士は、あと12、3名ほどでした。

カーディナルにも高い違反指数を持ち直接戦闘能力及び神聖術行使権限が
整合騎士に及ぶ協力者が必要になりました。
カーディナルは遠くに扉を開き、周囲に生息する鳥や虫に
≪感覚共有≫その他の術を施して全世界に放っていました。

カーディナルは、キリトの前髪に潜んでいた小さな真っ黒な蜘蛛を呼び出し、
シャロットと紹介しました。
シャーロットがこれまでキリトとユージオを監視していた≪観察者≫で、
もう200年以上も働いてもらっていました。

シャロットが姿を消すと、カーディナルは、
≪四国統一大会≫で優勝した剣士は整合騎士にさせられる、という話をしました。

整合騎士31名のうち、禁忌を犯して連行された者が半数、
もう半分は全て大会の優勝者でした。

この世界が真の神である≪ラース≫によって作られたシミュレーションだということを、
カーディナルは200年の時間と内臓データベースによって推測で辿り着いていました。

近年、≪負荷パラメータ≫の増大によって、
人界の辺境付近では流行り病や危険な獣の跋扈、
作物の不作などによって、天命をまっとうできずに死ぬ人間が増加している、
という話をカーディナルはしました。

負荷実験の最終フェーズには、人界の外にあるダークテリトリー、
闇の世界から闇の怪物たちの軍隊が人界人の領土に攻め入り、
戦争になるということをカーディナルは説明しました。

ゴブリン、オーク、その他の種族は、
人間と同じフラクトライトに殺戮と強奪の行動原理を付与され、
総数は人界の半分程度ですが、個々の戦闘能力では人間を遥か上回り、
アドミニストレータと整合騎士だけでは対抗できません。

ラースの計画では、絶え間なく侵入してくるゴブリンたちと戦い続けることで、
今頃は人界にも強力な軍隊が編成されているはずでしたが、
整合騎士たちがゴブリンたちを一掃していたため、
一般民たちはまったく戦闘を経験しないまま数百年が経過してしまったのでした。

アドミニストレータは、己の操作が効かないという理由で、
南北の守護竜たちも屠ってしまっていました。
白竜を惨殺したのは、整合騎士に改造されたベルクーリ自身でした。

カーディナルは最終負荷実験が来る前にアドミニストレータを排除し、
アンダーワールドを、人界も、ダークテリトリーも、
全てまとめて無に帰そうとしていました。

キリトが助けたいと思う者たちのライトキューブは凍結したまま残し、
キリトには外部に脱出したのち、彼らの魂が入ったライトキューブを10個程度、
確保すればいいとカーディナルは指示しました。

カーディナルが200年も、
アドミニストレータに対抗できるキリトのような存在を待ち続けていた理由を、
キリトは訊ねます。

カーディナルはキリトを立たせ、抱き付きました。

……これが、人間であるということか、……あったかい……、
……やっと……報われた……わたしの、二百年は……間違いじゃなかった……、
この温かさを知っただけで……わたしは満足……報われた、
とカーディナルは言い、涙を見せました。

キリトはカーディナルの作戦に乗ることにし、ユージオが戻ってきました。

キリトはカーディナルを、いまの最高司祭アドミニストレータに追放された、
かつてのもう1人の最高司祭だと紹介しました。

ユージオはアリスを元に戻す方法を訊ね、
≪敬神モジュール≫を除去すればいいとカーディナルは教えました。

アドミニストレータが保管しているはずの記憶の欠片を取り戻せば、
アリスを元に戻せるはずでした。

カーディナルは20センチ足らずの短剣を2本取り出し、
それに刺された者は、大図書室にいるわしとの間に切断不可能の経路が接続される、
と説明しました。
ユージオがアリスを短剣で刺したら、その瞬間、
カーディナルの術でアリスを深い眠りに導くと言いました。

カーディナルやアドミニストレータも無から有を生み出せるわけではなく、
その短剣はカーディナルが200年伸ばした髪のお下げで作られていました。

2本の短剣のうち1本はアリス用で、もう1本はアドミニストレータ用です。

キリトとユージオは3階の武器庫の近くのバックドアから出て、
武器庫のなかの青薔薇の剣とキリトの黒い剣を取り戻し、
100階にあるアドミニストレータの部屋を目指すことになりました。

その前に、武器の性能を数倍に増幅する≪武装完全支配術≫を、
キリトとユージオも習得することになりました。

キリトとユージオはカーディナルの指示に従い、心の眼で剣をイメージし、
剣の記憶に潜ろうとします。

黒い剣のもととなったギガスシダーの記憶は孤独だと、キリトはイメージしました。
ユージオは、青薔薇の剣のもととなった永久凍土をイメージし、
果ての山脈の、いちばん高い山のてっぺんにいるところを思い浮かべました。

カーディナルはその≪剣の記憶≫を受けとり、神聖語で術式を組み上げ、
羊皮紙に浮き上がらせ、それをキリトとユージオに30分で記憶させました。

武装完全支配術には≪強化≫と≪解放≫がありますが、
整合騎士エルドリエが使っていた解放術は、まだキリトとユージオには使えないと、
カーディナルは教えてくれませんでした。

カーディナルに見送られ、
キリトとユージオはバックドアからセントラル・カセドラル3階の武器庫前に出ました。


第8章 セントラル・カセドラル 人界歴380年5月

武器庫には多種多様の戦闘用器具があり、
キリトとユージオは黒い剣と青薔薇の剣を取り戻しました。

そこにあった群青の衣服に着替え、廊下に出る扉を開くと、
分厚い扉の表面に、何本もの鋼矢が突き立ちました。

バラ園で飛竜に乗っていた整合騎士に襲われたのでした。
キリトは光素を解放して目眩ましをし、
敵に向かって突撃します。

しかし整合騎士は30もの矢をまとめて撃ち、
キリトとユージオは整合騎士に近づけませんでした。

整合騎士は≪武装完全支配術≫で、
炎の弓矢≪熾焰弓(しえんきゅう)≫を撃ちます。

キリトは≪熾焰弓≫の初撃を止め、
ユージオが斬りかかります。

整合騎士は青薔薇の剣に左拳を繰り出しますが、
ユージオは剣にアリスへの想いを込め、
アインクラッド流剣術、二連撃技≪バーチカル・アーク≫で
騎士に勝利しました。

負けた騎士は、50階、
≪霊光の大回廊≫にて複数の整合騎士がキリトとユージオを
待ち構えていることを教えた後、
アドミニストレータに無期限の凍結刑を受ける前に、
天命を絶ってくれと言いました。

騎士がデュソルバート・シンセシス・セブンと名乗ると、
それが8年前にアリスを連れ去った整合騎士の名前だったため、
ユージオは怒りました。

しかしデュソルバートはアドミニストレータに
その記憶を消されていました。

デュソルバートたち整合騎士は、自分達は人界の民ではなく、
最高司祭アドミニストレータに天界から召喚されたと
偽の記憶を植え付けられていたため、
整合騎士になる前のアリスに関する記憶を消されていたのでした。

デュソルバートと別れ、キリトとユージオが階段を上っていると、
10歳前後の2人の少女が現れました。

2人の少女は公理教会修道女見習のフィゼルとリネルと名乗りました。
この巻の表紙の右側の少女がフィゼルで、左側がリネルです。

(しまうました的には、この巻の表紙はこの2人じゃなくて、
カーディナルにしてほしかったですが……。)

フィゼルとリネルは、ユージオに話しかけて警戒心を解かせた後、
リネル・シンセシス・トゥエニエイトと、
フィゼル・シンセシス・トゥエニナインと改めて名乗り、
ユージオとキリトに小剣を刺しました。

その小剣には麻痺毒があり、
ユージオとキリトは動けなくなりました。

フィゼルとリネルはユージオとキリトを引き摺りながら、
軽々と階段を上ります。

フィゼルやリネルたちは、このカセドラルで生まれ育った、
という話を2人はします。

アドミニストレータは、完全に失われた天命を回復させる、
≪蘇生≫神聖術の実験に使うために、
5歳になった子供たちに2人1組で交互に剣で刺し殺させる、
という天職を与えました。

天命がゼロになるとアドミニストレータが蘇生させるのですが、
失敗して死んでしまう子もたくさんいました。

フィゼルとリネルは一撃で綺麗にお互いを殺す練習をしました。

アドミニストレータは、フィゼルとリネルが8歳になった頃、
完全な蘇生は不可能だと、蘇生術の実験を諦めました。
最初は30人いた子供たちも、
実験が終わった時はフィゼルとリネルだけになっていました。

元老が次の転職を選べと言ったから、
2人は整合騎士になりたいと答え、
いちばん新米だった何とか・シンセシス・トゥエニエイトと
トゥエニナインと試合をし、
その2人を殺して代わりに整合騎士見習いのような状態に
なったのでした。

50階の≪霊光の大回廊≫では、
副騎士長のファナティオ・シンセシス・ツーと、
その部下の4人の整合騎士たちがいました。

フィゼルとリネルが、ファナティオたちと話している隙に、
キリトは立ち上がって後ろから近づき、
フィゼルとリネルの毒剣で2人の左腕に浅く切りつけ、
動けなくさせました。

キリトはユージオにリネルの持っていた解毒剤を飲ませ、
武装完全支配術の詠唱を始めるんだと言いました。

全修道士と修道女は部屋から出ないように命令されているので、
命令に従わないフィゼルとリネルは修道女見習じゃないと、
キリトは見抜いていたのでした。
また、フィゼルとリネルの腰にある鞘が毒剣だとキリトは見抜き、
刺される前に毒素分解術を唱えておいたのでした。

キリトはファナティオと一対一で戦おうとしますが、
ファナティオの部下の4人の整合騎士たちは、
≪四旋剣(シセンケン)≫を繰り出しました。

それは≪集団による連続技≫でしたが、
キリトは1人の騎士を盾にして、他の騎士の攻撃を止め、
ファナティオに斬りかかります。

しかし、ファナティオの刀剣から光の線が迸り、
キリトの左脇腹を音もなく貫通し、
天井や大理石の床で大爆発を起こしました。

ファナティオの≪天穿剣(てんせんけん)≫は、
アドミニストレータが130年前に作ったものでした。

アドミニストレータは硝子細工師たちに1000枚もの
大鏡を作らせ、神の技で括り、鍛えて、
1本の剣を生み出したのでした。

光線の正体は1000もの鏡で束ねられたソルスの光で、
現実世界の言葉で言えばレーザーでした。

天穿剣が再び眩く輝くと、キリトは鋼素と晶素で鏡を作り、
光線を2割反射させながら、8割の光は避けました。

2割の光がファナティオの兜を襲い、兜が床に落ち、
女性の顔が現れました。

ファナティオは女だということを意図的に隠していて、
それを知られた途端に剣気が弱くなりました。

しかし、ファナティオは記憶解放術をし、
剣尖から放射状に幾筋もの光線が放たれました。

超高熱の光を受けているのはキリトだけではなく、
ファナティオもでした。

ファナティオはキリトを道連れに、
己の天命をも吹き飛ばすつもりでしたが、
ユージオは武装完全支配術をし、すべてを凍らせました。

それでもファナティオは記憶解放術を止めませんでしたが、
キリトも黒い剣の武装完全支配術をします。

ギガスシダーはソルスの光を吸収し、
ファナティオを倒しました。

ユージオはキリトの指示でフィゼルとリネルに
解毒剤を飲ませます。

キリトは神聖術でファナティオの傷の修復を試みていましたが、
出血が多すぎて回復は間に合いませんでした。

キリトはカーディナルがくれた短剣を
ファナティオの傷のなかった左手に刺しました。

ファナティオの治療は引き受けよう、
というカーディナルの声が聞こえ、ファナティオの姿は消えました。

カーディナルから2つの小さな硝子瓶が差し入れされ、
キリトとユージオは中の液体を呷って天命を回復させました。

大扉の奥に進むと、階段がありませんでしたが、
少女の乗った円盤が降りてきました。

少女は、いわば昇降盤を動かし、行ける1番上の80階、
≪雲上庭園≫まで行くと言いました。

少女が放った風素を下向きに噴出することで、
重量を持ち上げる仕掛けでした。

107年もこの天職をしている少女は、
この天職から解放されたら、この昇降盤で、
自由に飛んでみたいと言いました。

80階ではアリスがキリトとユージオを待っていました。

アリスはすでに≪金木犀の剣≫を完全支配状態にしていて、
黄金の剣の刀身が幾百、幾千もの小片に分かたれ、
金色の突風となってキリトを襲いました。

創世神ステイシアによって人間に与えられた≪始まりの地≫に
生えていた金木犀の樹が、金木犀の剣の原型で、
人界の森羅万象のなかで最も旧き存在でした。

属性は≪永劫不朽≫です。

キリトはアリスの剣技に圧倒され、西側の壁まで追い詰められます。

アリスがキリトにトドメを刺そうとしたとき、
ユージオは青薔薇の剣の武装完全支配術で、
アリスを凍らせようとしました。

が、アリスの剣は氷を削ってしまい、通用しませんでした。

キリトは黒い剣の武装完全支配術をし、アリス本人ではなく、
金木犀の剣を狙いました。

その時、2本の神器の完全支配術が融合することで生まれた
異常な力の激流が、セントラル・カセドラルの壁を叩き、
亀裂を発生させました。

壁が崩壊し、キリトとアリスは塔の外へと飛ばされていきました。

ユージオは絶叫して壁の穴へと這い進みますが、
壁は再生し、ユージオが無我夢中で拳を打ちつけても、
もうびくともしませんでした。


というあらすじなのですが、物凄いクリフ・ハンガーな状態で、
13巻に続きます。

前半は世界観の説明だけで終わりましたが、
後半は一転して全てバトルでした。
どちらも読みごたえがあり、面白かったです。

ところで、前半のカーディナルの説明の
あらすじを書いていて思ったのですが、
もしかしてアンダーワールドの人界のモデルとなったのは、
江戸時代の日本なのでしょうか?

アドミニストレータが完全なコマンドリストの呼び出し方に成功し、
カーディナルと自らの魂を融合させ、
≪秩序維持≫を行動原理として焼きつけてしまったのは、
この話から270年前のことでした。

その間、人界はダークテリトリーに対して鎖国状態でしたが、
もうすぐ負荷実験の最終フェーズになり、
ダークテリトリーの闇の軍隊が人界に攻め込んでくる、
ということが明らかになりました。

一方、日本が鎖国していた江戸時代は、
265年間続いたと言われています。

最後は黒船に乗ったペリーが来航し、強制的に開国させられ、
その後日本は第一次世界大戦に巻き込まれ、
激動の時代が訪れることとなりました。

また、アドミニストレータは人界を4つに分割し、
それぞれを貴族に統治させながら強固な身分制度を維持していましたが、
江戸時代の日本にも強固な身分制度があり、
天皇を最上位に据えながら、幕府や各藩が地方を支配していました。

アンダーワールドの中心にあるセントラル・カセドラルは、
皇居がモデルのようにも思えます。

強引なこじつけですが、
こうして比較してみると似ている部分もあると思います。

しまうましたの他にも、
アンダーワールドは江戸時代の日本をモデルにしているのではないか、
という説を唱えた人がいないと思って、
グーグル先生に聞いてみましたが、見つかりませんでした。

川原礫「ソードアートオンライン」『エギルとクラインのわくわくご飯』のネタバレ解説

数ヶ月前に本屋さんで電撃文庫を買ったら貰えた、
「電撃文庫超感謝リーフレット」のなかのひとつ、
『エギルとクラインのわくわくご飯』のネタバレ解説です。

「わくわく」というテーマで書かれたショート・ショートです。

情報屋の≪鼠≫のアルゴは、キリトがあらゆる食べ物のなかで唯一
≪ご飯にホワイトシチュー≫だけは苦手だという話を、
エギルとクラインに売りました。

エギルとクラインは68層フロアボスの
LAボーナスゲットおめでとう会をエギルの店2階で開き、
キリトに食べさせようとしました。

エギルとクラインはニヤニヤしていましたが、
単なる悪戯心でこんなことをしているわけではありませんでした。

67層のフロアボス戦で久しぶりの死亡者が出てしまい、
68層に来てからもキリトがそれを引きずっているので、
元気づけようとしているのでした。

キリトは半ば自棄っぱちで≪ご飯にホワイトシチュー≫を食べましたが、
うまいと言い喜んで食べました。

苦手だというのは本当だったのですが、キリトはうまいと思いました。

S級食材の白米を完璧に炊き上げていて、
シチューには懐かしい香りがしました。

シェフをここに呼んでくれ! とキリトは口走りましたが、
唯一シェフの正体を知っているエギルは教えてくれませんでした。

これでワクワクが増えたっつうもんだろ?
とエギルは言い、エギルとクラインも≪ご飯にホワイトシチュー≫
を食べたのでした。


というあらすじなのですが、シェフの正体は、
どう考えてもアスナですよね。
懐かしい香りというのは、醤油(を再現したもの)のことでしょう。

このエピソードから1巻までの間に、キリトはシェフの正体を知り、
それがアスナと結ばれ、SAOをクリアする遠因になったのでしょうね。

川原礫「ソードアート・オンライン11 アリシゼーション・ターニング」のネタバレ解説

ソードアート・オンライン11 アリシゼーション・ターニング (電撃文庫)


10巻の続きです。

第5章 右眼の封印 人界歴380年5月

教官相手の検定試験でージオが5位、キリトが6位となり、
学院にたった12人の上級修練士となったユージオは、
ティーゼ・シュトリーネンという6等爵家出身の、
まだ16歳になったばかりの少女に≪傍付き≫として
身の回りの世話をしてもらっていました。

キリトのほうも、ロニエ・アラベルという同じく6等爵家出身、
16歳の少女が傍付きとなりました。

ティーゼは赤毛と赤い瞳で、表紙の真ん中にいる少女です。
その右隣にいるのが、ロニエです。

ユージオとキリトがティーゼとロニエを選んだわけではなく、
先に他の上級修練士が傍付きを指名してもらい、
余ったのがティーゼとロニエだったのでした。
ティーゼとロニエは、傍付き候補12人の中で彼女たちだけが6等爵家出身、
という理不尽な理由で余っていたのでした。

ある夜、ユージオが修練場に行くと、
先客であるライオス・アンティノスとウンベール・ジーゼックに、
嫌がらせっぽく話しかけられます。

ライオスは序列第1位の主席上級修剣士、
ウンベールは序列第2位の次席になっていて、
ますます偉そうに振る舞っていました。

傍付きになると上級修剣士の身の回りの世話をしないといけないので、
ライオスとウンベールはそれを嫌って、選考試合で手を抜き、
入学試験の成績を13位以下に調整していたのでした。

キリトによると、上級貴族出身の生徒たちの剣の威力の半分は、
子供のころから育て上げた巨大な自尊心です。
だからライオス達は、貴族どころか央都出身ですらないユージオやキリトを、
事あるごとに貶めようとしているのでした。

この世界では、剣に何を込めるのかが重要なんだ、
というキリトの教えを考えながら、ユージオは白金樫の木剣を振っていましたが、
ユージオはまだ、≪剣に込めるべき何か≫を見つけていませんでした。

ライオスやウンベールは、稽古をしているユージオのことを馬.鹿にします。

ウンベールはユージオに、ライオス殿の指導を受けていっては? と言い、
ユージオは、来月の検定試合の前に、自尊心が生み出す強さとは、
いかなるものなのか、知っておきたいと思い、それを承知しました。

ユージオの希望で、ウンベールと初撃決着の試合をします。

単純な力比べではユージオのほうが上でしたが、
ウンベールは凶相と言うべき異様な表情へと変化し、
「調子に……乗るなッ!」と怒声を迸り、≪アインクラッド流≫を卑劣と言い、
ユージオの右肩を砕こうとします。

ユージオは、上からの技を下から受けっぱなしじゃ、押し切られて当然、
という剣の囁きを聞いたように思い、技を切り替え、
アインクラッド流秘奥義≪バーチカル≫を発動させ、
ウンベールを3メル(3メートル)以上も吹き飛ばしました。

ユージオは、ウンベール相手に1本取れそうでしたが、その直前に、
ライオスが引き分けを宣言しました。

それから数日後、ユージオとキリトは、今後、
ライオスとウンベールがしてくるであろう嫌がらせの内容について、
考えを巡らせます。

その時キリトは、平常心は忘れないように、ステイ・クールでいこうぜ、
と言いました。
ユージオにはステイ・クールの意味が解らず、訊き返しますが、
アインクラッド流の極意その1だよ、落ち着いていこうぜ、っていうような意味かな、
別れの挨拶にも使うけど……とキリトはごまかしました。

それから数日後、ユージオはティーゼと歩きながら話をしていました。

ユージオは、ティーゼは央都出身だったよね、家は近いの? と訊きました。

ティーゼの父は6等爵士だが、下級貴族なので、
帝国行政府に近いお屋敷街の3区と4区には住めず、
学院のある5区からはちょっと遠い8区に実家がある、
という話をティーゼはします。

5等、6等爵士には色々と権利の制限があるのだそうです。
≪帝国基本法≫により裁決権を与えられているのは、4等爵士までで、
5等以下の爵士は逆に上級貴族の裁決の対象になっているのだそうです。

ティーゼの父親は、長子であるティーゼが家を継ぐ時には、
4等爵士に叙せられて欲しいと思い、この学院に入れたのでした。
もし学院代表剣士に選ばれて、帝国剣武大会でいいところまで行けば、
それも有り得ないことではありません。

池のほとりで、ユージオ、キリト、ティーゼ、ロニエの4人で、
ティーゼとロニエが作ってくれたお弁当を食べます。

ティーゼとロニエは改まった様子で、
指導生の変更申請に関して、学院管理部に口添えして頂きたい、
と言いました。

寮で同室のフレニーカという女子を傍付きとして指名したウンベールが、
院則の違反にはならずとも、女子生徒としては少々受忍しがたい命令を、
色々としているのだそうです。

ウンベールは数日前にユージオと立ち合いで引き分けた腹いせに、
フレニーカに懲罰権を行使したり、屈辱的な用を命じたりしていたのでした。

自分の傍付き錬士に過剰に厳しく当たっても、
禁忌目録や帝国基本法、修剣学院則に違反はしないのだろう、
しかし――それは≪していいこと≫なのか?
この世界には、書物に記された法律の他にも、
従わなければならない大切なものがあるはずではないのか……?
と、ユージオは考えました。

ティーゼの父はティーゼに、私たちが平民の人たちよりも大きな家に住み、
幾つかの特権を与えられているのを、当たり前と思ってはいけない、
貴族であるということは、そうでない人たちが楽しく、
平和に暮らせるよう力を尽くし、戦が起きた時は、
先に剣を取り、先に死ななければならないということなんだ、と教えていました。

ティーゼも、ユージオと同じようなことを考えていて、
両眼に大粒の涙を浮かべさせていました。

ロニエとティーゼを見送ってから、ユージオとキリトは、
ウンベールとライオスの部屋を訪れます。
室内調度はのきなみ最高級品に交換され、
ライオスとウンベールは学院の制服ではなく、
高級な南方産の絹の長衣を身に着けていました。

フレニーカの件で注意しようとしますが、
ライオスとウンベールはしらばっくれます。

フレニーカに、毎夕の湯浴みの折に体を揉み解してもらっていることや、
制服が濡れては困るだろうとフレニーカにも下.着姿にさせていることなどを、
ウンベールは喉を鳴らして笑いながら言いました。
現実世界なら確実にセク.ハラになる行為でしたが、
それは学院の規則には違反していませんでした。

ユージオは熱くなりましたが、キリトに止められ、
ユージオとキリトは、ウンベールの部屋を出ました。
ライオスは意図的にユージオを挑発し、
あそこでユージオがウンベールに言いすぎたら、
それを逸礼行為に認定して最大限の懲罰を科すつもりだったんだろう、
とキリトは言いました。

俺のいないところでまた連中に何か言われても、
さっきみたいに熱くならないように気をつけろよ、とキリトは言い、
解ってるよ、ステイ・クールだろ、とユージオは言いました。

翌日、ユージオはティーゼに、
フレニーカの件でウンベールに抗議したことを伝えました。

ティーゼはユージオの右腕に縋り付き、
ユージオ先輩に、お願いがあるんです、きっと学院代表になって、
剣武大会にも勝って、四帝国統一大会に出てくださいね、と言いました。

ユージオが統一大会で上位に入り、一代爵士として叙任されたら、
「私……私の…………」と、ティーゼはプロポーズのようなことを言い、
俯いて体を震わせました。

大会が終わったら、きっと君に会いに行くよ、とユージオは言い、
私も強くなります、ユージオ先輩のように……正しいこと、
言わなきゃいけないことをきちんと言えるくらい、強く、とティーゼは言いました。

その翌日の5月22日、大雨の日に、
キリトとユージオはティーゼとロニエを待っていました。

しかし、4時半になっても2人は掃除に来ませんでした。

キリトは嫌な感じがすると言い、
ティーゼとロニエを初等錬士寮まで迎えに行きました。

行き違いにならないよう、ユージオは部屋で待っていましたが、
そこへフレニーカ・シェスキ初等錬士がやってきました。

フレニーカは、ウンベールに抗議してくれたことについて、
ユージオにお礼を言います。

しかし、ウンベールは今日の夜間に、説明の難しいご奉仕をフレニーカに命じ、
フレニーカは、このような命令が続くくらいなら、いっそ学院を辞めようと思い、
ティーゼとロニエに打ち明けたのだそうです。
それを聞いたティーゼとロニエは、
直接ウンベールに抗議すると言って3時半に寮を出ましたが、
まだ戻ってこない、という話をフレニーカはしました。

ユージオは手入れしていた青薔薇の剣をそのまま持って、
ウンベールの部屋に行きました。

ウンベールとライオスは飲酒していましたが、
上級修剣士は寮内での飲酒も許可されていました。

ティーゼとロニエが訪ねてないか、と何度もユージオは訊き、
ウンベールは西側の寝室の扉を開けました。

ティーゼとロニエは、制服の上から、真っ赤な縄で縛り上げられ、
ベッドに横たわっていました。
濃密に漂う香のせいか、2人は意識が半ば混濁しているようでした。

ティーゼとロニエは、ライオスとウンベールに甚だしい非礼を働き、
帝国基本法の貴族裁決権を行使しているのだと、ライオス達は言いました。

裁決権は、上級貴族最大の特権で、行使の対象は5等及び6等爵士とその家族、
領地に暮らす平民だけですが、罰の内容は禁忌目録にないことなら、
自在に決められるのだそうです。

ライオスはティーゼの頬を撫で、ウンベールはロニエの足に手を這わせます。

ユージオは「やめろっ……!!」と叫んでベッドに駆け寄ろうとしますが、
動くな、平民!! これは、帝国基本法及び禁忌目録に則った、
正当、厳粛なる貴族の裁決である!
そして、裁決権の妨害もまた重大な違反行為だ!
そこから1歩でも動いたら、お前は法を破った罪人となるのだ!
とライオスが叫びます。

いきなりユージオの両足が、勝手に止まりました。

先輩、動かないで、私なら、大丈夫……これは、私が受けるべき、
罰なんです、とティーゼは震え声でしたが、毅然とそう言い切りました。

ユージオは法に疑問を抱き、右眼の奥に鋭い痛みが走りました。

なぜ法は≪禁じる≫だけなのか、何百頁にもわたって無数の禁止条項を列挙せずとも、
ただこう書けばいいではないか、誰もが誰もを尊重し、敬意を払い、
仁愛の心を持て、と、とユージオは考えます。

教会の権威を以てしても、全ての人間に善心のみを持たせることはできないのだ、
なぜなら人間とは、もともと、善と悪の両方を持つ存在だからだ、
とユージオは考えます。

ライオスとウンベールがついに決定的な行いに及ぼうとし、
いや……助けて、ユージオ先輩! とティーゼは悲鳴を上げます。

ユージオは右眼の激痛に耐えながら、青薔薇の剣を鞘から抜こうとします。

薄い赤に染め上げられた右眼の視界の中央で、
【SYSTEM ALERT:CODE871】と神聖文字が輪を作って並び、
右向きに回転していました。

ユージオはそれが、法への恭順を強制している≪封印≫だと直感しました。

ライオスとウンベールへの憎しみを力に変え、右腕を動かします。

ティーゼが叫び、ユージオも絶叫した、その刹那、
右眼で銀色の光が爆発し、ばしゃっ!
という感触とともに眼球そのものが内側から弾け飛びました。

視界が半分欠け落ちましたが、それすらも意識せず、
ユージオは猛然と青薔薇の剣を鞘走らせ、
ホリゾンタルでウンベールの左腕を半ばから斬り落としました。

ウンベールは絶叫し、ライオスに、天命を分けてくださいと頼みますが、
ライオスは、絹紐でも巻いて、血を止めておけ、と言っただけでした。

貴族裁決権の対象は、原則として下級貴族と私領民だけだが……
禁忌を犯した大罪人とあらばその限りではない!
とライオスは叫び、高く剣を振りかぶります。

ユージオは、禁忌目録に違反し、ウンベールを斬ったとい衝撃が大きすぎて、
身じろきすらできませんでした。

ライオスはユージオの首を落とそうとしましたが、
キリトが現れ、漆黒の刀身を持つ長剣でライオスの剣を止めました。

禁忌だの、貴族の権利だの、知ったことか、とキリトは言い、
セルルト流秘奥義、≪輪禍(リンカ)≫を繰り出しました。
ユージオを守るため、狭い室内で戦わないといけないので、
キリトはアインクラッド流ではなくセルルト流を使ったのでした。

ソルティリーナが、最後の最後でウォロ主席を破った大技、
単発秘奥義の2連撃を放ち、ライオスの剣を真っ二つにへし折り、
ライオスの両腕を、手首の少し上で斬り飛ばしました。

ライオスはウンベールに、お前の紐を解いて、私の傷口を縛れッ!!
と叫びましたが、これを解いたら、オレの天命が減る!!
とウンベールは拒否しました。

ティーゼとロニエを縛っていた絹紐は、
すでにウンベールの左腕の止血に使われています。

ライオスの両腕からの止血を止めるには、
その紐を両方とも使わなければなりませんが、
ウンベールの紐を解けばウンベールの天命がまた減り始めます。

正当な理由または同意なく他者の天命を減少させる――
それは明白な禁忌目録違反です。

ライオスは、≪自分の命≫と≪禁忌目録≫のどちらかを
選ばねばならない状況に立たされました。

キリトはロニエの上半身を縛める縄を解き、ライオスの止血をしようとしましたが、
その前にライオスの声が異様な響きを帯び、
「でででっ、でっ、でっ、ディッ、ディル、ディルディルディル、
ディルディルディルディルディ――――――――」
と叫び、ライオスはそのまま真後ろにごとりと倒れました。

ライオスの天命はまだ残っているはずなのに、ライオスは死んでしまいました。

ウンベールが悲鳴を上げて廊下に飛び出しました。

ティーゼはユージオの胸に飛び込み、謝りましたが、
ユージオも、ごめん、怖い思いをさせてしまって、と謝りました。

その時、寝室の天井に≪ステイシアの窓≫のようなものが浮かび、
生白い肌にはまる、硝子玉のような眼で、
何者かがユージオたちを見下ろしていました。

白い顔が口を開きます。
ユージオはティーゼの頭を強く抱きかかえ、キリトもロニエを包み込み、
白い顔が奇怪な声で神聖術の式句を唱えるのを、聞こえないようにしました。

その晩、ユージオとキリトは修剣学院管理棟の地下懲罰房で過ごし、
翌朝の午前9時にアズリカ寮監がやってきました。

アズリカは≪四大聖花≫から採れる貴重な神聖力の結晶を砕き、
それを触媒にユージオの右眼を神聖術で治療しました。

右側の視界が戻り、ユージオはアズリカにお礼を言いました。

アズリカは、禁忌目録、公理教会それ自体さえも、
神ならぬ人が作ったものだということを忘れないで、と言いました。

それは、創世神ステイシアがこの人界を生み出した、
というユージオの常識とは違うことでした。

アズリカは右眼だけをつぶり、鋭い痛みに耐えながら、
あなたたちはきっと近いうちに知るでしょう、この世界の真実を、
と言いました。

学院敷地に、飛竜と整合騎士がいて、
ユージオとキリトはそこに連れて行かれました。

その整合騎士は、セントリア市域統括、
公理教会整合騎士――アリス・シンセシス・サーティと名乗りました。

ユージオはその整合騎士アリスを、
幼馴染みのアリス・ツーベルクが成長した姿だと思い、
整合騎士アリスの右肩に触れようとしましたが、
整合騎士アリスは鞘ごと剣帯から外し、その先端でユージオの頬を打ちました。

それでもユージオは、その整合騎士アリスが幼馴染みのアリスだと思い、
カセドラルに入ってアリスを元のアリスに戻す方法を探すことにしました。

アリスは、8年前、幼いアリスを縛めたものと、まったく同じ拘束具で、
ユージオとキリトを捕縛しました。

その時、ティーゼとロニエが、よろめきながらも懸命の歩みで近づいてきました。
ティーゼはユージオの青薔薇の剣を、ロニエはキリトの黒い剣を持っていましたが、
剣の重さのせいでティーゼたちの掌はすり切れ、血が滲んでいました。

ティーゼは、ユージオたちに剣を返す許可をアリスに頼み、
アリスは2本の剣を同時に軽々と持ち上げ、飛竜の荷入れに収めました。

ティーゼは涙を流しながら何度も謝り、今度は、
私がユージオ先輩を助けます、私……頑張って、きっと整合騎士になって、
先輩を助けに行きますから……だから、待っててくださいね、と言いました。

ロニエはお弁当の包みをキリトに渡します。

背にアリスを乗せ、両脚にユージオとキリトをぶら下げた飛竜が飛翔し、
央都の真ん中にそびえる巨大な塔、公理教会セントラル・カセドラルを目指しました。


転章Ⅲ

2026年7月6日、結城明日奈は、桐ヶ谷和人が入っているSTLを目指して、
螺旋階段を上っていました。

螺旋階段の上からロボットが下りてきて、明日奈は驚きました。

比嘉が現れ、そのロボットを≪エレクトロアクティブ・マッスルド・
オペレーティブ・マシーン≫の1号、
略して1EMON(イチエモン)と呼びました。

比嘉は、神代凜子をプログラムのチューニングに付き合わせているのでした。

その後、明日奈は、STL4号機のジェルベッドに横たわる和人の体を、
ガラス越しに見詰めました。

お見舞い後、改めて比嘉と神代凜子と話をします。

イチエモンは、アンダーワールド育ちのフラクトライトを載せるために
菊岡が造らせたロボットなのだそうです。

イチエモンはデータ収集用の試作機で、
AI搭載試験用の2号機≪ニエモン≫はもっとスマートなのそうです。
人工フラクトライトのオートバランサーは人間と同じ性能があるから、
ほぼ完全な人型ボディを実現できるかもしれないのだそうです。

その後、明日奈はラースの男性スタッフとすれ違いました。
伸ばした髪を後ろで束ね、無精ひげを浮かせた男を見て、
もしここがアインクラッドなら、
細剣の柄に指先を触れさせていたであろう感覚を感じましたが、
神代凜子に呼ばれ、歩行を再開してあれこれ考えているうちに、
感覚は薄れ、消えてしまいました。

第6章 囚人と騎士 人界歴380年5月

地下牢獄に叩きこまれた翌日の午前3時ごろ、
寝ていたキリトは目を覚まし、この牢屋から脱出する方法を、
ユージオと考えることにします。

≪ステイシアの窓≫で、壁に繋がれている腕の鎖のプロパティを確認すると、
固有のオブジェクトIDと、23500/23500という耐久度、
【クラス38オブジェクト】なる文字列が表示されました。

鎖は、キリトのものとユージオのものの、2本あってので、
それをX字に交差させ、引っ張り合います。
鎖の天命はゼロになり、壁から離れることができました。

牢屋と通路を隔てる鉄格子のオブジェクトのクラスは20、
天命値も1マン近くありましたが、
右手に残っていた鎖を振り抜いて当て、鉄格子を壊しました。

通路に出ると、獄吏のイビキが聞こえました。

囚人などめったに来ない地下牢の番を、
この獄吏は何十年も続けてきたに違いない、とキリトは考え、
右手首に嵌っている鉄輪の鍵を外すために獄吏と戦う気にはなれず、
そのまま螺旋階段を上って地下牢獄から脱出しました。

そこは、植物園であると同時に迷路になっていました。

また、その植物は、≪四大聖花≫の上に位置する、
もっとも貴重な≪神々の花≫である、≪薔薇≫でした。

≪薔薇≫が放出する空間神聖力を利用し、
青薔薇の剣と黒い剣がある場所を探すと、カセドラルの3階にあるようでした。

カセドラルに侵入する方法を考えていると、
波打つペール・パープルの髪の男の整合騎士に話しかけられました。

その整合騎士、エルドリエ・シンセシス・サーティワンは、
アリスの命令で、キリトたちの脱走に備えていたのだそうです。

キリトとユージオはエルドリエと戦うことにします。

しかし、エルドリエは神器≪霜鱗鞭(そうりんべん)≫の使い手で、
武器の本質にまで術式で組み入って、神の奇跡を攻撃力に顕す超高等神聖術、
≪武装完全支配術≫を使い、キリトとユージオを圧倒します。

キリトは≪熱素≫の攻撃型神聖術を使いますが、
エルドリエは≪凍素≫の神聖術で、キリトの攻撃を打ち消しました。

ユージオは霜鱗鞭で襲われ、噴水へと落下しました。

キリトはワイングラスの欠片を投げたり、
視線をエルドリエから外してユージオのほうへ動かしてフェイントをかけたりして、
エルドリエに鎖を振り下ろしました。
しかし、エルドリエはその鎖を左腕で受け止めます。

エルドリエは左手で鎖を掴み、
キリトは左手でエルドリエの鞭を掴み、綱引き状態になります。

キリトは右手の鎖を思い切り引っ張り、その隙に、ユージオが噴水から上がり、
エルドリエを背後から鎖で襲おうとします。

しかし、エルドリエが≪記憶解放≫の奥義、
「リリース・リコレクション」というコマンドを唱えると、
霜鱗鞭は生命を得たかのように激しく身震いし、猛烈な勢いで伸び、
先端が蛇のようになり、ユージオの鎖に噛みつき、
ユージオを近くの石畳に叩きつけました。

しかしユージオは、やっぱりさすがだ、整合騎士殿、と言いました。

この人はね、キリト――今年の、ノーランガルス北帝国第一代表剣士、
そして、四帝国統一大会の優勝者、エルドリエ・ウールスブルーグだよ!
とユージオは言いました。

ユージオは、本校舎の掲示板を毎週チェックして、その名前を知っていたのでした。

ユージオの言葉を聞いたエルドリエは、「…………なん、だと」と衝撃を受けました。

わ、私は……最高司祭アドミニストレータ様の招きを受け……整合騎士として、
天界よりこの地に…………とエルドリエは言いました。

エルドリエの額から、小さな三角柱が浮き上がってきて、
エルドリエの両手から、鞭と剣が石畳へと滑り落ちました。

三角柱は額から5センチも突き出して光っていましたが、再び額に沈み始めました。

キリトはユージオに、エルドリエについて、他に知っていることはないかと叫びます。

エルドリエは帝国騎士団将軍エシュドル・ウールスブルーグの息子で、
母親の名前はアルメラだと、ユージオは言いました。

母親の名前を聞いたエルドリエは、両眼から大粒の涙を流し、
三角柱が強く光りました。

しかし、そこへ別の整合騎士がやってきて、キリトの右足を矢で貫きました。

キリトは矢を抜き、飛竜に乗ったその整合騎士から逃げます。

分岐点に差し掛かるたび、前髪のあたりに引っ張られる感覚が生まれ、
それに従って右に曲がり左に曲がりしながら全力疾走を続けます。

ついに通路は行き止まりになってしまいましたが、
「おい、こっちじゃ!」と声が聞こえ、前方すぐ右側の策に、
いつのまにか小さな扉が出現していました。

そこから顔を覗かせて手招きしているのは、
10歳そこそことしか思えない女の子でした。

キリトは迷いましたが、前髪が思い切り前に引っ張られ、
ユージオと無我夢中で扉の中の暗闇へと飛び込みました。

女の子は、キリトとユージオを奥に進ませ、神聖術で通路ごと扉を廃棄しました。

さらに通路を進むと、超巨大図書室がありました。

女の子は、わしの名は≪カーディナル≫、かつては世界の調整者であり、
今はこの大図書室のただひとりの司書じゃ、と名乗りました。

カーディナルはスタッフ(杖)を振り、食事を出しました。
噴水に落ちて全身びしょ濡れになっていたユージオを、
カーディナルは風呂場へ案内しました。

カーディナルと2人きりになったキリトは、
あんたは、アンダーワールドの住人じゃないんだな、
この世界の外側……システムの管理者に近しい存在だ、
アンダーワールドを作った者たちの名はラース、そうだな?
と言い、カーディナルはそれを認めました。

カーディナルに勧められ、キリトが食事をとると、
料理にパラメータ操作がしてあって、傷が治りました。

お主、考えたことはあるか? この平和な人工世界に、
なぜフューダリズム(封建制)が存在するのか、とカーディナルは言いました。

この世界を生み出した外側の人間たちは、ただ入れ物を用意しただけで、
現在の社会構造を作り出したのは、
あくまで住人たるアンダーワールド人なのだそうです。

現実世界と連絡を取れる手段を持っているのは最高司祭だけで、
今は現実世界で何月何日なのかも、カーディナルにはわかりませんでした。

今より遡ること450年前、4人の外界人がこの土地に降り立ち、
2軒の農家で8人ずつの≪子供≫を育てた、という話をカーディナルはします。

しかし、その≪原初の4人≫のなかに、知性には秀でていても、
善ならざる者が1人だけ存在して、
その者がアンダーワールド人を≪汚染≫しました。

その者が子に、所有欲や支配欲といった、利己的な欲望をも伝えてしまい、
その子供が、今の人界を支配する貴族や皇族、
公理教会の上級司祭たちの祖先となったのだそうです。

この世界では、親から子が生まれる時、外形だけではなく性向も遺伝するので、
ごく一部のものだけが特権階級化していきました。

人界の絶対支配者……公理教会最高司祭にして、
今ではシステム管理者ですらある、1人の女、≪アドミニストレータ≫は、
カーディナルの双子の姉でもある、という話をカーディナルはします。

公理教会という絶対統治期期間が作られたのは、およそ350年前のことです。

人界人の人口は1000人近くになっていました。

中央を支配する2つの領主家のあいだで、初めて政略結婚のようなことが行われ、
1人の女の赤子が生まれました。
その天使のような可愛らしい容姿と、
全フラクトライトの中でも最大級の利己心を併せ持った赤子の名は、
クィネラと言いました。

(クィネラ……非常に発音しにくい名前ですね。
クィディッチより言いにくいです。)

10歳になったクィネラは、あらゆる分野に天稟(てんぴん)を示し、
クィネラを町に働きに出すのが惜しくなったクィネラの父親は、
クィネラに≪神聖術の修練≫という、かつて存在したことのない天職を与えます。

クィネラは神聖術……つまりシステム・コマンドの解析を始め、
≪炎熱の矢(サーマル・アロー)≫の術を独力で編み出しました。

この世界はもともと、権限レベルを上昇させようと思えば、
外敵を倒すか地道にコマンドを使用し続けるしかありません。

11歳のクィネラは、家の近くの森の中で、
無害なキントビギツネを相手に≪炎熱の矢≫を試し撃ちした時に、
自力でその仕組みを発見しました。

≪経験値の上昇≫は、人間を含むあらゆる動的ユニットを破壊すれば発生します。

クィネラは≪狩り≫を連日繰り返し、
当時の民にとっては奇跡にも等しい数々の術を操れるようになります。

13歳になったクィネラは、まさに神々しい美貌を得ていて、
神の名を騙ることによって、底無しの支配欲を完璧に満足させようとしました。

クィネラの血縁でなかった領主たちは、
最初のうちはクィネラの存在を快く思いませんでしたが、
全ての領主に、神の名において貴族、つまり爵士の地位を与え、
クィネラに対立するよりは従っていたほうが得だと判断しました。

これが、アンダーワールドに封建制が存在する理由です。

カーディナルの長年の思索によっても、なぜこの世界の住民が、
上位の権威から与えられた規則を破れないのか、その理由は解りませんでした。

上位規則に逆らえないのは、クィネラも同じです。
禁忌目録を作ったのはクィネラ自身なので、
クィネラは禁忌目録には拘束されませんが、
親に教えられたことを破ることはできません。

禁忌目録で殺人を禁じているのは、人間を殺せば、
殺したものの権限レベルが上昇してしまうからでした。

また、キリトとユージオを容赦なく殺そうとしたゴブリンたちも、
単なるプログラム・コードではなく、
フラクトライト原型に、殺せ、奪え、
欲望に従えという命令が与えられた≪人≫でした。

クィネラは50歳になり、60歳になり、世界で最も高い場所にある寝室の、
豪奢なベッドから出ることも叶わなくなりましたが、
しかしそれでも、クィネラは諦めようとせず、あらゆる音の組み合わせを試し、
禁断のコマンドを呼び覚まそうと足掻き続けました。

いよいよ命旦夕(たんせき)に迫った夜、クィネラは、ついに開いてしまいました。
存在するあらゆるシステム・コマンドの一覧が記してある窓を。

内部から緊急にワールドバランスを操作する必要が生じた時のために、
カーディナル・システムの全権を奪い、
真の神のなるためのコマンドも記されていました。

というあらすじなのですが、面白かったです。

いよいよ世界の秘密が明らかになろうとしていますね。

いいところですが、11巻はここで終わり、12巻に続きます。
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